次に、本発明の種々の実施形態について詳細に参照する。その1または複数の実施例を図に例示する。各実施例は、本発明の説明として与えており、本発明の限定を意味するものではない。たとえば、一実施形態の一部として例示または説明する特徴を、他の実施形態上でまたは他の実施形態とともに用いて、さらに他の実施形態をもたらすことができる。本発明にはこのような変更および変形が含まれることが意図されている。
以下の図面の説明において、同じ参照番号は同じ構成部品を指している。一般的に、個々の実施形態に関する違いのみについて説明する。図面に示す構造は、縮尺に従って示しているわけではなく、むしろ実施形態の理解をより良好にできることに役立つだけである。
図1は、風力エネルギー・システム100(風力タービンとも言われる)の概略図である。風力エネルギー・システム100は、タワー110を備え、その最上端には装置ナセル120が取り付けられている。そこに、3つのロータ・ブレード140を有するハブ130が取り付けられている。
ハブ130は、装置ナセル120の外側端に取り付けられている。ハブは一般的に、風力エネルギー・システム100の装置ナセル120の内部に配置された発電機(図示せず)に接続されていても良い。ハブは典型的には、実質的に水平軸の周りに回転可能である。図1には示していないが、2つの軸受とテーパ・アダプタとが配置されて、ハブの回転軸の傾斜角を調整するための傾斜調整システムが与えられている。
「傾斜角」は、本明細書で用いる場合、ロータ面(ロータ・ブレードが位置する)と垂直方向との間の角度であると理解しなければならない。ロータ面は、ロータ・ブレードの実際の3次元配置の理想化した2次元表現と理解しても良い。特に、ロータ・ブレードは必ずしも単一面内には配置されておらず、円錐状の体積を画定していても良い。この場合、ロータ面は、円錐の軸方向に延びる部分の中に配置される。
典型的には、本明細書において用語「水平方向」とともに示す面または線は、地球の中心を通って延びる線に少なくとも局所的に垂直な面または線であると理解しなければならない。たとえば、水平面は重力の方向に垂直である。垂直方向は実質的に水平方向に直角である。
図2を参照して、本明細書で説明する実施形態による傾斜調整システムについて説明する。
図2は、本明細書で説明する実施形態による風力エネルギー・システムに対する傾斜調整システムの概略図である。図2に示す傾斜調整システムは、第1の軸受170(下部ヨー軸受170とも言われる)を備えている。さらに、傾斜調整システムは、下部ヨー軸受170の最上部に配置されたアダプタ175を備えている。アダプタの最上部には、第2の軸受180が配置されている。第2の軸受180は上部ヨー軸受180と言うこともできる。アダプタ175はテーパになっていて、アダプタ175が2つの傾斜面を有し、一方の表面は第1の軸受170に接続され、第2の表面は第2の軸受180に接続されるようになっている。
第2のヨー軸受を、わずかな傾斜角で第1および下部ヨー軸受に加えることによって、風況が変化する間の傾斜角の調整が可能になっている。本明細書で説明する実施形態によれば、2つの軸受間に位置するアダプタが提供されている。アダプタはテーパになっていて、2つの軸受がわずかな傾斜角で配置されるようになっている。本明細書において、用語「わずかな傾斜」または用語「テーパになっている」には、アダプタの2つの表面間の角度が0.1°〜15.0°であることが含まれる。他の実施形態によれば、最大角は5.0°または10.0°である。実施形態によれば、最大角は3.0°〜8.0°である。本明細書で説明するさらなる実施形態においては、2つの軸受が、風力エネルギー・システムのナセルとシャフトとの間に配置されている。用語「接続される」は、本明細書で用いる場合、部品の直接接続または何らかの間接的な連結(たとえば、付加的なアダプタまたは他の部品、たとえばワッシャなど)を指す。直接接続には、ネジ、ボルト、または溶接継手が含まれていても良い。
本明細書で説明する典型的な実施形態には、少なくとも2つの軸受と、軸受間の少なくとも1つのテーパ・アダプタとが含まれている。2つのテーパ・アダプタを1つの軸受によって接続したものが含まれる実施形態によって、ナセルのロール角を一定に保ちながら傾斜角を調整する可能性が得られる。ナセルのロール角は、水平面の周りの角度として理解される。本明細書で説明する典型的な実施形態は、アダプタを軸受に一体化すること、または軸受を傾斜位置に取り付けることが含まれている。アダプタとの一体型軸受も、軸受またはアダプタに言及する際に包含される。
典型的な実施形態においては、3つのヨー軸受と2つのテーパ・アダプタとが交互に位置する構成を用いて、ナセルのヨー角度、ロール角、および傾斜角を調整する。当然のことながら、アダプタは2つの軸受間に取り付けられ、中央の軸受は2つのアダプタ間に取り付けられている。これらの実施形態(図12を参照して後により詳細に説明する)では、角度を水平方向に変えることもできる。より詳細には、傾斜角度を、0°と最大で2つのテーパ・アダプタのテーパ角の合計の角度との間で、変えることができる。
ナセル120は第2の軸受180に接続されている。ナセル120に取り付けられたハブ130は回転軸190の周りに回転可能である。回転軸190の傾斜角は調整することができる。実際には、回転軸190の傾斜角は、第1の軸受170および第2の軸受180の角度位置(すなわち、ナセル120に対するアダプタ175の相対位置)によって決まる。
本明細書で説明する実施形態においては、第1または下部軸受が、風力エネルギー・システムのタワー上に取り付けられている。テーパ・アダプタが第1の軸受の最上部に配置され、第2の軸受または上部ヨー軸受がテーパ・アダプタの最上部に配置されている。ナセルは第2の軸受に取り付けられている。ナセルに取り付けられたハブの回転軸の傾斜角は、第2の軸受を回転させることによって、調整することができる。しかし、第2の軸受を回転させると、傾斜角およびヨー角度の両方が変更されることに注意されたい。そのため、ヨー角度を調整するために第1の軸受が設けられている。第1の軸受と第2の軸受とを反対方向に回転させることによって、アダプタのみが回転し、ヨー角度を一定に保ちながら傾斜角のみを変えることができる。
本明細書で説明する実施形態では典型的に、より高いレベルのエネルギー利用が、比較的低いコスト影響で実現される。正確には、エネルギー収量を最大で数パーセント上昇させることができる。特に吹上げ条件の場合には、本明細書で説明する実施形態によって、より高い風力エネルギー収量が示される。本明細書で説明する典型的な実施形態の第1の軸受と第2の軸受との少なくとも一方を、滑り軸受として配置する。滑り軸受によって、軸受および他の部品にかかる力を小さくするための閾値が与えられる。軸受におけるトルクが閾値を超えると、軸受は滑り始まるため、前記力が小さくなる。ヨー軸受は、ころ軸受、滑り軸受、または両方の組み合わせとすることができる。典型的な実施形態では、直接駆動発生器またはギアボックス機構を用いる。
用語「吹上げ」は、本明細書で説明したように、典型的には、水平面に対して上方に送られる流れを意味する。
典型的な実施形態においては、最大傾斜角は風速に対して選択する。低風速(たとえば、風速として約0.1〜10.0m/s)では、より高い負の最大傾斜角が許容され、より高風速(たとえば、風速として20.0〜25.0m/s、約30.0m/s以下)では、最大傾斜角を小さくして、ロータ・ブレードとタワーとの間の隙間を大きくする。低風速と高風速との間の範囲(たとえば、10.0m/s〜20.0m/sの範囲)では、移行的方策を行なっても良い。移行的方策の例では、傾斜角は、風速の実際の値だけでなく、風速の履歴によっても決まっても良い。その結果、ヒステリシス式制御を移行的状況において実施する。用語負の傾斜角は、ハブが下方を向く傾斜角を指す。一般的に、用語「最大傾斜角」は、ロータ・ブレードとタワーとの間の最低限必要な静的間隔を示す動作状態を指す。この最低限必要な静的間隔は、動的な風負荷に起因する風況によって決まる。本明細書で説明するさらなる実施形態においては、最大傾斜角をある特定の値、たとえば、水平角に対する最大値として3°〜12°、典型的には4°〜10°、より典型的には5°〜8°に設定する。
図3に、本明細書で説明する実施形態による風力エネルギー・システムを示す。図3は、風力エネルギー・システム100の幾何学的配置の単純化した図面である。さらに図3には、風速表示器200および風向表示器210も示す。典型的な実施形態においては、これらの部品を用いて、風速値または風向値をコントローラに供給する。コントローラは、軸受を制御し、傾斜角および他の角度たとえばヨー角度を調整する。
典型的な実施形態には、ナセルに直接取り付けられた風速表示器と風向表示器とが含まれる。さらなる実施形態には、付加的な外部風速表示器または風向表示器が含まれる。これらの外部表示器は、遠隔サイト(たとえば、風力エネルギー・システムのタワーから50メートル以上離れている)に配置することができる。さらなる実施形態には、風力エネルギー・システムのタワーに取り付けられた表示器が含まれる。典型的な実施形態には、風速および風向を決めるための表示器が含まれる。吹上げを、風向表示器を用いて測定することもできるし、風力エネルギー・システムが配置されるサイトにおける典型的な条件から計算することもできる。典型的な実施形態において用いるさらなる技術は、ブレードが回転するときにブレードにかかる負荷を分析して吹上げを検出することである。典型的な実施形態では、このデータを用いて最適な傾斜角および最適なヨー角度を決めて、風力エネルギー・システムの収量を向上させる。風向測定値を用いて、最も適切な傾斜角を検出することができる。
図3には、本明細書で説明する典型的な実施形態のいくつかの角度を示す。ロータ・ブレード140は、ハブの中心の周りの回転平面から傾いている。円錐角220は、典型的には0.1°〜13°、より典型的には0.5°〜12.0°、さらにより典型的には1.5°〜7.0°である。また、図3には吹上角230を示す。また、図3には傾斜角240を示す、吹上角230と傾斜角240との合計はズレ角度250に等しい。図3では、風向は矢印260で示していることに注意されたい。
図4および5に、図1に示す実施形態のヨー軸受170および180の2つの異なる角度位置を例示する。図4および5では、ナセルと風力エネルギー・システムのハブが取り付けられているシャフトとが図4および5から省かれている。これらの図は、図1に示す風力エネルギー・システムおよび図2に示す傾斜調整システムの断面図と考えることができる。
図4および5では、台板300が第2または上部ヨー軸受180の最上部に配置されているのが分かる。さらに、下部の第1の軸受170に対する2つの軸受駆動部310と、上部の第2の軸受180に対する2つの上部の軸受駆動部320とを示す。軸受駆動部310、320を用いて、軸受170および180の角度位置を調整する。軸受170および180の位置を調整することによって、傾斜調整システムのヨー角度265と傾斜角240とを変更することができる。
典型的な実施形態では、軸受当たり2つの軸受駆動部を用いる。本明細書で説明する他の典型的な実施形態では、軸受当たり4つまたは1つだけの軸受駆動部を用いる。軸受駆動部を多くすれば、軸受の位置決めをより強力にすることができる。軸受駆動部を少なくするか1つの軸受駆動部だけであれば、エネルギー消費量が小さくなる。本明細書で説明する実施形態では典型的に、台板を用いる。本明細書で説明する実施形態によるさらなる風力エネルギー・システムでは、立体骨組または他の骨組を主骨組として用いる。
図6〜9に、本明細書で説明する実施形態によるグースネック型風力エネルギー・システム100を示す。グースネック型風力エネルギー・システム100は、第1の軸受170が取り付けられたグースネック400を備えている。
図6および7に示す実施形態においては、アダプタ175が第1の軸受170に取り付けられている。アダプタ175によって、発電機420が取り付けられたギアボックス410が支持されている。ギアボックス410は、アダプタ175の壁にフレキシブル・マウント430によって取り付けられている。さらに、第2の軸受180がアダプタ175に取り付けられている。また、付加的な軸受440がアダプタ175に取り付けられている。第2の軸受180と付加的な軸受440とによって、シャフト450が支持されている。ハブ130は、シャフト450に取り付けられている(図6および7には示さず)。やはり、シャフト450とハブとは、回転軸190の周りに回転可能である。アダプタ175はテーパになっていて、軸受170および180の回転軸が傾斜するようになっている。
本明細書で説明する典型的な実施形態においては、第1の軸受がグースネック型ナセルに取り付けられていて、テーパ・アダプタが第1の軸受に取り付けられている。アダプタの壁の内側には、ギアボックスが、単純なフレキシブル・マウントによって取り付けられている。ギアボックスは、本明細書で説明する他の実施形態においては、支柱によって取り付けられている。支柱またはフレキシブル・マウントは、シャフトのトルク力を受けることを注意されたい。第1の軸受を回転させることによって、シャフトの傾斜角を、フレキシブル・マウントにかかる負荷に影響を与えることなく、調整することができる。第2の軸受はシャフトに対する主の軸受として用いられている。典型的なグースネック型実施形態には、ヨー角度を変えるためにグースネックの下方にヨー軸受が含まれている。グースネック型実施形態のヨー軸受は、第1および第2の軸受に対して付加的なものである。
本明細書で説明するさらなる実施形態においては、ギアボックスはグースネックに取り付けられていて、伸縮継手がシャフトに接続されている。ギアボックス入力シャフトが伸縮継手に接続されている。したがって、トルクがシャフトから伸縮継手に移され、そこからギアボックス入力シャフトに移されて、ギアボックスに伝達される。ギアボックスをグースネックに取り付けることによって、第1の軸受が回転したときにギアボックスは回転しない。したがって、この実施形態によって、オイル戻りラインの位置が同じに保たれるので、オイル戻りラインの取り扱いが容易になる。さらに、トルクを、グースネックに直接伝達することができ、第1の軸受上に伝達する必要がない。
図7では、図6の風力エネルギー・システムの別の位置を示している。第1の軸受170を約180°回転させて、回転軸190の傾斜角がその最初の傾斜角と比べて異なるようになっている。さらに、第1の軸受170の中間位置を傾斜角の調整用に用いることができる。第1の軸受170の回転を用いて、実際の風流入角度に対する傾斜角を調整することができる。実際の風流入角度は、長時間に渡って安定であるわけではない。
図8および9に、本明細書で説明する実施形態による別の配置を示す。ギアボックスは典型的に、調整可能な支持部材を介してグースネックに取り付けられている。調整可能な支持部材は図8の油圧シリンダ470である。図8に示す実施形態の第1の軸受170を回転させると、ギアボックス410がその垂直位置を変える。しかしギアボックス410は、ハブの回転軸に対するその角度位置を保たなければならないため、この角度位置を保つために油圧シリンダ470が必要である。第1の軸受170を回転させるときに、油圧シリンダ470を作動させてギアボックス410の位置を調整しなければならない。
図8に示す実施形態においては、オイル戻りライン810はギアボックス410の真下に留まる。さらに、軸受摩擦トルクのみを第1の軸受170によって伝達しなければならない。第1の軸受170によって伝達されるトルクは、軸受駆動部(図6〜9には示さず)に作用することに注意されたい。したがって、選択した軸受に対する伝達トルクは小さいことが望ましい。再び、図8および9に示す第1の軸受170は位置が異なるため、回転軸190の傾斜角が異なり、ギアボックス410の位置が異なっている。
本明細書で説明する典型的な実施形態によれば、油圧シリンダをトルク・アームとして用いる。本明細書で説明するさらなる実施形態においては、電動モータを用いてギアボックスの垂直位置を変える。
図6〜9に示す実施形態に関して、傾斜軸を傾けるためのメカニズムは、ある程度の角変位を傾斜軸の周りに起こすことができる伸縮継手とすることもできることに注意されたい。このような伸縮継手は、油圧技術または電気によって駆動することができる。典型的な実施形態においては、トルク・アームはリンク機構タイプである。油圧シリンダは、動作が良好で、エネルギー消費が小さく、それほど多くのスペースを必要としない。
図10に、図8および9のトルク・アーム470を概略的な断面図で示す。またギアボックス410を断面図で示す。ギアボックス410は2つのトルク・アーム470に取り付けられている。トルク・アーム470は油圧シリンダであり、均圧線480によって接続されている。均圧線480によって、ギアボックス410の回転を抑えることができる。この結果、トルク・アーム470が取り付けられているグースネック400の壁に対する力が小さくなる。
本明細書で説明する典型的な実施形態によれば、トルク・アームは、均圧線によって接続された油圧シリンダである。この機構によって、支持壁に対する最大力が小さくなる。本明細書で説明するさらなる実施形態においては、バネをトルク・アームとして用いる。バネは、メンテナンスを必要とせず、また最大力が小さい。さらなる典型的なグースネック型実施形態においては、第2の軸受およびギアボックス支持部材を適切に配置することによって、支持部材の長さを調整する必要がなくなる場合がある。
以下、本明細書で説明する実施形態による典型的な方法について開示する。一般的に、風速表示器および風向表示器を用いて、設定傾斜角および設定ヨー角度を決める。タービン風力測定、または他のセンサの組み合わせによって、実際の条件下での吹上角を決める働きをしても良い。設定傾斜角の計算は、測定した風速値に従って、コントローラを用いることによって行なう。その結果、典型的な現地条件を考慮して、風の吹上角を推定することができる。現地条件は、異なる風向および異なる風速値に対して異なる吹上角を与える表中に記憶することができる。最後に、計算した設定傾斜角が、風速に応じて計算した最大傾斜角よりも小さいか否かを判定するためのチェックを行なう。比較的高風速では(たとえば、風速として、20.0〜25.0m/s、約30.0m/s以下では)、安全上の制約があるために、小さい傾斜角のみが存在するか、または全く存在しない可能性がある。ロータ・ブレードと風力エネルギー・システムのタワーとが接触することは回避しなければならない。したがって、最大傾斜角は風速によって決まる。さらに加えて、測定した風向値(風向表示器によって測定する)を考慮して設定ヨー角度を決める。
図11に、どの傾斜角シータθ(本明細書で説明する他の図において参照番号240)が、風速度V_wind121に応じて許容されるかを示す。上述の許容される傾斜角は、図11に示す曲線122である。風速が増したら、傾斜角を増加させなければならず、またハブの回転軸を上方に向けて、ロータ・ブレードとタワーとが接触するのを防止しなければならない。本明細書において、傾斜角とともに用いる表現「増加させる」、「より高い」、または他の比較可能な表現は、必ずしも傾斜角の数値減少または数値増加を意味するものではない。たとえば、傾斜角を、ハブがわずかに上方を向く位置に変更することも、表現「傾斜角を増加させる」に含まれる。一態様は、タワーとロータ・ブレードとの間に十分な隙間を設けることである。
設定ヨー角度と設定傾斜角とを決めた後、コントローラは、第1および第2の軸受を作動させて、ナセルを風力タービンの動作に最適な方向に位置付ける。これは、第1の軸受と第2の軸受との少なくとも一方を回転させて、テーパ・アダプタが正確な角度位置に設定されるようにすることによって、行なわれる。当然のことながら、図6〜9によるさらなる実施形態も、コントローラを用いて位置付けることができる。しかし当然のことながら、これらの実施形態の場合、傾斜角を、単に第1の軸受を回転させるだけで(ヨー角度に影響を与えることなく)直接変更することができる。
図12は、本明細書で説明する実施形態による風力エネルギー・システムの傾斜調整システムの概略図である。図12に示す傾斜調整システムは、第1の軸受または下部ヨー軸受170を備えている。傾斜調整システムではさらに、下部ヨー軸受170の最上部に配置されたアダプタ175を備えている。アダプタ175は第1のテーパ・アダプタ175とも言われる。中央のヨー軸受500が、第1のテーパ・アダプタ175の最上部に配置され、その上に第2のテーパ・アダプタ510が配置されている。第2のテーパ・アダプタ510の最上部には、上部ヨー軸受180が配置されていて、軸受とテーパ・アダプタとを交互の順番で積み重ねたものが与えられるようになっている。
本明細書で説明する実施形態による風力エネルギー・システムとして、3つの軸受と2つのアダプタとを積み重ねた順番で有するシステムにより、ナセルのヨー角度、ロール角、および傾斜角の調整を互いに独立に行なうことができる。さらなる典型的な実施形態は、傾斜角の調整を可能にするために、互いに傾斜した軸受の組み合わせと軸受間のテーパ・アダプタとを含んでいる。軸受およびアダプタを、ナセルとタワーとの間またはナセルとシャフトとの間に配置することができる。ナセル下の傾斜した軸受とさらなる垂直方向の軸受との組み合わせおよびシャフトを支持するアダプタも可能である。
図13および14に、本明細書で説明する実施形態によるさらなる2つの配置を示す。両実施形態は、キング・ピン・タービンの一部であり、ロータと駆動列の一部とはキング・ピンの周りに回転する。キング・ピンは典型的に、2つの部分からなる可動接続部である。典型的には、キング・ピンは、風力エネルギー・システムの発電機を取り付けても良いピンである。
図13には、本明細書で説明する実施形態による傾斜調整システムを示す。図示した実施形態では、キング・ピン550が用いられ、その上に中空のシャフト450が第2の軸受180によって取り付けられている。図13および14に関連して、語句「シャフト」はドライブシャフト(中空であっても良い)の意味で用いられる。シャフト450およびハブ130は、回転軸190の周りに回転する。回転軸190は、キング・ピン550の長手軸に平行である。さらに、テーパ・アダプタ175が、キング・ピン550と一体的に形成されている。テーパ・アダプタ175は、一体形成のキング・ピン550とともに、水平軸の周りに回転可能である。テーパ・アダプタ175は、キング・ピン550と一体になった傾斜したアダプタと言うこともできる。傾斜した回転軸が、キング・ピン550とともに一体型のテーパ・アダプタ175によって形成される。図13および14では、傾斜した回転軸を回転軸190として示す。回転軸の軸は、能動型の傾斜軸受(すなわち第1の軸受170)に対して非垂直である。第1の軸受170を用いて、テーパ・アダプタ175および一体的に形成されたキング・ピンを水平軸の周りに回転させる。一体的に形成されたテーパ・アダプタ175のテーパ形状とキング・ピン550とにより、ハブ130の回転190の軸が、第1の軸受170の回転により傾く。したがって、図13に示す実施形態においては、第1の軸受を傾斜軸受と解釈することができる。第2の軸受180をシャフト軸受と言うことができる。なお、図13に示す実施形態では、シャフト450から遠隔発電機への動力伝達を行なうために、ポンプ560による静圧駆動を用いていることに注意されたい。
図14には、本明細書で説明する実施形態による別の傾斜調整システムを示す。図示した実施形態では、キング・ピン550が用いられ、その上に中空のシャフト450が第2の軸受180によって取り付けられている。したがって、図14に示す実施形態は、図13に示したものに類似している。しかし、図14に示す実施形態は、直接駆動発生器とともに用いることに適している。ロータをシャフト450に取り付けることができる。ステータがシャフト450に対して同心円状に位置するであろう。
本明細書で説明する実施形態によれば、風力エネルギー・システムとキング・ピン配置を伴う傾斜調整システムとを用いて、コンパクトな風力エネルギー・システムを構築することができる。静圧駆動または直接駆動によっても、コンパクトなシステムが提供される。グースネック型構成を用いて、タワーとブレードとの間の隙間を大きくすることができ、その結果、傾斜角を選ぶ際の自由度が高まる。傾斜角を、本明細書で説明する種々の実施形態を用いて変更することができる。典型的な動力伝達では、静圧駆動、動圧駆動、ギアボックス駆動、または直接駆動を用いる。他の駆動システムを、本明細書で説明する実施形態と組み合わせることもできる。
この書面の説明では、実施例を用いて、本発明を、ベスト・モードも含めて開示するとともに、どんな当業者も本発明を実施できるように、たとえば任意の装置またはシステムを作りおよび用いること、ならびに取り入れた任意の方法を実行することができるようにしている。本発明を種々の特定の実施形態に関して説明してきたが、当業者であれば分かるように、本発明は請求項の趣旨および範囲内の変更を用いて実施することができる。特に、前述した実施形態の相互に非排他的な特徴を互いに組み合わせても良い。本発明の特許可能な範囲は、請求項によって定められるとともに、当業者に想起される他の実施例を含んでいても良い。このような他の実施例は、請求項の文字通りの言葉使いと違わない構造要素を有するか、または請求項の文字通りの言葉使いとの差が非実質的である均等な構造要素を含む場合には、請求項の範囲内であることが意図されている。