本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。なお、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしも互いの縮尺を保って記載されるものではない。さらに、各図面を見やすくするために、一部の符号を省略する。
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態の蓄圧式消火器100の全体外観図である。本実施形態の蓄圧式消火器100は、消火剤60(例えば、粉末消火剤又は中性強化液)が収容された消火剤貯蔵容器10と、消火剤貯蔵容器10の底部と嵌合して消火剤60を支持する支持台50と、消火剤貯蔵容器10の上方に配設される消火器用ハンドレバー30と、消火剤貯蔵容器10内に貯蔵される消火剤60を消火器用ハンドレバー30に導くためのサイホン管70と、消火器用ハンドレバー30を操作することによりサイホン管70と流通可能に接続される消火剤ホース40とを備える。
また、消火器用ハンドレバー30は、蓋体31、固定レバー32、起動レバー33、起倒杆34、及び安全栓35を備えている。本実施形態では、安全栓35が起倒杆34と係合することにより、起動レバー33が固定レバー32に対して回動不可能な状態に固定される。また、安全栓35が起倒杆34との係合状態から解放されると、起動レバー33が固定レバー32に対して回動可能な状態になる。
本実施形態の消火剤貯蔵容器10は、ポリエチレンナフタレート(PEN)によって形成される。また、図1乃至図3に示すように、本実施形態の消火剤貯蔵容器10は、開口部12を備える一方、金属製の消火剤貯蔵容器のような継ぎ目が形成されていない。
図2は、消火剤貯蔵容器10の正面図である。なお、図2において、便宜上、消火剤貯蔵容器の部位を説明するための破線と実線とを設けている。本実施形態における消火剤貯蔵容器10は、消火剤貯蔵部11と、消火剤貯蔵部11の上部に位置する開口部に形成される雄ネジ部12とで構成される。この雄ネジ部12と消火器用ハンドレバー30とが螺合することにより、消火剤貯蔵容器10と消火器用ハンドレバー30とが固定される。なお、消火剤貯蔵容器10と消火器用ハンドレバー30との固定手段は、螺合に限られず、公知の接合手段が適用され得る。
図3は、消火剤貯蔵容器10の正面断面図である。なお、図3において、便宜上、消火剤貯蔵容器10の肉厚を示すための矢印と、口部91の肉厚を表示するために、口部91の断面形状を延長するための破線とを設けている。本実施形態の消火剤貯蔵容器10の口部91の肉厚(T1)は、2mm以上8mm以下であり、曲面を持つ肩部92の肉厚(T2)は、1.2mm以上12mm以下である。また、円筒状の胴部93の肉厚(T3)は、1.2mm以上1.9mm以下であり、曲面を持つ底部94の肉厚(T4)は、1.2mm以上12mm以下である。
また、本実施形態の消火剤貯蔵容器10の胴部93の肉厚は、0.9mm以上5mm以下であることが好ましい。これは、樹脂の厚さが0.9mmよりも薄いと、消火剤の貯蔵容器として求められる強度(例えば、2.4MPa)を達成できなくなるおそれが高まる一方、5mmよりも厚ければ、経済的に好ましくないとともに内容物たる消火剤を視認し得る樹脂性消火剤貯蔵容器の利点の達成が困難になるおそれが高まるためである。上述の観点によれば、胴部93の肉厚は、0.9mm以上3mmであることがより好ましく、1mm以上3mm以下であることが更に好ましい。
ここで、本実施形態の蓄圧式消火器100の軽量化を確認すると、従来の鉄製の消火剤貯蔵容器を備える消火器と比べて、全体として重量を約70%に減少させることができた。消火器としての最軽量化を実現することで、火災時において老若男女を問わず誰もが最も使い易い消火器となり消火活動がし易い状況を提供することができる。
次に、本実施形態の蓄圧式消火器100の製造方法について説明する。まず、消火剤貯蔵容器10は、延伸ブロー成形、溶融整形などの従来公知の樹脂成形方法により製造することができるが、この中でも、開口部を除いて、継ぎ目がなく、成形状態が良好で、かつ適度な肉厚の容器が得られる点で、延伸ブロー成形が好ましい。
その後、消火器用ハンドレバー30の一部である蓋体31と消火剤貯蔵容器10の雄ネジ部12とが螺合されることによって、消火剤貯蔵容器10が閉塞される。その閉塞の後、蓋体31が備える弁棒を一時的に開状態とすることにより、窒素(N2)ガスとヘリウム(He)が、消火器用ハンドレバー30におけるホース40のための接続部を介して消火剤貯蔵容器10内に封入された。
ここで、蓄圧式消火器100の製造においては、各部品の組み立てが適切に行われているか否かを判断するために、消火剤貯蔵容器10内に上述のガスが封入された後、各部品の接触部からの封入ガスの漏れ(部品間漏れ)を調べることが求められる。他方、本実施形態の消火貯蔵容器10は樹脂製であるため、各部品の接触部のみならず、金属製の消火剤貯蔵容器が採用されているときには考慮する必要がなかった消火貯蔵容器10自身を通過するガスの漏れ(通過漏れ)をも新たな問題として考慮された。すなわち、発明者らは、本実施形態の樹脂製の消火剤貯蔵容器10は継ぎ目がないため、その容器自体の部品間漏れは存在しないが、前述の「通過漏れ」を考慮しなければ信頼性の高い蓄圧性消火器を得ることが極めて困難であることを知見した。
そこで、本実施形態では、上述の「通過漏れ」を「部品間漏れ」と峻別するために、蓄圧式消火器100の製造に先立ち、蓄圧式消火器100のガス漏れ量の測定とは別に、消火剤貯蔵容器10のガスバリアー性の測定も行われた。
図4は、ガスバリアー性の測定を行うためのガス透過量の測定装置80の構成図である。また、図5A乃至図5Cは、それぞれガス透過量の測定装置80を用いて測定されたデータである。また、図6は、蓄圧式消火器100のガス漏れ量の測定装置190を示す概要図である。本実施形態では、蓄圧式消火器100の製造工程の一工程として、封入されたガスの漏れ量が測定される。
まず、ガス透過量の測定装置80について説明する。図4に示すように、測定用試料84(具体的には、消火剤貯蔵容器10より切り出した試験片)の上流側空間81aには測定用ガスのガスボンベ82が配置され、このガスボンベ82から送り出された測定用ガスの圧力は、上流側空間81a内において0.3MPaに設定される。この圧力は、連成計83によって測定される。一方、下流側空間81bは、ロータリーポンプ88及びターボ分子ポンプ87によって十分に排気されるため、高真空状態となっている。また、測定試料84は、ヒーター調整器85bに接続するヒーター85aによって40℃になるように調整される。なお、一般的に、蓄圧式消火器が設置される場所の温度は−30℃〜40℃であるため、その範囲のうちで最も高い温度条件下でガスバリアー性を測定することは、最も厳しい条件での測定となるため有意義である。
ところで、比較的に検出が容易な軽元素ガスである水素(H2)やヘリウム(He)ガスは、迅速なガス漏れ及びその量の測定を可能にする。従って、消火剤貯蔵容器10内へのガスの適切な封入の確認、換言すれば蓄圧性の確認を行うためには、少なくとも後で詳述するガス漏れ量の測定装置190によって検出可能な量の軽元素ガスを消火剤貯蔵容器10内に封入する必要がある。
その結果、樹脂製の消火剤貯蔵容器10にとって本来ならば好ましくないヘリウム(He)ガスのような軽元素ガスを、そのリークの確認のために封入せざるを得ない状況が生まれることになる。従って、特に我が国において要求される、製造から8年間の安定した蓄圧性を確保する観点から、発明者らは、消火剤貯蔵容器10内に封入するガスの種類、その比率、及びその圧力を次のとおり定めた。
本実施形態では、消火剤貯蔵容器10内に窒素(N2)ガスとヘリウム(He)ガスとの混合ガスが封入される。ここで、消火剤貯蔵容器10の容積から消火剤60の体積を減じた値(以下、「エアスペース1」という。)は、消火剤が粉末消火剤(例えば、第1リン酸アンモニウムを主成分とする粉末状消火剤)の場合は2033cm3であり、消火剤が中性強化液(例えば、カリウム塩又はアンモニウム塩を主成分とする中性強化液)の場合は、1140cm3である。また、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスのモル数と軽元素ガスとしてのヘリウム(He)ガスのモル数とを合算した全モル数に対するヘリウム(He)ガスのモル数の比率は、1%以上10%未満とした。ここで、その比率を1%以上としたのは、リーク測定システム100において、「通過漏れ」の経時的な増加に影響されるノイズ(N)レベルに対するシグナル(S)の比として1.5以上を得るためである。加えて、ノイズとは、本測定における、いわゆるバックグラウンドとして存在する値と経時変化しうる「通過漏れ」による値との合計である。また、閾値とは、製造される蓄圧式消火器が良品として許容されるガス漏れの量の上限値であり、前述のシグナル(S)を意味する。具体的には、この閾値は、以下の式から算出される。
すなわち、本実施形態における閾値は、軽元素ガスであるヘリウム(He)ガスが存在しない場合の、不活性ガスである窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器10内圧力から0.7MPaを減じた値に、全てのガスのモル数に対する軽元素ガスのモル数の比率を乗じた結果を、耐用年数に対応する秒数で割った値をいう。
また、上述の比率を10%未満としたのは、仮に、本実施形態の消火剤貯蔵容器10を備えた蓄圧式消火器が室温(例えば、20℃)において設置された場合、その封入工程から8年間、消火剤貯蔵容器10内の圧力を所定圧力(例えば、0.7MPa)以上に維持することを可能にするためである。その結果、例えば、蓄圧式消火器の点検時にその蓄圧性を保持するための追加的なガスの封入作業が不要となる。
なお、本実施形態のガス漏れ量の測定における具体的な閾値は、以下のように設定された。
(1)消火剤が粉末消火剤の場合、閾値が6.14×10−8Pa・m3/sに設定された。
(2)消火剤が中性強化液の場合、閾値が3.55×10−8Pa・m3/sに設定された。
以上を踏まえて、ガス透過量の測定装置80の構成を用いて、所定時間内に上流側空間81aから下流側空間81bに透過した測定用ガスの量を測定することにより、透過するガス量が測定された。ここで、ガス透過量の測定装置80による測定用ガスは、窒素(N2)ガスとヘリウム(He)ガスの混合ガスとした。上述のガスボンベ82内には、この混合ガスが収容されている。より具体的には、この混合ガスにおいては、窒素(N2)ガスのモル数とヘリウム(He)ガスのモル数とを合算した全モル数に対するヘリウム(He)ガスのモル数の比率が10%に設定された。この数値は、上述のヘリウム(He)ガスの混合比率の範囲のうち、最もリーク測定において厳しい条件を超える値として設定された。また、図4に示すように、透過するガス量は、レコーダー86bを備えた四重極ガス分析計86aを用いて測定された。なお、この分析計におけるガス測定器は、ULVAC(アルバック株式会社)製の「ベーシックプロセスガスモニタ Qulee BGM−102R」である。
ここで、本実施形態では、蓄圧式消火器100は、顔料としてぺリノン系レッドを含有するポリエチレンナフタレート(PEN)によって形成された消火剤貯蔵容器10を備えている。具体的には、本実施形態の消火剤貯蔵容器10は、マスターバッチ(顔料とPENとを混合したもの)が混合されたポリエチレンナフタレート(PEN)で形成された。なお、本実施形態では、マスターバッチは、ポリエチレンナフタレート(PEN)100部に対してぺリノン系レッド1.3部の割合で混合することにより形成された。また、ポリエチレンナフタレート(PEN)に対し、前述のマスターバッチが10%の割合で混合された。比較例のために、前述のマスターバッチが全く混合されない消火剤貯蔵容器も作製された。図5Aは、本実施形態において製造された蓄圧式消火器100における消火剤貯蔵容器10のガスバリアー性の測定結果である。
また、本実施形態の変形例として、消火剤貯蔵容器10に含まれる顔料が、ペリノン系レッドの代わりに酸化チタン(TiO2)である点を除き、蓄圧式消火器100と同じ構成を備えた蓄圧式消火器150についてもガスバリアー性の測定が行われた。なお、本実施形態の蓄圧式消火器150は、顔料として酸化チタン(TiO2)を含有するポリエチレンナフタレート(PEN)によって形成された消火剤貯蔵容器20を備えている。具体的には、本実施形態の消火剤貯蔵容器20は、マスターバッチ(顔料とPENとを混合したもの)が混合されたポリエチレンナフタレート(PEN)で形成されている。なお、本実施形態では、マスターバッチは、ポリエチレンナフタレート(PEN)100部に対して酸化チタン(TiO2)0.13部の割合で混合することにより形成される。また、ポリエチレンナフタレート(PEN)に対し、前述のマスターバッチが10%の割合で混合される。
図5Bは、本実施形態の変形例において製造された蓄圧式消火器150における消火剤貯蔵容器20のガスバリアー性の測定結果である。
図5A及び図5Bに示すとおり、顔料を含有するポリエチレンナフタレート(PEN)によって形成された消火剤貯蔵容器10を用いることにより、測定開始から少なくとも1200秒間は、5.0×10−9Pa・m3/s未満の量しか軽元素ガスが通過しないことが確認された。
さらに、前述の各マスターバッチが全く混合されない、すなわち顔料が全く含まれていない樹脂を用いた消火剤貯蔵容器のガスバリアー性も、ガス透過量の測定装置80を用いて測定された。図5Cは、その結果を示している。図5Cに示すように、顔料が全く含まれていない消火剤貯蔵容器を用いた場合であっても、少なくとも600秒間は、消火剤貯蔵容器内に封入されたガスが2.5×10−9Pa・m3/s未満の量しか軽元素ガスが通過しないことが確認された。
また、発明者らが上述のガスバリアー性をさらに詳しく調査した結果、前述のガス透過量の測定装置80において測定用ガスをヘリウム(He)ガスのみとした場合、顔料を含有しない消火剤貯蔵容器であっても、ヘリウム(He)ガスがそれらの容器を透過する量が、40℃下の飽和状態において3.7×10−7(Pa・m3・mm)/(cm2・s・MPa)以下であることが分かった(但し、単位中の「s」は秒である。)。従って、前述の測定用ガスを、ヘリウム(He)ガス10%(モル比率)と不活性ガスである窒素(N2)ガス90%(モル比率)との混合ガスとした場合は、その透過量が、3.7×10−8(Pa・m3・mm)/(cm2・s・MPa)以下であることが分かった。加えて、顔料を含有する消火剤貯蔵容器10,20を用いると、その透過量が、3.2×10−7(Pa・m3・mm)/(cm2・s・MPa)以下であることが分かった。従って、前述の測定用ガスを、ヘリウム(He)ガス10%(モル比率)と不活性ガスである窒素(N2)ガス90%(モル比率)との混合ガスとした場合は、その透過量が、3.2×10−8(Pa・m3・mm)/(cm2・s・MPa)以下であることが分かった。従って、これらのようなガスバリアー性の高い容器は、蓄圧式消火器としての機能を発揮させる上で、好適な例であることが分かる。
加えて、上述の2つのガス漏れの態様がさらに詳しく分析された結果、消火剤貯蔵容器10,20内に封入されているガスのうち、「通過漏れ」によるガス漏れが、実質的に軽元素ガスであるヘリウム(He)ガスのみに起因していると考えても支障が無いことが分かった。
上述の各調査及びそれらの分析の結果、及び消火剤貯蔵容器10,20へのガスの封入工程に要する時間が長くても20秒であることを踏まえ、以下の知見が得られた。
(1)消火剤貯蔵容器10,20が蓋体31によって閉塞され、その後ガスが封入されてから少なくとも10分間(600秒間)は、消火剤貯蔵容器10,20内に封入されたガスの「通過漏れ」が発生しないか又は発生したとしても「部品間漏れ」の測定に影響を及ぼさないと考えても支障はない。換言すれば、ガスが封入されてから少なくとも10分間(600秒間)は、上述のノイズ(N)に対して閾値が1.5倍以上という状況を確保することができるため、生産の安定性などの量産性の観点で有利である。
(2)消火剤貯蔵容器10,20が蓋体31によって閉塞され、その後ガスが封入されてから少なくとも10分間(600秒間)において、上述の閾値を超える軽元素であるヘリウム(He)ガスが検出された場合は、「部品間漏れ」であると特定することができる。
そこで、発明者らは、蓄圧式消火器100の製造工程の一工程として、蓄圧性を維持するための最も大きな障害となる「部品間漏れ」の問題を確度高く発見するために、消火剤貯蔵容器10,20と消火器用ハンドレバー30とが螺合され、その後ガスが封入されてから10分(600秒)以内に、ガス漏れ(部品間漏れ)量を測定することとした。
以下に、図6に示すガス漏れ量の測定装置190を用いた測定方法について説明する。本実施形態では、蓄圧式消火器100の製造工程の一工程として、封入されたガスの漏れ量が測定された。
図6に示すように、まず、消火剤貯蔵容器10,20が蓋体31によって閉塞され、その後ガスが封入された蓄圧式消火器の中間品110が、チャンバー192内に収められる。排気ポンプ194によりチャンバー192内のガスが十分に排気された後、測定部196により測定が開始される。なお、本実施形態の測定部196は、公知の測定器(ヤマハファインテック株式会社製、型式YLD−200A)が用いられた。なお、図を簡便にするために、測定部196を排気するポンプは図示されていない。ところで、本実施形態では、蓄圧式消火器100のガス漏れ量を測定するにあたり、蓄圧式消火器の中間品110には安全栓35及び消火剤ホース40が取り付けられていない。上述のとおり、製造工程における部品間漏れを精度良く検知するためには所定時間内(例えば、10分以内)にガス漏れを測定することが要求されるため、この測定に不要な部品の取り付け時間が省かれる。
なお、上述のとおり、特に、量産を視野に置いた蓄圧式消火器の製造方法の一部としてのガス漏れ量の測定においては、次々と製造される蓄圧式消火器のガス漏れ量を極めて迅速に測定することが求められる。従って、そのような要求を満たすためにも、検出が比較的容易な前述のヘリウム(He)ガスに代表される軽元素ガスによるガス漏れ量の測定が行われることが好ましい。
発明者らは、上記観点に加えて蓄圧式消火器100が設置される環境(特に、温度変化)を考慮した。その結果、発明者らは、特に我が国において要求される、製造から8年間の安定した蓄圧性を確保するために、消火剤貯蔵容器10,20内に封入するガスの種類、その比率、及びその圧力を次のとおり定めた。
本実施形態では、上述のとおり、消火剤貯蔵容器10,20内に窒素(N2)ガスとヘリウム(He)ガスとの混合ガスが封入される。ここで、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスのモル数と軽元素ガスとしてのヘリウム(He)ガスのモル数とを合算した全モル数に対するヘリウム(He)ガスのモル数の比率は、7%である。加えて、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスのみの消火剤貯蔵容器10,20内の圧力は、20℃下で、約0.88MPaになるように封入される。
なお、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器10,20内の圧力が、20℃において、0.7MPa以上0.91MPa以下となるようにガスが封入されることは、ヘリウム(He)ガスが時間の経過とともに「通過漏れ」が生じたとしても十分な蓄圧性を保持できる点で好ましい。
上述のとおり、本実施形態では、特定の比率及び特定の圧力範囲でヘリウム(He)ガスと窒素(N2)ガスが封入されているため、蓄圧式消火器100が室温(例えば、20℃)において設置される場所では、その蓄圧性を長期間(本実施形態では、8年間)安定して維持することができる。すなわち、本実施形態の蓄圧式消火器100は、8年間、消火剤貯蔵容器10,20内の圧力を0.7MPa以上に維持することが可能となる。その結果、例えば、その蓄圧性を保持するための追加的なガスの封入作業が不要となる。
さらに、本実施形態の蓄圧式消火器100によれば、ヘリウム(He)ガスが適切な範囲で封入されているため、特に、製造工程における部品間漏れを確度高く検知することができる。従って、樹脂製の消火剤貯蔵容器を備えていても、信頼性及び量産性の高い蓄圧式消火器100が得られる。
なお、全てのガスのモル数に対する軽元素ガスのモル数の比率が8%以下に設定されることは、長期間の蓄圧性の確保及び封入されるガスのコストの低減の観点から、さらに好ましい一態様である。また、本実施形態では、ガス漏れ量の測定装置190を用いて測定する際に、S/N比が1.5に設定されたが、S/N比はこの値に限定されない。例えば、S/N比が3、あるいは4以上に設定されることも他の採用され得る態様である。特に、量産性又は信頼性を高めるために、S/N比を4以上に設定することは、好ましい一態様である。
ところで、上述の第1の実施形態及びその変形例では、ぺリノン系レッド及び酸化チタンのいずれであっても、マスターバッチの混合率が10%以下であれば、樹脂としての利点である内容物(消火剤)の視認性を維持しうる。このように、樹脂製の消火剤貯蔵容器10,20に顔料としてマスターバッチを含有させることは、内容物である消火剤を適度に視認させうる状態にして美観を高めるだけでなく、特に蓄圧式の消火器にとって重要な性能であるガスバリアー性の向上にも寄与しうる。
なお、本実施形態は、前述の混合率が10%を超えることを妨げるものではない。発明者らによる調査の結果、前述の混合率が5%乃至30%の範囲内であれば、その混合割合の増加に伴って消火剤貯蔵容器10,20のガスバリアー性が向上したことが確認された。しかし、前述の混合率が10%を超えると、樹脂の透光性が低下するために、内容物である消火剤を適度に視認することが難しくなる可能性が高まるため、好ましくない。
<第2の実施形態>
本実施形態の蓄圧式消火器200は、第1の実施形態の消火剤貯蔵容器10内に封入されているガスの圧力が異なることを除き、第1の実施形態の諸条件、及び製造方法と同じである。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
本実施形態でも、消火剤貯蔵容器10内に窒素(N2)ガスとヘリウム(He)ガスとの混合ガスが封入される。ここで、本実施形態のエアスペース1は、2033cm3である。また、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスのモル数と軽元素ガスとしてのヘリウム(He)ガスのモル数とを合算した全モル数に対するヘリウム(He)ガスのモル数の比率が7%である。加えて、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスのみの消火剤貯蔵容器10内の圧力は、20℃下で、約0.88MPaになるように封入される。
なお、本実施形態において、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器10内の圧力が、20℃において、0.7MPa以上0.86MPa以下となるようにガスが封入されることは、ヘリウム(He)ガスが時間の経過とともに「通過漏れ」が生じたとしても十分な蓄圧性を保持できる点で好ましい。
上述のとおり、本実施形態では、特定の比率でヘリウム(He)ガスと窒素(N2)ガスが封入されているため、蓄圧式消火器200が、比較的高温の場所(例えば、20℃以上40℃以下)に設置される場合であっても、その蓄圧性を長期間(本実施形態では、8年間)安定して維持することができる。すなわち、本実施形態の蓄圧式消火器200は、8年間、消火剤貯蔵容器10内の圧力を0.7MPa以上に維持することが可能となる。その結果、例えば、その蓄圧性を保持するための追加的なガスの封入作業が不要となる。
さらに、本実施形態の蓄圧式消火器200によれば、ヘリウム(He)ガスが適切な範囲で封入されているため、特に、製造工程における部品間漏れを確度高く検知することができる。従って、樹脂製の消火剤貯蔵容器を備えていても、信頼性及び量産性の高い蓄圧式消火器200が得られる。
<第3の実施形態>
本実施形態の蓄圧式消火器300は、第1の実施形態の消火剤貯蔵容器10内に封入されているガスの圧力が異なることを除き、第1の実施形態の諸条件、及び製造方法と同じである。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
本実施形態でも、消火剤貯蔵容器10内に窒素(N2)ガスとヘリウム(He)ガスとの混合ガスが封入される。ここで、本実施形態のエアスペース1は、2033cm3である。また、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスのモル数と軽元素ガスとしてのヘリウム(He)ガスのモル数とを合算した全モル数に対するヘリウム(He)ガスのモル数の比率が7%である。加えて、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスのみの消火剤貯蔵容器10内の圧力は、20℃下で、約0.88MPaになるように封入される。
なお、本実施形態において、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器10内の圧力が、20℃において、0.81MPa以上0.91MPa以下となるようにガスが封入されることは、ヘリウム(He)ガスが時間の経過とともに「通過漏れ」が生じたとしても十分な蓄圧性を保持できる点で好ましい。
上述のとおり、本実施形態では、特定の比率でヘリウム(He)ガスと窒素(N2)ガスが封入されているため、蓄圧式消火器300が、比較的低温の場所(例えば、−20℃以上20℃以下)に設置される場合であっても、その蓄圧性を長期間(本実施形態では、8年間)安定して維持することができる。すなわち、本実施形態の蓄圧式消火器300は、8年間、消火剤貯蔵容器10内の圧力を0.7MPa以上に維持することが可能となる。その結果、例えば、その蓄圧性を保持するための追加的なガスの封入作業が不要となる。
さらに、本実施形態の蓄圧式消火器300によれば、ヘリウム(He)ガスが適切な範囲で封入されているため、特に、製造工程における部品間漏れを確度高く検知することができる。従って、樹脂製の消火剤貯蔵容器を備えていても、信頼性及び量産性の高い蓄圧式消火器300が得られる。
<第4の実施形態>
本実施形態の蓄圧式消火器400は、第1の実施形態の消火剤貯蔵容器10内に封入されているガスの圧力が異なることを除き、第1の実施形態の諸条件、及び製造方法と同じである。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
本実施形態でも、消火剤貯蔵容器10内に窒素(N2)ガスとヘリウム(He)ガスとの混合ガスが封入される。ここで、本実施形態のエアスペース1は、2033cm3である。また、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスのモル数と軽元素ガスとしてのヘリウム(He)ガスのモル数とを合算した全モル数に対するヘリウム(He)ガスのモル数の比率が7%である。加えて、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスのみの消火剤貯蔵容器10内の圧力は、20℃下で、約0.88MPaになるように封入される。
なお、本実施形態において、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器10内の圧力が、20℃において、0.81MPa以上0.86MPa以下となるようにガスが封入されることは、ヘリウム(He)ガスが時間の経過とともに「通過漏れ」が生じたとしても十分な蓄圧性を保持できる点で好ましい。
上述のとおり、本実施形態では、特定の比率でヘリウム(He)ガスと窒素(N2)ガスが封入されているため、蓄圧式消火器400が、比較的低温の場所から比較的高温の場所(例えば、−20℃以上40℃以下)のいずれの温度条件下に設置される場合であっても、その蓄圧性を長期間(本実施形態では、8年間)安定して維持することができる。すなわち、本実施形態の蓄圧式消火器400は、8年間、消火剤貯蔵容器10内の圧力を0.7MPa以上に維持することが可能となる。その結果、例えば、その蓄圧性を保持するための追加的なガスの封入作業が不要となる。
さらに、本実施形態の蓄圧式消火器400によれば、ヘリウム(He)ガスが適切な範囲で封入されているため、特に、製造工程における部品間漏れを確度高く検知することができる。従って、樹脂製の消火剤貯蔵容器を備えていても、信頼性及び量産性の高い蓄圧式消火器400が得られる。
<第5の実施形態>
本実施形態の蓄圧式消火器500は、第1の実施形態の消火剤貯蔵容器10よりも小さい消火剤貯蔵容器25が採用されていること、及び消火剤貯蔵容器25内に封入されているガスの圧力が異なることを除き、第1の実施形態の諸条件、及び製造方法と同じである。従って、本実施形態n消火剤貯蔵容器25のエアスペース1の容積は、第1の実施形態の消火剤貯蔵容器10のエアスペース1よりも小さい。なお、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
本実施形態でも、消火剤貯蔵容器25内に窒素(N2)ガスとヘリウム(He)ガスとの混合ガスが封入される。ここで、本実施形態のエアスペース1は、1734cm3である。また、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスのモル数と軽元素ガスとしてのヘリウム(He)ガスのモル数とを合算した全モル数に対するヘリウム(He)ガスのモル数の比率が8%である。加えて、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスのみの消火剤貯蔵容器25内の圧力は、20℃下で、約0.88MPaになるように封入される。
なお、本実施形態において、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器25内の圧力が、20℃において、0.7MPa以上0.9MPa以下となるようにガスが封入されることは、ヘリウム(He)ガスが時間の経過とともに「通過漏れ」が生じたとしても十分な蓄圧性を保持できる点で好ましい。
上述のとおり、本実施形態では、特定の比率でヘリウム(He)ガスと窒素(N2)ガスが封入されているため、蓄圧式消火器500が、室温(例えば、20℃)において設置される場所を考慮した場合、その蓄圧性を長期間(本実施形態では、8年間)安定して維持することができる。すなわち、本実施形態の蓄圧式消火器500は、8年間)、消火剤貯蔵容器25内の圧力を0.7MPa以上に維持することが可能となる。その結果、例えば、その蓄圧性を保持するための追加的なガスの封入作業が不要となる。
さらに、本実施形態の蓄圧式消火器500によれば、ヘリウム(He)ガスが適切な範囲で封入されているため、特に、製造工程における部品間漏れを確度高く検知することができる。従って、樹脂製の消火剤貯蔵容器を備えていても、信頼性及び量産性の高い蓄圧式消火器500が得られる。
<第6の実施形態>
本実施形態の蓄圧式消火器600は、第5の実施形態の消火剤貯蔵容器25内に封入されているガスの圧力が異なることを除き、第5の実施形態の諸条件、及び製造方法と同じである。従って、第1又は第5の実施形態と重複する説明は省略され得る。
本実施形態でも、消火剤貯蔵容器25内に窒素(N2)ガスとヘリウム(He)ガスとの混合ガスが封入される。ここで、本実施形態のエアスペース1は、1734cm3である。また、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスのモル数と軽元素ガスとしてのヘリウム(He)ガスのモル数とを合算した全モル数に対するヘリウム(He)ガスのモル数の比率が8%である。加えて、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスのみの消火剤貯蔵容器25内の圧力は、20℃下で、約0.88MPaになるように封入される。
なお、本実施形態において、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器25内の圧力が、20℃において、0.7MPa以上0.844MPa以下となるようにガスが封入されることは、ヘリウム(He)ガスが時間の経過とともに「通過漏れ」が生じたとしても十分な蓄圧性を保持できる点で好ましい。
上述のとおり、本実施形態では、特定の比率でヘリウム(He)ガスと窒素(N2)ガスが封入されているため、蓄圧式消火器600が、比較的高温の場所(例えば、20℃以上40℃以下)に設置される場合であっても、その蓄圧性を長期間(本実施形態では、8年間)安定して維持することができる。すなわち、本実施形態の蓄圧式消火器600は、8年間、消火剤貯蔵容器10内の圧力を0.7MPa以上に維持することが可能となる。その結果、例えば、その蓄圧性を保持するための追加的なガスの封入作業が不要となる。
さらに、本実施形態の蓄圧式消火器600によれば、ヘリウム(He)ガスが適切な範囲で封入されているため、特に、製造工程における部品間漏れを確度高く検知することができる。従って、樹脂製の消火剤貯蔵容器を備えていても、信頼性及び量産性の高い蓄圧式消火器600が得られる。
<第7の実施形態>
本実施形態の蓄圧式消火器700は、第5の実施形態の消火剤貯蔵容器25内に封入されているガスの圧力が異なることを除き、第5の実施形態の諸条件、及び製造方法と同じである。従って、第1又は第5の実施形態と重複する説明は省略され得る。
本実施形態でも、消火剤貯蔵容器25内に窒素(N2)ガスとヘリウム(He)ガスとの混合ガスが封入される。ここで、本実施形態のエアスペース1は、1734cm3である。また、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスのモル数と軽元素ガスとしてのヘリウム(He)ガスのモル数とを合算した全モル数に対するヘリウム(He)ガスのモル数の比率が8%である。加えて、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスのみの消火剤貯蔵容器25内の圧力は、20℃下で、約0.88MPaになるように封入される。
なお、本実施形態において、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器25内の圧力が、20℃において、0.811MPa以上0.9MPa以下となるようにガスが封入されることは、ヘリウム(He)ガスが時間の経過とともに「通過漏れ」が生じたとしても十分な蓄圧性を保持できる点で好ましい。
上述のとおり、本実施形態では、特定の比率でヘリウム(He)ガスと窒素(N2)ガスが封入されているため、蓄圧式消火器700が、比較的低温の場所(例えば、−20℃以上20℃以下)に設置される場合であっても、その蓄圧性を長期間(本実施形態では、8年間)安定して維持することができる。すなわち、本実施形態の蓄圧式消火器700は、8年間、消火剤貯蔵容器10内の圧力を0.7MPa以上に維持することが可能となる。その結果、例えば、その蓄圧性を保持するための追加的なガスの封入作業が不要となる。
さらに、本実施形態の蓄圧式消火器700によれば、ヘリウム(He)ガスが適切な範囲で封入されているため、特に、製造工程における部品間漏れを確度高く検知することができる。従って、樹脂製の消火剤貯蔵容器を備えていても、信頼性及び量産性の高い蓄圧式消火器700が得られる。
<第8の実施形態>
本実施形態の蓄圧式消火器800は、第5の実施形態の消火剤貯蔵容器25内に封入されているガスの圧力が異なることを除き、第5の実施形態の諸条件、及び製造方法と同じである。従って、第1又は第5の実施形態と重複する説明は省略され得る。
本実施形態でも、消火剤貯蔵容器25内に窒素(N2)ガスとヘリウム(He)ガスとの混合ガスが封入される。ここで、本実施形態のエアスペース1は、1734cm3である。また、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスのモル数と軽元素ガスとしてのヘリウム(He)ガスのモル数とを合算した全モル数に対するヘリウム(He)ガスのモル数の比率が8%である。加えて、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスのみの消火剤貯蔵容器25内の圧力は、20℃下で、約0.88MPaになるように封入される。
なお、本実施形態において、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器25内の圧力が、20℃において、0.811MPa以上0.844MPa以下となるようにガスが封入されることは、ヘリウム(He)ガスが時間の経過とともに「通過漏れ」が生じたとしても十分な蓄圧性を保持できる点で好ましい。
上述のとおり、本実施形態では、特定の比率でヘリウム(He)ガスと窒素(N2)ガスが封入されているため、蓄圧式消火器800が、比較的低温の場所から比較的高温の場所(例えば、−20℃以上40℃以下)のいずれの温度条件下に設置される場合であっても、その蓄圧性を長期間(本実施形態では、8年間)安定して維持することができる。すなわち、本実施形態の蓄圧式消火器800は、8年間、消火剤貯蔵容器10内の圧力を0.7MPa以上に維持することが可能となる。その結果、例えば、その蓄圧性を保持するための追加的なガスの封入作業が不要となる。
さらに、本実施形態の蓄圧式消火器800によれば、ヘリウム(He)ガスが適切な範囲で封入されているため、特に、製造工程における部品間漏れを確度高く検知することができる。従って、樹脂製の消火剤貯蔵容器を備えていても、信頼性及び量産性の高い蓄圧式消火器800が得られる。
<第9の実施形態>
本実施形態の蓄圧式消火器900は、第5の実施形態の消火剤貯蔵容器25内に封入されているガスの圧力が異なること、及び耐用年数が第1乃至第8の実施形態の耐用年数よりも短いことを除き、第5の実施形態の諸条件、及び製造方法と同じである。従って、第1又は第5の実施形態と重複する説明は省略され得る。
本実施形態でも、消火剤貯蔵容器25内に窒素(N2)ガスとヘリウム(He)ガスとの混合ガスが封入される。ここで、本実施形態のエアスペース1は、934cm3である。また、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスのモル数と軽元素ガスとしてのヘリウム(He)ガスのモル数とを合算した全モル数に対するヘリウム(He)ガスのモル数の比率が7%である。加えて、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスのみの消火剤貯蔵容器25内の圧力は、20℃下で、約0.88MPaになるように封入される。
なお、本実施形態において、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器25内の圧力が、20℃において、0.81MPa以上0.86MPa以下となるようにガスが封入されることは、ヘリウム(He)ガスが時間の経過とともに「通過漏れ」が生じたとしても十分な蓄圧性を保持できる点で好ましい。
上述のとおり、本実施形態では、特定の比率でヘリウム(He)ガスと窒素(N2)ガスが封入されているため、蓄圧式消火器900が、比較的低温の場所から比較的高温の場所(例えば、−20℃以上40℃以下)のいずれの温度条件下に設置される場合であっても、その蓄圧性を長期間(本実施形態では、5年間)安定して維持することができる。すなわち、本実施形態の蓄圧式消火器900は、5年間、消火剤貯蔵容器10内の圧力を0.7MPa以上に維持することが可能となる。その結果、例えば、その蓄圧性を保持するための追加的なガスの封入作業が不要となる。
さらに、本実施形態の蓄圧式消火器900によれば、ヘリウム(He)ガスが適切な範囲で封入されているため、特に、製造工程における部品間漏れを確度高く検知することができる。従って、樹脂製の消火剤貯蔵容器を備えていても、信頼性及び量産性の高い蓄圧式消火器900が得られる。
<第10の実施形態>
ところで、上述の各実施形態では、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスのモル数と軽元素ガスとしてのヘリウム(He)ガスのモル数とを合算した全モル数に対するヘリウム(He)ガスのモル数の比率が7%であったが、その比率は7%に限定されない。例えば、前述のヘリウム(He)ガスのモル数の比率が8%である場合、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の、窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器10内の圧力が、20℃において所定の圧力範囲内であれば、上述の各実施形態の効果と同様の効果が奏され得る。具体的には、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の、窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器10内の圧力が、20℃において、0.811MPa以上0.844MPa以下となるようにガスが封入されることにより、比較的低温の場所から比較的高温の場所(例えば、−20℃以上40℃以下)のいずれの温度条件下に設置される場合であっても、その蓄圧性を長期間安定して維持することができる。
<第11の実施形態>
ところで、上述のヘリウム(He)ガスのモル数の比率が5%である場合についても、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の、窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器10内の圧力が、20℃において所定の圧力範囲内であれば、上述の各実施形態の効果と同様の効果が奏され得る。具体的には、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の、窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器10内の圧力が、20℃において、0.811MPa以上0.872MPa以下となるようにガスが封入される。これにより、比較的低温の場所から比較的高温の場所(例えば、−20℃以上40℃以下)のいずれの温度条件下に設置される場合であっても、消火剤貯蔵容器10の蓄圧性を長期間(例えば、8年間)安定して維持することができる。
<その他の実施形態>
また、上述の各実施形態では、「部品間漏れ」の検出に資するため、軽元素ガスとしてヘリウム(He)ガスが消火剤貯蔵容器10,20内に封入されているが、ヘリウム(He)ガスに代えて水素(H2)ガスが封入された場合であっても、本実施形態の効果の少なくとも一部の効果が奏され得る。しかしながら、使用時に消火剤貯蔵容器10,20に保持されているガスは消火剤とともに消火対象に向けて放出される場合があるため、水素(H2)ガスのように非常に燃えやすい性質を持つガスが含まれることは望ましくない。そのため、上述の各実施形態のようにヘリウム(He)ガスを採用することが好ましい。
また、上述の第1の実施形態では、消火剤貯蔵容器10内の混合ガスについては、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスのモル数と軽元素ガスとしてのヘリウム(He)ガスのモル数とを合算した全モル数に対するヘリウム(He)ガスのモル数の比率は、7%である。しかし、その比率は7%に限定されない。例えば、その比率を、ガス漏れ量の測定装置190による測定にとっての下限値である1%に設定した場合、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器10内の圧力が、20℃において、0.7MPa以上0.97MPa以下となるようにガスが封入されることにより、ヘリウム(He)ガスが時間の経過とともに「通過漏れ」が生じたとしても十分な蓄圧性を保持し得る。
また、上述の第2の実施形態における消火剤貯蔵容器10内の混合ガスについても、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスのモル数と軽元素ガスとしてのヘリウム(He)ガスのモル数とを合算した全モル数に対するヘリウム(He)ガスのモル数の比率が7%に限定されない。例えば、その比率を、上述と同様に1%に設定した場合、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器10内の圧力が、20℃において、0.7MPa以上0.91MPa以下となるようにガスが封入されることにより、比較的高温の場所(例えば、20℃以上40℃以下)に設置される場合であっても、その蓄圧性を長期間(例えば、8年間)安定して維持することができる。
加えて、上述の第3の実施形態における消火剤貯蔵容器10内の混合ガスについても、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスのモル数と軽元素ガスとしてのヘリウム(He)ガスのモル数とを合算した全モル数に対するヘリウム(He)ガスのモル数の比率が7%に限定されない。例えば、その比率を、上述と同様に1%に設定した場合、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器10内の圧力が、20℃において、0.81MPa以上0.97MPa以下となるようにガスが封入されることにより、比較的低温の場所(例えば、−20℃以上20℃以下)に設置される場合であっても、その蓄圧性を長期間(例えば、8年間)安定して維持することができる。
さらに、上述の第4の実施形態における消火剤貯蔵容器10内の混合ガスについても、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスのモル数と軽元素ガスとしてのヘリウム(He)ガスのモル数とを合算した全モル数に対するヘリウム(He)ガスのモル数の比率が7%に限定されない。例えば、その比率を、上述と同様に1%に設定した場合、ヘリウム(He)ガスが存在しない場合の窒素(N2)ガスの消火剤貯蔵容器10内の圧力が、20℃において、0.81MPa以上0.91MPa以下となるようにガスが封入されることにより、比較的低温の場所から比較的高温の場所(例えば、−20℃以上40℃以下)のいずれの温度条件下に設置される場合であっても、その蓄圧性を長期間(例えば、8年間)安定して維持することができる。
また、上述の各実施形態では、消火剤貯蔵容器を形成する樹脂中に含有する顔料が、ペリノン系レッド又は酸化チタン(TiO2)であったが、採用される顔料はそれらに限定されない。例えば、アンスラキノン系レッドやシアニン系ブルーが前述の顔料に代えて採用されても、上述の各実施形態の効果と同様の効果が奏され得る。
また、上述の各実施形態では、不活性ガスとして窒素(N2)ガスが採用されているが、不活性ガスは窒素(N2)ガスに限定されない。例えば、窒素(N2)ガスの一部又は全部がアルゴン(Ar)ガスに変更されても良い。但し、製造コストを低減する観点から言えば、不活性ガスとして窒素(N2)ガスのみが採用されることが好ましい。
また、例えば第1の実施形態では、消火剤貯蔵容器10のうち、最も肉厚の薄い領域の厚みに基づいて「所定時間」を算出したが、その算出方法は、測定において最も安全な基準、換言すれば、最も「通過漏れ」を生じる可能性が低い状況を基準としている。従って、「所定時間」はそれ以外の基準に基づいて算出され得る。例えば、図1に示すような状況の密閉領域が形成される場合、口部91の肉厚(T1)と肩部92の肉厚(T2)のうち最も薄い肉厚である1.2mmを基準として「所定時間」が算出されても上述の実施形態の効果と同等の効果が奏され得る。この場合、「所定時間」は500秒となる。つまり、「所定時間」が肉厚の変化に応じて一定の範囲で変動しうることは当業者であれば理解できる。
また、上述の第1の実施形態では、「所定時間」を10分に設定しているが、特に、消火剤貯蔵容器を構成する樹脂が顔料を含有する場合はガスバリアー性が向上するため、図5A等に示されるように、例えば、「所定時間」を1200秒とすることも、第1の実施形態の変形例となる。逆に、量産性ないし生産性を高めるため、「所定時間」を10分よりも短い時間、例えば30秒、2分、5分、又は7分に設定することも上述の各実施形態及び既述の各数値データに基づいて可能となる。
また、上述の各実施形態では、消火剤貯蔵容器を構成する樹脂としてポリエチレンナフタレート(PEN)が採用されているが、採用される樹脂はこれに限定されない。例えば、ジカルボン酸成分として主にナフタレンジカルボン酸またはテレフタル酸、ジオール成分として主にエチレングリコール又はブタンジオールを用いて重縮合させて得られたポリエステル樹脂又はこれらのポリエステル樹脂を主とする材料が消火剤貯蔵容器の材料として採用されても、本発明の少なくとも一部の効果が奏されると考えられる。換言すれば共重合ポリエステル樹脂であれば、本発明の少なくとも一部の効果が奏されると考えられる。
また、他の採用し得る材料の一例として、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリスチレン、又はポリカーボネートが挙げられる。但し、上述の全ての材料の中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)を採用することが、強度の観点から好ましい。また、ガスバリアー性の観点から、ポリエチレンナフタレート(PEN)が単独で採用されることが最も好ましい。すなわち、ポリエチレンナフタレート(PEN)を採用することにより、高強度でかつガスバリアー性に優れた消火剤貯蔵容器がより確度高く得られる。
また、上述の各実施形態の消火器の消火剤貯蔵容器に収容される消火剤の種類は特に限定されない。消火剤容器を構成する樹脂への影響がない限り、公知のいかなる消火剤も採用することできる。また、消火剤の収容方法、及びホースやノズルなどの構成部品の材質と形状等については、従来から提案されているものを適宜採用することができる。
また、上述の第1の実施形態では、安全栓35が取り付けられていなかったが、安全性の観点から、その測定の際に安全栓35によって起動レバー33を誤動作しないように固定することも他の好ましい一態様である。
加えて、上述の各実施形態の消火器の消火剤貯蔵容器の外周表面上に公知の被膜フィルムや公知の顔料を含むフォルムが配置されていてもよい。例えば、消火器の製造メーカー名や消火器の性能を示すための記述や装飾が施されたフィルムは広く一般的に利用されているが、それらの使用は上述の各実施形態の効果を妨げない。
さらに、上述の各実施形態の効果が損なわれない添加剤であれば、消火剤貯蔵容器を構成する樹脂は、変色の防止や耐候性の向上のために、光安定剤、紫外線吸収剤、又は老化防止剤などの公知の添加剤が適宜配合され得る。
なお、上述の各実施形態の開示は、それらの実施形態の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。