JP2011219831A - ろう付け性及び耐食性に優れたアルミニウム合金ブレージングシート、及びそれを用いた熱交換器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】心材の一方の主面にろう材をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシートであって、前記心材は、Si:0.02〜0.3%(質量%、以下同じ)、Fe:0.02〜0.3%、Cu:0.3〜1.0%、Mn:0.6〜1.8、Ti:0.05〜0.25%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、前記ろう材は、Si:3.0〜9.4%、Fe:0.1〜1.5%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、前記アルミニウム合金ブレージングシートの全板厚をt(μm)、前記のろう材の厚さをa(μm)、及び前記のろう材中のSi量をb(%)とする場合において、
50<a≦−34×b+42.5
0.03×t≦a≦0.30×t
なる関係を満足する。
【選択図】なし
Description
50<a≦−34×b+42.5・・・(1)
0.03×t≦a≦0.30×t・・・(2)
なる関係を満足することを特徴とする、ろう付け性及び耐食性に優れたアルミニウム合金ブレージングシートに関する。
心材は、主として、Si、Fe、Cu、Mn、Tiを含有し、残部Alと不可避的不純物からなる。また、各元素の含有量及びそれに基づく作用効果は、以下に説明するようなものである。
Siは、MnやFeとともにAl−Mn−Si系またはAl−Fe−Mn−Si系の金属間化合物を形成し、ろう付後の結晶粒粗大化に作用し、或いはアルミニウム母相中に固溶して固溶強化により強度を向上させる効果がある。Siの含有量は、0.02〜0.3%(組成の%は質量%を表す、以下同じ)の範囲であり、0.02%未満ではその効果が小さく、0.3%を超えると生成される金属間化合物の種類が増大し、カソードサイトが増加して、心材の耐食性が低下する。好ましくは、0.05〜0.2%である。
Feは、MnやSiとともにAl−Fe−Mn−Si系またはAl−Fe−Si系の金属間化合物を形成し、ろう付後の結晶粒粗大化に作用する。Feの含有量は、0.02〜0.3%であり、0.3%を超えると生成される金属間化合物の種類が増大し、カソードサイトが増加して、心材の耐食性が低下する。0.02%未満では高純度アルミニウム地金を使用しなければならずコスト高となる。好ましくは、0.05〜0.2%である。但し、コストを考慮しない場合、Feの含有量は少ないほど好ましい。
Cuは、固溶強化により強度を向上させ、また時効硬化を促進する効果がある。Cuの含有量は、さらに電位を貴にすることができるため、耐食性の向上に寄与することができる。Cuの含有量は、0.3〜1.0%の範囲であり、0.3%未満ではその効果が小さく、1.0%を超えると粒界腐食感受性が増加し、逆に耐食性を低下させることになる。好ましくは、0.35〜0.6%である。
Mnは、SiやFeとともにAl−Mn−Si系またはAl−Fe−Mn−Si系の金属間化合物を形成し、ろう付後の結晶粒粗大化に作用し、或いはアルミニウム母相中に固溶して固溶強化により強度を向上させる。また、ろう付加熱時にろう材から拡散してくるSiと緻密な化合物を形成し、耐食性の向上に寄与する。Mnの含有量は、0.6〜1.8%であり、0.6%未満ではその効果が小さく、1.8%を超えるとMnの使用が多くなってしまい、粗大金属間化合物が生成されて加工性、耐食性が低下してしまう。好ましくは、0.8〜1.5%である。
Tiは、固溶強化により強度を向上させる。また、心材中へ層状にTiが析出して、孔食が深さ方向に進行することを抑制する効果がある。Tiの含有量は、0.05〜0.25%であり、0.05%未満ではその効果は得られず、0.25%を超えると粗大金属間化合物を形成しやすくなり、加工性、耐食性が低下してしまう。より好ましくは、0.08〜0.2%である。
上述した心材の一方の主面上にクラッドする第1のろう材は、主としてSi、Feを含有し、残部Alと不可避的不純物からなる。また、各元素の含有量及びそれに基づく作用効果は、以下に説明するようなものである。
Siは、ろう付加熱時に液相となってろう材としての機能を奏するための本質的な元素である。例えば、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートをチューブ材とろう付けする際の、ろう付けを可能とする元素である。ろう付け層の大部分をα相とし、少量の共晶部が表面に流出してろう材としての機能を果たす。ろう付加熱後も残存したα相の耐食性は非常に良好であり、ろう付け層は高い耐食性を有することができる。Siの含有量は、3.0〜9.4%である。Si量が3.0%未満では、生じる液相がわずかとなって、外部ろう付けが機能しにくくなる。一方Si量が9.4%を越えると、ろう付加熱時にほとんどが液相として流動してしまい、表面にほとんど残存しなくなってしまい、ろう付け層自体の形成が困難となり、防食層としての機能を果たさなくなる。好ましいSi量は3.0〜5.5%である。
Feは、例えば本発明のアルミニウム合金ブレージングシートをチューブ材と重ね合せて熱交換器等を形成する場合に、接合部内の共晶部内にAl−Fe系やAl−Fe−Si系化合物を形成する。これらの化合物は、腐食の起点となるため犠牲陽極効果により耐食性を向上させる。一方、接合部内の共晶部では、これらの化合物がカソードとなり、優先腐食の発生を助長してしまう。したがって、これらの作用効果のトレードオフの関係を考慮することにより、Feの含有量は、0.1〜1.5%とする。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートが、ろう付け性に優れると共に、例えばヘッダープレート材として用いた場合の外面及びこのヘッダープレート材とチューブ材との接合部における耐食性を改善するためには、心材及び第1のろう材が上述した要件を満足するとともに、アルミニウム合金ブレージングシートの全板厚をt(μm)、前記ろう材の厚さをa(μm)、及び前記ろう材中のSi量をb(%)とする場合において、
50<a≦−34×b+42.5・・・(1)
0.03×t≦a≦0.30×t・・・(2)
なる関係を満足することが必要である。
上述のように、心材の特に高い耐食性が要求される一方の主面、すなわち外面に加えて、さほど高い耐食性が要求されない他方の主面、すなわち内面にろう材を形成する場合は、通常使用されているAl−Si系合金のろう材を用いることができる。このようなAl−Si系合金のろう材としては、例えばJIS4343、4045、4047合金(Al:7〜13%)を用いることができる。
上述したアルミニウム合金ブレージングシートは、例えば以下のようにして製造することができる。
心材として、前記した所望の成分組成を有するアルミニウム合金をそれぞれ溶解し、鋳造する。鋳造時に生成する金属間化合物を微細にするため、鋳造時の冷却速度は0.5℃/s以上であることが好ましい。この鋳塊を面削し、熱間圧延前に、鋳塊の均質化処理を行わないか、または550℃以上で行うことが好ましい。心材の均質化処理を行なわないことで、鋳造時に得られる金属間化合物が微細な状態を維持したままその後の工程に供することができる。或いは、心材の均質化処理を550℃以上で行うことで、心材中の金属間化合物を再固溶させ、その後の工程で再び微細に析出させることが可能となる。
次に、本発明の熱交換器について説明する。
本発明の熱交換器は、複数のタンクと、これらタンク間に架設された複数のチューブと、各チューブにろう付されたフィン材と、前記複数のチューブを狭持するヘッダープレート材とを具備してなる。
表1の合金符号a1〜a13に示す成分組成の心材、表2の合金符号b1〜b7に示す成分組成の外面側の第1のろう材、および表3の合金符号c1〜c4に示す成分組成の内面側の第2のろう材について、それぞれDC鋳造し、鋳塊を作製した。
クラッド材を製造した際に、健全なクラッド材ができた場合を○とし、鋳造時に割れが発生した場合や、クラッド率の制御ができなかった場合を×とした。
各アルミニウム合金クラッド材からJIS5号試験片を切り出し、ろう付け相当加熱処理として窒素雰囲気中で600℃×3分の加熱を実施し、引張試験を行って、引張強度を調べた。そしてろう付け相当加熱処理後の引張強度が120MPa以上を○、120MPa以下を×とした。
それぞれのクラッド材で作製した熱交換器5台を水没させ、熱交換器内部に圧力180KPaの窒素ガスを封入したあと密栓し30秒間保持を行った。洩れのないコアは圧力低下がなく、圧力低下が起きたコアについては水没試験にて気泡発生が起きている場所を確認した。調査した5台のうち、チューブ材とヘッダープレート材との嵌合部からの洩れが全くない場合を○、1台でも当該部からの洩れを確認した場合は×とした。その結果を表4に示した。
作製した熱交換器から一部サンプルを切り出し、切断部の開口部を樹脂で被覆して中空体内部に腐食液が入らないようにした腐食試験用供試材を作製した。耐食性評価は、SWAAT試験(ASTM G85に準拠)を1000時間実施した。
ヘッダープレート平坦部のSWAAT試験後の最大腐食深さを測定し、その結果を次の基準にて表4に示した。
評価基準:腐食が外面側のろう材層でとどまっていれば合格とし、腐食が芯材まで到達した場合には不合格とした。
SWAAT試験後のヘッダープレートとチューブの接合部の腐食状況を調査し、次の基準にて表4に示した。
評価基準:図1に示すヘッダープレート材21とチューブ材22の接合部31に腐食部Cの優先腐食長さLが0.3mm未満のものを○、0.3mm以上のものを×とした。
表1の合金符号a1〜a13に示す成分組成の心材、表2の合金符号b1〜b7に示す成分組成の外面側のろう材について、それぞれDC鋳造し、鋳塊を作製した。
Claims (3)
- 心材の一方の主面に第1のろう材をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシートであって、
前記心材は、Si:0.02〜0.3%(質量%、以下同じ)、Fe:0.02〜0.3%、Cu:0.3〜1.0%、Mn:0.6〜1.8、Ti:0.05〜0.25%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記第1のろう材は、Si:3.0〜9.4%、Fe:0.1〜1.5%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記アルミニウム合金ブレージングシートの全板厚をt(μm)、前記第1のろう材の厚さをa(μm)、及び前記第1のろう材中のSi量をb(%)とする場合において、
50<a≦−34×b+42.5・・・(1)
0.03×t≦a≦0.30×t・・・(2)
なる関係を満足することを特徴とする、ろう付け性及び耐食性に優れたアルミニウム合金ブレージングシート。 - 前記心材の他方の主面において、Al−Si系合金からなる第2のろう材をクラッドしたことを特徴とする、請求項1に記載のろう付け性及び耐食性に優れたアルミニウム合金ブレージングシート。
- 複数のタンクと、これらタンク間に架設された複数のチューブと、各チューブにろう付されたフィン材と、前記複数のチューブを狭持するヘッダープレート材とが具備されてなる自動車用熱交換器であって、
前記ヘッダ−プレート材として請求項1又は2に記載のアルミニウム合金ブレージングシートを用いていることを特徴とする熱交換器。
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