JP2011249232A - アルカリ電池用電解液のゲル化剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】空気泡の混入が少ないアルカリ電池用電解液のゲルを形成する。
【解決手段】アルカリ電池用電解液のゲル化剤は、カルボキシル基含有水溶性共重合体と多価アルコール脂肪酸エステルとを含む。カルボキシル基含有水溶性共重合体は、アクリル酸およびメタクリル酸のうちの少なくとも一つのアクリル酸系単量体100質量部、並びに、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0.01〜1質量部を重合して得られるものである。多価アルコール脂肪酸エステルは、カルボキシル基含有水溶性共重合体の重合において用いられるアクリル酸系単量体の100質量部に対して0.2〜6質量部含まれる。
【選択図】なし
【解決手段】アルカリ電池用電解液のゲル化剤は、カルボキシル基含有水溶性共重合体と多価アルコール脂肪酸エステルとを含む。カルボキシル基含有水溶性共重合体は、アクリル酸およびメタクリル酸のうちの少なくとも一つのアクリル酸系単量体100質量部、並びに、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0.01〜1質量部を重合して得られるものである。多価アルコール脂肪酸エステルは、カルボキシル基含有水溶性共重合体の重合において用いられるアクリル酸系単量体の100質量部に対して0.2〜6質量部含まれる。
【選択図】なし
Description
本発明は、ゲル化剤、特に、アルカリ電池用電解液のゲル化剤に関する。
アルカリ電池の電極、特に負極として、亜鉛粉末等の電極作用物質とともにアルカリ電解液をゲル化したものが知られており、そのような電極を形成するための一般的なゲル化剤としてカルボキシメチルセルロースや天然ガム等が知られている。
しかし、アルカリ電池用のゲル化剤は、アルカリ電解液を単純にゲル化できるだけでは足りず、アルカリ電解液による強アルカリ条件下においても長期にわたり安定なゲルを形成可能なことが求められるとともに、当該ゲルに対し、良好な電池性能を達成する上で必要な電極作用物質等の分散性を高めることや、アルカリ電池に対して外部からの衝撃が加えられた際に内部を守る耐衝撃性を高める等の各種特性を付与することが同時に求められるものである。加えて、アルカリ電解液のゲルは、アルカリ電池を常温で長期間保管したときに、アルカリ電解液が浸出して表面に現れる「離水」と呼ばれる現象を起こすことがあり、その場合、アルカリ電池の性能が損なわれるだけではなく、液漏れ現象、すなわち、アルカリ電池の外装缶からアルカリ電解液が漏れ出す現象を引き起こすことがあるため、離水の抑制も求められる。
そこで、最近は、これらの要請を満足しやすいゲル化剤として、α、β−不飽和カルボン酸類、特にアクリル酸若しくはメタクリル酸またはそれらの塩を主構成単量体成分とするカルボキシル基含有重合体の微粉末または粒状物が多用されるに至っている(例えば、特許文献1、2および3)。
ところが、上述のカルボキシル基含有重合体の微粉末等は、アルカリ電解液へ添加したときに塊状物(ママコ)を生じやすい。このため、アルカリ電解液のゲル化の際にはアルカリ電解液を高速撹拌しながらカルボキシル基含有重合体の微粉末等を添加することで塊状物の生成を抑制しているが、この方法によると、アルカリ電解液のゲル化の過程で多量の空気が泡状に混入し、生成したゲルが泡噛み状態のものになってしまう。泡噛み状態のゲルは、混入した空気泡の分だけ体積が大きくなることから、アルカリ電池の外装缶内へ充填する際に単位容積当たりの充填率が低くなり、電池性能を高めるのが困難になる。そこで、泡噛み状態のゲルは、混入した空気泡を除去する必要があるが、そのために時間と労力をかけても効果的に空気泡を除去するのは非常に困難である。
本発明の目的は、空気泡の混入が少ないアルカリ電池用電解液のゲルを形成することにある。
本発明のアルカリ電池用電解液のゲル化剤は、カルボキシル基含有水溶性共重合体と多価アルコール脂肪酸エステルとを含む。ここで用いられるカルボキシル基含有水溶性共重合体は、アクリル酸およびメタクリル酸のうちの少なくとも一つのアクリル酸系単量体100質量部、並びに、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0.01〜1質量部を重合して得られるものである。また、アルカリ電池用ゲル化剤において、多価アルコール脂肪酸エステルは、カルボキシル基含有水溶性共重合体の重合において用いられるアクリル酸系単量体の100質量部に対して0.2〜6質量部含まれる。
本発明のアルカリ電池用電解液のゲル化剤において用いられる多価アルコール脂肪酸エステルは、例えば、モノグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビットおよびソルビタンからなる群より選ばれた少なくとも1種の多価アルコールの脂肪酸エステルである。また、本発明のアルカリ電池用電解液のゲル化剤において用いられる多価アルコール脂肪酸エステルは、例えば、ステアリン酸、イソステアリン酸およびオレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の脂肪酸の多価アルコールエステルである。
本発明のアルカリ電池用電解液のゲル化剤において用いられるカルボキシル基含有水溶性共重合体は、アクリル酸系単量体およびエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を溶解し、かつ、カルボキシル基含有水溶性共重合体を溶解しない溶媒中での重合により得られるものが好ましい。
本発明のアルカリ電池用電極は、アルカリ電解液に対して電極作用物質および本発明のアルカリ電池用電解液のゲル化剤を添加することで得られるゲル体からなる。このアルカリ電池用電極は、ゲル体に対して配置された集電体を備えていてもよい。
本発明のアルカリ電池は、本発明のアルカリ電池用電極を備えたものである。
本発明のアルカリ電池用電解液のゲル化剤は、特定のカルボキシル基含有水溶性共重合体と特定量の多価アルコール脂肪酸エステルとを含むものであるため、空気泡の混入が少ないアルカリ電池用電解液のゲルを調製することができる。
本発明のアルカリ電池用電解液の電極は、本発明のアルカリ電池用電解液のゲル化剤を用いて形成されるものであるため、空気泡の混入が少ない。
本発明のアルカリ電池は、本発明のアルカリ電池用電極を備えたものであるため、電極の充填率を高めることで電池性能を高めやすい。
本発明に係るアルカリ電池用電解液のゲル化剤は、カルボキシル基含有水溶性共重合体と多価アルコール脂肪酸エステルとを含んでいる。ここで用いられるカルボキシル基含有水溶性共重合体は、アクリル酸およびメタクリル酸のうちの少なくとも一つのアクリル酸系単量体、並びに、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を重合して得られるものである。
カルボキシル基含有水溶性共重合体の製造に用いられるエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物は、特に限定されるものではなく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、サッカロースおよびソルビトール等のポリオールの2置換以上のアクリル酸エステル類や同様のポリオールの2置換以上のアリルエーテル類、フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、メタクリル酸アリル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、1,5−ヘキサジエン並びにジビニルベンゼン等が挙げられる。これらのエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物として好ましいものは、粘度特性に優れたアルカリ電池用電解液のゲルを形成することができることから、例えば、ペンタエリスリトールアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、リン酸トリアリルおよびポリアリルサッカロースである。エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物は、2種以上のものが併用されてもよい。
カルボキシル基含有水溶性共重合体は、通常、溶媒中において、上述の単量体成分、すなわち、アクリル酸系単量体およびエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物をラジカル重合開始剤の存在下で重合することにより得られる。
この際、アクリル酸系単量体100質量部に対するエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の使用量は、0.01〜1質量部、好ましくは0.3〜0.8質量部に設定する。エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の使用量が0.01質量部未満の場合、アルカリ電解液のゲルを調製すると、当該ゲルの粘度が低下する傾向がある。逆に、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の使用量が1質量部を超える場合、アルカリ電解液をゲル化したときに不溶性のゲルが生成しやすくなる傾向がある。
カルボキシル基含有水溶性共重合体の製造においては、上述の単量体成分とともに、他の単量体成分としてアクリル酸系アルキルエステルを用いることもできる。アクリル酸系アルキルエステルを用いて製造されたカルボキシル基含有水溶性共重合体を含む本発明のゲル化剤は、アルカリ電解液をゲル化するときのママコの発生をより抑えることができ、結果的に空気泡の混入がより少ないゲルを形成しやすくなる。
ここで利用可能なアクリル酸系アルキルエステルは、アクリル酸またはメタクリル酸と炭素数が18〜24である高級アルコールとのエステルである。炭素数が18〜24の高級アルコールのうち好ましいものとしては、例えば、ステアリルアルコール、エイコサノール、ベヘニルアルコールおよびテトラコサノールを挙げることができる。アクリル酸系アルキルエステルは、2種以上のものが併用されてもよい。アクリル酸系アルキルエステルとして特に好ましいものとしては、粘度特性に優れたアルカリ電池用電解液のゲルを形成することができることから、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニルおよびメタクリル酸テトラコサニル並びにこれらの混合物(例えば、メタクリル酸ステアリルが10〜20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10〜20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59〜80質量部およびメタクリル酸テトラコサニルの含有量が1質量部以下の混合物である、日本油脂株式会社の商品名「ブレンマーVMA70」)を挙げることができる。
アクリル酸系単量体100質量部に対するアクリル酸系アルキルエステルの使用量は、通常、1〜10質量部に設定するのが好ましく、1.5〜8質量部に設定するのがより好ましい。アクリル酸系アルキルエステルの使用量が1質量部未満の場合、アクリル酸系アルキルエステルを用いることによる所要の効果が得られにくい可能性がある。逆に、アクリル酸系アルキルエステルの使用量が10質量部を超える場合、アルカリ電解液をゲル化したときに不溶性のゲルが生成しやすくなる可能性がある。
上述の単量体成分を重合するときに用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、通常は上述の単量体成分、すなわち、アクリル酸系単量体およびエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を溶解することができ、かつ、重合により得られるカルボキシル基含有水溶性共重合体を溶解しない溶媒が好ましい。このような溶媒としては、例えば、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、エチレンジクロライド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチルメチルケトンおよびイソブチルメチルケトン等を挙げることができる。特に、品質が安定しており、入手が容易であることから、エチレンジクロライド、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタンおよび酢酸エチルを用いるのが好ましい。溶媒は、2種以上のものが混合して用いられてもよい。
なお、単量体成分としてアクリル酸系アルキルエステルを併用する場合、アクリル酸系アルキルエステルは、他の単量体とともに上記例示の溶媒に溶解させることができる。
溶媒の使用量は、通常、アクリル酸系単量体100質量部に対し、200〜10,000質量部に設定するのが好ましく、300〜2,000質量部に設定するのがより好ましい。溶媒の使用量が200質量部未満の場合、重合反応の進行に従ってカルボキシル基含有水溶性共重合体が析出しやすくなることから反応系の均一な撹拌が困難になり、結果的に反応の制御が難しくなるおそれがある。逆に、溶媒の使用量が10,000質量部を超える場合、単位重合あたりのカルボキシル基含有水溶性共重合体の製造量が少なくなることから、経済性を欠く可能性がある。
重合時に用いるラジカル重合開始剤は、種類が特に限定されるものではないが、通常、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビスメチルイソブチレート、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドおよび第三級ブチルハイドロパーオキサイド等を用いるのが好ましい。これらのラジカル重合開始剤は、2種以上のものが併用されてもよい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、アクリル酸系単量体100質量部に対し、0.01〜0.45質量部に設定するのが好ましく、0.01〜0.35質量部に設定するのがより好ましい。ラジカル重合開始剤の使用量が0.01質量部未満の場合、重合反応速度が遅くなり、目的のカルボキシル基含有水溶性共重合体を経済的に製造するのが困難になる。逆に、ラジカル重合開始剤の使用量が0.45質量部を超える場合、重合反応速度が速くなり過ぎ、反応の制御が難しくなるおそれがある。
重合反応系の雰囲気は、通常、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気が好ましい。重合時の反応温度は、反応溶液の粘度上昇を抑制することで反応制御を容易にする観点、および、得られるカルボキシル基含有水溶性共重合体の嵩密度を制御する観点から、50〜90℃に設定するのが好ましく、55〜80℃に設定するのがより好ましい。重合のための反応時間は、反応温度によって異なるので一概に決定することはできないが、通常、0.5〜10時間である。目的のカルボキシル基含有水溶性共重合体は、通常、反応終了後に反応溶液を80〜130℃に加熱して溶媒を除去すると、白色の微粉末状のものとして単離することができる。
本発明に係るアルカリ電池用電解液のゲル化剤において用いられる多価アルコール脂肪酸エステルは、飽和または不飽和の脂肪酸、好ましくは炭素数が10〜30の飽和または不飽和の脂肪酸と多価アルコールとのエステルである。多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸として好ましいものは、通常、ステアリン酸、イソステアリン酸およびオレイン酸のうちから選ばれた少なくとも1種のものである。また、多価アルコール脂肪酸エステルを構成する多価アルコールとして好ましいものは、通常、モノグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリンおよびデカグリセリン等のグリセリン系多価アルコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビット並びにソルビタンのうちから選ばれた少なくとも1種のものである。多価アルコール脂肪酸エステルは、2種以上のものが併用されてもよい。
ステアリン酸の多価アルコールエステルの具体例としては、モノステアリン酸モノグリセリル、モノステアリン酸モノ・ジグリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル、モノステアリン酸テトラグリセリル、モノステアリン酸ペンタグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ソルビタン、ジステアリン酸モノグリセリル、ジステアリン酸ジグリセリル、ジステアリン酸トリグリセリル、ジステアリン酸ペンタグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、トリステアリン酸モノグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル、トリステアリン酸ヘキサグリセリル、トリステアリン酸デカグリセリル、トリステアリン酸ソルビタン、ペンタステアリン酸テトラグリセリル、ペンタステアリン酸ヘキサグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル、ヘキサステアリン酸ペンタグリセリル、ヘプタステアリン酸デカグリセリル、オクタステアリン酸ヘプタグリセリルおよびデカステアリン酸デカグリセリル等が挙げられる。ステアリン酸の多価アルコールエステルは、モノステアリン酸の多価アルコールエステルとジステアリン酸の多価アルコールエステルとの混合物であるセスキステアリン酸多価アルコールエステル、例えば、セスキステアリン酸モノグリセリルやセスキステアリン酸ソルビタン等であってもよい。
イソステアリン酸の多価アルコールエステルの具体例としては,モノイソステアリン酸モノグリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、モノイソステアリン酸トリグリセリル、モノイソステアリン酸テトラグリセリル、モノイソステアリン酸ペンタグリセリル、モノイソステアリン酸ヘキサグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸ソルビタン、ジイソステアリン酸モノグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸トリグリセリル、ジイソステアリン酸テトラグリセリル、ジイソステアリン酸ペンタグリセリル、ジイソステアリン酸ヘキサグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、トリイソステアリン酸モノグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸トリグリセリル、トリイソステアリン酸テトラグリセリル、トリイソステアリン酸ペンタグリセリル、トリイソステアリン酸ヘキサグリセリル、トリイソステアリン酸デカグリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸トリグリセリル、テトライソステアリン酸テトラグリセリル、テトライソステアリン酸ペンタグリセリル、テトライソステアリン酸ヘキサグリセリル、テトライソステアリン酸デカグリセリル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸デカグリセリル、ヘプタイソステアリン酸デカグリセリルおよびデカイソステアリン酸デカグリセリル等が挙げられる。イソステアリン酸の多価アルコールエステルは、モノイソステアリン酸の多価アルコールエステルとジイソステアリン酸の多価アルコールエステルとの混合物であるセスキイソステアリン酸多価アルコールエステル、例えば、セスキイソステアリン酸ソルビタン等であってもよい。
オレイン酸の多価アルコールエステルの具体例としては、モノオレイン酸モノグリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノオレイン酸テトラグリセリル、モノオレイン酸テトラペンタグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノオレイン酸ソルビタン、ジオレイン酸モノグリセリル、ジオレイン酸ジグリセリル、ジオレイン酸ペンタグリセリル、ジオレイン酸デカグリセリル、トリオレイン酸モノグリセリル、トリオレイン酸ペンタグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリル、トリオレイン酸ソルビタン、ペンタオレイン酸テトラグリセリル、ペンタオレイン酸ヘキサグリセリル、ペンタオレイン酸デカグリセリル、ヘプタオレイン酸デカグリセリルおよびデカオレイン酸デカグリセリル等が挙げられる。オレイン酸の多価アルコールエステルは、モノオレイン酸の多価アルコールエステルとジオレイン酸の多価アルコールエステルとの混合物であるセスキオレイン酸多価アルコールエステル、例えば、セスキオレイン酸ソルビタン等であってもよい。
これらの多価アルコール脂肪酸エステルのうちで好ましいものは、少量の使用で空気泡の混入しにくいゲルが得られやすいことから、例えば、ジステアリン酸ヘキサグリセリル、モノイソステアリン酸モノグリセリル、ジイソステアリン酸ヘキサグリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、モノオレイン酸モノグリセリル、モノオレイン酸モノ・ジグリセリルおよびモノオレイン酸ソルビタンである。
本発明に係るアルカリ電池用電解液のゲル化剤において、多価アルコール脂肪酸エステルの使用量は、カルボキシル基含有水溶性共重合体の製造時に用いたアクリル酸系単量体の100質量部に対して、0.2〜6質量部、好ましくは0.5〜5質量部に設定する。この使用量が0.2質量部未満の場合、アルカリ電解液をゲル化するときにママコが発生しやすくなり、形成されるゲルに空気泡が混入しやすい傾向がある。逆に、この使用量が6質量部を超える場合、アルカリ電解液をゲル化するときにママコが発生しやすくなり、形成されるゲルに空気泡が混入しやすい傾向があるのに加えて、ゲルから電解液の離水が発生しやすくなる。
本発明に係るアルカリ電池用電解液のゲル化剤は、カルボキシル基含有水溶性共重合体に対して多価アルコール脂肪酸エステルを添加して混合することで製造することができる。多価アルコール脂肪酸エステルを添加するための方法としては、通常、カルボキシル基含有水溶性共重合体を製造するための重合反応系からカルボキシル基含有水溶性共重合体を単離した後に添加して混合する方法を採用するのが好ましい。この際、混合機としては、ブレンダー、ニーダー、ヘンシェルミキサー、コニカルミキサー等の一般的な混合機を用いることができる。
このようなカルボキシル基含有水溶性共重合体に対する多価アルコール脂肪酸エステルの添加、混合方法においては、通常、カルボキシル基含有水溶性共重合体と多価アルコール脂肪酸エステルとの均一な混合を図るため、混合時に溶媒を用いるのが好ましい。この溶媒は、通常、カルボキシル基含有水溶性共重合体へ添加する多価アルコール脂肪酸エステルを溶解するために用いられる。この場合、多価アルコール脂肪酸エステルは、溶媒溶液としてカルボキシル基含有水溶性共重合体に対して添加、混合される。この目的で使用可能な溶媒としては、例えば、ノルマルヘプタン、酢酸エチルおよびシクロヘキサン等を挙げることができる。この溶媒は、2種以上のものの混合物であってもよい。ここで用いる溶媒として好ましいものは、安全性等の観点から、ノルマルヘプタンと酢酸エチルとの混合溶媒である。
溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、カルボキシル基含有水溶性共重合体と多価アルコール脂肪酸エステルとを均一に混合しやすく、混合後に除去しやすいことから、通常、多価アルコール脂肪酸エステル100質量部に対して100〜100,000質量部に設定するのが好ましく、500〜80,000質量部に設定するのがより好ましい。
なお、カルボキシル基含有水溶性共重合体に対して多価アルコール脂肪酸エステルを添加するための方法としては、反応後の重合反応系へ多価アルコール脂肪酸エステルを添加して適宜攪拌し、その後に重合に用いた溶媒を除去する方法を採用することもできる。
多価アルコール脂肪酸エステルを混合後のカルボキシル基含有水溶性共重合体は、必要により乾燥することができる。乾燥のために用いられる装置は、各種のものを用いることができるが、通常、本発明のゲル化剤の諸物性に悪影響を与えずに乾燥効率を高めることができることから、減圧乾燥機を用いるのが好ましい。また、乾燥温度は、通常、30〜130℃に設定するのが好ましく、50〜120℃に設定するのがより好ましい。乾燥温度が30℃未満の場合、乾燥に長時間を要し、経済性を損なうことがある。逆に、乾燥温度が130℃を超える場合、本発明のゲル化剤は、アルカリ電解液への分散性が低下し、アルカリ電解液の均質なゲルを形成するのが困難になる可能性がある。なお、乾燥時間は、本発明のゲル化剤を長期間保存した場合の塊状化等を防ぐ観点から、乾燥後の溶媒含有率が7質量%未満になるよう設定するのが好ましく、通常、0.5〜10時間である。
カルボキシル基含有水溶性共重合体と多価アルコール脂肪酸エステルとの混合物、すなわち、本発明のゲル化剤は、所望の目開きの篩で分級して粗粉を取り除き、中位粒子径を所望の範囲、例えば、アルカリ電解液へ均一に分散させやすい範囲に調整することもできる。
本発明に係るアルカリ電池用電解液のゲル化剤は、アルカリ電解液に対して添加すると、アルカリ電解液のゲル体を形成することができる。ここで、ゲル化可能なアルカリ電解液は、アルカリ電池において用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水酸化カリウム水溶液や水酸化ナトリウム水溶液等である。
また、アルカリ電解液のゲル体を調製するときに、アルカリ電解液に対して本発明のゲル化剤とともに電極作用物質を添加すると、アルカリ電池用のゲル状の電極を得ることができる。この際、電極作用物質を選択することでアルカリ電池用の正極または負極を製造することができる。正極を製造するために用いられる電極作用物質としては、例えば、二酸化マンガン等のマンガン化合物、オキシ水酸化ニッケル、亜鉛およびコバルトのうちの少なくとも一つとニッケルとの共晶物等のニッケル化合物並びに鉄(VI)酸カリウム、鉄(VI)酸ナトリウム、鉄(VI)酸リチウム、鉄(VI)酸セシウム、鉄(VI)酸銀、鉄(VI)酸ストロンチウム、鉄(VI)酸マグネシウム、鉄(VI)酸カルシウム、鉄(VI)酸バリウムおよび鉄(VI)酸亜鉛等の鉄(VI)酸化合物等が挙げられる。一方、負極を製造するために用いられる電極作用物質としては、例えば、インジウム、ビスマス、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、バナジウム、鉄、銅、ジルコニウム、ニオビウム、銀、ガリウム、亜鉛およびスズ等と亜鉛との亜鉛合金のような亜鉛化合物が挙げられる。電極作用物質は、ゲル状の電極において均一に分散させるのが好ましいため、粉末状のものを用いるのが好ましい。
なお、上述のようなゲル状の電極を製造する場合、電極の導電性および電極作用物質の安定性を高めることができることから、アルカリ電解液として濃度が34〜48質量%の水酸化カリウム水溶液を用いるのが特に好ましい。
上述のようなゲル状の電極は、必要に応じ、アルカリ電池において、集電体を配置して用いることができる。
アルカリ電解液のゲル体(以下、「ゲル体」という場合は上述のゲル状の電極を含む)を製造する場合、必要に応じて防腐剤や安定剤等の各種添加剤をアルカリ電解液に対して添加することができる。また、上述のゲル状の電極を製造する場合においては、アルカリ電解液に対して各種の電極用添加剤を添加することもできる。正極を製造する場合の添加剤としては、アルカリ電池の貯蔵時の容量維持率を改善する観点から、例えば、酸化イットリウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウムおよびフッ化カルシウム等を用いることができ、また、導電性を改善する観点から、例えば、黒鉛、アセチレンブラックおよびカーボンブラック等を用いることができる。一方、負極を製造する場合の添加剤としては、ゲル化剤の増粘性向上の観点から、例えば、酸化チタン、酸化ビスマス、酸化銅、酸化インジウム、酸化スズおよび酸化ニオブ等を用いることができる。
アルカリ電解液に対して本発明のゲル化剤等を添加してゲル体を製造する際は、塊状物(ママコ)の生成を抑制するために、アルカリ電解液を高速攪拌しながらゲル化剤等を添加するのが好ましい。
本発明のゲル化剤の使用量は、電極作用物質等の分散性を高める目的や、アルカリ電池に対して外部からの衝撃が加えられた際に内部を守る耐衝撃性を高める目的等に応じて設定することができるため、限定されるものではないが、通常、アルカリ電解液に対して0.5〜4.0質量%に設定するのが好ましく、1.0〜3.0質量%に設定するのがより好ましい。
従来のゲル化剤を用いたアルカリ電解液のゲル化では、ゲル化剤の塊状物の生成を抑えるためにアルカリ電解液を高速攪拌することから、ゲル化の過程で多量の空気泡が混入するのに対し、本発明のゲル化剤を用いた場合は、空気泡の混入を抑制することができる。また、本発明のゲル化剤を用いて得られたゲル体は、空気泡が混入したとしても、各種の脱気法、例えば遠心分離法や減圧脱気法を適用することで混入した空気泡を容易に除去することができる。特に、減圧脱気法では、10torr程度の減圧下にゲル体を配置することで混入した空気泡を容易に除去することができることから、このような減圧環境を設定可能な簡易な装置を用いることで大量のゲル体から効率的に空気泡を除去することができる。
このため、本発明のゲル化剤を用いれば、空気泡の混入の少ない高密度のゲル体を容易に製造することができる。
本発明のアルカリ電池は、例えば、金属製の外装缶内に正極と負極とをセパレーターを挟んで物理的に接触しないよう分離した状態で収容し、また、必要に応じて正極または負極に対して集電体を配置した状態で外装缶の両端に正極および負極にそれぞれ連絡する端子が形成されるよう外装缶をガスケット、金属板および金属封口板等で密閉状態に封止した円筒型またはボタン型のものであり、正極および負極の少なくとも一つにおいて本発明のアルカリ電池用電極を用いたものである。
本発明のアルカリ電池のうち、円筒型のアルカリ電池においては、通常、負極において本発明に係るゲル状のアルカリ電池用電極であってゲル体に集電体を配置したものを用いることができ、正極としてアルカリ電池において一般的なものを用いることができる。このような円筒型アルカリ電池の一般的な構造は、例えば、先に挙げた特許文献1に記載のようなものである。一方、ボタン型のアルカリ電池においては、通常、正極および負極の両方において本発明に係るゲル状のアルカリ電池用電極を用いることができる。このようなボタン型アルカリ電池の一般的な構造は、例えば、先に挙げた特許文献3に記載のようなものである。
本発明のアルカリ電池は、本発明のアルカリ電池用電極を用いていることから常温で長期間保管した場合であっても電極においてアルカリ電解液の離水が起こりにくいため、電池性能が損なわれにくく、また、液漏れが生じにくい。また、本発明のアルカリ電池は、高密度化が容易なゲル体を備えた本発明のアルカリ電池用電極を用いているため、これまでのゲル状電極を用いる場合よりも単位容積当りの充填率を高めることができ、高い電池性能を達成することができる。
以下に実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例等によりなんら限定されるものではない。
比較例1
撹拌機、温度計、窒素導入管および冷却管を備えた500mL容の反応容器に、ノルマルヘプタン108.8g、酢酸エチル36gおよび2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(MAIB)0.036gを仕込んだ。これを均一に撹拌、混合した後、反応容器の上部空間、原料および溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素雰囲に設定した。
撹拌機、温度計、窒素導入管および冷却管を備えた500mL容の反応容器に、ノルマルヘプタン108.8g、酢酸エチル36gおよび2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(MAIB)0.036gを仕込んだ。これを均一に撹拌、混合した後、反応容器の上部空間、原料および溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素雰囲に設定した。
次いで、溶液の温度を73〜75℃に保ちながら、窒素雰囲気下、単量体溶液(アクリル酸62.5g、ノルマルヘプタン54.5g、酢酸エチル18gおよびペンタエリスリトールアリルエーテル0.2gの混合溶液)を0.75g/hrの速度で連続的に滴下し、滴下終了後73〜75℃で4時間重合反応させた。重合反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して溶媒を留去し、さらに110℃、10mmHgの減圧条件下で8時間乾燥することにより、白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体57gを得た。このカルボキシル基含有水溶性共重合体をゲル化剤とした。
実施例1
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒40gにモノオレイン酸モノ・ジグリセリル(太陽化学株式会社製の商品名「サンソフトO−30V」)0.2gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とモノオレイン酸モノ・ジグリセリルとを含む粉末状のゲル化剤20gを得た。
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒40gにモノオレイン酸モノ・ジグリセリル(太陽化学株式会社製の商品名「サンソフトO−30V」)0.2gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とモノオレイン酸モノ・ジグリセリルとを含む粉末状のゲル化剤20gを得た。
実施例2
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒40gにジイソステアリン酸ヘキサグリセリル(日本エマルジョン株式会社製の商品名「EMALEX DISG−6」)0.6gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とジイソステアリン酸ヘキサグリセリルとを含む粉末状のゲル化剤20gを得た。
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒40gにジイソステアリン酸ヘキサグリセリル(日本エマルジョン株式会社製の商品名「EMALEX DISG−6」)0.6gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とジイソステアリン酸ヘキサグリセリルとを含む粉末状のゲル化剤20gを得た。
実施例3
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒80gにトリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(高級アルコール工業株式会社製の商品名「KAK PTI」)1.0gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とトリイソステアリン酸トリメチロールプロパンとを含む粉末状のゲル化剤20gを得た。
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒80gにトリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(高級アルコール工業株式会社製の商品名「KAK PTI」)1.0gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とトリイソステアリン酸トリメチロールプロパンとを含む粉末状のゲル化剤20gを得た。
実施例4
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒40gにモノオレイン酸モノグリセリル(理研ビタミン株式会社製の商品名「リケマールOL−100E」)0.2gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とモノオレイン酸モノグリセリルとを含む粉末状のゲル化剤19gを得た。
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒40gにモノオレイン酸モノグリセリル(理研ビタミン株式会社製の商品名「リケマールOL−100E」)0.2gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とモノオレイン酸モノグリセリルとを含む粉末状のゲル化剤19gを得た。
実施例5
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒40gにモノイソステアリン酸モノグリセリル(日光ケミカルズ株式会社製の商品名「NIKKOL MGIS」)0.4gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とモノイソステアリン酸モノグリセリルとを含む粉末状のゲル化剤20gを得た。
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒40gにモノイソステアリン酸モノグリセリル(日光ケミカルズ株式会社製の商品名「NIKKOL MGIS」)0.4gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とモノイソステアリン酸モノグリセリルとを含む粉末状のゲル化剤20gを得た。
実施例6
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒30gにモノオレイン酸ソルビタン(日本エマルジョン株式会社製の商品名「エマレックス SPO−100」)0.12gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とモノオレイン酸ソルビタンとを含む粉末状のゲル化剤19gを得た。
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒30gにモノオレイン酸ソルビタン(日本エマルジョン株式会社製の商品名「エマレックス SPO−100」)0.12gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とモノオレイン酸ソルビタンとを含む粉末状のゲル化剤19gを得た。
実施例7
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒40gにジステアリン酸ヘキサグリセリル(日本エマルジョン株式会社製の商品名「EMALEX DSG−6」)0.2gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とジステアリン酸ヘキサグリセリルとを含む粉末状のゲル化剤20gを得た。
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒40gにジステアリン酸ヘキサグリセリル(日本エマルジョン株式会社製の商品名「EMALEX DSG−6」)0.2gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とジステアリン酸ヘキサグリセリルとを含む粉末状のゲル化剤20gを得た。
比較例2
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒40gにジイソステアリン酸ヘキサグリセリル(日本エマルジョン株式会社製の商品名「EMALEX DISG−6」)0.02gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とジイソステアリン酸ヘキサグリセリルとを含む粉末状のゲル化剤19gを得た。
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒40gにジイソステアリン酸ヘキサグリセリル(日本エマルジョン株式会社製の商品名「EMALEX DISG−6」)0.02gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とジイソステアリン酸ヘキサグリセリルとを含む粉末状のゲル化剤19gを得た。
比較例3
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒40gにモノオレイン酸モノグリセリル(理研ビタミン株式会社製の商品名「リケマールOL−100E」)1.6gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とモノオレイン酸モノグリセリルとを含む粉末状のゲル化剤21gを得た。
比較例1と同様の方法で得られた白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性共重合体20gを500mLセパラブルフラスコに仕込んだ。これに対し、ノルマルヘプタン(A)と酢酸エチル(B)とをA/B=95/5の容量比で混合した溶媒40gにモノオレイン酸モノグリセリル(理研ビタミン株式会社製の商品名「リケマールOL−100E」)1.6gを溶解した溶液を攪拌下で添加して混合した後、110℃、10mmHgの減圧下で8時間乾燥し、カルボキシル基含有水溶性共重合体とモノオレイン酸モノグリセリルとを含む粉末状のゲル化剤21gを得た。
評価
実施例1〜7および比較例1〜3において得られたゲル化剤について、次の評価をした。結果を表1に示す。
実施例1〜7および比較例1〜3において得られたゲル化剤について、次の評価をした。結果を表1に示す。
(空気泡の混入評価)
40質量%水酸化カリウム水溶液98.5質量%に対してゲル化剤1.5質量%を添加して攪拌、混合することでゲル溶液を調製した。得られたゲル溶液10mLを50mL容の透明ガラスサンプル瓶に入れてガラス瓶の底部から光を照射し、測色色差計(日本電色工業株式会社製の型番「ZE−2000」)を用いて反射光によるゲル溶液の白色度(%)を測定した。白色度が小さいほどゲル溶液における空気泡の混入が少ないことを示している。
40質量%水酸化カリウム水溶液98.5質量%に対してゲル化剤1.5質量%を添加して攪拌、混合することでゲル溶液を調製した。得られたゲル溶液10mLを50mL容の透明ガラスサンプル瓶に入れてガラス瓶の底部から光を照射し、測色色差計(日本電色工業株式会社製の型番「ZE−2000」)を用いて反射光によるゲル溶液の白色度(%)を測定した。白色度が小さいほどゲル溶液における空気泡の混入が少ないことを示している。
(空気泡の除去性評価)
<評価1>
40質量%水酸化カリウム水溶液99質量%に対してゲル化剤1質量%を添加して攪拌、混合することでゲル溶液を調製した。得られたゲル溶液20mLを100mL容のトールビーカー(直径45mm×高さ90mm)に入れ、そのときのゲル溶液の高さ(減圧前高さ)と、トールビーカーを10torrの減圧下に6分間放置した後のゲル溶液の高さ(減圧後高さ)とを測定し、下記の式(1)により高さ上昇率を算出した。高さ上昇率が200%以下であれば、ゲル溶液の製造時に混入した空気泡の除去性が良好(合格)である。
<評価2>
評価1で調製したゲル溶液100質量部に対して電極作用物質である亜鉛粉末200質量部を添加して均一に攪拌、混合し、試験用ゲル状負極を製造した。得られた試験用ゲル状負極20mLを100mL容のトールビーカー(直径45mm×高さ90mm)に入れ、そのときの試験用ゲル状負極の高さ(減圧前高さ)と、トールビーカーを10torrの減圧下に6分間放置した後の試験用ゲル状負極の高さ(減圧後高さ)とを測定し、下記の式(1)により高さ上昇率を算出した。高さ上昇率が200%以下であれば、試験用ゲル状負極の製造時に混入した空気泡の除去性が良好(合格)である。
<評価1>
40質量%水酸化カリウム水溶液99質量%に対してゲル化剤1質量%を添加して攪拌、混合することでゲル溶液を調製した。得られたゲル溶液20mLを100mL容のトールビーカー(直径45mm×高さ90mm)に入れ、そのときのゲル溶液の高さ(減圧前高さ)と、トールビーカーを10torrの減圧下に6分間放置した後のゲル溶液の高さ(減圧後高さ)とを測定し、下記の式(1)により高さ上昇率を算出した。高さ上昇率が200%以下であれば、ゲル溶液の製造時に混入した空気泡の除去性が良好(合格)である。
<評価2>
評価1で調製したゲル溶液100質量部に対して電極作用物質である亜鉛粉末200質量部を添加して均一に攪拌、混合し、試験用ゲル状負極を製造した。得られた試験用ゲル状負極20mLを100mL容のトールビーカー(直径45mm×高さ90mm)に入れ、そのときの試験用ゲル状負極の高さ(減圧前高さ)と、トールビーカーを10torrの減圧下に6分間放置した後の試験用ゲル状負極の高さ(減圧後高さ)とを測定し、下記の式(1)により高さ上昇率を算出した。高さ上昇率が200%以下であれば、試験用ゲル状負極の製造時に混入した空気泡の除去性が良好(合格)である。
(離水性評価)
40質量%水酸化カリウム水溶液98.5質量%に対してゲル化剤1.5質量%を添加して攪拌、混合し、ゲル溶液を調製した。このゲル溶液100質量部に対して電極作用物質である亜鉛粉末200質量部を添加して均一に攪拌、混合し、試験用ゲル状負極を製造した。この試験用ゲル状負極を50mLメスシリンダーに約40mL充填して14日間放置した。そして、試験用ゲル状負極から離水した浮き水を含むメスシリンダーの内容物の全体の高さと浮き水を除く試験用ゲル状負極部分のみの高さとをそれぞれ測定し、下記の式(2)に基づいて亜鉛粉末の保持率を算出した。亜鉛粉末の保持率が98%以上であれば、試験用ゲル状負極からの離水が少なく、良好(合格)である。
40質量%水酸化カリウム水溶液98.5質量%に対してゲル化剤1.5質量%を添加して攪拌、混合し、ゲル溶液を調製した。このゲル溶液100質量部に対して電極作用物質である亜鉛粉末200質量部を添加して均一に攪拌、混合し、試験用ゲル状負極を製造した。この試験用ゲル状負極を50mLメスシリンダーに約40mL充填して14日間放置した。そして、試験用ゲル状負極から離水した浮き水を含むメスシリンダーの内容物の全体の高さと浮き水を除く試験用ゲル状負極部分のみの高さとをそれぞれ測定し、下記の式(2)に基づいて亜鉛粉末の保持率を算出した。亜鉛粉末の保持率が98%以上であれば、試験用ゲル状負極からの離水が少なく、良好(合格)である。
表1によると、実施例1〜7のゲル化剤を用いてアルカリ電池用電解液のゲル体を調製した場合、得られるゲル体は空気泡の混入が非常に少なく、また、ゲル体に混入した空気泡も容易に除去できることがわかる。また、実施例1〜7のゲル化剤を用いて製造した試験用ゲル状負極は、製造時に混入した空気泡の除去が容易であることから密度を高めることができ、容積の限られたアルカリ電池の外装缶内への充填率を高めることができる。さらに、当該試験用ゲル状負極は、亜鉛粉末の保持率が高いことから、アルカリ電池の性能を低下させにくく、液漏れを生じさせにくい。
Claims (7)
- カルボキシル基含有水溶性共重合体と多価アルコール脂肪酸エステルとを含み、
前記カルボキシル基含有水溶性共重合体は、アクリル酸およびメタクリル酸のうちの少なくとも一つのアクリル酸系単量体100質量部、並びに、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0.01〜1質量部を重合して得られるものであり、
前記多価アルコール脂肪酸エステルを前記アクリル酸系単量体の100質量部に対して0.2〜6質量部含む、
アルカリ電池用電解液のゲル化剤。 - 前記多価アルコール脂肪酸エステルは、モノグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビットおよびソルビタンからなる群より選ばれた少なくとも1種の多価アルコールの脂肪酸エステルである、請求項1に記載のアルカリ電池用電解液のゲル化剤。
- 前記多価アルコール脂肪酸エステルは、ステアリン酸、イソステアリン酸およびオレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の脂肪酸の多価アルコールエステルである、請求項1または2に記載のアルカリ電池用電解液のゲル化剤。
- 前記カルボキシル基含有水溶性共重合体は、前記アクリル酸系単量体およびエチレン性不飽和基を2個以上有する前記化合物を溶解し、かつ、前記カルボキシル基含有水溶性共重合体を溶解しない溶媒中での重合により得られるものである、請求項1から3のいずれかに記載のアルカリ電池用電解液のゲル化剤。
- アルカリ電解液に対して電極作用物質および請求項1から4のいずれかに記載のアルカリ電池用電解液のゲル化剤を添加することで得られるゲル体からなるアルカリ電池用電極。
- 前記ゲル体に対して配置された集電体を備えている、請求項5に記載のアルカリ電池用電極。
- 請求項5および6のいずれかに記載のアルカリ電池用電極を備えたアルカリ電池。
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