JP2011222416A - 燃料電池用電極の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、燃料電池用電極の製造方法に関し、加熱処理中の高分子材料の変性を良好に抑制可能な燃料電池用電極の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】側鎖にプロトン交換基を有する高分子材料と、触媒担持カーボンとを含む触媒インク層を基材上に形成する工程と、前記触媒インク層を、第四級アンモニウム塩溶液又は金属塩溶液で処理する工程と、イオン交換後の前記触媒インク層を150℃以上で加熱処理する工程と、加熱処理後の前記触媒インク層を酸溶液で処理する工程と、を備えることを特徴とする燃料電池用電極の製造方法。
【選択図】図2

Description

この発明は、燃料電池用電極の製造方法に関し、より詳細には、固体高分子形燃料電池用の電極の製造方法に関する。
従来、例えば特許文献1には、側鎖にスルホン酸基を有するフッ素系の高分子材料と、触媒担持カーボンとを含む触媒ペーストを、オートクレーブ内で200℃に加熱処理して電極を製造する方法が開示されている。一般に、触媒ペーストにおいては、触媒担持カーボンの一次凝集体内部の一次孔(100nm以下のサイズ)と、これら一次凝集体間に存在する二次孔(100nm超のサイズ)とが形成されているとされる。また、触媒ペースト中の上記高分子材料同士は凝集し易い性質を有する。従って、単にこれらを混合するだけでは、上記高分子材料が上記一次孔の内部に入り込むことができない。そこで、触媒ペーストを調製した後、オートクレーブ内で200℃に加熱処理する。加熱処理することで、上記高分子材料の分子サイズを小さくして上記一次凝集体の細孔に侵入させることが可能となる。従って、触媒担持カーボンを上記高分子材料で均一に被覆できる。
国際公開第2007/126153号
しかしながら、上記高分子材料として一般に用いられるものは、耐熱性がそれ程高いわけではない。そのため、このような高分子材料を加熱していくと、100℃までに脱水が起こり、その後、側鎖の分解、フルオロカーボン主鎖の分解が起こる。従って、上記特許文献1のペーストを単に加熱処理する場合、加熱処理の全期間に亘って上記高分子材料が安定かというと必ずしもそうではない。即ち、上記高分子材料の側鎖は、主鎖に比べて耐熱性が低く、特に、側鎖のスルホン酸基は損傷を受ける可能性が少なくない。従って、加熱処理による性能向上はあるものの、熱要因で生じる高分子材料の劣化もあるので、トータルで見た場合、効果が相殺されてしまう可能性が高い。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、加熱処理中の高分子材料の変性を良好に抑制可能な燃料電池用電極の製造方法を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料電池用電極の製造方法であって、
側鎖にプロトン交換基を有する高分子材料と、触媒担持カーボンとを含む触媒インク層を基材上に形成する工程と、
前記触媒インク層を、第四級アンモニウム塩溶液又は金属塩溶液で処理する工程と、
イオン交換後の前記触媒インク層を150℃以上で加熱処理する工程と、
加熱処理後の前記触媒インク層を酸溶液で処理する工程と、
を備えることを特徴とする。
第2の発明は、上記の目的を達成するため、燃料電池用電極の製造方法であって、
側鎖にプロトン交換基を有する高分子材料を、第四級アンモニウム塩溶液又は金属塩溶液で処理する工程と、
イオン交換後の前記高分子材料と、触媒担持カーボンとを含む触媒インク層を基材上に形成する工程と、
前記触媒インク層を150℃以上で加熱処理する工程と、
加熱処理後の前記触媒インク層を酸溶液で処理する工程と、
を備えることを特徴とする。
第1、第2の発明によれば、加熱処理前に、第四級アンモニウム塩溶液又は金属塩溶液で処理することにより、プロトン交換基上のプロトンと、第四級アンモニウム塩溶液又は金属塩溶液中の陽イオンとをイオン交換できる。従って、耐熱性のあるプロトン交換基の塩に変換できるので、加熱処理中の変性を良好に抑制できる。
実施形態の電極の製造方法の工程図である。 発電性能試験の結果を示す図である。 低加湿条件で、セル温度を50℃から100℃まで変化させて発電性能試験した場合における、1.0A/cmのときの電圧値を示す図である。
以下、図1〜図3を参照しながら、本実施形態の電極の製造方法を開示する。
図1は、実施形態の電極の製造方法の工程図である。図1に示すように、本実施形態の電極の製造方法は、(1)触媒インク調製工程、(2)塗布、乾燥工程、(3)イオン置換工程、(4)アニール処理工程及び(5)酸処理工程という5つの工程を備える。
(1)触媒インク調製工程
本工程は、触媒担持カーボンと、固体高分子電解質成分としてのアイオノマーとを含む触媒インクを調製する工程である。
本工程では、先ず、カーボンに触媒を担持させる。具体的には、カーボンを、触媒となる金属の化合物溶液中に分散させて、含浸法や共沈法、あるいはイオン交換法によって担持させる。ここで、カーボンとしては、カーボンブラックが最も一般的であるが、その他にも黒鉛、炭素繊維、活性炭等やこれらの粉砕物、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素化合物等が使用できる。また、これらの2種類以上を混合して使用することもできる。また、触媒としては、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスニウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、又はそれらの合金等が挙げられる。これらの2種類以上を複合したものも用いることもできる。
例えば、カーボンとしてカーボンブラックを用い、触媒として白金を用いる場合には、エタノールやイソプロパノール等のアルコール中に、テトラアンミン白金塩溶液やジニトロジアンミン白金溶液や白金硝酸塩溶液、あるいは塩化白金酸溶液等を適量溶解させた白金塩溶液中に、カーボンブラックを分散させる。その後、この白金塩溶液を水素雰囲気中で200℃以上に加熱して白金を還元させる。これにより、カーボンブラックに白金粒子を担持させることができる。
続いて、得られた触媒担持カーボンを、適当な水及びアルコール等の有機溶剤中に分散させる。更に、アイオノマーのアルコール溶液を添加する。これにより、触媒インクが調製できる。ここで、アイオノマーは、一般に、側鎖にリン酸基、スルホン酸基といったプロトン交換基を導入した炭化水素系又はフッ素系の高分子電解質から構成される。アイオノマーのアルコール溶液としては、例えば、アルドリッチ社製のナフィオン(登録商標)溶液が挙げられる。
(2)塗布、乾燥工程
本工程は、上記(1)触媒インク調製工程により得られた触媒インクを所定の基材上に塗布し、その後乾燥させる工程である。本工程に用いることのできる所定の基材としては、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。このような基材上に、例えば、グラビア印刷、スプレー法、アプリケーター法、スクリーン印刷、ドクターブレード法、あるいはインクジェット法により触媒インクを塗布する。続いて、触媒インク中の溶媒を乾燥除去する。乾燥温度や乾燥時間は、溶媒の沸点や、触媒インクの厚み等に応じて適宜変更できる。本工程により、基材上に触媒層電極を形成できる。
(3)イオン置換工程
本工程は、上記(2)塗布、乾燥工程を経ることで基材上に形成した触媒層電極を第四級アンモニウム塩の水溶液で処理することにより、アイオノマーのプロトン交換基のプロトンを第四級アンモニウムイオンに交換する工程である。具体的な処理方法としては、プロトン交換基の総量に対して過剰の第四級アンモニウム塩の水溶液を触媒層電極に接触させる方法が挙げられる。
本工程に用いることのできる第四級アンモニウム塩としては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルジエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、が挙げられる。テトラブチルアンモニウムヒドロキシドといった窒素原子に結合するアルキル基の炭素数が多いアンモニウム塩を用いると、触媒インクの耐熱性が低下することがある。そのため、上記第四級アンモニウム塩のうち、窒素原子に結合するアルキル基の炭素数が少ないものがよく、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシドが好ましく、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが特に好ましい。
(4)アニール処理工程
本工程は、上記(3)イオン置換工程を経ることで得られた触媒層電極を、150℃以上の温度で1.5時間、加熱処理する工程である。触媒インクに用いるアイオノマーは、一般にガラス転移点が130℃付近であるため、150℃以上で加熱すれば、触媒層電極中のアイオノマーの改質特性が期待できる。一方、250℃以上で加熱すると、第四級アンモニウムイオンにイオン置換しているとはいえ、側鎖部分が損傷を受ける可能性が高くなる。従って、加熱温度は、150℃以上250℃以下であることが好ましい。また、加熱時間は、特に限定されず、加熱温度等に応じて適宜設定すればよいが、1.5時間以上加熱すれば膜電極接合体(MEA)の性能向上が担保できるので好ましい。加熱処理後、触媒層電極は一旦放冷される。
(5)酸処理工程
本工程は、上記(4)アニール処理工程を経ることで得られた触媒層電極を、硫酸等の酸溶液で処理する工程である。具体的な処理方法としては、アイオノマーのプロトン交換基の総量に対して過剰の酸溶液を、触媒層電極に接触させる方法が挙げられる。これにより、第四級アンモニウムイオンで置換されたプロトン交換基を遊離酸基に変換できる。
以上、本実施形態の電極製造方法によれば、第四級アンモニウム塩溶液で処理することにより、プロトン交換基上のプロトンと、第四級アンモニウムイオンとをイオン交換できる。従って、耐熱性のあるプロトン交換基の塩に変換できるので、加熱処理中の変性を良好に抑制できる。
尚、本実施の形態においては、触媒層電極を形成した後に第四級アンモニウム塩の水溶液を用いてイオン交換したが、触媒インクを調製する段階で第四級アンモニウム塩の水溶液を用い、その後、触媒層電極を形成してもよい。また、本実施の形態においては、第四級アンモニウム塩の水溶液を用いてイオン交換したが、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化マグネシウム水溶液といった、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の水溶液を用いてもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
アイオノマーとしてナフィオン溶液(アルドリッチ社製)を用いて基材上に作製した転写電極を、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いてイオン置換した後、200℃で4時間アニール処理した(熱処理電極)。その後、硫酸を用いてプロトン化し、電解質膜に転写して実施例1のMEAを作製した。
(比較例1)
実施例1同様に、ナフィオン溶液(アルドリッチ社製)を用いて基材上に作製した転写電極(従来技術電極)を、イオン交換やアニール処理を行わずに電解質膜に転写して、比較例1のMEAを作製した。
(発電性能試験)
実施例1及び比較例1のMEAをセルに組み込み、電流値をある値に設定した際のセル間の電圧を測定することにより発電性能(iRフリー電圧特性)の評価を行った。セルに対する試験条件の詳細は次のとおりである。尚、両極側の加湿条件は、高加湿及び低加湿の2通りに変化させた。
・流量:H/Air=1.0/2.0SLPM
・背圧:An/Ca=0.1/0.1MPa−G
・セル温度:80℃
・加湿:An/Ca=80℃/80℃(高加湿)
=60℃/60℃(低加湿)
図2は、発電性能試験の結果を示したものである。図2に示すように、高加湿条件で試験した場合、実施例1及び比較例1のMEAの発電性能がほぼ同じとなった。この結果から、アニール処理の前にイオン交換することで、アニール処理中のアイオノマー劣化が防止できることが分かった。更には、低加湿条件で試験した場合、実施例1のMEAは、設定電流密度の全範囲において比較例1のMEAよりも良好な発電性能を示した。
(温度特性試験)
上記発電性能試験の結果を受け、加湿条件を低加湿条件に固定し、セル温度を変化させた場合に発電性能がどのように変化するかを試験した。図3は、低加湿条件で、セル温度を50℃から100℃まで変化させて発電性能試験した場合における、1.0A/cmのときの電圧値を示す図である。図3から分かるように、実施例1のMEAは、測定温度の全範囲において、比較例1のMEAよりも良好な電圧値を示した。
上記結果の原因は不明であるが、アニール処理の前にイオン交換してMEAを作製すれば、特に低加湿条件で運転する燃料電池において有用であることが示された。低加湿条件で有用であることは、燃料電池システムの車両搭載時に、加湿装置を非搭載とすることが可能となるので、省スペース化やコスト低減化に繋がる。

Claims (2)

  1. 側鎖にプロトン交換基を有する高分子材料と、触媒担持カーボンとを含む触媒インク層を基材上に形成する工程と、
    前記触媒インク層を、第四級アンモニウム塩溶液又は金属塩溶液で処理する工程と、
    イオン交換後の前記触媒インク層を150℃以上で加熱処理する工程と、
    加熱処理後の前記触媒インク層を酸溶液で処理する工程と、
    を備えることを特徴とする燃料電池用電極の製造方法。
  2. 側鎖にプロトン交換基を有する高分子材料を、第四級アンモニウム塩溶液又は金属塩溶液で処理する工程と、
    イオン交換後の前記高分子材料と、触媒担持カーボンとを含む触媒インク層を基材上に形成する工程と、
    前記触媒インク層を150℃以上で加熱処理する工程と、
    加熱処理後の前記触媒インク層を酸溶液で処理する工程と、
    を備えることを特徴とする燃料電池用電極の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016110855A (ja) * 2014-12-08 2016-06-20 トヨタ自動車株式会社 膜電極接合体の製造方法
JP7023478B2 (ja) 2017-04-24 2022-02-22 国立大学法人千葉大学 固体燃料電池

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