JP2011235850A - 車両用衝撃吸収体 - Google Patents

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Abstract

【課題】ロアアブソーバーなどの車両用衝撃吸収体において、軽量化を行っても、所要の耐荷重性能を確保することができる構造を提供する。
【解決手段】長手方向である第1の方向Wが車両幅方向と平行になるように、車両前方の下部領域に設置されるとともに、車両前後方向と車両幅方向とを含む平面に実質的に平行に配置される板状の車両用衝撃吸収体1において、板面内で第1の方向Wと直交する第2の方向Lに延びる凸部4および凹部5の少なくとも一方が形成され、凸部4は、第2の方向Lと直交する断面において、少なくとも一部が円弧状に形成されているとともに、第1の方向Wで凸部4に隣接する領域5と、折れ曲がり点を形成しないように滑らかに接続され、凹部5は、第2の方向Lと直交する断面において、少なくとも一部が円弧状に形成されているとともに、第1の方向Wで凹部5に隣接する領域4と、折れ曲がり点を形成しないように滑らかに接続されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両前方の下部領域に設置される車両用衝撃吸収体に関する。
従来から、車両前方には、車両が歩行者と衝突した際に歩行者への傷害を低減し、歩行者の安全を確保するための保護装置が設置されている。
フロントバンパーにおいては、バンパーリンフォースとバンパーフェイシアとの間に配設され、衝撃吸収性能を有する樹脂発泡体などからなるバンパーアブソーバーや、バンパー下部に配設された平板状のロアアブソーバーが知られている。このうち、平板状のロアアブソーバーは、所要の剛性を付与されており、車両が歩行者に衝突した際には歩行者の脚部に接触し、いわゆる脚払い材として作用する。すなわち、ロアアブソーバーは、歩行者の脚部を払って歩行者を車両(自動車)のボンネット上に跳ね上げることで、歩行者が車両の下部に巻き込まれることを防止する機能を担っている。それと同時に、ロアアブソーバーには、歩行者への衝撃を吸収する機能も付与されていることが好ましい。
このような機能を確保するために、ロアアブソーバーは、歩行者と衝突した際に脚部(主に膝部)への傷害を抑制しながら歩行者の脚部を確実に跳ね上げる必要があり、このためには、歩行者の脚部の下側にのみ高い荷重を与えることが必要となる。そのため、ロアアブソーバーは、車両前後方向と車両幅方向とを含む水平面に実質的に平行に配置される平板状の成形体であって、この成形体の車両前方側の側面と歩行者の脚部とが交差して接触するようにバンパー下部に設置される平板状の成形体として構成されている。したがって、このような平板状のロアアブソーバーでは、ロアアブソーバーと歩行者の脚部との接触面積が必然的に小さくなる。その結果、局所的な圧縮でも歩行者の脚を払ってボンネットへ跳ね上げるだけの高荷重を得るために、ロアアブソーバーの重量が大きくなることが避けられず、その軽量化が課題となっている。
特許文献1には、ポリプロピレンやポリフェニレンオキサイド(PPO)樹脂等の熱可塑性樹脂の射出成形品であり、車両前後方向に沿った平板状のベースプレートによって構成された下段衝撃吸収体(ロアアブソーバー)が開示されている。ベースプレートの上面には、それそれが車両前後方向に延び、所定の間隔を空けて突出する複数の縦リブが設けられており、これらの縦リブは、車両幅方向に延びる横リブによって互いに連結されている。こうして、上述の下段衝撃吸収体は、板状の成形品とすることにより軽量化を図りつつ、縦リブおよび横リブによってベースプレートを補強することで、歩行者と接触した際に歩行者の脚部を払うのに必要な剛性を確保している。
しかしながら、この下段衝撃吸収体では、所要の剛性を確保するために縦リブの高さが必要となるため、軽量化には限度があった。
一方、特許文献2には、車両前後方向に延びるように配設される平板状のプレート部を有する脚払い装置(ロアアブソーバー)が開示されている。プレート部の前側部分には、それぞれ車両前後方向に延び、車両幅方向に交互に配置された2種類の補強ビードが一体的に形成されている。第1の補強ビードは、車両上方に突出し、車両前後方向から見て下方に開口するコ字状の断面を有しており、第2の補強ビードは、車両下方に突出し、車両前後方向から見て上方に開口するコ字状の断面を有している。すなわち、第1および第2の補強ビードは、車両前後方向と直交する断面が矩形波状に形成されている。このような補強ビードの構造によって、上述の脚払い装置では、特許文献1の下段衝撃吸収体と比べて、同程度の剛性を確保するのに補強ビードの高さを低く抑えることができ、それにより、軽量化が達成されている。
特開2002−274298号公報 特開2007−331455号公報
しかしながら、車両(自動車)の燃費低減への要求は依然として高く、さらなる軽量化が求められており、特許文献2の脚払い装置では、必ずしも十分な軽量化を実現しているとは言えなかった。
そこで本発明は、ロアアブソーバーなどの車両用衝撃吸収体において、軽量化を行っても、所要の耐荷重性能を確保することができる構造を提供することである。
上述した目的を達成するために、本発明の車両用衝撃吸収体は、長手方向である第1の方向が車両幅方向と平行になるように、車両前方の下部領域に設置されるとともに、車両前後方向と車両幅方向とを含む平面に実質的に平行に配置される板状の車両用衝撃吸収体であって、車両用衝撃吸収体の板面内で第1の方向と直交する第2の方向に延びるように形成された凸部および凹部の少なくとも一方を有し、凸部は、第2の方向と直交する断面において、少なくとも一部が円弧状に形成されているとともに、第1の方向で凸部に隣接する領域と、折れ曲がり点を形成しないように滑らかに接続され、凹部は、第2の方向と直交する断面において、少なくとも一部が円弧状に形成されているとともに、第1の方向で凹部に隣接する領域と、折れ曲がり点を形成しないように滑らかに接続されている。
このような車両用衝撃吸収体では、凸部および凹部の少なくとも一方が、車両幅方向(第1の方向)でそれぞれに隣接する領域と、折れ曲がり点を形成しないように滑らかに接続されているため、車両幅方向に荷重が伝播しやすい構造となっている。したがって、歩行者の脚部との衝突などの局部的な圧縮であっても、車両幅方向の広い範囲から反発荷重を発生させることができ、衝撃吸収体全体を効率的に機能させることが可能となる。そのため、板厚を薄くするなどして、さらなる軽量化を行っても、所要の耐荷重性能を確保することが可能となる。
以上、本発明によれば、ロアアブソーバーなどの車両用衝撃吸収体において、軽量化を行っても、所要の耐荷重性能を確保することができる構造を提供することができる。
本発明の一実施形態における車両用衝撃吸収体としてのロアアブソーバーを示す概略斜視図である。 図1のA−A’線に沿った概略断面図である。 本発明の一実施形態における車両用衝撃吸収体としてのロアアブソーバーの波形状部の変形例を示す、図2に対応する概略断面図である。 衝突解析を説明するための図である。 衝突解析に用いた試験サンプル(ロアアブソーバー)を示す概略斜視図である。 衝突解析によって得られた実施例および比較例の荷重−変位曲線を示す図である。 衝突解析によって得られた実施例および比較例の変形・応力分布を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における車両用衝撃吸収体としてのロアアブソーバーを示す概略斜視図である。また、図2は、図1のA−A’線に沿った断面図である。
本実施形態のロアアブソーバーは、平面形状が細長の板状部材であって、車両に対して、車両前後方向と車両幅方向とを含む平面(水平面)に平行に配置されるとともに、その長手方向が車両幅方向と平行になるように設置されることを前提としている。そのため、以下の説明では、ロアアブソーバーの板面内での各方向を、車両に設置された状態での対応する車両の各方向とする。すなわち、図1に示すように、ロアアブソーバーの長手方向(第1の方向)を車両幅方向W、長手方向と直交する方向(第2の方向)を車両前後方向Lとする。なお、図1の斜視図は、車両上方側から見たロアアブソーバーを示しており、図2の断面図は、車両前後方向Lから見たロアアブソーバーの断面を示している。
図1に示すように、本実施形態のロアアブソーバー1は、板状に形成されており、全体として細長矩形状の平面形状を有している。ロアアブソーバー1は、ポリプロピレンやポリエチレン等の熱可塑性樹脂を射出成形することによって形成されている。なお、ロアアブソーバー1の材料としては、このような熱可塑性樹脂に限られることはなく、熱可塑性樹脂にタルクなどの無機フィラーやゴム成分が添加されたものであってもよく、ガラス繊維などの合成繊維やセルロース繊維などの天然繊維が強化繊維として添加されたものであってもよい。
ロアアブソーバー1には、車両幅方向Wに沿ってそれぞれ複数形成された凸部4および凹部5を有する波形状部2が形成されている。凸部4および凹部5は、それぞれ車両前後方向Lに延びるように形成され、互いに隣接するように、車両幅方向Wに沿って交互に配置されている。このとき、凸部4および凹部5は、図2に示すように、車両前後方向Lと直交する断面において、円弧状に形成されているとともに、車両幅方向Wに沿ってそれぞれに隣接する領域と、折れ曲がり点を形成しないように滑らかに接続されている。すなわち、凸部4および凹部5は、車両幅方向Wに沿ってそれぞれ互いに滑らかに接続されており、それにより、波形状部2の波形が形成されている。本実施形態のロアアブソーバー1では、このような構成の波形状部2が形成されていることで、一定の剛性が付与されるとともに、車両幅方向における荷重の伝播性が格段に向上することになる。すなわち、歩行者の脚部との接触のような局部的な圧縮の場合にも、ロアアブソーバー1の車両幅方向Wに荷重が伝播しやくなる。そのため、ロアアブソーバー1は幅方向W全体で反発荷重を発生させることができ、ロアアブソーバー1全体で効率的に耐荷重性能を発揮できるようになる。その結果、ロアアブソーバー1の板厚を低減するなどして全体の重量を減少させても、所要の耐荷重性能を確保することができるため、より軽量化されたロアアブソーバーを実現することが可能となる。
ここで、凸部4および凹部5は、車両前後方向Lと直交する断面における円弧状部分の曲率半径が5mm〜30mmの範囲にあるように形成されていることが好ましい。これにより、曲率半径が下限値以上であれば、車両幅方向への荷重伝播性能が好適に高められることになり、上限値以下であれば、ロアアブソーバーの強度低下が抑制され、所要の脚払い性能が確保されることになる。
ロアアブソーバー1の車両前方側には、図1に示すように、凸部4および凹部5に一体的に接続された、衝撃荷重を受ける衝撃面となる前側壁6が形成されている。このため、歩行者の脚部との接触面となる前側壁6に入力された荷重は、ロアアブソーバー1の剛性を向上させるために設けられている凸部4および凹部5に良好に伝播される。さらに、この前側壁6から車両前方に向かって突出するように、補強壁7aと、前側壁6と補強壁7aとの間で車両前後方向Lに延びる補強リブ7bとを備えた補強部7が形成されている。この補強部7によって、ロアアブソーバー1の車両前方側は、補強され、車両後方側と比べて剛性が高められることで、衝突初期の反発荷重が高められ、歩行者の脚部に対する脚払い性能が向上することになる。
また、ロアアブソーバー1には、車両幅方向Wに延びるように、凸部4および凹部5を補強するための中間壁9が形成されている。
ロアアブソーバー1の車両後方側および車両幅方向端部には、それぞれプレート状のフランジ部10が形成されている。フランジ部10には、複数の取付孔11が形成されており、ロアアブソーバー1は、車両に設置される際には、この取付孔11を介して、ビス止めなど公知の締結手段によって車体に固定されることになる。車両後方側のフランジ部10には、固定される車体の形状に合わせて、切欠部10aが設けられている。
このフランジ部10と凸部4または凹部5との接続部分は、フランジ部10と凸部4または凹部5とが緩やかに傾斜して接続するように、車両幅方向Wに垂直な断面が湾曲状に形成されている。これにより、前側壁6または補強部7に入力した荷重が、フランジ部10まで伝播しやくなるため、ロアアブソーバー1全体で反発荷重を発生させることができ、ロアアブソーバー1を軽量化しても良好な脚払い性能を発揮させることが可能となる。
なお、それぞれの凹部5には、図1に示すように、主に水抜き用の孔として機能する貫通孔8が形成されている。これにより、本実施形態のロアアブソーバー1では、雨天走行時などに、凹部5に溜まった水が貫通孔8から排出されることで、車両重量が増加して、燃費が悪化することを抑制することができる。
次に、本実施形態のロアアブソーバーにおいて凸部および凹部の構成を変更した変形例について説明する。
ロアアブソーバーにおける車両幅方向への荷重の伝播性を向上させ、それにより、ロアアブソーバーの軽量化を実現するには、必ずしも図2に示すような、凸部および凹部の両方が形成された波形状部である必要はない。すなわち、凸部および凹部の少なくとも一方が車両幅方向に沿って複数形成された波形状部であればよい。
図3(a)から図3(f)は、本実施形態の波形状部のいくつかの変形例を示す、図2に対応する概略断面図である。図3(a)から図3(d)には、凸部のみが形成された波形状部の変形例が示されているが、凸部の代わりに、凹部が形成された波形状部であってもよい。
図3(a)に示す変形例では、図2に示す実施形態と比べて、凸部4のみが車両幅方向Wに間隔を空けて複数形成されており、隣接する凸部4間には、凸部4を連結するように平坦部3が形成されている。この場合、凸部4と、凸部4に隣接する平坦部3とは、その接続部分に折れ曲がり点を形成しないように、互いに滑らかに接続されている。これにより、歩行者との衝突時にロアアブソーバーに入力される荷重が車両幅方向により伝播しやすくなるため、ロアアブソーバーの軽量化が可能となる。
このように、車両幅方向への荷重の伝播性を向上させるには、凸部4と凸部4に隣接する領域(平坦部3)とが、その接続部分において、折れ曲がり点を形成しないように滑らかに接続されていればよい。したがって、凸部4は、全体が円弧状に形成されている必要はなく、少なくとも一部が円弧状に形成されていればよい。すなわち、図3(b)に示すように、凸部4の剛性を高めるために、凸部4に平坦な上底面4aが形成され、凸部4自体に折れ曲がり点4bが形成されていてもよい。この場合、凸部4の側面部4cが円弧状に形成されている。
なお、この変形例のように、凸部に上底面を形成することは、図2に示す実施形態や、以下に示す各変形例に対しても実施可能であることを理解されたい。
図3(c)は、図3(a)に示す変形例に対して、凸部4の車両上下方向の高さ(平坦部3から凸部4の頂点までの距離、図中矢印参照)を、車両幅方向Wでロアアブソーバーの中央(図の左側)に近づくにつれて大きくした変形例である。このような形状により、ロアアブソーバーの中央付近での剛性を端部に対して相対的に高くすることができる。逆に、凸部4の車両上下方向の高さを、車両幅方向Wでロアアブソーバーの中央に近づくにつれて小さくすることもでき、それにより、ロアアブソーバーの幅方向端部での剛性を中央付近に対して相対的に高く設計することもできる。
図3(d)は、図3(a)に示す変形例に対して、凸部4の車両幅方向Wの幅(凸部4の対向する側面部4c間の距離、図中矢印参照)を、車両幅方向Wでロアアブソーバーの中央(図の左側)に近づくにつれて広くした変形例である。このような形状により、ロアアブソーバー4の中央付近での剛性を端部に対して相対的に高くすることができる。逆に、凸部4の車両幅方向Wの幅を、車両幅方向Wでロアアブソーバーの中央に近づくにつれて狭くすることもでき、それにより、ロアアブソーバーの幅方向端部での剛性を中央付近に対して相対的に高く設計することもできる。
なお、図3(a)から図3(d)では、凸部のみが形成された変形例を示しているが、上述したように、凸部の代わりに、凹部のみが形成されていてもよく、あるいは、凸部および凹部の両方が形成されていてもよい。凸部および凹部の両方が形成されている場合、波形状部は、車両前後方向と直交する断面が、図2に示すような形状に限定されることはない。すなわち、図3(a)に示す変形例において平坦部3の領域に凹部が形成されたような形状であってもよく、その場合、車両幅方向に交互に配置された凸部および凹部は、平坦部を介してそれぞれ接続されることになる。また、凸部と凹部とは同数形成されている必要はなく、どちらか一方が多く形成されていてもよい。さらには、上述した変形例において凸部に対して行った変更を、凸部および凹部に対してそれぞれ独立に行ってもよく、例えば、凸部および凹部のどちらか一方のみ、高さが車両幅方向に沿って変更されていてもよい。
一方、図3(e)および図3(f)は、図2に示す実施形態に対して、凸部4および凹部5の構成を変更した変形例である。図3(e)に示す変形例では、凸部4および凹部5の車両上下方向の高さ(凸部4および凹部5の頂点間の車両上下方向の距離、図中矢印参照)が、車両幅方向Wでロアアブソーバーの中央に近づくにつれて大きくなるように構成されている。また、図3(f)に示す変形例では、図2に示す実施形態に対して図3(e)に示す変形例で行った変更に加えて、凸部4および凹部5の車両幅方向Wの幅(凸部4および凹部5の頂点間の車両幅方向の距離、図中矢印参照)が、車両幅方向Wでロアアブソーバーの中央に近づくにつれて広くなるように構成されている。これにより、いずれの変形例でも、ロアアブソーバーの中央付近での剛性を端部に対して相対的に高くすることが可能となる。このように、凸部および凹部における高さや幅など、波形状部の構成を適宜変化させることによって、ロアアブソーバーの設計自由度が向上し、設置する車両のスペースに応じたロアアブソーバーを作製することが可能となる。
本実施形態のロアアブソーバーに対する他の変形例として、ロアアブソーバー全体を効率的に利用するという観点から、波形状部が、車両前後方向で複数の領域に区分され、区分された領域での荷重の伝播性がそれぞれ異なるように構成されていることが好ましい。
このような構成として、例えば、波形状部を車両前後方向で2つに区分し、車両前方側の領域での荷重伝播性に比べて、車両後方側の領域での荷重伝播性を高めることが考えられる。これにより、車両前方側の領域では、衝突位置(荷重入力位置)から遠くなるにつれて伝播する荷重は必然的に減少するが、車両後方側の領域での荷重伝播性が高められているため、荷重をロアアブソーバーの広い範囲にまで伝達することが可能となる。このような特性を付与するためには、例えば、車両前方側の領域を、特許文献2に記載の脚払い装置における2種類の補強ビードのような形状とし、車両後方側の領域を、図1および図2に示す本実施形態の波形状部とすることが有効である。あるいは、車両前方側の領域において、凸部および凹部の車両上下方向の高さを、車両後方側の領域よりも高くしたり、車両幅方向の幅を、車両後方側の領域よりも狭くしたりすることが有効である。
以上のように、本実施形態のロアアブソーバーは、車両幅方向に荷重が伝播しやすい構成を有しているため、歩行者との接触のような局所的な衝突であっても、より広い領域で反発荷重を発生させることができる。このため、板厚を軽減するなどして軽量化を行っても、所要の耐荷重性能を確保することが可能となる。
(実施例)
本発明のロアアブソーバーの降伏荷重(最大荷重)および荷重の伝播性について、CAE(Computer Aided Engineering)解析による評価を行った。具体的には、CAE解析ソフトLS−Dyna(登録商標、米国LSTC社製)を使用して、図4に示すように、歩行者の脚部を模したインパクター11を試験サンプル14に衝突させる衝突解析を行った。
試験サンプルとしては、図5(a)に示すロアアブソーバー(実施例)と、図5(b)に示すロアアブソーバー(比較例)とを用いた。
実施例におけるロアアブソーバー1は、図1および図2に示す実施形態のロアアブソーバーと同様の構成とした。すなわち、実施例では、凸部4および凹部5は、車両前後方向Lと直交する断面が、それぞれ円弧状に形成されている。
一方、比較例におけるロアアブソーバー101では、凸部104および凹部105は、車両前後方向Lと直交する断面において、それぞれ矩形状に形成されているとともに、互いに隣接する凸部104および凹部105の側面が一つの平面として構成されている。すなわち、凸部104および凹部10の車両前後方向Lと直交する断面は、矩形波状に形成されている。この構成以外、比較例は、実施例とほぼ同様の構成とした。
試験サンプルの外形寸法は、実施例および比較例共に、車両幅方向Wで600mm、車両前後方向Lで270mmとする一方、試験サンプルの重量は、比較例に対して実施例を10%軽量とした。また、解析に用いたインパクター11は、厚さ25mmのウレタンフォーム13が巻かれた、Φ70mm、質量7.1gの円筒形の鉄製剛体12とした。このインパクター11を、40km/hの速度で試験サンプル14の中央付近に衝突させ(図4参照)、インパクター侵入量とインパクターにかかる荷重を測定した。このような衝突解析によって得られた実施例および比較例の荷重−変位曲線を図6に示す。
実施例では、比較例よりも10%軽量化したにもかかわらず、5.0kN以上の最大荷重が得られており、比較例とほぼ同等の耐荷重性能(脚払い性能)が確保されていることが確認された。
図7は、衝突解析によって得られた変形・応力分布図を、実施例および比較例に対してそれぞれの変形の進行度合いごとにまとめたものである。
図7から、実施例では、比較例と比べて、車両幅方向Wへの応力分布の範囲が広く、車両幅方向Wへより多くの荷重が伝播していることがわかる。特に、変形の中期・後期の応力分布における両者の差は大きく、比較例では、衝突箇所の周辺領域のみで反発荷重を発生させているのに対して、実施例では、荷重をより広い範囲まで伝播させて、車両幅方向の広い領域で反発荷重を発生させていることが確認された。
1 ロアアブソーバー
3 平坦部
4 凸部
5 凹部
W 車両幅方向
L 車両前後方向

Claims (7)

  1. 長手方向である第1の方向が車両幅方向と平行になるように、車両前方の下部領域に設置されるとともに、車両前後方向と車両幅方向とを含む平面に実質的に平行に配置される板状の車両用衝撃吸収体であって、
    前記車両用衝撃吸収体の板面内で前記第1の方向と直交する第2の方向に延びるように形成された凸部および凹部の少なくとも一方を有し、
    前記凸部は、前記第2の方向と直交する断面において、少なくとも一部が円弧状に形成されているとともに、前記第1の方向で前記凸部に隣接する領域と、折れ曲がり点を形成しないように滑らかに接続され、
    前記凹部は、前記第2の方向と直交する断面において、少なくとも一部が円弧状に形成されているとともに、前記第1の方向で前記凹部に隣接する領域と、折れ曲がり点を形成しないように滑らかに接続されている、車両用衝撃吸収体。
  2. 前記凸部および前記凹部を有する、請求項1に記載の車両用衝撃吸収体。
  3. 前記凸部および前記凹部が、前記第1の方向に沿ってそれぞれ複数形成されている、請求項2に記載の車両用衝撃吸収体。
  4. 前記凸部および前記凹部が、前記第1の方向に交互に配置されている、請求項3に記載の車両用衝撃吸収体。
  5. 前記凸部および前記凹部は、互いに隣接するとともに、折れ曲がり点を形成しないように互いに滑らかに接続されている、請求項4に記載の車両用衝撃吸収体。
  6. 前記凸部および前記凹部は、前記第2の方向と直交する断面が円弧状に形成されている、請求項1から5のいずれか1稿に記載の車両用衝撃吸収体。
  7. 前記凸部および前記凹部は、前記2の方向と直交する断面における前記円弧の曲率半径が5mm〜30mmの範囲にある、請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用衝撃吸収体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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