発明の詳細な説明
本明細書で開示されているいくつかの実施形態は、殺菌性組成物および方法を提供することに関する。いくつかの他の実施形態は、部位を接触させるか、または対象に、ガス富化流体を含む治療組成物を投与することによる細菌感染の少なくとも1つの症状の治療を行う。特定のいくつかの実施形態では、ガス富化流体は、酸素富化水を含む。
界面動電的に生成された流体:
本明細書で使用されているような「界面動電的に生成された流体」は、本明細書の実施例の目的のために本明細書で詳しく説明されている例示的な混合装置によって生成される出願人の発明の界面動電的に生成された流体を指す(全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第200802190088号および国際公開第2008/052143号の両者も参照のこと)。本明細書で開示され、提示されているデータによって実証されるような、界面動電的流体は、従来技術の含酸素化非界面動電的流体(例えば、圧力ポット含酸素化流体など)に関するものを含めて、従来技術の非界面動電的流体に関する新規の、また基本的に異なる流体を表す。本明細書においてさまざまな態様で開示されているように、界面動電的に生成された流体は、限定はしないが以下のものを含む、独自の新規の物理的および生物学的特性を有する。
特定のいくつかの態様において、界面動電的に生成された流体は、流体力学的に誘導される、本明細書で説明されているようなデバイス特徴局所効果などの局所(例えば、全流体体積に関して非一様)界面動電効果(例えば、電圧/電流パルス)の存在下で生成される流体を指す。特定のいくつかの態様において、前記流体力学的に誘導される、局所的界面動電効果は、本明細書で開示され、説明されているような表面に関係する二重層および/または流動電流効果と組み合わされる。
特定のいくつかの態様において、界面動電的に改変された水性流体は、そこに溶解されているレポーター溶質(例えば、トレハロース)の13C−NMR線幅を調節するのに適している。NMR線幅効果は、例えば、本明細書において特定の実施例で説明されているように試験流体中の溶質の「タンブリング」を測定する間接的方法におけるものである。
特定のいくつかの態様において、界面動電的に改変された水性流体は、−0.14V、−0.47V、−1.02V、および−1.36Vのうちのどれか1つにおいて際立った方形波ボルタメトリーピーク差、−0.9ボルトでのポーラログラフピーク、および本明細書において特定の実施例で開示されているように界面動電的に生成された流体に固有の、−0.19および−0.3ボルトでのポーラログラフピークが存在しないことのうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。
特定のいくつかの態様において、界面動電的に改変された水性流体は、細胞膜導電率(例えば、本明細書で開示されているパッチクランプ研究の測定尺度としての全細胞コンダクタンスの電圧依存の寄与分)を変えるのに適している。
特定のいくつかの態様では、界面動電的に改変された水性流体は含酸素化され、この場合、流体中の酸素は、大気圧下で少なくとも15ppm、少なくとも25ppm、少なくとも30ppm、少なくとも40ppm、少なくとも50ppm、または少なくとも60ppmの溶存酸素量だけ存在する。特定のいくつかの態様では、界面動電的に改変された水性流体は、大気圧下で15ppm未満、10ppm未満の溶存酸素、またはほぼ周囲の酸素量を有する。
特定のいくつかの態様において、界面動電的に改変された水性流体は含酸素化され、この場合、流体中の酸素は、約8ppmから約15ppmまでの範囲の量だけ存在し、この場合、本明細書では、ときには、「ソラス」とも称される。
特定のいくつかの態様において、界面動電的に改変された水性流体は、溶媒和電子(例えば、分子酸素によって安定化されている)および界面動電的に修飾され、そして/または荷電された酸素種のうちの少なくとも一方を含み、いくつかの実施形態において、溶媒和電子および/または界面動電的に修飾されるか、または荷電された酸素種は、少なくとも0.01ppm、少なくとも0.1ppm、少なくとも0.5ppm、少なくとも1ppm、少なくとも3ppm、少なくとも5ppm、少なくとも7ppm、少なくとも10ppm、少なくとも15ppm、または少なくとも20ppmの量だけ存在する。
特定のいくつかの態様において、界面動電的に改変された水性流体は、細胞内シグナル伝達の調節を行うのに十分な細胞膜の構造または機能を改変する(例えば、膜結合タンパク質の立体構造、リガンド結合活性、または触媒活性を改変する)のに適しており、特定のいくつかの態様では、膜結合タンパク質は、受容体、膜貫通受容体(例えば、Gタンパク質共役受容体(GPCR)、TSLP受容体、β2アドレナリン受容体、ブラジキニン受容体など)、イオンチャネルタンパク質、細胞内付着タンパク質、細胞接着タンパク質および、インテグリンからなる群から選択される少なくとも1つを含む。いくつかの態様において、結果として生じるGタンパク質共役受容体(GPCR)は、Gタンパク質αサブユニット(例えばGαs、Gαi、Gαq、およびGα12)と相互作用する。
特定のいくつかの態様において、界面動電的に改変された水性流体は、細胞内シグナル伝達を調節するのに適しており、これはカルシウム依存性の細胞メッセージ伝達経路またはシステムの調節(例えば、ホスホリパーゼC活性の調節またはアデニル酸シクラーゼ(AC)活性の調節)を含む。
特定のいくつかの態様では、界面動電的に改変された水性流体は、本明細書の実施例および別の場所で説明されているさまざまな生物活性(例えば、サイトカイン、受容体、酵素、および他のタンパク質の調整ならびに細胞内シグナル伝達経路の調整)によって特徴付けられる。
特定のいくつかの態様では、界面動電的に改変された水性流体は、本明細書の実施例で示されているようにアルブテロールとの相乗効果およびブデソニドとの相乗効果を示す。
特定のいくつかの態様では、界面動電的に改変された水性流体は、本明細書の実施例で示されているように気管支上皮細胞(BEC)内のDEP誘導TSLP受容体発現を低減する。
特定のいくつかの態様では、界面動電的に改変された水性流体は、本明細書の実施例で示されているように気管支上皮細胞(BEC)内のDEP誘導細胞表面結合MMP9レベルを阻害する。
特定のいくつかの態様では、界面動電的に改変された水性流体の生物学的効果は、ジフテリア毒素によって阻害され、これは、β遮断薬、GPCR遮断薬、およびCaチャネル遮断薬が、本明細書の実施例に示されているように、界面動電的に改変された水性流体の活性に(例えば、制御性T細胞機能に対して)影響を及ぼすことを示している。
特定のいくつかの態様では、界面動電的に改変された水性流体の物理的および生物学的効果(例えば、細胞内シグナル伝達の調節を行うのに十分な細胞膜の構造または機能を改変する能力)は、閉じられた容器(例えば、閉じられた気密容器)内で、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、またはそれを超える期間にわたって持続する。
殺菌活性
本明細書で説明されているいくつかの実施形態は、細菌細胞数の低減、細菌細胞タンパク質産生(毒素産生など)の低減、および/または細菌細胞生存率の低減、さらには他のものの低減などの殺菌活性に関する。
本明細書で説明されているいくつかの実施形態では、説明されている組成物または方法は、細菌イオンチャネル活性を変性するか、または妨げることに関する。いくつかの実施形態では、説明されている組成物または方法は、細菌膜電位を変化させるか、または妨げることに関する。
水性細孔および依存性イオンチャネルは、細菌細胞膜に変化を起こさせることができる。膜にかかっている電圧の変化(電圧依存性チャネル)、機械的応力の変化(機械刺激依存性チャネル)、またはリガンドの結合の変化(リガンド依存性チャネル)を含む、イオンチャネルを開かせることが公知である数種類の刺激がある。
膜電位は、膜の一方の面では陽イオンが陰イオンよりわずかに過剰であり、他方の面では陽イオンがわずかに不足しているせいで、膜の両面の電荷に差が生じたときに発生する。このような電荷の差は、起電性ポンプ機能、またはイオンの受動拡散の結果として生じうる。
本発明のガス富化流体および溶液
流体を他の流体で拡散または富化すると、これら2つの流体の溶液または懸濁液が生じうる。特に、液体をガス(例えば、酸素)で富化すると、治療上の処置を含む、いくつかの用途に対して有益な場合がある。本明細書で使用されているように、「流体」は、一般的に、液体、ガス、蒸気、液体および/またはガスの混合物、あるいはそれらの任意の組合せを、特定の開示されている任意の実施形態について、指すものとしてよい。さらに、いくつかの実施形態では、「液体」は、一般的に、純粋な液体を指すか、またはゲル、ゾル、乳濁液、流体、コロイド、分散液、または混合物、さらにはそれらの任意の組合せを指すものとしてよく、これらはどれも粘性が異なっていてもよい。
明細書で開示されている特定のいくつかの実施形態において、溶存ガスは周囲空気を含む。好ましい一実施形態では、溶存ガスは酸素を含む。他の実施形態では、溶存ガスは一酸化窒素を含む。
ガスを富化する液体(酸素を富化する水をなど)に関するいくつかの方法が当技術分野で認められている。例えば、タービン曝気システムが、空気または酸素を水と混合する、インペラ−の一組の回転ブレードの近くで空気を放出することができるか、または水を空気中に噴霧してその酸素含有量を高めることができる。それに加えて、市場に出回っている他のシステムでは、空気または酸素を水中に注入し、その水/ガスに大規模な渦を作用させる。自然に存在する水中の酸素レベルは、典型的には、10ppm(ppm:100万分の1)以下であり、それが100%レベルの溶存酸素とみなされる。いくつかのデバイス上での試験の結果から、理想的な条件の下で、デバイスは約20ppmより以上、または水の自然な酸素レベルの2倍を達成しうることが判明している。いくつかの実施態様では、酸素レベルは、さらに高くてもよい。
本明細書で提示されている特定の実施形態は、本明細書で定義されているようなディフューザ処理された治療流体に関するものであり、これは、流体母体物質(fluid host material)と、母体物質中に拡散される注入物質と、適宜、母体物質中に分散された少なくとも1つの治療薬とを含み、注入物質は、母体流体中で酸素の微小気泡(microbubble)を含み、微小気泡の大半は、0.2ミクロン未満、または好ましくは0.1ミクロン未満のサイズである。いくつかの実施形態では、注入された流体母体物質中の溶存酸素濃度は、少なくとも13時間にわたって大気圧下で約30ppm超に維持されうる。他の特定の実施形態では、注入された流体母体物質中の溶存酸素濃度は、少なくとも3時間にわたって大気圧下で40ppm超に維持されうる。
追加の実施形態では、注入された流体母体物質は、食塩液をさらに含む。さらなる実施形態では、注入された流体母体物質は、大気圧下で封止された容器内に少なくとも100日間、好ましくは少なくとも365日間の期間、少なくとも約20ppmから約40ppmまでの溶存酸素濃度を維持する。いくつかの実施形態において、注入された流体母体物質は、大気圧下で少なくとも50ppmの溶存酸素濃度を有するものとしてよい。
いくつかの実施形態において、注入された流体母体物質は、酸素がその中に拡散された後選択された期間にわたって中に照射されるレーザー光線に対しレイリー散乱を呈示する。
表Aは、酸素富化食塩液で処置された治癒創傷および本発明のガス富化酸素富化食塩液の試料においてなされたさまざまな分圧測定の結果をまとめたものである。
気泡サイズ測定
混合装置100によって流体内に拡散されたガスの気泡のサイズを決定するために実験を行った。気泡のサイズを直接測定する実験は実施されなかったが、流体内の気泡の大半の気泡サイズが0.1ミクロン未満であることを確定する実験が実施された。言い換えると、これらの実験では、気泡の大半のサイズが包まれるサイズ閾値以下を決定したということである。
このサイズ閾値またはサイズ限界は、混合装置100内の流体およびガスを処理することによって形成された産出物質102を0.22ミクロンのフィルターと0.1ミクロンのフィルターに通すことによって確定された。これらの試験を実施する際に、一定体積の第1の物質110、この場合には流体と一定体積の第2の物質120、この場合にはガスを混合装置100に通して、一定体積の産出物質102(つまり、中にガスを拡散させた流体)を生成した。産出物質102を60ミリリットル分だけ60ml注射器内に流し込んだ。次いで、注射器内の流体のDO濃度を、Orion 862aを使用して測定した。Orion 862aは、流体内のDO濃度を測定することができる。注射器内の流体を0.22ミクロンのフィルターに通して50mlのビーカー内に注入した。フィルターとしては、Millipor Millex GP50フィルターを含んだ。次いで、50mlのビーカー内の物質のDO濃度を測定した。実験を3回実行して、以下の表IIに示す結果を得た。
これからわかるように、注射器内で測定されたDO濃度と50mlのビーカー内で測定されたDO濃度は、産出物質102を0.22ミクロンのフィルターに通しても劇的に変化することはなかった。この実験が意味するのは、産出物質102内の溶存ガスの気泡は、0.22ミクロン以下であり、さもなければ、0.22ミクロンのフィルターに通された産出物質102内のDO濃度が著しく大きく減少するということである。
0.1ミクロンのフィルターを0.22ミクロンのフィルターの代わりに使用した第2の試験を実行した。この実験では、混合装置100内で酸素により食塩液を処理し、産出物質102の試料を濾過されていない状態で採集した。濾過されていない試料のDO濃度は44.7ppmであった。0.1ミクロンのフィルターを使用して産出物質102を濾過し、さらに2つの試料を採集した。第1の試料のDO濃度は43.4ppmであった。第2の試料のDO濃度は41.4ppmであった。次いで、フィルターを取り外し、濾過されていない産出物質102から最終試料を採取した。最終試料は、45.4ppmのDO濃度を有していた。これらの結果は、Millipore 0.2ミクロンフィルターを使用して観察された結果と一致していた。これらの結果から、0.1ミクロンのフィルターに通された産出物質102のDO濃度の自明な減少があり、処理された食塩液中の気泡の大半が0.1ミクロン以下のサイズを有していることを示すという結論が導かれる。上述のDO濃度試験結果は、Winkler Titrationを使用して得られた。
当技術分野において理解されているように、二重層(界面)(DL)は、物体が液体中に入れられたときに物体の表面に出現する。例えば、この物体は、固体表面(例えば、ローターおよびステータの表面)、固体粒子、気泡、液滴、多孔質体のものであってもよい。混合装置100では、気泡表面は、界面動電的二重層効果に利用できる場合のある混合チャンバー内に存在する全表面積のかなりの部分を占める。したがって、本明細書の別のところで説明されている表面積および保持時間の局面に加えて、従来技術のデバイス10と比べた混合装置100内に生じる相対的に小さな気泡サイズは、少なくともある程度は、本明細書で開示されている全界面動電的効果および産出流体特性にも寄与しうる。特に、混合装置100によって示されているような、好ましいいくつかの実施形態では、ガスのすべてが、ローターの開口を介して導入される(ステータの開口を通してガスが導入されることはない)。ローターは、高速(例えば、3,400rpm)回転し、ローター表面に、またローター表面の近くに実質的剪断力を発生するので、回転するローター表面開口を介して、また回転するローター表面開口に隣接して導入される気泡の気泡サイズは、静止しているステータを介して、また静止しているステータの近くに導入されるものより実質的に小さい(例えば、2乃至3倍小さい)と予想される。したがって、従来技術のデバイス10の平均気泡サイズは、ガスの少なくとも半分が静止ステータ開口から混合チャンバー内に導入されるので、実質的により大きくなる場合がある。球体表面の表面積は、r2に比例して変わるので、混合装置100の界面動電的表面積のそのような気泡成分は、従来技術の拡散デバイス10に比べて実質的に大きい場合がある。
本発明の過程によって本発明の組成物に付与される水和(溶媒和)電子を含む組成物
本明細書で説明されているようないくつかの実施形態では(「二重層」の下を参照)、ガス富化流体は、分子酸素が流体中に拡散または混合され、流体に付与される電荷(例えば、水和(溶媒和)電子)を安定化する動作をしうる開示されている電気機械的過程によって生成される。理論または機序に束縛されることなく、本発明のいくつかの実施形態は、第1の物質が組み合わされた産出物質を供給するように本発明の混合装置内で酸素と混合されるときに物質に加えられる電荷(例えば、水和(溶媒和)電子)を含む酸素富化流体(産出物質)に関係する。特定の態様によれば、これらの水和(溶媒和)電子(代わりに本明細書では「溶媒和電子」とも称される)は、これらの水和(溶媒和)電子によって媒介されるアッセイ可能な効果の持続により明らかなように本発明の溶液中で安定化される。いくつかの実施形態は、水和(溶媒和)電子および/または水−電子構造、クラスタなどに関係するものとすることもできる(例えば、LeeおよびLee、Bull. Kor. Chem. Soc.2003年、24巻、6号、802〜804頁、2003年を参照のこと)。
西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)効果。西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)は、西洋わさびの根(Amoracia rusticana)から単離され、ペルオキシダーゼのフェロプロトポルフィリン基(ヘム基)に属す。HRPは、過酸化水素または他の水素供与体と容易に結合して、ピロガロール基質を酸化する。それに加えて、当技術分野で認識されているように、HRPは、過酸化水素の不在下で、インドール−3−酢酸の自己酸化的分解反応を促進する(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれている、自己酸化が高効率分岐鎖機序を伴うことを説明している、Heme Peroxidases、H. Brian Dunford、Wiley−VCH、1999年、第6章、112〜123頁を参照のこと。)。HRP反応は、酵素活性単位で測定することができ、その際に、比活性はピロガロール単位で表される。1ピロガロール単位は、20℃で、pH6.0において20秒以内にピロガロールからプルプロガリン1.0mgを形成する。このプルプロガリン(20秒)単位は、25℃で1分当たり約18μM単位に相当する。
西洋わさびペルオキシダーゼ酵素が、流体中の分子酸素との反応を促進することによってピロガロールの自己酸化を触媒することは公知である。(Khajehpourら、PROTEINS: Struct、Funct、Genet.53巻:656〜666頁(2003年))。また、酸素は西洋わさびペルオキシダーゼ酵素のヘムポケットに酵素の疎水性細孔領域を通じて結合することも知られており(Phe68とPhe142との間)、その立体構造がその内部への酸素の接近可能性を決定するようである。特定の態様によれば、また機序に束縛されることなく、タンパク質の技術においてタンパク質上の表面電荷がタンパク質構造に影響を及ぼすことが公知なので、本発明のガス富化流体中に存在する溶媒和電子は西洋わさびペルオキシダーゼの立体構造を変える働きをし、その結果より大きな酸素接近可能性が得られ得る。すると、西洋わさびペルオキシダーゼ酵素の補欠分子族ヘムポケットへの酸素の接近可能性が高いため、従来技術の含酸素化流体(圧力ポット、微小気泡を有する)と比較して、HRP反応性を高くすることができる。
いかなる場合も、特定の態様によれば、本発明の方法およびデバイスを使用する産出物質の生産は、電荷勾配をもたらす界面二重層と、摩擦電気効果によって表面から電荷(例えば、電子)を引き離すその表面に関係する物質の移動を伴う過程を含み、物質のこの流れによって、溶媒和電子の流れが生じる。さらに、追加の態様によれば、また機序に束縛されることなく、二原子酸素の軌道構造によって、流体物質(水)中の水素結合配置内に結合電荷不均衡(例えば、水の水素結合に影響を及ぼす2個の不対電子)が生じ、そこで、電子は溶媒和され、不均衡の中で安定化する。
過酸化水素の存在に関する本発明の酸素富化流体のいくつかの化学的試験を後述のように実施したところ、これらの試験のどれも、陽性でなかった(過酸化水素0.1ppmの感度)。したがって、本出願の発明の酸素富化流体は、過酸化水素を含まないか、0.1ppm未満の過酸化水素を含む。
特定のいくつかの態様によれば、過酸化水素が存在していないにもかかわらず、酸素富化と本発明で請求されているデバイスの二重層効果および構成によって付与される溶媒和電子の本発明の組合せは、西洋わさびペルオキシダーゼの立体構造および/またはヘム基の接近可能性を変える働きをしうる。
グルタチオンペルオキシダーゼの研究
標準アッセイ(シグマ)を使用してグルタチオンペルオキシダーゼとの反応性を調べることによって、過酸化水素が存在するかどうかについて本発明の酸素富化産出流体物質を試験した。簡単に言うと、グルタチオンペルオキシダーゼ酵素カクテルを、脱イオン水と適切な緩衝液中に構成した。酵素カクテルを加えて反転させることによって、水試料を試験した。A340nm、および室温(25℃)において連続分光測光速度測定を行った。試験された試料は、1.脱イオン水(陰性対照)、2.低濃度における本発明の酸素富化流体、3.高濃度における本発明の酸素富化流体、4.過酸化水素(陽性対照)であった。過酸化水素の陽性対照は、強い反応性を示したが、試験された他の流体はどれもグルタチオンと反応しなかった。
ガス富化流体または溶液を生成するためのデバイス
関連する技術の説明
図1は、全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,386,751号から再現された、1つまたは2つの気体物質もしくは液体物質(「注入物質」)を他の気体物質もしくは液体物質(「母体物質」)中に拡散または乳化するための従来技術のデバイス10の部分ブロック図、部分断面図となっている。デバイス10は、ステータ30およびローター12を収納するように構成されているハウジングを備える。ステータ30は、ローター12を取り囲む。チューブ状チャネル32が、ローター12とステータ30との間に画定されている。一般的に円筒形状のローター12は、直径が約7.500インチ、長さが約6.000インチであり、直径に対する長さの比は約0.8となっている。
ローター12は、一般的に両端で閉じられている中空円筒を備える。ローター12の第1および第2の端部のそれぞれとハウジング34の部分との間にギャップが存在する。モーター18によって駆動される回転軸14は、ローター12の第2の端部に結合される。ローター12の第1の端部は、入口16に結合される。第1の注入物質は、入口16を通り、ローター12の内部に入る。第1の注入物質は、ローター12の内部から、ローター12内に形成されている複数の開口部22(opening 22)を通ってチャネル32内に入る。
ステータ30は、その周囲のあちらこちらに形成された開口部22も有する。入口36は第2の注入物質を通し、ステータ30とハウジング34との間の領域35に送る。第2の注入物質が、領域35から出て、開口部22を通ってチャネル32内に入る。
外部ポンプ(図示されていない)を使用して、母体物質が単一の入口37に送り込まれる。母体物質は、単一の入口37を通過し、チャネル32内に入り、そこで、開口部22を通してチャネル32に入る第1および第2の注入物質と出会う。注入物質は、その供給源のところで加圧され、それによって、母体物質が開口部22を通過するのを防ぐことができる。
入口37は、環状入口チャネル32の比較的小さな部分(約5%未満)のみにそって配置され、ローター12の回転の軸に実質的に平行で、チャネル32部分に向かう軸流を母体物質内に付与するように構成され、位置決めされる。
残念なことに、チューブ状チャネル32に入る前に、母体物質は、軸流と異なる蛇行方向(例えば、軸流に実質的に直交する方向)に進行し、ローター12の第1の端部とハウジング34との間に形成されるギャップ内に下り、またギャップの間に入らなければならない(つまり、ローター12の端部とハウジング34との間の入口16に隣接するローターの第1の端部の部分の下へ)。軸方向でない直交する流れ、およびローター12の第1の端部とハウジング34との間のギャップ内の母体物質の存在によって、望ましくない、不要な摩擦が生じる。さらに、母体物質の一部が、ローターの第1の端部とハウジングとの間に生じる渦流の中にトラップされる可能性がある。それに加えて、デバイス10内では、母体物質は、チューブ状チャネル32の環状入口の環のどれかの局面に入るために少なくとも2つの直角を乗り切らなければならない。
単一の出口40が、ハウジング34内に形成されている。組み合わされた母体物質および(単数または複数の)注入物質が、出口40を介してチャネル32から出る。これもまたチューブ状チャネル32の環状出口の限られた部分(約5%未満)のみにそって配置された出口40は、ローター12の回転の軸に実質的に平行であり、これにより組み合わされた物質の軸流をチューブ状チャネル32の環状出口の限られた部分から離れて出口40に入るように付与するか、またはそのようにできる。外部ポンプ42は、出口40を通して出て行く流体を送り出すために使用される。
残念なことに、チャネル32を出る前に、出て行く物質の実質的な部分は、軸流と異なる蛇行方向(例えば、軸流に実質的に直交する方向)に進行し、ローター12の第2の端部とハウジング34との間に形成されるギャップ内に下り、またギャップの間に入らなければならない(つまり、ローター12の端部とハウジング34との間の軸14に隣接するローターの第2の端部の部分の下へ)。上述のように、軸方向でない直交する流れ、およびローター12の端部(この場合には、第2の端部)とハウジング34との間の他のギャップ内の母体物質の存在によって、望ましくない、不要な摩擦がさらに生じる。さらに、母体物質の一部が、ローターの第2の端部とハウジングとの間に生じる渦流の中にトラップされる可能性がある。それに加えて、デバイス10内では、出て行く組み合わされた物質の実質的部分は、チューブ状チャネル32の環状出口から出て出口40内に入るときに少なくとも2つの直角を乗り切らなければならない。
当業者には明らかなように、入口37は、母体物質に軸流のみを伝える。ローター21のみが、母体物質に周流を付与する。さらに、出口40は、出て行く物質に軸流のみを付与するか、供給する。それに加えて、周流速度ベクトルは、物質がチューブ状チャネル32の環状入口37内に入った後にのみその物質に付与され、その後、周流速ベクトルは、物質が出口40に入るときに低下させるか、または除かなければならない。したがって、物質が軸方向でチャネル32を通るときに物質の漸進的周方向加速が行われ、物質がチャネル32から出るときに周方向減速が行われる必要がある。これらの態様は、物質が入口37から出口40へと辿る蛇行経路と併せて、入口37の口と出口40の口との間の実質的差圧(60ガロン/分の流量で26psi)が随伴して生じる経路上に実質的な摩擦および流動抵抗を発生し、とりわけ、これらの要因が相まってシステムの全体的効率を低下させる。
界面動電的酸素富化水性流体および溶液
図2は、混合装置100のコンポーネントの一部と、混合装置100内への、混合装置100内の、および混合装置100から出る物質の流れを示すブロック図である。混合装置100は、2つまたはそれを超える投入物質を組み合わせて、産出物質102を形成し、そこからこれを受け取って保管容器104内に収容することができる。混合装置100では、新規の方法で2つまたはそれを超える投入物質を攪拌して、新規の特性を有する産出物質102を生産する。産出物質102は、複数の投入物質のうちの少なくとも1つの投入物質を他の複数の投入物質(例えば、乳濁液)のうちの少なくとも1つの物質中に懸濁させた懸濁液だけでなく、投入物質の新規の組合せ(例えば、静電的な組合せ)、投入物質間の化学反応から結果として生じる化合物、新規の静電特性を有する組合せ、およびそれらの組合せを含みうる。
投入物質は、第1の物質の供給源112によって供給される第1の物質110、第2の物質の供給源122によって供給される第2の物質120、および適宜、第3の物質の供給源132によって供給される第3の物質130を含むことができる。第1の物質110は、水、食塩液、化学物質懸濁液、極性液体、非極性液体、コロイド懸濁液、細胞増殖培地などの液体などを含みうる。いくつかの実施形態では、第1の物質110は、混合装置100内に再循環された産出物質102を含みうる。第2の物質120は、酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、オゾン、硫黄ガス、亜酸化窒素、一酸化窒素、アルゴン、ヘリウム、臭素、およびこれらの組合せなどのガスなどからなる、または含むものとしてよい。好ましいいくつかの実施形態では、ガスは酸素であるか、または酸素を含む。任意選択の第3の物質130は、液体または気体のいずれかを含むことができる。いくつかの実施形態では、第3の物質130は、混合装置100内に(例えば、ポンプ210、220、または230のうちの1つまたは複数のポンプに、および/またはチャンバー310、および/または330内に)再循環された産出物質102であるか、そのような産出物質102を含むことができる。
適宜、第1の物質110、第2の物質120、および任意選択の第3の物質130を外部ポンプ210、外部ポンプ220、および外部ポンプ230によってそれぞれ混合装置100内に送り込むことができる。その代わりに、第1の物質110、第2の物質120、および任意選択の第3の物質130のうちの1つまたは複数の物質を圧力がかかっている状態で供給源112、供給源122、および供給源132内にそれぞれ保管することができ、圧力によって混合装置110内に強制的に送り込むことができる。本発明は、第1の物質110、第2の物質120、および適宜、第3の物質130をそれぞれ供給源112、供給源122、および供給源132から混合装置100内に移すために使用される方法によって制限されない。
混合装置100は、混合チャンバー330の傍らにある第1のチャンバー310および第2のチャンバー320を備える。これら3つのチャンバー310、320、および330は、相互接続され、連続する容積を形成する。
第1の物質110は、第1のチャンバー310内に移動され、そこから混合チャンバー330内に流れ込む。第1のチャンバー310内の第1の物質110は、内部ポンプ410によって第1のチャンバー310内に送り込むことができる。第2の物質120は、混合チャンバー330内に移動される。適宜、第3の物質130が、混合チャンバー330内に移動されうる。混合チャンバー330内の物質が中で混合されて、産出物質102を形成する。次いで、産出物質102は、第2のチャンバー320内に流れ込み、そこから産出物質102は混合装置100を出る。混合チャンバー330内の産出物質102は、内部ポンプ420によって第2のチャンバー320内に送り込むことができる。適宜、第2のチャンバー320内の産出物質102は、外部ポンプ430によってそこから保管容器104内に送り込むことができる(例えば、単独で、または内部ポンプ410および/または420と組み合わせて)。
特定の態様において、共通駆動軸500は、内部ポンプ410と内部ポンプ420の両方に動力を伝える。駆動軸500は、混合チャンバー330内を通り、第1の物質110、第2の物質120、および適宜、第3の物質130を一緒に混ぜ合わせるために使用される回転力をその混合チャンバー330内に与える。駆動軸500は、それに結合されているモーター510を動力源とする。
図3は、第1の物質110を混合装置100に供給し、混合装置100から産出物質102を取り出すためのシステム512を示している。システム512では、産出物質102の保管容器104および第1の物質110の供給源112は、組み合わされている。外部ポンプ210は、ホース、パイプなどのような流体導管514によって組み合わされた保管容器104と供給源112に結合されている。外部ポンプ210は、組み合わされた第1の物質110と産出物質102とを組み合わされた保管容器104と供給源112とから流体導管514を通して、外部ポンプ210を混合装置100に接続する流体導管516内に送り込む。産出物質102は、流体導管518を通って混合装置100を出る。流体導管518は、組み合わされた保管容器104と供給源112に結合され、混合装置100から出る産出物質102を、組み合わされた保管容器104と供給源112に輸送する。流体導管518は、混合装置100内で動作圧または背圧を確定する弁519を備える。
図2、4〜9、および11を参照すると、混合装置100の一実施形態のさまざまなコンポーネントのより詳細な説明が示されている。混合装置100は、拡張性を有する。したがって、さまざまなコンポーネントに関して与えられる寸法は、デバイスの一実施形態を構成するために使用されるか、または選択されたサイズを有する混合装置を構成するようにスケーリングできる。
図4を参照すると、混合装置100は、第1のチャンバー310、混合チャンバー330、および第2のチャンバー320のそれぞれを収納するハウジング520を備えている。上述のように、混合装置100は、デバイスの動作時に回転する、駆動軸500を備える。したがって、混合装置100が振動または他の何らかの移動を生じることがある。適宜、混合装置100を床などの表面に固定できる基部106に結合し、混合装置100を実質的に静止する位置に維持することができる。
2つまたはそれを超えるハウジングセクションからハウジング520を組み立てることができる。例えば、ハウジング520は、第1のメカニカルシールハウジング524と第2のメカニカルシールハウジング526により隣接された中央セクション522を備え得る。中央セクション522の反対側で第1のメカニカルシールハウジング524にベアリングハウジング530が結合されうる。中央セクション522の反対側で第2のメカニカルシールハウジング526にベアリングハウジング532が結合されうる。適宜、ハウジングセクション550がベアリングハウジング530に結合されうる。
ベアリングハウジング530および532のそれぞれは、ベアリングアセンブリ540を収納できる(図5および6を参照のこと)。ベアリングアセンブリ540は、ウェブサイトwww.skf.comを運用している、ペンシルバニア州カルプスビル所在のSKF USA Incによって製造されているモデル番号「202SZZST」を含む当技術分野で公知の好適な任意のベアリングアセンブリを備えることができる。
シールは、隣接するハウジングセクションの間に設けることができる。例えば、Oリング560(図5を参照のこと)は、ハウジングセクション550とベアリングハウジング530との間に配設され、Oリング562(図5を参照のこと)は、第1のメカニカルシールハウジング524と中央セクション522との間に配設され、Oリング564(図6を参照のこと)は、第2のメカニカルシールハウジング526と中央セクション522との間に配設されうる。
混合チャンバー330
次に図7を参照すると、混合チャンバー330が、第1のメカニカルシールハウジング524と第2のメカニカルシールハウジング526との間のハウジング520の中央セクション522内に配設されている。混合チャンバー330は、混合装置100の2つのコンポーネントであるローター600とステータ700との間に形成される。ローター600は、一般的に中空の内側部分610を画定する内側表面605と外側表面606とを備える側壁604を有することができる。側壁604は、約0.20インチから約0.75インチまでの厚さを有するものとしてよい。いくつかの実施態様では、側壁604は、約0.25インチの厚さを有する。しかし、混合装置100は、特定の用途に合わせてスケーリングできるので、規定されている値より厚いまたは薄い側壁604を有するデバイスの実施形態は、本発明の教示の範囲内にある。側壁604は、第1の端部分612と第2の端部分614、および第1の端部分612と第2の端部分614との間に形成された複数のスルーホール608を備える。適宜、側壁604の外側表面606は、開口、突出部、きめ(texture)、などの他の特徴を備えることができる。第1の端部分612は、カラー618(collar 618)を受け入れるように構成されたリリーフ部分(relieved portion)616を有し、第2の端部分614は、カラー622を受け入れるように構成されたリリーフ部分620を有する。
ローター600は、ステータ700の内側に配設される。ステータ700は、ローター600が中に配設される一般的に中空の内側部分710を画定する内側表面705を備える側壁704を有する。側壁704は、約0.1インチから約0.3インチまでの厚さを有するものとしてよい。いくつかの実施態様では、側壁604は、約1.5インチの厚さを有する。ステータ700は、実質的に静止している位置でハウジング520に回転できないように結合することができる。その代わりに、ステータ700は、ハウジング520と一体形成できる。側壁704は、第1の端部分712と第2の端部分714とを有する。適宜、複数の開口708(aperture 708)が、第1の端部分712と第2の端部分714との間でステータ700の側壁704内に形成される。適宜、側壁704の内側表面705は、スルーホール、突出部、きめ、などの他の特徴を備えることができる。
ローター600は、図9の矢印「C3」によって示される方向に回転の軸「α」を中心として静止しているステータ700に関して回転する。ローター600とステータ700のそれぞれは、一般的に円筒形状をとり、縦軸を有するものとしてよい。ローター600は、外径「D1」を有し、ステータ700は、内径「D2」を有することができる。外径「D1」は、約0.5インチから約24インチまでの範囲内であるものとしてよい。いくつかの実施態様では、外径「D1」は、約3.04インチである。いくつかの実施態様では、外径「D1」は、約1.7インチである。外径「D1」より大きい、内径「D2」は、例えば、約0.56インチから約24.25インチまでの範囲内であるものとしてよい。いくつかの実施態様では、内径「D2」は、約4インチである。したがって、混合チャンバー330は、厚さが約0.02インチから約0.125インチまでの範囲内であるリング形の断面形状(つまり、内径「D2」と外径「D1」との差)を有することができる。特定のいくつかの実施態様では、混合チャンバー330は、約0.025インチの厚さを有する。従来技術のデバイス10(図1を参照のこと)のローター12とステータ34との間のチャネル32は、厚さが約0.09インチであるリング形の断面形状を有する。したがって、特定のいくつかの実施形態では、混合チャンバー330の厚さは、従来技術のデバイス10のチャネル32の少なくとも約1/3未満である。
ローター600の縦軸を回転の軸「α」に揃えることができる。ローター600の縦軸をステータ700の縦軸に揃えることができる。ローター600は、回転の軸「α」にそって約3インチから約6インチの長さを有することができる。いくつかの実施形態では、ローター600は、回転の軸「α」にそって約5インチの長さを有することができる。ステータ700は、回転の軸「α」にそって約3インチから約6インチの長さを有することができる。いくつかの実施形態では、ステータ700は、回転の軸「α」にそって約5インチの長さを有することができる。
ローター600およびステータ700は、一般的に円筒形状を有するものとして示されているが、当業者であれば、代替形状も使用できることを理解するであろう。例えば、ローター600およびステータ700は、円錐、球体、任意の形状などとすることもできる。さらに、ローター600およびステータ700は、同一形状である必要もない。例えば、ローター600を円筒形状とし、ステータ700を長方形の形状とし、またその逆の形状にすることも可能である。
ステータ700の開口708および図4〜7に示されているスルーホール608は、一般的に円筒形状である。スルーホール608の直径は、約0.1インチから約0.625インチまでの範囲内であるものとしてよい。開口708の直径は、約0.1インチから約0.625インチまでの範囲内であるものとしてよい。ステータ700のいくつかの開口708のうちの1つまたは複数の開口は、他の開口708の直径と異なる直径を有することができる。例えば、開口708は、ステータ700の第1の端部分712からステータ700の第2の端部分714へ進むにつれ直径が増大するか、開口708は、ステータ700の第1の端部分712からステータ700の第2の端部分714へ進むにつれ直径が減少するか、または開口708の直径は、ステータ700にそって別の様式で変化するものとしてよい。ローター600のいくつかのスルーホール608のうちの1つまたは複数のスルーホールは、他のスルーホール608の直径と異なる直径を有することができる。例えば、スルーホール608は、ローター600の第1の端部分612からローター600の第2の端部分614へ進むにつれ直径が増大するか、スルーホール608は、ローター600の第1の端部分612からローター600の第2の端部分614へ進むにつれ直径が減少するか、またはスルーホール608の直径は、ローター600にそって別の様式で変化するものとしてよい。
代替実施形態を参照しつつ以下で説明されているように、開口708およびスルーホール608は、一般的な円筒形状と異なる形状を有していてもよく、またそのような実施形態は、本発明の範囲内にある。例えば、スルーホール608は、狭い部分、アーチ形部分、先細部分(tapered portion)などの形状をとることができる。図7を参照すると、スルーホール608のそれぞれは、外側部分608A、狭い部分608B、および外側部分608Aと狭い部分608Bとの間で移動できるように先細部分608Cを備えている。同様に、開口708は、狭い部分、アーチ形部分、先細部分などを含むことができる。
図8は、ステータ700の開口708およびローター600のスルーホール608の好適な配置構成の限定しない例を示している。ステータ700の開口708は、回転の軸「α」に実質的に直交する、実質的に平行な横方向の列「SLAT−1」から「SLAT−6」で配置されうる。ステータ700の開口708は、回転の軸「α」と実質的に平行である、実質的に平行な縦方向の列「SLONG−1」から「SLONG−7」でも配置されうる。言い換えると、ステータ700の開口708は、回転の軸「α」と実質的に平行な縦方向の列「SLONG−1」から「SLONG−7」を有する直交する列(つまり、横方向の列は縦方向の列に直交する)の格子状パターンで配置されうる。
ステータ700の開口708と同様に、ローター600のスルーホール608は、回転の軸「α」に実質的に直交する、実質的に平行な横方向の列「RLAT−1」から「RLAT−6」で配置されうる。しかし、直交する列の格子状パターンで配置する代わりに、ローター600のスルーホール608は、らせん状経路にそって縦方向に延在する実質的に平行な列「RLONG−1」から「RLONG−7」でも配置されうる。その代わりに、ローター600のスルーホール608は、回転の軸「α」と平行である角度以外の角度で、縦方向に延在する実質的に平行な列「RLONG−1」から「RLONG−7」でも配置されうる。
ステータ700の開口708およびローター600のスルーホール608は、ローター600がステータ700の内側に配設されたときに、横方向の列「SLAT−1」から「SLAT−6」は、それぞれ、横方向の列「RLAT−1」から「RLAT−6」と少なくとも部分的に揃うように構成されうる。このような様式で、ローター600がステータ700の内側で回転すると、スルーホール608は、開口708を通り過ぎる。
横方向の列「RLAT−1」から「RLAT−6」のそれぞれにおけるスルーホール608は、横方向の列内のスルーホール608のすべてが、同時にステータ700の横方向の列「SLAT−1」から「SLAT−6」のうちの対応する1つにおける開口708と少なくとも部分的に揃うように横方向に相隔てて並べることができる。縦方向に延在する列「RLONG−1」から「RLONG−6」は、最後の横方向の列「RLAT−6」におけるスルーホール608がステータ700の対応する最後の横方向の列「SLAT−6」の開口708と部分的に揃い始める前に縦方向に延在する列のそれぞれにおける第1の横方向の列「RLAT−1」におけるスルーホール608が対応する横方向の列「SLAT−1」の開口708を完全に通り過ぎるように構成されうる。
図8では、6つの横方向の列と6つの縦方向に延在する列が、ローター600に関して示されており、また6つの横方向の列と7つの縦方向に延在する列が、ステータ700に関して示されているが、当業者には、他の数の横方向の列および/または縦方向の列を、本発明の教示から逸脱することなく、ローター600および/またはステータ700に関して使用することができることは明らかである。
どの時点においても、対応する横方向の列の間の一対の開口部のみが一致することを保証するために、ステータ700上の横方向の列「SLAT−1」から「SLAT−6」のそれぞれにおける開口708の個数は、ローター600上の対応する横方向の列「RLAT−1」から「RLAT−6」のそれぞれにおけるスルーホール608の個数である所定の数(例えば、1、2など)だけ異なっていてもよい。したがって、例えば、横方向の列「RLAT−1」がローター600の周上に均等間隔で並ぶ20個のスルーホール608を有する場合、横方向の列「SLAT−1」は、ステータ700の周上に均等間隔で並ぶ20個の開口708を有することができる。
図7を参照すると、混合チャンバー330は、開いている第1の端部分332および開いている第2の端部分334を有している。ローター600の側壁604内に形成されたスルーホール608は、ローター600の内側部分610を混合チャンバー330と接続させる。
ローター600は、ローター600の回転の軸「α」に揃えられた駆動軸500によってステータ700の内側で回転される。駆動軸500は、ローター600の第1の端部分612および第2の端部分614に結合され、その中空の内側部分610を貫通しうる。言い換えると、駆動軸500の部分720は、ローター600の中空の内側部分610内に配設される。
カラー618は、中空の内側部分610内に配設された駆動軸500の部分721を収容するように構成され、カラー622は、中空の内側部分610内に配設された駆動軸500の部分722を収容するように構成されている。
部分721は、約0.5インチから約2.5インチまでの範囲内であるものとすることができる外径「D3」を有する。いくつかの実施態様では、外径「D3」は、約0.625インチである。部分722は、外径「D3」と実質的に類似しているものとしてよい外径「D4」を有するが、これは必要というわけではない。外径「D4」は、約0.375インチから約2.5インチまでの範囲内であるものとしてよい。
ローター600は、カラー618およびカラー622によってそれぞれ駆動軸500の部分721および部分722に対し回転しないように固定できる。例えば、カラー618および622のそれぞれは、リリーフ部分616および620の内側にそれぞれ取り付けることができる。次いで、組み合わせたローター600ならびにカラー618および622を加熱して膨張させることができる。次に、駆動軸500をカラー618および622に挿入して通し、アセンブリを冷ます。カラー618および622は、冷却して収縮すると、駆動軸500の部分722Aおよび722Bの周りをそれぞれ締め付け、ローター600に関して駆動軸500が回転するのを防ぐ十分なきつさで締める。部分721またはリリーフ部分616のいずれかに関して回転しないカラー618は、駆動軸500の回転をローター600の第1の端部分612に移す。部分722またはリリーフ部分620のいずれかに関して回転しないカラー622は、駆動軸500の回転をローター600の第2の端部分614に移す。駆動軸500およびローター600は、一体になって一緒に回転する。
駆動軸500は、第1の端部分724(図5を参照)および第2の端部分726(図6を参照)を有することができる。第1の端部分724は、約0.5インチから約1.75インチまでの範囲の直径「D5」を有することができる。特定のいくつかの実施態様では、直径「D5」は、約1.25インチとしてよい。第2の端部分726は、直径「D5」と実質的に類似するものとしてよい直径「D6」を有することができる。
第2の物質120は、回転する駆動軸500の第1の端部分724と第2の端部分726の一方を通じて混合チャンバー330内に輸送できる。駆動軸500の第1の端部分724および第2の端部分726の他方は、モーター510に結合することができる。図5および6に示されている実施形態では、第2の物質120は、第1の端部分724を通して混合チャンバー330内に輸送され、駆動軸500の第2の端部分726は、モーター510に結合されている。
図5を参照すると、駆動軸500は、第1の端部分724からローター600の内側部分610内に配設されている部分720内に延在する、中に形成されたチャネル728を有することができることがわかる。チャネル728は、第1の端部分724内に形成された開口部730(opening 730)を有する。混合装置100が、動作しているときに、第2の物質120が、開口部730を通してチャネル728内に導入される。
駆動軸500の第1の端部分724内に配置されているチャネル728の部分の内側に、弁732を配設することができる。弁732は、チャネル728を通して中空の内側部分610の内部から第2の物質120が逆流すること、および/または第2の物質120がチャネル728内に順方向に流れることを制限し、または他の何らかの方法で制御することができる。弁732としては、逆止弁を含む当技術分野で公知の任意の弁を挙げることができる。好適な逆止弁としては、ワシントン州ボセルに事務所を置きウェブサイトwww.theleeco.comを運営するThe Lee Company USAが製造する部品番号「CKFA1876205A」自由流れ前方逆止弁が挙げられる。
駆動軸500は、チャネル728をローター600の内側部分610と接続するローター600の内側部分610内に配置される開口740を含みうる。図5には単一の開口740のみが示されているが、チャネル728をローター600の内側部分610と接続するために複数の開口を使用できることは当業者には明らかである。
図2を参照すると、適宜、外部ポンプ220は、第2の物質120を混合装置100内に送り込むことができることがわかる。ポンプ220は、当技術分野で公知の任意の好適なポンプを含みうる。限定しない例により、ポンプ220としては、膜ポンプ、化学ポンプ、蠕動ポンプ、重力送りポンプ(gravity fed pump)、ピストンポンプ、歯車ポンプ、前記のポンプのどれかの組合せなどを含む、当技術分野で公知の任意の好適なポンプが挙げられる。第2の物質120がガスである場合、ガスを加圧し、供給源122からガスを放出することによって駆動軸500の第1の端部分724内に形成される開口部730内に強制的に送り込むことができる。
ポンプ220または供給源122は、弁732によってチャネル728に結合される。チャネル728の内側で輸送された第2の物質120は、チャネル728から出て、開口740を通ってローター600の内側部分610内に入る。第2の物質120は、その後、ローター600の側壁608内に形成されたスルーホール608を通してローター600の内側部分610を出る。
図5を参照すると、混合装置100は、駆動軸500の第1の端部分724に結合されたシールアセンブリ750を備えることができることがわかる。シールアセンブリ750は、ハウジング520内に画定されているチャンバー752内に保持される。チャンバー752は、第2の端部分756からチャンバー上に相隔てて並ぶ第1の端部分754を有する。チャンバー752は、チャンバー752内への到達を提供する投入口758および吐出口759も備える。チャンバー752は、ハウジングセクション550とベアリングハウジング530とによって画定できる。第1の端部分754は、ハウジングセクション550内に形成され、第2の端部分756はベアリングハウジング530に隣接する位置にあるものとしてよい。投入口758は、ベアリングハウジング530内に形成され、吐出口759は、ハウジングセクション550内に形成されうる。
シールアセンブリ750は、ハウジングセクション550およびベアリングハウジング530内のチャンバー752の第1の端部分754内に取り付けられた第1の固定シール760(stationary seal 760)を備える。第1の固定シール760は、駆動軸500の第1の端部分724の部分762の周りに延在する。シールアセンブリ750は、ベアリングハウジング530内のチャンバー752の第2の端部分756内に取り付けられた第2の固定シール766も備える。第2の固定シール766は、駆動軸500の第1の端部分724の部分768の周りに延在する。
シールアセンブリ750は、部分762と部分768との間の駆動軸500の第1の端部分724に回転しないように結合されている回転アセンブリ770を備える。回転アセンブリ770は、それと一緒に一体になって回転する。回転アセンブリ770は、第2のシール774の反対側に第1のシール772を備える。バイアス部材776(例えば、バネ)は、第1のシール772と第2のシール774との間に配置される。バイアス部材776は、第1の固定シール760に対し第1のシール772にバイアスをかけ、第2の固定シール766に対し第2のシール774にバイアスをかける。
冷却潤滑剤をチャンバー752および、回転アセンブリ770の周りに供給する。潤滑剤は、投入口758を通じてチャンバー752内に入り、吐出口759を通じてチャンバー752から出る。潤滑剤を使用することで、ベアリングハウジング530に収納されているベアリングアセンブリ540を円滑にすることができる。チャンバー570は、ベアリングハウジング530とメカニカルシールハウジング524との間に配設されうる。ベアリングハウジング530は、潤滑剤をポンプで注入できるチャンバー570に接続されている第2の投入口759も備えることができる。潤滑剤をチャンバー570内にポンプで送り込むと、ベアリングアセンブリ540を円滑にすることができる。シールアセンブリ750は、ローター600の回転によって引き起こされるデバイスのこの部分の中の摩擦力を、大幅にではないとしても、著しく、低減し、シール770の耐用期間を延ばすことができる。シールは、炭化ケイ素を使用して形成された表面を備えることができる。
図9を参照すると、ローター600が矢印「C1」によって示される方向に回転の軸「α」を中心として回転したときに、ローターによって第2の物質120が混合チャンバー330内に追い出されることがわかる。第2の物質120の追い出される気泡、液滴、粒子などが、ローター600から出て、ローター600による周速度(矢印「C3」によって示される方向の)を付与される。第2の物質120は、ポンプ220(図2を参照)、回転するローター600の遠心力、第1の物質110に関する第2の物質120の浮力、およびそれらの組合せにより混合チャンバー330から強制的に送り出すことができる。
モーター510
図6を参照すると、駆動軸500の第2の端部分726は、結合器900によってモーター510の回転スピンドル780に結合されうることがわかる。スピンドル780は、約0.25インチから約2.5インチまでの範囲の直径「D7」を持つ一般的に円形の断面形状を有するものとしてよい。特定のいくつかの実施態様では、直径「D7」は、約0.25インチから約1.5インチまでとしてよい。図6に示されている実施形態において、駆動軸500の第1の端部分724の直径「D5」は、直径「D7」およびスピンドル780に実質的に等しいが、直径「D5」および直径「D7」の一方が他方より大きい実施形態も、本発明の範囲内にある。
また図4を参照すると、結合器900をカバーまたはシールドすることが望ましい場合のあることがわかる。図4および6に例示されている実施形態では、駆動部ガード910が結合器900をカバーしている。駆動部ガード910は、一対の実質的に直線的な部分915および916により隣接されている湾曲部分914を有する一般的にU字型の形状を持つものとしてよい。駆動部ガード910の実質的に直線的な部分915および916のそれぞれの遠位端は、それぞれ、フランジ918および919を有することができる。駆動部ガード910は、そのフランジ918および919のそれぞれによって基部106にしっかり留めることができる。
モーター510は、支持部材920によって基部106上に支持することができる。支持部材920は、スピンドル780の近くのモーター510に結合することができる。示されている実施形態では、支持部材920は、スピンドル780が通るスルーホールを備える。支持部材920は、1つまたは複数のボルト940で支持部材920をモーター510にボルト締めすることを含む、当技術分野で公知の任意の方法を用いて、モーター510に結合することができる。
結合器900は、スピンドル780から十分な量のトルクを駆動軸500に伝えてステータ700の内部のローター600を回転させるのに適した任意の結合器を備えることができる。図4および6に例示されている実施形態では、結合器900は、ベロー結合器である。ベロー結合器は、スピンドル780および駆動軸500の位置合わせがずれている場合に役立つことがある。さらに、ベロー結合器は、さもなければスピンドル780に変化されて伝えられる駆動軸500上に加えられる軸力を吸収するのに役立つことがある。好適なベロー結合器としては、ウェブサイトwww.ruland.comを運用している、マサチューセッツ州モールバラ所在のRuland Manufacturing Company,Inc.が製造するモデル「BC32−8−8−A」が挙げられる。
モーター510は、約0.1rpm(毎分回転数)から約7200rpmでローター600を回転させることができる。モーター510としては、本発明の教示に従ってステータ700の内側のローター600を回転させるのに適したモーターであればどのようなモーターでもよい。限定しない例により、好適なモーターとしては、230/460ボルトの電圧、毎分3450回転(「rpm」)で動作する、1/2馬力の電気モーターが挙げられる。好適なモーターとして、ウェブサイトwww.leeson.comを運用している、ウィスコンシン州グラフトン所在のLEESON Electric Corporationが製造するモデル「C4T34NC4C」が挙げられる。
第1のチャンバー310
図4および7を参照すると、第1のチャンバー320が、第1のメカニカルシールハウジング524とローター600およびステータ700の第1の端部分612および712のそれぞれの間のハウジング520の中央セクション522の内側に配設されることがわかる。第1のチャンバー310は、円環形状であり、実質的円形の断面形状を有していてよい。第1のチャンバー310および混合チャンバー330は、連続する容積を形成する。駆動軸500の部分1020は、第1のチャンバー310を貫通する。
図4を見ると最もよくわかるように、第1のチャンバー310は、第1の物質110が混合装置100内に入る際に通る投入口1010を有する。第1の物質110は、外部ポンプ210(図2を参照)によって第1のチャンバー310内に送り込むことができる。外部ポンプ210は、第1のチャンバー310に供給するのに十分な速度で第1の物質110を送り込むための当技術分野で公知のポンプとしてよい。
投入口1010は、回転の軸「α」に実質的に直交するように配向させられる。したがって、第1の物質110は、第1のチャンバー310を貫通する駆動軸500の部分1020の接線方向の速度で第1のチャンバー310内に入る。第1のチャンバー310内に入る第1の物質110の流れの接線方向は、矢印「T1」によって識別されている。図4および7に示されている実施形態では、投入口1010は、回転の軸「α」からオフセットされうる。当業者には明らかなように、駆動軸500の回転の方向(図9の矢印「C1」で示されている)は、接線成分を有する。投入口1010は、第1の物質110が第1のチャンバー310内に入り駆動軸500の回転の方向の接線成分と実質的に同じ方向に進行するように位置決めされる。
第1の物質110は、第1のチャンバー310内に入り、駆動軸500の部分1020の周りの第1のチャンバー310の内側によって偏向される。第1のチャンバー310が、実質的に円形の断面形状を有するいくつかの実施形態では、第1のチャンバー310の内側が、駆動軸500の部分1020の周りの実質的に円形の経路(図9の矢印「C2」によって示されている)内で第1の物質110を偏向することができる。このような実施形態では、第1の物質110の接線速度により、第1の物質110は、接線速度によって少なくとも一部は決定される、周速度で回転の軸「α」の周りで進行しうる。
いったん第1のチャンバー310内に入ると、第1の物質110は、第1のチャンバー310から第1のチャンバー310の内側に配置されているポンプ410によって混合チャンバー330内に送られ得る。外部ポンプ210(図2を参照)を備えるいくつかの実施形態では、外部ポンプ210は、ポンプ410が第1のチャンバー310から第1の物質110を送り出す速度と少なくとも同じ速度で第1の物質110を第1のチャンバー310内に送り込むように構成されうる。
第1のチャンバー310は、混合チャンバー330の開いている第1の端部分332とつながっており、第1のチャンバー310の内側の第1の物質110は、混合チャンバー330の開いている第1の端部分332内に自由に流れ込むことができる。このようにして、第1の物質110は、混合チャンバー330と第1のチャンバー310との間でいかなるコーナーまたは曲がり部分(bend)も通り抜けない。示されている実施形態では、第1のチャンバー310は、混合チャンバー330の開いている第1の端部分332全体とつながっている。第1のチャンバー310は、第1の物質110で完全に充填されうる。
ポンプ410は、第1のチャンバー310を貫通する駆動軸500の部分1020によって動力を得る。ポンプ410は、固定ハウジング(つまり、ハウジング520)によって画定されたチャンバー(つまり、第1のチャンバー310)の内側に収納される回転ポンプ部材2022を有する当技術分野で公知の任意のポンプを備えることができる。好適なポンプの限定しない例として、プログレッシブキャビティポンプ、一軸ネジポンプ(single screw pump)(例えば、アルキメデスネジポンプ)などのような回転式容積移送式ポンプが挙げられる。
図7および9に示されているポンプ410は、一般的に一軸ネジポンプと称される。この実施形態では、ポンプ部材2022は、駆動軸500の部分1020の周りに配設されたカラー部分2030を備える。カラー部分2030は、駆動軸500の部分1020と一体になって回転する。カラー部分2030は、1つまたは複数の流体変位部材(fluid displacement member)2040を備える。図7および9に示されている実施形態では、カラー部分2030は、らせん状経路にそってカラー部分2030を囲むらせん形状を有する単一の流体変位部材2040を備える。
図9を参照すると、第1のチャンバー310の内側が示されている。ポンプ410は、第1のチャンバー310の内側にある第1の物質110内の軸流(矢印「A1」および矢印「A2」によって示されている)を混合チャンバー330の開いている第1の端部分332に向けて送る。ポンプ410によって与えられる第1の物質110の軸流は、従来技術のデバイス10(図1を参照)の外部ポンプによって得ることができる圧力を超えうる圧力を有する。
ポンプ410は、第1の物質110が混合チャンバー330の開いている第1の端部分332に向かって進行するときに第1の物質110内に周流(矢印「C2」によって示されている)を付与するように構成することもできる。混合チャンバー330内に入る前に第1の物質110に与えられる周流によって、初期周速度で所望の方向にすでに進行している第1の物質110は混合チャンバー330内に入る。図1に示されている従来技術のデバイス10では、第1の物質110は、周速度なしで従来技術のデバイス10のチャネル32内に入った。したがって、従来技術のデバイス10のローター12単独で、周流を第1の物質110に与えなければならなかった。従来技術のデバイス10では、第1の物質110は、軸方向に移動しているため、第1の物質110は、第1の物質110が混合装置100の混合チャンバー330を横断する場合に比べて遅い周速度でローター12とステータ30との間に形成されるチャネル32の少なくとも一部を横断した。言い換えると、第1の物質110の軸流速度(axial velocity)が、従来技術のデバイス10と混合装置100の両方において同じである場合、第1の物質110が混合チャンバー330の軸方向長さ(axial length)を横断する前に完了する回転軸「α」を中心とする回転の数は、チャネル32の軸方向長さを横断する前に完了するであろう回転の数より多いものとしてよい。さらに回転すると、第1の物質110(および組み合わされた第1の物質110および第2の物質120)は、ステータ700の有効内側表面706(図7を参照)の実質的により大きな部分に曝される。
外部ポンプ210(図2を参照)を備えるいくつかの実施形態では、外部ポンプ210によって付与される周速度を本発明の教示に従って向き付けられている投入口1010と併せて用いることだけで、回転軸「α」を中心とする第1の物質110(ならびに組み合わされた第1の物質110および第2の物質120)の回転数を十分上げることができる。さらに、いくつかの実施形態では、ポンプ210によって付与される周速度およびポンプ410によって付与される周速度が合わさって、回転軸「α」を中心とする第1の物質110(ならびに組み合わされた第1の物質110および第2の物質120)の十分な回転数が得られる。当業者であれば理解するように、第1のチャンバー310の断面形状などの他の構造要素が、ポンプ210、ポンプ410、およびこれらの組合せによって付与される周速度に寄与する可能性がある。
図10に示されている代替実施形態では、ポンプ410は、第1の物質110が混合チャンバー330の開いている第1の端部分332に向かって進行するときに第1の物質110内に周流を付与するように構成された1つまたは複数のベーン2042を備えることができる。
第2のチャンバー320
次に図4および7を参照すると、第2のチャンバー320が、第2のメカニカルシールハウジング526とローター600およびステータ700の第2の端部分614および714のそれぞれの間のハウジング520の中央セクション522の内側に配設されている。第2のチャンバー320は、第1のチャンバー310に実質的に類似しているものとしてよい。しかし、投入口1010の代わりに、第2のチャンバー320は、吐出口3010を備えることができる。駆動軸500の部分3020は、第2のチャンバー320を貫通する。
第2のチャンバー320および混合チャンバー330は、連続する容積を形成する。さらに、第1のチャンバー310、混合チャンバー330、および第2のチャンバー320は、連続する容積を形成する。第1の物質110は、第1のチャンバー310から混合装置100を通って混合チャンバー330に流れ、最終的に第2のチャンバー320に到達する。混合チャンバー330内にある間、第1の物質110は、第2の物質120と混合されて、産出物質102を形成する。産出物質102は、吐出口3010を通って混合装置100を出る。適宜、産出物質102を、投入口1010に戻して、第2の物質120、第3の物質130、またはこれらの組合せの追加量と混合することができる。
吐出口3010は、回転の軸「α」に実質的に直交する向きになっており、第1のチャンバー310内に形成されている投入口1010の反対側に配置されうる。産出物質102は、ローター600によって付与される周速度(図9の矢印「C3」によって示される方向の)を有する混合チャンバー330から第2のチャンバー320に入る。周速度は、第2のチャンバー320を貫通する駆動軸500の部分3020の接線方向の速度である。図4、6、および7に示されている実施形態では、吐出口3010は、回転の軸「α」からオフセットされうる。吐出口3010は、第2のチャンバー320に入り駆動軸500が回転しているのと実質的に同じ方向(図9において矢印「C1」で示されている)に進行する産出物質102が、吐出口3010の方へ進行するように位置決めされる。
吐出物質102は、第2のチャンバー320内に入り、駆動軸500の部分3020の周りの第2のチャンバー320の内側によって偏向される。第2のチャンバー320が、実質的に円形の断面形状を有するいくつかの実施形態では、第2のチャンバー320の内側が、駆動軸500の部分3020の周りの実質的に円形の経路内で産出物質102を偏向することができる。
図2を参照すると、適宜、産出物質102は、外部ポンプ430によって第2のチャンバー320の内側から送り出すことができることがわかる。外部ポンプ430は、混合装置100のスループットの制限を回避するのに十分な速度で産出物質102を送り込むための当技術分野で公知の任意のポンプとしてよい。このような一実施形態では、外部ポンプ430が第2のチャンバー320から産出物質102を送り出すときに、外部ポンプ430は、接線速度(図4および11の矢印「T2」によって示される方向の)を産出物質102の少なくとも一部に導入することができる。産出物質102のその部分の接線速度により、産出物質102は、接線速度によって部分的に決定される、周速度で回転の軸「α」の周りで進行しうる。
ポンプ420
図6および7を参照すると、第2のチャンバー320内に配置されているポンプ420は、産出物質102を第2のチャンバー320から吐出口3010内に送り込み、および/または混合チャンバー330から第2のチャンバー320内に送り込むことができることがわかる。外部ポンプ430を備えるいくつかの実施形態では、外部ポンプ430は、ポンプ420が産出物質102を吐出口3010内に送り込む速度と少なくとも同じ速度で産出物質102を第2のチャンバー320から送り出すように構成されうる。
第2のチャンバー320は、混合チャンバー330の開いている第2の端部分334とつながっており、混合チャンバー330の内側の産出物質102は、開いている第2の端部分334から第2のチャンバー320内に自由に流れ込むことができる。このようにして、産出物質102は、混合チャンバー330と第2のチャンバー320との間でいかなるコーナーまたは曲がり部分も通り抜けない。示されている実施形態では、第2のチャンバー320は、混合チャンバー330の開いている第2の端部分334全体とつながっている。第2のチャンバー320は、産出物質102で完全に充填されうる。
ポンプ420は、第2のチャンバー320を貫通する駆動軸500の部分3020によって動力を得る。ポンプ420は、ポンプ410と実質的に同一のポンプであってもよい。ポンプ410として使用するのに適しているものとして上で説明されている任意のポンプをポンプ420として使用することができる。ポンプ410は、第1の物質110を混合チャンバー330内に送り込むが、ポンプ420は、産出物質102を混合チャンバー330から送り出す。したがって、ポンプ410およびポンプ420は両方とも、同じ方向にポンプ動作をするように配向できる。
当業者には理解されるように、第1の物質110は、産出物質102と異なっていてもよい。例えば、第1の物質110および産出物質102の一方は、他方より粘性が高いものとすることができる。したがって、ポンプ410は、ポンプ420と異なるものとしてよい。ポンプ410は、第1の物質110の特性に対応できるように構成され、ポンプ420は、産出物質102の特性に対応できるように構成されうる。
図6および7に示されているポンプ420は、一般的に一軸ネジポンプと称される。この実施形態では、ポンプ部材4022は、駆動軸500の部分3020の周りに配設されたカラー部分4030を備える。カラー部分4030は、駆動軸500の部分3020と一体になって回転する。カラー部分4030は、1つまたは複数の流体変位部材4040を備える。カラー部分4030は、らせん状経路にそってカラー部分4030を囲むらせん形状を有する単一の流体変位部材4040を備える。
図11を参照すると、第2のチャンバー320の内側が示されている。ポンプ420は、混合チャンバー330の開いている第2の端部分334から離れる方向に向け、第2のチャンバー320の内側にある産出物質102内に軸流(矢印「A3」および矢印「A4」によって示されている)を与える。
ポンプ420は、産出物質102が混合チャンバー330の開いている第2の端部分334から離れる方向に進行するときに産出物質102内に周流(矢印「C4」によって示されている)を付与するように構成することができる。産出物質102内に付与される周流は、ローター600が必要とする仕事の量を減らすのに役立ちうる。周流は、また産出物質102を吐出口3010に向けて送る。
代替実施形態において、ポンプ420は、図10に示されているポンプ410の実質的に同じ構成を有するものとすることができる。このような実施形態では、1つまたは複数のベーン2042は、産出物質102が混合チャンバー330の開いている第2の端部分334から離れる方向に進行するときに産出物質102内に周流を付与するように構成されている。
当業者には明らかなように、異なる混合特性が得られるように混合装置100のさまざまなパラメータを修正することができる。修正できる例示的なパラメータとして、スルーホール608のサイズ、スルーホール608の形状、スルーホール608の配置構成、スルーホール608の個数、開口708のサイズ、開口708の形状、開口708の配置構成、開口708の個数、ローター600の形状、ステータ700の形状、混合チャンバ330の幅、混合チャンバ330の長さ、駆動軸500の回転速度、内部ポンプ410によって付与される軸流速度、内部ポンプ410によって付与される周速度、内部ポンプ420によって付与される軸流速度、内部ポンプ420によって付与される周速度、ローター600の外側表面606上に形成される乱れ(disturbance)の構成形状(例えば、きめ、突出部、凹部、開口など)、ステータ700の内側表面706上に形成される乱れの構成形状(例えば、きめ、突出部、凹部、開口など)などが挙げられる。
代替実施形態
図12を参照すると、混合装置5000が示されている。混合装置5000は、混合装置100の一代替実施形態である。同一の参照番号は、本明細書では、混合装置100の実質的に類似の対応するコンポーネントである混合装置5000のコンポーネントを識別するために使用されている。混合装置100のコンポーネントと異なる混合装置5000のコンポーネントのみについて説明する。
混合装置5000は、ローター600およびステータ5700を収納するためのハウジング5500を備える。ステータ5700は、その第1の端部分5712とその第2の第2の端部分5714によってハウジング5500に回転しないように結合することができる。チャンバー5800は、ハウジング5500と、第1の端部分5712および第2の端部分5714により隣接されているステータ5700の部分5820との間に画定される。ハウジング5500は、チャンバー5800内への接近を与える投入口5830を備える。投入口5830は、回転の軸「α」に実質的に直交するように向き付けられうる。しかし、これは必須というわけではない。
ステータ5700は、チャンバー5800および混合チャンバー330(ローター600とステータ5700との間に画定される)を接続する複数のスルーホール5708を備える。外部ポンプ230は、投入口5830を介して第3の物質130(第2の物質120と同一であってもよい)をチャンバー5800内に送り込むために使用できる。チャンバー5800内にポンプで送り込まれた第3の物質130は、ステータ5700内に形成されているスルーホール5708を介して混合チャンバー330内に入ることができる。第3の物質130は、ポンプ230、第1の物質110と比べての第3の物質130の浮力、およびそれらの組合せによりチャネル5800から強制的に送り出すことができる。ローター600は、回転するとともに、第3の物質130をチャネル5800から混合チャンバー330内に引き込むこともできる。第3の物質130は、混合チャンバー330内に、気泡、液滴、粒子などとして入ることができ、これらはローター600によって周速度を付与される。
代替実施形態
混合装置100の代替実施得形態は、図13に示されている中央セクション5900および図14に示されているベアリングハウジング5920を使用して構築することができる。図13は、その内部にステータ700(図7を参照)を有する中央セクション5900を示している。同一の参照番号は、本明細書では、混合装置100の実質的に類似の対応するコンポーネントである中央セクション5900に付随するコンポーネントを識別するために使用されている。中央セクション522のコンポーネントと異なる中央セクション5900のコンポーネントのみについて説明する。中央セクション5900およびステータ700は、両方とも、金属(例えば、ステンレス鋼)などの導電性材料から構築される。投入口1010および吐出口3010は、両方とも、プラスチック(例えば、PET、Teflon、ナイロン、PVC、ポリカーボネート、ABS、Delrin、ポリスルホンなど)の非導電性材料から構築される。
電気接点5910は、中央セクション5900に結合され、そこに送達するように構成されている。中央セクション5900は、電気接点5910に印加される電荷をステータ700に伝える。さらなるいくつかの実施形態では、中央セクション5900は、非導電性材料から構築することができる。このような実施形態では、電気接点5910は、中央セクション5900を通過し、ステータ700に結合されるようにできる。電気接点5910によってステータ700に印加される電荷は、混合チャンバー330の内部の酸化還元反応または他の化学反応を促進するのに役立ちうる。
適宜、中央セクション5900の周りに絶縁(示されていない)を配設し、中央セクション5900を環境から電気的に絶縁することができる。さらに、中央セクション5900と中央セクション5900の傍らにある第1および第2のメカニカルシール524および526との間に絶縁を施して、中央セクション5900を混合装置の他のコンポーネントから電気的に絶縁することができる。
次に図14を参照しつつ、ベアリングハウジング5920について説明する。ベアリングハウジング5920は、駆動軸500の部分726の周上に配設される。電気接点5922は、ベアリングハウジング5920に結合される。回転ブラシ接点5924は、駆動軸500と電気接点5922との間の電気的接続を形成する。
この実施形態では、駆動軸500およびローター600は、両方とも、金属(例えば、ステンレス鋼)などの導電性材料から構築される。ベアリングハウジング5920は、導電性または非導電性材料のいずれかから構築することができる。電荷は、電気接点5922と回転ブラシ接点5924とによって駆動軸500に印加される。電荷は、駆動軸500によってローター600に伝えられる。
図13に示されている中央セクション5900および図14に示されているベアリングハウジング5920を使用して構築される混合装置100の代替実施形態は、少なくとも2つの方法で運転されうる。第1に、電気接点5910および5922は、電荷をステータ700およびローター600にそれぞれ供給することのないように構成されうる。言い換えると、電気接点5910および5922のいずれも、電流源、電圧源などに接続されないということである。
その代わりに、電気接点5910および5922は、電荷をステータ700およびローター600にそれぞれ供給するように構成されうる。例えば、電気接点5910および5922は、電気接点5910および5922の間に定常または一定の電圧を供給するDC電圧源(示されていない)に結合することができる。DC電圧源の負端子は、電気接点5910および5922のいずれかに結合され、DC電圧源の正端子は、電気接点5910および5922の他方に結合することができる。電気接点5910および5922の間に供給される電圧は、約0.0001ボルトから約1000ボルトまでの範囲内とすることができる。特定のいくつかの実施形態では、電圧は、約1.8ボルトから約2.7ボルトまでの範囲内とすることができる。他の例では、約1%から約99%までの範囲内のデューティサイクルを有するパルスDC電圧を使用することができる。
混合装置を動作させる方法の上記の例では、DC電圧を電気接点5910および5922に印加するが、当業者には明らかなように、さまざまな形状および大きさを有する対称的AC電圧または非対称的AC電圧を電気接点5910および5922に印加することができ、そのような実施形態は、本発明の範囲内にある。
混合チャンバー330の内側での混合
上述のように、従来技術のデバイス10(図1に示されている)では、第1の物質110は、チャネル32の開いている第2の端部の部分のみにそって配置されている単一の制限された投入口37を介してローター12とステータ30との間のチャネル32に入った。同様に、産出物質102は、チャネル32の開いている第1の端部の部分のみにそって配置されている単一の制限されている吐出口40を介してチャネル32から出た。この配置構成のせいで、望ましくない、不要な摩擦が生じた。単一の制限されている入口37および単一の制限されている出口40をそれぞれチャンバー310および320で置き換えることによって、摩擦が低減された。さらに、第1の物質110は、混合チャンバー330に入る前にコーナーをうまく通り抜けず、また産出物質102は、混合チャンバー330を出る前にコーナーをうまく通り抜けない。さらに、チャンバー310および320は、チャネル32に入る前、およびチャネル32を出た後に物質の周速度をもたらす。
したがって、混合装置100上の圧力低下は、実質的に低減された。図2、4〜9、および11に示されている実施形態では、投入口1010と吐出口3010との間の圧力低下は、混合装置100が1分当たり約60ガロンの産出物質102を生産するように構成されている場合にのみ約12psiとなる。これは、1分当たり約60ガロンの産出物質を生産するときには、少なくとも26psiであった、図1に示されている従来技術のデバイス10を超える改善となっている。言い換えると、混合装置100上の圧力低下は、従来技術のデバイス10で経験した圧力低下の半分未満である。
追加の態様によれば、駆動軸500による動力を受ける、ポンプ410および420を含めることで、物質を混合する際に実質的に効率が向上し、従来技術で使用されている外部ポンプに比べて少ないエネルギーで済む構成が得られる。
マイクロキャビテーション
混合装置100の動作中、投入物質は、第1の物質110(例えば、流体)および第2の物質120(例えば、ガス)を含むことができる。第1の物質110および第2の物質120は、ローター600とステータ700との間に形成されている混合チャンバー330の内側で混合される。ステータ700の内側のローター600の回転により、混合チャンバー330の内側で第1の物質110および第2の物質120が攪拌される。ローター600内に形成されているスルーホール608および/またはステータ700内に形成されている開口708は、混合チャンバー330の内部の第1の物質110および第2の物質120の流れに乱れをもたらす。
理論に制限されることなく、第2の物質120が第1の物質110内に拡散する効率および持続性は、一部はマイクロキャビテーションによって引き起こされると考えられており、これは、図15〜17に関して説明される。物質が滑らかな表面上を流れると、移動している流体と静止している表面との間に表面張力が生じるため、いくぶん層流となる流れが、静止しているか、または非常にゆっくりと移動している薄い境界層によって確定される。スルーホール608および適宜、開口708は、層流を崩壊させ、第1の物質110の局部圧縮および減圧を引き起こしうる。減圧サイクルの間の圧力が十分に低ければ、空隙(キャビテーションバブル)が物質内に形成される。キャビテーションバブルは、竜巻のような回転する流れパターン5990を発生するが、それは、図15に示されているように、低圧の局部領域が母体物質および注入物質を引き込むからである。キャビテーションバブルが内破すると、その結果、極端に高い圧力が生じる。2つの位置を揃えた開口部(例えば、開口708の1つとスルーホール608の1つ)が互いに通るときに、振盪(衝撃波)が生じ、著しいエネルギーを発生する。キャビテーションと振盪に付随するエネルギーによって、第1の物質110および第2の物質120は極端に高い程度、おそらくは分子レベルで混ぜ合わされる。
ローター600の接線速度および回転毎に互いを通る開口部の数は、混合装置100における周波数を決定することができる。超音波周波数帯域内で混合装置100を動作させることは、多くの用途において有益である場合があると断定されている。超音波帯域の周波数で混合装置100を動作させることで、最大の振盪衝撃エネルギーを発生し、流体分子の結合角度をずらし、これにより、通常であれば保持できない第2の物質120の追加の量を輸送することができると考えられる。混合装置100が、ディフューザとして使用される場合、混合装置100が動作する周波数は、拡散の程度に影響を及ぼし、したがって、第2の物質120(注入物質)が第1の物質110(母体物質)中にかなり長い間残留するように見える。
次に図15を参照すると、ローター600の代替実施形態である、ローター6000が示されている。混合チャンバー330において第1の物質110内に形成されるキャビテーションは、混合チャンバー330の長さにそって異なる周波数で生じるように構成されうる。キャビテーションの周波数は、ローター600の長さにそってスルーホール6608の数および/または配置を変えることによって変更することができる。スルーホール6608のそれぞれは、スルーホール608(上で説明されている)と実質的に類似のものであってもよい。
限定しない例では、ローター6000は、3つの分離している例示的なセクション6100、6200、および6300に細分されうる。スルーホール6608は、セクション6100からセクション6200に進むにつれ密度を増大し、セクション6100内の穴の個数はセクション6200内の穴の個数より多い。スルーホール6608は、セクション6200からセクション6300に進むにつれ密度を増大し、セクション6200内の穴の個数はセクション6300内の穴の個数より多い。セクション6100、6200、および6300のそれぞれは、中に形成されているスルーホール6608の数が異なるため異なる周波数でその特定領域内に振盪を発生する。
所望の数のスルーホール6608を特定の領域内に適切に配置したローター6000を製造することによって、混合チャンバー330内の振盪の所望の周波数を決定することができる。同様に、キャビテーションの所望の周波数は、ステータ700(その中でローター600が回転する)上の特定の領域内に適切に配置されている所望の数の開口708によって決定されうる。さらに、混合チャンバー330内の振盪の所望の(1つまたは複数の)周波数は、ステータ700内に形成された特定の数および配置構成の開口708とローター600内に形成された特定の数および配置構成のスルーホール608の両方を選択することによって達成され得る。
図19〜21は、形成されるキャビテーションに関して異なる結果が得られるように構成されたステータ700内に形成された開口708およびローター600内に形成されたスルーホール608のさまざまな代替配置構成を示している。図16は、開口708およびスルーホール608が、ローター600の回転の軸「α」を通るように引かれた任意の線(例えば、線7010)と平行でない軸7000にそって位置を揃えられる構成を示している。言い換えると、ローター600が、円筒形状を有する場合、軸7000は、ローター600の中心を通らないということである。したがって、混合チャンバー330内の第1の物質110は、開口708およびスルーホール608によってもたらされる圧縮および減圧の方向に対して垂直になるようには配向されていない。圧縮および減圧は、その代わりに、混合チャンバー330内の第1の物質110の周流(図9の矢印「C3」の方向)に平行な成分を少なくとも有する力ベクトルを有する。
開口708およびスルーホール608の相対的位置揃えも、混合チャンバー330内のキャビテーションの発生に影響を及ぼしうる。図17は、開口708が、スルーホール608と混合チャンバー330を通して整合している一実施形態を示している。この実施形態では、ローター600の回転により、ローターのスルーホール608はステータ700の開口708と直接揃う。互いに直接揃えられている場合に、開口708およびスルーホール608によって引き起こされる圧縮および減圧力は、互いに直接揃えられる。
図18に示されている実施形態において、開口708およびスルーホール608は、回転の軸「α」にそってオフセット量「X」だけオフセットされる。限定しない例において、オフセット量「X」は、開口708のサイズの関数として決定することができる。例えば、オフセット量「X」は、開口708の直径の1/2にほぼ等しいものとしてよい。その代わりに、オフセット量「X」は、スルーホール608のサイズの関数として決定することができる。例えば、オフセット量「X」は、スルーホール608の直径の1/2にほぼ等しいものとしてよい。スルーホール608および開口708以外の、またはそれに加えた特徴(例えば、凹部、突出部など)が、ローター600またはステータ700のいずれかに含まれる場合、オフセット量「X」は、そのような特徴のサイズの関数として決定することができる。このようにして、ステータ700の開口708およびローター600のスルーホール608によって発生する圧縮および減圧力は、混合チャンバー330内に追加の回転および捻れの力を引き起こすわずかなオフセットと衝突する。これらの追加の力は、混合チャンバー330内で第2の物質120を第1の物質110内に混ぜる作用(例えば、拡散作用)を高める。
次に図22〜25を参照すると、開口708およびスルーホール608に適した断面形状の限定しない例が示されている。開口708および/またはスルーホール608の断面形状は、図22に示されているような正方形、図23に示されているような円形などとすることができる。
開口708および/またはスルーホール608のさまざまな断面形状を使用して、ステータ700内でローター600が回転するときに第1の物質110の流れを変えることができる。例えば、図24は、幅広部分7022と反対側に細い部分7020を有する涙滴断面形状を示している。スルーホール608が、このような涙滴形状をとる場合、ローター600が回転すると(矢印「F」で一般的に示されている方向に)、混合チャンバー330内の第1の物質110、第2の物質120、および適宜、第3の物質130に加えられる力は、それらの物質が涙滴の幅広部分7022から細くなっている部分7020へ移動するにつれ増大する。
図25に示されているようならせん状構造を持つ開口708および/またはスルーホール608を形成することによって、混合チャンバー330内に追加の回転力を導入することができる。らせん状構造の開口708および/またはスルーホール608流入し流出する物質は、らせん状構造によって引き起こされる回転力を受ける。図22〜25に示されている例は、混合装置100内で使用されうる代替実施形態の限定しない説明図として示されている。当技術分野の技術を応用することにより、開口708および/またはスルーホール608は、混合チャンバー330内で物質を混合するのに適しているさまざまな振盪および攪拌力が得られるようにさまざまな方法で構成することができる。
二重層効果
混合装置100は、界面動電的効果にさらに有利な複雑な混合をもたらす第1の物質110および第2の物質120と複雑な動的乱流との複雑な非線形流体力学的相互作用によって産出物質102を形成するように構成することができる(後述)。これらの界面動電的効果の結果は、産出物質102内で、産出物質内に安定化されている可溶化された電子の形態を含む、電荷再分配および酸化還元反応として観察されうる。
表面基のイオン化または解離および/または液体からのイオン吸着により、液体に接触している大半の固体表面が帯電する。図26を参照すると、電気二重層(「EDL」)7100が、液体7120と接触する例示的表面7110の周りに形成されることがわかる。EDL 7100では、1つの電荷のイオン7122(この場合は、マイナスに帯電したイオン)は、表面7120に吸着し、ステルン層と典型的には称される表面層7124を形成する。表面層7128は、反対の電荷および等しい大きさを持つ対イオン7126(この場合は、プラスに帯電したイオン)を引き付け、拡散層と典型的には称される表面層7124の下に対イオン層7128を形成する。対イオン層7128は、表面層7124に比べて散在性が高く、下のバルク材7130の中で両方のイオンの一様で等しい分布を示す。中性水中のOH−およびH+イオンについて、Gouy−Chapmanモデルでは、拡散対イオン層が水の中に約1ミクロン入り込むことが示唆される。
特定のいくつかの態様によれば、上述の界面動電的効果は、液体7120が荷電表面7110の隣に移動することによって引き起こされる。液体7120(例えば、水、食塩液など)の中で、表面層7124を形成する吸着イオン7122は、液体7120が運動中(例えば、矢印「G」で示される方向に流れている間)であっても表面7120に固定されるが、剪断面7132は、表面7120から相隔てて並ぶ拡散対イオン層7128内に存在する。したがって、液体7120が移動すると、拡散対イオン7126の部分は表面7120から輸送されて離れるが、吸着イオン7122は表面7120に残る。これにより、いわゆる「流動電流」が発生する。
混合チャンバー330内では、第1の物質110、第2の物質120、および適宜、第3の物質130が、ステータ700の内側表面705および/またはローター600の外側表面606によって発生する電磁界、内側表面705と外側表面606との間の電圧、および/または第1の物質110内に形成される少なくとも1つのEDLによって引き起こされる界面動電的効果(例えば、「流動電流」)の作用を受ける。ステータ700の内側表面705およびローター600の外側表面606の少なくとも一方により、少なくとも1つのEDLを第1の物質110内に導入することができる。
表面の乱れ(例えば、スルーホール608および開口708)に関して第1の物質110を移動して混合チャンバー330に通すことで、混合チャンバー330内の第1の物質110にキャビテーションが発生し、これにより、第2の物質120が第1の物質110内に拡散されうる。これらのキャビテーションは、第1の物質110および/または第2の物質120と、ステータ700の内側表面705上に形成される電気二重層および/またはローター600の外側表面606上に形成される電気二重層との接触を高めることができる。混合チャンバーの表面積/体積比が大きいこと、混合チャンバー内の組み合わされた物質の滞留時間が長いこと、さらに、平均気泡サイズが小さい(したがって、気泡表面積が実質的に大きい)ことと相まって、本発明の産出物質にEDL媒介効果が有効に付与される。
内側表面705および外側表面606がステンレス鋼などの金属材料から構築されるいくつかの実施形態において、液体7120の運動および/または(1つまたは複数の)流動電流により、内側表面705および外側表面606においてH2O、OH−、H+、およびO2を伴う酸化還元反応が促進される。
図27を参照すると、理論に制限されることなく、内側表面705と外側表面606との間の混合チャンバー330のセクション7140は、一対の平行なプレート7142および7144としてモデル化されうると考えられる。第1の物質110が液体である場合、第1の物質110は、入口「IN」を通ってセクション7140に入り、出口「OUT」を通ってセクション7140を出る。入口「IN」および出口「OUT」は、セクション7140を出入りする流れを制限する。
図28を参照すると、平行プレート7142と7144との間の領域は、高い表面積/体積比を有している。したがって、対イオン層7128(および対イオン7126)の実質的部分は、第1の物質110がプレート7142と7144との間で移動するときに運動中である場合がある。運動中の対イオン7126の個数は、入口「IN」によってセクション7140に入ることが許される数および出口「OUT」によってセクション7140を出ることが許される数を超えうる。第1の物質110を供給し、セクション7140から取り出す入口「IN」および出口「OUT」は、それぞれ、平行プレート7142および7144に比べてかなり小さな表面積(および低い表面積/体積比)を有し、そのため、セクション7140を出入りする第1の物質110内で運動している対イオン7126の一部が低減される。したがって、セクション7140から出入りがあると、流動電流が局所的に増大する。表面上に第1の物質110を流すことによって引き起こされるバックグラウンドの流動電流(矢印「BSC」で示されている)は、常に、混合装置100内に存在するが、プレート7142および7144は、セクション7140内に増大した「過剰」流動電流(矢印「ESC」によって示されている)をもたらす。
第1の物質110の流れと反対の方向のプレート7142および7144内の導電リターン電流(矢印「RC」で示されている)がなければ、吸着イオン7122と同じ符号を持つ過剰電荷7146は、入口「IN」の近くに蓄積し、対イオン7126と同じ符号を持つ過剰電荷7148は、出口「OUT」の近くに蓄積する。反対極性を持ち、したがって互いに引き付け合う、そのような蓄積電荷7146および7148は、いつまでも溜まることがあり得ないため、蓄積電荷は導電性を介して結合しようとする。プレート7142および7144が完全に電気的に絶縁されている場合、蓄積電荷7146および7148は、第1の物質110それ自体のみの全体に再配置可能である。導電リターン電流(矢印「RC」で示されている)がセクション7140内で過剰流動電流(矢印「ESC」で示されている)に実質的に等しい場合、正味過剰流動電流が0であり、入口「IN」の近くの過剰電荷7146と出口「OUT」の近くの過剰電荷7148との間に電位差がそれらの間に定常状態の電荷分離を形成する、定常状態が得られる。
電荷分離の量、したがって入口「IN」の近くの過剰電荷7146と出口「OUT」の近くの過剰電荷7148との間の電位差は、反対の電界(電荷分離によって発生する)に対し電荷を「プッシュ(push)」し、イオン(つまり、イオン7122および7126)なしで液体によって達成可能な流量に近い液体流量をもたらすポンプ(例えば、ローター600、内部ポンプ410、および/または外部ポンプ210)によって供給される単位電荷当たりの追加エネルギーに依存する。プレート7142および7144が絶縁体である場合、電位差は、ポンプ(例えば、ローター600、内部ポンプ410、および/または外部ポンプ210)が発生することができるEMFの直接的尺度である。この場合、一対のリードを備える電圧計を使用し、リードの一方を入口「IN」の近くの第1の物質110内に置き、他方のリードを出口「OUT」の近くの第1の物質110内に置くことによって、電位差を測定することが可能である。
絶縁プレート7142および7144があると、リターン電流が第1の物質110を通るイオンの導電のみを伴うという点で、リターン電流は純粋にイオン電流(またはイオンの流れ)である。導電性の高い経路を通る他の導電性の機構が、入口「IN」の近くの過剰電荷7146と出口「OUT」の近くの過剰電荷7148との間に存在する場合、リターン電流は、それらの導電性の高い経路を利用することができる。例えば、導電性の金属プレート7142および7144は、導電性の高い経路を提供し得るが、これらの導電性の高い経路は、電子電流のみを伝え、イオン電流を伝えない。
当業者であれば理解するように、イオンによって運ばれる電荷を金属内の1つまたは複数の電子に移すために、またその逆を行うために、1つまたは複数の酸化還元反応が金属の表面に生じて、反応生成物を産生する必要がある。第1の物質110が水(H2O)であり、第2の物質120が酸素(O2)であると仮定すると、負電荷を導電性プレート7142および7144内に注入する、酸化還元反応の限定しない例は、公知の半電池反応
O2 + H2O → O3+2H+ +2e−
を含む。ここでもまた、第1の物質110が水(H2O)であり、第2の物質120が酸素(O2)であると仮定すると、酸化還元反応の限定しない例は、公知の半電池反応、
2H+ +e− → H2
を含む、導電性プレート7142および7144から負電荷を除去する公知の半電池反応を含む。
導電性金属プレート7142および7144では、リターン電流の大半は、電子電流であると考えられるが、それというのも、導電性プレート7142および7144は、第1の物質110より導電性が高いからである(酸化還元反応は、律速因子とならないよう十分に速いとことを前提とする)。導電性金属プレート7142および7144では、入口「IN」と出口「OUT」との間により小さな電荷分離が蓄積し、またそれらの間にかなり小さな電位が存在する。しかし、これは、EMFがより小さいことを意味しない。
上述のように、EMFは、電荷分離によって生じる反対の電界に抗して第1の物質110を流れやすくするためにポンプが供給する単位電荷当たりのエネルギーに関係する。電位は小さいので、ポンプは、より小さな単位電荷当たりエネルギーを供給して、第1の物質110を流すことができる。しかし、上記の例示的な酸化還元反応は、必ずしも自然に生じるものではなく、そのため、仕事を投入する必要がある場合があり、これはポンプで行うことができる。したがって、酸化還元反応を駆動するのに必要なエネルギーを供給するために、EMFの部分(より小さな電位差には反映されない)を使用することができる。
言い換えると、絶縁プレート7142および7144用の電荷分離によって発生する反対の電界を押すようにポンプによってもたらされる同じ差圧は、両方とも、導電性プレート7142および7144を通して電荷を「プッシュ」するためおよび酸化還元反応を駆動するために使用されうる。
図29を参照すると、本発明者らによって実施される実験用の実験装置が用意されている。この実験では、それぞれに一定量の脱イオン水7153を入れた一対の実質的に同一の相隔てて並ぶ500mlの標準三角フラスコ7150および7152を使用した。ゴム栓7154をフラスコ7150および7152のそれぞれの開口端に差し込んだ。ゴム栓7154は3つの経路を備え、それぞれ中空チューブ7156、陽極7158、および陰極7160用であった。フラスコ7150および7152のそれぞれに関して、中空チューブ7156、陽極7158、および陰極7160のそれぞれはすべて、フラスコの外側からのびて、ゴム栓7154を通り、フラスコ内の脱イオン水7153内に入っていた。陽極7158および陰極7160は、ステンレス鋼で構築された。両方のフラスコ7150および7152内の中空チューブ7156は、その開放端部分7162が共通酸素供給源7164に結合されていた。陽極7158および陰極7160は、フラスコ7152内に差し込まれ、そこで、DC電源7168の正端子と負端子にそれぞれ結合されていた。それぞれのフラスコ内では、全く同じスパージャーを使用した。
酸素は、約1SCFHから約1.3SCFHまでの範囲の流量(供給量)(組み合わされた流量)で中空チューブ7156内を流れて、フラスコ7150および7152の両方に流れ込んだ。フラスコ7152内に差し込まれた陽極7158と陰極7160との間に印加される電圧は、約2.55ボルトであった。この値が選択されたのは、それがすべての酸素種に影響を及ぼすのに十分な電気化学的電圧値であると考えられるからである。この電圧は、3から4時間にわたって連続的に印加され、その間に、供給源7164からの酸素がフラスコ7150および7152のそれぞれの中の脱イオン水7153中に泡立てながら注入された。
HRPおよびピロガロールによるフラスコ7150内の脱イオン水7153の試験から、HRP媒介ピロガロール反応活性が得られ、これは本明細書で説明されている代替ローター/ステータ実施形態により生成される流体の特性と一致していた。HRP光学密度は、同等の酸素含有量の圧力ポットまたは細かい気泡を含む溶液と比べ約20%高かった。この実験の結果から、混合チャンバー330の内部での混合は酸化還元反応を伴うことがわかる。特定のいくつかの態様によれば、本発明の混合チャンバーは、本発明の産出溶液内の酸素を豊富に含む水の構造によるか、またはこの過程内の電気的効果により存在するある種の形態の酸素種により安定化された付加電子を含む産出物質を供給する。
それに加えて、オゾンと過酸化水素の両方について、過酸化水素に対しては0.1ppmの感度、オゾンについては0.6ppmの感度を持つ業界標準比色試験アンプルを使用して、両方のフラスコ7150および7152内の脱イオン水7153を試験した。いずれの種もこれらのアンプルの検出限界まで陽性を示すことはなかった。
滞留時間
滞留時間は、第1の物質110、第2の物質120、および適宜、第3の物質130が混合チャンバー330内で費やす時間の長さである。混合チャンバー330の長さの混合チャンバー330の直径に対する比は、滞留時間に著しい影響を及ぼしうる。この比が大きければ大きいほど、滞留時間は長くなる。「背景技術」の節で述べたように、従来技術のデバイス10(図1を参照)のローター12は、直径が約7.500インチ、長さが約6.000インチであり、長さ対直径の比は約0.8であった。それと対照的に、特定のいくつかの実施形態において、混合装置100の混合チャンバー330の長さは、約5インチであり、ローター600の直径「D1」は、約1.69インチであって、長さ/直径比は約2.95である。
滞留時間は、第1の物質110、第2の物質120、および適宜、第3の物質130が本明細書で説明されている界面動電的現象と相互作用することができる時間の長さを表す。従来技術のデバイス10は、毎分約60ガロンの産出物質102を産生するように構成され、混合装置100は、毎分約0.5ガロンの産出物質102を産生するように構成され、従来技術のデバイス10(図1を参照)は、約0.05秒の流体滞留時間を有していたが、混合装置100のいくつかの実施形態は、それより実質的に長い(約7倍長い)、約0.35秒の滞留時間を有している。このように滞留時間が長ければ、従来技術のデバイス10で可能であった場合に比べて約7倍長く、第1の物質110、第2の物質120、および適宜、第3の物質130は互いに、また混合チャンバー330内の表面606および705(図7を参照)と相互作用することができる。追加の実施形態では、滞留時間は、従来技術のデバイス10において可能であった場合に比べて、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、またはそれを超える。
以下の表Iを参照すると、上記の滞留時間は、毎秒ガロン単位でそれぞれのデバイスに対する流量を最初に決定することによって計算されたことがわかる。従来技術のデバイス10の場合、これは、毎分約60ガロンの産出物質で動作するように構成されているが、混合装置100は、毎分約0.5ガロンの最適な産出物質流量範囲を含む、より広い範囲の流量にわたって動作するように構成されている。次いで、この流量を、毎秒のガロン単位の流量に1ガロンの立方インチ数(つまり、231立方インチ)を掛けて毎秒の立方インチに変換した。次いで、従来技術のデバイス10のチャネル32の容積(12.876立方インチ)をデバイスの流量(231立方インチ/秒)で割って滞留時間(秒)を求め、混合装置100の混合チャンバー330の容積(0.673立方インチ)を(毎秒立方インチで)デバイスの流量(1.925立方インチ/秒)で割って、滞留時間(秒)を求めた。
注入速度
混合装置100の特定のいくつかの態様は、従来技術のデバイス10(図1を参照)を含む、従来技術を上回る改善がなされた酸素注入速度をもたらす。第1の物質110が水であり、第2の物質120が酸素であり、その両方が20℃またはほぼ20℃の温度において、単一パス(つまり、図2のリターンブロックが「NO」に設定される)で混合装置100によって処理される場合、産出物質102の溶存酸素濃度は約43.8ppm(百万分の一、parts per million)である。いくつかの態様において、約43.8ppmの溶存酸素を有する産出物質は、本発明の非圧縮(非圧縮ポット)法を通じて本発明の流れを介して約350ミリ秒以内に生成された。対照的に、第1の物質110(水)および第2の物質120(酸素)が、両方とも、従来技術のデバイス10によって20℃またはほぼ20℃において単一パスで処理される場合、産出物質の溶存酸素濃度は、56ミリ秒の単一パスで35ppmに過ぎなかった。
産出物質102
第1の物質110が液体(例えば、真水、食塩液、GATORADE(登録商標)など)であり、第2の物質120がガス(例えば、酸素、窒素など)である場合、混合装置100は、第2の物質120を第1の物質110内に拡散させることができる。以下では、混合装置100によって処理されたことで得られる産出物質102の1つまたは複数の特性を特徴付けるために産出物質102に対し実行された分析の結果を説明する。
第1の物質110が食塩液であり、第2の物質120が酸素ガスである場合、実験から、食塩液中に生成された大部分の酸素気泡のサイズが0.1ミクロン以下であることがわかった。
溶存酸素濃度の減少
次に図30を参照すると、混合装置100内で酸素により処理され、500mlの薄壁プラスチックビンおよび1000mlのガラスビンに保存される水のDO濃度が示されている。それぞれのビンに栓をし、65°Fで保管した。点7900は、ビン詰め時のDO濃度である。線7902は、10ppmよりわずかに小さいDO濃度である、ヘンリーの法則の平衡状態(つまり、65°Fで水中に存在すべき溶存酸素の量)を示している。点7904および7906は、それぞれ65日と95日のプラスチックビン内の水中のDO濃度を表している。点7904に示されているように、プラスチックビンを、ビン詰め後約65日経過してから開いたときに、水中のDO濃度は約27.5ppmである。ビンをビン詰め後約95日経過してから開いたときに、点7906に示されているように、DO濃度は、約25ppmである。同様に、ガラスビンの場合、DO濃度は、点7908に示されているように65日で約40ppmであり、点7910に示されているように95日で約41ppmである。そのため、図30は、プラスチックビンとガラスビンの両方の中のDO濃度が、65°Fで比較的高いままであることを示している。
次に図31を参照すると、混合装置100内で酸素により富化され、少なくとも365日まで500mlの薄壁プラスチックビンおよび1000mlのガラスビンに保存される水のDO濃度が示されている。それぞれのビンに栓をし、65°Fで保管した。図からわかるように、酸素富化流体のDO濃度は、少なくとも365日までかなり一定に保たれた。
図33を参照すると、混合装置100内で酸素により富化され、500mlの薄壁プラスチックビンおよび1000mlのガラスビンに保存される水のDO濃度が示されている。ビンは両方とも、39°Fで冷蔵した。ここでまた、酸素富化流体のDO濃度は一定のままとなり、少なくとも365日までわずかに減少するだけであった。
投与経路および投与形態
本明細書で使用されているように、「対象」は、生き物、好ましくは動物、より好ましくは哺乳類、なおいっそう好ましくはヒトを指すものとしてよい。
特定の例示的ないくつかの実施形態では、本発明のガス富化流体は、治療組成物として、単独で、または他の治療薬と併用して、治療組成物がGタンパク質受容体関連障害の少なくとも1つの症状を予防または緩和するように機能しうる。本発明の治療組成物は、それを必要としている対象に投与できる組成物を含む。いくつかの実施形態において、この治療組成物製剤は、担体、アジュバント、乳化剤、懸濁化剤、甘味料、香味料、香料、および結合剤からなる群から選択される少なくとも1つの追加の薬剤を含むこともできる。
本明細書で使用されているように、「医薬品として許容される担体」および「担体」は、一般的に、無毒の、不活性固体、半固体、または液体の充填剤、希釈剤、封入材、または任意の種類の補助製剤を指す。医薬品として許容される担体として使用できる物質のいくつかの限定しない例として、乳糖、ブドウ糖、およびショ糖などの糖類、コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体、トラガント末、モルト、ゼラチン、タルク、ココアバターおよび坐剤蝋などの賦形剤、ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油などの油、プロピレングリコールなどのグリコール、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル、寒天、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝化剤、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、さらには、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの他の無毒の親和性のある滑沢剤、さらには着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香味料、および香料が挙げられ、また防腐剤および酸化防止剤も、製剤者の判断に従って、組成物中に存在しうる。特定のいくつかの態様において、そのような担体および賦形剤は、本発明のガス富化流体または溶液であるものとしてよい。
本明細書で説明されている医薬品として許容される担体、例えば、ビークル、アジュバント、賦形剤、または希釈剤は、当業者には周知のものである。典型的には、医薬品として許容される担体は、治療薬に対して化学的に不活性であり、使用条件の下では有害な副作用または毒性を有しない。医薬品として許容される担体は、ポリマーおよびポリマーマトリクス、ナノ粒子、微小気泡などを含みうる。
本発明の治療用ガス富化流体に加えて、治療組成物は、付加的非ガス富化水または他の溶媒などの不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルなどの可溶化剤および乳化剤、ならびにこれらの混合物をさらに含みうる。当業者であれば理解するように、特定の治療組成物の新規の、および改善された製剤、新規のガス富化治療薬流体、および新規のガス富化治療薬流体を送達する新規の方法は、同一の、類似の、または異なる組成のガス富化流体で1つまたは複数の不活性希釈剤を置き換えることによって得ることができる。例えば、従来の水は、酸素を水または脱イオン水に混合してガス富化流体を形成することによって生成されるガス富化流体で置き換えるか、または補うことができる。
いくつかの実施形態では、本発明のガス富化流体を1つまたは複数の治療薬と組み合わせることができ、そして/または単独で使用することができる。特定のいくつかの実施形態において、ガス富化流体を組み込むことは、脱イオン水、食塩液などのような当技術分野で公知の1つまたは複数の溶液を1つまたは複数のガス富化流体で置き換えて、対象に送達するための改善された治療組成物を供給することを含みうる。
いくつかの実施形態では、本発明のガス富化流体、医薬組成物または他の治療薬あるいは医薬品として許容されるその塩またはその溶媒和物、および少なくとも1つの医薬品担体または希釈剤を含む治療組成物を提供する。これらの医薬品組成物は、前記の疾病または病状の予防および治療、ならびに上述のような療法において使用されうる。好ましくは、担体は、医薬品として許容されるものでなければならず、また組成物中の他の構成要素と親和性がある、つまりそれらの構成要素に有害な影響をもたらさないものでなければならない。担体は、固体または液体とすることができ、好ましくは、単位用量製剤として調合され、例えば、0.05から95重量%の有効成分を含むことができる錠剤として調合される。
可能な投与経路としては、経口、舌下、口腔、非経口(例えば、皮下、筋肉内、動脈内、腹腔内、槽内、膀胱内、鞘内、または静脈内)、直腸、局所経路(経皮、膣内、眼内、耳内(intraotical)、鼻腔内、吸入、および埋め込み可能デバイスまたは物質の注入もしくは挿入を含む)が挙げられる。
投与経路
特定の対象に最も適した投与手段は、治療される疾病もしくは病状の性質および重症度、または使用される療法の性質、さらには治療組成物もしくは付加的治療薬の性質に依存する。いくつかの実施形態では、経口または局所性投与が好ましい。
経口投与に適した製剤は、それぞれ所定の量の活性のある化合物を含む、錠剤、カプセル剤、カシェ剤、シロップ剤、エリキシル剤、チューインガム、「ロリポップ」製剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、ロゼンジ、またはゲルコーティングアンプルなどの個別単位として、粉末または顆粒として、水性もしくは非水性の液体中の溶液または懸濁液として、あるいは水中油乳剤または油中水乳剤として調製されうる。
舌下または口腔投与などによる経粘膜的な方法に適した製剤としては、活性のある化合物および典型的には砂糖およびアカシアまたはトラガカントなどの香料入りの基剤を含むロゼンジ、パッチ剤、錠剤など、ならびにゼラチンおよびグリセリンもしくはスクロースアカシアなどの不活性基剤中に活性のある化合物を含むトローチが挙げられる。
非経口的投与に適した製剤としては、典型的には、所定の濃度の活性のあるガス富化流体および場合によっては、他の治療薬を含む滅菌水溶液が挙げられ、この溶液は、好ましくは、所定の受け手の血液と等張である。非経口的投与に適している追加の製剤としては、生理学的に適している共溶媒および/または界面活性剤およびシクロデキストリンなどの錯化剤を含む製剤が挙げられる。水中油乳剤も、ガス富化流体の非経口的投与用の製剤に適している場合がある。このような溶液は、好ましくは静脈内投与されるけれども、これらは、皮下または筋肉内注射で投与することもできる。
尿道、直腸、または膣内投与に適している製剤としては、ゲル、クリーム、ローション、水性もしくは油性の懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、乳剤、溶けやすい固体物質、潅水(douche)などが挙げられる。これらの製剤は、好ましくは、坐薬基剤を形成する1つまたは複数の固体担体、例えば、ココアバター中に有効成分を含む単位用量坐薬として供給される。その代わりに、結腸または直腸投与用に、本発明のガス富化流体を含む結腸洗浄剤を調合することもできる。
局所、眼内、耳内(intraotic)、または鼻腔内に施すのに適している製剤としては、軟膏、クリーム、ペースト、ローション、ペースト、ゲル(ヒドロゲルなど)、噴霧剤、分散性粉末および顆粒、乳剤、流動推進剤を使用する噴霧剤またはエアロゾル(例えば、リポソーム噴霧剤、点鼻薬、鼻腔用噴霧剤など)、および油が挙げられる。そのような製剤に適した担体としては、ワセリン ゼリー、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、およびこれらの組合せが挙げられる。経鼻または鼻腔内送達は、これらの製剤または他の薬剤のうちのどれかの計量された投与量を含みうる。同様に、耳内または眼内送達は、滴剤、軟膏、刺激液などを含むことができる。
本発明の製剤は、好適な方法によって、典型的には、ガス富化流体と適宜、液体または細かく分割された固体担体またはその両方を含む活性のある化合物と、要求された割合で、一様に、緊密に混合し、次いで、必要ならば、その結果得られた混合物を所望の形状に整形することによって、調製することができる。
例えば、有効成分および結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、もしくは表面活性分散剤などの1つまたは複数の任意選択の成分の粉末または顆粒を含む緊密混合物を圧縮するか、あるいは粉末化有効成分と本発明のガス富化流体の緊密混合物を成形することによって、錠剤を調製することができる。
吸入による投与に適した製剤は、さまざまな種類の定量式加圧エアロゾル、ネブライザー、または吸入器を使って生成されうる微粒子ダストまたはミストを含む。特に、治療薬の粉末または他の化合物は、本発明のガス富化流体中に溶解または懸濁させることができる。
口を経由した肺投与では、粉末または液滴の粒子サイズは、典型的には、0.5〜10μM、好ましくは1〜5μMの範囲内であり、これにより、気管支紋理内への送達を確実に行える。経鼻投与では、鼻腔内の保持を確実にするために、10〜500μMの範囲内の粒子サイズが好ましい。
定量式吸入器は、加圧エアロゾル分配器であり、典型的には、液化推進剤中の治療薬の懸濁液製剤または溶液製剤を含む。本明細書で開示されているような、いくつかの実施形態では、本発明のガス富化流体は、標準の液化推進剤に加えて、または標準の液化推進剤の代わりに使用することができる。使用中、これらのデバイスは、計量体積、典型的には10〜150μLを送達するように適合された弁を通して製剤を放出し、治療薬およびガス富化流体を含む微粒子噴霧剤を産する。好適な推進剤としては、いくつかのクロロフルオロカーボン化合物、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、およびこれらの混合物が挙げられる。
製剤は、それに加えて、1つまたは複数の共溶媒、例えば、オレイン酸またはトリオレイン酸ソルビタンなどのエタノール界面活性剤、酸化防止剤、および好適な香味剤を含むことができる。ネブライザーは、細いベンチュリオリフィスを通して、または超音波攪拌を使って、圧縮ガス(典型的には、空気または酸素)の加速を利用して有効成分の溶液または懸濁液を治療薬エアロゾルミストに変える市販のデバイスである。ネブライザーで使用するのに適している製剤は、製剤の最大40%w/wまで、好ましくは20% w/w未満を含む、ガス富化流体中の他の治療薬からなる。それに加えて、好ましくは塩化ナトリウムなどの塩を添加することによって体液と等張となるようにした、蒸留水、滅菌水、または希釈アルコール水溶液などの他の担体を利用することができる。任意選択の添加剤は、保存料を、特に製剤が殺菌して用意されていない場合に含み、またヒドロキシ安息香酸メチル、酸化防止剤、香味剤、揮発性油、緩衝化剤、および界面活性剤を含むことができる。
吸入による投与に適した製剤としては、吸入器を使って送達するか、または嗅剤の様式で鼻腔内に摂取することができる微粉砕された粉末が挙げられる。吸入器では、この粉末は、その部位に(in situ)穴をあけるか、または開けられる、典型的にはゼラチンまたはプラスチックで作られた、カプセルまたはカートリッジ内に収納され、この粉末は、吸入の際にデバイスを通して引き出す空気によって、あるいは手動式ポンプを使って送達される。吸入器内で使用される粉末は、有効成分だけからなるか、または有効成分、乳糖などの好適な粉末希釈剤、および任意選択の界面活性剤を含む粉末ブレンドからなる。有効成分は、典型的には、製剤の0.1から100w/wまでを含む。
特に上述した成分に加えて、本発明の製剤は、問題の製剤の種類に関して、当業者に公知の他の薬剤を含んでよい。例えば、経口投与に適している製剤は、香味剤を含むことができ、鼻腔内投与に適している製剤は、香料を含むことができる。
本発明の治療組成物は、医薬品と併せて、個別の治療薬として、またはいくつかの治療薬の組合せで使用するために利用可能な任意の従来の方法によって投与することができる。
投与量は、もちろん、特定の薬剤の薬動力学特性、その投与方法、および投与経路、受け手の年齢、健康状態、および体重、症状の性質および程度、併用治療の種類、治療の頻度、および望まれている効果などの、公知の因子に応じて変わる。有効成分の1日投与量は、体重1キログラム(kg)当たり約0.001から1000ミリグラム(mg)と予測することができ、好ましい投与量は0.1から約30mg/kgまでの範囲である。
剤形(投与に適した組成物)は、単位当たり約1mgから約500mgまでの範囲の有効成分を含む。これらの医薬品組成物において、有効成分は、組成物の総重量に基づき約0.5から約95重量%までの量だけ通常は存在する。
軟膏、ペースト、フォーム、閉鎖剤(occlusion)、クリーム、およびゲルも、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸(silica acid)、およびタルクなどの賦形剤、またはこれらの混合物を含むことができる。粉末および噴霧剤も、乳糖、タルク、ケイ酸(silica acid)、水酸化アルミニウム、およびケイ酸カルシウムなどの賦形剤、またはこれらの物質の混合物を含むことができる。エアロゾル医薬品を調製するために日常的に使用される公知の手段のどれかによってナノ結晶抗菌性金属の溶液をエアロゾルまたは噴霧剤に転換することができる。一般に、このような方法は、加圧すること、あるいは通常は不活性キャリアガスを使用して、溶液の容器を加圧し、加圧されたガスを小さなオリフィスに通すための手段を提供することを含む。それに加えて、噴霧剤は、窒素、二酸化炭素、および他の不活性ガスなどの通例の推進剤を含むことができる。それに加えて、微小球またはナノ粒子は、治療薬化合物を対象に投与するのに必要な経路のどれかにおいて本発明のガス富化治療組成物または流体とともに使用することができる。
注入用製剤は、アンプルおよびバイアルなどの単位用量もしくは多用量封止容器に入れられ、凍結乾燥した(凍結乾燥)状態で保管しておくことができ、使用直前に、滅菌済み液体賦形剤またはガス富化流体を添加するだけでよい。滅菌済み粉末、顆粒、および錠剤から、即席注射液および懸濁液を調製することができる。注入可能組成物に対する有効医薬品担体の要件は、当業者には周知のものである。例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice、J. B. Lippincott Co.、Philadelphia、Pa.、Banker and Chalmers、Eds.、238〜250頁(1982年)およびASHP Handbook on Injectable Drugs、Toissel、第4版、622〜630頁(1986年)を参照のこと。
局所投与に適した製剤としては、本発明のガス富化流体および適宜、追加の治療薬および香料、通常は、ショ糖およびアカシアまたはトラガカントを含むロゼンジ、ゼラチンおよびグリセリンなどの不活性基剤またはショ糖およびアカシア中にガス富化流体および任意選択の追加の治療薬を含むトローチ、ならびに好適な液体担体中にガス富化流体および任意選択の追加の治療薬を含む洗口剤または含嗽剤、さらにはクリーム、乳剤、ゲルなどが挙げられる。
それに加えて、直腸内投与に適した製剤は、乳化基剤または水溶性基剤などのさまざまな基剤と混合することによって坐薬として提示することができる。膣内投与に適した製剤は、有効成分に加えて、当技術分野で適切であることが公知であるような担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、または噴霧剤組成のものとして提示されうる。
好適な医薬品担体は、この分野の標準的な教科書である、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Companyにおいて説明されている。
本発明に関連して、対象、特に動物、具体的にはヒトに投与される用量は、妥当な期間にわたって動物に治療反応をもたらすのに十分な用量であるべきである。当業者であれば、投薬量が動物の病状、動物の体重、さらには治療される病状を含むさまざまな因子に依存することを理解するであろう。好適な用量は、結果として、対象内に、望ましい反応に影響を与えることが公知である一定濃度の治療組成物が入る用量である。
投薬のサイズも、投与の経路、タイミング、および頻度、さらには、治療組成物の投与に随伴して生じる可能性のある有害な副作用および望ましい生理学的効果の有無、性質、および程度によって決定される。
以下の実施例は、例示的であることのみを意図されており、一切制限することを意図されていない。
(実施例1)
溶媒和電子の生成
追加の証拠から、本発明のディフューザデバイスによって生じる富化過程の結果として、ガス富化流体中に溶媒和電子が入ることも示唆されている。ポーラログラフ溶存酸素プローブの結果により、拡散された流体は電子捕捉効果を示し、したがって、流体はガス富化物質中に溶媒和電子を含みうると考えられる。
溶存酸素濃度を電気的に測定する2つの基本的技法として、ガルバニック測定法とポーラログラフ測定法がある。それぞれの過程において、試験されている溶液中の溶存酸素濃度が、プローブのカソードと反応して電流を発生する電極システムを使用する。溶存酸素濃度センサーは、2つの電極、つまりアノードとカソードとからなり、これらの電極は両方ともセンサー本体内の電解液中に浸けられる。酸素透過性膜が、アノードおよびカソードを試験される溶液から隔てている。酸素は膜上で拡散し、プローブの内部コンポーネントと相互作用して、電流を発生する。カソードは、水素電極であり、アノードに関して負電位を運ぶ。電解液が、電極対の周りを囲んでおり、膜によって封じ込められている。酸素が存在していない場合、カソードは、水素によって分極し、電流の流れに抵抗する。酸素が膜を通過すると、カソードは脱分極し、電子が消費される。カソードは、式
O2+2H2O+4E−=4OH−
に従って、酸素を水酸基イオンに電気化学還元する。
本発明のシステムに従ってガス富化溶液の溶存酸素濃度の測定を実施するときに、オーバーフロー状態が繰り返し発生しており、そのため、溶存酸素メーターは、このメーターが読み取り可能な以上の読み取り値を表示する。しかし、ウィンクラー滴定法によるガス富化溶液の評価を行うと、その溶液に対する溶存酸素(DO)濃度がプローブによって示される値より低いことがわかる。典型的には、DOプローブ(これらの実験において使用されているOrion 862など)は、最大読み取り値60ppmを有する。しかし、メーターが本発明のガス富化水中に残された場合、これはオーバーフローする。
特定の作用機序によって束縛されることを望むことなく、メーターの機序は、酸素が反応する電子に対応する。しかし、電子スピン共鳴によれば、流体中に自由イオンは存在しない。したがって、流体は、おそらく、流体中にも存在する酸素種によって安定化された溶媒和電子を含む。
(実施例2)
グルタチオンペルオキシダーゼの研究
標準アッセイ(シグマ)を使用してグルタチオンペルオキシダーゼとの反応性を調べることによって、過酸化水素が存在するかどうかについて本発明の酸素富化流体を試験した。酵素カクテルを加えて反転させることによって、水試料を試験した。A340nm、および室温(25℃)において連続分光測光反応速度測定を行った。試験された試料は、1.脱イオン水(陰性対照)、2.低濃度における本発明の酸素富化流体、3.高濃度における本発明の酸素富化流体、4.過酸化水素(陽性対照)であった。過酸化水素の陽性対照は、強い反応性を示したが、試験された他の流体はどれもグルタチオンペルオキシダーゼと反応しなかった。
(実施例3)
MRSA殺菌効果
本明細書で説明されている流体を使って、メチシリン耐性Staphylococcus Aureus(MRSA)を試験した。MRSAに対して、ATCC# 29213を使用した(メチシリン感受性株(MSSA))。特定のいくつかの態様では、ATCC# 33591を使用した(技術的には、MRSA。メチシリン耐性であるが、オキサシリン感受性である)。特定のいくつかの態様では、ORSA (ATCC# 43300)を使用した(オキサシリン耐性およびメチシリン耐性である)。
本明細書で開示されている本発明のデバイスを通じて処理された流体、またはガス富化を用い本発明のデバイスを通じて処理された流体と組み合わせてオキサシリンにMRSAを曝露した。結果は、以下の表1に示されている。示されているように、説明されているデバイスを通じて処理された流体(ソラス)は、対照の場合に比べてガス富化された流体がデバイスを通過したときに(OS20、20ppmの酸素で富化された流体、OS40、40ppmの濃度の酸素で富化された流体、OS60、60ppmの濃度の酸素で富化された流体)、MRSA菌に対する殺菌力増加を示した。
表1 本発明の界面動電的に生成された溶液によるMRSA菌株の処置。パーセンテージのデータ値は、MRSAの増殖のないプレートの割合である。
(実施例4)
(界面動電的に生成された酸素を過剰に含む流体およびソラスは、ヒト気管支収縮の当技術分野で認められている動物モデル(ヒト喘息モデル)におけるインビボでのアルブテロールとの相乗延長効果(例えば、気管支収縮の抑制)をもたらすことが示された。)
実験1:
初期実験では、メタコリン誘発気管支収縮とともに気道機能に対する気管支拡張薬の効果について16匹のモルモットを評価した。最適な投薬を決定した後、それぞれの動物に50μg/mLの投薬をして、動物1匹につき250μLで硫酸アルブテロール12.5μgの目標用量を送達した。
この研究は、体重とベースラインPenH値に対する乱塊法計画であった。2つの群(AおよびB)に対して、1つまたは2つの希釈液に溶かした50μg/mL硫酸アルブテロール250μLを気道内注入した。A群は、酸素を添加しない、本発明のデバイスに通した脱イオン水であり、B群は、本発明のガス富化水であった。それぞれの群に、Penn Century Microsprayerを使用して溶液を気管内投薬した。それに加えて、それぞれの治療群が、プレチスモグラフおよび記録ユニットにデータを送るネブライザー内において均等に表されるように動物をBUXCOプレチスモグラフユニット上に層別化した。
アルブテロール投与の後2時間してからそのベースラインPenH値の少なくとも75%を示した動物については、データ分析に含めなかった。この除外基準は、気管支拡張薬による気管支保護効果が観察されないことを投薬の誤りに関連付けうる過去の研究結果に基づく。その結果、対照群から選んだ1匹の動物をデータ分析から外した。
動物が50%を超える気管支収縮を有した後、動物は保護されていないと考えられた。以下の表3で述べられているように、B群動物の50%(陰影が付けられている)は、まるまる10時間まで(そのときに試験は終了する)気管支収縮から保護された。
実験2:オスのハートレイ系モルモットにおける硫酸アルブテロールによるRDC1676の気管支収縮評価
追加の一連の実験を実施し、さらに多くの動物を使用して、本発明の界面動電的に生成された流体(例えば、RDC1676−00、RDC1676−01、RDC1676−02、およびRDC1676−03)の、オスのモルモットに単独でまたは硫酸アルブテロールの希釈剤として投与したときのメタコリン誘発気管支収縮に対する保護効果を評価した。
材料:
モルモット(Cavia porcellus)は、ハートレイ系アルビノモルモット、Charles River Canada Inc.社(カナダ、ケベック州セント・コンスタント所在)Crl:(HA)BRであった。体重:治療開始時に約325±50g。群数は32で、群当たりオス動物7匹(プラス24の予備が同じバッチの動物を形成する)。食事:すべての動物は、指定手順が実行されているときを除き、標準認定されたペレット状の民間試験所の実験食(PMI Certified Guinea Pig 5026、PMI Nutrition International Inc.社)に自由にアクセスできる。
方法:
投与経路は、全身吸入によるPenn Century Microsprayerおよびメタコリンチャレンジを介した気道内注入であった。気道内経路は、被験物質/対照溶液への肺の曝露を最大化するように選択された。全身吸入チャレンジは、上気道過敏性反応(つまり、気管支収縮)を誘発するためにメタコリンチャレンジについて選択されている。
治療時間は1日であった。
表4は、実験計画法を示している。すべての動物に、TA/対照投与の後2時間してからメタコリン(500μg/ml)の吸入曝露を受けさせた。すべての動物は、250μlの投薬量を受けた。したがって、硫酸アルブテロールを希釈して(対照物質と4つの被験物質において)0、25、50、および100μg/mlの濃度にした。
投薬する30分前に、4つの異なる濃度(0、25、50、および100μg/ml)の硫酸アルブテロール溶液を、これら4つの被験物質溶液(RDC1676−00、RDC1676−01、RDC1676−02、およびRDC1676−03)のそれぞれにおけるl Oxストック液(500μg/mL)で作製した。これらの濃度の硫酸アルブテロールを、非界面動電的に生成された対照流体(対照1)でも作製した。それぞれのストック液を適切に希釈することによって投薬溶液を調製した。調製した後のすべてのストック液および投薬溶液を冷蔵庫に保存した。投薬は、試験物質/対照物質が作られた後1時間以内に完了した。メタコリン溶液(500μg/ml)を、投薬するその日に調製した。
それぞれの動物は、Penn Centuryマイクロスプレイヤーを使用する試験物質または対照物質の気道内注入を受けた。動物を一晩絶食させ、イソフルランを使用して麻酔をかけ、喉頭鏡(または好適な代替装置)の助けを借りて喉頭を視覚化し、マイクロスプレイヤーの先端を気管内に挿入した。被験物質または対照物質の動物に対する投薬1回分250μl/匹を投与した。
Buxcoバイアス流ポンプから空気を供給されるエアロネブ超音波ネブライザーを使用して、メタコリンエアロゾルを混合チャンバーの空気取入口内に生成した。次いで、この混合チャンバーは、それぞれが排気管内に配置されている仕切り弁を使って維持されるわずかな陰圧の下で動作する4つの個別の全身無拘束プレチスモグラフを供給した。真空ポンプを使用して、必要な流量で吸入チャンバー排出を行った。
研究の主要期の開始前に、12匹の予備動物を3つの群(n=4/群)に割り当てて、動物をメタコリンに曝露して重症だが致命的ではない急性気管支収縮を誘発しうる最大曝露期間を決定した。4匹の動物を、30秒間、メタコリン(500μg/mL)に曝露し、エアロゾルの開始後最大10分までの間に呼吸パラメータを測定した。エアロゾル化のメタコリンネブライザー濃度および/または曝露時間を適宜調整して、重症だが致命的でない急性/改善可能な気管支収縮を誘発するようにしたが、これは、陰茎の一過性増大によって特徴付けられる。
被験物質投与(第1日)の前に1回、投薬後2、6、10、14、18、22、および26時間してから再び、動物をチャンバー内に置き、メタコリンへのエアロゾルチャレンジの開始に続いて、換気パラメータ(1回換気量、呼吸数、導出分時拍出量)および休止増加Penhを、Buxco Electronics BioSystem XAシステムを使用して10分間測定した。動物がチャンバーベースライン内にあった後、1分間にわたって値を記録し、それに続いて、メタコリンを、500ug/mLのネブライザー濃度で、30秒間、エアロゾル化し、動物をさらに10分間にわたってエアロゾルに曝露し、その期間中、換気パラメータを連続的に評価した。Penhは、気管支収縮の指標として使用され、Penhは、最大吸気流量、最大呼気流量、および呼気時間から得られた派生値である。Penh=(最大呼気流量/最大吸気流量)*(呼気時間/呼気量の65%を吐き出す時間−1)。
事前投薬メタコリンチャレンジの際に重症急性気管支収縮を示さない動物を置き換えた。投薬後2時間してからそのベースラインPenhPenes値の少なくとも75%を示した動物については、データ分析に含めなかった。呼気パラメータは、20秒手段として記録した。
非生理的であると考えられるデータを、さらなる分析から除外した。
Penhの変化を15分の期間にわたってプロットし、Penh値をその曲線の下の面積として表した。数値データに対し、群平均値および標準偏差(適宜)の計算を行った。
結果:
図107A〜Dに示されているように、アルブテロールが存在しない場合、本発明の界面動電的に生成された流体の投与は、26時間の期間にわたって測定したときに、平均パーセントベースラインPenH値に対し明白な効果を有していなかった。
しかし、驚いたことに、図108A〜Dに示されているように、本発明の界面動電的に生成された流体で調製されたアルブテロールの投与(25μgアルブテロール/動物群に対する代表的データが示されている)の結果(試験されたすべての酸素濃度値、周囲(図108A)、20ppm(図108−B)、40ppm(図108−C)、および60ppm(図108−D)で)、対照流体に比べて、アルブテロールの抗気管支収縮性効果の著しい延長が生じた。つまり、メタコリンの結果は、少なくとも26時間までアルブテロールの気管支拡張の延長を示した。図108A〜Dは、RDC1676と対照生理食塩水との間に、すべての酸素濃度において一貫した差があったことを示している。すべての4つのRDC1676流体を組み合わせると、生理食塩水からの全体的な治療差異に対するp値は、0.03であった。
したがって、本発明の特定のいくつかの態様によれば、本発明の界面動電的に生成された溶液は、アルブテロールとの相乗延長効果をもたらし、そのため、患者のアルブテロール使用量が減少し、効率的に費用効果の高い薬物使用が可能になり、副作用が低減され、患者がアルブテロールで治療され、アルブテロールによる治療に応答性を持つ期間が延長される。
(実施例5)
サイトカインプロファイル
1人の健康な自発的ヒトドナーから混合リンパ球を採取した。標準手順に従って軟膜試料を洗浄し、血小板を取り除いた。本発明のガス富化流体または蒸留水(対照)のいずれかで希釈したRPMI培地(+50mmのHEPES)内において、1プレート当たり2×106の濃度でリンパ球を塗抹した。T3抗原1マイクログラム/mL、またはフィトヘムアグルチニン(PHA)レクチン(pan−T細胞活性化因子)1マイクログラム/mLで細胞を刺激するか、または無刺激(陰性対照)とした。24時間のインキュベート後、細胞の生存性をチェックし、上清を抽出して、凍結した。
上清を解凍し、遠心分離し、XMAP(登録商標)(Luminex)Bead Liteプロトコルおよびプラットフォームを使用してサイトカイン発現について試験した。とりわけ、IFN−γ濃度は、T3抗原を含む対照培養基よりT3抗原を含む本発明のガス富化培養基において高く、IL−8は、T3抗原を含む対照培養基よりT3抗原を含む本発明のガス富化培養基において低かった。それに加えて、IL−6、IL−8、およびTNF−α濃度は、PHAを含む対照培養基よりもPHAを含む本発明のガス富化培養基において低かったが、IL−1b濃度は、PHAを含む対照培養基と比べたときにPHAを含む本発明のガス富化流体において低かった。ガスを用いる本発明の培養基単独では、IFN−γ濃度は、対照培養基での濃度より高かった。
200万個の細胞を、完全なRPMI+50mm Hepes中で24ウェルプレートの6ウェル内に塗抹したが、その際に、本発明の酸素富化流体(水)(ウェル1、3、および5)または蒸留水(2、4、および6)を使用した(10倍のRPMIを水で希釈して1倍にした)。細胞を、T3抗原1μg/ml(ウェル1および2)またはPHA(ウェル3および4)で刺激した。対照ウェル5および6は、刺激しなかった。24時間後に、細胞の生存性をチェックし、上清を採集して、凍結した。次に、上清を解凍し、8,000gで回転させてペレットにした。澄んだ上清をLUMINEX BEAD LITE(商標)プロトコルおよびプラットフォームを使用して、リストされているサイトカインについてアッセイした。数値データは、表1に表形式でまとめられている。
(実施例6)
サイトカイン発現
特定のいくつかの態様において、ヒト混合リンパ球を、界面動電的に生成された酸素富化流体、または対照流体中でT3抗原またはPHAにより刺激し、IL−1β、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL−12(p40)、IL−12(p70)、IL−13、IL−17、エオタキシン、IFN−γ、GM−CSF、MIP−1β、MCP−1、G−CSF、FGFb、VEGF、TNF−α、ランテス、レプチン、TNF−β、TFG−β、およびNGFの変化を評価した。図38からわかるように、炎症促進性サイトカイン(IL−1β、TNF−α、IL−6、およびGM−CSF)、ケモカイン(IL−8、MIP−1α、ランテス、およびエオタキシン)、炎症酵素(iNOS、COX−2、およびMMP−9)、アレルゲン反応(MHCクラスII、CD23、B7−1、およびB7−2)、および試験されたTh2サイトカイン(IL−4、IL−13、およびIL−5)は、試験流体と対照流体との比較において低減された。対照的に、試験された抗炎症性サイトカイン(例えば、IL1R−α、TIMP)は、試験流体と対照流体との比較において増大した。
これらのデータを拡張するために、出願人は、アレルギー性過敏性反応を評価するためにオボアルブミン予備刺激を伴う当技術分野で認められているモデルシステムを使用した。研究の終点は、反応の特定の細胞学および細胞成分、さらにはタンパク質およびLDHの血清測定であった。エオタキシン、IL−1A、IL−1B、KC、MCP−1、MCP−3、MIP−1A、ランテス、TNF−A、およびVCAMの分析を含む、サイトカイン分析を実行した。
簡単に言うと、第1日、第2日、および第3日にそれぞれ1回、オスのブラウンノルウェーラットに、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)(200mg/mL)を含む0.5mLオボアルブミン(OVA)グレードV(A5503−1G、Sigma)溶液(2.0mg/mL)を腹腔内注入した。この研究は、治療の無作為2×2要因配置(4つの群)であった。免疫反応を生じさせる2週間の待機期間の後、これらのブラウンノルウェーラットを、1週間の間、RDC1676−00(混合デバイスを用いて処理された無菌食塩水)、およびRDC1676−01(さらに酸素を加えて混合デバイスを用いて処理された無菌食塩水)に、曝露するか、それらを使って治療した。1日1回治療を1週間続けた最後の日に、2つの群を半分に分け、それぞれの群のブラウンノルウェーラットの50%が食塩液または吸入によるOVAチャレンジを受けた。
特に、最初に逐次実行した後の14日間に、連続する7日間、毎日30分間、吸入により12匹のブラウンノルウェーラットをRDC1676−00に曝露した。システムを通る空気流量は、10リットル/分に設定された。合計12匹のブラウンノルウェーラットをパイ形チャンバー内に揃え、これは、噴霧化材料をエアロネブの12個のサブチャンバーに入れ、均等に分配するための単一の口を備える。
初期予備刺激後の15日間に、連続する7日間、毎日30分間、超音波噴霧化により12匹のブラウンノルウェーラットをRDC1676−01に曝露した。これもまた、空気流量を10リットル/分に設定し、同じネブライザーおよびチャンバーを使用した。RDC1676−00を最初に噴霧化し、エアロネブチャンバーを完全に乾燥させてから、RDC1676−01を噴霧化した。
最後の噴霧化治療から約2時間後に、RDC1676−00群からの6匹のブラウンノルウェーラットに、Penn Century Microsprayer(Model 1A−1B)を使用して気道内注入によって送達されるOVA(食塩液中1%)で再チャレンジした。RDC1676−00群からの他の6匹のブラウンノルウェーラットに、気管内注入を使って送達される対照群として食塩液を用いてチャレンジした。次の日に、RDC1676−01群でこの手順を繰り返した。
再チャレンジから24時間後、ペントバルビタールナトリウムの過剰摂取によりそれぞれの群のすべてのブラウンノルウェーラットを安楽死させた。下大静脈から全血試料を採集し、2つの異なる血液採取管、Qiagen PAXgene(商標) Blood RNA TubeおよびQiagen PAXgene(商標) Blood DNA Tube内に入れた。肺臓を処理して、RT−PCR用に気管支肺胞洗浄(BAL)液および肺組織を採取し、このモデルにおける肺炎症に関連することが公知であるサイトカイン発現のマーカーの変化を評価した。片側肺洗浄法を使用して、肺の右側の4つの肺葉の完全性を維持した。左の「大きな」肺葉については、洗浄したが、4つの右肺葉については、それらを結紮し、即座にTRI−zol(商標)内に入れ、均質化し、さらに処理を行うため試験所に送った。
BAL分析。肺洗浄液を採集して、10分間、4℃、600〜800gで遠心分離し、細胞をペレット状にした。上清を新鮮な管に移し、−80℃で凍結させた。気管支洗浄液(「BAL」)を2つのアリコートに分けた。第1のアリコートを遠沈し、上清を砕いたドライアイス上で急速凍結させ、−80℃にして、さらに処理するために試験所に出荷した。存在するタンパク質およびLDHの量は、血清タンパク質(タンパク質は、この実験のようにチャレンジされたときに膜を通して漏れる血清成分である)の濃度および細胞死をそれぞれ示す。専用試験側は、タンパク質が対照よりわずかに少ないことを示していた。
全タンパク質およびLDH含有量について気管支洗浄液の第2のアリコートを評価し、さらに細胞学的検査を実施した。治療群は、全細胞が食塩液対照群より大きいことを示していた。さらに、対照群に対して、治療群の好酸球が増加していた。対照群に対して、治療群ではわずかに異なる多核白血球もあった。
血液分析。1.2〜2.0mLの血液を1本の管に移し、少なくとも30分かけて凝固させることによって全血を分析した。TRI−zol(商標)またはPAXgene(商標)を使用するRNA抽出用に、残っている血液試料(約3.5〜5.0mL)をとっておいた。次に、凝血試料を、10分間、室温、1200gで遠心分離した。血清(上清)を取り除き、2つの新鮮な管の中に入れ、血清を−80℃で保管した。
Tri−Reagent(TB−126、Molecular Research Center,Inc.社)を使用するRNA抽出では、全血または血漿0.2mLを、全血または血漿0.2mLに対し5Nの酢酸20μLを補ったTRI Reagent BD 0.75mLに加えた。管を振って、−80℃で保管した。PAXgene(商標)を使用し、約2時間、室温で管をインキュベートした。次に、管を寝かせ、−20℃の冷凍庫内で24時間保管し、次いで、−80℃の冷凍庫に移し、長期保管した。
Luminex分析。Luminexプラットフォームによって、マイクロビーズ分析は、光度単位で読み出し、定量化標準と比較できる抗体関連結合反応の基材として利用することができる。それぞれの血液試料を2つの試料として同時に試験した。測定単位は光度単位とし、群をOVAチャレンジ対照群、OVAチャレンジ治療群、および専用流体を使用する食塩液チャレンジ治療群に分けた。
Agilant遺伝子アレイデータ生成のために、肺組織を摘出し、TRI Reagent(TR118、Molecular Research Center,Inc.社)中に浸けた。簡単に言うと、TRI Reagentを約1mL、それぞれの管の中にある組織50〜100mgに加えた。glass−Teflon(商標)またはPolytron(商標)ホモジナイザーを使用して、TRI Reagent中で試料を均質化した。試料を−80℃で保管した。
血液試料:
図49〜58は、全血試料評価の結果を示す。
例示的な図49は、血液試料データに対する基本的な光度データ表現形式を示している。測定されたサイトカインのアイデンティティを示す文字(この場合は、KC)は、それぞれのデータの数字の右上にある。データは、個別試料のデータ点(上側グラフ)と棒グラフ(下側グラフ)で両方とも提示されている。いずれの場合も、グラフは、左から右へ、4つの群に分割される。最初の2つの群(それぞれRDC1676−00 OVAおよびRDC1676−01 OVA)は、吸収によってOVAで再チャレンジされたものであったが、最後の2つの群(それぞれRDC1676−00 OVAおよびRDC1676−01 OVA)は、対照食塩液のみで再チャレンジされたものであった。ここでもまた、添え字00は、食塩液治療を表し、添え字01は、界面動電的に生成された流体で治療された群を表す。
それぞれの血液試料を2つの試料に分割し、試料を同時に試験した。測定単位は光度単位であり、群は、左から右へ、OVAチャレンジ対照群、界面動電的に生成された流体で治療されたOVAチャレンジ群、その後の食塩液チャレンジ治療群、および界面動電的に生成された流体で治療された食塩液チャレンジ群である。検討しやすくするために、両方のRDC1676−01群を、背景に灰色陰影を付けて強調しているが、対照食塩液治療群では、背景は陰影を付けていない。
一般に、2つの左側の群を比べると、RDC1676−01群のデータの散らばりは、いくぶん大きく、RDC1676−01群中の特定のサイトカイン濃度は全体として対照治療群内の試料より小さく、典型的には、2つの群の間に約30%の差異がある。一般的に、一番右の2つの群を比較すると、RDC1676−01群は、RDC1676−00群に比べてわずかに高い数値を持つ。
図50は、特定の例示的態様による血液試料データ内のRANTES(IL−8スーパーファミリー)の分析結果を示している。一番左側の2つの群(OVAチャレンジ群)に対する光度単位は、一般的に、RDC1676−01治療群における値が、これもまた2つの群の間に30〜35%の差があることを示す上側グラフ部分のドットプロットによって示されているようにRDC1676−00対照群より小さかったが、食塩液のみに曝露された群では、サイトカイン濃度値は、RDC1676−01治療群においてほぼ同じであるか、または多分わずかに増大していたことを示す。
図51は、特定の例示的態様による血液試料データ内のMCP−1の分析結果を示している。一番左側の2つの群(OVAチャレンジ群)に対する光度単位は、一般的に、RDC1676−01治療群における値が、上側グラフ部分のドットプロットによって示されているようにRDC1676−00対照群より小さかったが、食塩液のみに曝露された群では、サイトカイン濃度値は、RDC1676−01治療群においてほぼ同じであるか、または多分わずかに増大していたことを示す。
図52は、特定の例示的態様による血液試料データ内のTNFαの分析結果を示している。一番左側の2つの群(OVAチャレンジ群)に対する光度単位は、一般的に、RDC1676−01治療群における値が、上側グラフ部分のドットプロットによって示されているようにRDC1676−00対照群より小さかったが、食塩液のみに曝露された群では、サイトカイン濃度値は、RDC1676−01治療群においてほぼ同じであるか、または多分わずかに増大していたことを示す。
図53は、特定の例示的態様による血液試料データ内のMIP−1αの分析結果を示している。一番左側の2つの群(OVAチャレンジ群)に対する光度単位は、一般的に、RDC1676−01治療群における値が、上側グラフ部分のドットプロットによって示されているようにRDC1676−00対照群より小さかったが、食塩液のみに曝露された群では、サイトカイン濃度値は、RDC1676−01治療群においてほぼ同じであるか、または多分わずかに増大していたことを示す。
図54は、特定の例示的態様による血液試料データ内のIL−1αの分析結果を示している。一番左側の2つの群(OVAチャレンジ群)に対する光度単位は、一般的に、RDC1676−01治療群における値が、上側グラフ部分のドットプロットによって示されているようにRDC1676−00対照群より小さかったが、食塩液のみに曝露された群では、サイトカイン濃度値は、RDC1676−01治療群においてほぼ同じであるか、または多分わずかに増大していたことを示す。
図55は、特定の例示的態様による血液試料データ内のVcamの分析結果を示している。一番左側の2つの群(OVAチャレンジ群)に対する光度単位は、一般的に、RDC1676−01治療群における値が、上側グラフ部分のドットプロットによって示されているようにRDC1676−00対照群より小さかったが、食塩液のみに曝露された群では、サイトカイン濃度値は、RDC1676−01治療群においてほぼ同じであるか、または多分わずかに増大していたことを示す。
図56は、特定の例示的態様による血液試料データ内のIL−1βの分析結果を示している。一番左側の2つの群(OVAチャレンジ群)に対する光度単位は、一般的に、RDC1676−01治療群における値が、上側グラフ部分のドットプロットによって示されているようにRDC1676−00対照群より小さかったが、食塩液のみに曝露された群では、サイトカイン濃度値は、RDC1676−01治療群においてほぼ同じであるか、または多分わずかに増大していたことを示す。
図57および58は、特定の例示的態様による血液試料データ内の、それぞれエオタキシンおよびMCP−3の分析結果を示している。それぞれの場合において、一番左側の2つの群(OVAチャレンジ群)に対する光度単位は、一般的に、RDC1676−01治療群における値が、上側グラフ部分のドットプロットによって示されているようにRDC1676−00対照群より小さかったが、食塩液のみに曝露された群では、サイトカイン濃度値は、RDC1676−01治療群においてほぼ同じであるか、または多分わずかに増大していたことを示す。
気管支洗浄試料:
図59〜68は、気管支肺胞洗浄液(BAL)試料評価の対応する結果を示す。
図59は、特定の例示的態様によるBALデータ内のKCの分析結果を示している。この場合、反応レベルは、サンプリングの変動と相まって、RDC1676−01治療群とRDC1676−00治療群との間の差異に関して決定できなかった;つまり、KCは、2つの群の間に比較的ほとんど差がないことを示し、光度単位は非常に小さかったということである。
同様に、図60は、特定の例示的ないくつかの態様によるBALデータにおけるランテスの分析結果を示しており、また一方の読み取り値が他方に比べて著しく高い、RDC1676−01群の著しいばらつきを示しており、結果を歪めている。
同様に、図61は、特定の例示的ないくつかの態様によるBALデータにおけるTNFαの分析結果を示しており、またRDC1676−01治療群とRDC1676−00治療群との間の食い違い方に有意性が比較的ほとんどないことを示していた。
図62は、特定の例示的ないくつかの態様によるBALデータにおけるMCP−1の分析結果を示しており、またRDC1676−01治療群とRDC1676−00治療群との間の食い違い方に有意性が比較的ほとんどないことを示していた。
図63から68は、特定の例示的ないくつかの態様によるBALデータにおけるMIP1−A、IL−1α、Vcam、IL−1β、MCP−3、およびエオタキシンの分析結果をそれぞれ示しており、またRDC1676−01治療群とRDC1676−00治療群との間の食い違い方に有意性が比較的ほとんどないことを示していた。
要約すると、公知の予備刺激に対する炎症反応のこの標準的アッセイは、少なくとも血液試料中において、際立った、臨床的および血清学的影響をもたらしたということである。それに加えて、かなりの数の対照動物が、生理学的ストレスをかけられ、この過程において瀕死であったが、RDC1676−01治療群は、そのような臨床的ストレス効果を示さなかった。次いで、これはサイトカインの循環レベルに反映され、OVAチャレンジ群においてRDC1676−01治療群とRDC1676−01治療群との間に約30%の差異があった。対照的に、非OVAチャレンジ群におけるRDC1676−01治療群とRDC1676−01治療群との間のサイトカイン、細胞および血清学的プロファイルの変化は小さく、ほとんど有意でなく、流体それ自体の最小のベースライン変化を単に表すに過ぎない可能性がある。
(実施例7)
ブラジキニンB2受容体親和性結合
ブラジキニンリガンドとブラジキニンB2受容体との膜受容体親和性結合を調べるために、バイオレイヤー干渉法バイオセンサー、Octet Rapid Extended Detection(RED)(forteBio(商標))を利用した。このバイオセンサーシステムは、先端にセンサー固有の化学的作用を有するポリプロピレンハブ内に埋め込まれた研磨光ファイバーからなる。バイオセンサー装置は、検出器のところに干渉縞を生じる光ファイバーの先端に付着された分子の層を有する。結合された分子の数が変化すると、光のパターン内に測定されるシフトが生じる。
図69に示されているように、ブラジキニンB2膜受容体は、アミノプロピルシラン(APS)バイオセンサー上に固定化された。試料プレート設定は、図69で指定され、図70において分析されたものである。次に、固定化された受容体へのブラジキニンの結合は、図71で指定されているように試料設定に応じて評価された。ブラジキニン結合の結果は、図72に例示されている。受容体へのブラジキニン結合は、図73で指定されているように設定に応じてさらに滴定された。
図74に示されているように、B2受容体へのブラジキニン結合は、濃度依存であり、結合親和力は、生理食塩水と比較して本開示の専用ガス富化食塩水中で増加した。B2受容体へのブラジキニン結合の安定化は、図75に示されている。
(実施例8)
(制御性T細胞アッセイを使用して、T細胞増殖の調節ならびに制御性T細胞アッセイにおけるサイトカイン(Il−10)および他のタンパク質(例えば、GITR、Granzyme A、XCL1、pStat5、およびFoxp3)の生成、および例えば、PBMCにおけるトリプターゼの生成において、本発明の界面動電的に生成された流体の効果を示した)。
本明細書で開示されている特定の実施形態がT細胞を制御する能力について、抗原提示細胞を照射し、抗原およびT細胞を導入することによって研究した。典型的には、これらの刺激T細胞が増殖する。しかし、制御性T細胞を導入した後、通常のT細胞増殖は抑制される。
方法:
簡単に言うと、選別で使用されるFITC共役抗CD25(ACT−1)抗体をDakoCytomation社(イリノイ州シカゴ所在)から購入した。使用される他の抗体は、CD3(可溶状態についてはHIT3a)、GITR(PE共役)、CD4(Cy−5およびFITC共役)、CD25(APC共役)、CD28(CD28.2クローン)、CD127−APC、グランザイムA(PE共役)、FoxP3(BioLegend)、マウスIgG1(アイソタイプ対照)、およびXCL1抗体であった。メーカーの取扱説明書に従って、すべての抗体を使用した。
CD4+Rosette Kit(Stemcell Technologies社)を使ってCD4+T細胞を末梢全血から分離した。CD4+T細胞を抗−CD127−APC、抗CD25−PE、および抗CD4−FITC抗体でインキュベートした。FACS Ariaを使用するフローサイトメトリーで、細胞をCD4+CD25hiCD127lo/nTregとCD4+CD25−レスポンダーT細胞に選別した。
丸底96ウェルマイクロタイタープレート内で、抑制アッセイを実行した。3.75×103のCD4+CD25negレスポンダーT細胞、3.75×103の自己制御性T細胞、3.75×104の同種異系照射CD3除去PBMCを指示通りに加えた。すべてのウェルに、抗CD3(5.0ug/mlでのクローンHIT3a)を補った。10%ウシ胎仔血清を補ったRPMI 1640培地中、37℃の温度で、7日間にわたり、T細胞を培養した。インキュベートが終わる16時間前に、1.0mCiの3Hチミジンをそれぞれのウェルに加えた。Tomtecセルハーベスターを使用してプレートを採取し、Perkin Elmerシンチレーションカウンターを使用して3Hチミジン取り込みを決定した。抗原提示細胞(APC)は、StemSepヒトCD3+T細胞除去(StemCell Technologies社)を使用し、その後40Gyの照射を行ってT細胞を除去した末梢血単核球(PBMC)からなるものであった。
抗CD3および抗CD28の条件で制御性T細胞を刺激し、次いで、Live/Dead Red Viability Dye (Invitrogen社)、および表面マーカーCD4、CD25、およびCD127で染色した。細胞は、Lyze/Fix PhosFlow(商標)緩衝液で固定され、改変Permbuffer III(登録商標)で透過化された。次いで、それぞれの特定の選択された分子に対して細胞を抗体で染色した。
GraphPad Prismソフトウェアを使用して統計分析を実行した。不対両側スチューデントt検定を使用することによって、2つの群を比較した。3つの群の比較は、一元配置型ANOVAを使用することによって行われた。0.05未満のP値は、有意と考えられた(両側)。2つの群の間の相関は、r値が0.7より大きいか、または−0.7より小さい場合にスピアマン係数を介して統計的に有意であると判定された(両側)。
結果:
図76に示されているように、ディーゼル排ガス粒子状物質で細胞を刺激することによって制御性T細胞増殖を調べた(PM、EPAから)。図76のx軸は、活性化された自己CD4+エフェクターT細胞(レスポンダー細胞)を無地黒色のバーとして示し、制御性T細胞単独を灰色のバー(アネルギーの確認用に示されている)で示しており、これらの細胞を白色のバーで示されているように1:1に混合した。y軸は、3Hチミジンの摂取によって測定されるような増殖を示す。x軸にそって左から右へ示されているように、「PM」は、ディーゼル排ガス由来の微粒子状物質を示し、「PM+Rev」は、PMプラス本開示の界面動電的に生成されたガス富化流体(Rev)を示し、「Solis」は、本開示の界面動電的に生成された流体および雰囲気を超えてガス富化されないデバイスのみを示し(PMは加えられない)、「Rev」は、上で定義されているようにRev単独を示し(追加されるPMはない)、「培地」は、細胞増殖培地単独対照を示し(PMマイナス、Revなし、Solisなし)、「対照食塩液」は、対照食塩液を示し(PMマイナス、Revなし、Solisなし)、「V」は、ベラパミルを示し、「P」は、プロパノロールを示し、「DT」は1:50におけるDT390である。
図77に示されているように、細胞をPMで刺激すると(Revなし、Solisなし)、その結果、分泌IL−10が減少し、本開示の流体の存在下でPMに曝露された細胞は(「PM+Rev」)、結果として、食塩液および培地対照(PMなし)に関してIL−10の産生が維持されるか、またはごくわずか減少した。さらに、ジフテリア毒素(DT390、切断ジフテリア毒素分子、市販標準液濃度の1:50の希釈)を本発明の流体試料中に滴定し、図77におけるIL−10の増大のRev媒介効果を阻害した。Rev単独で治療すると、食塩液および培地対照に関してIL−10濃度が高まったことに留意されたい。
同様に、図78〜82に示されている類似の結果が、それぞれ、GITR、グランザイムA、XCL1、pStat、およびFoxp3で得られた。図中、「NSC」は、「Solis」(PMなし)と同じである。
図83は、トリプターゼを評価する末梢血単核細胞(PBMC)のアレルギー性喘息(AA)プロファイルから得られた、AA PBMCデータを示している。AA PBMCデータは、上記のT制御性細胞データと一致しており、微粒子状物質(PM)で刺激された細胞は、高濃度のトリプターゼを示したが、本開示の流体の存在下、PMで処置された細胞(「PM+Rev」)では、結果として、食塩液および培地対照のものと類似している著しく低いトリプターゼ濃度が得られた。T制御性細胞からのデータと一致する形で、DT390に曝露した場合トリプターゼ濃度に対するRev媒介効果が阻害され、その結果、PM単独の場合(Revマイナス、Revなし、Solisなし)に見られるように細胞内のトリプターゼ濃度が上昇した。Rev単独で治療すると、食塩液および培地対照に関してトリプターゼ濃度が下がったことに留意されたい。
要約すると、対照流体(Revなし、Solisなし)におけるPMに関してPMおよびRevの存在下で増殖の減少を示す、図76のデータは、本発明の界面動電的に生成された流体Revが、アッセイにおける増殖の相対的減少によって示されているように制御性T細胞機能を改善したことを示している。さらに、この実施例の証拠、および図76〜83は、β遮断薬、GPCR遮断薬、およびCaチャネル遮断薬が、Treg機能に対するレベラ(Revera)の活性に影響を及ぼすことを示している。
(実施例9)
(本発明の界面動電的に生成された流体による初代気管支上皮細胞(BEC)の治療の結果、気道炎症経路の2つの主要なタンパク質である、MMP9およびTSLPの発現および/または活性が低減された)
概要。上記の実施例7に示されているように(例えば、バイオレイヤー干渉法バイオセンサーOctet Rapid Extended Detection(RED)(forteBio(商標))を使用してB2受容体に結合するブラジキニンの安定化を示す図75)、B2受容体に結合するブラジキニンは、濃度依存であり、結合親和性は、生理食塩水と比較して本開示の界面動電的に生成された流体(例えば、Rev、界面動電的に生成されたガス富化流体)において増大した。それに加えて、ディーゼル排ガス微粒子状物質(PM、標準商用発生源)で刺激されたT制御性細胞に関連して実施例8に示されているように、データは、対照流体(Revなし、Solisなし)におけるPMに関してPMおよびRevの存在下でT制御性細胞の増殖の減少を示しており(図76)、これは本発明の界面動電的に生成された流体Revが、例えば、アッセイにおける増殖の相対的減少によって示されているように、制御性T細胞機能を改善したことを示した。さらに、本発明の流体に曝露した結果、食塩液および培地対照(PMなし)に関してIL−10の産生が維持されるか、またはごくわずか減少した。同様に、微粒子状物質(PM)で刺激された末梢血単核細胞(PBMC)のアレルギー性喘息(AA)プロファイルに関連して、データは、本開示の流体への曝露(「PM+Rev」)の結果、食塩液および培地対照のものと類似している著しく低いトリプターゼ濃度が得られることを示していた。それに加えて、実施例8および図76〜83に示されているジフテリア毒素(DT390、切断ジフテリア毒素分子、市販標準液濃度の1:50の希釈)の効果は、β遮断薬、GPCR遮断薬、およびCaチャネル遮断薬が、TregおよびPBMC機能に対する界面動電的に生成された流体の活性に影響を及ぼすことを示している。さらに、実施例18のデータは、追加のいくつかの態様により、本発明の流体に曝露した後、密着結合関連タンパク質が肺組織内でアップレギュレートされたことを示している。図85〜89は、接合接着分子JAM2および3、GJA1、3、4、および5(結合性接着)、OCLN(オクルーディン)、クローディン(例えば、CLDN 3、5、7、8、9、10)、TJP1(密着結合タンパク質1)のアップレギュレーションを示している。さらに、実施例15のパッチクランプ研究で示されているように、本発明の界面動電的に生成された流体(例えば、RNS−60)は、気管支上皮細胞(BEC、例えば、Calu−3)内の全細胞コンダクタンスの調節に(例えば、過分極状態の下で)影響を及ぼし、追加のいくつかの態様により、全細胞コンダクタンスの調節は、イオンチャネルの調節を反映する。
この実施例において、出願人は、気道炎症経路の2つの主要なタンパク質の産生の効果を測定するために追加の実験を実施することによってこれらの発見結果を拡張した。特に、MMP9およびTSLPを、初代気管支上皮細胞(BEC)のアッセイで測定した。
材料と方法:
市販の初代ヒト気管支上皮細胞(BEC)(ドイツ所在のPromocell社のHBEpC−c)をこれらの研究に使用した。約50,000個の細胞を12ウェルプレートのそれぞれのウェル内に塗抹し、〜80%の密集度となるようにした。次いで、それらの細胞を、本明細書の実施例8で説明されているように、FACS分析用にリフトされる前にディーゼル排ガス微粒子状物質(DEPまたはPM)とともに1:10に希釈(気道上皮増殖培地の1ml中100ul)した生理食塩水、対照流体ソラスまたは試験流体レベラ60により6時間かけて処置した。MMP9およびTSLP受容体抗体は両方とも、BD Biosciences社から取得し、メーカーの仕様書に従って使用した。
結果:
図115および116において、DEPは、ディーゼル排ガス微粒子状物質(PM、標準商用発生源)だけに曝露された細胞を表し、「NS」は、生理食塩水だけに曝露された細胞を表し、「DEP+NS」は、生理食塩水の存在下で微粒子状物質で処置された細胞を表し、「レベラ60」は、試験物質にのみ曝露された細胞を指し、「DEP+レベラ60」は、試験物質レベラ60の存在下で微粒子状物質とともに処置された細胞を指し、それに加えて、「ソラス」および「DEP+ソラス」は、それぞれ、対照流体ソラス単独に、または微粒子状物質と組み合わせて曝露された細胞を表す。
図115は、試験物質レベラ60は、気管支上皮細胞(BEC)内のDEP誘導TSLP受容体発現を約90%低減することを示している。ソラスを使用した結果、TSLP受容体発現は55%低減したが、生理食塩水ではTSLP受容体発現の同様のレベルの低減をもたらしえなかった(約20%の低減)。TSLP受容体発現を低減する本発明の解決手段の効果は、TSLP受容体発現が、アレルギー性喘息の病理生物学に極めて重要な役割を果たし、TSLP受容体機能の局所抗体媒介遮断薬がアレルギー性疾患を緩和したことを示す近年の研究成果を勘案すると著しい発見である(Liu、YJ、Thymic stromal lymphopoietin: Master switch for allergic inflammation、J Exp Med 203巻:269〜273頁、2006年、Al−Shamiら、A role for TSLP in the development of inflammation in an asthma model、J Exp Med 202巻:829〜839頁、2005年、およびShiら、Local blockade of TSLP receptor alleviated allergic disease by regulating airway dendritic cells、Clin Immunol. 2008年、8月29日(印刷に先立って電子出版))。
同様に、図116は、MMP9におけるDEPが媒介する増大に対するレベラ60、ソラス、および生理食塩水の効果を示している。特に、レベラ60は、気管支上皮細胞内のDEP誘導細胞表面結合MMP9濃度を約80%阻害し、ソラスは、約70%の阻害効果を有していたが、生理食塩水(NS)は、約20%低減の限界効果を有していた。MMP−9は、気道炎症および喘息における気管支リモデリングに関与する主要なプロテイナーゼの1つである。近年、安定した喘息を患っている患者ではMMP−9の濃度が著しく増大し、健康な対照対象と比較した場合に急性喘息患者ではこの濃度はなおいっそう高いことが実証された。MMP−9は、気道炎症細胞の浸潤および気道過敏反応性の誘導において重要な役割を担っており、これはMMP−9が喘息の誘発および持続に重要な役割を有している可能性のあることを示している(Vignolaら、Sputum metalloproteinase−9/tissue inhibitor of metalloproteinase−1 ratio correlates with airflow obstruction in asthma and chronic bronchitis、Am J Respir Crit Care Med 158巻:1945〜1950頁、1998年、Hoshinoら、Inhaled corticosteroids decrease subepithelial collagen deposition by modulation of the balance between matrix metalloproteinase−9 and tissue inhibitor of metalloproteinase−1 expression in asthma、J Allergy Clin Immunol 104巻:356〜363頁、1999年、Simpsonら、Differential proteolytic enzyme activity in eosinophilic and neutrophilic asthma、Am J Respir Crit Care Med 172巻:559〜565頁、2005年、Leeら、A murine model of toluene diisocyanate−induced asthma can be treated with matrix metalloproteinase inhibitor、J Allergy Clin Immunol 108巻:1021〜1026頁、2001年、およびLeeら、Matrix metalloproteinase inhibitor regulates inflammatory cell migration by reducing ICAM−1 and VCAM−1 expression in a murine model of toluene diisocyanate−induced asthma、J Allergy Clin Immunol 2003年、111巻:1278〜1284頁)。
したがって、追加のいくつかの態様によれば、本発明の界面動電的に生成された流体は、TSLP受容体発現を調節(例えば、低減する)こと、および/または例えば、炎症および喘息の治療を含む、MMP−9の発現および/または活性を阻害することに対し実質的な治療上の有用性を有する。
(実施例10)
(本発明の界面動電的に生成された流体は、アレルギー性喘息の当技術分野で認められている動物モデルにおいてブデソニドとの相乗的抗炎症効果を有することが示されている。)
この実施例では、ブラウンノルウェーラットのオボアルブミン予備刺激モデルにおける本発明の界面動電的に生成された流体(例えば、RDC−1676−03)の気道抗炎症特性を評価するために実行された実験について説明する。ブラウンノルウェーラットは、気道機能に対する試験物質の効果を判定するための当技術分野で認められているモデルであり、この系統は、例えば、アレルギー性喘息のモデルとして広く使用されている。このモデルにおいてオボアルブミン予備刺激によって誘導される気道病変および生化学的変化は、ヒトに見られるものと類似している(Elwoodら、J Allergy Clin Immuno 88巻:951〜60頁、1991年、Sirois & Bissonnette、Clin Exp Immunol 126巻:9〜15頁、2001年)。吸入経路は、試験物質または対照溶液への肺の曝露を最大化するように選択された。オボアルブミン予備刺激動物をブデソニド単独で、または試験物質RDC1676−03との組合せで、オボアルブミンチャレンジの前の7日間にわたって治療した。チャレンジしてから6時間および24時間後に、総血球数および複数の炎症促進性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの濃度、さらにはさまざまな呼吸パラメータを測定して、さまざまな炎症パラメータに対する試験物質の投与の薬効を推定した。
材料と方法:
Charles River Kingston社からBn/Crl系統のブラウンノルウェーラットを入手し、実験開始時に体重を測定したところ、約275±50gであった。すべての動物研究は、PCS−MTL動物管理使用委員会の承認の下で実施された。研究中、動物の使用と世話は、米国学術研究会議ならびにカナダ動物管理協会のガイドラインに従って実施した。
予備刺激。実験の第1日に、0.9%塩化ナトリウム1mlにつきオボアルブミン2mg/水酸化アルミニウム100mgの新たに調製した溶液1mlを注射で腹腔内投与することによって動物(それぞれの治療群において14匹)を予備刺激し、続いて、第3日に、反復注射した。
治療。初期予備刺激から15日後に、対照(生理食塩水)または試験溶液(界面動電的に生成された流体RDC1676−00、RDC1676−02、およびRDC1676−03)への噴霧曝露を、単独投与、またはブデソニドと組み合わせた投与で、連続する7日間に1日1回15分間、動物に施した。約20Lのホールボディチャンバー内に動物を入れて投薬し、Buxcoバイアス流ポンプから空気を供給されるエアロネブ超音波ネブライザーを使用して、チャンバーの空気取入口内に試験雰囲気を形成した。空気流速度は、10リットル/分に設定した。
オボアルブミンチャレンジ。第21日に、試験溶液による治療から2時間後に、15分間、1%のオボアルブミン噴霧化溶液ですべての動物にチャレンジした(空気流2L/分のホールボディチャンバー内で)。
試料採集。オボアルブミンチャレンジから6時間および24時間後の時点において、総血球数および血球分画について、さらにはさまざまな炎症促進性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの濃度を測定するために、血液試料を採集した。それに加えて、オボアルブミンチャレンジの直後、およびオボアルブミンチャレンジから6時間および24時間後に、休止増加Penhおよび1回換気量を、Buxco Electronics BioSystem XAシステムを使用して10分間測定した。
結果:
好酸球数:予想通り、また図109に示されているように、ブデソニドによる治療(「NS+ブデソニド750μg/Kg」、高密度のクロスハッチパターンの棒グラフ)では、生理食塩水の「NS」単独対照による治療(開いている棒グラフ)に関してチャレンジされた動物における総好酸球数が減っていた。それに加えて、本発明の流体「RDC1676−03」単独による治療(低密度のクロスハッチの棒グラフ)では、好酸球数が著しく低下することはなかったが、それでも、好酸球数を減らす際にブデソニドとの実質的相乗作用を示した(「RDC1676−03+ブデソニド750μg/Kg」、無地暗色の棒グラフ)。同様に、図110では、好酸球の割合(%)も類似の傾向を反映していた。RDC1676−03(低密度のクロスハッチの棒グラフ)またはブデソニド750ug/kg(高密度のクロスハッチの棒グラフ)単独では、チャレンジされた動物において好酸球数割合(%)に対し著しい影響をもたらさなかったが、これら2つは組み合わさると、好酸球数割合(%)を著しく下げた(無地暗色の棒グラフ)。
したがって、図109および110は、本発明の特定の態様により、本発明の界面動電的に生成された流体(例えば、RDC1676−03)が、ヒトアレルギー性喘息用の当技術分野で認められているブラウンノルウェーラットモデルにおいて好酸球数(「好酸球数割合(%)」および総数)を著しく低減するブデソニドと組み合わせた実質的に相乗的な有用性を有することが実証されたことを示している。
呼吸パラメータ:
図111A〜Cおよび112A〜Cは、オボアルブミンチャレンジの直後、オボアルブミンチャレンジから6時間後、および24時間後に測定した、Penhおよび1回換気量に対する試験流体の観察された効果を示している。Penhは、最大吸気流量、最大呼気流量、および呼気時間から得られた派生値であり、penh値を下げると、肺機能に対する良好な転帰が反映される。
Penh=(最大呼気流量/最大吸気流量)*(呼気時間/呼気量の65%を吐き出す時間−1)。
図111A〜Cから明らかなように、ブデソニド(500および750ug/kgの両方)単独による、または試験流体のどれかと組み合わせた治療は、チャレンジの直後にPenh値に著しい影響を及ぼすことはできなかった。しかし、チャレンジから6時間後、RDC1676−03単独で、またはブデソニド500または750ug/kgと組み合わせて治療された動物は、Penh値の著しい低下を示した。この低下の程度は、チャレンジ後24時間まで減少したけれども、ブデソニドおよびRDC流体の相乗効果は、それでもこの時点においては観察された。
1回換気量は、呼気終末位置から吸気中に肺の中に吸い込まれる空気の量であり、安静呼吸が行われているときに呼気時に受動的に肺から出る。図112A〜Cに示されているように、ブデソニド単独で治療された動物は、チャレンジの直後に1回換気量の変化を一切示さなかった。しかし、この早い時点であっても、RDC1676−03単独で1回換気量に対し著しい促進作用を有していた。ここでもまた、ブデソニド(500および750ug/kgの両方)と組み合わせたRDC1676−03は、この時点において、1回換気量測定結果に対しなおいっそう顕著な効果を有していた。チャレンジから6時間後、RDC1676−03単独で、1回換気量の著しい増大を十分に引き起こし、また単独によるかまたは組み合わせた治療計画に対するブデソニドの追加は、1回換気量に対し付加的効果を有していなかった。しかし、これらの早い時点で観察された効果は、24時間経過時点までに失われた。
以上をまとめると、これらのデータは、チャレンジ後6時間経過したときの1回換気量の増大とPenh値の減少によって明らかなように、RDC1676−03を単独で使用するか、またはブデソニドを組み合わせて使用すると、気道炎症に対する著しい緩和が得られたことを示している。
サイトカイン分析:
上述の生理学的パラメータに見られる効果の機序を分析するために、生理学的測定の直後、チャレンジから6時間および24時間後に、採集した血液試料で多数の炎症促進性サイトカインならびに抗炎症性サイトカインを測定した。
図113Aおよび113Bは、Rev60(またはRDC1676−03)単独で、チャレンジ後6時間および24時間の両方の時点でエオタキシンの血中濃度を著しく下げたことを明確に示している。ブデソニド750ug/kgは、これらの時点の両方において血液エオタキシン濃度も下げたが、ブデソニド250ug/kgは、後の時点において顕著な効果を有しているだけであった。しかし、試験溶液Rev60単独で、両方の時点においてブデソニドの両方の濃度より著しく強力な(血液エオタキシン濃度を下げる点で)効果を示した。エオタキシンは、アレルギー反応における喘息肺および他の組織(例えば、クローン病における腸)に蓄積し、好酸球をそこに引き付けることが公知である小さなC−Cケモカインである。エオタキシンは、Gタンパク質共役受容体CCR3に結合する。CCR3は、Th2リンパ球、好塩基球、および肥満細胞などの多数の細胞型によって発現されるが、Th2リンパ球によるこの受容体の発現は、それらの細胞が好酸球動員を調節するので特に興味深い。いくつかの研究から、喘息にかかっている肺におけるエオタキシンおよびCCR3の産生の増大、さらにはこれらの分子と気道過敏反応性との間の結びつきを確定することが明らかになっている(Eotaxin and the attraction of eosinophils to the asthmatic lung、Dolores M Conroy and Timothy J Williams Respiratory Research 2001年、2巻:150〜156頁において検討されている)。これらの研究は、好酸球数に関して図109および110の結果と完全に呼応していることを指摘することは特に興味深い。
以上をまとめると、これらの結果は、RDC1676−03単独による、またはブデソニドと組み合わせた治療は、オボアルブミンチャレンジから24時間後に血中の好酸球の総数と割合(%)を著しく低減しうることを強く示している。これは、チャレンジ後6時間と早い段階に観察された血中エオタキシン濃度の著しい低下と相関している。
2つの主要な抗炎症性サイトカインであるIL10およびインターフェロンγの血中濃度も、Rev60単独による、またはブデソニドと組み合わせた治療の結果としてチャレンジ後6時間経過した時点において著しく高くなっている。図113Cおよび113Dは、それぞれ、インターフェロンγおよびIL10に対するそのような効果を示している。これらの図から、Rev60を単独で使用するか、またはブデソニド250ug/kgと組み合わせてRev60を使用すると、チャレンジ後最大6時間までの間にチャレンジされた動物のIL10の血中濃度を著しく増大させたことは明らかである。同様に、Rev60を単独で、またはブデソニド250または750ug/kgと組み合わせて使用すると、チャレンジ後6時間経過した時点においてIFNγの血中濃度が著しく増大した。これらの抗炎症性サイトカインの増大は、少なくとも一部は、チャレンジ後6時間経過した時点で見られる生理学的呼吸パラメータに見られる有益な効果を十分に説明できる。これらのサイトカインに対する効果は、チャレンジ後24時間経過した時点においてもはや観察されなかった(データは図示されていない)。
ランテスまたはCCL5は、循環T細胞によって発現されるサイトカインであり、またT細胞、好酸球、および好塩基球に対し走化性を有し、また白血球を炎症部位内に動員する積極的な役割を担っている。ランテスは好酸球を活性化して、例えば、好酸球カチオン性タンパク質を放出することも行う。これは、好酸球の密度を変え、それらを低濃度にし、一般化された細胞活性化の状態を表すと考えられる。これは、好酸球に特異的な酸化的代謝の強力なアクティベータでもある。
図114に示されているように、ランテスの全身濃度は、6時間で著しく低減されたが、Rev60単独で、またはブデソニド250または750ug/kgと組み合わせて治療された動物におけるチャレンジ後24時間では低減されなかった。ここでまた、ブデソニド750ug/kgおよびこのデータの集合において顕著であるRev60の明確な相乗効果がある。Rev60単独で、またはブデソニドと組み合わせて治療された動物においてチャレンジ後6時間または24時間のいずれかで観察された、KCまたはIL8、MCP3、IL1b、GCSF、TGFb、さらにはNGFなどの多数の他の炎症促進性サイトカインについて類似の下向きの傾向が観察された。
(実施例11)
(本発明の治療薬流体は、細胞間密着結合を調節することに対し実質的な有用性を有している。)
特定のいくつかの態様によれば、本発明のディフューザ処理治療薬流体は、例示的なポリペプチドサケカルシトニン(sCT)を含むポリペプチドの肺および全身送達ならびにバイオアベイラビリティに関係するものを含む、細胞間密着結合を調節することに対する実質的な有用性を有する。
実施例の概要。サケカルシトニン(sCT)は、分子量が3,432ダルトンである32アミノ酸ペプチドである。カルシトニンの肺送達は、肺薬物送達(例えば、気管内薬物送達)を高める方法を調査するために、モデルシステム(例えば、げっ歯類モデルシステム、ブラウンノルウェーラットモデルシステムなど)において広範に研究されている。特定の例示的ないくつかの態様によれば、本発明のディフューザ処理治療薬流体は、細胞間密着結合、例えば、ブラウンノルウェーラットモデルシステムにおけるsCTの肺および全身送達ならびにバイオアベイラビリティに関連するものを調節する(例えば、高める)ことに対する実質的な有用性を有する。
方法:
気管内薬物送達。特定のいくつかの実施形態によれば、sCTは、本発明の治療薬流体中に調製され、気管内薬物送達デバイスを使用してブラウンノルウェーラットに投与される。いくつかの態様において、げっ歯類気管内薬物送達用に設計されたPenn Century Micro−Sprayerデバイスを使用しており、肺送達が行いやすいが、当技術分野で理解されているように、肺胞沈着度が比較的低いためペプチドの全身バイオアベイラビリティが劣る。特定のいくつかの態様によれば、当技術分野で認められているモデルシステムは、本発明のディフューザ処理治療薬流体が、ポリペプチドの肺および全身送達ならびにバイオアベイラビリティに関連するものを含む、細胞間密着結合を調節する(例えば、高める)ことに対する実質的な有用性を有することを確認するために使用された。
動物群および投薬。いくつかの態様において、ブラウンノルウェーラットは、3つの群(1つの群につきn=6)、a)無菌食塩水、b)O2富化しない基礎液(「基礎液」)、またはc)本発明のディフューザ処理治療薬流体(「本発明の富化ベース溶液」)のうちの1つに割り当てられる。本発明の富化ベース溶液は、例えば、0.9%の食塩液中に酸素を注入することによって形成される。好ましくは、基礎液は、上皮細胞の低浸透圧破壊の発生の可能性を極力小さくするために約0.9%の食塩液を含む。いくつかの実施形態では、sCTは、基礎液と本発明の富化ベース溶液中で別々に再構成され、各溶液は、60分以内に気管内注入によって各動物群に送達される(動物1匹当たり200μL中10μgのsCT)。
アッセイ。特定のいくつかの態様において、血液試料(例えば、200μL)を採集し、投薬の前、および投薬の後5、10、20、30、60、120、および240分の時点にEDTAコーティングされた管内に入れる。血漿を採取し、ELISAを使用してsCTのアッセイを行うまで≦−70℃の温度で保管する。
Agilant遺伝子アレイデータ生成のために、肺組織を摘出し、TRI Reagent(TR118、Molecular Research Center,Inc.社)中に浸けた。簡単に言うと、TRI Reagentを約1mL、それぞれの管の中にある組織50〜100mgに加えた。glass−Teflon(商標)またはPolytron(商標)ホモジナイザーを使用して、TRI Reagent中で試料を均質化した。試料を−80℃で保管した。
結果:
密着結合の増強。図84は、RDC1676−01(付加的酸素を加えた本発明の専用デバイスを通じて処理された無菌食塩水。本開示のガス富化界面動電的生成流体(Rev))が、sCTの全身送達およびバイオアベイラビリティを減少させたことを示している。特定のいくつかの態様によれば、全身送達の減少は、sCTの吸着が減少した結果生じたもので、十中八九、肺密着結合の増強の結果であると思われる。RDC1676−00は、本開示の方法により、ただし酸素化を使用せずに、処理された無菌食塩水を意味する。
それに加えて、特定のいくつかの態様によれば、密着結合関連タンパク質は、肺組織中でアップレギュレーションを受けた。図85〜89は、それぞれ接合接着分子JAM2および3、GJA1、3、4、および5(結合性接着)、OCLN(オクルーディン)、クローディン(例えば、CLDN 3、5、7、8、9、10)、TJP1(密着結合タンパク質1)のアップレギュレーションを示している。
(実施例12)
(本発明の治療薬流体は、一酸化窒素濃度を調節することに対し実質的な有用性を有している。)
特定のいくつかの態様によれば、本発明のディフューザ処理治療薬流体は、一酸化窒素濃度および/または関連酵素を調節することに対して実質的な有用性を有している。図90〜94は、NOS1および3、ならびにNostrin、NOS3のアップレギュレーションを示す、RDC1676−01(付加的酸素を加えた本発明の専用デバイスを通じて処理された無菌食塩水。本開示のガス富化界面動電的生成流体(Rev))に曝露されたヒト包皮ケラチノサイトから得られたデータを示す。対照的に、ブラウンノルウェーラットの肺組織(「サイトカイン発現」という表題の上記の実施例の組織)から得られたデータは、NOS2、NOS3、Nostrin、およびRevを含むNOS1APのダウンレギュレーションを示している(図93、94)。
(実施例13)
(局所的界面動電効果(電圧/電流)は、絶縁されたローターおよびステータの特徴を含む専用設計の混合装置を使用して実証された)
この実施例では、特徴が局所的な界面動電効果(電圧/電流)は、絶縁されたローターおよびステータの特徴を含む専用設計の混合装置を使用して実証された。
概要。上記の「二重層効果」という表題の節で詳細に説明されているように(図26および28も参照)、混合装置100は、界面動電的効果にさらに有利な複雑な混合をもたらす第1の物質110および第2の物質120と複雑な動的乱流との複雑な非線形流体力学的相互作用によって産出物質102を形成するように構成することができる。特定のいくつかの態様によれば、これらの界面動電的効果の結果は、産出物質102内で、産出物質内に安定化されている可溶化された電子の形態を含む、電荷再分配および酸化還元反応として存在しうる。
出願人は、混合チャンバー内の一般的な表面に関係する二重層効果に加えて、局所的界面動電効果は、特徴によって誘導されるマイクロキャビテーションおよび特徴の付近で生じる流体の加減速の効力により付与されうるとさらに判断した。この実施例の研究は、こうして、前記の追加の界面動電的態様をさらに調査し、確認するために実施された。
材料:
本明細書で説明されている本発明の混合装置に類似している試験デバイスを構築したが、これは、2つの特徴18(180度で配設されている)を有するステンレス鋼製ローター12、および単一の特徴16がローターの特徴18とステータの特徴16に回転して向かい合わせにできる位置にあるステータ14を備える。重要なのは、ローターおよびステータの特徴が、それぞれの場合において、各ローターおよびステータ本体から絶縁されていることである(図95)。デバイスは、本明細書の別のところで開示されているデバイスに適合するように、ローター:ステータのギャップ20が一貫して0.020インチになるように機械加工された。ローター表面および絶縁されたローターの特徴に対して電気経路を形成するローターの軸(図示されていない)の端部に回転する接点(図示されていない)が設けられている。同様に、ステータは、類似の絶縁された特徴16(図95)を有し、ステータの内面および絶縁されたステンレス鋼の特徴がステータの外側にある各接点に接続されている。
オペアンプ(OpAmp)回路(M)22が、これらの接点の間に接続されている。オペアンプ(OpAmp)回路は、そのような増幅器の高入力インピーダンスを利用することによって非常に低い電圧の測定結果を収集するように構築された。OpAmpの出力は、オシロスコープ(例えば、Pico Scope 3000(商標)を使用してオシロスコープアプリケーションを実行する電池式ラップトップ)の入力に送られる。
デバイスの試験中に周囲ノイズ(例えば、無線ネットワークの信号および60Hzの電力線に由来するRF放射線)が入り込まないようにするために、銅製微細メッシュのRF遮蔽コンパートメント(約3×4×4フィート)を構築してファラデー箱を形成した。この構成で、実験試験中に優れた信号対雑音比を達成し、60HzのACノイズ(例えば、約2ボルト)からの干渉信号および高周波RFを、注目する信号より十分低くなるように低減した。Pico Scope 3000によるオシロスコープアプリケーションを実行する電池式ラップトップを使用することで、試験デバイスの特徴によって生成する30mV信号(図96に示されている)の検出が可能になった。それに加えて、可変速度DCモーターをファラデー箱の外側に配置し、非金属製の軸を介して回転可能試験デバイスに結合して、試験デバイスからモーターノイズを効果的に隔てた。
方法:
OpAmp回路を使用して、ステータの内面12と絶縁されているステータの特徴16とを接続する接点の間の電位を測定した。特定の回路構成を用いて、電位のみを測定した。デバイスの回転速度は、約700から約2800rpmまでの範囲内で変化させることができた(図96のデータは約1800rpmで動作しているデバイスで測定される)。
ポンプまたは蠕動ポンプによる外部由来の電圧発生を避けるため、デバイスに流体を貫流させるために、デバイスに接続されているタンク内の流体に作用する不活性窒素または空気またはアルゴンを使用した。流動機序からの目立った電圧寄与はなく、典型的には、流体をデバイス内に貫流させるためのポンプ力として空気を使用した。
デバイスを通る流体流量は、約1L/分であった。
初期の一連の非回転実験は、ローターを回転させずに、デバイスチャンバー内に流体流を通すことによって実施され、これにより、ステータ本体12と分離された特徴16との間の電圧の存在を判定した。流れの両方向について別々の実験を実施した。
次いで、同じ流体流量を使い、デバイスローターを約300から約1800rpmまでのさまざまな速度で回転させつつ、追加の一連の回転実験を実施した。所定のどの実験についても、流量および回転速度を一定に保った。
結果:
非回転実験に関して、ローターを回転させずに流体をいずれかの方向でデバイス内に貫流させると、ステータの本体と絶縁された特徴との間にはかろうじて感知できる程度の電圧(例えば、1から2mV)しかなかった。
回転実験に関して、図96を参照すると、対向するローター/ステータ特徴を回転させつつ位置を合わせることと一時的な相関(この場合、約1800rpmで)を有する電圧パルス(電位パルス)は、動作している試験デバイス内のOpAmpで測定可能であったことがわかる。さらに、特徴の位置合わせと相関するそのような周期的電圧パルスを、約250または300rpmから約1800rpmまでの範囲にわたって観察することができた。それに加えて、流体流がある場合、またはない場合に、そのような電圧パルスは、デバイスのキャビティ/流体チャンバーが流体で満たされている限り回転実験において観察された。特定のいくつかの態様によれば、機序に束縛されることなく、反復的に回転して位置合わせされた特徴の付近の流体流の速い、荒々しい圧縮(例えば、キャビテーション)、加速および減速によって、回転周期と正確に相関するそれぞれの局所的電圧パルスが発生し、少なくとも一部はこれにより本発明による界面動電的に生成された流体を得た。追加の実験から、電圧パルスの振幅(ピーク形状および高さ)が、この特定の試験デバイスにおいて最初は約250から300rpmで観察可能である回転速度の増大、また少なくとも約2800rpmまでの増大とともに増大することが明らかになった。回転させつつ位置合わせされた特徴の付近における流体流の荒々しい加速および減速などの大きさは、回転速度の増大とともに一般的に増大することが予想され、少なくとも最大値に達するまで、デバイスの幾何学的形状、構成、および/または流量によって課される物理的限界を反映する。追加のいくつかの態様によれば、局所的な電圧スパイクが存在するため、特徴の付近に局所電流(例えば、電流パルス)が発生し、少なくとも一部はこれにより本発明による界面動電的に生成された流体が形成される(例えば、機序に束縛されることなく、本明細書の別のところで説明されているように電気化学反応を生じる)。
追加のいくつかの態様によれば、機序に束縛されることなく、そのような特徴に対し局所的な効果(例えば、電圧パルスおよび電流および/または電流パルス)は、「二重層効果」という表題の下で本明細書の別のところで説明されているより一般的な表面に関係する二重層および流動電流効果と組み合わせた界面動電的に生成された流体の生成に寄与する(図26および28も参照のこと)。
(実施例14)
(非界面動電的に生成された対照流体に関して、本発明の界面動電的に生成された流体は、溶存溶質α,α−トレハロースの13C NMR分析において区別が付くように線幅に影響を及ぼすことが示された。)
概要。本明細書の別のところで開示されている出願人のデータは、本発明の界面動電的に生成された流体が、細胞膜、膜電位/コンダクタンス、膜タンパク質(例えば、Gタンパク質共役受容体などの膜受容体)、カルシウム依存細胞シグナル伝達系、および細胞間結合(例えば、密着結合、ギャップ結合、接着帯、およびデスモソーム)のうちの少なくとも1つの調節により細胞内シグナル伝達の制御または調節を媒介する、有用性と機序の支持となっている。特に、さまざまな当技術分野で認められている動物実験システムおよびアッセイを使用することで、出願人のデータは、対照流体に関して、例えば、制御性T細胞増殖、サイトカインおよびタンパク質濃度(例えば、IL−10、GITR、グランザイムA、XCL1、pStat5、およびFoxp3、トリプターゼ、密着結合関連タンパク質、TSLP受容体、MMP9など)、ブラジキニンリガンドとブラジキニンB2受容体との結合、TSLP受容体の発現、全細胞コンダクタンスなどに対する本発明の流体の示差的な効果を示している。さらに、本明細書で示されているジフテリア毒素(DT390)効果は、β遮断薬(β2アドレナリン受容体)、および/またはGPCR遮断薬、および/またはCaチャネル遮断薬が、例えば、TregおよびPBMC機能上の界面動電的に生成された流体の活性に影響を及ぼすことを示している。
以上をまとめると、これらの効果は、本発明の界面動電的に生成された流体が、従来技術の流体から基本的に区別されるだけでなく、これらが、本明細書で開示され、本明細書で請求されているような新規の組成物および実質的な有用性をもたらすことを示す。
この実施例において。出願人は、この実施例において、本発明の界面動電的に生成された流体の基本的性質をさらに特徴付けるために核磁気共鳴(NMR)研究を実施した。特に、出願人は、非界面動電的に生成された流体への溶解と比較して、界面動電的に生成された流体中に溶解されているα,α−トレハロースの13C NMRスペクトルを分析した。トレハロース(参照のため番号が振られている炭素を使って以下に示されている)は、コスモトロピック溶質であり、例えば、タンパク質改変、膜乾燥、凍結時の生命体生存などに効くものとして公知である。出願人は、上で要約されたデータが与えられた上で、α,α−トレハロースが、本発明の界面動電的に生成された流体の特性/構造をさらに精査するための効果的手段となりうると判断した。出願人は、本発明の流体の特性を評価するためにNMRに関連する「化学シフト」、および「線幅」に対する効果を使用することが可能であると判断した。これらの研究のため、酸素を過剰に含まない、本発明の界面動電的に生成された流体(本明細書では「ソラス」と称する)を使用して、溶存酸素などの常磁性不純物が分析される効果に対抗するか、または他の何らかの形で隠す作用をする可能性を極力小さくなるようにした。
材料と方法:
溶液調製。リン酸塩(ナトリウム塩)およびD−(+)−トレハロース二水和物(T9531−10G、金属含有量を低減)および1% DSSを含む99.9%のD2OをSigma社から購入した。「生理食塩水」は、Hospira社から購入した、pH5.6(4.5〜7.0)の0.9%の塩化ナトリウムである。トレハロース0.949gを生理食塩水965μLおよびリン酸緩衝生理食塩水35mL中に溶解して0.25Mのα,α−トレハロース溶液を調製した(0.9%のNaCl溶液で100mMのリン酸緩衝液を調製したが、その際に、この緩衝液35μLをトレハロース溶液1.0mLに加えたときに、pHが6.93になるようにした)。
核磁気共鳴スペクトル収集。ワシントン大学のNMR設備で、Bruker BBO:X{1H}プローブを装着し、XWINNMR 3.5が稼動する500MHzまたは300MHzのBruker Avanceシリーズの計測装置を使用して、スペクトルを収集した。13C NMRスペクトルは、64Kまたは128Kデータ点および128または256スキャンを使用する14000Hzまたは7900Hzの掃引幅を使用して125.7MHzまたは75.46MHzで収集された。その結果得られたFIDを2回0で埋め、1.0Hzの線広がり係数で処理した。Bruker Biospin Variable Temperatureユニットを使用して、温度を制御した。99.9%のD2O+1%のDSS+微量のアセトンを、Wilmad社から購入した同軸NMR挿入管内に入れることにより外部ジューテリウムロックを使用した。Mestrelab Research社のiNMRソフトウェアv.2.6.4を使用してNMRデータを処理した。
結果:
試料スペクトル。図97A〜Cは、DSSシグナルが−2.04ppmで一列に並ぶように互いの上に重ねた6つの13C−NMRスペクトルの拡張を示している。DSSシグナルは、図の一番右側に示されており、アセトンメチルシグナルは、30.9ppmの近くに示されている。残りのシグナルは、上記のα,α−トレハロース構造に示されているようにトレハロースの6個の炭素に対応する。これからわかるように、ソラス溶液中の炭素シグナルは、対照溶液と比較して小さい化学シフト(一般的に高磁場)を示す。
線幅測定。以下の表1は、ソラス食塩液(本発明の界面動電的に生成された流体)に対する3つの異なる温度におけるトレハロースの6個の炭素およびアセトンのメチル炭素の測定された13C NMR線幅を示している。対応する生理食塩水試料は、それぞれの温度における非界面動電的対照溶液を表す。ソラス溶液中、線幅は、それぞれの炭素原子について対照溶液中の線幅と著しく異なる。低い温度におけるソラス溶液中のより小さな線幅は、対照溶液と比較して、全体としてトレハロース分子(溶媒和水分子を含む)のタンブリング速度がより高速であることから生じる。
アセトン線に関して正規化されたそれぞれの場合におけるソラスおよび生理食塩水中のα,α−トレハロースに対する
13C NMR線幅が、図97Aにグラフで示されている。結論として、ソラスおよび生理食塩水中のα,α−トレハロースに対する
13C NMR線幅のNMRデータは、溶質タンブリングを変える本発明の溶液の特性があることを示している。
上記で、また本明細書の別のところで要約した生物活性と併せると、これらの13C NMR線幅効果は、本発明の界面動電的に生成された流体が、溶質相互作用に関して従来技術の流体から基本的に区別されるだけでなく、これらが、本明細書で開示され、本明細書で特許請求されているような新規の組成物および実質的な有用性をもたらすことを示す。
(実施例15)
(非界面動電的に生成された対照流体に関して、本発明の界面動電的に生成された流体は、微分方形波ボルタメトリープロファイルを生成し、溶出ポーラログラフ法の下で固有の電気化学的特性を示した。)
概要。本明細書の別のところで開示されている出願人のデータは、本発明の界面動電的に生成された流体が、細胞膜、膜電位/コンダクタンス、膜タンパク質(例えば、Gタンパク質共役受容体などの膜受容体)、カルシウム依存細胞シグナル伝達系、および細胞間結合(例えば、密着結合、ギャップ結合、接着帯、およびデスモソーム)のうちの少なくとも1つの調節により細胞内シグナル伝達の制御または調節を媒介する、有用性と機序の支持となっている。特に、さまざまな当技術分野で認められている生物学的実験システムおよびアッセイを使用する。出願人のデータは、対照流体に関して、例えば、制御性T細胞増殖、サイトカインおよびタンパク質濃度(例えば、IL−10、GITR、グランザイムA、XCL1、pStat5、およびFoxp3、トリプターゼ、密着結合関連タンパク質、TSLP受容体、MMP9など)、ブラジキニンリガンドとブラジキニンB2受容体との結合、TSLP受容体の発現、全細胞コンダクタンスなどに対する本発明の流体の示差的な効果を示している。さらに、本明細書で示されているジフテリア毒素(DT390)効果は、β遮断薬(β2アドレナリン受容体)、および/またはGPCR遮断薬、および/またはCaチャネル遮断薬が、例えば、TregおよびPBMC機能上の界面動電的に生成された流体の活性に影響を及ぼすことを示している。
以上をまとめると、これらの効果は、本発明の界面動電的に生成された流体が、従来技術の流体から基本的に区別されるだけでなく、これらが、本明細書で開示され、本明細書で特許請求されているような新規の組成物および実質的な有用性をもたらすことを示す。
この実施例において。出願人は、この実施例において、本発明の界面動電的に生成された流体の基本的性質をさらに特徴付けるためにボルタメトリー研究を実施した。ボルタメトリーは、流体の酸化還元電位を決定するか、または運動速度および定数を測定するために頻繁に使用される。すべてのボルタメトリー法の共通する特徴は、それらの方法が、電極に電位を印加することを伴い、その結果得られる電流が、電気化学セルを通じて監視されるという点である。加電圧は、化学種を電気化学還元するかまたは酸化することによって電極表面における電気活性種の濃度の変化を生み出す。
特に、出願人は、ボルタメトリー法(つまり、方形波ボルタメトリーおよび溶出ポーラログラフ法)を使用して、対照食塩液と本発明の界面動電的に生成された試験流体(例えば、ソラスおよびレベラ)との間の基本的な差異をさらに特徴付けた。出願人は、上で要約された生物学的および膜効果データが与えられた上で、方形波ボルタメトリーおよび溶出ポーラログラフ法が、本発明の界面動電的に生成された流体の固有の特性をさらに特徴付けるための効果的手段となると判断した。
出願人は、特定の電圧における電流の差、異なる濃度の電気活性酸化還元化合物の生成、新しい酸化還元化合物の作製、および固有の電気化学的特性の保持を利用して、本発明の流体の特性を評価し、特徴付けることが可能だと判断した。これらの研究では、酸素を過剰に含む界面動電的に生成された流体(レベラ)と酸素を過剰に含んでいない本発明の界面動電的に生成された流体(ソラス)の両方を使用した。
材料と方法:
材料および溶液調製。これらの実験は、EG & G SMDE 303Aポーラログラファー(Princeton Applied Research)上で実施した。方形波ボルタメトリー実験で使用される、電解液NaOHは、Sigmaから購入した。本発明の流体溶液の試料10mLを、NaOH 100μLをレベラ食塩液9.9mLに加えて、0.18モル濃度溶液を作ることによって調製した。溶出ポーラログラフ実験に関して、余分な電解液を使用しなかった。
方形波ボルタメトリー。上述のように、ボルタメトリーは、流体中の酸化還元電位を決定するか、または運動速度および定数を測定するために使用される。方形波ボルタメトリー実験では、0.0から約−1.75Vまでの電位を電極に印加し、その結果得られた、電気化学セル内を流れる電流を監視した。
溶出ポーラログラフ法。溶出ポーラログラフ法は、方形波ボルタメトリー法に類似している。しかし、上述のように電解液を使用せず、また事前ステップを伴わなかった。事前ステップでは、静的水銀滴下電極を、30秒間、−1.1Vに保持して、その還元形態が水銀中で可溶性である化合物のアマルガムを形成した。次いで、−1.1Vと0.0Vの間の電位をスキャンして、その結果得られる、電気化学セルを流れる電流を監視した。このアマルガム上の負電位への線形スキャンで、これらの化合物の高感度測定を行った。
結果:
方形波ボルタメトリー。図98から明らかなように、−0.14V、−.47V、−1.02V、および−1.36Vにおける電流プロファイルは、さまざまな試験された薬剤間で異なる。特定のいくつかの態様によれば、さまざまな特定の電圧で生じる電流の差は、電気活性酸化還元化合物および/または新しい、もしくは固有の電気活性酸化還元化合物の異なる濃度、および/または水銀滴の周りを囲む拡散制限電気二重層の変化のうちの少なくとも一方を示す。
溶出ポーラログラフ法。図99は、本発明の界面動電的に生成された流体、レベラおよびソラスは、非界面動電的に生成されたブランク群および食塩液対照流体中に存在しない−0.9ボルトにおける顕著なピークを持つ固有のスペクトルを示す。それに加えて、非界面動電的に生成されたブランクおよび食塩液対照流体のスペクトルは、界面動電的に生成されたソラスおよびレベラ流体に対するスペクトル中に存在していない−0.19および−0.3ボルトにおける特徴的なピークを示す。
したがって、特定のいくつかの態様によれば、これらの結果は、非界面動電的に生成された食塩液対照流体と比較して、本発明の界面動電的に生成されたソラスおよびレベラ流体の固有の電気化学的特性を示している。追加のいくつかの態様によれば、これらの結果は、界面動電的に生成された流体と非界面動電的に生成された流体との対比で異なる濃度の電気活性酸化還元化合物ならびに新しい、および/または固有の電気活性酸化還元化合物のうちの少なくとも1つの存在または生成を示す。
本明細書の別のところで提示されているさまざまな生物学的データの上に、この微分ボルタメトリーデータは、特に、全細胞コンダクタンスに対する示差的な効果、13C NMR線幅分析、および混合装置の特徴に局所的な効果(例えば、電圧パルスおよび電流および/または電流パルス)とともに考えたときに、本発明の界面動電的に生成された流体が、従来技術の流体から基本的に区別されるだけでなく、本明細書で開示され、本発明において特許請求されているような新規の組成物および実質的な有用性をももたらすことを示す。
(実施例16)
(本発明の界面動電的に生成された流体(RNS−60)で灌流した気管支上皮細胞(BEC)に対し実施されたパッチクランプ分析から、RNS−60に曝露すると、その結果、全細胞コンダクタンスが減少し、cAMP刺激「カクテル」による刺激で全細胞コンダクタンスが劇的に増大し、また、全細胞コンダクタンスの薬物感受性部分が増加したが、これは基本条件の下で観察されたものの10倍高いことが明らかになった。)
この実施例では、パッチクランプ研究を実施して、膜構造、膜電位または膜導電率、膜タンパク質または受容体、イオンチャネル、およびカルシウム依存細胞メッセージ伝達系のうちの少なくとも1つの調節によって細胞内シグナル伝達を調節する本発明の界面動電的に生成された流体の有用性をさらに確認した。
概要。上記の実施例7に示されているように(例えば、バイオレイヤー干渉法バイオセンサーOctet Rapid Extended Detection(RED)(forteBio(商標))を使用してB2受容体に結合するブラジキニンの安定化を示す図75)、B2受容体に結合するブラジキニンは、濃度依存であり、結合親和性は、生理食塩水と比較して本開示の界面動電的に生成された流体(例えば、Rev、界面動電的に生成されたガス富化流体)において増大した。それに加えて、微粒子状物質(PM)で刺激されたT制御性細胞に関連して実施例8に示されているように、データは、対照流体(Revなし、Solisなし)に関してPMおよびRevの存在下でT制御性細胞の増殖の減少を示しており(図76)、これは本発明の界面動電的に生成された流体Revが、例えば、アッセイにおける増殖の相対的減少によって示されているように、制御性T細胞機能を改善したことを示した。さらに、本発明の流体に曝露した結果、食塩液および培地対照(PMなし)に関してIL−10の産生が維持されるか、またはごくわずか減少した。同様に、微粒子状物質(PM)で刺激された末梢血単核細胞(PBMC)のアレルギー性喘息(AA)プロファイルに関連して、データは、本開示の流体への曝露(「PM+Rev」)の結果、食塩液および培地対照のものと類似している著しく低いトリプターゼ濃度が得られることを示していた。それに加えて、実施例8および図76〜83に示されているジフテリア毒素(DT390)の効果は、β遮断薬、GPCR遮断薬、およびCaチャネル遮断薬が、TregおよびPBMC機能に対する界面動電的に生成された流体の活性に影響を及ぼすことを示している。さらに、実施例11のデータは、追加のいくつかの態様により、本発明の流体に曝露した後、密着結合関連タンパク質が肺組織内でアップレギュレートされたことを示している。図85〜89は、接合接着分子JAM2および3、GJA1、3、4、および5(結合性接着)、OCLN(オクルーディン)、クローディン(例えば、CLDN 3、5、7、8、9、10)、TJP1(密着結合タンパク質1)のアップレギュレーションを示している。
パッチクランプ研究を実施して、前記有用性についてさらに調査し、確認した。
材料と方法:
パッチクランプ研究で、気管支上皮細胞系列Calu−3を使用した。Calu−3気管支上皮細胞(ATCC#HTB−55)を、実験のときが来るまでガラス製カバースリップ上で10%のFBSを補ったハムのF12およびDMEM培地の1:1混合物中で増殖させた。簡単に言うと、全細胞電圧クランプデバイスを使用して、本発明の界面動電的に生成された流体(例えば、RNS−60、60ppmの溶存酸素を含む界面動電的に処置された生理食塩水、この実施例ではときには「薬物」とも称する)に曝露したCalu−3細胞上の効果を測定した。
パッチクランプ法は、上皮細胞膜極性およびイオンチャネル活性に対する試験物質(RNS−60)の効果を評価するために使用された。特に、135mMのNaCl、5mMのKCl、1.2mMのCaCl2、0.8mMのMgCl2、および10mMのHEPES(N−メチルD−グルカミンでpHを7.4に調整)からなる水浴溶液中で気管支上皮系列Calu−3に対し全細胞電圧クランプを実行した。ベース電流を測定し、その後、RNS−60を細胞上に灌流した。
より具体的には、パッチピペットをホウケイ酸ガラス(カリフォルニア州クレアモント所在のGarner Glass Co社)から2段階Narishige PB−7垂直プラーで引き出し、次いで、Narishige MF−9マイクロフォージ(ニューヨーク州イーストメドー所在のNarishige International USA社)で6〜12メグオームの抵抗を持つように火造りした。ピペットに135mM KCl、10mM NaCl、5mM EGTA、10mM Hepesを含む細胞内液を充填し、pHをNMDG(N−メチル−D−グルカミン)で7.4に調整した。
培養したCalu−3細胞を細胞外液135mM NaCl、5mM KCl、1.2mM CaCl2、0.5mM MgCl2、および10mM Hepes(遊離酸)を入れたチャンバー内に配置し、pHをNMDGで7.4に調整した。
Olympus IX71顕微鏡(日本、東京都所在のオリンパス株式会社)の40×DIC対物レンズを使用して細胞を観察した。細胞接着ギガシールを定着した後、優しく吸引して慣らしを行い、全細胞構成を達成した。慣らしをしたらすぐに、細胞に対し−120、−60、−40、および0mVで電圧クランプし、±100mVの電圧ステップ(500ms/ステップ)で細胞を刺激した。対照条件の下で全細胞電流を集めた後、同じ細胞を、上記の対照流体と同じ細胞外溶質およびpHを有する試験流体が入っている槽に通して灌流し、同じプロトコルを用いて、異なる保持電位における全細胞電流を記録した。
電気生理学的データを、Axon Patch 200B増幅器で収集し、10kHzのローパスフィルターに通し、1400A Digidata (カリフォルニア州ユニオンシティー所在のAxon Instruments社)で2値化した。pCLAMP 10.0ソフトウェア(Axon Instruments社)を使用して、データの収集および分析を行った。保持電位(V)に対して、約400ミリ秒のステップで実際の電流値をプロットすることにより、電流(I)/電圧(V)の関係式(全細胞コンダクタンス)を求めた。I/Vの関係式の傾きが、全細胞コンダクタンスである。
薬物と化学薬品。指示されている場合には必ず、細胞を8−Br−cAMP(500mM)、IBMX(イソブチル−1−メチルキサンチン、200mM)、およびフォルスコリン(10mM)を含むcAMP刺激カクテルで刺激した。cAMP類似体8−Br−cAMP(Sigma Chem.Co.社)は、25mMのH2Oストック溶液から使用した。Forskolin(Sigma社)およびIBMX(Sigma社)は、10mMのForskolinと200mMのIBMXの両方のストック溶液を含むDMSO溶液から使用した。
パッチクランプ結果:
図100は、0mVの保持電位から±100mVまで階段状に変化するプロトコルを使用する、基本(cAMPがない)条件の下での全細胞電流を示している。代表的なトレーシングは、n=12個の細胞の平均である。左側のトレーシングは、対照であり、次に、試験溶液を灌流している間の全細胞トレーシングが続く(真ん中)。右側のトレーシングは、試験平均値を、対照条件の下での値から差し引くことで得られた複合差分である。電流/電圧の関係式から得られた、全細胞コンダクタンスは、両方の条件の下で線形性が高く、試験条件によりコンダクタンスの、著しいとはいえ控え目な変化を反映する。全細胞コンダクタンスへの寄与、つまり、薬物(本発明の界面動電的に生成された流体)によって阻害される成分も、線形であり、逆転電位は、0mVに近い。過分極化状態の下では、全細胞コンダクタンスは減少する。
図101は、−40mVの保持電位から±100mVまで階段状に変化するプロトコルを使用する、基本条件の下での全細胞電流を示している。代表的なトレーシングは、n=12個の細胞の平均である。左側のトレーシングは、対照であり、次に、試験溶液を灌流している間の全細胞トレーシングが続く(真ん中)。右側のトレーシングは、試験平均値を、対照条件の下での値から差し引くことで得られた複合差分である。電流/電圧の関係式から得られた、全細胞コンダクタンスは、両方の条件の下で線形性が高く、試験条件によりコンダクタンスの、著しいとはいえ控え目な変化を反映する。全細胞コンダクタンスへの寄与、つまり、薬物(本発明の界面動電的に生成された流体)によって阻害される成分も、線形であり、逆転電位は、0mVに近い。値は、0mVプロトコルで得られた値と比較的類似している。
図102は、−60mVの保持電位から±100mVまで階段状に変化するプロトコルを使用する、基本条件の下での全細胞電流を示している。代表的なトレーシングは、n=12個の細胞の平均である。左側のトレーシングは、対照であり、次に、試験溶液を灌流している間の全細胞トレーシングが続く(真ん中)。右側のトレーシングは、試験平均値を、対照条件の下での値から差し引くことで得られた複合差分である。電流/電圧の関係式から得られた、全細胞コンダクタンスは、両方の条件の下で線形性が高く、試験条件によりコンダクタンスの、著しいとはいえわずかな変化を反映する。全細胞コンダクタンスへの寄与、つまり、薬物によって阻害される成分も、線形であり、逆転電位は、0mVに近い。値は、0mVプロトコルで得られた値と比較的類似している。
図103は、−120mVの保持電位から±100mVまで階段状に変化するプロトコルを使用する、基本条件の下での全細胞電流を示している。代表的なトレーシングは、n=12個の細胞の平均である。左側のトレーシングは、対照であり、次に、試験溶液を灌流している間の全細胞トレーシングが続く(真ん中)。右側のトレーシングは、試験平均値を、対照条件の下での値から差し引くことで得られた複合差分である。電流/電圧の関係式から得られた、全細胞コンダクタンスは、両方の条件の下で線形性が高く、試験条件によりコンダクタンスの、著しいとはいえわずかな変化を反映する。全細胞コンダクタンスへの寄与、つまり、薬物によって阻害される成分も、線形であり、逆転電位は、0mVに近い。値は、0mVプロトコルで得られた値と比較的類似している。
図104は、さまざまな保持電位から±100mVまで階段状に変化するプロトコルで得られる、cAMP刺激条件の下での全細胞電流を示している。代表的なトレーシングは、n=5個の細胞の平均である。左側のトレーシングは、対照であり、次に、cAMP刺激の後の全細胞トレーシングが続き、次に、薬物含有溶液による灌流が続く。右側のトレーシングは、薬物+cAMPにおける試験平均値を、対照条件(cAMP単独)の下での値から差し引くことで得られた複合差分である。最上部のトレーシングは、0mVで電圧プロトコルから得られたトレーシングであり、−40mVではその下のトレーシングである。電流/電圧の関係式から得られた、全細胞コンダクタンスは、すべての条件の下で線形性が高く、試験条件によるコンダクタンスの変化を反映する。
図105は、さまざまな保持電位から±100mVまで階段状に変化するプロトコルで得られる、cAMP刺激条件の下での全細胞電流を示している。代表的なトレーシングは、n=5個の細胞の平均である。左側のトレーシングは、対照であり、次に、cAMP刺激の後の全細胞トレーシングが続き、次に、薬物含有溶液による灌流が続く。右側のトレーシングは、薬物+cAMPにおける試験平均値を、対照条件(cAMP単独)の下での値から差し引くことで得られた複合差分である。最上部のトレーシングは、−60mVで電圧プロトコルから得られたトレーシングであり、−120mVではその下のトレーシングである。電流/電圧の関係式から得られた、全細胞コンダクタンスは、すべての条件の下で線形性が高く、試験条件によるコンダクタンスの変化を反映する。
図106は、cAMP活性化電流に対する保持電位の効果を示している。全細胞コンダクタンスに対する薬物(本発明の界面動電的に生成された流体、RNS−60、60ppmの溶存酸素を含む界面動電的に処置された生理食塩水)の効果を、異なる電圧プロトコル(0、−40、−60、−120mVの保持電位)の下で観察した。基本条件の下では、薬物感受性全細胞電流は、すべての保持電位において同じであった(電圧に影響されない寄与分、左上パネル)。しかし、cAMP活性化条件では、薬物感受性電流は、かなり高く、印加電圧プロトコルに敏感であった。電流/電圧の関係は、非線形性が高い。これは、差し引かれた電流(底部パネル)においてさらに観察され、その場合、0mVにおける全細胞コンダクタンスの寄与分は、プロトコル毎にさらに差し引かれた(n=5)。
実施例のまとめ。したがって、特定のいくつかの態様によれば、データは、基本条件の下で薬物(本発明の界面動電的に生成された流体、RNS−60、60ppmの溶存酸素を含む界面動電的に処置された生理食塩水)の効果は、控え目であるが、一貫していることを示している。全細胞コンダクタンスに対する薬物の効果を高めるために、cAMP刺激「カクテル」で刺激した後に薬物を灌流することによる実験も行ったが、これにより、全細胞コンダクタンスが劇的に高まった。興味深いことに、このプロトコルは、全細胞コンダクタンスの薬物感受性部分も高め、これは基本条件の下で観察される値の10倍高かった。それに加えて、cAMP刺激の存在下で、この薬物は、さまざまな電圧プロトコルに関して異なる効果を示し、界面動電的に生成された流体が全細胞コンダクタンスの電圧依存寄与分に影響を及ぼすことを示していた。コンダクタンスの一次成分も減少したが、これは、他の経路(例えば、イオンチャネル、電位依存性カチオンチャネルなど)の阻害に対する薬物の寄与が少なくともあることを示唆している。
特定のいくつかの態様において、機序に束縛されることなく、出願人のデータは、本発明の界面動電的に生成された流体(例えば、RNS−60、60ppmの溶存酸素を含む界面動電的に処置された生理食塩水)が(複数の)チャネル上で変化を生じるか、または原形質膜からの遮断もしくは回収がなされることと一致している。
出願人の他のデータ(例えば、実施例のデータ)と併せてまとめると、本発明の特定のいくつかの態様は、膜構造、膜電位または膜導電率、膜タンパク質または受容体、イオンチャネル、およびカルシウム依存細胞メッセージ伝達系のうちの少なくとも1つの調節を含む、細胞内シグナル伝達を調節するための組成物および方法を提供し、これの方法は、本発明の界面動電的に生成された溶液を使用して限定はしないがGPCRおよび/またはGタンパク質を含む膜構造(例えば、膜および/または膜タンパク質、受容体、または他の成分)の電気化学的変化および/または立体構造変化を付与することを含む。追加のいくつかの態様によれば、これらの効果によって遺伝子発現が調節され、またこれらの効果は、例えば、個別のメッセージ伝達成分などの半減期に応じて持続しうる。
文献の引用
本明細書で参照され、および/または出願データシートに列挙されている、上記の米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物はすべて、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
本明細書の図面および詳細な説明は、制限するのではなく、例示するものであるとみなされるべきであり、本発明を開示されている特定の形態および例に制限することを意図していない。それどころかかえって、本発明は、以下の請求項で定められるように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者にとって明白なさらなる修正、変更、再配置、置換、代替、設計選択、および実施形態を含む。したがって、以下の請求項は、そのようなすべてのさらなる修正、変更、再配置、置換、代替、設計選択、および実施形態を包含するものと解釈されることが意図されている。
前述の実施形態は、異なる他のコンポーネント内に収納される、または接続される異なるコンポーネントを示している。このように示されているアーキテクチャは単に例示的であること、また実際に、同じ機能を達成する他の多くのアーキテクチャを実装できることは理解されるべきである。概念的な考え方として、同じ機能を達成するようにコンポーネントを配置することは、所望の機能が達成されるように実際に「関連付けられる」。したがって、特定の機能を達成するように組み合わされた本明細書の2つのコンポーネントは、アーキテクチャまたは中間コンポーネントに関係なく所望の機能が達成されるように互いに「関連付けられている」ものとみなせる。同様に、そのように関連付けられている2つのコンポーネントは、所望の機能性をもたらすように互いに「動作可能なように接続されている」か、または「動作可能なように結合されている」ものとしてみなせる。
本発明の特定の実施形態が示され説明されているが、当業者にとっては、本明細書の教示に基づき、本発明およびそのより広範な態様から逸脱することなく変更および修正を加えることができ、したがって、付属の請求項は、本発明の真の精神および範囲内にあるようなすべての変更および修正をその範囲内に包含するものであることは明白であろう。さらに、本発明は、付属の請求項によってのみ画定されることも理解されるべきである。当業者であれば、一般に、本明細書で使用されている、また特に付属の請求項(例えば、付属の請求項の本文)で使用されている言い回しは、「制約のない」言い回し(例えば、「含むこと」という言い回しは、「限定はしないが、含むこと」と解釈すべきであり、「有する」という言い回しは、「少なくとも有する」と解釈すべきであり、「含む」という言い回しは、「限定はしないが、含む」と解釈すべきである、など)として一般的に意図されていることを理解されるであろう。さらに、当業者であれば、導入される請求項列挙の特定の数が意図されている場合、そのような意図は、請求項内で明示的に記載され、そのような列挙がない場合は、そのような意図は存在しないことを理解するであろう。例えば、理解の助けとして、付属の請求項に、導入句「少なくとも1つの」および「1つまたは複数の」を入れて請求項列挙を導入することができる。しかし、英語原文において、このような語句を使用したとしても、不定冠詞「a」または「an」による請求項列挙の導入によって、たとえその請求項が導入句「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」、および「a」または「an」などの不定冠詞を含むとしても、そのような導入される請求項列挙を含む特定の請求項がそのような列挙を1つしか含まない発明に制限されることを意味すると解釈すべきではなく(例えば、「a」および/または「an」は、典型的には、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味すると解釈されるべきである)、請求項列挙を導入するために使用される定冠詞の使用についても同じことが成り立つ。それに加えて、特定の数の導入される請求項列挙が明示的に記載されるとしても、当業者であれば、そのような列挙は、典型的には、少なくとも記載されている数を意味するものと解釈すべきであることを理解するであろう(例えば、他に修飾子を付けない「2つの列挙」という飾りのない列挙は、典型的には、少なくとも2つの列挙、または2つ以上の列挙を意味する)。
したがって、本発明は、付属の請求項により定められる場合を除き制限されない。