JP2011231394A - 銅合金展伸材、銅合金部品および銅合金展伸材の製造方法 - Google Patents

銅合金展伸材、銅合金部品および銅合金展伸材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】被削性および展伸性に優れ、環境負荷を軽減しつつ、高強度および高導電性の少なくとも一方を必要とする用途に最適な銅合金展伸材を提供する。
【解決手段】Niを1.5〜7.0mass%、Siを0.3〜2.3mass%、Sを0.02〜1.0mass%を含有し、さらに必要に応じて、Sn、Mn、Co、Zr、Ti、Fe、Cr、Al、PおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも1種を総量で0.05〜2.0mass%含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金展伸材であって、被削性向上に寄与する硫化物が分散しており、該硫化物の平均直径は0.1〜10μmであり、該硫化物の面積率は0.1〜10%であり、かつ、引張強さが500MPa以上、導電率が25%IACS以上である銅合金展伸材。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子機器、精密機械、自動車等に使用される金属部品、特に切削加工により製造される銅合金部品に関し、さらにこの銅合金部品に適する銅合金展伸材およびその製造方法に関するものである。
金属部品を製造する方法として旋削、穿孔などの切削加工がある。切削加工は、特に複雑な形状を持つ部品や高い寸法精度を要する部品の製造には有効な加工方法である。切削加工を行う場合、被削性がしばしば問題となる。被削性には切削屑処理、工具寿命、切削抵抗、切削面粗さなどの項目があり、これらが向上するように材料に改良が施されている。
銅合金は、強度が高い、導電性・熱伝導性に優れる、耐食性に優れる、色調に優れるなどの理由から多くの金属部品に使用されている。切削による加工も多く実施されており、例えば水道の蛇口、バルブ、歯車、装飾品などの用途があり、黄銅(Cu−Zn系)、青銅(Cu−Sn系)、アルミ青銅(Cu−Al系)、洋白(Cu−Zn−Ni系)に被削性を向上させるために鉛を添加した合金が使用されている(特許文献1〜4参照)。なお、これらはいずれも高強度または高導電性を必要としない用途である。
高強度または高導電性を必要とする用途、例えば同軸コネクタのピン材等の用途には、りん青銅やベリリウム銅に鉛を添加した快削りん青銅(特許文献5参照)、快削ベリリウム銅(特許文献6参照)が使用されている。これらはNC旋盤等の精密な工作機械で切削加工され、電子機器用途等の信頼性の高い部品に使用されている。
このように銅合金の被削性を向上させるために、一般的には鉛が添加されている。これは、鉛が銅合金に固溶しないため材料内に微細に分散し、切削加工時に切削屑がその部分で分断されやすくなることによる。しかし、鉛は人体や環境に影響を及ぼすとされていることから使用が制限されつつあり、鉛を含有せずに被削性を向上させた材料の要求が高まっている。鉛を含有する銅合金の代替材料として、黄銅や青銅にビスマスを添加した銅合金(特許文献7〜8参照)が知られている。また黄銅では、亜鉛濃度を高くして銅−亜鉛系化合物であるβ相やγ相を形成させ(特許文献9)、あるいはケイ素を添加して銅−ケイ素系化合物であるκ相を形成させ(特許文献10)、これらの化合物を切削屑分断の起点として作用させることで被削性を向上させることも知られている。さらに、青銅において硫黄を添加して硫化物を形成させて切削屑分断の起点として作用させる方法があり(特許文献11)、硫化物を切削屑分断の起点として作用させるものでは、他に銅−ジルコニウム系、銅−チタン系の時効析出型合金に関する方法(特許文献12)が知られている。
特開昭60−056036号公報 特開昭58−113336号公報 特開昭51−101716号公報 特開平01−177327号公報 特開昭50−066423号公報 特開昭52−117244号公報 特開2001−059123号公報 特開2000−336442号公報 特開2000−319737号公報 特開2004−183056号公報 特開2006−152373号公報 特開2001−240923号公報
しかし、各特許文献に記載された技術は、以下の課題を有する。
特許文献1〜6に記載の技術では、前述のとおり被削性を向上させるための添加元素として鉛を用いており、環境への負荷が懸念される。特に特許文献6に記載の技術では、快削ベリリウム銅の被削性を向上させるための添加元素として鉛に代替するものはなく、またベリリウムそのものも環境に影響を与える元素の一つとして挙げられており、鉛を添加した銅合金の代替材のみならずベリリウム銅の代替材を望む声も高まっている。
また、特許文献7、8に記載の技術では、ビスマスを添加すると被削性は改善されるが、加工中に割れやすくなり、特に熱間加工が困難となる。すなわち、熱間加工性の改善を図ることが改めて必要となる。特許文献9、10に記載されている合金で形成される化合物は黄銅系特有のものであり、他の合金系に適用することは事実上困難である。特許文献11は鋳物に関する技術であり、鋳物を直接切削する場合には好適であるが、棒材や板材などの展伸材(塑性加工された材料)を得るための技術としての開示はない。特許文献12に記載の技術で得られる材料は一般に強度が低く、例えば同軸コネクタのピン材などの高強度を必要とする用途には不十分であり、他の技術を適用する必要がある。
また、高強度または高導電性を必要とする用途では、銅にニッケルとケイ素を添加した合金系(Cu−Ni−Si系:いわゆるコルソン合金)などを用いることも考えられるが、この合金系において被削性を高める検討は十分になされておらず、特に被削性と展伸性の両方に優れた銅合金材料とするためには、さらなる検討が必要である。
本発明はこのような問題に鑑みなされたもので、被削性および展伸性に優れ、環境負荷を軽減しつつ、高強度および高導電性の少なくとも一方を必要とする用途に最適な銅合金展伸材を提供することを目的とするものである。さらに本発明は前記銅合金展伸材を切削加工して得られる銅合金部品を提供することを目的とするものである。
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の組成の時効析出型銅合金において硫化物のサイズ(平均直径)と面積率を制御することによって、展伸性(熱間・冷間の加工性)および被削性に優れ、さらに強度および導電性に優れる銅合金展伸材が得られることを見出した。また上記の硫化物を得るための組成および鋳造方法を見出し、さらに熱間加工性、冷間加工性にも優れる組成、組織、鋳造方法を見出した。
すなわち、本発明は、以下の解決手段を提供するものである。
(1)Niを1.5〜7.0mass%、Siを0.3〜2.3mass%、Sを0.02〜1.0mass%含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金展伸材であって、硫化物が分散しており、該硫化物のサイズ(平均直径)は0.1〜10μmであり、該硫化物の面積率は0.1〜10%であり、かつ、引張強さが500MPa以上、導電率が25%IACS以上であることを特徴とする銅合金展伸材。
(2)Niを1.5〜7.0mass%、Siを0.3〜2.3mass%、Sを0.02〜1.0mass%含有し、さらに、Sn、Mn、Co、Zr、Ti、Fe、Cr、Al、PおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも1種を総量で0.05〜2.0mass%含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金展伸材であって、硫化物が分散しており、該硫化物のサイズ(平均直径)は0.1〜10μmであり、該硫化物の面積率は0.1〜10%であり、かつ、引張強さが500MPa以上、導電率が25%IACS以上であることを特徴とする銅合金展伸材。
(3)前記硫化物が、Cu−S、Mn−S、Zr−S、Ti−S、Fe−S、Al−S、Cr−S、及びZn−Sからなる群から選ばれる少なくとも1種類である、(1)または(2)に記載の銅合金展伸材。
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の銅合金展伸材を切削加工して形成された銅合金部品。
(5)電子機器部品、構造部品、または要素部品に用いられる、(4)に記載の銅合金部品。
(6)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の銅合金展伸材を製造する方法であって、鋳造時の冷却速度を0.1〜50℃/秒とすることを特徴とする銅合金展伸材の製造方法。
本発明の銅合金展伸材は、強度および導電性に優れ、さらに鉛やベリリウムなどの環境負荷物質を利用することなく、被削性および展伸性に優れたものとなる。また、本発明の銅合金展伸材は、切削加工により製造される電子機器等の部品用材料として好適である。本発明の銅合金部品は切削加工で精度よく製造することができ、かつ、電子機器等の部品として必要な特性を十分に有している。
実施例3で作製したコネクタピンの一方の形状を模式的に示す側面図である。 実施例3で作製したコネクタピンの他の形状を模式的に示す側面図である。
本発明の銅合金展伸材の好ましい実施の態様について、詳細に説明する。まず、各合金元素の作用効果とその含有量の範囲について説明する。
なお、本明細書において、「銅合金」とは形状の概念を含まないものをいい、「銅合金材料」や「銅合金展伸材」などは、形状の概念を含むものをいう。
本発明の銅合金展伸材の好ましい実施の態様におけるニッケル(Ni)とケイ素(Si)は、NiとSiの含有比を制御することにより金属生地(マトリクス)中にNi−Si析出物(NiSi)を形成させて析出強化を行い、銅合金展伸材の強度および導電性を向上させるために添加する。このNi−Si析出物(NiSi:析出強化のための析出物)は、被削性の向上にはあまり寄与しない。
本発明の銅合金展伸材の好ましい実施の態様においては、硫黄(S)の添加によりマトリクス中に被削性向上に寄与する硫化物を形成させる。この硫化物が、切削加工を行った時の切削屑分断の起点として作用することで切削屑が細かく分断され易くなり、被削性が向上する。また、鋳造時の冷却速度を制御することで硫化物のサイズ(平均直径)と面積率が制御されて切削屑分断性が向上し、さらに熱間および冷間における加工性を損なわなくなることにより、押出、圧延、引抜きなどの展伸加工が可能となる。
本発明における銅合金は、ニッケル(Ni)とケイ素(Si)が固溶した状態、あるいはNi−Si析出物が形成された状態で熱間または冷間加工が施されるが、いずれの状態でも一般に展伸加工性は悪く、加工中に割れ、破損等が生じやすい。この銅合金中に硫化物が形成されると展伸加工性は更に悪化し加工が困難となる。展伸加工性には、硫化物のサイズ(平均直径)と面積率が影響を及ぼすことから、本発明では、硫化物のサイズ(平均直径)と面積率を規定している。このことにより、Cu−Ni−Si系において、両立が困難な展伸加工性と切削性を同時に向上させることが可能となる。
Niの含有量は1.5〜7.0mass%(質量%)であり、1.7〜6.5mass%であることが好ましい。Ni量が少なすぎると、Ni−Si析出物による析出硬化量が小さく強度が不足する。Ni量が多すぎると、過剰であるため強度向上に寄与するNi−Si析出物量が増加しないだけでなく、溶解鋳造時にNi−Si晶出物が多く形成して熱間加工性および冷間加工性(すなわち展伸性)を悪化させるため好ましくない。
Siの含有量は、Ni−Si析出物(NiSi)の形成においては、質量%で計算するとNi含有量の約1/5〜1/3の量が必要となる。このことから、本発明において、Siの含有量は0.3〜2.3質量%であり、0.34〜2.2質量%であることが好ましい。
また、本発明の銅合金展伸材においては、硫化物のサイズ(平均直径)が0.1〜10μmで硫化物の面積率が0.1〜10%存在する必要がある。そのためには、Sの含有量は0.02〜1.0mass%であり、好ましくは0.03〜0.8mass%である。少なすぎると硫化物の面積率が小さく、十分な切削屑分断性が得られない。Sの含有量が多すぎると、熱間加工性および冷間加工性(すなわち展伸性)が悪化する。
さらに、本発明の銅合金展伸材には、錫(Sn)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、りん(P)、亜鉛(Zn)の1種または2種以上を含有させてもよい。これらの元素は、固溶または析出物を形成することでCu−Ni−Si合金の強度を向上させ、あるいは硫化物を形成して被削性を向上させる。含有させる場合には、Sn、Mn、Co、Zr、Ti、Fe、Cr、Al、P、Znの中から選ばれる1種または2種以上を総量で0.05〜2.0mass%含有させることが好ましい。含有量が0.05mass%より少ない場合は、強度向上や被削性改善の効果がこれらの元素を含有しない場合と変わらなくなる。また、含有量が2.0mass%より多い場合は、強度および被削性向上の効果が飽和するだけでなく、導電率が低下するため得策ではない。
硫化物の成分としては、Cu−S、Mn−S、Zr−S、Ti−S、Fe−S、Al−S、Cr−S、Zn−Sなどがある。硫化物は、Cu−S、Mn−S、Zr−S、Ti−S、Fe−S、Al−S、Cr−S、Zn−Sからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特にCu−Sが有効である。更に不可避的不純物とSとの硫化物もある。なお、ここで「Cu−S」とは、CuSやCuSなどのCuとSからなる硫化物の総称を意味し、「Mn−S」等でも同様である。
次に、被削性向上に寄与する化合物である硫化物のサイズ(平均直径)と面積率の規定、並びに特徴について述べる。硫化物は、切削加工時に発生する切削屑を細かく分断する作用があり、それにより被削性が向上する。ただし、硫化物のサイズ(平均直径)が0.1μmより小さいと、大きな効果は得られない。また、サイズ(平均直径)が0.1μm以上の硫化物があったとしても、トータルの面積率が小さいと切削屑は細かく分断されない。具体的には、0.1μm以上のサイズ(平均直径)の硫化物が面積率で0.1〜10%の密度で分布していないと、切削屑が十分には分断されない。なお、硫化物は軟らかいため、熱間加工や冷間加工の加工度に応じて長手に伸ばされることがあるが、硫化物のサイズ(平均直径)と面積率は展伸材の長手方向に垂直な断面(横断面)で上記を満足すれば良い。また硫化物のサイズ(平均直径)とは、この横断面を電子顕微鏡で観察して100個以上の硫化物粒子を円形換算して、その直径を平均した値とする。硫化物の面積率とは電子顕微鏡で観察される1視野に見られる硫化物の数をカウントし、その各々の硫化物を円形換算してその直径を求め、平均して、その平均直径から面積を求めて硫化物数を乗じて硫化物の1視野当りの総面積を求めて1視野の全面積で除した値とする。
一方、硫化物は材料の熱間および冷間の加工性を悪化させる。硫化物は結晶粒界に形成され易く、粒界強度を低下させるため、硫化物のサイズ(平均直径)が大き過ぎたり、面積率が大き過ぎたりすると、熱間加工や冷間加工を施した時に割れを生じさせ、展伸材として使用できなくなる。従って、硫化物のサイズ(平均直径)は10μm以下、硫化物の面積率は10%以下にする必要がある。
この硫化物のサイズ(平均直径)は、鋳造時の冷却速度により変化する。冷却速度が遅いと硫化物は大きくなり、逆に速いと小さくなる。好ましい冷却速度は0.1〜50℃/秒、より好ましくは0.3〜40℃/秒である。
次いで、本発明の好ましい実施の態様における銅合金展伸材の機械的特性について述べる。
本発明における銅合金は、鉛を含有するりん青銅やベリリウム銅の代替、すなわち環境負荷物質を含有する銅合金の代替を目指すものであり、これらの合金と同等の強度を要する。そのため、実用上問題とならない強度および導電性として、引張強さ500MPa以上、導電率がIACS(International Annealed Copper Standard)で25%以上であることが必要である。本発明における銅合金は時効析出型であり、前述のようにNiSiを形成させることで強度、導電性を向上させており、そのために、Niを1.5〜7.0mass%、Siを0.3〜2.3mass%含有することが必要となる。また、製造工程における溶体化熱処理温度は750〜1000℃の範囲が好ましく、時効熱処理温度は350〜600℃の範囲が好ましい。
本発明において、銅合金展伸材の製造方法には、鋳造時の冷却速度を上記範囲として硫化物のサイズ(平均直径)を制御する以外、特に制約はない。本発明の銅合金展伸材は、時効析出型銅合金の展伸材であるため、少なくとも銅合金原料の溶解鋳造工程の後に時効熱処理工程は必須となるが、熱間加工工程、焼鈍工程、溶体化熱処理工程は、銅合金展伸材を得るための工程のほかは、必要に応じて行うこととなる。例えば、熱間加工工程に関しては、ビレットの熱間押出、鋳塊の熱間鍛造、あるいは連続鋳造などの製造方法のいずれでも本発明の銅合金展伸材を製造することが可能である。また、製品の形状は特に制約はなく、後工程である切削工程により最終形態である銅合金部品を得やすい形状としておくことが好ましい。すなわち、銅合金部品の用途により線、棒、条、板、管などの所定の形状の銅合金展伸材として製造し、使い分ければ良い。例えば、最終形態の銅合金部品がねじやリベットなどである場合は、銅合金展伸材の形状は丸棒状であることが好ましい。
銅合金部品としては、現在、鉛入りのりん青銅やベリリウム銅が使用されている同軸コネクタのオスピン、メスピンや、ICソケットやバッテリ端子コネクタに使用されるプローブのバレルおよびプランジャー材、オーディオケーブルのコネクタ端子などの電子機器部品、アンテナのヒンジ、ファスナー、ベアリング、ガイドレール、抵抗溶接機、時計などの構造部品や歯車、軸受け、金型のイジェクトピンなどの要素部品のように、強度、電気伝導性、熱伝導性、耐摩耗性を必要とし、複雑な形状で主に切削加工で製造される部品が挙げられる。本発明の「銅合金部品」は切削加工で製造された銅合金部品を一部に含むものであってもよい。
以下に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
(実施例1)
表1の合金成分で示される組成の銅合金を高周波溶解炉にて溶解し、冷却速度0.5〜5℃/秒で各ビレットを鋳造した。前記ビレットを温度950℃で熱間押出して、直ちに水中焼入れを行い、直径20mmの丸棒を得た。次いで前記丸棒を冷間にて引抜きを行い、直径10mmの丸棒を製造し、さらに温度450℃で2時間時効熱処理を行った。
このようにして得られた各々の銅合金展伸材(丸棒)のサンプルについて、[1]引張強度、[2]導電率、[3]被削性を下記方法により調べた。各評価項目の測定方法は以下の通りである。
[1]引張強度
JIS Z 2241に準じて3本測定しその平均値(MPa)を示した。
[2]導電率
四端子法を用いて、20℃(±1℃)に管理された恒温槽中で、各試料について2本ずつ測定し、その平均値(%IACS)を示した。
[3]被削性
汎用旋盤を用いて丸棒の外径の段付き切削加工を行い、太径部の直径9.6mm、細径部の直径8mmのリベットを作製して発生した切削屑の形態を観察した。切削屑が長さ5mm以下に分断されるものは良、切削屑が分断されるがその長さが5mm以上のものは可、切削屑が螺旋状につながっているものは不良とした。実用上問題が生じないのは良および可である。なお切削条件は、回転数1010rpm、送り速度を1回転あたり0.1mm、切り込み代0.2mm、とした。バイトは超硬製のものを用い、切削油は不使用とした。
また、硫化物のサイズ(平均直径)と面積率は、直径10mmの丸棒のサンプルの任意の3か所の横断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてそれぞれ3視野について組織観察を行うことにより求めた。硫化物のサイズ(平均直径)は、1視野当たり100個以上の硫化物を円形換算して、その直径を平均して求めた。硫化物の面積率は、1視野に見られる硫化物の数をカウントし、硫化物を円と仮定して平均直径より求めた面積を乗じることで硫化物の1視野当たりの総面積を求め、1視野の面積で除することで求めた。また、硫化物の成分を、SEMに付随するエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を用いて調査した。
表1に結果を示す。本発明例1〜25は、成分が本発明の範囲内であり、何れも引張強さ500MPa以上、導電率25%IACS以上を満足している。また、硫化物のサイズ(平均直径)は0.1〜10μmを、硫化物の面積率は0.1〜10%を満足しており、材料加工中の割れはなく、被削性も満足している。
比較例1〜9は、成分が本発明の範囲外での例である。比較例1および3はNi濃度およびSi濃度が低く、引張強さが劣っている。比較例2はNi濃度およびSi濃度が高く、導電率が劣っている。比較例4はNi濃度およびSi濃度が高く、冷間加工時に割れが生じた。比較例5はS濃度が低く硫化物の面積率が小さくなり被削性が劣った。比較例6および7はS濃度が高く硫化物の面積率が増加し、熱間加工時に割れが発生した。比較例8および9は、Sn、Mn、Co、Zr、Ti、Fe、Cr、Al、P、Znの総量が2.0mass%を越え、導電率が劣った。
従来例1、2は快削りん青銅および快削ベリリウム銅である。本発明例の銅合金展伸材は、従来例1、2の材料のように環境負荷物質を含有することなく、従来例1、2と同等以上の特性を得ることができる。
Figure 2011231394
(実施例2)
表1の本発明例6および本発明例16の合金成分にて、実験用の小型の鋳型(25mm×25mm×300mm)を用い、鋳型の予熱温度を変化させる等により鋳造時の冷却速度を変化させた小型鋳塊を作製した。得られた鋳塊を温度950℃で熱間圧延し、直に水中焼入れを行い、直径20mmの丸棒を得た。次いで前記丸棒を冷間にて引抜きを行い直径10mmの丸棒を製造し、さらに温度450℃で2時間時効熱処理を行った。このようにして得られた各々の銅合金展伸材(丸棒)のサンプルについて、[1]引張強度、[2]導電率、[3]被削性を前記実施例1と同様の方法により調べ、硫化物のサイズ(平均直径)と面積率についても同様に前記の方法により求めた。結果を表2に示す。
Figure 2011231394
表2の本発明例26〜29は本発明例6と同じ合金成分、本発明例30〜33は本発明例16と同じ合金成分で、冷却速度を本発明の範囲内に変化させた例である。冷却速度を大きくすると硫化物のサイズ(平均直径)が小さくなる傾向があるが、何れも本発明の範囲内であり、優れた被削性が得られている。表2の比較例10、11は本発明例6と同じ合金成分、比較例12、13は本発明例16と同じ合金成分で、冷却速度を本発明の範囲外とした例である。冷却速度が遅い場合は(比較例10および12)、硫化物のサイズ(平均直径)が大きくなり、冷間または熱間加工中に割れが生じた。冷却速度が速い場合は(比較例11および13)、硫化物のサイズ(平均直径)が0.1μm未満となり、被削性が不良となっている。
(実施例3)
表1の本発明例6および本発明例16の合金成分にて、実施例1の方法でφ2mmおよびφ7mmの丸棒を作製した。これらの丸棒について、NC旋盤を用いて図1および図2に示す様なコネクタピンを各1000個作製した。その結果、切削屑の加工部品への絡み付きや、工具磨耗による寸法変化なく、部品の加工が出来た。なお切削条件は、外径加工は、回転数を3000rpm、送り速度を1回転あたり0.02mmとし、穴あけ加工は、回転数を2500rpm、送り速度を1回転あたり0.03mmとし、切削油を使用した。
図1の形状のコネクタピンについて、ピン材の特性として必要である挿抜性を評価した。評価方法は、加工後のピンにφ0.92mmのピンゲージを差し込んで挿抜力を測定し(初期値T0)、続いて同じピンを繰り返し500回の抜き差しを行った後に、再度挿抜力を測定し(T1)、初期値に対する割合T1/T0を求めた。T1/T0が大きい方が挿抜力の低下が小さく、コネクタピンとしての性能が良好であるといえる。評価は5本のピンについて行い、平均値を求めた。比較のため、表1の従来例1および2の材料についても評価を行った。結果を表3に示す。
表3より、本発明例は従来例2の快削ベリリウム銅と同等の挿抜性を示し、優れたコネクタピンであることが分かる。従来例1の快削りん青銅の挿抜性は、本発明例よりも劣っており、長期使用時に接触不良が懸念されるものとなった。
Figure 2011231394

Claims (6)

  1. Niを1.5〜7.0mass%、Siを0.3〜2.3mass%、Sを0.02〜1.0mass%含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金展伸材であって、硫化物が分散しており、該硫化物の平均直径は0.1〜10μmであり、該硫化物の面積率は0.1〜10%であり、かつ、引張強さが500MPa以上、導電率が25%IACS以上であることを特徴とする銅合金展伸材。
  2. Niを1.5〜7.0mass%、Siを0.3〜2.3mass%、Sを0.02〜1.0mass%含有し、さらに、Sn、Mn、Co、Zr、Ti、Fe、Cr、Al、PおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも1種を総量で0.05〜2.0mass%含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金展伸材であって、硫化物が分散しており、該硫化物の平均直径は0.1〜10μmであり、該硫化物の面積率は0.1〜10%であり、かつ、引張強さが500MPa以上、導電率が25%IACS以上であることを特徴とする銅合金展伸材。
  3. 前記硫化物が、Cu−S、Mn−S、Zr−S、Ti−S、Fe−S、Al−S、Cr−S、及びZn−Sからなる群から選ばれる少なくとも1種類である、請求項1または請求項2に記載の銅合金展伸材。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金展伸材を切削加工して形成された銅合金部品。
  5. 電子機器部品、構造部品、または要素部品に用いられる、請求項4に記載の銅合金部品。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金展伸材を製造する方法であって、鋳造時の冷却速度を0.1〜50℃/秒とすることを特徴とする銅合金展伸材の製造方法。
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