JP2019011992A - 卵内の検査装置 - Google Patents

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伸一 藤谷
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Abstract

【課題】卵殻色によらずに卵内の状態を判別可能な検査装置を提供する。
【解決手段】検査対象の卵に光を照射する光照射部と、卵を透過した光の強度を検出する光検出部を備えた卵内の検査装置であって、700nm〜950nmの波長域に含まれる複数の波長における前記卵を透過した光の強度に基づいて、検査対象の卵内に異常があるか否かを判別する。このような検査装置によれば、卵殻色によらずに卵内の状態を判別することが可能となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、卵を透過した光の強度に基づいて卵内の状態を判別する検査装置に関するものである。
この種の検査装置に用いられるものの一例として、下記特許文献1の血卵の非破壊検出方法がある。この文献の中では、卵殻が褐色を呈した褐色卵の検卵精度を上げることを課題としており、血卵中のヘモグロビン類に特有な波長としてよく知られた575nm付近の可視領域の波長の光の強度を利用した独自のアルゴリズムを提案している。
特許第4591064号公報
木村誠、徳岡由一、"皮膚科領域での光線力学治療における光増感性物質と光源装置"、2008年10月、光技術情報誌「ライトエッジ」No.31、[平成29年6月8日検索、インターネット<URL: https://www.ushio.co.jp/jp/technology/lightedge/200810/100378.html>]
しかしながら、波長575nm付近に卵殻色素の大きな吸収が存在するため、特許文献1の方法でも完全でなく、改善の余地が残されていた。また、血卵以外の異常卵についても、卵殻色素の影響を受けることなく検査することが望まれている。そのため、本発明は、従来とは異なる波長を用いて、卵殻色によらずに卵内の状態を判別可能な検査装置を提供することを目的としている。
上述した目的を達成するために、本発明の卵内の検査装置は、検査対象の卵に光を照射する光照射部と、卵を透過した光の強度を検出する光検出部を備えた卵内の検査装置であって、700nm〜950nmの波長域に含まれる複数の波長における前記卵を透過した光の強度に基づいて、検査対象の卵内に異常があるか否かを判別する。
本発明によれば、卵殻色によらずに卵内の状態を判別可能な検査装置を提供できる。
本発明の一実施形態にかかる概念を模式的に示すブロック図。 一実施例の波長と吸光度との関係を示すグラフ。 同実施例の波長と吸光度との関係を示すグラフ。 同実施例の波長と偏差との関係を示すグラフ。 同実施例の判別結果を示す散布図。 他の実施例の波長と偏差との関係を示すグラフ。 さらに他の実施例の判別結果を示す散布図。 さらに他の実施例の判別ルーティンを示すフローチャート。
以下、本発明の一実施形態について、図1を用いて説明する。
本実施形態の卵内の検査装置1は、一対の光照射部2及び光検出部3を備え、非侵襲的に検査対象の卵内に異常があるか否かを判別するものである。具体的には、検査対象の卵Eに光を照射する光照射部2と、卵Eを透過した光の強度を検出する光検出部3と、検査対象の卵内に異常があるか否かを判別する判別部4を備える。本実施形態での「卵内に異常がある」場合とは、卵内が正常ではない状態、具体的には、卵内に血液が混じった血卵、または、卵内に複数の卵黄が含まれる二黄卵などの複黄卵を想定している。
よく知られているように、鶏卵の卵殻色素はプロトポルフィリンであり、この含量で卵殻色が規定される。このプロトポルフィリンの吸光度は、非特許文献1の図2に開示されるようなものであることが知られている。この図に見られるように、プロトポルフィリンは、700nm以下の波長領域にSoret帯やQ帯と呼ばれる吸収ピークを持つ。特に、580nm〜590nmにおける吸収は、ヘモグロビンの吸収波長域と重なるため、血卵判定を困難にしている。一方、700nm以上950nm以下の波長ではプロトポルフィリンの光吸収が小さいので、この範囲では卵殻色の影響を受けずに卵Eの内部の観察が可能である。そこで本実施形態では、卵殻色の影響を受けにくい波長(具体的には700nm以上)を有する光を照射する光照射部2を使用する。
本実施形態では光照射部2として、例えば、ハロゲンランプのような多波長(広帯域)の光を含む光源を用いている。そのため、卵殻色の影響を受けにくい波長を含む500nm〜3000nmの波長域にわたって照射可能である。光検出部3は、卵Eを透過した光の強度を検出するものであり、本実施形態では、分光装置を用いている。
判別部4は、CPU、内部メモリ、入出力インターフェース、AD変換部等の専用ないし汎用のコンピュータにより構成されている。そして、内部メモリに格納されたプログラムにしたがって、CPUやその他の周辺機器が協働することによって、判別部4としての機能が発揮される。
判別部4は、700nm〜950nmの波長域に含まれる複数の波長における前記卵Eを透過した光の強度に基づいて、検査対象の卵内に異常があるか否かを判別する。具体的には、判別部4は、血卵用の血卵判別部41と、二黄卵用の二黄卵判別部42を備える。血卵判別部41は、光照射部2により得られた卵Eの透過光の光強度を取得して、その光強度のうち、700nm〜950nmの波長域に含まれる複数の波長における前記卵Eを透過した光強度に基づいて、検査対象の卵Eが血卵であるか否かを判別するものである。また、二黄卵判別部4は、700nm〜950nmの波長域に含まれる複数の波長における前記卵Eを透過した光の強度に基づいて、検査対象の卵Eが二黄卵であるか否かを判別するものである。なお、血卵判別部41及び二黄卵判別部42は、物理的に一体のコンピュータにより構成されたものであってもよいし、それぞれ物理的に別体をなすコンピュータにより構成されたものであってもよい。
以下、判別部4によるデータ処理について説明する。
光検出部3の電圧値は、卵Eの透過率以外に、光照射部2の発光強度の個体差や光検出部3の受光感度の個体差の影響を受ける。そのため、合成樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)製ブロックで作成した模擬卵を載置して、その模擬卵の場合の光検出部3の電圧値を事前に参照電圧値として求めておき、卵Eの測定時の光検出部3の電圧値を参照電圧値で割った相対透過率に変換することで、このような装置の個体差の影響の問題を解消できる。
相対透過率(以下、単に「透過率」と呼ぶ)は、その逆数の常用対数を求めることで相対吸光度(以下、単に「吸光度」と呼ぶ)に変換できる。以下、卵Eの分光スペクトルとは、透過率または吸光度のスペクトルである。
まず、搬送経路(図示せず)を挟んで光照射部2と光検出部3が対抗配置され、その検出位置に順次搬送される検査対象の卵Eのうち、最初の所定個数の卵の分光スペクトルを取得する。そして、この所定個数の卵の分光スペクトルをもとに、具体的には、所定個の分光スペクトルの吸光度の波長ごとの平均値を求めて、検査対象のロットの卵Eの基準スペクトルを作成する。作成した基準スペクトルは、判別部4の基準スペクトル記憶部46に記録される。
そして、基準スペクトルを作成するために用いた卵E以外の任意の卵Eの分光スペクトルを取得する。判別部4は、この分光スペクトルに対して、分光スペクトルの分野でよく知られたMSC(Multiplicative Scatter Correction)処理を行う。
このMSC処理を行う理由は、卵Eの分光スペクトルの測定において、光源から照射される光の全てが卵Eに入射するわけではなく、一部は反射される。また、卵Eのサイズの違いにより卵内で光がたどる光路の長さも変化する。このような反射率やサイズの違いにより、卵内の卵黄などの構成は同じであっても、計算された透過率や吸光度の分光スペクトルが変動するベースライン変動が生じ、血液の混入によるスペクトルの形の差異が分かりにくくなる。そこで、MSC処理を行えば、卵Eの内部組織以外の原因によるベースライン変動の影響を取り除くことができ、血液混入などによる分光スペクトルの形状変化(形状の差異)を明瞭にすることができる。このようなベースライン変動を取り除く手法としては、MSC処理以外にもSNV(Standard Normal Variate)等、この分野で知られる種々の方法が適用可能である。
なお、ここでは、基準スペクトルの作成のために当該ロットの所定個数分の平均を計算するようにしているが、卵殻色ごとに基準スペクトルを予め設定して、判別部4に記憶させておいてもよい。
次に、判別部4は、MSC処理後の吸光度AMSC (n)(λ)と基準スペクトルの吸光度
Figure 2019011992
との偏差R(λ)を以下の式で算出する。
Figure 2019011992
より具体的には、判別部4の分光スペクトルの計算部45で計算された結果を記憶している分光スペクトル記憶部47から得られる情報をもとに、偏差スペクトルの計算部48で偏差R(λ)が計算される。
次に、判別部4(血卵判別部4)は、700nm〜950nmの波長域に含まれる複数の波長、具体的には、波長λが920nmの場合の偏差R(920)と波長λが740nmの場合の偏差R(740)の平均値を算出し、波長λが830nmの場合の偏差R(830)から上記の平均値を引いた差を求めて、血卵判定指標とする。この血卵判定指標の値が、予め判別部4の血卵判定用の閾値記憶部43に記録してある血卵判定用の閾値と比較して、大きい場合には、判別部4は当該検査対象卵を血卵だと判定する。一方、前記血卵判定指標の値が血卵判定用の閾値以下の場合には、血卵ではないと判定する。
また、判別部4(二黄卵判別部4)は、700nm〜950nmの波長域に含まれる複数の波長、具体的には、波長λが840nmの場合の偏差R(840)と波長λが940nmの場合の偏差R(940)の平均値を算出する。この平均値から波長λが890nmの場合の偏差R(890)を引いた差を求めて二黄卵判定値とする、この二黄卵判定値の値が、予め判別部4の二黄卵判定用の閾値記憶部44に記録してある二黄卵判定用の閾値と比較して、大きい場合には、判別部4は当該検査対象卵を二黄卵だと判定する。一方、前記二黄卵判定指標の値が二黄卵判定用の閾値以下の場合には、二黄卵ではないと判定する。
<本実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態にかかる卵内の検査装置1は、多波長の光を検査対象の卵Eに照射する光照射部2と、この光照射部2から照射され卵Eの内部を透過した透過光を受ける光検出部3と、この光検出部3が受光した光から分光スペクトルを計算する計算部45とを備えている。そして、計算部45が計算した分光スペクトルのうち700nm〜950nmの波長域に含まれる複数の波長における前記卵Eを透過した光の強度に基づいて、検査対象の卵内に異常があるか否かを判別する。
本発明は、卵Eを鶏卵に限るものではないが、鶏卵の場合は、白色卵(白玉)以外に淡褐色卵(ピンク玉)や褐色卵(赤玉)が市場に流通している。本実施形態によれば、血卵を判定する際に用いる波長が700nm以上であるため、卵殻色及び/または卵黄色の影響を受けにくい。なお、血卵を判定する際に用いる波長が950nm以下であるため、水分の影響を受けない。そのため、卵内の状態の検査を好適に行うことができる。
また、このような方法によれば、現行の可視領域の波長を用いた血卵検査装置の判定アルゴリズムで血卵と間違えやすい二黄卵を判別することができる。二黄卵を異常卵と区別したが、異常卵として廃棄の対象とするのではなく、特に二黄卵のみを選別して商品化する用途に対応できる。そのため、選別用の信号をグレーダの制御装置に出力でき、グレーダの制御装置は、選別信号の値により卵Eを選別先のゲートに運ぶことができる。
さらに、本実施形態の卵内の検査装置1は、たとえば、GPセンターで使用されている分光を用いた現行の異常卵検査装置のハード構成をそのままにして、検査装置の発光部と受光部の間に卵Eを通過させ、卵Eの中央部が、発光部と受光部を結ぶ線上に至ったときの受光信号から吸光度スペクトルを求めるようにすることが考えられる。この場合に、上述した実施例で示した方法で従来のものよりも精度良く、異常卵をみつけることができる。
<実施例1(褐色卵の場合)>
まず、褐色卵の正常卵10個、褐色卵の血卵10個、褐色卵の(血卵ではない)二黄卵10個に対して、ハロゲンランプ光源の光を卵の側方から照射し、卵からの透過光を分光器により分光して透過光の分光データを測定した。測定環境の校正の目的で、測定前に厚さ40mmの円筒状の合成樹脂製ブロックを卵の代わりにブロックの底面が透光側に来るように測定台に置いて分光データを測定した。500nm〜950nmの波長範囲において、1nm刻みで、卵の分光データを合成樹脂製ブロックの分光データで割って、合成樹脂製ブロックをリファレンスにした相対透過率のスペクトルを求めた。
相対透過率T(λ)
=卵の波長λの分光データ/合成樹脂製ブロックの波長λの分光データ
ここで、透過率の逆数の常用対数(底が10の対数)を吸光度といい、吸光度=Log10(1/試料の透過率)と表される。試料の吸光度もまた光の波長λの関数である。この波長の関数としての吸光度の分布を「吸光度スペクトル」という。吸光度スペクトルと透過率スペクトルは相互に変換できるので、上記の吸光度A(λ)は、図2に示すような測定結果として表される。
この図2では、正常卵を実線で示すとともに、血卵を破線で示している。波長λが540nm〜600nm付近で正常卵と血卵との吸光度の差が顕著であるが、この吸光度スペクトルのデータから波長λが700nm〜950nmの波長域でも正常卵と血卵との吸光度に差があることを、本発明者らは発見した。
この吸光度スペクトルのデータをMSC処理によりバイアス変動を除いた結果を図3に示す。図3では、図2に比べて、700nm〜950nmの波長域で正常卵と血卵との吸光度に差があることがより明確になる。
なお、図示していないが、この図2に準じて、吸光度スペクトルのデータから波長λが700nm〜950nmの波長域で正常卵と二黄卵との吸光度に差があること、血卵と二黄卵との吸光度に差があることを本発明者らは発見した。さらに、図3に準じて、吸光度スペクトルのデータをMSC処理した結果から波長λが700nm〜950nmの波長域で正常卵と二黄卵との吸光度に差があることがより明確になること、血卵と二黄卵との吸光度に差があることがより明確になることについても知見を得た。
次に、判定部は、基準スペクトル記憶部に格納された基準スペクトルと、検査対象卵の吸光度スペクトルを用いて、(式1)で示す偏差R(λ)を算出する。その結果を図4に示す。図4では、正常卵10個の平均を実線で、血卵10個の平均を破線で、二黄卵10個の平均を点線で示している。この図4より、700nm〜950nmの波長域で正常卵と血卵の偏差、正常卵と二黄卵の偏差、血卵と二黄卵の偏差との間にそれぞれ明確な差があることがわかる。
判定部(血卵判定部)は、波長λが920nmの場合の偏差R(920)と波長λが740nmの場合の偏差R(740)の平均値を算出し、波長λが830nmの場合の偏差R(830)から上記の平均値を引いた差を求めて血卵判定指標とする。この血卵判定指標の値が、予め判定部の血卵判定用の閾値記憶部に記録してある血卵判定用の閾値と比較して、大きい場合には、判定部は当該検査対象卵を血卵だと判定する。一方、前記血卵判定指標の値が血卵判定用の閾値以下の場合には、血卵ではないと判定する。すなわち、血卵の場合は、図4に示すように、740nmと920nm及びその中間の830nmでの偏差Rを結んだ仮想線が上に凸な形状となっており、血卵判定値は、この三角形の高さを求めていることに相当する。
判定部(二黄卵判定部)は、波長λが840nmの場合の偏差R(840)と波長λが940nmの場合の偏差R(940)の平均値を算出する。この平均値から波長λが890nmの場合の偏差R(890)を引いた差を求めて二黄卵判定値とする。この二黄卵判定指標の値が、予め判定部の二黄卵判定用の閾値記憶部に記録してある二黄卵判定用の閾値と比較して、大きい場合には、判定部は当該検査対象卵を二黄卵だと判定する。一方、前記二黄卵判定指標の値が二黄卵判定用の閾値以下の場合には、二黄卵ではないと判定する。すなわち、二黄卵の場合は、図4に示すように、840nmと940nm及びその中間の890nmでの偏差Rを結んだ仮想線が下に凸な形状となっており、二黄卵判定値は、この三角形の高さを求めていることに相当する。
これらの判定部(血卵判定部と二黄卵判定部)で判定した結果を散布図で示したのが図5である。図5では、正常卵を白抜きのひし形で、血卵を黒塗りの三角で、二黄卵を黒塗りの丸で示している。本実施例によれば、正常卵と血卵と二黄卵とを精度良く判別することができた。なお、血卵判定指標の数値の大小は、異常の程度(血卵の程度)を定量的に評価するものであるとも言える。
<実施例2(白色卵の場合)>
上述した実施例1に準じて、卵殻色が白色の白色卵の正常卵10個、白色卵の血卵10個、白色卵の(血卵ではない)二黄卵10個に対して、ハロゲンランプ光源の光を卵の側方から照射し、卵からの透過光を分光器により分光して透過光の分光データを測定した。図4に対応する白色卵の場合の結果を図6に示す。
図6では、正常卵10個の平均を実線で、血卵10個の平均を破線で、二黄卵10個の平均を点線で示している。この図6より、700nm〜950nmの波長域で正常卵と血卵の偏差、正常卵と二黄卵の偏差、血卵と二黄卵の偏差との間にそれぞれ明確な差があることがわかる。このように、上述した方法は、褐色卵のみならず、白色卵でもよい結果が得られた。すなわち、本発明のようなものであれば、卵殻色が白色であっても褐色のものと同様に血卵判定及び/または二黄卵判定に用いることができる。
<実施例3(MSC処理を行わない場合)>
上述した実施例1に準じて、褐色卵の正常卵10個、褐色卵の血卵10個、褐色卵の(血卵ではない)二黄卵10個に対して、ハロゲンランプ光源の光を卵の側方から照射し、卵からの透過光を分光器により分光して透過光の分光データを測定した。本実施例では、実施例1で行ったMSC処理を行わなかった。また、MSC処理を行っていないので、(式1)で示した偏差R(λ)の算出も行っていない。ここで、MSC処理前の元の吸光度をA(λ)とする。
具体的には、判定部(血卵判定部)は、波長λが920nmの場合の吸光度A(920)と波長λが740nmの場合の吸光度A(740)の平均値を算出し、波長λが830nmの場合の吸光度A(830)から上記の平均値を引いた差を求めて血卵判定指標とする。この血卵判定指標の値が、予め判定部の血卵判定用の閾値記憶部に記録してある血卵判定用の閾値と比較して、大きい場合には、判定部は当該検査対象卵を血卵だと判定する。一方、前記血卵判定指標の値が血卵判定用の閾値以下の場合には、血卵ではないと判定する。
また、判定部(二黄卵判定部)は、波長λが840nmの場合の吸光度A(840)と波長λが940nmの場合の吸光度A(940)の平均値を算出する。この平均値から波長λが890nmの場合の吸光度A(890)を引いた差を求めて二黄卵判定値とする。この二黄卵判定指標の値が、予め判定部の二黄卵判定用の閾値記憶部に記録してある二黄卵判定用の閾値と比較して、大きい場合には、判定部は当該検査対象卵を二黄卵だと判定する。一方、前記二黄卵判定指標の値が二黄卵判定用の閾値以下の場合には、二黄卵ではないと判定する。
この場合の図5に対応する結果を図7に示す。本実施例によれば、実施例1に比べて精度は若干劣るものの、正常卵と血卵と二黄卵とを判別することができ、実施例1に準じた効果が得られる。
<実施例4(なんらかの異常を検出する場合)>
判別部は、前述した複数の波長の偏差の配列を偏差ベクトルRとし、この偏差ベクトルRの大きさに基づいて、検査対象の卵内に異常があるか否かを判別するものであってもよい。具体的には、図8に示すように、判別部は、700nm〜950nm(より好ましくは卵殻色素及び水分の影響をより受けにくい740nm〜900nm)にわたる偏差の絶対値、または、2乗した値の和を求めて偏差ベクトルRとし(ステップS1)、この偏差ベクトルRの大きさと判定部に予め記憶している所定の閾値rとを比較する(ステップS2)。なお、偏差ベクトルRは、波長域中を1nm毎に測定した場合の他、必ずしも連続的でなくてもよく、例えば5nm毎など粗く設定してもよい。
判別部は、偏差ベクトルRの大きさが所定の閾値r以下の場合には、正常卵であると判別する(ステップS3)。一方、偏差ベクトルRの大きさが所定の閾値rを超える場合に、正常卵ではないと判別する(ステップS4)。この場合、血卵か二黄卵であるかの異常の種類の識別ができないが、血卵や二黄卵以外の原因の異常の検出も可能となる。血卵や二黄卵やそれ以外の原因の異常卵の場合には、偏差が大きく示される領域が存在するのに対して、正常卵の場合には偏差が全体に小さく示されるためである。なお、このような判別は、前述したような血卵/二黄卵の判定に先立って行われるものであってもよいし、血卵/二黄卵の判定に関係なく単独で行われるものであってもよい。
本実施例での「卵内に異常がある」場合とは、卵内が正常ではない状態、具体的には、上述した血卵に代表されるような食用に不適な卵の他にも、食用に適するものであっても内部や外部の品質の優劣によって消費者からのクレームの対象となり得る卵全般を想定している。一例としては、卵黄の極端に小さいものなど、卵の品質属性を定量的に評価した場合に所定範囲外に該当するものなどが挙げられる。
なお、本発明は上述した実施形態に限られない。
光照射部は、ハロゲンランプの他に、多波長の光を含む水銀キセノンランプや白色LED光源などであってもよい。また、図2〜図4の結果などから異常卵を抽出可能な(吸光度の違いの明確な)700nm〜950nmの波長域に含まれる2つの波長、または3つ以上の波長を任意に選択して、その波長を有する単色LEDやレーザなどを用いてもよい。その場合には、光照射部の単色LEDやレーザなどを時系列に順次発光させて、光受光部が複数波長における吸光度を得るようにすればよい。
判定部は、上述した偏差に代えて、平均との差異を示す残差を用いてもよい。また、偏差や残差の形の特徴を利用するようなものであれば上述したような3波長の値を用いるものに限られず、2波長のみの勾配を用いるものや、残差/偏差の形状の(基準残差/基準偏差との)相似性をみるようなものであってもよい。また、判定に用いる波長は、上述した870nm、740nmなどには限られない。
また、卵に光を照射する方向は、卵の側方からには限られず、卵の上方または下方からであってもよい。さらに、照射される卵は、キャリアなどにより搬送されながら検査されてもよいし、トレイなどに置かれた静止状態で検査されてもよい。
上述した実施形態では、吸光度で説明していたが、吸光度スペクトルと透過率スペクトルは相互に変換できるので、実施例の諸式を、透過率スペクトルを用いた表現に書き換えることができる。また、上述した実施形態では、参照電圧値を用いた「相対」透過率や「相対」吸光度を利用するものであったが、装置の固体差の影響を取り除くことなく、そのままの透過率や吸光度を利用するものであってもよい。さらに、装置の固体差の影響を取り除く方法として、光照射部からの照射光を減光して測定できるようなものであればどのようなものであってもよく、合成樹脂製ブロックの代わりにピンホールをあけた板を用いるなど、種々変更可能である。
判別部は、血卵があるか否かを判別する、または、複黄卵(二黄卵)があるか否かを判別のいずれか一方のみを判別するものであってもよい。また、血卵、二黄卵以外の卵内の異常があるか否かを判別するようなものであってもよい。
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、卵を透過した光の強度に基づいて卵内の状態を判別する検査装置に利用することができる。
1…卵内の検査装置
2…光照射部
3…光検出部
E…卵

Claims (1)

  1. 検査対象の卵に光を照射する光照射部と、卵を透過した光の強度を検出する光検出部を備えた卵内の検査装置であって、
    700nm〜950nmの波長域に含まれる複数の波長における前記卵を透過した光の強度に基づいて、検査対象の卵内に異常があるか否かを判別することを特徴とする卵内の検査装置。
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JP2020148620A (ja) * 2019-03-13 2020-09-17 株式会社ナベル 卵分類装置、卵分類方法及びコンピュータプログラム
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