JP2011235009A - 超音波診断装置及び該装置における数値シミュレーション方法 - Google Patents

超音波診断装置及び該装置における数値シミュレーション方法 Download PDF

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Abstract

【課題】超音波診断装置により得られる超音波ビーム方向の速度情報から、3次元的な流れの成分を考慮に入れて、流速ベクトルや圧力を求める。
【解決手段】被検体内の各計算点の超音波ビーム方向についての速度情報を初期値として、ナビエ・ストークス方程式に基づく数値計算式を時間ステップごとに反復演算することにより、各計算点について、超音波ビーム方向の速度成分と超音波ビーム方向に直交する方向の速度成分とを含む速度ベクトル及び圧力、を計算する。この反復演算において、流れの範囲の境界の近傍の計算点については、数値演算式における圧力に対応する項の入力値に対し、補正曲線Cに従って、基準値からその入力値までの差が閾値以上の場合にはその差を緩和する補正を行った上で数値計算式を実行する。
【選択図】図4

Description

本発明は、超音波診断装置に関し、特に超音波診断装置により得られる超音波ビーム方向の速度成分の情報から、2次元的な流速ベクトルや圧力を求めるための技術に関する。
超音波診断装置では、例えば心臓内の血流における各点からドプラ情報(速度情報)が取得され、それらを2次元マッピングすることにより2次元血流画像が構成される。これはカラードプラ法あるいはカラーフローマッピング法といわれている。一般の超音波診断装置において表示される速度は、血流の真の速度ではなく、ビーム方向に沿った速度成分である。
このような状況に対し、ビーム方向の速度成分からビームに直交する方向の速度成分を推定する方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、特許文献2には、観測面内の各点のビーム方向速度成分から、各点のビームに直交する速度成分を推定し、この推定結果に基づき各点の圧力を推定して表示する装置が開示されている。
また、特許文献3に開示される装置は、超音波信号を体内の血管に向けて放射し、反射した超音波信号を受信する超音波計測部と、受信した信号により、血管形状と血管内の血流の流速とを得る解析処理部と、解析処理部からの血管形状から、計算格子を設定して血流速と圧力分布のシミュレーションを行うシミュレーション部と、解析処理部からの血流速と、シミュレーション部からの血流速との誤差を計算して、シミュレーション部にフィードバックするフィードバック部と、フィードバック後のシミュレーション部からの血流速と圧力分布の出力を表示する表示部とを備える。シミュレーション部は、ナビエ・ストークス方程式に基づく数値シミュレーションを行うことで、2次元流速と圧力を計算している。
特開2005−110939号公報 特開2002−17726号公報 特開2004−121735号公報
特許文献3の手法では、流れを超音波ビームの走査面内の2次元流れとして取り扱っており、実際の血流の3次元的な流れの成分を考慮に入れていない。
本発明は、超音波診断装置により得られる超音波ビーム方向の速度情報から、3次元的な流れの成分を考慮に入れて、流速ベクトルや圧力を求めるための手法を提供する。
本発明に係る超音波診断装置は、超音波ビームを被検体内に送受信し、被検体内からのエコー信号を取得する送受信手段と、前記エコー信号に基づき、前記被検体内の各点の超音波ビーム方向についての速度情報を求めるドプラ処理手段と、前記エコー信号に基づき、前記被検体内の流体が流れる流れ範囲の境界を検出する境界検出手段と、前記境界検出手段が検出した前記境界についての境界条件の下で、前記被検体内の各計算点の超音波ビーム方向についての速度情報を初期値として、ナビエ・ストークス方程式に基づく数値計算式を時間ステップごとに反復演算することにより、前記各計算点について、前記超音波ビーム方向の速度成分と前記超音波ビーム方向に直交する方向の速度成分とを含む速度ベクトル及び圧力、を計算する反復演算手段と、前記反復演算手段が計算した前記各計算点についての前記速度ベクトル又は前記圧力を表示するための処理を行う表示処理手段と、を備え、前記反復演算手段は、前記境界の近傍の計算点については、前記数値演算式における圧力に対応する項の入力値に対し、当該項の基準値からその入力値までの差が閾値以上の場合にはその差を緩和する補正を行った上で前記数値計算式を反復演算する、ことを特徴とする。
1つの態様では、前記境界検出手段が、前記エコー信号から求められるパワーフロー画像に基づき、前記境界を検出する、ことを特徴とする。
別の態様では、前記表示処理手段は、前記速度ベクトルを表示する速度表示画像における前記各計算点の表示色の色相を当該計算点における前記速度ベクトルの方向に基づき求め、前記速度表示画像における前記各計算点の表示色の色相以外のあらかじめ定められた色パラメータを当該計算点における前記速度ベクトルの大きさに基づき求める、ことを特徴とする。
更に別の態様では、前記反復演算手段により求められた前記計算点における前記速度ベクトルから当該計算点の渦度を計算する渦度計算手段、を更に備え、前記表示処理手段は、前記各計算点の渦度の大きさを色で表示した渦度表示画像を生成する、ことを特徴とする。
本発明に係る数値シミュレーション方法は、被検体内からのエコー信号に基づき、前記被検体内の各点の超音波ビーム方向についての速度情報を求めるステップと、前記エコー信号に基づき、前記被検体内の流体が流れる流れ範囲の境界を検出する境界検出ステップと、前記境界検出ステップで検出された前記境界についての境界条件の下で、前記被検体内の各計算点の超音波ビーム方向についての速度情報を初期値として、ナビエ・ストークス方程式に基づく数値計算式を時間ステップごとに反復演算することにより、前記各計算点について、前記超音波ビーム方向の速度成分と前記超音波ビーム方向に直交する方向の速度成分とを含む速度ベクトル及び圧力、を計算する反復演算ステップと、前記反復演算ステップで計算された前記各計算点についての前記速度ベクトル又は前記圧力を表示するための処理を行う表示処理ステップと、を備え、前記反復演算ステップでは、前記境界の近傍の計算点については、前記数値演算式における圧力に対応する項の入力値に対し、当該項の基準値からその入力値までの差が閾値以上の場合にはその差を緩和する補正を行った上で前記数値計算式を反復演算する、ことを特徴とする。
本発明によれば、超音波診断装置により得られる超音波ビーム方向の速度情報から、3次元的な流れの影響を考慮に入れて、流速ベクトルや圧力を求めることができる。
流体モデルを説明するための図である。 実施形態の数値シミュレーションの概略的な流れを示すフローチャートである。 境界の法線ベクトルの求め方の一例を説明するための図である。 2.5D補正で用いる補正曲線の一例を示す図である。 流速ベクトルuの方向と大きさに基づき表示色を決める色変換マップを説明するための図である。 注目点の圧力の時間変化を示す表示の例を模式的に示す図である。 2つの注目点の圧力の時間変化を示す表示の例を模式的に示す図である。 実施形態の超音波診断装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。
本実施形態に掛かる装置は、超音波診断装置により得られる、2次元の走査面内の各点の超音波ビーム方向についての速度成分から、数値シミュレーションにより2次元の流速ベクトルと圧力を計算するためのものである。本実施形態では、ナビエ・ストークス方程式とヘルムホルツ・ホッジ分解定理とに基づいて構築した数値計算処理を、Bモード画像やパワーフロー画像から求めた境界線に基づく境界条件の下で反復実行する。この数値計算において、境界近傍の圧力に対して、3次元的な影響を考慮した補正を加えることで、反復実行の間に3次元的な流れの影響を反映した流速ベクトルや圧力を求める。以下、本実施形態において超音波診断装置が行う処理の全体像、数値シミュレーションの概要及び詳細、具体的な装置構成の例を順に説明する。
<処理の概要>
この実施形態の処理手順は、概略以下の通りである。
1.超音波探触子から被検体内へ超音波ビームを送受波することにより、1フレーム分の超音波ビームデータ(すなわちエコー信号データ)を取得する。取得された超音波ビームデータを、この実施形態の数値シミュレーション部に読み込む。読み込んだ超音波ビームデータには、例えば、超音波ビーム走査面内の各点のエコーの強さを示すBモードデータと、それら各点の流体速度を表すカラードプライメージング(CDI)データとが含まれる。
2.必要に応じて、読み込んだ超音波ビームデータのスキャンコンバージョン(走査変換:例えば、セクタ走査の各ビームライン上の各点のデータを、表示に適した直交座標系に変換するなど)を行う。
3.CDIの流体速度データを、シミュレーションのための流体モデルに入力する。ここで、流体(血流など)の流れる範囲の境界の情報を、例えばBモードデータ又はパワーフローのデータから求め、流体モデルに入力する。
4.流体モデルを用いた数値流体シミュレーションを、N回繰り返す(Nは、あらかじめ定められた繰り返し回数)。
5.流体シミュレーションにより、超音波ビームに直交する方向の流体の速度成分が計算される。
6.結果を表示する。
7.超音波ビームデータの次フレームに移り、ステップ1〜6を繰り返す。
<流体モデル>
実施形態の数値シミュレーションにおいて用いる流体モデルについて説明する。この流体モデルは、実際の流体を数学的に表したものである。この例では、流体は、図1に示すように、直交格子の格子点(ノード10)により表現される。すなわち、この例では、一般的な超音波探触子により得られる平面内の超音波ビームデータに基づき、その平面内の流体の挙動をシミュレーションする。ノード10の各々は、物理量として、密度、速さ及び圧力を有する。各ノード10の位置座標は固定であるが、各ノード10の持つ物理量は時間とともに変化し得る。直交格子のx方向及びy方向の格子間隔を、それぞれdx、dyとする。このように、ノード10は、本実施形態においてシミュレーションの計算の対象となる計算点である。
流体シミュレーションの演算では、連続的な時間モデルで個々のノード10の持つ密度、速さ、圧力を計算する。これらの計算は、時間ステップごとにナビエ・ストークス方程式を解くことにより行われる。
<数値シミュレーションの概要>
流体シミュレーションの対象とする流体が非圧縮性流体かつニュートン流体であると仮定する。非圧縮性流体とは、密度変化が無視できる流体のことであり、自然界の多くの流体がこれにあたる。ニュートン流体とは、流れのせん断応力(接線応力)と流れの速度勾配(せん断速度)が比例した粘性の性質を持つ流体のことである。非圧縮性は、実際は流体の「流れ」についての条件(流体自体についての条件ではない)であり、その密度が時間を通して一定のままであるという前提で流体が流れることを意味する。ニュートン流体は、一定の粘性をもつ流体であることを意味する。これらの仮定は両方とも、実施形態の主たる適用対象として想定される血流に対して合理的に妥当する。
このような非圧縮性且つニュートン流体の挙動を表す基礎方程式は、以下に示す周知のナビエ・ストークス微分方程式である。
Figure 2011235009
ここで、u(x,y)は点(x,y)の持つ速度ベクトル、p(x,y)は点(x,y)での圧力、f(x,y)は点(x,y)における単位体積に作用する外力を表すベクトルである。ρは流体の密度であり、この実施形態では一定であると仮定する。また、ニュートン流体の場合粘性νは一定である。また、非圧縮性流体の場合、次式で表す質量保存則が成り立つ。
Figure 2011235009
上記ナビエ・ストークス方程式(1)の左辺は速度の時間変化を示す。また、右辺の第1項は移流項、第2項は粘性拡散を表す粘性項、第3項は圧力勾配を表す圧力項、第4項は外力を表す外力項である。
なお、血流に働く外力を知ることはできないが、以下では外力は、定量化された速さ成分の中にすでに内在すると考え、外力項をなくして方程式を解く。この場合、ナビエ・ストークス方程式は以下の式(3)となる。
Figure 2011235009
この方程式を解く上での主要な問題は、圧力項が知られていないということである。この問題を扱うためにヘルムホルツ・ホッジ(Helmholtz-Hodge)分解定理を用いる。ヘルムホルツ・ホッジ分解定理とは、任意のベクトル場wが、発散のない(すなわち質量保存の)ベクトル場uと、スカラー場の勾配∇qとに分解できるという定理である。すなわち、次式が成り立つ。
Figure 2011235009
この定理は、境界条件が満たされる場合にのみ有効である。ここでの境界条件は、境界近傍ではuが境界に平行であり、qが境界を横切るように変化しないということである。式で表現すると以下のようになる。
Figure 2011235009
ここで、nは境界の法線ベクトルである。
式(4)のベクトル場wとスカラー場qを、流体の物理量と対応づけるために、式(4)の両辺を時間で微分すると、次のようになる。
Figure 2011235009
従って、次の関係が成り立つ。
Figure 2011235009
この式をナビエ・ストークス方程式(3)と比較することで、次の2つの関係式(6)及び(7)が成り立つことが分かる。
Figure 2011235009
Figure 2011235009
式(6)からはベクトル場wが中間的な速度場に該当し、スカラー場qが圧力の時間微分に該当することが分かる。この認識のもとで、式(4)に戻る。式(4)の両辺の勾配を求めると、次のようになる。
Figure 2011235009
ここで、質量保存則すなわち式(2)を考慮すると、次の関係式(8)が成り立つことが分かる。
Figure 2011235009
以上のことから、次のような流体シミュレーションアルゴリズムを構築することができる。
Figure 2011235009
すなわち、このアルゴリズムでは、まず式(6)に基づき中間的な速度ベクトルwを計算し、次に式(8)に基づきqを計算し、次に式(4)に基づき質量保存の成り立つ流体の速度ベクトルuを計算し、更に式(7)に基づき圧力pを計算する。
ここで、式(4)(ヘルムホルツ・ホッジ分解)は境界条件(式(5))が満たされる場合しか成り立たないので、以上のアルゴリズムの各計算式もその境界条件を満たす必要がある。境界条件を考慮に入れると、上述のアルゴリズムは次のようになる。
Figure 2011235009
このアルゴリズムは、図2に示すような手順となる。すなわち、まず、超音波ビームの送受信により得られた各ノードについてのビーム方向の速度成分のみの速度情報uが初期値として入力される。ここで、超音波ビームの走査範囲全体の速度情報を入力してもよいが、実際のシミュレーション演算の対象となるのは、その走査範囲のうち後述する境界線により画定される流れ(血流など)の範囲内だけなので、その流れの範囲に属するノードの速度情報のみを入力するようにしてもよい。後者の場合、シミュレーションのための数値演算は、入力したノードについてのみ行う(すなわち、流れの範囲の外のノードについては計算しなくてよい)。
図2の手順では、この入力された流体の速度ベクトルuを、式(5)の境界条件を満たすように補正する(S1)。境界条件を考慮した補正後の速度ベクトルuを、ヘルムホルツ・ホッジ分解定理により導入した中間的な速度ベクトルwとして用いる。なお、境界近傍以外の各ノードでは、流体の速度ベクトルuそのものをwとして用いる。
次に、式(6)により中間的な速度ベクトルwを計算する(S2)。求めた中間的な速度ベクトルwを、式(5)の境界条件を満たすように補正する(S3)。境界条件を考慮した補正後の速度ベクトルwを式(8)に適用し、スカラー値qを計算する(S4)。
次に、S4で求めたスカラー値qを、式(5)の境界条件を満たすように補正する(S5)。また、S5では、流れの3次元的な成分を圧力に関連するスカラー値qに反映させるための、2.5D補正も行う。2.5Dとは、2次元と3次元の中間である2.5次元のことである。3次元的な流れの影響を2次元の数値シミュレーションに組み込むことを、2.5次元と表現しているのである。シミュレーションはエコー信号データで得られた2次元の面内の情報に基づき行われるが、実際の流れはその面の中から外への流出及びその面の外から中への流入を含んでいる。そこで、2.5D補正では、そのような3次元的な流出や流入の影響を、圧力に対応するスカラー値qに反映させるのである。この補正により、3次元的な流れの影響が数値シミュレーションに組み込まれる。なお、2.5D補正については、後で詳しく説明する。
次に、境界条件補正及び2.5D補正の後のスカラー値qと速度ベクトルwとを式(4)に代入することで、流体の速度ベクトルuを計算する(S6)。また、スカラー値場qから式(7)により圧力場pを計算する(S7)。
そして、S6で求めた流体の速度ベクトルuを、次の反復演算におけるS1の入力として用いて、S1〜S7の処理を繰り返す。以上に説明したS1〜S7の処理ループをあらかじめ定めた回数繰り返すことで、ビーム走査面内のビーム方向の速度成分のみしかない超音波ビームデータから、3次元的な流れの影響を反映しかつビームに直交する速度成分を含んだ流体の速度ベクトルuと圧力qとが求められる。
<数値シミュレーションの具体例>
次に、以上に説明したアルゴリズムを具体的な数値計算に実装する方法について説明する。一つの実装例は、上述の式(4)〜(8)に現れる各項を有限差分形式で時間的及び空間的な微分係数を置き換えることである。この置き換えの例を表1に示す。
Figure 2011235009
ただし、単純な置き換えだけでは必ずしも十分ではない。そこで、以下のような点を考慮する。
上述の式(6)は、時間tに関しては線形の偏微分方程式である。したがって、この式(6)は、重ね合わせの原理により次の式(9a)、(9b)に分解することができる。
Figure 2011235009
式(9a)はナビエ・ストークス方程式の移流項に、式(9b)は粘性項に対応する。式(9a)、(9b)をそれぞれ個別に解くことで得られる解w’とw”を足し合わせることで、式(6)の解wを得ることができる。
S1,3,5での境界条件に基づく補正では、例えばBモード画像から境界線(例えば心臓や血管の壁)を求め、その境界線について式(5)の境界条件を満たすようにすればよい。Bモード画像から境界線を求めるには、例えば、Bモード画像を二値化すればよい。適切な二値化のしきい値は、実験などにより求めればよい。単純な例では、図3に例示するように、注目画素(図3の各例における中央の画素)の上下左右の4画素がそれぞれ白と黒のいずれであるかの組み合わせに応じて、その注目画素における境界線の法線方向(注目画素から延びる矢印)を決定する。このように求めた法線方向に基づき、速度ベクトルu=(u,u)、(圧力に相当する)スカラー値qを以下の表に示すように補正する。
Figure 2011235009
例えば、法線方向が右斜め上45度方向の場合、境界条件補正後の速度ベクトルu=(0.707u,−0.707u)とする。また、スカラー値q=q(x−Δx,y−Δy)とする。表2では流体の速度ベクトルuについての例を示したが、中間的な速度ベクトルwについてもuと同じ補正を行えばよい。表2に例示した速度ベクトルの補正は、大きさを変えずに方向を境界線の法線方向へと変更するものである。また、圧力に対応するスカラー値qの境界線補正は、境界線上のノードのスカラー値を、境界線の法線方向について1格子分手前のノードのスカラー値qに合わせるものであり、これにより境界線の法線方向についてqが変化しないという境界条件を満たすことができる。
なお、以上の境界線補正の例では、注目画素の4近傍の画素の組み合わせから境界線の法線方向を求めたが、これは一例に過ぎない。もっと多数の近傍画素の情報を用いれば、境界線やその法線方向をより厳密に求めることができる。ビットマップ画像から境界線及びその法線方向を求める技術は様々に知られており、例示した方式の代わりにそのような公知の技術を用いてももちろんよい。
また、更に、S5では、境界線近傍の各ノードについて、圧力に対応するスカラー値qに対して2.5D補正を行う。補正の対象とする境界線の「近傍」のノードは、境界線上のノードに限定してもよいし、流れの範囲の中で境界線からあらかじめ定められた距離以内にあるノードとしてもよい。境界線からその距離以内の範囲は、境界層と捉えることができる。
この2.5D補正では、例えば図4に示すような補正曲線Cを用いる。図4における横軸q(2D)は入力であるスカラー値qであり、縦軸q(2.5D)は出力(補正結果)のスカラー値qである。このグラフは、横軸及び縦軸についてそれぞれ対称となっている。対称軸である横軸及び縦軸は、スカラー値qの基準とする値であり、例えば0とする。上述の数値演算では、スカラー値q(及び圧力p)の勾配を計算に用いており、q(及びp)の勾配は定数を足したり引いたりしても変わらないので、簡潔化のためにq=0を基準としている。ただし、あくまでこれは一例に過ぎない。
ここで、スカラー値qは、後述するように、ある与えられた初期値(これは後述のようにエコー信号データから得られる速度情報に基づいて仮定してもよいし、エコー信号データに関わりなくあらかじめ定めた値を用いてもよい)から数値計算を時間ステップごとに反復実行することにより、徐々に流れの性質に即した正確な値へと近づいていく。数値計算では、前回の時間ステップ(ステップ(k−1)とする)についての計算で求められた速度ベクトルやスカラー値q(圧力に対応する)を入力として、数値計算式を解くことで、次の時間ステップkの速度ベクトルやスカラー値qを求める。
この反復演算の中の、ある時間ステップk(すなわちk番目の計算タイミング)での数値計算式の実行の際に、その数値計算式に入力するスカラー値qに対し、補正曲線Cに従った2.5D補正を施す。すなわち、時間ステップkの計算において数値計算式に入力するスカラー値qは、1つ前の時間ステップ(k−1)で求められたスカラー値qであるが、このスカラー値qを横軸の値q(2D)とし、図4の補正曲線C上で、その横軸値に対応する縦軸の値q(2.5D)を補正結果とする。そして、その補正結果を時間ステップkの計算にてスカラー値qの入力値と用いて、数値計算式を解くのである。
図4の補正曲線Cの横方向及び縦方向の対称軸(すなわち横軸と縦軸)の交点におけるスカラー値qは、横軸についても、縦軸についても、あらかじめ定めた基準値qである。この基準値は、上述のように例えば0としてもよい。図4の補正曲線では、入力スカラー値qが基準値qに近い範囲では補正結果としてその入力スカラー値qそのものを採用し、基準値qからある程度以上離れると入力スカラー値qよりも基準値qに近い値へと補正している。特に図4の例では、入力スカラー値qと基準値qとの差が閾値以内の範囲では、入力スカラー値q(2D)の上昇(下降)に応じて補正結果のスカラー値q(2.5D)も比例的に上昇(下降)するが、入力スカラー値qと基準値qとの差がその閾値を超えると、入力スカラー値qが上昇(下降)しても補正結果のスカラー値qの上昇(下降)は鈍り、徐々に頭打ちとなる。ある1つの例では、入力スカラー値qと基準値qとの差が閾値を超えると、補正結果のスカラー値qを飽和させて一定値とする。
この補正は、以下のような考え方に基づく。すなわち、一般に、血流等の流体が血管壁に当たると、その当たった部分の圧力は周囲に比べて高くなる。また、壁に当たった流体は、壁を通り抜けることはなく、壁に沿って他の方向に移動するが、このときの流体の移動は超音波ビームの走査面内に限られるものではなく、走査面の外へも3次元的に移動していく。すなわち、走査面外に流出する。逆に、壁の圧力が周囲に比べて低い場合、周囲から流体が流入するが、その流入は走査面内だけからでなく面外からも到来する。この2.5D補正では、壁上での圧力と周囲の圧力(すなわち基準値)との差が大きくなるほど、このような走査面の外との間の流出及び流入が多くなり、その圧力差が緩和されると仮定するのである。なお、上述する数値計算では、この補正は、圧力pそのものに対してではなく、その圧力に対応するスカラー値qに適用している。
図4の例では、入力スカラー値qがある閾値以上になると2.5D補正値を一定の値としている。これは、閾値値を超える圧力に相当する流れは超音波ビーム走査面の外に流出するとの想定に基づく。なお、図4に例示した曲線はあくまで一例に過ぎない。例えば、2.5D補正値は完全には飽和せず(すなわち一定値にせず)に少しずつ増えるようにしてもよい。
実際の超音波診断装置への実装では、2.5D補正のための変換曲線(図4)は、2Dでのq値とこれに対応する2.5Dでのq値とを記憶したテーブル、又は2Dでのq値を2.5Dでのq値に変換するための関数を表すプログラム、などの形で、超音波診断装置の制御部に記憶させておけばよい。
以上の例では、流れを規制する壁を表す境界線をBモード画像から求めたが、これは一例に過ぎない。この代わりに、各点でのドプラ信号の強さを示すパワーフロー画像データから境界線を求めてもよい。パワーフロー画像を例えば二値化することで境界線を求めるなどである。例えば、実際の心臓内の流れでは、超音波ドプラの感度より小さい速度は測定できないので、Bモード画像で求められる心臓壁よりも少し内側の領域でしかドプラ速度のデータが出ない。これに対し、パワーフロー画像から境界線を求めることで、超音波ドプラの感度のある部分についてのドプラ情報に基づいた計算ができる(すなわちドプラ情報のない領域については計算をしない)ので、シミュレーションの精度が向上する。
以上の例では、境界線(壁)に該当するノードについて速度ベクトルや圧力(スカラー値q)を補正したが、境界線だけでなく、境界線からある厚みを持った境界層内に属するノードについても上述の境界線補正や2.5D補正を行ってもよい。境界層の厚みはあらかじめ決定し、装置に設定しておく。この場合、補正の程度は、境界線上のノードの補正の程度を最大値とし、境界線からの距離が離れるほど補正の程度を緩和するようにしてもよい。また、境界線上のノードについての補正結果と、境界層の外側にある境界層に最も近いノードでの速度ベクトルやスカラー値qとから補間を行うことにより、境界層内のノードの速度ベクトルやスカラー値qの補正値を求めてもよい。
以上、境界近傍のノードについての速度、及び圧力に対応するスカラー値qについての補正について説明した。
図2の説明に戻ると、S2では、速度の補正結果を用いて移流項及び粘性項の数値計算を行う。このS2の計算の具体例を、以下に示す。
移流項の数値計算は、式(9a)の各項を単純に有限差分形式に置き換えて数値的に解くことで計算できる。また、別の例として、セミ・ラグランジュ法を用いることもできる。
セミ・ラグランジュ法では、現在の速度ベクトルw’が微小な時間ステップΔtだけ後(又は前)の時刻でも保存されるものと仮定とする。そして、現在(時刻=t)のデータ点r(rは位置ベクトル)での次の時刻(=t+Δt)の速度ベクトルw’(r,t+Δt)が、現在時刻(=t)においてそのデータ点rからその速度ベクトルw’×Δtだけ戻った位置(r−w’Δt)での速度ベクトルw’(r−w’Δt,t)と等しいと考える。すなわち、w’(r,t+Δt)=w’(r−w’Δt,t)という式に従って、次の時刻t+Δtにおける当該データ点rの速度w’(r,t+Δt)を計算する。ここで、データ点rとして流体モデルにおける各ノード10を用いた場合、その点rからw’Δtだけ戻った位置(r−w’Δt)は、一般に流体モデルのノード10とは一致しないので、速度ベクトルの値が存在しない。そこで、w’(r−w’Δt,t)の値は、当該位置(r−w’Δt)の近傍の複数のノード10における現在時刻tでの速度ベクトルw’を補間することにより求めればよい。補間は、公知のどのような補間法を用いてもよい。
粘性項は、式(9b)を、次のように有限差分形式に書き換えて解けばよい。
Figure 2011235009
この式のx成分を取り上げると次のようになる。
Figure 2011235009
ここで、Δx、Δyは図1に示した流体モデルにおけるx、y方向についてのノード(格子点)の間隔dx、yのことである。y成分も同様に有限差分形式で表現できる。
このような形式に直すことで、ヤコビ法による反復解法(次式)が利用可能になる。
Figure 2011235009
この反復解法では、初期値w (0)として現在時刻tにおける速度場w(t)を用い、この初期値から計算を開始してあらかじめ定めた回数だけ反復を繰り返す。現在時刻tにおける速度場w(t)は、上述の境界線補正(S3)後の速度場wのことである。また、反復は、上記移流項において用いた時間ステップΔtごとに行う。
なお、この反復解法の式はx成分についてのものである。y成分についても同様の計算を行えばよい。これにより、粘性項の成分が求められる。
なお、この粘性項及び前述の移流項の反復演算は、1回ごとに、圧力に対応するスカラー値qや実際の速度ベクトルuについての前回の反復演算の結果を反映した形で行う。なお、この点は、圧力に対応するスカラー値qや実際の速度ベクトルuについての反復演算(後述)についても同様である。
このように計算された移流項の速度成分w’と粘性項の速度成分w“とを足し合わせることで、中間的な速度ベクトルwが求められる。
なお、反復の各回で求められたベクトルwは、S3で境界条件に基づく補正を受け、S4におけるスカラー値qの演算に用いられる。
次に圧力に対応するスカラー値qについての数値演算(S4)の具体例について説明する。既に上述のようにして中間的な速度ベクトルwが求められているので、スカラー値qは上述の式(8)から計算できる。
式(8)の右辺は、有限差分方式に従って展開すると、次のようになる(表1参照)。
Figure 2011235009
同様に式(8)の左辺は次のように展開される。
Figure 2011235009
このように展開すると、ヤコビ法による反復解法(次式)が利用可能になる。
Figure 2011235009
この反復解法では、初期値q(0)(x、y)して現在時刻tにおけるd(x、y)の値を用い、この初期値から計算を開始してあらかじめ定めた回数だけ反復を繰り返す。反復の各回の演算では、d(x、y)の値は、その回のwについての反復演算の結果(S3で境界条件についての補正済)に基づき求めればよい。求めた今回のqの値は、S5で境界条件補正及び2.5D補正を施された上で、次のS6及びS7の演算に供される。
次に、速度ベクトルuの計算(S6)の具体例について説明する。以上の演算で、w及びqが求められたので、式(4)から速度ベクトルuを求めることができる。なお、式(4)の適用のためには、スカラー値qの勾配を求める必要がある。これは次式に従って行えばよい。
Figure 2011235009
ここで、g、gは、それぞれqの勾配のx、y成分である。ここで、右辺の各項のqの値は、今回の反復におけるS5の補正結果である。
速度ベクトルuのx、y成分u、uは次式で計算すればよい。
Figure 2011235009
次に、実際の圧力値pの計算(S7)の具体例について説明する。反復演算における今回のスカラー値qの演算結果はS4及びS5で既に求められているので、この演算結果を式(7)に適用することで、圧力値を計算することができる。実際の数値計算では、式(7)を次式の有限差分形式に展開して計算すればよい。
Figure 2011235009
以上に例示したw,q,u,pについての数値計算が、時間ステップΔtごとの計算時点について反復実行される。この反復演算の初期値は、超音波診断装置により取得したあるサンプリング時刻のビーム方向の速度成分(ただし、境界付近については補正済)であるが、ナビエ・ストークス方程式及び境界条件を折り込んだ反復演算により、最終的に、流体の性質に即してビームに直交する成分を含んだ速度ベクトルuが求められることになる。また、圧力に対応するスカラー値qに対して、3次元的な流れの影響を折り込むための2.5D補正を施すことで、3次元的な流れの影響を加味した速度ベクトルuや圧力値pが求められる。
超音波診断装置におけるあるサンプリング時刻から次のサンプリング時刻までの間に、以上のような所定回数の反復計算を実行することで、超音波診断装置から得られる超音波ビーム方向の速度情報から、3次元的な流れの影響を加味した2次元速度ベクトルuや圧力値pを、リアルタイムで計算することができる。
なお、初期値から開始して上述の所定回数の反復計算を経て得られた速度ベクトルuの超音波ビーム方向の成分は、初期値である超音波診断装置から得た生のビーム方向速度成分とは一般に一致しない。ここで、超音波診断装置から得た生のビーム方向速度成分は実測値なので尊重するとの立場を取るならば、反復計算により得た速度ベクトルuを生のビーム方向速度成分により補正することとなる。ここで、補正の仕方としては、次の2つが考えられる。1つは、反復計算により得た速度ベクトルuのベクトル方向を維持したまま、その速度ベクトルuのビーム方向の速度成分が超音波診断装置から得た生のビーム方向速度成分と等しくなるよう、速度ベクトルuを拡大又は縮小する補正である。この補正では、補正後の速度ベクトルuのビームに直交する方向の速度成分が補正前とは異なったものとなる。もう1つは、反復計算により得た速度ベクトルuのうちビーム方向に直交する速度成分は保存し、ビーム方向の速度成分を超音波診断装置から得た生のビーム方向速度成分に置き換えるという補正である。この補正の場合、速度ベクトルuの方向が、補正前とは異なったものとなる。
以上に例示した数値計算方法の例は、直交座標系の流体モデルに基づいている。したがって、セクタ走査やコンベックス走査などのような非直交座標系の超音波ビーム走査により得た超音波ビームデータについては、公知の方法で直交座標系へ座標変換してから上記の数値計算手法を適用すればよい。この場合、数値計算により求めた2次元速度ベクトルuや圧力pは、その座標変換の逆変換を行うことで、元の非直交座標系での値に変換することができる。また、セクタ走査などの非直交座標系で流体モデルを構築し、その座標系での数値計算式に従って数値計算を行うようにしてももちろんよい。
<画面表示>
(1)流速ベクトル表示
数値シミュレーションにより求めた各ノードにおける流速ベクトルuを、例えばそのノードから延びる線分として画面表示してもよい。この場合、線分の向き及び大きさがベクトルuの向きと大きさを表すようにすればよい。この流速ベクトル表示は、Bモード画像やカラードプラ画像に重畳して表示してもよい。
(2)流体粒子移動表示
また、直感的に分かりやすくするために、数値シミュレーションにより求めた2次元の流速に従って流体粒子が移動する様子をアニメーション表示してもよい。
この表示では、例えば表示の第1フレームでは、流体モデルの各ノード(数が多すぎる場合は間引いてもよい)につき、当該ノードを表す粒子画像(所定数の画素からなる塊であってもよい)を、シミュレーションで求めた当該ノードの2次元流速ベクトルに応じた方向及び移動量だけ当該ノードの本来の位置から移動した位置に表示する。第2フレームでは、第1フレームでの移動先の位置にある各粒子画像を、第2フレームでのシミュレーションで求めた当該位置での2次元流速ベクトルに応じた方向及び移動量だけ、その位置から移動させる。なお、第1フレームでの粒子の移動先の位置における、第2フレームでの流速ベクトルは、例えば、シミュレーションにより求められた流体モデルの各ノードについての2次元流速ベクトルからの補間により求めればよい。このようにして、第3フレーム以降も同様に、前フレームでの移動先の粒子を、現フレームでのシミュレーション結果の流速ベクトルに応じて移動させる。このような処理により、流体粒子が流れていくようすを直感的に表示する動画像を生成することができる。
(3)流速マップ表示
従来の超音波診断装置の速度表示は、超音波プローブに近づく方向と遠ざかる方向の二方向についての情報しかないため、近づく方向と遠ざかる方向にそれぞれ異なる色(例えば赤と青)を割り当てて表示していた。これに対し、本実施形態では、数値シミュレーションによりビーム方向に直交する速度成分を持つ流速ベクトルuが求められるので、より豊かな情報を表示することができる。一例として、図5に示すように、流速ベクトルuの方向を色相で、大きさを明度で示す色変換マップを用いればよい。すなわち、各ノードの流速ベクトルuを、この色変換マップに従って色値に変換し、この色値に応じた色を当該ノードの色として画面表示すればよい。なお、色変換マップは、例えば流速ベクトルuのx、y成分の組み合わせごとに、その組み合わせに対応する色値(例えば色相と明度の組、又はこの組が表す色をRGBの成分で表現したデータ)を登録したデータとして実装すればよい。
以上の例では、流速ベクトルuの大きさを表示色の明度に変換したが、明度の代わりに、濃度や彩度などのような、色相以外の色パラメータに変換してもよい。
(4)圧力表示
数値シミュレーションにより求めた各ノードの圧力pを、例えば色で表示することができる。例えば、圧力の平均値を黒とし、その平均より高い圧力を持つノードを青色で、平均より低い圧力を持つノードを赤色で表示するなどである。また、圧力の平均からの差の大きさに応じて、当該ノードの明度を変化させてもよい(例えば、平均からの差が大きいほど明るくするなど)。
(5)動圧表示
数値シミュレーションにより求めた各ノードの流速ベクトルuを元に各ノードの動圧を計算し、表示してもよい。動圧は、ρu/2である。ρは既知、uは数値シミュレーションで計算されているので、これらから動圧を計算することができる。動圧は、上述の圧力pと同様の表示形態で表示することができる。
(6)渦度表示
数値シミュレーションにより求めた各ノードの流速ベクトルuの回転(すなわち∇×u。rot uとも表される)を渦度として計算し、渦度を画面表示してもよい。ベクトルuの回転はベクトルであるが、この回転ベクトルを渦度として計算するのである。計算される渦度はベクトルであり向き(すなわち回転の方向)がある。例えば、この回転の方向が時計回りか反時計回りで色分け(例えば前者を青、後者を黄色で表すなど)し、渦度の大きさ(すなわちベクトルの絶対値)を明度などと行った色相以外のパラメータの値に反映させることで、表示色を求めてもよい。
以上の(3)〜(6)の表示方式の説明では、流体モデルにおける各ノードについての表示色(画素値)の求め方を例示したが、ノード同士の間の各画素の画素値を、当該画素の近傍のノードの画素値から補間により求め、その補間結果を表示するようにしてもよい。
(7)圧力変化表示
図6に示すように、ユーザから指定された注目点の圧力p(或いは注目範囲の平均圧力)の時系列的な変化のグラフ100を画面に表示してもよい。注目点(又は注目範囲)は、例えばBモード表示がカラードプラ表示の画面上で、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイスを用いてユーザが指定すればよい。図6のグラフ100は、心房内の注目点の圧力の時間変化の例である。このグラフは、縦軸が圧力p、横軸が時間tである。医師は、このグラフ100の勾配(時間変化率)から、心臓の弁機能を評価することができる。
また、注目点の圧力pの大きさに応じた音量或いは周波数の音を出力することで、ユーザが音の時間的な変化により圧力pの時間的な変化を認識できるようにしてもよい。
また、図7に示すように、ユーザが指定した2つの注目点(又は2つの注目範囲)の圧力の時系列変化のグラフ100及び102を同時に表示してもよい。例えば、グラフ100は心房内の注目点の圧力の変化を示し、グラフ102は心室内の注目点の圧力の時間変化を示す。図7のように、心房と心室の圧力の時間変化を、同一時間・同一スケールで並べて表示することで、心房と心室との圧力差(グラフ100と102の間隔)を視覚的に把握することができる。
<超音波診断装置の構成例>
上記の方法を実装した超音波診断装置の装置構成の例を図8に示す。図8に示した装置構成において、数値シミュレーション部214が前述の数値演算処理により流速ベクトルu及び圧力pを計算する機能モジュールであり、他の構成要素は、従来一般的な超音波診断装置の構成要素と同等のものでよい。
この装置では、操作パネル200からの操作に応じた制御部202からの制御に従い送信部204にて送信信号を生成し、この送信信号によりプローブ(超音波探触子)206中の振動子アレイを駆動して、被検体300内に超音波パルスのビームを送信する。そして、このビームの被検体300内からのエコーをプローブ206で受信し、電気的な受信信号を生成する。この受信信号は受信部208で所定の信号処理を受けた上で、Bモード演算部210、カラードプラ演算部212に入力される。これらは、Bモードデータ、カラードプラデータ(すなわち各点のビーム方向速度成分)をそれぞれ計算する。
数値シミュレーション部214は、カラードプラ演算部212で求められた各点のビーム方向速度成分の値から、前述の数値シミュレーション処理を実行することにより、それら各点の2次元流速ベクトルuと圧力pを計算する。すなわち、数値シミュレーション部214は、境界検出部250と反復演算部252を有する。境界検出部250が、あるフレームにおけるBモード画像、又はカラードプラ演算部212が求めた速度情報から求めたパワーフロー画像から、血流範囲の境界線を特定し、境界上の各点の法線方向を求める。反復演算部252は、当該フレームのカラードプラ画像を出発点として、上述の移流項、粘性項、スカラー値q、速度ベクトルu及び圧力値pの数値計算式を反復実行する。1回の反復ごとに、前回の反復における計算結果に対して、境界に関する補正、すなわち境界条件を満たすための補正と圧力(q)についての2.5D補正とを施し、その補正結果を入力して上述した数値計算式の演算処理を実行する。この反復演算をあらかじめ定めた回数だけ繰り返すことで、当該フレームについての2次元流速ベクトルuと圧力pを計算する。このような数値シミュレーション処理を1フレームごとに行うことで、2次元流速ベクトルuと圧力pをリアルタイムで計算することができる。数値シミュレーション部214は、ソフトウエア処理で実現することもできるが、上記方法に基づく演算処理を例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ)等を用いて回路的に実装してもよい。
画像生成部216は、このように求められたBモードデータ、カラードプラデータ、並びに2次元速度ベクトルu及び圧力pのデータを用いて診断用の表示画像を形成する。数値シミュレーションにより求めた2次元速度ベクトルu及び圧力pに基づく表示画像としては、上述の(1)〜(7)などがある。なおこの画像の生成のために、Bモードデータやカラードプラデータなどを必要に応じて走査変換してもよい。例えば、超音波ビーム走査がセクタ走査などのように直交座標系にしたがったものでない場合、画像表示のために直交座標系に走査変換すればよい。走査変換により表示部220の画像フォーマットに合わせられた各種診断画像が、診断画像モードの設定に従って適宜組み合わされることで、表示画像が形成され、表示部220に表示される。この表示では、上述の(1)〜(7)の画像のうちの1つ又は複数の組み合わせを、Bモード画像やカラードプラ画像に重ねて表示することもできる。
10 ノード、200 操作パネル、202 制御部、204 送信部、206 プローブ、208 受信部、210 Bモード演算部、212 カラードプラ演算部、214 数値シミュレーション部、216 画像生成部、220 表示部、250 境界検出部、252 反復演算部。

Claims (5)

  1. 超音波ビームを被検体内に送受信し、被検体内からのエコー信号を取得する送受信手段と、
    前記エコー信号に基づき、前記被検体内の各点の超音波ビーム方向についての速度情報を求めるドプラ処理手段と、
    前記エコー信号に基づき、前記被検体内の流体が流れる流れ範囲の境界を検出する境界検出手段と、
    前記境界検出手段が検出した前記境界についての境界条件の下で、前記被検体内の各計算点の超音波ビーム方向についての速度情報を初期値として、ナビエ・ストークス方程式に基づく数値計算式を時間ステップごとに反復演算することにより、前記各計算点について、前記超音波ビーム方向の速度成分と前記超音波ビーム方向に直交する方向の速度成分とを含む速度ベクトル及び圧力、を計算する反復演算手段と、
    前記反復演算手段が計算した前記各計算点についての前記速度ベクトル又は前記圧力を表示するための処理を行う表示処理手段と、
    を備え、
    前記反復演算手段は、前記境界の近傍の計算点については、前記数値演算式における圧力に対応する項の入力値に対し、基準値からその入力値までの差が閾値以上の場合にはその差を緩和する補正を行った上で前記数値計算式を反復演算する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  2. 請求項1に記載の超音波診断装置において、前記境界検出手段が、前記エコー信号から求められるパワーフロー画像に基づき、前記境界を検出する、ことを特徴とする超音波診断装置。
  3. 請求項1又は2に記載の超音波診断装置において、前記表示処理手段は、前記速度ベクトルを表示する速度表示画像における前記各計算点の表示色の色相を当該計算点における前記速度ベクトルの方向に基づき求め、前記速度表示画像における前記各計算点の表示色の色相以外のあらかじめ定められた色パラメータを当該計算点における前記速度ベクトルの大きさに基づき求める、ことを特徴とする超音波診断装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
    前記反復演算手段により求められた前記各計算点における前記速度ベクトルから、それら各計算点の渦度を計算する渦度計算手段、を更に備え、
    前記表示処理手段は、前記各計算点の渦度が表す回転の向きを色分け表示した渦度表示画像を生成する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  5. 被検体内からのエコー信号に基づき、前記被検体内の各点の超音波ビーム方向についての速度情報を求めるステップと、
    前記エコー信号に基づき、前記被検体内の流体が流れる流れ範囲の境界を検出する境界検出ステップと、
    前記境界検出ステップで検出された前記境界についての境界条件の下で、前記被検体内の各計算点の超音波ビーム方向についての速度情報を初期値として、ナビエ・ストークス方程式に基づく数値計算式を時間ステップごとに反復演算することにより、前記各計算点について、前記超音波ビーム方向の速度成分と前記超音波ビーム方向に直交する方向の速度成分とを含む速度ベクトル及び圧力、を計算する反復演算ステップと、
    前記反復演算ステップで計算された前記各計算点についての前記速度ベクトル又は前記圧力を表示するための処理を行う表示処理ステップと、
    を備え、
    前記反復演算ステップでは、前記境界の近傍の計算点については、前記数値演算式における圧力に対応する項の入力値に対し、基準値からその入力値までの差が閾値以上の場合にはその差を緩和する補正を行った上で前記数値計算式を反復演算する、
    ことを特徴とする超音波診断装置における数値シミュレーション方法。
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