JP2011236878A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】精度が高くかつ演算負荷が小さい予測制御システムを用いた内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】予測演算において制御対象の状態を表したモデルを用いて所定時間だけ先の制御対象の状態が演算される。モデルとして高次元モデルと低次元モデルとが用意され、所定時間として比較的短い高次元モデル用時間と比較的長い低次元モデル用時間とが用意され、制御装置の演算負荷が許容演算負荷値以下であるときには、予測演算において高次元モデルを用いて高次元モデル用時間だけ先の制御対象の状態が演算され、制御装置の演算負荷が許容演算負荷値よりも大きいときには、予測演算において低次元モデルを用いて低次元モデル用時間だけ先の制御対象の状態が演算される。
【選択図】図5

Description

本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
特許文献1に内燃機関の燃料噴射制御装置が開示されている。この燃料噴射制御装置では、燃料噴射量(すなわち、燃料噴射弁から噴射させるべき燃料の量)を算出するために、演算負荷は大きいものの演算精度は高い高次モデルと、演算精度は低いものの演算負荷が小さい低次モデルとが用意されている。そして、この燃料噴射制御装置では、過給圧(すなわち、過給機のコンプレッサよりも下流の吸気管内のガスの圧力であってコンプレッサによって圧縮されたガスの圧力)に応じて、高次モデルを利用して燃料噴射量を算出したり、低次モデルを利用して燃料噴射量を算出したりしている。
詳細には、過給圧が高いときには燃料噴射弁から噴射された燃料が蒸発しづらいことから、高精度に燃料噴射量が算出されることが好ましい。一方、過給圧が低いときには燃料噴射弁から噴射された燃料が蒸発しやすいことから、高精度に燃料噴射量が算出される必要性が低い。そこで、特許文献1に記載の燃料噴射制御装置では、過給圧が高いときには、演算負荷が高くなったとしても高精度に燃料噴射量を算出する必要があることから、高次モデルを用いて燃料噴射量を算出するようにしている。一方、過給圧が低いときには、高精度に燃料噴射量を算出する必要性が低いことから、低次モデルを用いて燃料噴射量を算出し、これによって、演算負荷を低く抑えるようにしている。
特開2006−220061号公報 特開平05−27956号公報 特開2001−67103号公報 特開平11−296204号公報 特開2004−118723号公報
上述したように、特許文献1には、燃料噴射量を算出するときの演算負荷と、算出される燃料噴射量に求められる精度とを考慮して、高次モデルと低次モデルとのいずれのモデルを用いて燃料噴射量を算出するかを決定するという考え方が開示されている。
本発明の目的は、従来の考え方とは異なる考え方でもって複数のモデルのうちいずれのモデルを用いて演算を行うのかを決定する内燃機関の制御装置を提供することにある。
本願の1番目の発明は、内燃機関の第1の制御対象の制御量の目標値を第1初期目標値として決定すると共に内燃機関の第2の制御対象の制御量の目標値を第2初期目標値として決定する初期目標値決定手段と、前記第1の制御対象の制御量の制御用の目標値である第1制御目標値に応じて前記第1の制御対象に入力すべき操作量を第1操作量として決定すると共に前記第2の制御対象の制御量の制御用の目標である第2制御目標値に応じて前記第2の制御対象に入力すべき操作量を第2操作量として決定する操作量決定手段と、該操作量決定手段によって決定された第1操作量に従って前記第1の制御対象の動作を制御する第1の動作制御手段と、前記操作量決定手段によって決定された第2操作量に従って前記第2の制御対象の動作を制御する第2の動作制御手段と、を具備し、前記各動作制御手段がそれぞれ対応する前記制御対象の動作を制御することによって前記各制御対象の制御量が制御される内燃機関の制御装置に関する。
そして、本発明は、前記第1初期目標値および前記第2初期目標値を予め定められた規則に従って修正して該修正した初期目標値をそれぞれ第1修正目標値および第2修正目標値として出力する修正目標値出力手段と、前記第1初期目標値および前記第2初期目標値をそれぞれ前記第1制御目標値および前記第2制御目標値として前記操作量決定手段によって決定される第1操作量および第2操作量に従って前記第1の制御対象の制御量および前記第2の制御対象の制御量が制御されたときの各制御対象に関する将来の状態を将来制御対象状態として演算によって予測する予測演算を行う制御対象状態予測手段と、該制御対象状態予測手段によって予測された将来制御対象状態が内燃機関に関する制約条件を満たしているか否かを判別する制約条件成立判別手段と、をさらに具備する。
そして、本発明では、前記制御対象状態予測手段によって予測された将来制御対象状態が内燃機関に関する制約条件を満たしていると前記制約条件成立判別手段によって判別されたときには、前記第1初期目標値および前記第2初期目標値がそれぞれ前記第1制御目標値および前記第2制御目標値として前記操作量決定手段に入力される。
一方、本発明では、前記制御対象状態予測手段によって予測された将来制御対象状態が内燃機関に関する制約条件を満たしていないと前記制約条件成立判別手段によって判別されたときには、前記修正目標値出力手段によって前記第1初期目標値および前記第2初期目標値が前記予め定められた規則に従って修正されて該修正された初期目標値がそれぞれ第1修正目標値および第2修正目標値として出力され、これら第1修正目標値および第2修正目標値をそれぞれ前記第1制御目標値および前記第2制御目標値として前記操作量決定手段によって決定される第1操作量および第2操作量に従って前記第1の制御対象の制御量および前記第2の制御対象の制御量が制御されたときの各制御対象に関する将来の状態が前記制御対象状態予測手段によって将来制御対象状態として再び予測され、該再び予測された将来制御対象状態が内燃機関に関する制約条件を満たしているか否かが前記制約条件成立判別手段によって判別される。
そして、本発明では、前記制御対象状態予測手段によって再び予測された将来制御対象状態が内燃機関に関する制約条件を満たしていると前記制約条件成立判別手段によって判別されたときには、前記第1修正目標値および前記第2修正目標値がそれぞれ前記第1制御目標値および前記第2制御目標値として前記操作量決定手段に入力される。
一方、本発明では、前記制御対象状態予測手段によって再び予測された将来制御対象状態が内燃機関に関する制約条件を満たしていないと前記制約条件成立判別手段によって判別されたときには、前記制御対象状態予測手段によって予測される将来制御対象状態が前記制約条件を満たしていると判別されるまで前記修正目標値出力手段による第1修正目標値および第2修正目標値の修正と、該修正によって修正された第1修正目標値および第2修正目標値とに基づいた前記制御対象状態予測手段による予測演算と、該予測演算によって予測された将来制御対象状態に基づいた前記制約条件成立判別手段による判別とが繰り返される。
そして、本発明では、前記制御対象状態予測手段による予測演算において制御対象の状態を表したモデルを用いて予め定められた時間だけ先の将来制御対象状態が演算される。
そして、本発明では、前記モデルとして高次元モデルと低次元モデルとが用意され、高次元モデルにパラメータとして含まれる制御対象の状態量の数が低次元モデルにパラメータとして含まれている制御対象の状態量の数よりも多く、前記予め定められた時間として高次元モデルを用いて予測演算が行われるときに用いられる高次元モデル用時間と低次元モデルを用いて予測演算が行われるときに用いられる低次元モデル用時間とが用意され、高次元モデル用時間の長さが低次元モデル用時間の長さよりも短く設定されている。
そして、本発明では、当該制御装置の演算負荷が当該制御装置の演算能力を考慮したときの許容演算負荷値以下であると推定されるときには、前記制御対象状態予測手段による予測演算において前記高次元モデルを用いて前記高次元モデル用時間だけ先の将来制御対象状態が演算される。一方、当該制御装置の演算負荷が前記許容演算負荷値よりも大きいと推定されるときには、前記制御対象状態予測手段による予測演算において前記低次元モデルを用いて前記低次元モデル用時間だけ先の将来制御対象状態が演算される。
本発明によれば、以下の効果が得られる。すなわち、高次元モデルを用いた予測演算によって将来制御対象状態を演算した場合、高精度な将来制御対象状態が得られる。しかしながら、高次元モデルを用いた予測演算の負荷は比較的高いことから、制御装置の演算負荷が増大し、高次元モデルを用いた予測演算によって得られる将来制御対象状態の精度が低くなる可能性がある。また、当該制御装置は、予測演算以外の演算を行ったり制御対象の制御を行ったりすることから、制御装置の演算負荷が増大すると、予測演算以外の演算の精度や制御対象の制御の精度が低くなる可能性もある。しかしながら、本発明では、高次元モデルを用いた予測演算が行われるとき、比較的長さの短い時間だけ先の将来制御対象状態が演算されることから、制御装置の負荷が軽減される。しかしながら、本発明によれば、高次元モデルを用いた予測演算が行われるときに、この予測演算によって得られる将来制御対象状態の精度が高く維持されると共に、制御装置による予測演算以外の演算の精度や制御対象の制御の精度も高く維持される。
さらに、低次元モデルを用いた予測演算によって将来制御対象状態を演算した場合、得られる将来制御対象状態の精度は比較的低い。一方、予測演算によって得られた将来制御対象状態がより長い時間だけ先の将来制御対象状態であると、得られた将来制御対象状態の精度は高い。ここで、本発明では、低次元モデルを用いた予測演算が行われるとき、比較的長さの長い時間だけ先の将来制御対象状態が演算されることから、低次元モデルを用いた予測演算によって得られる将来制御対象状態の精度が高くなる。
本願の2番目の発明では、上記1番目の発明において、前記制御対象状態予測手段による予測演算中に当該制御装置の演算負荷が前記許容演算負荷値以下の値から前記許容演算負荷値よりも大きい値に変化したと推定されるときには、当該予測演算に用いられる予測長が前記高次元モデル用予測長から前記低次元モデル用予測長まで徐々に増大せしめられる。一方、前記制御対象状態予測手段による予測演算中に当該制御装置の演算負荷が前記許容演算負荷値よりも大きい値から前記許容演算負荷値以下の値に変化したと推定されるときには、当該予測演算に用いられる予測長が前記低次元モデル用予測長から前記高次元モデル用予測長まで徐々に減少せしめられる。
本発明によれば、以下の効果が得られる。すなわち、予測演算に用いられるモデルが高次元モデルから低次元モデルに切り替えられるときに、将来制御対象状態の演算に用いられる予め定められた時間が比較的短い高次元モデル用時間から比較的長い低次元モデル用時間に切り替えられ、一方、予測演算に用いられるモデルが低次元モデルに切り替えられるときに、将来制御対象状態の演算に用いられる予め定められた時間が比較的長い低次元モデル用時間から比較的短い高次元モデル用時間に切り替えられると、将来制御対象状態の演算に用いられる予め定められた時間がステップ的に変化することになる。このため、モデルが切り替えられてから一定の期間が経過する間、予測演算によって得られる将来制御対象状態の連続性が失われる可能性がある。そして、こうした連続性が失われた将来制御対象状態に基づいて制御対象の制御量の目標値が設定され、この設定された目標値に従って制御対象の制御量が制御されると、制御対象の状態量がステップ的に変化してしまうことになる。
しかしながら、本発明では、モデルが切り替えられるとき、将来制御対象状態の演算に用いられる予め定められた時間は、徐々に変化せしめられる。このため、モデルが切り替えられてから予測演算によって得られる将来制御対象状態には、連続性がある。したがって、本発明によれば、モデルが切り替えられるときに制御対象の状態量がステップ的に変化してしまうことが抑制される。
本願の3番目の発明では、上記1または2番目の発明において、当該制御装置の演算負荷が前記許容演算負荷値になるときの内燃機関の負荷が許容機関負荷値として設定され、内燃機関の負荷が前記許容機関負荷値以下であるときに当該制御装置の演算負荷が前記許容演算負荷値以下であると推定され、内燃機関の負荷が前記許容演算負荷値よりも大きいときに当該制御装置の演算負荷が前記許容演算負荷値よりも大きいと推定される。
本発明の制御装置が適用される内燃機関の概略図である。 図1に示されている内燃機関の過給機の排気タービンの内部を示した図である。 (A)は、目標過給圧を決定するために利用されるマップを示した図であり、(B)は、目標EGR率を決定するために利用されるマップを示した図である。 本発明の実施形態に従って目標過給圧および目標EGR率の修正を実行するフローチャートを示す図である。 第1実施形態に従ったモデル・予測長設定制御を実行するフローチャートの一例を示した図である。 第2実施形態に従ったモデル・予測長設定制御を実行するフローチャートの一例を示した図である。 第3実施形態に従ったモデル・予測長設定制御を実行するフローチャートの一例を示した図である。 第4実施形態に従ったモデル・予測長設定制御を実行するフローチャートの一例を示した図である。
以下、本発明の内燃機関の制御装置の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する実施形態は、本発明の制御装置を図1に示されている内燃機関に適用した場合の実施形態である。
図1に示されている内燃機関10は、内燃機関の本体(以下「機関本体」という)20と、該機関本体20の4つの燃焼室にそれぞれ対応して配置された燃料噴射弁21と、該燃料噴射弁21に燃料供給管23を介して燃料を供給する燃料ポンプ22とを具備する。また、内燃機関10は、外部から燃焼室に空気を供給する吸気系30と、燃焼室から排出される排気ガスを外部に排出する排気系40とを具備する。また、内燃機関10は、圧縮自着火式の内燃機関(いわゆる、ディーゼルエンジン)である。
吸気系30は、吸気枝管31と吸気管32とを有する。吸気枝管31の一方の端部(すなわち、枝部)は、各燃焼室に対応して機関本体10内に形成された吸気ポート(図示せず)に接続されている。一方、吸気枝管31の他方の端部は、吸気管32に接続されている。吸気管32内には、該吸気管32内を流れる空気の量を制御するスロットル弁33が配置されている。スロットル弁33には、該スロットル弁33の開度を制御するアクチュエータ(以下「スロットル弁アクチュエータ」という)33aが取り付けられている。さらに、吸気管32には、該吸気管32内を流れる空気を冷却するインタークーラ34が配置されている。さらに、吸気管32の外部を臨む端部には、エアクリーナ36が配置されている。
一方、排気系40は、排気枝管41と排気管42とを有する。排気枝管41の一方の端部(すなわち、枝部)は、各燃焼室に対応して機関本体10内に形成された排気ポート(図示せず)に接続されている。一方、排気枝管41の他方の端部は、排気管42に接続されている。排気管42には、排気ガス中の特定成分を浄化する排気浄化触媒43aを内蔵した触媒コンバータ43が配置されている。
また、内燃機関10は、過給機35を具備する。過給機35は、インタークーラ34よりも上流の吸気管32内に配置されるコンプレッサ35aと、触媒コンバータ43よりも上流の排気管42内に配置される排気タービン35bとを有する。排気タービン35bは、図2に示されているように、排気タービン本体35cと翼状の複数のベーン35dとを有する。
排気タービン本体35cは、シャフト(図示せず)を介してコンプレッサ35aに接続されている。排気タービン本体35cが排気ガスによって回転せしめられると、その回転がシャフトを介してコンプレッサ35aに伝達され、これによって、コンプレッサ35aが回転せしめられる。
一方、ベーン35dは、排気タービン本体35cを包囲するように該排気タービン本体35cの回転中心軸線R1を中心として放射状に等角度間隔で配置されている。また、各ベーン35dは、図2に符号R2で示されているそれぞれ対応する軸線周りで回動可能に配置されている。そして、各ベーン35dが延在している方向、すなわち、図2に符号Eで示されている方向を「延在方向」と称し、排気タービン本体35cの回転中心軸線R1とベーン35dの回動軸線R2とを結ぶ線、すなわち、図2に符号Aで示されている線を「基準線」と称したとき、各ベーン35dは、その延在方向Eとそれに対応する基準線Aとがなす角度が全てのベーン35dに関して等しくなるように回動せしめられる。そして、各ベーン35dがその延在方向Eとそれに対応する基準線Aとがなす角度が小さくなるように、すなわち、隣り合うベーン35d間の流路面積が小さくなるように回動せしめられると、排気タービン本体35cに供給される排気ガスの流速が速くなる。その結果、排気タービン本体35cの回転速度が速くなり、その結果、コンプレッサ35aの回転速度も速くなり、したがって、吸気管32内を流れる空気がコンプレッサ35aによって大きく圧縮されることになる。このため、各ベーン35dの延在方向Eとそれに対応する基準線とがなす角度(以下この角度を「ベーン開度」という)が小さくなるほど、コンプレッサ35aによって吸気管32内を流れる空気が圧縮される程度が大きくなる。
なお、各ベーン35dは、アクチュエータ(以下「ベーンアクチュエータ」という)35eによって回動せしめられる。
また、内燃機関10は、排気再循環装置(以下これを「EGR装置」という)50を具備する。EGR装置50は、排気再循環管(以下これを「EGR管」という)51を有する。EGR管51の一端は、排気枝管41に接続されている。一方、EGR管51の他端は、吸気枝管31に接続されている。また、EGR管51には、該EGR管51内を流れる排気ガスの流量を制御する排気再循環制御弁(以下この排気再循環制御弁を「EGR制御弁」という)52が配置されている。EGR制御弁52は、図示されていないアクチュエータ(以下これを「EGR制御弁アクチュエータ」という)によって動作せしめられる。内燃機関10では、EGR制御弁52の開度(以下この開度を「EGR制御弁開度」という)が大きいほど、EGR管51内を流れる排気ガスの流量が多くなる。さらに、EGR管51には、該EGR管51内を流れる排気ガスを冷却する排気再循環クーラ53が配置されている。
また、エアクリーナ36よりも下流であってコンプレッサ35aよりも上流の吸気管32には、該吸気管32内を流れる空気の流量を検出するエアフローメータ71が取り付けられている。また、吸気枝管31には、該吸気枝管31内の圧力を検出する圧力センサ(以下「吸気圧センサ」という)72が取り付けられている。
また、内燃機関10は、電子制御装置60を具備する。電子制御装置60は、マイクロプロセッサ(CPU)61と、リードオンリメモリ(ROM)62と、ランダムアクセスメモリ(RAM)63と、バックアップRAM(Back up RAM)64と、インターフェース65とを有する。インターフェース65には、燃料噴射弁21、燃料ポンプ22、スロットル弁アクチュエータ33a、ベーンアクチュエータ35e、および、EGR制御弁アクチュエータが接続されており、これらの動作を制御する制御信号がインターフェース65を介して電子制御装置60から与えられる。また、インターフェース65には、エアフローメータ71、吸気圧センサ72、および、アクセルペダルAPの踏込量を検出するアクセル開度センサ75も接続されており、エアフローメータ71によって検出された流量に対応する信号、吸気圧センサ72によって検出された圧力に対応する信号、および、アクセル開度センサ75によって検出されたアクセルペダルAPの踏込量に対応する信号がインターフェース65に入力される。
ところで、上述したように、本実施形態では、過給機35のコンプレッサ35aによって吸気管32内を流れる空気が圧縮される。そして、コンプレッサ35aによって圧縮されたときの空気の圧力(以下この圧力を「過給圧」という)は、排気タービン35bのベーン35dの回動位置(すなわち、ベーン開度)を制御することによって制御可能であり、ベーン開度以外の条件が同じであれば、ベーン開度が小さいほど過給圧が高くなる。また、上述したように、本実施形態では、EGR装置50によって吸気管32内を流れる空気中に排気ガス(以下この排気ガスを「EGRガス」という)が導入される。ここで、EGRガスの量(以下この量を「EGRガス量」という)は、EGR制御弁52の開度、すなわち、EGR制御弁開度を制御することによって制御可能であり、EGR制御弁開度以外の条件が同じであれば、EGR制御弁開度が大きいほどEGRガス量が多くなる。
ところで、本実施形態の制御装置では、過給圧に関して目標値(以下この目標値を「目標過給圧」という)が設定され、実際の過給圧が目標過給圧になるようにベーン開度が制御される。また、本実施形態の制御装置では、EGRガス量を代表するパラメータとして、燃焼室に吸入されるトータルのガス量に対するEGRガス量の割合(以下この割合を「EGR率」という)が採用され、このEGR率に関して目標値(以下この目標値を「目標EGR率」という)が設定され、実際のEGR率が目標EGR率になるようにEGR制御弁開度が制御される。次に、これら過給圧およびEGR率の制御について説明する。
目標過給圧が設定されると、この目標過給圧に対する実際の過給圧の偏差(以下この偏差を「過給圧偏差」という)が電子制御装置60において算出される。ここで、吸気圧センサ72によって検出される圧力は、過給圧に相当することから、本実施形態では、吸気圧センサ72によって検出される圧力が実際の過給圧として利用される。また、目標過給圧の設定については、後に詳細に説明する。
過給圧偏差が算出されると、この過給圧偏差が電子制御装置60において予め定められた変換則(別の言い方をすれば、予め定められた制御則)に従って変換されて制御信号が生成される。ここで生成される制御信号は、ベーンアクチュエータ35eにベーン35dを動作させるために電子制御装置60からベーンアクチュエータ35eに与えられる制御信号である。また、上記予め定められた変換則(以下この変換則を「過給圧偏差変換則」という)は、過給圧偏差が小さくなるようにベーンアクチュエータ35eにベーン35dを動作させる制御信号に過給圧偏差を変換するものである。
過給圧偏差が変換されて生成された制御信号(以下この制御信号を「ベーン制御信号」という)が電子制御装置60からベーンアクチュエータ35eに与えられると、ベーンアクチュエータ35eは、ベーン制御信号に従ってベーン35eを動作させる。すなわち、ベーンアクチュエータ35eは、ベーン制御信号に応じた操作量(以下この操作量を「ベーン操作量」という)をベーン35eに入力する。
ここで、過給圧偏差が正の値であるとき、すなわち、実際の過給圧が目標過給圧よりも低いときには、ベーンアクチュエータ35eは、ベーン開度が小さくなるようにベーン35dを動作させる。これによって、実際の過給圧が高くなる。一方、過給圧偏差が負の値であるとき、すなわち、実際の過給圧が目標過給圧よりも高いときには、ベーンアクチュエータ35eは、ベーン開度が大きくなるようにベーン35dを動作させる。これによって、実際の過給圧が低くなる。
一方、目標EGR率が設定されると、この目標EGR率に対する実際のEGR率の偏差(以下この偏差を「EGR率偏差」という)が電子制御装置60において算出される。
EGR率偏差が算出されると、このEGR率偏差が電子制御装置60において予め定められた変換則(別の言い方をすれば、予め定められた制御則)に従って変換されて制御信号が生成される。ここで生成される制御信号は、EGR制御弁アクチュエータにEGR制御弁52を動作させるためにEGR制御弁アクチュエータに与えられる制御信号である。また、上記予め定められた変換則(以下この変換則を「EGR率偏差変換則」という)は、EGR率偏差が小さくなるようにEGR制御弁アクチュエータにEGR制御弁52を動作させる制御信号にEGR率偏差を変換するものである。
EGR率偏差が変換されて生成された制御信号(以下この制御信号を「EGR制御弁制御信号」という)が電子制御装置60からEGR制御弁アクチュエータに与えられると、EGR制御弁アクチュエータは、EGR制御弁制御信号に従ってEGR制御弁52を動作させる。すなわち、EGR制御弁アクチュエータは、EGR制御弁制御信号に応じた操作量(以下この操作量を「EGR制御弁操作量」という)をEGR制御弁52に入力する。
ここで、EGR率偏差が正の値であるとき、すなわち、実際のEGR率が目標EGR率よりも小さいときには、EGR制御弁アクチュエータは、EGR制御弁開度が大きくなるようにEGR制御弁52を動作させる。これによって、実際のEGR率が大きくなる。一方、EGR率偏差が負の値であるとき、すなわち、実際のEGR率が目標EGR率よりも大きいときには、EGR制御弁アクチュエータは、EGR制御弁開度が小さくなるようにEGR制御弁52を動作させる。これによって、実際のEGR率が小さくなる。
次に、目標過給圧および目標EGR率の設定について説明する。
過給圧には、内燃機関10の運転状態(以下これを「機関運転状態」という)に応じた最適な過給圧がある。そこで、本実施形態では、機関運転状態として機関回転数と機関負荷とが採用され、これら機関回転数と機関負荷とに応じて最適な過給圧が実験等によって予め求められ、これら求められた過給圧が、図3(A)に示されているように、機関回転数Nと機関負荷Lとの関数のマップの形で目標過給圧TPcomとして電子制御装置60に記憶されている。そして、図3(A)のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに基づいて目標過給圧TPcomが決定される。
また、EGR率にも、機関運転状態に応じて最適なEGR率がある。そこで、本実施形態では、機関運転状態として機関回転数と機関負荷とが採用され、これら機関回転数と機関負荷とに応じて最適なEGR率が実験等によって予め求められ、これら求められたEGR率が、図3(B)に示されているように、機関回転数Nと機関負荷Lとの関数のマップの形で目標EGR率TRegrとして電子制御装置60に記憶されている。そして、図3(B)のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに基づいて目標過給圧TRegrが決定される。
ところで、斯くして決定された目標過給圧TPcomに対する実際の吸気圧Pcomの偏差(すなわち、過給圧偏差)TPcom−Pcomが、上述したように、過給圧偏差変換則に従ってベーン制御信号に変換され、このベーン制御信号に従ってベーンアクチュエータ35eによってベーン35dの動作状態が制御されれば、最終的には、過給圧は目標過給圧に制御されることになる。ところが、図3(A)のマップから決定された目標過給圧TPcomがそのまま過給圧の制御に利用されると、幾つかの不都合が生じる。
すなわち、例えば、実際の過給圧が目標過給圧よりも低い場合、上述したように、目標過給圧に対する実際の過給圧の偏差(すなわち、過給圧偏差)に応じてベーン開度が小さくなるようにベーンアクチュエータ35eにベーン35dを動作させる(すなわち、回動させる)ための制御信号(すなわち、ベーン制御信号)が電子制御装置60によって生成される。そして、この生成されたベーン制御信号が電子制御装置60からベーンアクチュエータ35eに与えられ、この与えられたベーン制御信号に従ってベーンアクチュエータ35eがベーン35dを動作させる。
ところが、このとき、EGR率等を含む機関運転状態によっては、過給圧が目標過給圧に制御される過程において、過給圧が目標過給圧を大幅に上回ってしまうことがある。特に、実際の過給圧が目標過給圧よりも大幅に低いときには、ベーンアクチュエータ35eがベーン35dを大きく動作させることになるので、過給圧が目標過給圧を大幅に上回ってしまう可能性がより高くなる。しかしながら、このように過給圧が目標過給圧を大幅に上回ってしまうことは避けられるべきである。要するに、過給圧を目標過給圧に制御する場合において、過給圧は、目標過給圧を上回ってしまうとしても許容可能な範囲内に収められているべきである。
また、燃焼室において失火が生じることを避けるためには、例えば、燃焼室に吸入されるガス中の酸素濃度が或る一定濃度以上に保たれるべきである。そして、燃焼室に吸入されるガス中の酸素濃度は、EGR率に応じて変化し、このEGR率は、過給圧に応じて変化する。したがって、過給圧を目標過給圧に制御する場合において、過給圧は、燃焼室に吸入されるガス中の濃度が一定濃度以上に保たれるように制御されるべきである。
このように、過給圧の制御には、制御されるべきパラメータである過給圧自体に関する制約がある。
また、ベーン35dの動作可能な範囲(すなわち、ベーン35dの回動可能な範囲)には、その構造上、限界がある。このため、ベーン開度を小さくするためにベーンアクチュエータ35eがベーン35dを動作させようとしても、ベーン35dの動作状態がその動作可能な範囲の限界に達してしまえば、ベーンアクチュエータ35eは、それ以上、ベーン35dを動作させることができない。それでもなお、ベーンアクチュエータ35eがベーン35dを動作させようとすれば、ベーン35の故障を招きかねない。また、より確実にベーン35dの故障を避けようとするならば、ベーン35dの動作がその動作可能な範囲よりも狭い範囲内に制限されるべきである。要するに、過給圧を目標過給圧に制御する場合、ベーン35dの動作は、様々な観点から定まる許容可能な範囲内に制限されるべきある。このように、過給圧の制御には、制御されるべき対象であるベーン35dの動作状態に関する制約もある。
さらに、ベーンアクチュエータ35eの動作可能な範囲にも、その構造上、限界がある。このため、ベーン開度を小さくするためにベーンアクチュエータ35eがベーン35dを動作させようとしても、ベーンアクチュエータ35eがその動作可能な範囲の限界に達してしまえば、ベーンアクチュエータ35eは、それ以上、ベーン35dを動作させることができない。それでもなお、ベーンアクチュエータ35eがベーン35dを動作させようとすれば、ベーンアクチュエータ35eの故障を招きかねない。また、より確実にベーンアクチュエータ35eの故障を避けようとするならば、ベーンアクチュエータ35eの動作可能な範囲よりも狭い範囲内にベーンアクチュエータ35eの動作が制限されるべきである。要するに、過給圧を目標過給圧に制御する場合、ベーンアクチュエータ35eの動作も、様々な観点から定まる許容可能な範囲内に制限されるべきである。このように、過給圧の制御には、ベーン35dの動作を制御する手段であるベーンアクチュエータ35eの動作状態に関する制約もある。
さらに、ベーン操作量(すなわち、ベーンアクチュエータ35eからベーン35dに入力される操作量)には、ベーンアクチュエータ35eの性能およびベーン35dの性能を考慮したとき、適切な操作量がある。要するに、過給圧を目標過給圧に制御する場合、ベーン操作量も、様々な観点から定まる許容可能な範囲内に制限されるべきである。このように、過給圧の制御には、ベーン操作量に関する制約もある。
もちろん、以上のことは、実際の過給圧が目標過給圧よりも高いときに過給圧を目標過給圧に制御しようとして、ベーンアクチュエータ35eがベーン35dを動作させる場合にも等しく当てはまる。
このように、過給圧の制御には、過給圧を許容可能な範囲内に収めるという過給圧自体に関する制約と、ベーン35dの動作を許容可能な範囲内に制限するというベーン35dの動作状態に関する制約と、ベーンアクチュエータ35eの動作を許容可能な範囲内に制限するというベーンアクチュエータ35eの動作状態に関する制約と、ベーン操作量を許容可能な範囲内に制限するというベーン操作量に関する制約とがある。したがって、図3(A)のマップから決定された目標過給圧TPcomがそのまま過給圧の制御に利用されたとした場合に、これら制約が満たされないことが予想されるときには、これら制約が満たされるように、図3(A)のマップから決定された目標過給圧TPcomが修正され、この修正された目標過給圧が過給圧の制御に利用されるべきである。
また、このことは、EGR率の制御にも等しく当てはまる。すなわち、図3(B)のマップから決定された目標EGR率TRegrに対する実際のEGR率Regrの偏差(すなわち、EGR率偏差)TRegr−Regrが、上述したように、EGR率偏差変換則に従ってEGR制御弁制御信号に変換され、このEGR制御弁制御信号に従ってEGR制御弁アクチュエータによってEGR制御弁52の動作状態が制御されれば、最終的には、EGR率は目標EGR率に制御されることになる。ところが、このように図3(B)のマップから決定された目標EGR率TRegrがそのままEGR率の制御に利用されると、
幾つかの不都合が生じる。
すなわち、例えば、実際のEGR率が目標EGR率よりも小さい場合、上述したように、目標EGR率に対する実際のEGR率の偏差(すなわち、EGR率偏差)に応じてEGR制御弁開度が大きくなるようにEGR制御弁アクチュエータにEGR制御弁52を動作させるための信号(すなわち、EGR制御弁制御信号)が電子制御装置60によって生成される。そして、この生成されたEGR制御弁制御信号が電子制御装置60からEGR制御弁アクチュエータに与えられ、この与えられたEGR制御弁制御信号に従ってEGR制御弁アクチュエータがEGR制御弁52を動作させる。
ところが、このとき、過給圧等を含む機関運転状態によっては、EGR率が目標EGR率に制御される過程において、EGR率が目標EGR率を大幅に上回ってしまうことがある。特に、実際のEGR率が目標EGR率よりも大幅に小さいときには、EGR制御弁アクチュエータがEGR制御弁52を大きく動作させることになるので、EGR率が目標EGR率を大幅に上回ってしまう可能性がより高くなる。しかしながら、このようにEGR率が目標EGR率を大幅に上回ってしまうことは避けられるべきである。要するに、EGR率を目標過給圧に制御する場合において、EGR率は、目標EGR率を上回ってしまうとしても許容可能な範囲内に収められているべきである。
また、燃焼室において失火が生じることを避けるためには、例えば、燃焼室に吸入されるガス中の酸素濃度が或る一定濃度以上に保たれるべきである。そして、燃焼室に吸入されるガス中の酸素濃度は、EGR率に応じて変化する。したがって、EGR率を目標EGR率に制御する場合において、EGR率は、燃焼室に吸入されるガス中の濃度が一定濃度以上に保たれるように制御されるべきである。
このようにEGR率の制御には、制御されるべきパラメータであるEGR率自体に関する制約がある。
また、EGR制御弁52の動作可能な範囲には、その構造上、限界がある。このため、EGR制御弁開度を大きくするためにEGR制御弁アクチュエータがEGR制御弁52を動作させようとしても、EGR制御弁52の動作状態がその動作可能な範囲の限界に達してしまえば、EGR制御弁アクチュエータは、それ以上、EGR制御弁52を動作させることができない。それでもなお、EGR制御弁アクチュエータがEGR制御弁52を動作させようとすれば、EGR制御弁52の故障を招きかねない。また、より確実にEGR制御弁52の故障を避けようとするならば、EGR制御弁52の動作がその動作可能な範囲よりも狭い範囲内に制限されるべきである。要するに、EGR率を目標EGR率に制御する場合、EGR制御弁52の動作は、様々な観点から定まる許容可能な範囲内に制限されるべきである。このように、EGR率の制御には、制御されるべき対象であるEGR制御弁52の動作状態に関する制約もある。
さらに、EGR制御弁アクチュエータの動作可能な範囲にも、その構造上、限界がある。このため、EGR制御弁開度を大きくするためにEGR制御弁アクチュエータがEGR制御弁52を動作させようとしても、EGR制御弁アクチュエータがその動作可能な範囲の限界に達してしまえば、EGR制御弁アクチュエータは、それ以上、EGR制御弁52を動作させることができない。それでもなお、EGR制御弁アクチュエータがEGR制御弁52を動作させようとすれば、EGR制御弁アクチュエータの故障を招きかねない。また、より確実にEGR制御弁アクチュエータの故障を避けようとするならば、EGR制御弁アクチュエータの動作可能な範囲よりも狭い範囲内にEGR制御弁アクチュエータの動作が制限されるべきである。要するに、EGR率を目標EGR率に制御する場合、EGR制御弁アクチュエータの動作も、様々な観点から定まる許容可能な範囲内に制限されるべきである。このように、EGR率の制御には、EGR制御弁52の動作を制御する手段であるEGR制御弁アクチュエータの動作状態に関する制約もある。
さらに、EGR制御弁操作量(すなわち、EGR制御弁アクチュエータからEGR制御弁52に入力される操作量)には、EGR制御弁アクチュエータの性能およびEGR制御弁52の性能を考慮したとき、適切な操作量がある。要するに、EGR率を目標EGR率に制御する場合、EGR制御弁操作量も、様々な観点から定まる許容可能な範囲内に制限されるべきである。このように、EGR率の制御には、EGR制御弁操作量に関する制約もある。
もちろん、以上のことは、実際のEGR率が目標EGR率よりも大きいときにEGR率を目標EGR率に制御しようとして、EGR制御弁アクチュエータがEGR制御弁52を動作させる場合にも等しく当てはまる。
このように、EGR率の制御には、EGR率を許容可能な範囲内に収めるというEGR率自体に関する制約と、EGR制御弁52の動作を許容可能な範囲内に制限するというEGR制御弁52の動作状態に関する制約と、EGR制御弁アクチュエータの動作を許容可能な範囲内に制限するというEGR制御弁アクチュエータの動作状態に関する制約と、EGR制御弁操作量を許容可能な範囲内に制限するというEGR制御弁操作量に関する制約とがある。したがって、図3(B)のマップから決定された目標EGR率TRegrがそのままEGR率の制御に利用されたとした場合に、これら制約が満たされないことが予想されるときには、これら制約が満たされるように、図3(B)のマップから決定された目標EGR率TRegrが修正され、この修正された目標EGR率がEGR率の制御に利用されるべきである。
さらに、EGR制御弁開度が一定であったとしても、ベーン開度が変われば、過給圧が変わる。したがって、この場合、少なからず、EGRガス量が変わり、EGR率が変わることになる。すなわち、過給圧の制御は、EGR率に影響する。一方、ベーン開度が一定であったとしても、EGR制御弁開度が変われば、EGRガス量も変わる。したがって、この場合、吸気枝管31内の圧力が変わり、過給圧が変わることになる。すなわち、EGR率の制御は、過給圧に影響する。
このように、過給圧の制御とEGR率の制御とは互いに干渉する。したがって、過給圧を目標過給圧に制御する場合、上述したEGR率に関する制約、EGR制御弁52の動作状態に関する制約、EGR制御弁アクチュエータの動作状態に関する制約、および、EGR制御弁操作量に関する制約条件が満たされる状態で、過給圧が制御されるべきである。一方、EGR率を目標EGR率に制御する場合、上述した過給圧に関する制約、ベーン35dの動作状態に関する制約、ベーンアクチュエータ35eの動作状態に関する制約、および、ベーン操作量に関する制約が満たされる状態で、EGR率が制御されるべきである。すなわち、過給圧の制御とEGR率の制御とが行われる場合、上述した全ての制約が同時に満たされる状態で、過給圧およびEGR率が制御されるべきである。
そこで、本実施形態の制御装置は、過給圧に関する制約、ベーン35dの動作状態に関する制約、ベーンアクチュエータ35eの動作状態に関する制約、ベーン操作量に関する制約、EGR率に関する制約、EGR制御弁52の動作状態に関する制約、EGR制御弁アクチュエータの動作状態に関する制約、および、EGR制御弁操作量に関する制約が全て満たされるように、図3(A)のマップから決定される目標過給圧が修正されると共に、図3(B)のマップから決定される目標EGR率とが修正され、修正された目標過給圧が過給圧の制御に利用されると共に、修正された目標EGR率がEGR率の制御に利用される。
より具体的には、本実施形態の制御装置では、図3(A)のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに基づいて目標過給圧TPcomが決定されると共に、図3(B)のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに基づいて目標EGR率TRegrが決定される。そして、これら目標過給圧TPcomおよび目標EGR率TRegrに基づいてベーン35dおよびEGR制御弁52が上述したように実際に動作せしめられる前に、これら目標過給圧TPcomおよび目標EGR率TRegrに基づいてベーン35dおよびEGR制御弁52が上述したように動作せしめられたときの実際の過給圧、ベーン35dの動作状態、ベーンアクチュエータ35eの動作状態、ベーン操作量、実際のEGR率、EGR制御弁52の動作状態、EGR制御弁アクチュエータの動作状態、および、EGR制御弁操作量が予測される(以下、この予測を「予測演算」という)。
そして、これら予測された過給圧、ベーン35dの動作状態、ベーンアクチュエータ35eの動作状態、ベーン操作量、実際のEGR率、EGR制御弁52の動作状態、EGR制御弁アクチュエータの動作状態、および、EGR制御弁操作量が、過給圧に関する制約、ベーン35dの動作状態に関する制約、ベーンアクチュエータ35eの動作状態に関する制約、ベーン操作量に関する制約、EGR率に関する制約、EGR制御弁52の動作状態に関する制約、EGR制御弁アクチュエータの動作状態に関する制約、および、EGR制御弁操作量に関する制約を満たすか否かが判断される。
すなわち、上記予測された過給圧が許容可能な範囲内にあるという制約条件が満たされ、且つ、上記予測されたベーン35dの動作状態が許容可能な範囲内にあるという制約条件が満たされ、且つ、上記予測されたベーンアクチュエータ35eの動作状態が許容可能な範囲内にあるという制約条件が満たされ、且つ、上記予測されたベーン操作量が許容可能な範囲内にあるという制約条件が満たされ、且つ、上記予測されたEGR率が許容可能な範囲内にあるという制約条件が満たされ、且つ、上記予測されたEGR制御弁52の動作状態が許容可能な範囲内にあるという制約条件が満たされ、且つ、上記予測されたEGR制御弁アクチュエータの動作状態が許容可能な範囲内にあるという制約条件が満たされ、且つ、上記予測されたEGR制御弁操作量が許容可能な範囲内にあるという制約条件が満たされるか否かが判断される。
そして、制約条件が満たされる場合には、図3(A)のマップから決定された目標過給圧TPcomがそのまま過給圧の制御用の目標過給圧に設定されると共に、図3(B)のマップから決定された目標EGR率TRegrがそのままEGR率の制御用の目標EGR率に設定される。
そして、斯くして設定された目標過給圧に基づいて上述したようにして算出されるベーン制御信号に従ってベーンアクチュエータ35eがベーン35dを動作させると共に、斯くして設定された目標EGR率に基づいて上述したようにして算出されるEGR制御弁制御信号に従ってEGR制御弁アクチュエータがEGR制御弁52を動作させる。
一方、上記制約条件が満たされない場合には、図3(A)のマップから決定された目標過給圧TPcomおよび図3(B)のマップから決定された目標EGR率TRegrが予め定められた規則に従って修正される。
そして、これら修正された目標過給圧TPcomおよび目標EGR率TRegrに基づいてベーン35dおよびEGR制御弁52が実際に動作せしめられたときの実際の過給圧、ベーン35dの動作状態、ベーンアクチュエータ35eの動作状態、ベーン操作量、実際のEGR率、EGR制御弁52の動作状態、EGR制御弁アクチュエータの動作状態、および、EGR制御弁操作量が再び予測される。そして、これら予測された過給圧、ベーン35dの動作状態、ベーンアクチュエータ35eの動作状態、ベーン操作量、実際のEGR率、EGR制御弁52の動作状態、EGR制御弁アクチュエータの動作状態、および、EGR制御弁操作量が、上記制約条件を満たすか否かが判断される。
ここで、上記制約条件が満たされる場合、上記修正された目標過給圧が過給圧の制御用の目標過給圧に設定され、この設定された目標過給圧に基づいて上述したようにして算出されるベーン制御信号に従ってベーンアクチュエータ35eがベーン35dを動作させると共に、上記修正された目標EGR率がEGR率の制御用の目標EGR率に設定され、この設定された目標EGR率に基づいて上述したようにして算出されるEGR制御弁制御信号に従ってEGR制御弁アクチュエータがEGR制御弁52を動作させる。
一方、ここでも上記制約条件が満たされない場合、上記修正された目標過給圧が上記予め定められた規則に従ってさらに修正されると共に、上記修正された目標EGR率が上記予め定められた規則に従ってさらに修正される。そして、これらさらに修正された目標過給圧および目標EGR率に基づいてベーン35dおよびEGR制御弁52が実際に動作せしめられたときの実際の過給圧、ベーン35dの動作状態、ベーンアクチュエータ35eの動作状態、ベーン操作量、実際のEGR率、EGR制御弁52の動作状態、EGR制御弁アクチュエータの動作状態、および、EGR制御弁操作量が再び予測される。そして、これら予測された過給圧、ベーン35dの動作状態、ベーンアクチュエータ35eの動作状態、ベーン操作量、実際のEGR率、EGR制御弁52の動作状態、EGR制御弁アクチュエータの動作状態、および、EGR制御弁操作量が、上記制約条件を満たすか否かが判断される。
本実施形態の制御装置では、目標過給圧および目標EGR率の修正と、該修正された目標過給圧および目標EGR率に基づいてベーン35dおよびEGR制御弁52が動作せしめられたときの実際の過給圧、ベーン35dの動作状態、ベーンアクチュエータ35eの動作状態、ベーン操作量、実際のEGR率、EGR制御弁52の動作状態、EGR制御弁アクチュエータの動作状態、および、EGR制御弁操作量の予測と、該予測された過給圧、ベーン35dの動作状態、ベーンアクチュエータ35eの動作状態、ベーン操作量、実際のEGR率、EGR制御弁52の動作状態、EGR制御弁アクチュエータの動作状態、および、EGR制御弁操作量が上記制約条件を満たすか否かの判断とが、上記制約条件が満たされると判断されるまで繰り返される。
このように、本実施形態の制御装置によれば、過給圧に関する制約条件、EGR率に関する制約条件、ベーンの動作状態に関する制約条件、EGR制御弁の動作状態に関する制約条件、ベーン操作量に関する制約条件、EGR制御弁操作量に関する制約条件、ベーンアクチュエータの動作状態に関する制約条件、および、EGR制御弁アクチュエータの動作状態に関する制約条件が満たされた状態でもって、過給圧およびEGR率が制御される。このため、過給圧およびEGR率が過給圧の制御、EGR率の制御、ベーンの動作の制御、EGR制御弁の動作の制御、ベーン操作量の決定、EGR制御弁操作量の決定、ベーンアクチュエータの動作の制御、および、EGR制御弁アクチュエータの動作の制御にとって好適な制御状態でもって制御される。
また、本実施形態の制御装置によれば、ベーン操作量およびEGR制御弁操作量に関する制約条件が満たされるように過給圧およびEGR率が制御されることから、アンチワインドアップ効果が得られる。このため、過給圧およびEGR率をそれぞれ目標過給圧および目標EGR率に制御する過程(すなわち、過渡状態)において、過給圧およびEGR率の制御応答性がより良好であると言える。
また、本実施形態の制御装置によれば、ベーンおよびEGR制御弁に関する制約条件、ならびに、ベーンアクチュエータおよびEGR制御弁アクチュエータに関する制約条件が満たされた状態でもって、過給圧およびEGR率が制御される。このため、過給圧およびEGR率の制御の安定性およびロバスト性が高いと言える。
また、本実施形態の制御装置によれば、上述した全ての制約条件が満たされた状態で過給圧およびEGR率が制御されることになる。したがって、過給圧およびEGR率をそれぞれ目標過給圧および目標EGR率に制御する過程において、過給圧が目標過給圧を許容できないほど上回ったり下回ったりすることが防止され、ベーン35dの故障が防止され、ベーンアクチュエータ35eの故障が防止され、EGR率が目標EGR率を許容できないほど上回ったり下回ったりすることが防止され、EGR制御弁52の故障が防止され、EGR制御弁アクチュエータの故障が防止される。すなわち、過給圧およびEGR率が好適な状態でもって制御される。
なお、過給圧およびEGR率の制御に関する上述した考え方は、過給圧の制御とEGR率の制御とを同時に行う場合だけでなく、内燃機関10において制御されるべき複数のパラメータの制御を同時に行う場合に適用可能である。すなわち、例えば、内燃機関10では、燃焼室に吸入される空気の量(以下この空気の量を「吸気量」という)がスロットル弁33によって制御可能であるが、この吸気量の制御と過給圧の制御とEGR率の制御とを同時に行う場合にも上述した考え方は適用可能である。また、例えば、内燃機関10が、上述した実施形態のEGR装置50に加えて、過給機35の排気タービン35bよりも下流の排気管42から過給機35のコンプレッサ35aよりも上流の吸気管32に排気ガスを導入する別のEGR装置を具備する場合には、この別のEGR装置によって吸気管32に導入される排気ガスの量の制御と、上述した実施形態のEGR装置50によって吸気枝管31に導入される排気ガスの量の制御とを同時に行う場合にも上述した考え方は適用可能である。
なお、上述した実施形態において、ベーンおよびEGR制御弁は、内燃機関において制御されるべき制御対象である。そして、上述した実施形態の考え方は、ベーンおよびEGR制御弁以外の制御対象(すなわち、内燃機関の構成要素)を制御する場合にも適用可能である。したがって、上述した実施形態は、広くは、ベーンおよびEGR制御弁等の制御対象を制御するものであると言える。
また、上述した実施形態において、過給圧およびEGR率は、内燃機関において制御されるべき制御量である。そして、上述した実施形態の考え方は、過給圧およびEGR率以外の制御量を制御する場合にも適用可能である。したがって、上述した実施形態は、広くは、過給圧およびEGR率等の制御量を制御するものであると言える。
また、上述した実施形態において、電子制御装置は、図3(A)および図3(B)のマップから目標過給圧および目標EGR率を過給圧の初期目標値およびEGR率の初期目標値として決定する。したがって、電子制御装置は、初期目標値決定手段として機能すると言える。
また、上述した実施形態において、電子制御装置は、図3(A)および図3(B)のマップから決定される目標過給圧および目標EGR率を修正し、これら修正した目標過給圧および目標EGR率を過給圧およびEGR率の修正目標値として出力する。したがって、電子制御装置は、修正目標値出力手段として機能すると言える。
また、上述した実施形態において、電子制御装置は、目標過給圧に対する実際の過給圧の偏差(すなわち、過給圧偏差)に応じてベーンアクチュエータにベーンを動作させるためのベーン制御信号を生成すると共に、目標EGR率に対する実際のEGR率の偏差(すなわち、EGR率偏差)に応じてEGR制御弁アクチュエータにEGR制御弁を動作させるためのEGR制御弁制御信号を生成する。そして、ベーンアクチュエータおよびEGR制御弁アクチュエータは、これらベーン制御信号およびEGR制御弁制御信号に従ってベーンおよびEGR制御弁の動作を制御する。すなわち、ベーンアクチュエータおよびEGR制御弁アクチュエータは、ベーン制御信号およびEGR制御弁制御信号に従ってベーンおよびEGR制御弁に操作量を与える。したがって、電子制御装置は、目標過給圧および目標EGR率に応じてベーンおよびEGR制御弁に入力すべき操作量を決定する操作量決定手段として機能すると言える。
もちろん、上述した実施形態において、電子制御装置は、目標過給圧に対する実際の過給圧の偏差(すなわち、過給圧偏差)に応じてベーンアクチュエータにベーンを動作させるためのベーン制御信号を生成すると共に、目標EGR率に対する実際のEGR率の偏差(すなわち、EGR率偏差)に応じてEGR制御弁アクチュエータにEGR制御弁を動作させるためのEGR制御弁制御信号を生成するのであるから、電子制御装置は、制御信号生成手段として機能すると言える。
また、上述した実施形態において、電子制御装置は、目標過給圧が過給圧の制御用の制御目標値として入力されて該入力された目標過給圧に応じてベーンに入力すべきベーン操作量を決定すると共に目標EGR率がEGR率の制御用の制御目標値として入力されて該入力された目標EGR率に応じてEGR制御弁に入力すべきEGR制御弁操作量を決定する制御プロセスを実行する。したがって、電子制御装置は、上記制御プロセスを実行する制御プロセス実行手段として機能すると言える。
また、上述した実施形態において、電子制御装置は、図3(A)のマップから決定される目標過給圧を実際の過給圧制御における目標過給圧として決定されるベーン操作量がベーンに入力されると共に図3(B)のマップから決定される目標EGR率を実際のEGR率制御における目標EGR率として決定されるEGR制御弁操作量がEGR制御弁に入力されたときに上記制約条件が満たされるか否かを判断する。また、上述した実施形態において、電子制御装置は、修正した目標過給圧を実際の過給圧制御における目標過給圧として決定されるベーン操作量がベーンに入力されると共に修正した目標EGR率を実際のEGR率制御における目標EGR率として決定されるEGR制御弁操作量がEGR制御弁に入力されたときに上記制約条件が満たされるか否かを判断する。したがって、電子制御装置は、上記制約条件が満たされるか否かを判断する判断手段として機能すると言える。
また、上述した実施形態において、電子制御装置は、図3(A)および図3(B)のマップから初期目標値として決定された目標過給圧および目標EGR率に基づいて決定されるベーン操作量(または、ベーン制御信号)およびEGR制御弁操作量(または、EGR制御弁制御信号)に従って過給圧およびEGR率が制御されたときに上記制約条件が満たされると判断されたときにこれら目標過給圧および目標EGR率を実際の過給圧制御およびEGR率制御における目標値として上記制御プロセスに入力する。したがって、電子制御装置は、初期目標値入力手段として機能すると言える。
また、上述した実施形態において、電子制御装置は、修正された目標過給圧および目標EGR率に基づいて上記制約条件が満たされると判断されたときにこれら修正された目標過給圧および目標EGR率を実際の過給圧制御およびEGR率制御における目標値として上記制御プロセスに入力する。したがって、電子制御装置は、修正目標値入力手段として機能すると言える。
また、上述した実施形態において、ベーンアクチュエータおよびEGR制御弁アクチュエータは、それぞれ、ベーンおよびEGR制御弁の動作を制御する。したがって、これらベーンアクチュエータおよびEGR制御弁は、それぞれ、ベーンおよびEGR制御弁の動作を制御する動作制御手段である。そして、上述した実施形態の考え方は、ベーンアクチュエータおよびEGR制御弁以外のアクチュエータによって制御対象の動作を制御する場合にも適用可能である。したがって、上述した実施形態は、広くは、ベーンアクチュエータおよびEGR制御弁アクチュエータ等の動作制御手段によって制御対象の動作を制御するものであると言える。
また、上述した実施形態では、過給圧に関する制約条件、EGR率に関する制約条件、ベーンの動作状態に関する制約条件、EGR制御弁の動作状態に関する制約条件、ベーン操作量に関する制約条件、EGR制御弁操作量に関する制約条件、ベーンアクチュエータの動作状態に関する制約条件、および、EGR制御弁アクチュエータの動作状態に関する制約条件の全てが満たされるように、目標過給圧および目標EGR率が修正される。そして、上述した実施形態の考え方は、ベーンおよびEGR制御弁以外の内燃機関の構成要素を制御対象とし、過給圧およびEGR率以外のパラメータを制御対象の制御量とし、ベーンアクチュエータおよびEGR制御弁アクチュエータ以外のアクチュエータを動作制御手段とした場合にも適用可能である。したがって、上述した実施形態は、広くは、制御量に関する制約条件、制御対象の動作状態に関する制約条件、制御対象に入力すべき操作量に関する制約条件、および、動作制御手段の動作状態に関する制約条件の全てが満たされるように、制御量の目標値を修正するものであると言える。
さらに、上述した実施形態では、上記制御条件の全てが満たされるように、目標過給圧および目標EGR率が修正される。しかしながら、上述した実施形態において、過給圧に関する制約条件とベーンの動作状態に関する制約条件とベーン操作量に関する制約条件とベーンアクチュエータの動作状態に関する制約条件との少なくとも1つと、EGR率に関する制約条件とEGR制御弁の動作状態に関する制約条件とEGR制御弁操作量に関する制約条件とEGR制御弁アクチュエータの動作状態に関する制約条件との少なくとも1つとが満たされるように、目標過給圧および目標EGR率が修正されるようにしてもよい。そして、上述した実施形態の考え方は、ベーンおよびEGR制御弁以外の内燃機関の構成要素を制御対象とし、過給圧およびEGR率以外のパラメータを制御対象の制御量とし、ベーンアクチュエータおよびEGR制御弁アクチュエータ以外のアクチュエータを動作制御手段とした場合にも適用可能である。したがって、上述した実施形態は、広くは、内燃機関の第1の制御対象の制御量に関する制約条件と第1の制御対象の動作状態に関する制約条件と第1の制御対象に入力すべき操作量に関する制約条件と第1の制御対象の動作を制御する第1の動作制御手段の動作状態に関する制約条件との少なくとも1つと、内燃機関の第2の制御対象の制御量に関する制約条件と第2の制御対象の動作状態に関する制約条件と第2の制御対象に入力すべき操作量に関する制約条件と第2の制御対象の動作を制御する第2の動作制御手段の動作状態に関する制約条件との少なくとも1つとが満たされるように、第1の制御量の目標値および第2の制御量の目標値を修正するものと言える。
なお、上述した実施形態において、過給圧に関する制約条件は、過給圧が許容範囲内にあることである。しかしながら、過給圧の制御、EGR率の制御、ベーンの動作の制御、EGR制御弁の動作の制御、ベーン操作量の決定、EGR制御弁操作量の決定、ベーンアクチュエータの動作の制御、EGR制御弁アクチュエータの動作の制御(以下これら制御および決定をまとめて「制御対象の制御量に関連する各種制御」という)を考慮したときに、過給圧が許容範囲内にあるという制約条件以外に過給圧に課すべき制約条件がある場合には、その課すべき制約条件が、過給圧が許容範囲内にあるという制約条件に代えて或いはこれに加えて採用されてもよい。
同様に、上述した実施形態において、EGR率に関する制約条件は、EGR率が許容範囲内にあることである。しかしながら、制御対象の制御量に関連する各種制御を考慮したときに、EGR率が許容範囲内にあるという制約条件以外にEGR率に課すべき制約条件がある場合には、その課すべき制約条件が、EGR率が許容範囲内にあるという制約条件に代えて或いはこれに加えて採用されてもよい。
同様に、上述した実施形態において、ベーンの動作状態に関する制約条件は、ベーンの動作状態が許容範囲内にあることである。しかしながら、制御対象の制御量に関連する各種制御を考慮したときに、ベーンの動作状態が許容範囲内にあるという制約条件以外にベーンの動作状態に課すべき制約条件がある場合には、その課すべき制約条件が、ベーンの動作状態が許容範囲内にあるという制約条件に代えて或いはこれに加えて採用されてもよい。したがって、広くは、上述した実施形態において、ベーンに関する制約条件が採用されてもよい。
同様に、上述した実施形態において、EGR制御弁の動作状態に関する制約条件は、EGR制御弁の動作状態が許容範囲内にあることである。しかしながら、制御対象の制御量に関連する各種制御を考慮したときに、EGR制御弁の動作状態が許容範囲内にあるという制約条件以外にEGR制御弁の動作状態に課すべき制約条件がある場合には、その課すべき制約条件が、EGR制御弁の動作状態が許容範囲内にあるという制約条件に代えて或いはこれに加えて採用されてもよい。したがって、広くは、上述した実施形態において、EGR制御弁に関する制約条件が採用されてもよい。
さらに、上述した実施形態では、ベーンの動作状態に関する制約条件およびEGR制御弁の動作状態に関する制約条件が目標過給圧および目標EGR率を修正するときに考慮される。しかしながら、上述した実施形態において、ベーンの動作状態に関する制約条件およびEGR制御弁の動作状態に関する制約条件以外に考慮されるべきベーンに関する制約およびEGR制御弁に関する制約条件があるのであれば、これら制約条件が目標過給圧および目標EGR率を修正するときに考慮されてもよい。そして、上述した実施形態の考え方は、ベーンおよびEGR制御弁以外の内燃機関の構成要素を制御対象とする場合にも適用可能である。したがって、上述した実施形態は、広くは、内燃機関の第1の制御対象に関する制約条件および内燃機関の第2の制御対象に関する制約条件が満たされるように、第1の制御対象の制御量の目標値および第2の制御対象の制御量の目標値を修正するものであると言える。
同様に、上述した実施形態において、ベーンアクチュエータの動作状態に関する制約条件は、ベーンアクチュエータの動作状態が許容範囲内にあることである。しかしながら、制御対象の制御量に関連する各種制御を考慮したときに、ベーンアクチュエータの動作状態が許容範囲内にあるという制約条件以外にベーンアクチュエータの動作状態に課すべき制約条件がある場合には、その課すべき制約条件が、ベーンアクチュエータの動作状態が許容範囲内にあるという制約条件に代えて或いはこれに加えて採用されてもよい。したがって、広くは、上述した実施形態において、ベーンアクチュエータに関する制約条件が採用されてもよい。
同様に、上述した実施形態において、EGR制御弁アクチュエータの動作状態に関する制約条件は、EGR制御弁アクチュエータの動作状態が許容範囲内にあることである。しかしながら、制御対象の制御量に関連する各種制御を考慮したときに、EGR制御弁アクチュエータの動作状態が許容範囲内にあるという制約条件以外にEGR制御弁アクチュエータの動作状態に課すべき制約条件がある場合には、その課すべき制約条件が、EGR制御弁アクチュエータの動作状態が許容範囲内にあるという制約条件に代えて或いはこれに加えて採用されてもよい。したがって、広くは、上述した実施形態において、EGR制御弁アクチュエータに関する制約条件が採用されてもよい。
さらに、上述した実施形態では、ベーンアクチュエータの動作状態に関する制約条件およびEGR制御弁アクチュエータの動作状態に関する制約条件が目標過給圧および目標EGR率を修正するときに考慮される。しかしながら、上述した実施形態において、ベーンアクチュエータの動作状態に関する制約およびEGR制御弁アクチュエータの動作状態に関する制約以外に考慮されるべきベーンアクチュエータに関する制約条件およびEGR制御弁アクチュエータに関する制約条件があるのであれば、これら制約条件が目標過給圧および目標EGR率を修正するときに考慮されてもよい。そして、上述した実施形態の考え方は、ベーンアクチュエータおよびEGR制御弁アクチュエータ以外のアクチュエータを動作制御手段とする場合にも適用可能である。したがって、上述した実施形態は、広くは、内燃機関の第1の制御対象の動作を制御する第1の動作制御手段に関する制約条件および内燃機関の第2の制御対象の動作を制御する第2の動作制御手段に関する制約条件が満たされるように、第1の制御対象の制御量の目標値および第2の制御対象の制御量の目標値を修正するものであると言える。
同様に、上述した実施形態において、ベーン操作量に関する制約条件は、ベーン操作量が許容範囲内にあることである。しかしながら、制御対象の制御量に関連する各種制御を考慮したときに、ベーン操作量が許容範囲内にあるという制約条件以外にベーン操作量に課すべき制約条件がある場合には、その課すべき制約条件が、ベーン操作量が許容範囲内にあるという制約条件に代えて或いはこれに加えて採用されてもよい。
同様に、上述した実施形態において、EGR制御弁操作量に関する制約条件は、EGR制御弁操作量が許容範囲内にあることである。しかしながら、制御対象の制御量に関連する各種制御を考慮したときに、EGR制御弁操作量が許容範囲内にあるという制約条件以外にEGR制御弁操作量に課すべき制約条件がある場合には、その課すべき制約条件が、EGR制御弁操作量が許容範囲内にあるという制約条件に代えて或いはこれに加えて採用されてもよい。
また、上述した実施形態において、制約条件は、過給圧、EGR率、ベーン、EGR制御弁、ベーン操作量、EGR制御弁操作量、ベーンアクチュエータ、および、EGR制御弁アクチュエータに関する制約条件である。しかしながら、これら制約条件以外に課すべき制約条件がある場合には、その課すべき制約条件が上記制約条件に代えて或いはこれに加えて採用されてもよい。したがって、広くは、上述した実施形態において、内燃機関に関する制約条件が採用されてもよい。
また、上述した実施形態の制御装置において、実際の過給圧およびEGR率の制御に使用される修正後の目標過給圧および目標EGR率は、少なくとも、目標過給圧および目標EGR率に基づいて実際に過給圧およびEGR率が制御されたときに上記制約条件全てが満たされるものであればよい。しかしながら、図3(A)および図3(B)のマップから決定された目標過給圧および目標EGR率は機関運転状態にとって最適な値であるので、実際の過給圧およびEGR率の制御に使用される修正後の目標過給圧および目標EGR率が図3(A)および図3(B)のマップから決定された目標過給圧および目標EGR率から大きく異なっている状態は、出力トルクの大幅な変動(すなわち、トルクショック)やドライバビリティの悪化を招く可能性があり、機関運転状態にとって好ましくない。したがって、上述した実施形態の制御装置において、上記制約条件全てが満たされる複数の修正後の目標過給圧および目標EGR率がある場合には、これら目標過給圧および目標EGR率のうち、図3(A)および図3(B)のマップから決定された目標過給圧および目標EGR率に最も近い目標過給圧および目標EGR率が採用されることが好ましい。
また、上述した実施形態において、ベーンは、燃焼室に吸入される空気の圧力を高める度合を制御する圧力制御弁であるとも言える。また、上述した実施形態において、EGR制御弁は、内燃機関の吸気通路に導入される排気ガスの量を制御する排気ガス量制御弁であるとも言える。
ところで、上述したように、第1実施形態の予測演算では、例えば、図3(A)のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに基づいて目標過給圧TPcomが決定される共に、図3(B)のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに基づいて目標EGR率TRegrが決定され、これら目標過給圧および目標EGR率TRegrに基づいてベーン35dおよびEGR制御弁52動作せしめられたときの実際の過給圧、ベーン35dの動作状態、ベーンアクチュエータ35eの動作状態、ベーン操作量、実際のEGR率、EGR制御弁52の動作状態、EGR制御弁アクチュエータの動作状態、および、EGR制御弁操作量が予測される。すなわち、広く表現すれば、第1実施形態の予測演算では、制御対象に関連する状態(以下、制御対象に関連する状態を「制御対象状態」という)が予測される。そして、現時点から予め定められた時間(以下この時間を「予測長」という)だけ将来までの制御対象状態が将来制御対象状態として予測される。そして、予測された将来制御対象状態が最適な状態となる制御対象の制御量の目標値が判明するまで、制御対象の制御量の目標値を修正しつつ予測演算が行われる。そして、予測された将来制御対象状態が最適な状態となる制御量の目標値が実際の制御量の目標値として設定され、この設定された目標値に従って制御対象が制御される。
ところで、第1実施形態では、予測演算において将来制御対象状態を演算するために、少なくとも2つのモデルが用意される。これらモデルのうちの一方は、比較的多い数の制御対象状態量(すなわち、制御対象に関する状態量)をパラメータとして有するモデル(以下このモデルを「高次元モデル」という)であり、他方のモデルは、比較的少ない数の制御対象状態量をパラメータとして有するモデル(以下このモデルを「低次元モデル」という)である。したがって、予測長が一定である場合、高次元モデルを用いた予測演算(以下この予測演算を「高次元モデル予測演算」という)には、低次元モデルを用いた予測演算(以下この予測演算を「低次元モデル予測演算」という)に比べて、高精度な将来制御対象状態が得られるという利点がある。一方、低次元モデル予測演算には、高次元モデル予測演算に比べて、演算負荷が低いという利点がある。
ところで、予測演算に関し、以下の事情がある。すなわち、高次元モデル予測演算の負荷は比較的高い。したがって、高次元モデル予測演算が行われると、装置演算負荷(すなわち、電子制御装置の演算負荷)が高くなる。一方、低次元モデル予測演算の負荷は比較的低い。したがって、低次元モデル予測演算が行われたとしても、装置演算負荷は比較的低く維持される。
また、高機関負荷時(すなわち、内燃機関の負荷が比較的高い時)は、単位時間当たりに電子制御装置が行わなければならない演算の数が多いことから、一般的に、装置演算負荷が高い。一方、低機関負荷時(すなわち、内燃機関の負荷が比較的低い時)は、単位時間当たりに電子制御装置が行わなければならない演算の数が少ないことから、一般的に、装置演算負荷が低い。
また、高機関負荷時は、単位時間当たりの制御対象の制御の回数が多く、制御対象の制御を行うために電子制御装置が行わなければならない演算の数が多い。このため、予測演算による将来制御対象状態の演算の速度が遅いと、制御対象が適切に制御されない。したがって、高機関負荷時に制御対象を適切に制御するためには、予測演算において将来制御対象状態が迅速に演算されることが望まれる。一方、機関低負荷時は、単位時間当たりの制御対象の制御の回数が少ない。このため、予測演算による将来制御対象状態の演算の精度が低く、制御対象の制御量の目標値に対する実際の制御量の追従性が低いと、制御対象の状態量がステップ的に変化してしまう。したがって、機関低負荷時に制御対象の状態量がステップ的に変化してしまうことを抑制するためには、予測演算において将来制御対象状態が高精度に演算されることが望まれる。
ここで、低次元モデルを用いて予測演算をすると、上述したように、予測演算の負荷が低く、迅速に将来制御対象状態を演算することができる。一方、高次元モデルを用いて予測演算をすると、上述したように、予測演算の負荷が高くなるが、高精度に将来制御対象状態を演算することができる。
また、予測演算の負荷が高く、装置演算負荷が高くなると、電子制御装置による予測演算以外の演算の精度(および、速度)ならびに電子制御装置による制御対象の制御の精度が低くなる可能性がある。一方、予測演算の負荷が低く、装置演算負荷が低ければ、電子制御装置による予測演算以外の演算の精度(および、速度)ならびに電子制御装置による制御対象の制御の精度(以下これらをまとめて「電子制御装置による予測演算以外の演算等の精度」という)が高く維持される。
また、電子制御装置による予測演算以外の演算の負荷や電子制御装置による制御対象の制御の負荷が高いと、電子制御装置による将来制御対象状態の予測演算の精度(および、速度)が低くなる可能性がある。一方、電子制御装置による予測演算以外の演算の負荷や電子制御装置による制御対象の制御の負荷が低ければ、電子制御装置による将来制御対象状態の予測演算の精度(および、速度)が高くなる。
以上の事情に鑑み、第1実施形態では、以下のように予測演算が行われる。すなわち、第1実施形態では、高次元モデル予測演算を行うときに用いられる予測長が高次元モデル予測長として予め設定され、低次元モデル予測演算を行うときに用いられる予測長が低次元モデル予測長として予め設定される。ここで、高次元モデル予測長は、機関状態(すなわち、内燃機関の状態)が特定の状態にあるとき(例えば、機関負荷が中程度であって機関回転数も中程度であって機関負荷も機関回転数も一定に維持されているとき)に高次元モデル予測演算によって将来制御対象状態を演算した場合に適切な将来制御対象状態を得ることができる予測長に設定される。同様に、低次元モデル予測長は、機関状態が上記特定の状態にあるときに低次元モデル予測演算によって将来制御対象状態を演算した場合に適切な将来制御対象状態を得ることができる予測長に設定される。斯くして高次元モデル予測長および低次元モデル予測長が設定された場合、高次元モデル予測長は、低次元モデル予測長よりも短くなる。
また、高次元モデル予測演算によって高次元モデル予測長だけ先の将来制御対象状態を演算した場合に適切な将来制御対象状態を得ることができる装置演算負荷の最大値が許容演算負荷値として予め設定される。すなわち、許容演算負荷値は、電子制御装置の演算能力を考慮したときの許容演算負荷値であるとも言える。さらに、許容演算負荷値は、電子制御装置の演算能力を考慮したときに最適な将来制御対象状態を得ることができる演算負荷値であるとも言える。
そして、第1実施形態の予測演算では、装置演算負荷が上記許容演算負荷値以下であるときには、高次元モデル予測演算によって高次元モデル予測長だけ先の将来制御対象状態が演算される。一方、装置演算負荷が許容演算負荷値よりも大きいときには、低次元モデル演算によって低次元モデル予測長だけ先の将来制御対象状態が演算される。
この第1実施形態の予測演算によれば、以下の効果が得られる。すなわち、第1実施形態の予測演算では、装置演算負荷が許容演算負荷値以下であり、高次元モデルを用いた将来制御対象状態の予測演算(以下この予測演算を「高次元モデル予測演算」という)が行われたとしても適切な将来制御対象状態が得られる場合に、高次元モデル予測演算が行われる。したがって、第1実施形態によれば、装置演算負荷が許容演算負荷値以下であるときに適切な将来制御対象状態が得られる。
また、上述したように、低機関負荷時は、予測演算において将来制御対象状態が高精度に演算されることが望まれる。ここで、装置演算負荷が許容演算負荷値以下であれば、高次元モデル予測演算によって将来制御対象状態を高精度に演算することができる。一方、低機関負荷時は、電子制御装置による予測演算以外の演算の負荷や電子制御装置による制御対象の制御の負荷が比較的低く、装置演算負荷が許容演算負荷値以下であることが多い。すなわち、低機関負荷時は、高次元モデル予測演算によって高精度に将来制御対象状態を演算することができる。ここで、第1実施形態の予測演算では、装置演算負荷が許容演算負荷値以下であることが多い低機関負荷時に、高次元モデル予測演算によって将来制御対象状態が予測される。したがって、第1実施形態によれば、低機関負荷時に高精度な将来制御対象状態が得られる。
また、装置演算負荷が許容演算負荷値以下である場合とは、電子制御装置の演算能力に余裕がある場合である。ここで、高次元モデル予測演算の負荷は、低次元モデル予測演算の負荷よりも高い。このため、装置演算負荷が許容演算負荷値以下であるときに高次元モデル予測演算が行われることは、電子制御装置の演算能力の余裕分を利用することになる。したがって、第1実施形態によれば、装置演算負荷が許容演算負荷値以下であるときに電子制御装置の演算能力が有効に利用されていると言える。
また、第1実施形態の予測演算では、装置演算負荷が許容演算負荷値よりも大きく、高次元モデル予測演算が行われると適切な将来制御対象状態が得られず、逆に、低次元モデル予測演算が行われれば適切な将来制御対象状態が得られる場合に、低次元モデル予測演算が行われる。したがって、第1実施形態によれば、装置演算負荷が許容演算負荷値よりも大きいときにも適切な将来制御対象状態が得られる。
また、上述したように、高機関負荷時は、予測演算において将来制御対象状態が迅速に演算されることが望まれる。ここで、高機関負荷時は、電子制御装置による予測演算以外の演算の負荷や電子制御装置による制御対象の制御の負荷が比較的高く、装置演算負荷が許容演算負荷値よりも大きいことが多い。一方、低次元モデル予測演算の負荷は比較的低いので、装置演算負荷が許容演算負荷値よりも大きいときであっても低次元モデル予測演算によれば将来制御対象状態を迅速に演算することができる。すなわち、高機関負荷時は、高次元モデル予測演算によると将来制御対象状態を迅速に演算することはできないが、低次元モデル予測演算によれば将来制御対象状態を迅速に演算することができる。ここで、第1実施形態の予測演算では、装置演算負荷が許容演算負荷値よりも大きいことが多い高機関負荷時に、低次元モデル予測演算によって将来制御対象状態が予測される。したがって、第1実施形態によれば、高機関負荷時に将来制御対象状態が迅速に得られる。
また、装置演算負荷が許容演算負荷値よりも大きい場合とは、電子制御装置の演算能力に余裕がない場合である。ここで、低次元モデル予測演算の負荷は、高次元モデル予測演算の負荷よりも低い。したがって、装置演算負荷が許容演算負荷値よりも大きいときに低次元モデル予測演算が行われることは、電子制御装置の演算能力の余裕分を増大させ、この余裕分を電子制御装置による予測演算以外の演算等に利用することができる。したがって、第1実施形態によれば、装置演算負荷が許容演算負荷値よりも大きいときにも電子制御装置の演算能力が有効に利用されていると言える。
また、高次元モデル予測演算によって将来制御対象状態を演算した場合、高精度な将来制御対象状態が得られる。しかしながら、高次元モデル予測演算の負荷は比較的高いことから、装置演算負荷が増大し、高次元モデル予測演算によって得られる将来制御対象状態の精度が低くなる可能性がある。また、装置演算負荷が増大すると、電子制御装置による予測演算以外の演算等の精度が低くなる可能性がある。しかしながら、第1実施形態の予測演算では、高次元モデル予測演算が行われるとき、比較的長さの短い高次元モデル予測長が用いられることから、装置演算負荷が軽減される。したがって、第1実施形態によれば、高次元モデル予測演算が行われるときに、高次元モデル予測演算によって得られる将来制御対象状態の精度が高く維持されると共に、電子制御装置による予測演算以外の演算等の精度も高く維持される。
一方、低次元モデル予測演算によって将来制御対象状態を演算した場合、得られる将来制御対象状態の精度は比較的低い。一方、予測演算において用いられる予測長が長いほど、得られる将来制御対象状態の精度が高くなる。ここで、第1実施形態の予測演算では、低次元モデル予測演算が行われるとき、比較的長さの長い低次元モデル予測長が用いられることから、低次元モデル予測演算によって得られる将来制御対象状態の精度が高くなる。
なお、第1実施形態の電子制御装置には、電子制御装置の演算負荷を検出する演算負荷モニタが備えられており、この演算負荷モニタによって検出される検出値が装置演算負荷として利用される。
ところで、第1実施形態の予測演算において、高次元モデル予測演算を行うか低次元モデル予測演算を行うかを判別するために、装置演算負荷の代わりに、機関負荷を利用するようにしてもよい。すなわち、この実施形態(以下「第2実施形態」という)では、高次元モデル予測演算を行った場合に適切な将来制御対象状態を得ることができる機関負荷の最大値が許容機関負荷値として予め設定される。
そして、第2実施形態の予測演算では、機関負荷が上記許容機関負荷値以下であるときには、高次元モデル予測演算によって高次元モデル予測長だけ先の将来制御対象状態が演算される。一方、機関負荷が許容機関負荷値よりも大きいときには、低次元モデル予測演算によって低次元モデル予測長だけ先の将来制御対象状態が演算される。
この第2実施形態の予測演算によれば、以下の効果が得られる。すなわち、上述したように、低機関負荷時は、装置演算負荷が比較的低い。このため、低機関負荷時は、高次元モデル予測演算が行われたとしても適切な将来制御対象状態が得られる。ここで、第2実施形態の予測演算では、低機関負荷時に高次元モデル予測演算が行われる。したがって、第2実施形態によれば、低機関負荷時に適切な将来制御対象状態が得られる。
また、上述したように、低機関負荷時は、予測演算において将来制御対象状態が高精度に演算されることが望まれる。ここで、装置演算負荷が比較的低ければ、高次元モデル予測演算によって将来制御対象状態を高精度に演算することができる。そして、低機関負荷時は、装置演算負荷が比較的低い。ここで、第1実施形態の予測演算では、低機関負荷時に高次元モデル予測演算が行われる。したがって、第2実施形態によれば、低機関負荷時に高精度な将来制御対象状態が得られる。
また、装置演算負荷が比較的低い場合とは、電子制御装置の演算能力に余裕がある場合である。ここで、高次元モデル予測演算の負荷は、低次元モデル予測演算の負荷よりも高い。このため、装置演算負荷が比較的低いとき(すなわち、低機関負荷時)に高次元モデル予測演算が行われることは、電子制御装置の演算能力の余裕分を利用することになる。したがって、第2実施形態によれば、低機関負荷時に電子制御装置の演算能力が有効に活用されていると言える。
また、上述したように、高機関負荷時は、装置演算負荷が比較的高い。ここで、第2実施形態の予測演算では、高機関負荷時であって、装置演算負荷が比較的高く、高次元モデル予測演算が行われると適切な将来制御対象状態が得られず、逆に、低次元モデル予測演算が行われれば適切な将来制御対象状態が得られる場合に、低次元モデル予測演算が行われる。したがって、第2実施形態によれば、高機関負荷時にも適切な将来制御対象状態が得られる。
また、上述したように、高機関負荷時は、予測演算において将来制御対象状態が迅速に演算されることが望まれる。ここで、上述したように、高機関負荷時は、装置演算負荷が比較的高い。一方、低次元モデル予測演算の負荷は比較的低いので、装置演算負荷が比較的高いときであっても低次元モデル予測演算によれば将来制御対象状態を迅速に演算することができる。すなわち、高機関負荷時は、高次元モデル予測演算によると将来制御対象状態を迅速に演算することはできないが、低次元モデル予測演算によれば将来制御対象状態を迅速に演算することができる。ここで、第2実施形態の予測演算では、高機関負荷時であり、装置演算負荷が比較的高いときに、低次元モデル予測演算によって将来制御対象状態が予測される。したがって、第2実施形態によれば、高機関負荷時に将来制御対象状態が迅速に得られる。
また、装置演算負荷が比較的高い場合とは、電子制御装置の演算能力に余裕がない場合である。ここで、低次元モデル予測演算の負荷は、高次元モデル予測演算の負荷よりも低い。したがって、高機関負荷時であり、装置演算負荷が比較的高いときに低次元モデル予測演算が行われることは、電子制御装置の演算能力の余裕分を増大させ、この余裕分を電子制御装置による予測演算以外の演算等に利用することができる。したがって、第2実施形態によれば、高機関負荷時にも電子制御装置の演算能力が有効に利用されていると言える。
また、第2実施形態の予測演算では、高次元モデル予測演算が行われるとき、比較的長さの短い高次元モデル予測長が用いられる。したがって、第1実施形態に関連して説明した理由と同様の理由から、高次元モデル予測演算が行われるときに、高次元モデル予測演算によって得られる将来制御対象状態の精度が高く維持されると共に、電子制御装置による予測演算以外の演算等の精度も高く維持される。
また、第2実施形態の予測演算では、低次元モデル予測演算が行われるとき、比較的長さの長い低次元モデル予測長が用いられる。したがって、第1実施形態に関連して説明した理由と同様の理由から、低次元モデル予測演算が行われたときに、低次元モデル予測演算によって得られる将来制御対象状態の精度が高くなる。
なお、第2実施形態の許容機関負荷は、高次元モデル予測演算を行った場合に適切な将来制御対象状態を得ることができる機関負荷の最大値であり、第1実施形態の許容演算負荷値は、高次元モデル予測演算を行った場合に適切な将来制御対象状態を得ることができる装置演算負荷の最大値であり、機関負荷が高くなると装置演算負荷も高くなる。このことから、第2実施形態において、機関負荷が許容機関負荷値以下であるときとは、装置演算負荷が許容演算負荷値以下であると推定されるときであり、機関負荷が許容機関負荷値よりも大きいときとは、装置演算負荷が許容演算負荷値よりも大きいと推定されるときであるとも言える。
しかしながら、第2実施形態のように、装置演算負荷を利用するのではなく、機関負荷を利用する場合には、演算負荷モニタを電子制御装置に設ける必要がないという利点がある。
ところで、第1実施形態の予測演算では、装置演算負荷が許容演算負荷値以下であるときには高次元モデル予測演算によって将来制御対象状態が演算され、装置演算負荷が許容演算負荷値よりも大きいときには低次元モデル予測演算によって将来制御対象状態が演算される。
したがって、第1実施形態の予測演算中に装置演算負荷が許容演算負荷値以下の値から許容演算負荷値よりも大きい値に変化したときには、当該予測演算において将来制御対象状態を演算するために用いられるモデルが高次元モデルから低次元モデルに切り替えられる(以下この時を「モデル切替時」ともいう)。そして、このとき、予測演算において用いられる予測長が高次元モデル予測長から低次元モデル予測長に切り替えられる。
一方、第1実施形態の予測演算中に装置演算負荷が許容演算負荷値よりも大きい値から許容演算負荷値以下の値に変化したときには、当該予測演算において将来制御対象状態を演算するために用いられるモデルが低次元モデルから高次元モデルに切り替えられる(以下この時も「モデル切替時」ともいう)。そして、このとき、予測演算において用いられる予測長が低次元モデル予測長から高次元モデル予測長に切り替えられる。
ここで、第1実施形態において、モデル切替時に予測演算に用いられる予測長を以下のように制御するようにしてもよい。
すなわち、この実施形態(以下「第3実施形態」という)の予測演算では、装置演算負荷が許容演算負荷値以下の値から許容演算負荷値よりも大きい値に変化し、当該予測演算において用いられるモデルが高次元モデルから低次元モデルに切り替えられるときには、予測長の値が高次元モデル予測長の値から低次元モデル予測長の値に向かって徐々に短くされ、モデルが高次元モデルから低次元モデルに切り替えられてから所定時間が経過した時点で予測長の値が低次元モデル予測長の値に到達するように予測長の値が制御される。一方、装置演算負荷が許容演算負荷値よりも大きい値から許容演算負荷値以下の値に変化し、当該予測演算において用いられるモデルが低次元モデルから高次元モデルに切り替えられるときには、予測長の値が低次元モデル予測長の値から高次元モデル予測長の値に向かって徐々に長くされ、モデルが低次元モデルから高次元モデルに切り替えられてから所定時間が経過した時点で予測長の値が高次元モデル予測長の値に到達するように予測長の値が制御される。
これによれば、以下の効果が得られる。すなわち、第1実施形態の予測演算では、当該予測演算に用いられるモデルが高次元モデルから低次元モデルに切り替えられたとき、予測演算に用いられる予測長が比較的短い高次元モデル予測長から比較的長い低次元モデル予測長に切り替えられ、一方、予測演算に用いられるモデルが低次元モデルから高次元モデルに切り替えられたとき、予測演算に用いられる予測長が比較的長い低次元モデル予測長から比較的短い高次元モデル予測長に切り替えられる。このように、第1実施形態の予測演算では、モデル切替時、当該予測演算に用いられる予測長がステップ的に変化する。このため、モデル切替時から一定の期間が経過する間、予測演算によって得られる将来制御対象状態の連続性が失われる可能性がある。そして、こうした連続性が失われた将来制御対象状態に基づいて制御対象の制御量の目標値が設定され、この設定された目標値に従って制御対象の制御量が制御されると、制御対象の状態量がステップ的に変化してしまうことになる。
しかしながら、第3実施形態の予測演算では、モデル切替時、当該予測演算に用いられる予測長は徐々に変化せしめられる。このため、モデル切替時以降、予測演算によって得られる将来制御対象状態には、連続性がある。したがって、第3実施形態の予測演算によれば、モデル切替時に制御対象の状態量がステップ的に変化してしまうことが抑制される。
また、第2実施形態において、予測演算に用いられるモデルが高次元モデルから低次元モデルに切り替えられるとき及び低次元モデルから高次元モデルに切り替えられるときに、第3実施形態と同様に、予測演算に用いられる予測長を以下のように制御するようにしてもよい。
すなわち、この実施形態(以下「第4実施形態」という)の予測演算では、機関負荷が許容機関負荷値以下の値から許容演算負荷値よりも大きい値に変化し、当該予測演算において用いられるモデルが高次元モデルから低次元モデルに切り替えられるときには、予測長の値が高次元モデル予測長の値から低次元モデル予測長の値に向かって徐々に短くされ、モデルが高次元モデルから低次元モデルに切り替えられてから所定時間が経過した時点で予測長の値が低次元モデル予測長の値に到達するように予測長の値が制御される。一方、機関負荷が許容機関負荷値よりも大きい値から許容機関負荷値以下の値に変化し、当該予測演算において用いられるモデルが低次元モデルから高次元モデルに切り替えられるときには、予測長の値が低次元モデル予測長の値から高次元モデル予測長の値に向かって徐々に長くされ、モデルが低次元モデルから高次元モデルに切り替えられてから所定時間が経過した時点で予測長の値が高次元モデル予測長の値に到達するように予測長の値が制御される。
この第4実施形態の予測演算によれば、第3実施形態に関連して説明した理由と同様の理由から、モデル切替時に制御対象の状態量がステップ的に変化してしまうことが抑制される。
なお、上述した実施形態では、予測演算に用いられるモデルを切り替えるか否か(或いは、予測演算に用いられる予測長を切り替えるか否か、或いは、予測演算に用いられる予測長を制御するか否か)を判別するために、現在の装置演算負荷または現在の機関負荷を用いている。しかしながら、これに代えて、例えば、将来の装置演算負荷や将来の機関負荷を用いてもよい。
次に、上述した実施形態の制御装置において、図3(A)および図3(B)のマップから決定された目標過給圧および目標EGR率に基づいて上記制約条件の全てを満たす目標過給圧および目標EGR率を求める手法の具体例の1つを紹介する。
内燃機関の複数の構成要素を制御対象とし、内燃機関の現時刻における内部状態を内部状態ベクトル「x」で表し、各制御対象の制御量をそれぞれの目標値に制御するために各制御対象に入力される操作量を操作量ベクトル「u」で表したとき、各制御対象にそれぞれ対応する操作量が入力されたときの内燃機関の内部状態、すなわち、内燃機関の次時刻における内部状態を表す状態ベクトル「x」は、定数行列(または、係数行列)AiおよびBiを用いて、次式1の状態方程式によって表現可能である。
Figure 2011236878
なお、上式1において、「x」は、分割された状態空間「Xi」に含まれているものとしている。
また、各制御対象の制御量をそれぞれ対応する目標値に制御するために各制御対象にそれぞれ対応する操作量が入力されたときに各制御対象から出力される制御量を表す制御量ベクトル「y」は、定数行列(または、係数行列)CiおよびDiを用いて、次式2の出力方程式によって表現可能である。
Figure 2011236878
ここで、上記内部状態ベクトルxに関する制約、上記操作量ベクトルuに関する制約、および、上記制御量ベクトルyに関する制約を表すベクトル(以下このベクトルを「被拘束信号ベクトル」という)「c」を次式3で表すものと定義する。
Figure 2011236878
そして、上式3のように被拘束信号ベクトルcを定義したとき、被拘束信号ベクトルcは、上式1および上式2から次式4によって表現される。
Figure 2011236878
ここで、定数行列(または、係数行列)Ccを次式5のように定義し、定数行列(または、係数行列)Dcを次式6のように定義する。
Figure 2011236878
そして、上式5および上式6のように定数行列CcおよびDcを定義したとき、上式4は、次式7によって表現される。
Figure 2011236878
このように、制御対象に関する状態空間モデルは、上式1、上式2、および、上式7で表現されることになる。
ここで、内部状態ベクトルxで表される各制御対象の内部状態に関する制約を有界閉集合「X」で表し、操作量ベクトルuで表される各制御対象に入力される操作量に関する制約を有界閉集合「U」で表し、制御量ベクトルyで表される各制御対象から出力される制御量に関する制約を有界閉集合「Y」で表し、有界閉集合「C」を次式8で表すものと定義する。なお、内部状態ベクトルxがm次元のベクトルであり、操作量ベクトルuがn次元のベクトルであり、制御量ベクトルyがp次元のベクトルであり、q=m+n+pであるとしたとき、有界閉集合Cは、ベクトル空間Rに属している。
Figure 2011236878
そして、被拘束信号ベクトルcが上記有界閉集合Cに属するならば、内部状態ベクトルxが上記有界閉集合Xに属し、操作量ベクトルuが上記有界閉集合Uに属し、制御量ベクトルyが上記有界閉集合Yに属することになる。したがって、被拘束信号ベクトルcが上記有界閉集合Cに属するように操作量ベクトルu(すなわち、各操作量)が修正され、この修正された操作量ベクトルuに従った操作量が各制御対象に入力されたとき、各制御対象の内部状態に関する制約、各制御対象に入力される操作量に関する制約、および、各制御対象から出力される制御量に関する制約の全てが満たされた形で、各制御対象の制御量が制御されることになる。
以上のことを前提とし、ベーン35d、ベーンアクチュエータ35e、EGR制御弁52、および、EGR制御弁アクチュエータを含む内燃機関の複数の構成要素の内部状態観測による内部状態フィードバックと、目標過給圧に対する実際の過給圧の偏差(すなわち、過給圧偏差)と目標EGR率に対する実際のEGR率の偏差(すなわち、EGR率偏差)とに基づく追従誤差積分制御とを行うとしたとき、以下のように、図3(A)および図3(B)のマップからそれぞれ決定される目標過給圧および目標EGR率が修正され、ベーン35dおよびEGR制御弁52にそれぞれ入力される操作量を決定するために用いるべき目標過給圧および目標EGR率が求められる。
すなわち、内部状態フィードバックに関するフィードバックゲインを「Kxi」で表し、追従誤差積分制御に関するフィードバックゲインを「Kvi」で表し、内燃機関の複数の構成要素の内部状態を表す内部状態ベクトルを「x」で表し、追従誤差積分制御における追従誤差積算値を表す追従誤差積算値ベクトルを「v」で表し、ベーンアクチュエータ35eからベーン35に入力される操作量およびEGR制御弁アクチュエータからEGR制御弁52に入力される操作量を表す操作量ベクトルを「u」で表したとき、操作量ベクトルuは、次式9によって表現される。
Figure 2011236878
また、目標過給圧および目標EGR率を表す目標値ベクトルを「r」で表し、制御対象の制御量である過給圧およびEGR率を表す制御量ベクトルを「y」で表し、目標過給圧に対する実際の過給圧の偏差(すなわち、追従誤差)および目標EGR率に対する実際のEGR率の偏差(すなわち、追従誤差)を表す追従誤差ベクトルを「e」で表したとき、追従誤差ベクトルeは、次式10によって表現される。
Figure 2011236878
さらに、現時刻における追従誤差積算値ベクトルを「v」で表し、次時刻における追従誤差積算値ベクトルを「v」で表したとき、次時刻における追従誤差積算値ベクトルvは、次式11によって表現される。
Figure 2011236878
そして、上式10および上式11を上式1、上式2、および、上式7に代入して変形すると、次式12〜次式14の閉ループ系の状態空間モデルが得られる。
Figure 2011236878
ここで、上式12は、過給圧およびEGR率に関する現時刻における追従誤差積算値(これらは、追従誤差積算値ベクトルvで表されている)と、内燃機関の構成要素の現時刻における内部状態(これらは、内部状態ベクトルxで表されている)と、現時刻における目標過給圧および目標EGR率(これらは、目標値ベクトルrで表されている)とに基づいて、次時刻における追従誤差積算値(これらは、追従誤差積算値ベクトルvで表されている)および内燃機関の構成要素の次時刻における内部状態(これらは、内部状態ベクトルxで表されている)を求める式である。
また、上式13は、過給圧およびEGR率に関する追従誤差積算値と、内燃機関の構成要素の内部状態とに基づいて、制御対象の制御量である過給圧およびEGR率(これらは、制御量ベクトルyで表されている)を求める式である。
さらに、上式14は、過給圧およびEGR率に関する追従誤差積算値と、内燃機関の構成要素の内部状態とに基づいて、上述した被拘束信号ベクトルcを求める式である。
そして、上式12〜上式14に示されている状態空間モデルが上述した第1実施形態〜第4実施形態の予測演算に用いられるモデルに相当する。したがって、本例では、上式12〜上式14に示されている状態空間モデルに従って、高次元の状態空間モデル(すなわち、制御対象の状態量の数が比較的多い状態空間モデル)と、低次元の状態空間モデル(すなわち、制御対象の状態量の数が比較的少ない状態空間モデル)とが用意されることになる。
一方、「ξ」、「Φ」、「G」、「H」、および、「Hc」をそれぞれ次式15〜次式19のように定義する。
Figure 2011236878
そして、上記「ξ」、「Φ」、「G」、「H」、および、「Hc」を用いれば、上式12〜上式14は、次式20〜次式22のように表現可能される。
Figure 2011236878
そして、演算周期を「ステップ」と称し、目標過給圧および目標EGR率が目標値ベクトルrとして与えられたとき、hステップ先の制約条件が満たされる目標過給圧および目標EGR率を求める場合、図3(A)および図3(B)のマップからそれぞれ決定される目標過給圧および目標EGR率、すなわち、初期の目標値を表す初期目標値ベクトルを「r」で表したとき、初期目標値ベクトルrに対する今回求めるべき目標過給圧および目標EGR率を表す目標値ベクトルrの偏差の絶対値の最小値を求めるという下の(23)に示されている最適化問題を解くことによって得られる目標値ベクトルrで表される目標過給圧および目標EGR率が全ての制約を満たした状態で過給圧およびEGR率を制御することができる目標過給圧および目標EGR率である。
Figure 2011236878
すなわち、逐次、上の(23)に示されている最適化問題を解いて得られる目標過給圧および目標EGR率を過給圧およびEGR率の制御に用いれば、全ての制約を満たした状態で、過給圧およびEGR率が制御されることになる。
ここで、上の(23)に示されている最適化問題において、「ck+j|k」は、時刻kにおける必要情報が既知である場合の時刻k+jにおける「c」の推定値を表しており、「ξk+j|k」は、時刻kにおける必要情報が既知である場合の時刻k+jにおける「ξ」の推定値を表している。
なお、上記「h」が上述した実施形態における「予測長」に相当する。したがって、本例では、上記「h」として、高次元モデル予測演算に用いられる比較的小さい「h」と、低次元モデル予測演算に用いられる比較的大きい「h」とが用意されることになる。
なお、上で紹介した例では、状態空間モデルを用いて、全ての制約条件が満たされるように図3(A)および図3(B)のマップからそれぞれ決定された目標過給圧および目標EGR率が修正され、これら修正された目標過給圧および目標EGR率が実際の過給圧およびEGR率の制御に用いられる。したがって、上で紹介した例では、図3(A)および図3(B)のマップからそれぞれ決定された目標過給圧および目標EGR率に基づいて実際の過給圧およびEGR率が制御されたときの過給圧、EGR率、ベーンの動作状態、EGR制御弁の動作状態、ベーン操作量、EGR制御弁操作量、ベーンアクチュエータの動作状態、および、EGR制御弁アクチュエータの動作状態が、状態空間モデルによって予測され、この予測結果に基づいて全ての制約条件が満たされるか否かが判別され、全ての制約条件が満たされると判断されるまで目標過給圧および目標EGR率が修正され、全ての制約条件が満たされると判断されたときの目標過給圧および目標EGR率が実際の過給圧およびEGR率の制御に用いられるものと言える。
これによれば、目標過給圧が変更され或いは目標EGR率が変更されたときに、過給圧またはEGR率がそれぞれ目標過給圧または目標EGR率に制御されるまでの過程(すなわち、過渡状態)において、最適な目標過給圧または目標EGR率が逐次算出され、この算出された目標過給圧または目標EGR率に基づいて過給圧またはEGR率が制御されることになる。このため、過渡状態における過給圧またはEGR率の応答性が良好なものとなる。
特に、これによれば、ベーン35dおよびEGR制御弁52に入力される操作量にも制約が加えられていることから、アンチワインドアップ効果が得られる。このため、過給圧およびEGR率をそれぞれ目標過給圧および目標EGR率に制御する過程(すなわち、過渡状態)において、過給圧およびEGR率の制御応答性がより良好であると言える。
また、上述した実施形態および上で紹介した例では、過給機のベーンおよびEGR装置のEGR制御弁といった制御対象に関する制約、ならびに、ベーンアクチュエータおよびEGR制御弁アクチュエータといった制御対象の動作を制御するアクチュエータに関する制約が満たされた状態でもって、過給圧およびEGR率が制御される。このため、過給圧およびEGR率の制御の安定性およびロバスト性が高いと言える。
また、上述した考え方に基づいて記述される状態空間モデルには、制御対象への入力および制御対象から出力における非線形特性、これら入力および出力に関する制約、ならびに、制御対象の内部状態に関する制約が陽に記述可能である。このため、当該状態空間モデルが用いられた過給圧およびEGR率の制御では、制御の安定性およびロバスト性が高いと言える。
なお、上式24の最適化問題を解く場合、最適解を求めるようにしてもよいが、1回の演算にかけられる時間が比較的短い場合、或いは、解を迅速に求める必要がある場合には、近似解を求めるようにしてもよい。
また、上で紹介した例では、ベーン、ベーンアクチュエータ、EGR制御弁、および、EGR制御弁アクチュエータを含む内燃機関の構成要素の内部状態観測による内部状態フィードバックが行われているが、内燃機関の構成要素の内部状態観測が行えない或いは精度良く行えない場合には、内部状態フィードバックに代えて過給圧およびEGR率といった制御対象からの出力値に基づく出力フィードバックが用いられてもよい。
なお、以上、圧縮自着火式の内燃機関に本発明の制御装置を適用した場合を例に本発明の実施形態を説明したが、本発明は、火花点火式の内燃機関にも適用可能である。
次に、上述した例において第1実施形態に従って目標過給圧および目標EGR率の修正と目標過給圧および目標EGR率の設定とを行うルーチンの一例を紹介する。この例は、図4に示されている。図4のルーチンは、所定時間間隔毎に実行される。
図4のルーチンが開始されると、始めに、ステップ100において、図3(A)のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに基づいて目標過給圧TPcomが決定される。次いで、ステップ101において、図3(B)のマップから機関回転数Nと機関負荷Lとに基づいて目標EGR率TRegrが決定される。
次いで、ステップ102において、ステップ100で決定された目標過給圧と目標EGR率とに基づいて予測演算が実行される。すなわち、ステップ100で決定された目標過給圧と目標EGR率とに基づいて過給圧およびEGR率の制御が行われたときの予測長(図5〜図8のルーチンによって設定される予測長であって、例えば、高次元モデル予測長または低次元モデル予測長)だけ将来制御対象状態(すなわち、過給圧、ベーン35dの動作状態、ベーンアクチュエータ35eの動作状態、ベーン操作量、EGR率、EGR制御弁52の動作状態、EGR制御弁アクチュエータの動作状態、および、EGR制御弁操作量)が予測される。
次いで、ステップ103において、ステップ102で予測された将来制御対象状態が上述した制約条件の全てを満たしているか否かが判別される。ここで、将来制御対象状態が上述した制約条件の全てを満たしていると判別されたときには、ルーチンはステップ104に進み、ステップ100において決定された目標過給圧が実際の過給圧の制御に用いられる目標過給圧に設定されると共に、ステップ101において決定された目標EGR率が実際のEGR率の制御に用いられる目標EGR率に設定され、ルーチンが終了する。
一方、ステップ103において、ステップ102で予測された将来制御対象状態が上述した制約条件の少なくとも1つを満たしていないと判別されたときには、ルーチンはステップ105に進み、上述した様式に従ってステップ100において決定された目標過給圧およびステップ101において決定された目標EGR率が修正され、ルーチンは再びステップ102に進む。そして、この場合、ステップ102では、ステップ104において修正された目標過給圧および目標EGR率に基づいて予測演算が実行される。次いで、ステップ103において、ステップ102で予測された将来制御対象状態が上述した制約条件の全てを満たしているか否かが判別される。ここで、将来制御対象状態が上述した制約条件の全てを満たしていると判別されたときには、ルーチンはステップ103に進み、ステップ104において修正された目標過給圧が実際の過給圧の制御に用いられる目標過給圧に設定されると共に、ステップ104において修正された目標EGR率が実際の過給圧の制御に用いられる目標EGR率に設定される。
一方、ステップ103において、ステップ102で予測された将来制御対象状態が上述した制約条件の少なくとも1つを満たしていないと判別されたときには、ルーチンは再びステップ104に進み、前回ステップ104において修正された目標過給圧および目標EGR率が上述した様式に従ってさらに修正され、ルーチンは再びステップ102に進む。すなわち、ステップ103において将来制御対象状態が上述した制約条件の全てを満たしていると判断されるまで、ステップ104、ステップ102、および、ステップ103が繰返し実行される。
次に、第1実施形態に従って予測演算に用いられるモデルおよび予測長を設定するルーチンの一例を紹介する。このルーチンは、図5に示されている。図5のルーチンは、図4のステップ102が開始されたときに開始されるルーチンである。
図5のルーチンが開始されると、ステップ200において、装置演算負荷CLが取得される。次いで、ステップ201において、ステップ200で取得された装置演算負荷CLが許容演算負荷値CLthよりも大きい(CL>CLth)か否かが判別される。ここで、CL>CLthであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ202に進む。一方、CL≦CLthであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ205に進む。
ステップ201においてCL>CLthであると判別され、ルーチンがステップ202に進むと、図4のステップ102の予測演算に用いられるモデルとして低次元モデルが設定される。次いで、ステップ203において、図4のステップ102の予測演算に用いられる予測長として低次元モデル予測長が設定され、ルーチンがステップ204に進む。
ステップ201においてCL≦CLthであると判別され、ルーチンがステップ205に進むと、図4のステップ102の予測演算に用いられるモデルとして高次元モデルが設定される。次いで、ステップ205において、図4のステップ102の予測演算に用いられる予測長として高次元モデル予測長が設定され、ルーチンがステップ204に進む。
ステップ204では、図4のステップ102の予測演算が実行中であるか否かが判別される。ここで、予測演算が実行中であると判別されたときには、ルーチンはステップ200に戻る。一方、予測演算が実行中ではないと判別されたときには、ルーチンは終了する。すなわち、ステップ204において予測演算が実行中ではないと判別されるまで、ステップ200〜ステップ206が繰り返し実行される。
次に、第2実施形態に従って予測演算に用いられるモデルおよび予測長を設定するルーチンの一例を紹介する。このルーチンは、図6に示されている。図6のルーチンは、図4のステップ102が開始されたときに開始されるルーチンである。
図6のルーチンが開始されると、ステップ300において、機関負荷ELが取得される。次いで、ステップ301において、ステップ300で取得された機関負荷ELが許容機関負荷値ELthよりも大きい(EL>ELth)か否かが判別される。ここで、EL>ELthであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ302に進む。一方、EL≦ELthであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ305に進む。
ステップ301においてEL>ELthであると判別され、ルーチンがステップ302に進むと、図4のステップ102の予測演算に用いられるモデルとして低次元モデルが設定される。次いで、ステップ303において、図4のステップ102の予測演算に用いられる予測長として低次元モデル予測長が設定され、ルーチンがステップ304に進む。
ステップ301においてEL≦ELthであると判別され、ルーチンがステップ305に進むと、図4のステップ102の予測演算に用いられるモデルとして高次元モデルが設定される。次いで、ステップ305において、図4のステップ102の予測演算に用いられる予測長として高次元モデル予測長が設定され、ルーチンがステップ304に進む。
ステップ304では、図4のステップ102の予測演算が実行中であるか否かが判別される。ここで、予測演算が実行中であると判別されたときには、ルーチンはステップ300に戻る。一方、予測演算が実行中ではないと判別されたときには、ルーチンは終了する。すなわち、ステップ304において予測演算が実行中ではないと判別されるまで、ステップ300〜ステップ306が繰り返し実行される。
次に、第3実施形態に従って予測演算に用いられるモデルを設定し且つ予測長を補正するルーチンの一例を紹介する。このルーチンは、図7に示されている。図7のルーチンは、図4のステップ102が開始されたときに開始されるルーチンである。
図7のルーチンが開始されると、ステップ400において、装置演算負荷CLが取得される。次いで、ステップ401において、ステップ400で取得された装置演算負荷CLが許容演算負荷値CLthよりも大きい(CL>CLth)か否かが判別される。ここで、CL>CLthであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ402に進む。一方、CL≦CLthであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ406に進む。
ステップ401においてCL>CLthであると判別され、ルーチンがステップ402に進むと、図4のステップ102の予測演算に用いられるモデルとして低次元モデルが設定される。次いで、ステップ403において、図4のステップ102の予測演算に用いられている現在の予測長LE(k)が低次元モデル予測長LEL以上である(LE(k)≧LEL)か否かが判別される。ここで、LE(k)<LELであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ404に進む。一方、LE(k)≧LELであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ405に進む。
ステップ403においてLE(k)<LELであると判別され、ルーチンがステップ404に進むと、図4のステップ102の予測演算に用いられている現在の予測長LE(k)が所定長K1だけ長くされ(LE(k)+K1)、この長くされた予測長が図4のステップ102の予測演算に今後用いられるべき予測長LE(k+1)に設定され、ルーチンがステップ405に進む。すなわち、ステップ404は、ステップ401でCL>CLthであると判別されている間、予測演算に現在用いられている予測長が低次元モデル予測長に達するまで繰り返される。
ステップ401においてCL≦CLthであると判別され、ルーチンがステップ406に進むと、図4のステップ102の予測演算に用いられるモデルとして高次元モデルが設定される。次いで、ステップ407において、図4のステップ102の予測演算に用いられている現在の予測長LE(k)が高次元モデル予測長LEH以下である(LE(k)≦LEH)か否かが判別される。ここで、LE(k)>LEHであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ408に進む。一方、LE(k)≦LEHであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ405に進む。
ステップ407においてLE(k)>LEHであると判別され、ルーチンがステップ408に進むと、図4のステップ102の予測演算に用いられている現在の予測長LE(k)が所定長K1だけ短くされ(LE(k)−K1)、この短くされた予測長が図4のステップ102の予測演算に今後用いられるべき予測長LE(k+1)に設定され、ルーチンがステップ405に進む。すなわち、ステップ408は、ステップ401でCL≦CLthであると判別されている間、予測演算に現在用いられている予測長が高次元モデル予測長に達するまで繰り返される。
ステップ405では、図4のステップ102の予測演算が実行中であるか否かが判別される。ここで、予測演算が実行中であると判別されたときには、ルーチンはステップ400に戻る。一方、予測演算が実行中ではないと判別されたときには、ルーチンは終了する。すなわち、ステップ405において予測演算が実行中ではないと判別されるまで、ステップ400〜ステップ408が繰り返し実行される。
なお、ステップ404およびステップ408で用いられる所定長K1は、これらステップが実行されたときに予測長LEが徐々に大きく或いは小さくなって低次元モデル予測長または高次元モデル予測長に達する程度に小さい値である。
次に、第4実施形態に従って予測演算に用いられるモデルを設定し且つ予測長を補正するルーチンの一例を紹介する。このルーチンは、図8に示されている。図8のルーチンは、図4のステップ102が開始されたときに開始されるルーチンである。
図8のルーチンが開始されると、ステップ500において、機関負荷ELが取得される。次いで、ステップ501において、ステップ500で取得された機関負荷ELが許容演算負荷値ELthよりも大きい(EL>ELth)か否かが判別される。ここで、EL>ELthであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ502に進む。一方、EL≦ELthであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ506に進む。
ステップ501においてEL>ELthであると判別され、ルーチンがステップ502に進むと、図4のステップ102の予測演算に用いられるモデルとして低次元モデルが設定される。次いで、ステップ503において、図4のステップ102の予測演算に用いられている現在の予測長LE(k)が低次元モデル予測長LEL以上である(LE(k)≧LEL)か否かが判別される。ここで、LE(k)<LELであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ504に進む。一方、LE(k)≧LELであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ505に進む。
ステップ503においてLE(k)<LELであると判別され、ルーチンがステップ504に進むと、図4のステップ102の予測演算に用いられている現在の予測長LE(k)が所定長K1だけ長くされ(LE(k)+K1)、この長くされた予測長が図4のステップ102の予測演算に今後用いられるべき予測長LE(k+1)に設定され、ルーチンがステップ505に進む。すなわち、ステップ504は、ステップ501でEL>ELthであると判別されている間、予測演算に現在用いられている予測長が低次元モデル予測長に達するまで繰り返される。
ステップ501においてEL≦ELthであると判別され、ルーチンがステップ506に進むと、図4のステップ102の予測演算に用いられるモデルとして高次元モデルが設定される。次いで、ステップ507において、図4のステップ102の予測演算に用いられている現在の予測長LE(k)が高次元モデル予測長LEH以下である(LE(k)≦LEH)か否かが判別される。ここで、LE(k)>LEHであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ508に進む。一方、LE(k)≦LEHであると判別されたときには、ルーチンは、ステップ505に進む。
ステップ507においてLE(k)>LEHであると判別され、ルーチンがステップ508に進むと、図4のステップ102の予測演算に用いられている現在の予測長LE(k)が所定長K1だけ短くされ(LE(k)−K1)、この短くされた予測長が図4のステップ102の予測演算に今後用いられるべき予測長LE(k+1)に設定され、ルーチンがステップ505に進む。すなわち、ステップ508は、ステップ501でEL≦ELthであると判別されている間、予測演算に現在用いられている予測長が高次元モデル予測長に達するまで繰り返される。
ステップ505では、図4のステップ102の予測演算が実行中であるか否かが判別される。ここで、予測演算が実行中であると判別されたときには、ルーチンはステップ500に戻る。一方、予測演算が実行中ではないと判別されたときには、ルーチンは終了する。すなわち、ステップ505において予測演算が実行中ではないと判別されるまで、ステップ500〜ステップ508が繰り返し実行される。
なお、ステップ504およびステップ508で用いられる所定長K1は、これらステップが実行されたときに予測長LEが徐々に大きく或いは小さくなって低次元モデル予測長または高次元モデル予測長に達する程度に小さい値である。
10…内燃機関、35…過給機、35d…ベーン、35e…ベーンアクチュエータ、50…EGR装置、52…EGR制御弁、60…電子制御装置、72…吸気圧センサ

Claims (3)

  1. 内燃機関の第1の制御対象の制御量の目標値を第1初期目標値として決定すると共に内燃機関の第2の制御対象の制御量の目標値を第2初期目標値として決定する初期目標値決定手段と、前記第1の制御対象の制御量の制御用の目標値である第1制御目標値に応じて前記第1の制御対象に入力すべき操作量を第1操作量として決定すると共に前記第2の制御対象の制御量の制御用の目標である第2制御目標値に応じて前記第2の制御対象に入力すべき操作量を第2操作量として決定する操作量決定手段と、該操作量決定手段によって決定された第1操作量に従って前記第1の制御対象の動作を制御する第1の動作制御手段と、前記操作量決定手段によって決定された第2操作量に従って前記第2の制御対象の動作を制御する第2の動作制御手段と、を具備し、前記各動作制御手段がそれぞれ対応する前記制御対象の動作を制御することによって前記各制御対象の制御量が制御される内燃機関の制御装置であって、
    前記第1初期目標値および前記第2初期目標値を予め定められた規則に従って修正して該修正した初期目標値をそれぞれ第1修正目標値および第2修正目標値として出力する修正目標値出力手段と、前記第1初期目標値および前記第2初期目標値をそれぞれ前記第1制御目標値および前記第2制御目標値として前記操作量決定手段によって決定される第1操作量および第2操作量に従って前記第1の制御対象の制御量および前記第2の制御対象の制御量が制御されたときの各制御対象に関する将来の状態を将来制御対象状態として演算によって予測する予測演算を行う制御対象状態予測手段と、該制御対象状態予測手段によって予測された将来制御対象状態が内燃機関に関する制約条件を満たしているか否かを判別する制約条件成立判別手段と、をさらに具備し、
    前記制御対象状態予測手段によって予測された将来制御対象状態が内燃機関に関する制約条件を満たしていると前記制約条件成立判別手段によって判別されたときには、前記第1初期目標値および前記第2初期目標値がそれぞれ前記第1制御目標値および前記第2制御目標値として前記操作量決定手段に入力され、
    前記制御対象状態予測手段によって予測された将来制御対象状態が内燃機関に関する制約条件を満たしていないと前記制約条件成立判別手段によって判別されたときには、前記修正目標値出力手段によって前記第1初期目標値および前記第2初期目標値が前記予め定められた規則に従って修正されて該修正された初期目標値がそれぞれ第1修正目標値および第2修正目標値として出力され、これら第1修正目標値および第2修正目標値をそれぞれ前記第1制御目標値および前記第2制御目標値として前記操作量決定手段によって決定される第1操作量および第2操作量に従って前記第1の制御対象の制御量および前記第2の制御対象の制御量が制御されたときの各制御対象に関する将来の状態が前記制御対象状態予測手段によって将来制御対象状態として再び予測され、該再び予測された将来制御対象状態が内燃機関に関する制約条件を満たしているか否かが前記制約条件成立判別手段によって判別され、
    前記制御対象状態予測手段によって再び予測された将来制御対象状態が内燃機関に関する制約条件を満たしていると前記制約条件成立判別手段によって判別されたときには、前記第1修正目標値および前記第2修正目標値がそれぞれ前記第1制御目標値および前記第2制御目標値として前記操作量決定手段に入力され、
    前記制御対象状態予測手段によって再び予測された将来制御対象状態が内燃機関に関する制約条件を満たしていないと前記制約条件成立判別手段によって判別されたときには、前記制御対象状態予測手段によって予測される将来制御対象状態が前記制約条件を満たしていると判別されるまで前記修正目標値出力手段による第1修正目標値および第2修正目標値の修正と、該修正によって修正された第1修正目標値および第2修正目標値とに基づいた前記制御対象状態予測手段による予測演算と、該予測演算によって予測された将来制御対象状態に基づいた前記制約条件成立判別手段による判別とが繰り返され、
    前記制御対象状態予測手段による予測演算において制御対象の状態を表したモデルを用いて予め定められた時間だけ先の将来制御対象状態が演算される内燃機関の制御装置において、
    前記モデルとして高次元モデルと低次元モデルとが用意され、高次元モデルにパラメータとして含まれる制御対象の状態量の数が低次元モデルにパラメータとして含まれている制御対象の状態量の数よりも多く、前記予め定められた時間として高次元モデルを用いて予測演算が行われるときに用いられる高次元モデル用時間と低次元モデルを用いて予測演算が行われるときに用いられる低次元モデル用時間とが用意され、高次元モデル用時間の長さが低次元モデル用時間の長さよりも短く設定されており、
    当該制御装置の演算負荷が当該制御装置の演算能力を考慮したときの許容演算負荷値以下であると推定されるときには、前記制御対象状態予測手段による予測演算において前記高次元モデルを用いて前記高次元モデル用時間だけ先の将来制御対象状態が演算され、
    当該制御装置の演算負荷が前記許容演算負荷値よりも大きいと推定されるときには、前記制御対象状態予測手段による予測演算において前記低次元モデルを用いて前記低次元モデル用時間だけ先の将来制御対象状態が演算される内燃機関の制御装置。
  2. 前記制御対象状態予測手段による予測演算中に当該制御装置の演算負荷が前記許容演算負荷値以下の値から前記許容演算負荷値よりも大きい値に変化したと推定されるときには、当該予測演算に用いられる予測長が前記高次元モデル用予測長から前記低次元モデル用予測長まで徐々に増大せしめられ、
    前記制御対象状態予測手段による予測演算中に当該制御装置の演算負荷が前記許容演算負荷値よりも大きい値から前記許容演算負荷値以下の値に変化したと推定されるときには、当該予測演算に用いられる予測長が前記低次元モデル用予測長から前記高次元モデル用予測長まで徐々に減少せしめられる請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 当該制御装置の演算負荷が前記許容演算負荷値になるときの内燃機関の負荷が許容機関負荷値として設定され、内燃機関の負荷が前記許容機関負荷値以下であるときに当該制御装置の演算負荷が前記許容演算負荷値以下であると推定され、
    内燃機関の負荷が前記許容演算負荷値よりも大きいときに当該制御装置の演算負荷が前記許容演算負荷値よりも大きいと推定される請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016211487A (ja) * 2015-05-12 2016-12-15 いすゞ自動車株式会社 Vgtターボ搭載車のegrガス量制御方法及びその装置

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