JP2011237444A - 果菜類の非破壊品質評価装置及び非破壊品質評価方法 - Google Patents

果菜類の非破壊品質評価装置及び非破壊品質評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】果菜類の糖度と酸度を同時に非接触かつ非破壊で高精度に測定できるとともに、持ち運びが容易な果菜類の非破壊品質評価装置及びそれを用いた非破壊品質評価方法を提供する。
【解決手段】果菜類の非破壊品質評価装置1は、ミカン2などの果菜類に近赤外光を照射する発光部12と、透過近赤外光による投影画像を取り込んでその輝度分布を求める撮像部13及び画像処理部14と、交流磁界を発生してミカン2の内部に渦電流を生じさせる磁界発生部16と、この渦電流によって生じる誘導起電力又は誘導電流を検出する検出部17と、投影画像の最大輝度及び最小輝度を算出する演算部15とを備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、ミカン、桃、イチゴなどの果実あるいはトマトなどの野菜の品質を評価する装置に係り、特に糖度と酸度を同時に非接触かつ非破壊で計測し、等級類別することができるとともに、持ち運びが容易な果菜類の非破壊品質評価装置とそれを用いた非破壊品質評価方法に関する。
従来、果実や野菜(以下、果菜類という。)の品質を評価するために、その一部を切り取って糖度や酸度を測定する方法が行われていた。しかし、この方法では測定に手間がかかることに加え、果菜類の一部を切り取るとその商品価値がなくなってしまう。従って、全数検査を行うことができず、果菜類の糖度や酸度について信頼性の高い測定を行うことができないという課題があった。そこで、近年、果菜類の糖度や酸度を非破壊的に測定する技術について盛んに研究が進められており、既にいくつかの発明や考案が開示されている。
例えば、特許文献1には、「果実の糖酸度非破壊計測法および装置」という名称で、近赤外光の透過・散乱を利用してミカンの糖度と酸度を簡便、かつ正確に計測する方法に関する発明が本願の出願人らによって開示されている。
特許文献1に開示された発明は、4つの波長の近赤外光をミカンに照射して各波長について光強度を測定した後、任意の2波長を選んで組にして2種類の光強度比をそれぞれ求めることを特徴としている。そして、この光強度比を、予め得られた糖度及び酸度が既知のミカンについての光強度比を示すデータと対比することにより、糖度及び酸度を算出することを特徴とする。
このような方法によれば、複雑な計算をする必要がない上に、果実を破壊することなく、その糖度と酸度を迅速に一括計測することが可能である。
次に、特許文献2には、「非破壊糖度測定方法」という名称で、バックグランド光の影響を低減することにより露天程度の環境下でも青果物の糖度を高精度に測定することが可能な方法に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、波長の異なる少なくとも3種類のレーザ光を青果物に照射し、そのレーザ光の吸光度に基づいて青果物の糖度を測定する方法であって、バックグランド光を含んだ検出光量が互いに等しくなるように各レーザ光の入射光量を調整することを特徴としている。
このような測定方法によれば、実際の測定で得られる吸光度が見かけの吸光度である場合にも、バックグランド光の影響を除いて真の糖度を求めることが可能である。
さらに、特許文献3には、「非破壊糖度測定装置」という名称で、メロンなどの大型の青果物に対しても非破壊で高精度に糖度を測定することができる装置に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示された発明は、波長が860nmから960nmの範囲にある3種類の光を青果物に照射するとともに、入射光の青果物表面における照射領域の中心点と青果物の中心とを結ぶ直線の延長線上以外の箇所であって、かつ、入射光の青果物表面における照射領域と検出器が受光する青果物からの出射光の青果物表面における検出領域とが重ならない箇所にこの光の吸収を検出する検出器を設置することを特徴とするものである。
このような構造の装置においては、青果物表面で反射される光や青果物の中に入りながらも皮部で反射される光のように果肉中の糖の情報を含まない不要な光が検出器に入射しないようにすることができる。これにより、検出精度が高まるため、大型の青果物についても高い精度で糖度の測定を行うことが可能となる。
特開2002−22657号公報 特開平8−327536号公報 特開平9−5234号公報
しかしながら、上述の従来技術である特許文献1に開示された発明は、糖度や酸度の違いによって近赤外光が果実に吸収される比率が変化するという原理を利用しているため、その測定精度は糖度や酸度の影響を受けて近赤外光の吸収比率が変化する割合(1万分の1乃至10万分の1以下のオーダー)に依存する。そのため、近赤外光の強度を高精度で検出できる分光器や測定電子回路を装置に組み込む必要があった。
また、特許文献2に開示された発明は、バックグランド光の影響を低減して測定精度を高めることができるものの、レーザ光の吸光度に基づいて糖度を測定する構成となっているため、装置の測定精度は糖度の違いによってレーザ光の吸光度が変化する割合(1万分の1乃至10万分の1以下のオーダー)に依存する。従って、測定精度を高めるにはレーザ光の強度を高い精度で検出しなければならず、装置の構造が複雑になるとともに製造コストが高くなるという課題があった。また、果実の酸度については測定できないという課題があった。
特許文献3に開示された発明は、不要な反射光を除外して必要な反射光のみを検出することにより測定精度を高めることができるものの、その測定原理は近赤外光の透過率(検出光光量/入射光光量)に基づくものであるため、特許文献1又は特許文献2の発明と同様の課題を有している。すなわち、測定精度を高めるためには検出光を高い精度で検出できる回路等を装置に組み込まなければならず、装置が複雑化するおそれがある。
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、果菜類の糖度と酸度を同時に非接触かつ非破壊で高精度に測定できるとともに、持ち運びが容易な果菜類の非破壊品質評価装置及びそれを用いた非破壊品質評価方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である果菜類の非破壊品質評価装置は、交流磁界を発生する磁界発生部と、この交流磁界によって果菜類中に生じる渦電流による誘導起電力又は誘導電流を検出する検出部とを備えることを特徴とするものである。
交流磁界によって果菜類の内部に発生する渦電流は果菜類に含まれる酸の濃度に比例する。従って、このような構造の果菜類の非破壊品質評価装置においては、果菜類の渦電流の影響を受けて発生する誘導起電力又は誘導電流を検出することにより酸の濃度が間接的に算出される。従って、酸度を直接的に測定する場合と異なり、装置が簡単な構造となる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の果菜類の非破壊品質評価装置において、磁界発生部は果菜類の近傍に設置される励磁用コイルを備え、検出部はこの励磁用コイルを挟んで略対称に配置される2つの検出用コイルを備え、この2つの検出用コイルはコイルの巻き方向が互いに逆であることを特徴とするものである。
このような構造の果菜類の非破壊品質評価装置においては、励磁用コイルによって発生する交流磁界により果菜類の内部に渦電流が発生し、この渦電流によって2つの検出用コイルには大きさの異なる誘導起電力又は誘導電流がそれぞれ逆向きに発生する。また、励磁用コイルが発生した交流磁界によって2つの検出用コイルには同じ大きさの誘導起電力又は誘導電流がそれぞれ逆向きに発生する。従って、2つの検出用コイルの発生する誘導起電力又は誘導電流をそれぞれ足し合わせることによれば、励磁用コイルの発生する交流磁界の影響が排除され、果菜類に発生する渦電流のみに起因する誘導起電力又は誘導電流が検出される。
請求項3記載の発明である果菜類の非破壊品質評価方法は、交流磁界を発生する工程と、この交流磁界によって果菜類中に生じる渦電流による誘導起電力又は誘導電流を検出する工程とを備えることを特徴とするものである。
内部を透過する磁界が変化すると果菜類の内部には酸度に比例する渦電流が発生するため、このような果菜類の非破壊品質評価方法によれば、果菜類の渦電流の影響を受けて発生する誘導起電力又は誘導電流を検出することで酸の濃度が間接的に算出される。
以上説明したように、本発明の請求項1記載の果菜類の非破壊品質評価装置においては、小型化及び軽量化を行って持ち運びの容易な構造とすることができる。また、安価に製造することが可能である。
本発明の請求項2記載の果菜類の非破壊品質評価装置においては、果菜類の酸の濃度を高い精度で算出することができる。
本発明の請求項3記載の果菜類の非破壊品質評価方法は、請求項1記載の装置の発明を方法の発明として捉えたものであるため、請求項1記載の発明と同様の効果を有する。
本発明の実施の形態に係る果菜類の非破壊品質評価装置の実施例の外観図である。 本実施例の非破壊品質評価装置のシステム構成図である。 (a)は近赤外カメラによってミカンを撮像する様子を示す模式図であり、(b)はミカンの投影画像の一例である。 (a)及び(b)は近赤外光がミカンを透過する様子を示した模式図である。 (a)及び(b)は投影画像の輝度分布を説明するための概念図である。 (a)乃至(c)は投影画像の輝度分布から求められる谷幅及び谷深さと測定対象物の条件との関係を説明するための概念図である。 (a)及び(b)はそれぞれミカンについての投影画像の輝度分布及びL/dの実測結果である。 (a)及び(b)はそれぞれ本実施例の非破壊品質評価装置による酸度測定方法の概念図及び回路構成図である。 励磁用コイルによって発生する磁界を説明するための概念図である。 酸度既知のクエン酸について検出用コイルの誘導電流を測定した結果である。
本発明の実施の形態に係る果菜類の非破壊品質評価装置とそれを用いた非破壊品質評価方法の実施例について説明する。
果菜類の非破壊品質評価装置の実施例について図1及び図2を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る果菜類の非破壊品質評価装置の実施例の外観図である。また、図2は本実施例の非破壊品質評価装置のシステム構成図である。
図1及び図2に示すように、本実施例の果菜類の非破壊品質評価装置1は、ミカン2などの果実に近赤外光a1を照射する発光部12と、ミカン2を透過した近赤外光(以下、透過近赤外光a2という。)によって投影される画像を取り込んで処理する撮像部13及び画像処理部14と、磁界b1を発生してミカン2の内部に渦電流を発生させる磁界発生部16と、この渦電流によって生じる磁界b2の影響を受けて発生する誘導起電力又は誘導電流を検出する検出部17と、画像処理部14及び検出部17からのデータを演算する演算部15とを備えるものである。
発光部12は、発光ダイオードアレイ光源3とその電源11とからなる。そして、平面状に並列配置された複数の発光ダイオードから構成される発光ダイオードアレイ光源3はミカン2の側面近傍に設置されており、900nm〜1.3μmの波長の近赤外光a1をミカン2に対して照射可能な構造となっている。
近赤外カメラ4からなる撮像部13はミカン2を挟んで発光ダイオードアレイ光源3と略対称に設置され、透過近赤外光a2によるミカン2の投影画像を取り込んで画像データa3を画像処理部14に送るように構成されている。
画像処理部14は近赤外カメラ4に接続される画像処理ボード5からなり、撮像部13から送られた画像データa3はこの画像処理ボード5によって処理され、ミカン2の投影画像について輝度分布が求められる。そして、ミカン2の投影画像の輝度データa4がコンピュータ6からなる演算部15に送られる。
ミカン2の下方近傍には円形の励磁用コイル8及び検出用コイル9a,9bが設置されている。励磁用コイル8は発振器7とともに磁界発生部16を構成し、発振器7は励磁用コイル8の内部に数MHzの交流電流を流すことにより、ミカン2の内部に透過するような磁界b1を発生させる。この磁界b1によってミカン2の内部には図9を用いて後述する渦電流(誘導電流i)が発生し、この渦電流(誘導電流i)によって磁界b2が発生する。磁界b2によって検出用コイル9a,9bに生じる誘導起電力又は誘導電流は検出回路10によって検出される。すなわち、検出用コイル9a,9b及び検出回路10は検出部17を構成しており、検出部17で検出された誘導起電力又は誘導電流は検出データb3としてコンピュータ6からなる演算部15に送られる。
ここで、ミカンの投影画像の輝度分布について図3及び図4を用いて説明する。
図3(a)は近赤外カメラ4によってミカン2を撮像する様子を示す模式図であり、(b)はミカン2の投影画像の一例である。
図3(a)に示すように、近赤外カメラ4はミカン2に対して近赤外光a1が照射される側と反対の側面近傍に設置されており、近赤外光a1の照射方向に対して垂直なXY平面へ投影されるミカン2の画像を取り込むことができる。この画像を画像処理ボード5で処理すると、例えば、図3(b)に示すように輝度が黒と白の2値で表された画像が得られる。図3(b)において、略円形の内側の領域がミカンを表している。また、黒は暗い部分を示し、白は明るい部分を示し、灰色は白及び黒でそれぞれ表される明るさの中間の明るさを示している。なお、ミカンの周囲については、輝度分布を計算する必要がないことやミカンの部分とのコントラストを強調するなどの理由から実際の輝度とは無関係に黒く表示されている。
図3(b)を見ると、周辺部に比べて中央部が黒くなっており、中央部が周辺部に比べて暗いことが分かる。ミカンに限らず、球形状の果菜類においては、中央部が周辺部より肉厚になっているため、中央部を透過する近赤外光a1は散乱したり、あるいは果菜類に吸収されたりし易い。その結果、中央部を透過する近赤外光a1の量は周辺部を透過する近赤外光a1の量よりも少なくなるのである。このように、測定対象物の形状は、その投影画像の輝度分布に大きな影響を与える。なお、ミカンなどの果菜類の投影画像の輝度分布は、形状だけでなく、糖度にも影響される。以下、その投影画像の輝度分布と糖度の関係について説明する。
図4(a)及び(b)は近赤外光a1がミカン2を透過する様子を示した模式図である。なお、図2で説明した構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
図4(a)及び(b)に示すように、ミカン2は照射された近赤外光a1に対して球形レンズとして作用する。従って、近赤外カメラ4に向かう透過近赤外光a2は屈折して中央部に集まる。このとき、糖度の違いにより、近赤外光a1の屈折率が異なる。すなわち、糖度が高い場合(図4(b))には、糖度が低い場合(図4(a))に比べて、近赤外光a1の屈折率が大きくなるのである。従って、測定対象物の寸法と形状が同じなら、その投影画像は、糖度が高いものの方が糖度の低いものに比べて中央部の輝度が高くなる。なお、本来、糖度とはショ糖液100グラム中に含まれるショ糖のグラム数を意味するものであるが、本願明細書においては糖度を屈折式糖度計の読み取り値の意味で用いるものとする。また、一般に、ミカンなどの果菜類においては糖度が高いほど近赤外光の吸光度(出射光の強度/入射光の強度)が高くなることが知られている。しかしながら、その吸光度は1万分の1乃至10万分の1程度のオーダーであり、本願で着目する投影画像の輝度分布に対しては、ほとんど影響しない。すなわち、投影画像の輝度分布に着目する本願発明は、近赤外光の吸光度に着目する従来技術に比べて格段に高い精度で果菜類の糖度評価を行うことが可能なのである。
次に、投影画像の輝度分布について図5を用いて詳しく説明する。
図5(a)及び(b)は投影画像の輝度分布を説明するための概念図である。
図3で説明したように、近赤外カメラ4によって取り込んだミカン2の投影画像を画像処理ボード5によって処理すると、図5(a)に示す2値化された投影画像19が得られる。さらに、投影画像19についてXY座標で表される各ポイントに対応する輝度をZ軸方向にとると、輝度分布20aが得られる。そして、投影画像19の中心21を通る直線22をX軸にとり、直線22上の各ポイントに対応する輝度をZ軸にとると、図5(b)に示すような略V字形の輝度分布20bが得られる。
図5(b)において、輝度Zは最小値であり、これに対応する位置Xはミカン2の中心に略一致している。ここで、位置Xを挟んでその両側に存在する輝度の最大値をそれぞれ輝度Z及び輝度Zとして、これらに対応する箇所をそれぞれ位置X及び位置Xとし、位置Xと位置Xの距離を谷幅Lとする。なお、図5(b)では、輝度Z及び輝度Zが同一となっているが、通常、両者の大きさは異なっている。従って、輝度Zと輝度Zの平均値と輝度Zとの差を谷深さdとする。また、輝度Zと輝度Zの平均値で示される最大輝度と、輝度Z>で示される最小輝度のちょうど中間の輝度Z及び輝度Zを示す位置をそれぞれ位置X及び位置Xとする。そして、位置Xと位置Xの距離、いわゆる半値幅を谷幅Lとする。なお、位置X及び位置Xはミカンの端縁部を示している。従って、図5(b)において位置Xの左側及び位置Xの右側の領域の輝度分布は考慮しないものとする。
既に説明したとおり、投影画像の輝度は、周辺部に比べて中央部が暗くなるように分布するが、測定対象物の糖度が高い場合には糖度が低い場合に比べて中央部の輝度が高くなる。このように測定対象物の糖度が高い場合、図5(b)に示す輝度分布20bは平坦なV字形状をなす。すなわち、谷深さdの値は小さくなり、谷幅Lの値は大きくなる。従って、輝度分布20bにおける谷深さdや谷幅Lに着目することにより、測定対象物の糖度評価が可能となる。
投影画像の輝度分布から求められる谷幅L,L及び谷深さdと測定対象物の条件との関係について図6を用いて説明する。
図6(a)乃至(c)は投影画像の輝度分布から求められる谷幅L,L及び谷深さdと測定対象物の条件との関係を説明するための概念図である。
図6(a)に示すように、2つの測定対象物について寸法が同じ場合には谷幅Lの値は略同一となる。このとき、糖度が高いものは谷深さdの値が小さくなり、谷幅Lの値が大きくなる。従って、谷深さd又は谷幅Lに着目することにより、測定対象物の糖度を評価することができる。これに対して、測定対象物の寸法が異なる場合には谷幅Lの値が異なる。この場合、図6(b)に示すように、谷深さdの値が同じ、すなわち、2つの測定対象物の糖度に差がなくとも、谷幅Lの値は異なるものとなる。従って、測定対象物の寸法が異なる場合に、谷幅Lの値のみに着目して糖度を評価すると、判断を誤るおそれがある。また、図6(c)に示すように、近赤外カメラの絞りや照明などの撮像条件あるいは画像処理の条件の違いにより、グラフ全体の縮尺が異なることがある。このとき、測定対象物の糖度に関係なく、谷深さd及び谷幅L,Lの値は全て小さくなるか、あるいは全て大きくなる。この場合、谷深さd及び谷幅Lのいずれか一方に着目すると糖度評価の判断を誤ってしまう。この結果をまとめて、表1に示す。
このように、谷深さd及び谷幅Lの一方のみに着目して糖度を評価すると、判断を誤る可能性がある。そこで、本願発明では谷深さd及び谷幅Lの両方に着目し、特にL/dの値に基づいて糖度を算出している。これにより、測定対象物の寸法あるいは撮像条件や画像処理条件に起因する誤差の影響が排除される。なお、測定対象物の寸法が略同一の場合や撮像条件等に変更がない場合には、谷深さd及び谷幅Lのいずれか一方のみに着目して糖度を評価しても良い。
糖度の算出方法について図7を用いて説明する。
図7(a)及び(b)はそれぞれミカンについての投影画像の輝度分布及びL/dの実測結果である。
図7(a)は図5(b)の輝度分布20bの実測データに相当する。図7(b)は、糖度既知の4種類のミカンに対して図7(a)のデータを投影画像の中心を通る45°等配の8方位の直線についてそれぞれ求めて平均化した後に、L/dを求め、対応する糖度ごとにグラフにプロットしたものである。図7(b)を見ると、糖度が高くなるにつれてL/dが高くなる傾向があることがわかる。なお、図7(b)では、糖度とL/dの関係が1次式で近似されているが、糖度が10や15に近い場合にはL/dの変化がゆるやかになるため、より詳細にデータをとると、実際には略S字カーブに近づくものと予想される。ただし、いずれにしても、糖度の変化に対してL/dは単調増加するので、図7(b)に示すデータを予めとっておけば、糖度不明のミカンについてもL/dの値から糖度を正確に算出することが可能である。
本実施例では、谷深さdの1/2の輝度に対応する2点の間の距離(半値幅)を谷幅Lとしているが、これに限定されるものではなく、適宜変更可能である。すなわち、L/dに与える測定誤差の影響が小さくなるようなデータを選択しても良い。なお、図5(b)に示す位置X,Xの代わりに位置Xの近くの2点、例えば、位置X,Xを選んで、それらの差を谷幅Lとすると、位置X,Xの間の距離が短いため、谷幅Lに対する測定誤差の影響は大きくなる。また、位置X,Xの代わりに位置X,Xの2点を選んで、それらの差を谷幅Lとすると、糖度の異なる測定対象物を測定した場合であっても測定対象物の寸法が同じ場合には位置X,Xの間の距離に差が生じ難いため、糖度の差が谷幅Lの差として表れないことになる。従って、測定データが読み取り難いなどの特別な事情がない場合には、本実施例に示すように、半値幅を谷幅Lとすることが最も望ましい。さらに、本実施例では投影画像の中心を通る45°等配の8方位の直線についてそれぞれ輝度分布を求めて平均化しているが、直線の数は8本に限定されるものではない。すなわち、この直線の数を限りなく増やしていくとともに、それぞれについて輝度分布を求めて平均化しても良い。なお、これは、画像の中心を円の中心として円周上の各ポイントの輝度を足し合わせて円周の長さで割って平均化する演算を、円周の半径の値を画像の中心から画像端縁までの距離を超えない範囲で順次変化させながら実施することに相当する。
以上説明したように、本実施例の非破壊品質評価装置1においては、糖度の測定系を小型化及び軽量化して持ち運びが容易な構造とすることができる。また、安価に製造することが可能である。さらに、測定対象物である果菜類の商品価値を低下させることなく、糖度に関して全数検査を行うことが可能である。従って、商品の信頼性が高まる。加えて、糖度を算出する際に測定誤差の影響を排除してその精度を高めることができる。
次に、非破壊品質評価装置1を用いて酸度を測定する方法について説明する。なお、以下の説明では、酸度をクエン酸の濃度の意味で使用している。
図8(a)及び(b)はそれぞれ本実施例の非破壊品質評価装置1による酸度測定方法の概念図及び回路構成図である。なお、図1及び図2で説明した構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
図8(a)に示すように、非破壊品質評価装置1は上部にミカン2を載置可能な受け皿(図示せず)が設けられた絶縁性のコイルボビン18と、その外周に巻かれた励磁用コイル8と検出用コイル9a,9bとを備えている。なお、検出用コイル9a,9bは励磁用コイル8の上下にそれぞれ等間隔で配置され、検出用コイル9aは励磁用コイル8と同一方向に巻かれ、検出用コイル9bは励磁用コイル8に対して逆方向に巻かれている。また、励磁用コイル8には発振器7が接続されている。さらに、検出用コイル9a,9bの一端は互いに接続されており、端子A,Bには整流増幅器23と指示計器24からなる検出回路10が接続されている。
このような構造の非破壊品質評価装置1において、励磁用コイル8に交流電流を流した場合に発生する交流磁界について図9を用いて説明する。
図9は励磁用コイル8によって発生する磁界を説明するための概念図である。
図9に矢印で示すように、起電力eによって励磁用コイル8に交流電流iが流れ始めると、上向きの磁界b1が発生して検出用コイル9a,9b及びミカン2を透過する。このとき、検出用コイル9a,9bには磁界b1の変化を妨げるような誘導起電力eが生じる。なお、起電力e及び誘導起電力eは自己インダクタンスL,Lを用いてそれぞれ次のように表される。
一方、誘導起電力eは相互インダクタンスMを用いて次のように表される。
そして、交流電流i及び誘導電流iは最大値I,I及び角周波数ωを用いて次のように表される。
また、起電力e及び誘導起電力eは最大値E,E及び角周波数ωを用いて次のように表される。
式(1)と式(2)及び式(4)乃至式(7)から次式が得られる。
すなわち、交流電流i及び誘導電流iは起電力e及び誘導起電力eに対してそれぞれ位相がπ/2ずれるとともに、次式に示すように起電力eの最大値Eは交流電流iの最大値Iに比例し、誘導起電力eの最大値Eは誘導電流iの最大値Iに比例する。
式(3)に式(4)及び式(7)を代入し、さらに式(9)を用いると次式が得られる。
すなわち、誘導電流iは交流電流iに対して逆向きとなり、誘導電流iの最大値Iは交流電流iの最大値Iに比例する。従って、励磁用コイル8と同じ向きに巻かれた検出用コイル9aには、交流電流iに対して逆向きの誘導電流iが発生し、検出用コイル9aと逆の向きに巻かれた検出用コイル9bには、交流電流iと同じ向きに誘導電流iが発生する。
一方、ミカン2の内部には磁界b1の変化を妨げるような誘導起電力eが生じる。そして、図9に矢印で示すようにこの誘導起電力eによって交流電流iと逆向きに微弱な渦電流(誘導電流i)が発生する。なお、誘導電流iの大きさはミカン2の電気伝導度sと交流電流iの大きさに比例する。
ここで、ミカン2の酸度が低い場合(例えば、10%以下の場合)には、電気伝導度sは酸度αに比例することが知られている。なお、電気伝導度sは糖度の影響をほとんど受けない。また、市販のレモン水の酸度は6%程度であることから、本願発明では酸度の測定範囲を10%以下としている。従って、この範囲内の酸度αについては、電気伝導度sとの間に次の関係が成り立つ。
また、誘導電流iにより磁界b2が発生する。このとき、検出用コイル9a,9bには磁界b2の変化を妨げるような誘導起電力e,eがそれぞれ生じる。なお、誘導起電力e,eは相互インダクタンスM,Mを用いて次のように表される。
また、誘導起電力e,eは最大値E,E及び角周波数ωを用いて次のように表される。
そして、式(13)乃至式(18)と式(4)及び式(8)から次式を得る。
すなわち、誘導起電力e,eは起電力eと同じ向きに発生し、その最大値E,Eはともに起電力eの最大値E及び酸度αに比例する。なお、検出用コイル9aは検出用コイル9bよりもミカン2に近く、磁界b2の影響を検出用コイル9bよりも強く受けるため、相互インダクタンスMは相互インダクタンスMよりも大きい。
一方、検出用コイル9a,9bにおける誘導起電力e,eと誘導電流i,iの関係は自己インダクタンスLを用いて次のように表される。
さらに、誘導電流i,iは最大値I,I及び角周波数ωを用いて次のように表される。
そして、式(17)と式(18)及び式(21)乃至式(24)から次式が得られる。
すなわち、誘導電流i,iは誘導起電力e,eに対してそれぞれ位相がπ/2ずれるとともに、次式に示すように誘導起電力eの最大値Eaは誘導電流iの最大値Iに比例し、誘導起電力eの最大値Eは誘導電流iの最大値Iに比例する。
式(19)に式(27)を代入し、式(20)に式(28)を代入し、さらに、式(10)を用いると次式が得られる。
すなわち、図9に矢印で示すように、検出用コイル9a,9bには交流電流iの起電力eと同じ向きにそれぞれ誘導起電力e,eが発生する。ただし、検出用コイル9a,9bはコイルの巻き線の方向が互いに逆であるため、誘導起電力e,eの向きが同じでも検出用コイル9a,9bを直列に接続すると端子A,B間に発生する電圧は誘導起電力eと誘導起電力eの差となって表れる。同様に、端子A,B間に発生する電流は誘導電流iと誘導電流iの差となって表れる。そして、誘導電流i,iの最大値I,Iは交流電流iの最大値Iと酸度αに比例する。
図9に示すように、交流電流iの向きを正にとると、検出用コイル9a,9bを流れる電流i9a,i9bはそれぞれ次式で表される。
従って、端子A,Bより検出される差動電流iABは次式で表される。
ここで、差動電流iABは角周波数をωとし、最大値をIABとすると次のように表される。
式(33)に式(23)と式(24)及び式(34)を代入すると次式が得られる。
従って、式(35)は式(29)及び式(30)から次のように表される。
すなわち、差動電流iABの最大値IABは酸度α及び交流電流iの最大値Iに比例する。従って、酸度αが既知のミカン2に対して交流電流iの最大値Iに対する差動電流iABの最大値IABの比率、すなわち、(IAB/I)を予め求めておけば、酸度不明のミカン2に対しても(IAB/I)を測定することにより、酸度αが間接的に求められることになる。
このような構造の非破壊品質評価装置1においては、(IAB/I)の値が交流電流iの最大値Iの設定値に依存しないため、例えば、測定対象物の酸度αが低く、差動電流iABの最大値IABの値が小さくなって検出が困難になることが予想される場合には、交流電流iの最大値Iの設定値を大きくすることにより差動電流iABの最大値IABの値を大きくして検出を容易にすることができる。すなわち、交流電流iの最大値Iの設定を測定対象物に応じて適宜変更して、差動電流iABの検出を容易にすることが可能である。これにより、測定誤差を小さくすることができる。また、測定対象物の寸法の違いによって測定対象物と励磁用コイル8との間の距離が変化したとしても、その変化量は検出用コイル9aと検出用コイル9bとの間の距離に比べて格段に小さい。従って、測定対象物から異なる距離に設置された検出用コイル9a,9bによる2つの検出値に基づいて酸度の演算を行う本実施例の非破壊品質評価装置1においては、測定対象物の寸法の違いに起因する誤差の影響が小さくなる。さらに、検出用コイル9a,9bが励磁用コイル8を挟んで略対称に設置されるとともに、コイルが互いに逆向きに巻かれているため、検出データに対する励磁用コイル8により発生する磁界b1の影響が排除される。
なお、検出用コイル9a,9bのコイルの向きは本実施例に示す場合に限定されない。すなわち、検出用コイル9bを励磁用コイル8と同じ向きに巻くとともに、検出用コイル9aを励磁用コイル8と逆向きに巻いても良い。また、検出用コイル9a,9bは励磁用コイル8からそれぞれ等距離で、かつ励磁用コイル8の両側に設置されていれば良く、検出用コイル9a,9bをともにミカン2の片側に設置する必要はない。すなわち、検出用コイル9a,9bのいずれか一方と励磁用コイル8の間にミカン2を配置するような構成としても良い。さらに、非破壊品質評価装置1を用いて果菜類の酸度を測定する場合に、画像処理部14において測定対象物の投影画像の面積Sを求めるとともに、(IAB/I)を面積Sで割って、その値に基づいて酸度を算出する構成とすることもできる。この場合、測定対象物の寸法に基づく誤差の影響を小さくして、酸度の測定精度をさらに高めることが可能である。
また、式(36)に式(35)を代入し、さらに、式(10)と式(27)と式(28)を代入すると、次式が得られる。
すなわち、誘導起電力e,eの最大値E,Eの差は交流電流iの起電力Eと酸度αに比例する。従って、差動電流iABの代わりに誘導起電力e,eの最大値E,Eの差を検出する構成とすることもできる。また、(IAB/I)を求める代わりに(E−E)/Eの値を求めることによっても酸度を算出することが可能である。
次に、酸度の異なるクエン酸について本実施例の非破壊品質評価装置1を用いて検出用コイル9aに発生する起電力e9aを測定した結果について説明する。
まず、検出用コイル9aに発生する誘導起電力e9aの最大値E9aは式(27)より角周波数ω及び自己インダクタンスLを用いて次のように表される。
式(38)、式(11)、式(27)及び式(31)から次式が得られる。
また、式(29)に式(10)及び式(27)を代入すると、次式が得られる。
式(39)に式(40)を代入することにより、誘導起電力e9aの最大値E9aは次のように表される。
いま、クエン酸及び水(酸度α=0)を測定した場合の誘導起電力e9aの最大値E9aを特にそれぞれE及びEとおくことにすると、それぞれ次式で表される。
そして、式(42)に式(43)を代入し、さらに、式(10)乃至式(12)を用いて変形すると次式が成り立つ。
すなわち、(E−E)/Eは酸度αに比例する。
図10は酸度既知のクエン酸について検出用コイル9aの誘導電流を測定した結果である。なお、横軸はクエン酸の濃度を重量%で示した酸度αであり、縦軸は式(44)に示す(E−E)/Eである。
図10に示すように、酸度αは(E−E)/Eと比例関係にある。従って、酸度αが既知のミカン2に対して(E−E)/Eを予め求めておけば、酸度不明のミカン2に対しても(E−E)/Eを測定することで、酸度αを間接的に求めることができるのである。すなわち、上記方法によれば、検出用コイル9a,9bのいずれか一方を省略することもできる。従って、酸度の測定系が簡素化される。
以上説明したように、本実施例の非破壊品質評価装置1を用いて酸度を算出する方法においては、検出用コイル9a,9bに発生する誘導起電力e,e又は誘導電流i,iを検出することにより酸度を間接的に求めることが可能である。従って、酸度を直接的に測定する場合に比べて装置の構成が簡略化される。これにより、装置の小型化及び軽量化が可能であるとともに、製造コストを安くすることができる。
また、本願発明の非破壊品質評価装置及びそれを用いた非破壊品質評価方法によれば、糖度と酸度を同時に、かつ、高精度に測定することが可能である。そして、糖度と酸度の測定原理はそれぞれ異なっており、測定系に相互干渉が発生するおそれがない。従って、誤差の少ない信頼性の高い測定データを得ることが可能である。また、故障し難いため、修理等に要する費用を少なくすることができる。さらに、測定系が簡単な構成となっているため、装置の小型化及び軽量化を図って持ち運びの容易な構造とすることが可能である。
なお、糖度と酸度の測定系の配置は本実施例に示す場合に限定されない。すなわち、発光ダイオードアレイ光源3及び近赤外カメラ4をミカン2の側面近傍に配置し、励磁用コイル8及び検出用コイル9a,9bをミカン2の下方近傍に配置する代わりに、例えば、発光ダイオードアレイ光源3及び近赤外カメラ4をミカン2の上下近傍に配置するとともに、励磁用コイル8及び検出用コイル9a,9bをミカン2の側面近傍に配置しても良い。すなわち、発光ダイオードアレイ光源3及び近赤外カメラ4と、励磁用コイル8及び検出用コイル9a,9bとは互いに干渉し合わない範囲でその設置箇所を適宜変更することができる。
以上説明したように、請求項1乃至請求項3に記載された発明は、ミカン以外の果菜類についても酸度を測定することが可能である。
1…非破壊品質評価装置 2…ミカン 3…発光ダイオードアレイ光源 4…近赤外カメラ 5…画像処理ボード 6…コンピュータ 7…発振器 8…励磁用コイル 9a,9b…検出用コイル 10…検出回路 11…電源 12…発光部 13…撮像部 14…画像処理部 15…演算部 16…磁界発生部 17…検出部 18…コイルボビン 19…投影画像 20a,20b…輝度分布 21…中心 22…直線 23…整流増幅器 24…指示計器 a1…近赤外光 a2…透過近赤外光 a3…画像データ a4…輝度データ b1,b2…磁界 b3…検出データ c,k…比例定数 d…谷深さ s…電気伝導度 e…起電力 e,e,e,e,e9a,e9b…誘導起電力 i…交流電流 i,i,i,i,i9a,i9b…誘導電流 iAB…差動電流 A,B…端子 E,E,E,E,E,E9a,E9b,E…起電力の最大値 I,I,I,I,I,IAB…電流の最大値 L,L…自己インダクタンス L,L…谷幅 M,M,M…相互インダクタンス S…面積 X〜X…位置 Z〜Z…輝度 α…酸度 ω…角周波数

Claims (3)

  1. 交流磁界を発生する磁界発生部と、この交流磁界によって果菜類中に生じる渦電流による誘導起電力又は誘導電流を検出する検出部とを備えることを特徴とする果菜類の非破壊品質評価装置。
  2. 前記磁界発生部は果菜類の近傍に設置される励磁用コイルを備え、前記検出部はこの励磁用コイルを挟んで略対称に配置される2つの検出用コイルを備え、この2つの検出用コイルはコイルの巻き方向が互いに逆であることを特徴とする請求項1記載の果菜類の非破壊品質評価装置。
  3. 交流磁界を発生する工程と、この交流磁界によって果菜類中に生じる渦電流による誘導起電力又は誘導電流を検出する工程とを備えることを特徴とする果菜類の非破壊品質評価方法。
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