JP2011220455A - グリース潤滑式玉軸受の保持器 - Google Patents
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Abstract
【課題】保持器の内周面に堆積するグリースの基油及び繊維状物質をポケット側に効果的に移動させるようにして玉軸受の寿命を延長させる。
【解決手段】グリース潤滑式玉軸受の外輪1と内輪2の間に、転動体3を収容するためのポケット5を有して配置されているリング状の保持器4において、保持器4の内周面4aにおける隣接するポケット5の相互間に、半径方向内方に突出する突出部11を形成する。
【選択図】図1
【解決手段】グリース潤滑式玉軸受の外輪1と内輪2の間に、転動体3を収容するためのポケット5を有して配置されているリング状の保持器4において、保持器4の内周面4aにおける隣接するポケット5の相互間に、半径方向内方に突出する突出部11を形成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、グリース潤滑式玉軸受の保持器に関する。
玉軸受には外輪と内輪との間に、複数の転動体(玉)を転動自在に保持する保持器を備えたものが広く用いられている。
このような玉軸受を潤滑する方法しては、液体の油を供給する油潤滑式と、玉軸受にグリースを封入するようにしたグリース潤滑式とが一般的に知られている。
一般的に高速回転する装置の玉軸受には従来油潤滑式が多く用いられてきたが、油潤滑式の場合には油を安定して供給するためにポンプや配管、フィルタ等の機構が必要となるため、コストが増加するという問題がある。
一方、グリース潤滑式は、玉軸受の内部にグリースを充填してシール板で密封しており、メンテナンスフリーであるために、低コストで実施できる利点がある。
従って、近年ではコストダウンのニーズから、グリース潤滑式による玉軸受を高速回転機械に採用することが検討されている。
図6(a)は従来のグリース潤滑式の玉軸受の一例を示すもので玉軸受を軸線と平行な面で切断した縦断端面図、図6(b)は図6(a)をX−X方向から見た部分切断側面図であり、この玉軸受の外輪1と内輪2との間には、転動体3(玉)を保持するためのリング形状を有する保持器4が配置されている。この保持器4は、プラスチック或いは金属によって形成されており、更に、この保持器4には、セラミック或いは金属からなる転動体3を嵌合して保持するためのポケット5が周方向に等間隔で形成されている。
更に、図6(a)に示すように、外輪1と内輪2の左右方向端部間(軸方向端部間)には、鉄板等からなるシールリング6,7が嵌合配置されており、該シールリング6,7により囲まれる内部空間9の前記転動体3と保持器4の部分にグリースを供給して封入しており、前記シールリング6,7は封入したグリースが外部へ流出するのを防止している。又、前記保持器4とシールリング6,7との間には互いに接触しないように間隔が設けてあり、前記外輪1と内輪2が相対的に回転して転動体3が回転することにより、保持器4は、外輪1或いは内輪2の回転につられて回転するようになっている。
グリース潤滑式玉軸受に封入するグリースは、繊維状物質に基油を染み込ませたものであり、従って、玉軸受に封入したグリースは徐々に基油と一部の繊維状物質が移動することで転動体3の転動を潤滑するようになっている。
グリースは、シールリング6,7によって囲まれる内部空間9の容積の例えば約30%前後の量を封入するようにしており、グリースを封入した状態で玉軸受を回転すると、転動体3は外輪1と内輪2の間を自転しながら公転し、グリースは前記転動体3によって押しやられるように流動して所定の位置に落ち着くようになる。このとき、前記内部空間9内のグリースは遠心力の作用を受けて外輪1の内周面側に移動し易くなるため、外輪1の内周面にグリースが溜まった状態になっている。
前記内部空間9に封入するグリースの量が少ないと、グリースで潤滑される期間(寿命)が短くなって玉軸受の寿命が短縮されてしまい、又、内部空間9に封入するグリースの量が多過ぎると、グリースが回転の抵抗となることにより発熱する問題があり、そのため、各玉軸受には内部空間9の容積の約30%前後の好適な量を選定して封入するようにしている。
このようなグリース潤滑式の玉軸受の例としては、玉軸受の保持器の内周面にグリース溜め用のくぼみを設けて玉軸受の耐久性を高めるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
本発明者らは、寿命と判断された従来のグリース潤滑式の玉軸受を分解して、グリースの状態を調査する試験を実施した。この試験においては、前記したように外輪1の内面にグリースが堆積する以外に、図7に示すように、保持器4の内周面4aにおける転動体3と転動体3との間に山形を有する堆積グリース10が存在しており、一方、保持器4の外周面4bにはグリースは殆ど付着していないことが判明した。
前記グリース潤滑式の玉軸受では、外輪1の内周面に堆積したグリースの基油と繊維状物質の一部が徐々に転動体3側に染み出して移動することによって潤滑を行うが、寿命に達したグリースは、繊維状物質から基油が抜け切ってカラカラに渇いた状態を有して細かいひび割れが生じていた。
一方、前記保持器4の内周面4aに堆積した堆積グリース10について調査したところ、転動体3に近い黒色の部分10aでは前記したように基油が抜けてカラカラに渇いた状態となって細かいひび割れが生じているのに対し、点を付した中間部分10bには封入時と同様の健全な状態のグリースが存在していた。
ここで、保持器4の内周面4aは凹面を有しているために、内部空間9に封入したグリースは凹面に溜まり易く、しかも、この凹面に溜ったグリースも保持器4の回転によって遠心力Sの作用を受けるが、前記凹面で受けられているためにグリースがポケット5側(転動体3側)へ移動することができず、そのために中間部分10bに健全なグリースが残ったものと考えられる。
グリース潤滑式の玉軸受では、グリースの寿命が玉軸受の寿命を決定する。しかし、グリース潤滑式の玉軸受では、前記したように内部空間9に封入するグリースの量が予め決定されているためにグリースの寿命を延ばすことには限度があり、従って、グリースが寿命に達すると、延回転機械を分解して玉軸受の内部空間9へグリースの供給(給脂)を行う、或いは、玉軸受を新品のものと交換する等のメンテナンス作業が短い期間で必要になり、よって、運転コストが増加するという問題を有していた。
このため、内部空間9に封入したグリースを使い切るようにすれば、玉軸受の寿命を延長させてメンテナンス作業の間隔を延長することができる。
特許文献1では、玉軸受の保持器の内周面にグリース溜め用のくぼみを設けるようにしているため、くぼみを備えた分だけ保持器の内周面に堆積するグリースの量を増加することができる。
しかし、特許文献1においても、図7において示したように、くぼみに堆積したグリースが転動体3側に移動することは殆どなく、このために中間部分10bに多くの健全なグリースが残ったままとなって、封入したグリースを使い切ることはできず、よって玉軸受の寿命を延長することはできない。
本発明は、保持器の内周面に堆積するグリースをポケット側に効果的に移動させるようにして玉軸受の寿命を延長できるようにしたグリース潤滑式玉軸受の保持器を提供することを目的とする。
本発明は、グリース潤滑式玉軸受の外輪と内輪の間に、転動体を収容するためのポケットを有して配置されているリング状の保持器において、保持器の内周面における隣接するポケットの相互間に、半径方向内方に突出する突出部を形成したことを特徴とするグリース潤滑式玉軸受の保持器、に係るものである。
上記グリース潤滑式玉軸受の保持器において、前記突出部が、ポケット相互の中間部分に対してポケット側の肉厚が小さくなるよう形成されていることは好ましい。
本発明のグリース潤滑式玉軸受の保持器によれば、保持器の内周面における隣接するポケットの相互間に、半径方向内方に突出する突出部を形成したので、内周面の突出部上にグリースが堆積するようになるが、堆積したグリースには遠心力が作用するために突出部上のグリースが効果的にポケット側に移動するようになり、これによって内周面に堆積したグリースを使い切ることができるため玉軸受の寿命が延長され、メンテナンス作業を必要とする期間が延長されることにより、運転コストの大幅な低減が可能になるという優れた効果を奏し得る。
又、前記突出部が、ポケット相互の中間部分に対してポケット側の肉厚が小さくなるよう形成されていると、保持器の内周面における隣接するポケット相互間に堆積したグリースがポケット側に移動し易くなるという効果がある。
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
図1、図2(a)、(b)は本発明の一実施例を示すものであって、図中、図6(a)、(b)、図7と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図6(a)、(b)、図7に示す従来のものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図1、図2(a)、(b)に示すように、保持器4の内周面4aにおける隣接するポケット5相互間の夫々に、半径方向内方へ突出する突出部11を一体に設けた点にある。
図1、図2(a)、(b)の実施例では、保持器4の内周面4aにおける隣接するポケット5相互間に設ける突出部11を、玉軸受を軸方向から見た側面形状が、中間部の平坦面12aと左右の傾斜面12bとからなる台形突面12を有して突出するようにした場合を示している。この突出部11は図2(b)に示す如く、保持器4の軸方向両端までの前幅で形成されている。尚、突出部11は保持器4の軸方向両端に達しない幅で形成されていてもよい。上記突出部11を備えた保持器4は、プラスチックによる射出成形等によって製造することができ、又、金属を用いて切削加工等により製造することができる。
前記突出部11の高さは、図1に示す内輪2の外周面に達しない任意の高さとすることができるが、この突出部11の高さは、保持器4の内周面4aにおけるポケット5相互間の凹面を埋める平坦な面よりも少なくとも半径方向内側に突出していればよい。従って、図2(a)に示すようにポケット5相互間に堆積する堆積グリース10の量を増加させる上では、突出部11はできるだけ小さい突出高さとすることが好ましい。
図3は本発明の他の実施例を示したものであり、保持器4の内周面4aにおける隣接するポケット5相互間に設ける突出部11を、玉軸受を軸方向から見た側面形状が円弧突面13を有して突出するようにした場合を示しており、それ以外については前記実施例と同様である。
図4は本発明の更に他の実施例を示したものであり、保持器4の内周面4aにおける隣接するポケット5相互間に設ける突出部11を、玉軸受を軸方向から見た側面形状が三角突面14を有して突出するようにした場合を示しており、それ以外については前記実施例と同様である。
上記図1、図2(a)、(b)に示した台形突面12、図3に示した円弧突面13、図4に示した三角突面14による突出部11は、ポケット5の相互間の中間部に対してポケット5側の肉厚が徐々に小さくなるよう形成されている。このように中間部に対してポケット5側の肉厚が小さくなるようにする形状は、傾斜面であってもよく、又、曲面であってもよい。
図5は本発明の更に他の実施例を示したもので、保持器4の内周面4aにおける隣接するポケット5相互間に設ける突出部11を、玉軸受を軸方向から見た側面形状が矩形突面15を有して突出するようにした場合を示しており、それ以外については前記実施例と同様である。
次に、上記実施例の作動を説明する。
本発明では、保持器4の内周面4aにおける隣接するポケット5相互間に、保持器4の内周面4aにおけるポケット5相互間の凹面を埋める平坦な面よりも少なくとも半径方向内側に突出した突出部11を備えたので、図6の玉軸受の内部空間9に封入したグリースは、図2(a)、図3〜図5に示すように、ポケット5相互間に設けた突出部11上にも堆積するようになり、突出部11上に堆積した堆積グリース10には保持器4の回転による遠心力Sが作用するため、堆積グリース10の基油及び繊維状物質は突出部11の中間部側のポテンシャルエネルギの高い側からポテンシャルエネルギが低いポケット5側に徐々に移動するようになる。
従って、隣接するポケット5相互間に堆積した堆積グリース10の殆どが潤滑に利用されるようになるため、玉軸受の寿命が大幅に延長されるようになり、よって、メンテナンス作業の必要な期間が延長されて、運転コストの大幅な低減を図れるようになる。
ここで、図1、図2(a)、(b)、図3、図4、図5の実施例に示すように、突出部11が、ポケット5相互間の中間部に対してポケット5側の肉厚が小さくなるように形成されていると、堆積グリース10の基油及び繊維状物質がポケット5側に向かって流動し易くなる。
前記突出部11を備えた保持器4は、プラスチックによる射出成形等によって製造すると、安価に提供することができる。
更に、本発明では、保持器4の内周面4aにおける隣接するポケット5相互間に、半径方向内側に突出した突出部11を備えたので、突出部11により保持器4の強度が強化されることはあっても、保持器4の強度が低下するような問題を生じることはない。
尚、本発明のグリース潤滑式玉軸受の保持器は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
1 外輪
2 内輪
3 転動体
4 保持器
4a 内周面
5 ポケット
11 突出部
2 内輪
3 転動体
4 保持器
4a 内周面
5 ポケット
11 突出部
Claims (2)
- グリース潤滑式玉軸受の外輪と内輪の間に、転動体を収容するためのポケットを有して配置されているリング状の保持器において、保持器の内周面における隣接するポケットの相互間に、半径方向内方に突出する突出部を形成したことを特徴とするグリース潤滑式玉軸受の保持器。
- 前記突出部が、ポケット相互の中間部分に対してポケット側の肉厚が小さくなるよう形成されたことを特徴とする請求項1記載のグリース潤滑式玉軸受の保持器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010090597A JP2011220455A (ja) | 2010-04-09 | 2010-04-09 | グリース潤滑式玉軸受の保持器 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2010090597A JP2011220455A (ja) | 2010-04-09 | 2010-04-09 | グリース潤滑式玉軸受の保持器 |
Publications (1)
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JP2011220455A true JP2011220455A (ja) | 2011-11-04 |
Family
ID=45037689
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2010090597A Withdrawn JP2011220455A (ja) | 2010-04-09 | 2010-04-09 | グリース潤滑式玉軸受の保持器 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2011220455A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016003721A (ja) * | 2014-06-17 | 2016-01-12 | 本田技研工業株式会社 | 軸受及びこの軸受を用いた回転装置または無段変速機 |
-
2010
- 2010-04-09 JP JP2010090597A patent/JP2011220455A/ja not_active Withdrawn
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JP2016003721A (ja) * | 2014-06-17 | 2016-01-12 | 本田技研工業株式会社 | 軸受及びこの軸受を用いた回転装置または無段変速機 |
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Legal Events
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