JP2011223650A - ハーネスプロテクタの固定構造 - Google Patents

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秀一郎 住田
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Abstract

【課題】ハーネスプロテクタにおける二つの係止クリップ間の寸法誤差や、各係止クリップを係合させるパネルの各孔間の寸法誤差を簡単な構造で低コストで確実に吸収させる。
【解決手段】ワイヤハーネス5に長手方向の前後一対の係止クリップ11,11’を固定し、ワイヤハーネスをハーネスプロテクタ1,1’内に収容し、ハーネスプロテクタの一壁部2に一対の係止クリップの係止部本体10,10’よりも大径な前後一対の孔部3,3’を設け、一対の係止部本体を一対の孔部に遊嵌に貫通した状態でパネル12の前後一対の孔部13に係合させるハーネスプロテクタの固定構造を採用する。係止クリップ11を係止部本体10と、係止部本体の付け根側に設けられたばね部7とで構成し、ハーネスプロテクタ1の孔部3をばね部よりも大径に、又は小径に形成した。
【選択図】図1

Description

本発明は、ワイヤハーネスを収容したハーネスプロテクタにおける一対の係止クリップを取付側のパネルの各孔部に係止させるハーネスプロテクタの固定構造に関するものである。
図7は、従来のハーネスプロテクタの固定構造の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
この構造は、前後一対の係止クリップ52を有する合成樹脂製のハーネスプロテクタ51の前後端に可撓部53とそれに続くハーネス固定板54とを設けて、グロメット55を装着した車両の垂直なパネル56から係止クリップ52までの距離Lを調整自在として、車両の水平なパネル57の孔58に係止クリップ52を確実に係合させるようにしたものである。
図8は、従来のハーネスプロテクタの固定構造の他の形態を示すものである(特許文献2参照)。
この構造は、複数本の電線で成るワイヤハーネス62に一つのバンドクリップ63を装着固定し、バンドクリップ63の係止クリップ64をハーネスプロテクタ61の孔65に係合させると共に、パネル66の孔67に隙間をもって貫通させた状態で、プロテクタ61をボルト68でパネル66に締付固定したものである。特許文献2には、プロテクタ61の孔65とパネル66の孔67との径を同一として両孔65,67に係止クリップ64を隙間なく係合させる例も記載されている。
上記以外のハーネスプロテクタの固定構造として、特許文献3には、一つのハーネスプロテクタに前後二つの係止クリップを前後方向(ハーネス挿通方向)に一定範囲スライド自在に係合させたことが記載されている(図示せず)。
特開平8−275331号公報(図1) 特開2003−23723号公報(図2,図3) 特開2003−274533号公報(図1,図5)
しかしながら、上記従来の特許文献1に記載された図7の構造にあっては、プロテクタ51の前後二つの係止クリップ52の間の距離や水平なパネル57の前後二つの孔58の間の距離にばらつきを生じた場合に、係止クリップ52を孔にスムーズに係合させることができないという問題を生じてしまう。この問題を解消するべく、一方の孔58を円形、他方の孔58を長円形に形成して、二つの係止クリップ52間の寸法誤差を吸収することは公知であるが、この場合は、各孔58の設定や形成が面倒でコスト高になるという問題を生じてしまう。
また、上記従来の特許文献2に記載された図8の構造にあっては、特に係止クリップ64をパネル66の孔67に隙間をもって貫通させた際に、係止クリップ64とパネル孔67との位置ずれを吸収させることはできるが、二つの係止クリップ64をパネル66の各孔67に係合させる際において、各係止クリップ64と各孔67との位置ずれを吸収させることはできなかった。
また、上記従来の特許文献3に記載された構造にあっては、各係止クリップをプロテクタにスライド係合させることで、構造が複雑化・高コスト化するという問題を生じてしまう。
本発明は、上記した点に鑑み、ハーネスプロテクタにおける二つの係止クリップの間の寸法誤差や、各係止クリップを係合させるパネルの各孔の間の寸法誤差を簡単な構造で低コストで確実に吸収させることのできるハーネスプロテクタの固定構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るハーネスプロテクタの固定構造は、ワイヤハーネスに長手方向の前後一対の係止クリップが固定され、該ワイヤハーネスがハーネスプロテクタ内に収容され、該ハーネスプロテクタの一壁部に該一対の係止クリップの係止部本体よりも大径な前後一対の孔部が設けられ、該一対の係止部本体が該一対の孔部に遊嵌に貫通した状態でパネルの前後一対の孔部に係合することを特徴とする。
上記構成により、ハーネスプロテクタの一対の孔部内にワイヤハーネス側の各係止クリップの係止部本体が径方向遊動(移動)自在に進入し、その状態で各係止部本体がパネルの各孔部に係合固定される。ハーネスプロテクタは、多くとも一壁部の孔部の内径から係止部本体の外径を減じた値のガタ寸法をもちつつ、係止部本体がパネルの孔部に係合することで、パネルに固定される。パネルの各孔部間の距離(ピッチ)と各係止部本体間の距離(ピッチ)とのずれは、例えば一対の係止クリップの間でワイヤハーネスを周方向に捩ったり軸方向に圧縮したりする等の手段で調整(整合)可能である。「係止部本体」とは、支柱部とその先端から傾斜状に折り返された可撓性(弾性)の爪部とで成るものや、支柱部とその外周に設けられた可撓性のねじ山状の突起とで成るもの等である。係止クリップはバンド締めや板部のテープ巻き等でワイヤハーネスに固定される。
請求項2に係るハーネスプロテクタの固定構造は、請求項1記載のハーネスプロテクタの固定構造において、前記係止クリップが、前記係止部本体と、該係止部本体の付け根側に設けられたばね部とで構成され、前記ハーネスプロテクタの前記孔部が該ばね部よりも大径に形成されたことを特徴とする。
上記構成により、各係止クリップのばね部がハーネスプロテクタの各孔部に進入ないし貫通し、ばね部がパネルに弾性的に押接した状態で、係止部本体がパネルの孔部に係合する(係止される)。プロテクタの孔部と係止クリップとの間には少なくともばね部とプロテクタの孔部との径差分の隙間が生じる。
請求項3に係るハーネスプロテクタの固定構造は、請求項1記載のハーネスプロテクタの固定構造において、前記係止クリップが、前記係止部本体と、該係止部本体の付け根側に設けられたばね部とで構成され、前記ハーネスプロテクタの前記孔部が該ばね部よりも小径に形成されたことを特徴とする。
上記構成により、係止部本体がパネルの孔部に係合した(係止された)状態で、ばね部がハーネスプロテクタの一壁部に弾性的に押接して、係止クリップとハーネスプロテクタとの間のガタつきが防止され、ばね部と係止部本体との間に一壁部とパネルが挟持されて、プロテクタがガタつきなくパネルに固定される。係止部本体(特に支柱部と一対の爪部とで成るもの)の爪部とばね部との間の距離(隙間)は、プロテクタの一壁部とパネルとの板厚の総和であることが好ましい。
請求項4に係るハーネスプロテクタの固定構造は、請求項1〜3の何れかに記載のハーネスプロテクタの固定構造において、前記一対の係止クリップの間で前記ワイヤハーネスが周方向に捩られて短縮され、その状態で前記一対の係止部本体間のピッチが前記パネルの前記一対の孔部間のピッチに整合することを特徴とする。
上記構成により、ワイヤハーネスが捩られて一対の係止クリップ間のピッチが短縮されてパネルの一対の孔部間のピッチに一致し、各係止部本体がパネルの各孔部に位置ずれなくスムーズ且つ確実に係合する。係止クリップ間のピッチはワイヤハーネスを捩る角度で適宜調整される(大きな角度で捩る程、ピッチは短くなる)。一対の係止クリップ間のピッチはパネルの孔部間のピッチ基準値に対して+公差に設定されることが好ましい。
請求項1記載の発明によれば、各係止クリップの係止部本体をハーネスプロテクタの各孔部内で径方向に移動自在としたことで、パネルの各孔部間のピッチに対するハーネスプロテクタの各孔部間のピッチ誤差を無視することができ、パネルの各孔部間のピッチに対する一対の係止部本体間のピッチ誤差は、一対の係止部本体間でワイヤハーネスを撓ませたり伸ばしたりする等で容易に吸収させることができるので、各係止部本体をパネルの各孔部に確実に係合させて、ハーネスプロテクタをパネルに確実に固定することができる。また、ハーネスプロテクタには、係止部本体よりも大きな孔部を設けるだけでよく、従来のプロテクタ一体の係止クリップは不要であるので、ハーネスプロテクタの構造を簡素化・低コスト化することができる。また、パネルの孔部から係止クリップを離脱させた際に、係止クリップは破損しやすいが、ハーネスプロテクタは傷まないので、再利用することができる。また、パネルの各孔部を同じ大きさ形状に形成して、従来の丸孔と長孔との組み合わせを不要としたので、パネルを低コストで形成することができる。
請求項2記載の発明によれば、ハーネスプロテクタの孔部から外部に突出したばね部でパネルの孔部への係止クリップの係止を確実に行わせることができる。また、ハーネスプロテクタの孔部内に係止クリップのばね部を進入ないし貫通させることで、ハーネスプロテクタ内のデッドスペースを削減して、ワイヤハーネスの収容スペースを増やしたり、ハーネスプロテクタを小型化することができる。
請求項3記載の発明によれば、ばね部でハーネスプロテクタの一壁部をパネルに向けて押圧して、ばね部と係止部本体との間に一壁部とパネルとを挟むことで、ハーネスプロテクタを係止部本体にガタつきなく固定すると共に、ハーネスプロテクタをパネルにしっかりと固定することができる。
請求項4記載の発明によれば、一対の係止クリップ間のピッチを簡単且つ確実にパネルの孔部間のピッチに整合させることができ、それにより、各係止クリップをパネルの各孔部に確実に係止させることができると共に、ワイヤハーネスへの係止クリップの組付位置誤差を比較的ラフに設定して、係止クリップの組付作業性を高めることができる。
本発明に係るハーネスプロテクタの固定構造の一実施形態を示す縦断面図である。 同じくハーネスプロテクタをワイヤハーネスに装着した状態を示す斜視図である。 同じくハーネスプロテクタを示す斜視図である。 図1のパネルを示すA−A視平面図である。 ハーネスプロテクタの固定構造の他の実施形態を示す要部縦断面図である。 異なるタイプの係止クリップを用いた実施形態を示す斜視図である。 従来のハーネスプロテクタの固定構造の一形態を示す正面図である。 従来のハーネスプロテクタの固定構造の他の形態を示す断面図である。
図1〜図4は、本発明に係るハーネスプロテクタの固定構造の一実施形態を示すものである。
図1の如く、このハーネスプロテクタの固定構造は、ハーネスプロテクタ(以下プロテクタと言う)1の底壁(一壁部)2に前後二つの孔部3が設けられ、プロテクタ1の空間4内に挿通される複数本の電線で成るワイヤハーネス5に前後二つのバンドクリップ6が装着固定され、各バンドクリップ6の係止クリップ11はプロテクタ底壁2の各孔部3よりも小径に形成され(プロテクタ底壁2の各孔部3は各バンドクリップ6の係止クリップ11よりも大径に形成され)、車両側のパネル12に、各係止クリップ11よりも小径な各孔部13が設けられて、パネル12の各孔部13に各係止クリップ11が係合することで、ワイヤハーネス5とプロテクタ1とがパネル12に同時に固定されるものである。
図2,図3の如く、プロテクタ1は上下左右の各壁部2,14〜16を有して断面矩形筒状に形成され、底壁(下壁)2の幅方向中央に前後二つの円形の孔部3が設けられている。各係止クリップ11の大きさ形状は同一であり、底壁2の各孔部3の内径は同一である。各孔部3の位置はプロテクタ1の前後端のハーネス導出開口17の近傍であってもよく、各孔部3間の距離(ピッチ)は大きく離間していてもよい。
また、プロテクタ1の上壁14は薄肉のヒンジ(図示せず)を介して右壁15又は左壁16に一体に連結されていてもよい(この場合、上壁14は右壁15又は左壁16に突起と枠片等の図示しない係止手段で閉止固定される)。ヒンジ開閉式とすることで、図1において例えば係止クリップ11を底壁2の孔部3に挿入し、バンドクリップ6の係止クリップ11の上側に位置するブロック部18をバンド部19と共に底壁2の内面に当接支持させた状態で、上壁14を閉めてバンド部19の上端部に近接させて上下方向のガタ付きを小さく抑止することができる。
図3の如くプロテクタ1に係止クリップ11を一体に設けないので、プロテクタ1の構造が簡素化・低コスト化されている。また、バンドクリップ6は標準化部品であり、パネル孔13から離脱させた際に係止部本体10が傷むので交換が必要であるが、プロテクタ1は破損しないので再利用が可能である。
図1,図2の如く、バンドクリップ6は既存のものであり、合成樹脂を材料として、可撓性のバンド部19と、バンド部19の基端に一体に設けられた矩形状のブロック部18と、ブロック部18の下側に一体に設けられた本例でドーム状(一対の板状でも可)のばね部7と、ばね部7の中央すなわちブロック部18の中央から垂下形成された係止部本体10とで構成されている。ブロック部18とばね部7とは同程度の前後方向の幅寸法を有している。
係止部本体10は、ばね部7の中央すなわちブロック部18の中央から鉛直方向に突出した支柱部8と、支柱部8の先端から左右ないし前後に斜め上向きに突出した一対の可撓性(弾性)の係止用の爪部9とで構成されている。ばね部7と係止部本体10とで係止クリップ11が構成されている。図1では便宜上、係止用の爪部9の突出方向を図2とは90°位相させて図示している。
ブロック部18の水平なスリット孔内にバンド部19の先端側が挿通されて、スリット孔内の可撓爪(図示せず)にバンド部表面の鋸歯状の突起(図示せず)が係合し、バンド先端側の余長部は切断されている。バンド部19で複数本の電線が結束されてばらけを防止され、バンド部19は複数本の電線で成るワイヤハーネス5の表面に締付固定されている。バンド部内面とワイヤハーネス外面との摩擦抵抗に抗して係止クリップ11をハーネス周方向に強く押せば、バンドクリップ6を周方向に回動させることはできる。
図1の如く、パネル12へのプロテクタ1の組付前において、プロテクタ1の各孔部3内にバンドクリップ6の少なくともばね部7又はブロック部18の下部が進入ないし貫通して位置することで(ブロック部18にはバンド部19が挿通されているので、ブロック部全体が孔部3を貫通することはない)、プロテクタ1が前後方向(ハーネス挿通方向)に若干のガタはあるものの抜け出しなく固定されて、ワイヤハーネス5の所要部を覆って外部との干渉等から安全に保護する。プロテクタ1の各孔部3の内径はドーム状のばね部7の外径又は一対の下向き傾斜板状のばね部(図示せず、従来例の図8参照)の外径(外幅)よりも大きく設定されている。
図4に図1のA−A矢視平面図を示す如く、パネル12の各孔部13は円形であり、各孔部13の内径は同一である。図1の如く、パネル12の各孔部13の内径は係止クリップ11のばね部7の外径よりも小さく、且つ係止クリップ11の自由状態の一対の爪部9の外径(外幅寸法)よりも小さく、支柱部8の外径よりも大きく設定されている。爪部9は内向きに撓んでパネル12の孔部13を通過し、外向きに復元して、爪部9の先端がパネル12の裏面に係合し(係止され)、爪部9の先端の突片(図示せず、従来例の図8参照)がパネル12の孔部13の内周面に押接係合して、孔部13からの爪部9の離脱や位置ずれを阻止する。
その状態(爪部9がパネル孔13に係合した状態)で、ばね部7がパネル12の表面に弾性的に押接し、爪部9の先端(上端)とばね部7の先端(下端)とでパネル12を厚み方向に挟んで固定する。ばね部7はプロテクタ1の孔部3から下方に突出し、ばね部7とブロック部18との間の溝部分20又はブロック部18の前後端面18aがプロテクタ1の孔部3内に位置して、プロテクタ1をパネル12に対して前後左右方向に固定する。
図1において、二つのバンドクリップ6の間の距離(ピッチ)はパネル12の二つの孔部13の間の設計寸法距離(ピッチ)と同等に設定され、且つプロテクタ1の二つの孔部3の間の設計寸法距離(ピッチ)と同等に設定されるが、パネル孔13の内径の加工誤差や二つのパネル孔13間の寸法誤差や、ワイヤハーネス5に対する二つのバンドクリップ6の装着時の組付位置誤差があることは否めない。しかし、プロテクタ1の二つの孔部3の径は各バンドクリップ6の係止クリップ11の外径よりも大きく設定されており、各係止クリップ11は各孔部3を貫通さえすればよいので、二つの係止クリップ11の間の距離と二つのプロテクタ孔3の間の距離との誤差は無視することができる。
例えば、二つの係止クリップ11の間の距離が二つのパネル孔13の間の距離よりも大きな場合は、両バンドクリップ6の間でワイヤハーネス5を周方向に捩ることで、両バンドクリップ6の間のワイヤハーネス部分6aが短縮されて、一対の係止クリップ11の間の距離が短くなることで、一対の係止クリップ11間の距離をパネル12の孔部13間の距離と等しく調整することができる。
例えば、プロテクタ1内にワイヤハーネス5を収容した状態で、プロテクタ1から外部(前後)に露出したワイヤハーネス部分5bを捩った場合、両バンドクリップ6は周方向に逆向きの回動力を受けるが、各係止クリップ11がプロテクタ1の各孔部3の内周面に当接し、それ以上の回動が阻止され、さらに強く捩った際に、バンド部19とワイヤハーネス5の外周面とが周方向に摺動して、係止クリップ11の位置は不動のまま、一対のバンドクリップ間のワイヤハーネス部分6aのみが周方向に捩れる。なお、プロテクタ1の上壁14を開けて両バンドクリップ6の間のワイヤハーネス部分6aを一方向に捩ることも可能である。
このワイヤハーネス5の捩り操作は何れか一方の係止クリップ11を一方のパネル孔13に係合させた後、行ってもよい。一対のバンドクリップ6間のピッチはパネル孔13のピッチ基準値の上限に設定しておくことがこのましい。捩り操作に代えてワイヤハーネス5を軸方向に両手で強く圧縮して、一対のバンドクリップ6間のワイヤハーネス部分6aを短縮させたり、長手方向に引っ張って、一対のバンドクリップ間のワイヤハーネス部分6aの曲がり癖等を伸ばして伸長させることも可能である。
また、図1の状態で、プロテクタ1の各孔部3から外部に突出した係止クリップ11を手指等で直接、ハーネス軸方向に押圧して、少なくとも何れか一方のバンドクリップ6をバンド部19の緊迫力に抗してハーネス軸方向に少し移動させて、両バンドクリップ6間の距離を短縮又は伸長させることも可能である。これらの操作は、プロテクタ1の各孔部3の内径が各係止クリップ11の外径よりも大きく設定されていることで、可能となる。
図5は、本発明に係るハーネスプロテクタの固定構造の他の実施形態を示すものである。
この構造は、図1の構造に較べて、プロテクタ1’の底壁2の孔部3’をバンドクリップ6の係止クリップ11のばね部7の外径よりも小さく設定し、底壁2の孔部3’の周縁(底壁2の上面)にばね部7を押接可能としたものである。その他の構成は図1の実施形態と同じであるので、同じ構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
プロテクタ1’の孔部3’はパネル12の孔部13よりも大径に形成されている。係止クリップ11の設計上の適用板厚、すなわち係止クリップ11のばね部7と爪部9との間の垂直距離は、プロテクタ1’の底壁2の板厚とパネル12の板厚との総和である。爪部9がパネル孔13に貫通係合した状態で、ばね部7がプロテクタ1’の底壁2をパネル方向に押圧することで、プロテクタ1’が係止クリップ11にガタつきなく固定され、プロテクタ1’の底壁2とパネル12とは隙間なく接触し(図5では若干の隙間をもった例で図示している)、プロテクタ1’がパネル12にガタつきなくしっかりと固定される。
図5の例においても、係止クリップ11の係止部本体10すなわち爪部9と支柱部8とを前述の図1の例の方法でプロテクタ1’の孔部3’の内径の範囲で前後左右方向(少なくとも前後方向すなわちハーネス挿通方向)に移動可能であるので、前後一対の係止クリップ11の間の寸法誤差や前後一対のパネル孔13の間の寸法誤差を容易に吸収させて、各係止部本体10を各パネル孔13に確実に係合させることができる。
図6は、図1,図5の例のバンドクリップ6の一対の爪タイプの係止クリップ11をツリータイプの係止クリップ11’に変えた実施形態のバンドクリップ6’を示すものである。係止クリップ11’以外の構成は図1又は図5の実施形態におけると同じであるので、同じ構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
ツリータイプの係止クリップ11’とは、もみの木状の係止部本体10’を有する係止クリップであり、図1の係止クリップ11の支柱部8と一対の爪部9とで成る係止部本体10に代えて、支柱部8’が一本のもみの木状の係止部本体10’すなわち支柱部先端に向かうにつれて漸次縮径した複数の山状の突起9’を有している。ばね部7は図1のものと同じでドーム状(皿ばね状)又は前後ないし左右一対のばね片で成る。ばね部7はなくともよい。バンド部19やブロック部18も図1のものと同じである。
プロテクタ1の底壁2の各孔部3は、図1の例のようにばね部7及びツリータイプの係止部本体10’の外径よりも大径に設定される。あるいは図5の例のように、各孔部3(3’)がばね部7よりも小径に形成され、係止部本体10’よりも大径に形成される。図1の例と同様にパネル12の各孔部13は係止部本体11’の外径よりも小径に形成される。
なお、上記各実施形態においては、バンドクリップ6,6’の例で説明したが、係止部材としてバンドクリップ6,6’に代えて、ハーネス固定用の平板状ないし湾曲状の板部(図示せず)に前記同様の係止クリップ11,11’を一体に設けたものを使用し、板部にワイヤハーネス5をテープ巻きで固定することも可能である。
また、上記実施形態においては、係止部本体10,10’と各ばね部7とで係止クリップ11,11’を構成したが、ばね部7を排除して係止部本体10,10’のみで係止クリップを構成することも可能である。但し、この場合の係止部本体10,10’は例えばツリータイプの係止部本体10’等のようにパネル12の孔部13にガタつきなくしっかりと係合するものであることが必要である。
また、上記した各実施形態の構成は、ハーネスプロテクタの固定構造として以外に、ハーネスプロテクタとワイヤハーネスとの組立体(ハーネスプロテクタ組立体)や、ハーネスプロテクタの固定方法等としても有効なものである。
本発明に係るハーネスプロテクタの固定構造は、ワイヤハーネスをハーネスプロテクタ内に収容して外部との干渉等から安全に保護した状態で、ワイヤハーネスに固定したハーネス長手方向の前後一対の係止クリップを自動車等のパネルの各孔部に位置ずれなく確実に係止させるために利用することができる。
1,1’ ハーネスプロテクタ
2 底壁(一壁部)
3,3’ 孔部
5 ワイヤハーネス
7 ばね部
11,11’ 係止クリップ
10,10’ 係止部本体
12 パネル
13 孔部

Claims (4)

  1. ワイヤハーネスに長手方向の前後一対の係止クリップが固定され、該ワイヤハーネスがハーネスプロテクタ内に収容され、該ハーネスプロテクタの一壁部に該一対の係止クリップの係止部本体よりも大径な前後一対の孔部が設けられ、該一対の係止部本体が該一対の孔部に遊嵌に貫通した状態でパネルの前後一対の孔部に係合することを特徴とするハーネスプロテクタの固定構造。
  2. 前記係止クリップが、前記係止部本体と、該係止部本体の付け根側に設けられたばね部とで構成され、前記ハーネスプロテクタの前記孔部が該ばね部よりも大径に形成されたことを特徴とする請求項1記載のハーネスプロテクタの固定構造。
  3. 前記係止クリップが、前記係止部本体と、該係止部本体の付け根側に設けられたばね部とで構成され、前記ハーネスプロテクタの前記孔部が該ばね部よりも小径に形成されたことを特徴とする請求項1記載のハーネスプロテクタの固定構造。
  4. 前記一対の係止クリップの間で前記ワイヤハーネスが周方向に捩られて短縮され、その状態で前記一対の係止部本体間のピッチが前記パネルの前記一対の孔部間のピッチに整合することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のハーネスプロテクタの固定構造。
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