以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図面において、同一又は同等の要素には同じ番号を付与し、場合により重複する説明を省略する。
[薄膜回路部品及び薄膜回路形成用基板]
図1は、本発明の薄膜回路部品の好適な一実施形態を示す模式断面図である。薄膜回路部品10は、薄膜形成用基板であるガラスセラミックス基板12と、ガラスセラミックス基板12の一方面(上面12a)側に薄膜プロセスによって形成された薄膜回路部40と、ガラスセラミックス基板12の他方面(底面12b)側に端子電極22と、を備える。すなわち、薄膜回路部40と端子電極22とは、ガラスセラミックス基板12を挟んで互いに対向するように設けられている。
薄膜回路部40は、ガラスセラミックス基板12側から所定のパターンを有し、互いに電気的に導通する第1の電気回路26及び第2の電気回路28を有する。また、薄膜回路部40はガラスセラミックス基板12側から、第1の電気回路26を覆うように第1の絶縁層42と、第1の絶縁層42のガラスセラミックス基板12側とは反対側の面上に第2の絶縁層44と、を有する。
ガラスセラミックス基板12は、その内部を厚さ方向に貫通するビア電極24を備える。ビア電極24は、薄膜回路部40における第1の電気回路26及び端子電極22と接続されている。このように、第1の電気回路26及び第2の電気回路28と端子電極22とは、ビア電極24を介して電気的に接続されている。
図2は、薄膜回路部品10の下面図である。端子電極22はガラスセラミックス基板12の底面12b側に4つ設けられている。これらの端子電極22は、図1に示すようにガラスセラミックス基板12に埋設されている。これによって、端子電極22とガラスセラミックス基板12との固着強度を一層高くすることができる。また、ガラスセラミックス基板12の下面12b、すなわち薄膜回路部品10の下面を平坦にすることができる。
薄膜回路部品10の薄膜回路部40は、公知の薄膜プロセスによって形成することができる。例えば、スパッタ法、CVD法等によって金属薄膜を形成した後、フォトエッチング等を行なうことによって、所定のパターンを有する第1の電気回路26,第2の電気回路28を順次形成することができる。
薄膜回路部品10は、底面(下面12b)が平坦であることから、薄膜プロセス時にガラスセラミックス基板12をステージに吸着させることができる。したがって、薄膜プロセスに適用することが容易となり、製造プロセスの効率化を図ることができる。
薄膜回路部品10の下面12bにおいて、下面12bからの端子電極22の突出高さは、製造プロセスの効率化を図る観点から、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは3μm以下であり、さらに好ましくは2μm以下である。
ビア電極24は、電気抵抗を低くする観点から、好ましくは銀又は銅を含有し、より好ましくは銀を含有する。端子電極22は、電気抵抗を低くするとともに、ガラスセラミックス基板12との固着強度を高くするために、銀又は銅等の金属成分とともにガラス成分を含有する。本実施形態では端子電極22がガラスセラミックス基板12に埋め込まれていることから、端子電極22におけるガラス成分の含有量を低くしても、ガラスセラミックス基板12と端子電極22との固着強度を十分に高くすることができる。このため、端子電極22における金属成分の含有量を高くして、電気抵抗を低くすることができる。
薄膜回路部品10は、薄膜回路部40及び端子電極22がそれぞれガラスセラミックス基板12を挟んで対向するように設けられているため、電子部品を高密度に実装することができる。基板材料としてガラスセラミックスを用いており、アルミナよりも低温で焼結させることが可能であることから、ビア電極24や端子電極22の電極材料として銀や銅を用いることができる。また、ガラスセラミックスを用いていることから、無収縮焼成技術の適用が可能であり、ビア電極24や端子電極22の位置を高精度で調整することができる。したがって、電子部品を一層高密度に実装することが可能となる。
<ガラスセラミックス基板>
次に、ガラスセラミックス基板12について説明する。ガラスセラミックス基板12は、単層であってもよく、複数のガラスセラミックス基板が積層された積層基板であってもよい。また、上下に隣り合うガラスセラミックス基板の間に、所定パターンの内部導体を有していてもよい(図示せず)。
ガラスセラミックス基板12は、強度向上の観点から、好ましくはガラスと該ガラスの中に分散された板状アルミナフィラーとを含有する。板状アルミナフィラーの含有量は、ガラスと板状アルミナフィラーの合計量に対して、好ましくは20〜35体積%であり、より好ましくは22.5〜35体積%である。ガラスセラミックス基板12の強度を一層向上させる観点から、板状アルミナフィラーは、同一方向に配向していることが好ましい。以下、各成分について詳細に説明する。
<板状アルミナフィラー>
ガラスセラミックス基板12に含まれる板状アルミナフィラーの平均板径は、好ましくは1〜10μmであり、より好ましくは2〜8μmである。板状アルミナフィラーの平均板径が1μm未満であると、板状アルミナフィラーの高い配向性が得られ難くなる傾向にある。一方、板状アルミナフィラーの平均板径が10μmを超えると、第1の電気回路26の配線ピッチが小さい場合に、電子部品等の電気特性に影響を及ぼす場合がある。
板状アルミナフィラーの平均厚みは、ガラスセラミックス基板12の強度を一層向上させる観点から、好ましくは0.4μm以下であり、より好ましくは0.03〜0.3μmである。板状アルミナフィラーの平均厚みを小さくすれば、同一含有量でガラスセラミックス基板12に含まれる板状アルミナフィラーの個数を増やすことが可能になるため、ガラスセラミックス基板12の強度を向上させることができる。一方、板状アルミナフィラーの平均厚みが0.3μmを超えると、板状アルミナフィラーの良好な配向性が損なわれる傾向にある。
板状アルミナフィラーの平均アスペクト比は、ガラスセラミックス基板12の強度を一層向上させる観点から、好ましくは10以上であり、より好ましくは25〜70である。板状アルミナフィラーの平均アスペクト比が20未満であると、板状アルミナフィラーの良好な配向性が損なわれる傾向にある。
図3は、本実施形態のガラスセラミックス基板に含まれる板状アルミナフィラーの一例を示す上面図である。図3は、板状アルミナフィラー20の板面形状を示している。すなわち、板状アルミナフィラー20の板面は八角形状を有している。図3のように板状アルミナフィラー20の板面が正八角形ではない場合、板状アルミナフィラー20の板径は、板面における長径yと短径xの平均値として求めることができる。すなわち、板状アルミナフィラー20の板径は、板状アルミナフィラー20に内接する最小の長方形の長辺と短辺の平均値として求めることができる。板状アルミナフィラー20に内接する最小の四角形が正方形の場合は、1辺の長さが板径となる。
板状アルミナフィラー20の厚みは、板面に垂直な方向の最大長さである。平均板径、平均厚みは、それぞれ、電子顕微鏡画像において無作為に抽出した500個の板状アルミナフィラーの板径及び厚みの測定値の算術平均値である。平均アスペクト比は、(平均板径)/(平均厚み)によって算出される。
ガラスセラミックス基板12に含まれる板状アルミナフィラー20は、図8のように板面に垂直な方向から見た平面形状が、円形、楕円形又は円形若しくは楕円形に近似する多角形等、異方性の小さな形状であるものが好ましい。ガラスセラミックス基板12の強度向上の観点からは、板状アルミナフィラーの平面形状は、好ましくは六角形であること、より好ましくは正六角形である。
図4は、本実施形態の薄膜回路部品10に備えられるガラスセラミックス基板12の側面の一部を拡大して示す側面図である。図4に示すように、ガラスセラミックス基板12のガラス48中に分散された板状アルミナフィラー20は、板面がほぼ同一方向に向いており、面Aとほぼ平行になっている。このように、板状アルミナフィラー20は良好な配向性を有している。この配向性の良否は、CuKα線を用いたX線回折測定によって求められる(104)結晶面と(006)結晶面のピークの強度比によって判断することができる。
板状アルミナフィラーの(104)結晶面と(006)結晶面におけるX線回折ピークの強度比は、(104)結晶面及び(006)結晶面の面積基準のピーク強度を、それぞれI(006)及びI(104)としたとき、I(104)に対するI(006)の比、すなわちI(006)/I(104)の計算式で求めることができる。
本実施形態の板状アルミナフィラーのI(006)/I(104)(以下、ピーク強度比αという)は、1.0以上である。このようなピーク強度比αを有する板状アルミナフィラーは、ガラスセラミックス基板12において、良好な配向性を有する。ピーク強度比αは、一層優れた強度を有するガラスセラミックス基板とする観点から、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2.0以上であり、さらに好ましくは3.0以上である。ピーク強度比αが高くなるほど、板状アルミナフィラーの板面の向きが揃い、配向性が良好になる。このように、本実施形態のガラスセラミックス基板は、板状アルミナフィラーの板面の向きがほぼ揃っており、配向性が良好であることから、優れた強度と高い靭性を有する。なお、ピーク強度比αに特に上限はないが、実用上、上限は20程度となる。
図5は、本実施形態のガラスセラミックス基板12のX線回折測定結果を示すチャートである。図5におけるチャートAは、市販のX線回折装置を用いて、図4におけるガラスセラミックス基板12の面AにX線を照射して測定されたX線回折チャートである。図5におけるチャートBは、市販のX線回折装置を用いて、図4におけるガラスセラミックス基板12の面BにX線を照射して測定されたX線回折チャートである。
チャートAは、チャートBよりも明瞭に(104)結晶面と(006)結晶面のピークを示している。本実施形態のピーク強度比αは、面A、すなわち板状アルミナフィラー20の板面にほぼ平行な面にX線を照射して測定されたチャートAのピークから計算される値である。チャートAは、板状アルミナフィラー20の板面にほぼ平行な面にX線を照射して測定されたX線回折ピークであるため、板状アルミナフィラー20の(104)結晶面と(006)結晶面のピークが明瞭に示されている。したがって、各ピークのピーク強度からピーク強度比αを高い精度で算出することができる。このように、特定のアスペクト比を有する板状アルミナフィラー20の配向性を良好にする観点から、X線を照射する面を特定すると共に、その面に応じて最適な結晶面を特定することが好ましい。これによって、ガラスセラミックス基板12の強度を十分に高くするとともに、強度のばらつきを十分に小さくすることができる。なお、チャートBは、板状アルミナフィラー20のアスペクト比が高いために、チャートAよりも(104)結晶面及び(006)結晶面のピークが不鮮明である。このため、チャートBのX線回折ピークから正確なピーク強度比αを算出することは困難である。
ガラスセラミックス基板12は、板状アルミナフィラー20以外のセラミックスフィラーを更に含有してもよい。板状アルミナフィラー以外のセラミックスフィラーとしては、例えば、マグネシア、スピネル、シリカ、ムライト、フォルステライト、ステアタイト、コージェライト、ストロンチウム長石、石英、ケイ酸亜鉛、ジルコニア及びチタニアからなる群より選ばれる少なくとも一種の材料によって形成された球状又は板状のフィラーが挙げられる。また、ガラスセラミックス基板12は、球状アルミナを含有してもよい。ガラスセラミックス基板12の強度を一層高くする観点から、板状アルミナフィラーの割合を全セラミックスフィラーの80体積%以上とすることが好ましい。
<ガラス>
ガラスセラミックス基板12に含まれるガラス48の材料としては、例えば、(1)非晶質ガラス系材料及び(2)結晶化ガラス系材料の少なくとも1種からなるガラス粉末が挙げられる。(2)結晶化ガラス系材料は、加熱焼成時に多数の微細な結晶がガラス成分中に析出した材料であり、ガラスセラミックスともいう。
ガラス48は、(1)非晶質ガラス系材料及び(2)結晶化ガラス系材料のうち、(2)結晶化ガラス系材料を用いて形成されるものであることが好ましい。(2)結晶化ガラス系材料としては、例えば、(i)SiO2、B2O3、Al2O3及びアルカリ土類金属酸化物を含有するガラス並びに(ii)SiO2、CaO、MgO、Al2O3及びCuOを含有するディオプサイド結晶ガラスを用いることができる。
(i)のガラスの好適な組成、及び(i)のガラスを用いた場合のガラスセラミックス基板12におけるガラス48の好適な組成を説明する。ガラス48は、SiO2、B2O3、Al2O3及びアルカリ土類金属酸化物を含有することが好ましい。SiO2の含有量は、ガラス48全量を基準として46〜60質量%であることが好ましく、47〜55質量%であることがより好ましい。(i)のガラスにおけるSiO2の含有量が46質量%未満であるとガラス化が困難になる傾向にある。一方、(i)のガラスにおけるSiO2の含有量が60質量%を超えると融点が高くなって低温焼結が困難になる傾向にある。
B2O3の含有量は、ガラス48全量を基準として、好ましくは0.5〜5質量%であり、より好ましくは1〜3質量%である。ガラス48におけるB2O3の含有量が5質量%を超えると、耐湿性が低下する傾向にある。一方、ガラス48におけるB2O3の含有量が0.5質量%未満であると、ガラス化温度が高くなるとともに密度が低くなる傾向にある。
Al2O3の含有量は、ガラス48全量を基準として、好ましくは6〜17.5質量%であり、より好ましくは7〜16.5質量%である。ガラス48におけるAl2O3の含有量が6質量%未満であると十分に優れた強度が損なわれる場合がある。一方、ガラス48におけるAl2O3の含有量が17.5質量%を超えるとガラス化が困難になる傾向にある。
アルカリ土類金属酸化物の含有量は、ガラス48全量を基準として、好ましくは25〜45質量%であり、より好ましくは30〜40質量%である。アルカリ土類金属酸化物としては、例えば、MgO、CaO、BaO及びSrOが挙げられる。これらのアルカリ土類金属酸化物は一種のみを含んでいてもよく二種以上を含んでいてもよい。アルカリ土類金属酸化物の中でも、SrOとその他のアルカリ土類金属酸化物とを組み合わせて含むことが好ましい。CaO、MgO及びBaOからなる群より選ばれる少なくとも一種と、SrOとを組み合わせて用いると、溶解ガラスの粘性が低下し、焼結温度の自由度を大きくすることができる。このため、ガラスセラミックス基板12の製造を容易にすることができる。
アルカリ土類金属酸化物の全量に対するSrOの含有量は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。この含有量が60質量%未満であると、ガラス48と板状アルミナフィラー20との熱膨張係数の差が大きくなりガラスセラミックス基板12の強度が低下する傾向にある。
アルカリ土類金属酸化物の全量に対するCaO、MgO及びBaOの合計含有量は、好ましくは1質量%以上である。アルカリ土類金属酸化物の全量に対するCaO及びMgOの含有量は、それぞれ好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。アルカリ土類金属酸化物の全量に対するCaOの含有量は、好ましくは10質量%未満である。アルカリ土類金属酸化物の全量に対するMgOの含有量は、好ましくは4質量%以下である。CaO及びMgOの含有量が上述の値よりも大きくなると熱膨張係数が小さくなりすぎて、ガラスセラミックス基板12の強度が低下する傾向、及びガラスの結晶化度の制御が困難になる傾向にある。ガラスセラミックス基板12の製造の容易性とガラスセラミックス基板の強度とを両立させる観点からは、アルカリ土類金属酸化物全量に対するCaO及びMgOの合計含有量は、好ましくは10質量%未満である。アルカリ土類金属酸化物全量に対するCaOの含有量は、好ましくは5質量%以下である。
アルカリ土類金属酸化物全量に対するBaOの含有量は、好ましくは5質量%以下である。この含有量が5質量%を超えると誘電率が高くなる傾向にある。
次に、(ii)の結晶ガラス及び(ii)の結晶ガラスを用いた場合のガラスセラミックス基板12におけるガラス48の好適な組成を説明する。(ii)の結晶ガラスは、焼成によって主結晶としてディオプサイド結晶ガラスを析出する。
ディオプサイド結晶ガラスにおいて、SiO2はガラスのネットワークフォーマーであるとともに、ディオプサイド結晶の構成成分である。SiO2の含有量は、ディオプサイド結晶ガラス全量を基準として、好ましくは40〜65質量%であり、より好ましくは45〜65質量%である。SiO2の含有量が40質量%未満であるとガラス化が困難になる傾向にある。一方、SiO2の含有量が65質量%を超えると密度が低くなる傾向にある。
ディオプサイド結晶ガラスにおいて、CaOはディオプサイド結晶の構成成分である。CaOの含有量は、ディオプサイド結晶ガラス全量に対して、好ましくは20〜35質量%であり、より好ましくは25〜30質量%である。CaOの含有量が20質量%未満であると誘電損失が高くなる傾向にある。一方、CaOの含有量が35質量%を超えるとガラス化が困難になる傾向にある。
ディオプサイド結晶ガラスにおいて、MgOはディオプサイド結晶の構成成分である。MgOの含有量は、ディオプサイド結晶ガラス全量に対して、好ましくは11〜30質量%であり、より好ましくは12〜25質量%である。MgOの含有量が11質量%未満であると結晶が析出し難くなる傾向にある。一方、MgOの含有量が30質量%を超えるとガラス化が困難になる傾向にある。
ディオプサイド結晶ガラスにおいて、Al2O3はガラスの結晶性を調節する成分である。Al2O3の含有量は、ディオプサイド結晶ガラス全量に対して、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは1〜5質量%である。Al2O3の含有量が0.5質量%未満であると結晶性が強くなりすぎてガラス成形が困難になる傾向にある。一方、Al2O3の含有量が10質量%を超えるとディオプサイド結晶が析出し難くなる傾向にある。
ディオプサイド結晶ガラスにおいて、CuOはAgに電子を与え、ガラスセラミックス中への拡散を抑制する成分である。CuOの含有量は、ディオプサイド結晶ガラス成分全量に対して、好ましくは0.01〜1.0質量%である。CuOの含有量が0.01質量%未満であると上述の効果が十分に発揮されない傾向にある。一方、CuOの含有量が1.0質量%を超えると誘電損失が大きくなり過ぎる傾向にある。
ディオプサイド結晶ガラスにおいて、SrO、ZnO、TiO2はガラス化を容易にするために添加する成分である。ディオプサイド結晶ガラス成分全量に対する含有量は、各成分とも好ましくは0〜10質量%であり、より好ましくは0〜5%である。これらの成分が各々10質量%より多くなると結晶性が弱くなり、ディオプサイドの析出量が少なくなって誘電損失が大きくなる傾向にある。
また、ディオプサイド結晶ガラス成分としては、誘電損失等の特性を損なわない範囲で上記成分以外の成分を含んでいてもよい。
(i)及び(ii)のガラスのうち、一層優れた強度を得る観点から、ガラスセラミックス基板12におけるガラス48は、(ii)の結晶ガラスを用いて形成されることが好ましい。
本実施形態の薄膜回路部品は、電子素子(インダクタやキャパシタ等)を有していてもよい。また、フィルタやコモンモードチョークコイルであってもよく、他の電子部品であってもよい。本実施形態の薄膜回路部品は受動素子を内包した様々な電子部品として用いることができる。
図6は、本発明の薄膜回路部品の好適な別の実施形態を示す模式断面図である。薄膜回路部品30は、薄膜形成用基板であるガラスセラミックス基板12と、ガラスセラミックス基板12の一方面(上面12a)上に薄膜プロセスによって形成された薄膜回路部40と、ガラスセラミックス基板12の他方面(下面12b)上に端子電極22と、を備える。薄膜回路部40と端子電極22とは、ガラスセラミックス基板12を挟んで互いに対向するように設けられている。
薄膜回路部品30は、端子電極22がガラスセラミックス基板12に埋め込まれておらず、下面12b上に設けられている点で、上記実施形態の薄膜回路部品10と相違する。その他の点は、上記実施形態の薄膜回路部品10と同様とすることができる。
次に、本発明の薄膜回路部品の製造方法の好適な実施形態を説明する。
(第1実施形態)
本実施形態の薄膜回路部品の製造方法は、以下の工程を有する。
(1)アルミナフィラーを調製する準備工程
(2)ガラス粉末とアルミナフィラーとを混合して誘電体ペーストを調製し、当該誘電体ペーストを成膜して複数のグリーンシートを形成するシート形成工程
(3)グリーンシートにビアホールを形成するビアホール形成工程
(4)グリーンシートのビアホールに導電ペーストを充填する充填工程
(5)導電ペーストを充填したグリーンシートを積層して積層体を得る積層工程
(6)積層体を焼成して、ビアホール内にビア電極を有するガラスセラミックス基板が積層された積層素体を得る焼成工程
(7)積層素体の一方面側に薄膜プロセスによって電気回路を形成し、積層素体の他方面側に端子電極を形成する電極形成工程
(8)薄膜回路形成用基板を切断して個片化し、薄膜回路部品を得る切断工程
図7は、本実施形態の薄膜回路部品の製造方法の概要を示す説明図である。各工程の詳細について説明する。
(1)準備工程では、板状アルミナフィラー20を調製する。板状アルミナフィラー20は、例えば、アルミン酸塩と酸性アルミニウム塩とを水を含んだ状態で反応させて、アルミナ及び/又はアルミナ水和物と中和金属塩を含む混合物を得る反応工程、及び該混合物を1000〜1600℃で焼成する加熱工程を有する製造方法によって製造することができる。
反応工程では、まず、水酸化ナトリウムを水に溶解させて水酸化ナトリウム溶液を調製する。この水酸化ナトリウム溶液に、金属アルミニウム及びリン酸水素二ナトリウムを混合して攪拌し、金属アルミニウム及びリン酸水素二ナトリウムが溶解した混合溶液を調製する。当該混合溶液に、pHが6〜8となるまで硫酸アルミニウム水溶液を攪拌しながら投入し、白濁状のゲル状混合物(アルミナ及び/又はアルミナ水和物と中和金属塩を含む混合物)を得る。その後、当該混合物を乾燥して、水分を除去する。
加熱工程では、乾燥した混合物を、1000〜1600℃で2〜8時間焼成して、焼成物を得る。得られた焼成物に水を加えて洗浄及び濾過を行い、得られた固形分を乾燥する。以上の工程によって、所定のサイズを有する板状アルミナフィラー20を得ることができる。
(2)シート形成工程では、まず、ガラス粉末と板状アルミナフィラー20とを混合して誘電体ペーストを調製する。具体的には、板状アルミナフィラー20を、例えば、ガラス粉末並びに結合剤、溶剤、可塑剤及び分散剤等を含む有機ビヒクルと混合し、スラリー状の誘電体ペーストを調製する。ここで、板状アルミナフィラーの配向性を良好にするためには、誘電体ペースト中において板状アルミナフィラーを十分に分散させる必要がある。一方、混合時に板状アルミナフィラー20の破損を十分に防止する必要がある。したがって、板状アルミナフィラー20の破損を防止しつつ板状アルミナフィラー20の分散性を良好にする観点から、混合は、メディアを用いる混合装置(例えばビーズミルなど)よりも、ボールミルを用いて行うことが好ましい。また、混合時における衝撃を和らげる観点から、混合は時間をかけて行うことが好ましい。具体的には、混合時間は40時間以上とすることが好ましい。
結合剤としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂及びメタアクリル酸樹脂等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチル等が挙げられる。溶剤としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
調製した誘電体ペーストを、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート等の支持体上にドクターブレード法等によって成膜する。これによって、支持体上にグリーンシートを形成することができる。ドクターブレード法によって成膜を行うことで、板状アルミナフィラーの板面をグリーンシートの主面とほぼ平行(水平方向)になるように配向させることができる。これによって、十分に優れた強度を有するガラスセラミックス基板を形成することができる。
(3)ビアホール形成工程では、グリーンシートの所定の位置にビアホールを形成する。ビアホールは、レーザーを用いたり、金型で打ち抜いたりして形成することができる。ビアホールの径方向断面における直径は、0.2mm以下であることが好ましい。
(4)充填工程では、スクリーン印刷法等で、グリーンシートの所定の位置に形成されたビアホール内に導体ペーストを充填し、ビア導体パターンを形成する。なお、内層となるグリーンシートの表面に所定のパターンで導体ペーストを印刷し、内部導体パターンを形成してもよい。
導体パターンの形成に用いる導電ペーストは、例えば、銀(Ag)、銀−パラジウム(Ag−Pd)合金、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等の各種導電性金属や合金からなる導電材料と有機ビヒクルとを混練することにより調製することができる。導電ペーストに用いられる有機ビヒクルは、バインダと溶剤とを主たる成分として含有する。バインダ、溶剤及び導電材料の配合比に特に制限はなく、例えば、導電材料に対して、バインダを1〜15質量%、溶剤を10〜50質量%配合することができる。導電ペーストには、必要に応じて各種分散剤や可塑剤等から選択される添加物を添加してもよい。
(5)積層工程では、図7(a)に示すように、ビア導体パターン23がそれぞれ形成されたグリーンシート13a,13b,13c,13dを積層する。積層したグリーンシート13を積層方向に挟むようにして拘束層となる一対の収縮抑制用グリーンシート15を配置する。そして、一対の拘束層とその間に配置されたグリーンシート13を積層方向にプレスすることによって積層体50が得られる。このように、収縮抑制用グリーンシート15を用いることによって、後述の焼成時における積層体50の面内方向(積層方向に垂直な方向)の収縮及び反りの発生を抑制することができる。
また、このように積層体の面内方向の収縮を抑制することにより、収縮ばらつきによって生じる板状アルミナフィラーの配向性の乱れを低減することができる。すなわち、焼成前に配向した板状アルミナフィラーの良好な配向性を維持することが可能となる。したがって、配向度の高い焼結体を得ることが可能となり、強度に一層優れるガラスセラミックス基板とすることができる。
拘束層となる収縮抑制用グリーンシート15に用いられる材料(以下、「収縮抑制材」という)としては、例えば、トリジマイト、クリストバライト、石英、溶融石英、アルミナ、ムライト、ジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムが挙げられる。
収縮抑制材は、グリーンシートの焼成温度で熱収縮しない材料を含有することが好ましい。上述の材料のうち、拘束層としての機能を有し、剥離も容易である点からトリジマイトが好ましい。トリジマイトを用いると、積層体を焼成した後、熱膨張の差により収縮抑制用グリーンシート15が自然剥離する。剥離性を一層向上させるために、拘束層は、炭酸カルシウムからなる層をトリジマイトからなる層の上に積層した積層構造を有することが好ましい。
(6)焼成工程では、積層体を、空気中、800〜1000℃で1時間焼成して、図7(b)に示すように、ビア電極24を有するガラスセラミックス基板12c,12d,12e,12fが積層された積層素体52を得る。本実施形態では、上述の焼成温度で焼成を行うため、ビア電極24の材料として銀や銅を用いることができる。このため、製造コストを低減しつつ、電気抵抗が十分に低減された薄膜回路部品を製造することができる。
(7)電極形成工程では、積層素体52の面52b側に端子電極22を形成する。具体的には、積層素体の面52bにおけるビア電極24の露出面を覆うようにして、積層素体の面52b上に端子電極22を形成する。端子電極22は銀又は銅を含有することが好ましい。そのような端子電極22は、スパッタ等の公知の方法で金属薄膜を形成し、銅又は銀めっき等を膜形成した後、さらにその上にニッケル及び金の2層構造、又はニッケル、パラジウム及び金の3層構造等のめっきによって金属薄膜の上にめっき膜を設けることで形成することができる。これによって、図7(c)に示す薄膜回路形成用基板54を得ることができる。
さらに、薄膜回路形成用基板54の面54a上に、薄膜プロセスを用いて薄膜回路部を形成することができる(図示せず)。薄膜回路部は、例えばスパッタ法、CVD法、蒸着法、又はめっき法等の薄膜プロセスによって金属薄膜を形成した後、フォトエッチング等を行なうことによって形成することができる。
(8)切断工程では、薄膜回路部が形成された基板のダイシングを行う。これによって、所望のサイズを有する薄膜回路部品を製造することができる。本実施形態の製造方法によれば、めっき膜を有する端子電極22を形成した後に、ダイシングによって基板を個片化していることから、ダイシングを行った後にめっき処理を行って端子電極を形成する場合に比べて、工程を大幅に簡略化することができる。
(第1実施形態の変形例)
次に、上述の第1実施形態の変形例を説明する。図8は、本変形例の薄膜回路部品の製造方法の概要を示す説明図である。以下、各工程の詳細について説明する。
本変形例では、第1実施形態と同様にして、(1)準備工程、(2)シート形成工程、(3)ビアホール形成工程、及び(4)充填工程を行う。その後、(5)積層工程において、図8(a)に示すように、拘束層となる一対の収縮抑制用グリーンシート15を配置する前に、グリーンシート13dのグリーンシート13c側とは反対側の表面上に、ビア導体パターン23を覆うようにして導電ペーストをスクリーン印刷法等によって印刷して、端子電極パターン21を形成する。その後、積層したグリーンシート13とともに端子電極パターン21を積層方向に挟むようにして拘束層となる一対の収縮抑制用グリーンシート15を配置し積層方向にプレスする。これによって積層体51が得られる。
端子電極パターンの形成に用いる導体ペーストは、ビアホールに充填する導電ペーストと同じであってもよいし異なっていてもよい。ガラスセラミックス基板との接着性に優れた端子電極を得る観点から、端子電極パターンの形成に用いる導体ペーストは、ビアホールに充填する導体ペーストよりも、ガラスフリットなどのガラス成分の含有量が高いことが好ましい。
その後、第1実施形態と同様にして(6)焼成工程を行う。これによって、図8(b)に示すような、ガラスセラミックス基板12fのガラスセラミックス基板12eとは反対側の面に端子電極部22aを有する積層素体53が得られる。
(7)電極形成工程では、積層素体の一方面53a側に薄膜プロセスによって電気回路を形成し、端子電極部22aの表面を覆うようにニッケル及び金の2層構造、又はニッケル、パラジウム及び金の3層構造等を有するめっき膜からなる表面層22bを形成する。これによって、積層素体の面53b上に端子電極22が形成され、薄膜回路形成用基板54が得られる(図8(c))。なお、(7)電極形成工程において、表面層22bを形成せずに、端子電極部22aをそのまま端子電極22としてもよい。
その後、第1実施形態と同様にして薄膜回路形成用基板54の面54a上に薄膜回路部を形成し、(8)切断工程においてダイシングを行って、薄膜回路部品を製造することができる。
(第2実施形態)
本発明の薄膜回路部品の製造方法の別の実施形態を説明する。本実施形態の薄膜回路部品の製造方法は、以下の工程を有する。
(1)アルミナフィラーを調製する準備工程
(2)ガラス粉末とアルミナフィラーとを混合して誘電体ペーストを調製し、当該誘電体ペーストを成膜して複数のグリーンシートを形成するシート形成工程
(3)グリーンシートにビアホールを形成するビアホール形成工程
(4)グリーンシートのビアホールに導電ペーストを充填するとともに、別のグリーンシートのスルーホールに導電ペーストを充填する充填工程
(5)導電ペーストを充填したグリーンシートと導電ペーストが充填されていないグリーンシートとを積層して積層体を得る積層工程
(6)積層体を焼成して、ビアホール内にビア電極を有するガラスセラミックス基板と、スルーホール内に端子電極部を有するガラスセラミックス基板と、電極を有しないガラスセラミックス基板とが積層された積層素体を得る焼成工程
(7)積層素体の他方面側を研磨して、端子電極部を露出させる研磨工程
(8)積層素体の一方面側に薄膜プロセスによって電気回路を形成し、端子電極部に表面層を設けて端子電極を形成する電極形成工程
(9)薄膜回路形成用基板を切断して個片化し、薄膜回路部品を得る切断工程
図9は、本実施形態の薄膜回路部品の製造方法の概要を示す説明図である。以下、各工程の詳細について説明する。
本実施形態における(1)準備工程及び(2)シート形成工程は、上述の第1実施形態と同様である。(3)ビアホール形成工程では、第1実施形態と同様にして、グリーンシート13a,13b,13c,13dの所定の位置に貫通孔(ビアホール)を形成する。(4)充填工程では、第1実施形態と同様にして、グリーンシート13a,13b,13c,13dの所定の位置に形成された貫通孔(ビアホール)に導体ペーストを充填して、ビア導体パターン23を形成する。また、グリーンシート13eの所定の位置にビアホールの開口面積よりも大きい開口面積を有するスルーホールを形成し、ここに導体ペーストを充填することによって端子電極パターン21を形成する。スルーホールは、レーザーを用いて切断したり、金型で打ち抜いたりして形成することができる。
スルーホールに充填する導体ペーストは、ビアホールに充填する導電ペーストと同じであってもよいし異なっていてもよい。ガラスセラミックス基板との接着性に優れた端子電極を得る観点から、スルーホールに充填する導体ペーストは、ビアホールに充填する導体ペーストよりも、ガラスフリットなどのガラス成分の含有量が高いことが好ましい。一方、ビアホールに充填する導体ペーストは、電気抵抗を低減する観点から、スルーホールに充填する導体ペーストよりも、金属成分の含有量が高いことが好ましい。
(5)積層工程では、図9(a)に示すように、グリーンシート13a,13b,13c,13dと、グリーンシート13eと、電極パターンが形成されていないグリーンシート13fをこの順番で重ね合わせる。そして、重ね合わせたグリーンシート13を積層方向に挟むようにして拘束層となる一対の収縮抑制用グリーンシート15を配置する。そして、一対の収縮抑制用グリーンシート15とその間に配置されたグリーンシート13を積層方向にプレスする。これによって、積層体55が得られる。
(6)焼成工程では、積層体55を第1実施形態と同様にして焼成し、図9(b)に示すような、ビアホール内にビア電極24を有するガラスセラミックス基板12c,12d,12e,12fと、スルーホール内に端子電極部22aを有するガラスセラミックス基板12gと、電極を有しないガラスセラミックス基板12hとが順次積層されたガラスセラミックス基板12からなる積層素体56を得る。
(7)研磨工程では、積層素体56の下面56bをラップ研磨等の公知の研磨方法によって研磨して、ガラスセラミックス基板12hを除去する。これによって、表面57bから端子電極部22aが露出した積層素体57が得られる。このように、ガラスセラミックス基板を研磨して除去し、端子電極部22aを露出させることによって、十分に平坦な面57bを有する積層素体57を得ることができる。このような積層素体57を用いれば、薄膜プロセスによる薄膜プロセスによって容易に電気回路を形成することができる。
(8)電極形成工程では、端子電極部22aの表面を覆うようにニッケル及び金の2層構造、又はニッケル、パラジウム及び金の3層構造等を有するめっき膜からなる表面層22bを設けて端子電極22を形成する。これによって、ガラスセラミックス基板の内部に端子電極22の一部が埋設された薄膜回路形成用基板58を得ることができる(図9(d))。薄膜回路形成用基板58の端子電極22とは反対側の面上には、薄膜プロセスによって電気回路を形成することができる。薄膜回路部は、例えばスパッタ法、CVD法、蒸着法、又はめっき法等の薄膜プロセスによって金属薄膜を形成した後、フォトエッチング等を行なうことによって形成することができる。
(9)切断工程では、薄膜回路部を形成した薄膜回路形成用基板58のダイシングを行って、薄膜回路部品を得ることができる。本実施形態の製造方法によって得られる薄膜回路形成用基板58及び薄膜回路部品は、端子電極22の一部がガラスセラミックス基板12に埋め込まれていることから、端子電極22とガラスセラミックス基板12との固着強度を十分に高くすることができる。また、薄膜回路形成用基板58の底面58bをほぼ平坦にすることができるため、薄膜プロセスやダイシングを効率よく行うことができる。
(第2実施形態の変形例)
次に、上述の第2実施形態の変形例を説明する。図10は、本変形例の薄膜回路部品の製造方法の概要を示す説明図である。以下、工程の詳細について説明する。
本変形例では、第2実施形態と同様にして、(1)準備工程、(2)シート形成工程、(3)ビアホール形成工程及び(4)充填工程を行う。その後、(5)積層工程において、電極パターンが形成されていないグリーンシートを積層せずに、ビア電極パターン23を有するグリーンシート13a,13b,13c,13dと、端子電極パターン21を有するグリーンシート13eと、をこの順番で重ね合わせる。そして、重ね合わせたグリーンシート13を積層方向に挟むようにして拘束層となる一対の収縮抑制用グリーンシート15を配置する。そして、一対の収縮抑制用グリーンシート15とその間に配置されたグリーンシート13を積層方向にプレスする。これによって、積層体59が得られる。
その後、第2実施形態と同様にして、(6)焼成工程及び(8)電極形成工程を行うことによって、薄膜回路形成用基板58が得られる。また、第2の実施形態と同様にして薄膜回路形成用基板58の上に薄膜回路部を形成した後、(9)切断工程を行って、薄膜回路部品を製造することができる。なお、本変形例では、電極パターンが形成されていないグリーンシートを用いていないことから、研磨工程を行う必要はない。
本変形例の製造方法によって得られる薄膜回路形成用基板58及び薄膜回路部品も、端子電極22の一部がガラスセラミックス基板12に埋め込まれていることから、端子電極22とガラスセラミックス基板12との固着強度を十分に高くすることができる。また、薄膜回路形成用基板58の底面58bをほぼ平坦にすることができるため、薄膜プロセスやダイシングを効率よく行うことができる。
以上、本発明の薄膜回路形成用基板、薄膜回路部品及びその製造方法の好適な実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の薄膜回路部品の製造方法では、収縮抑制用グリーンシート15が配置された積層体を焼成して薄膜回路形成用基板及び薄膜回路部品の製造を行ったが、収縮抑制用グリーンシートを配置せずに積層体を焼成して、薄膜回路形成用基板及び薄膜回路部品を製造してもよい。
実施例及び比較例を参照して、本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[薄膜回路部品の作製]
ガラス粉末(SiO2、CaO、MgO、Al2O3及びCuOを主成分とする、ディオプサイドを析出する結晶化ガラス粉末)と、板状アルミナフィラーとを準備した。なお、板状アルミナフィラーの平均板径は2.0μm、平均厚みは0.08μm及び平均アスペクト比は25であった。
アクリル系樹脂を19.4g、トルエンを59.1g、エタノールを3g、可塑剤(ブチルフタリルグリコール酸ブチル)を6.5g混合して、有機ビヒクルを調製した。そして、上述のガラス粉末、上述の板状アルミナフィラー、及び調製した有機ビヒクルを配合し、ボールミルを用いて72時間混合して誘電体ペーストを調製した。
調製した誘電体ペーストをポリエチレンテレフタレートフィルム上にドクターブレード法により成膜してグリーンシートを複数形成した。このグリーンシートに金型打ち抜きによって4つのビアホールを形成した。そして、それぞれのビアホールにスクリーン印刷法によって導電ペーストを充填し、ビア電極パターンを有するグリーンシートを得た。なお、ビアホールに充填する導電ペーストは、銀粉末と有機ビヒクルとを配合して調製した。
このようにして得たグリーンシートを4枚積層して図7(a)に示すようなグリーンシート13を得た。そして、図7(a)に示すようにグリーンシート13を積層方向に挟むようにして拘束層となる一対の収縮抑制用グリーンシート15を配置した。そして、一対の収縮抑制用グリーンシート15とその間に配置されたグリーンシート13を積層方向に74MPaでプレスすることによって積層体50を得た。なお、収縮抑制用グリーンシート15は、トリジマイトと有機ビヒクルとを混合して得られたペーストを、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にドクターブレード法で成膜して作製した。
積層体50を、大気中、900℃で1時間焼成し、多層構造の積層素体52を得た。なお、焼成後の積層素体の合計厚さは0.2mmであり、積層素体52におけるガラスセラミックス基板の板状アルミナフィラーの含有量は30体積%であった。
市販のX線回折装置を用いて、積層素体52におけるガラスセラミックス基板12cのX線回折測定を行った。測定面は、図4の面Aとした。得られたX線回折チャートにおいて、板状アルミナフィラーの(006)結晶面と(104)結晶面のそれぞれの面積基準のピーク強度(I006,I104)を求め、I104に対するI006の比(I006/I104)を求めた(ピーク強度比という)。その結果は、表1に示すとおりであった。
積層素体52の面52b上に、4つの端子電極22を形成した。具体的には、まずスパッタによって、積層素体52の面52b上に、ビア電極24を覆うようにしてスパッタ等の公知の方法で銅薄膜を形成した。その後、銅薄膜を覆うようにして、銅めっきにより膜形成した後、さらにその上にニッケル及び金の2層構造を有するめっき膜を形成し、面52b側から、銅及び金属めっき膜が順次積層された端子電極22を有する薄膜回路形成用基板54を得た。
次に、薄膜回路形成用基板54の面54a上に、薄膜プロセスによって薄膜回路部を形成した。具体的には、スパッタ及びフォトリソ工程によりパターン形成するとともにポリイミドにより絶縁膜および保護膜形成を行うことにより所定の回路形成を行った。薄膜回路部形成後にダイシングを行なって、図2及び図6に示すような薄膜回路部品30を得た。薄膜回路部品30のサイズは、横×縦×厚さ=0.6mm×0.5mm×0.3mmであった。ビア電極24の径方向断面における直径は、0.08mmであり、薄膜回路部品30の端子電極22のサイズは、縦×横×厚さ=0.24mm×0.12mm×0.01mmであった。これを実施例1の薄膜回路部品とした。
[薄膜回路部品の評価]
端子電極とガラスセラミックス基板との固着強度を次の手順で評価した。図11に示すように、台74上に設けられた電極76と薄膜回路部品30の端子電極22とをはんだで接合した。そして、押し台70を薄膜回路部品30の側面に押し付けて、図11の矢印方向に荷重を加え、薄膜回路部品30から端子電極22が剥離するときの荷重を測定し、固着強度を求めた。測定結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1と同様にして誘電体ペーストを調製した。実施例1と同様にしてビア電極パターンを有するグリーンシートを作製した。これに加えて、同じ誘電体ペーストを用いてグリーンシートを形成し、金型打ち抜きによって、ビアホールよりも大きいサイズを有する4つのスルーホールを形成した。そして、ビアホール及びスルーホールにスクリーン印刷法によって導電ペーストを充填し、ビア電極パターンを有するグリーンシートと、端子電極パターンを有するグリーンシートを得た。なお、スルーホールに充填した導電ペーストは、銀粉末とガラスフリットと有機ビヒクルとを配合して調製した。
図10(a)に示すように、ビア電極パターン23を有するグリーンシート13a,13b,13c,13dと、端子電極パターン21を有するグリーンシート13cを、この順で重ね合わせてグリーンシート13を得た。次に、図10(a)に示すようにグリーンシート13を積層方向に挟むようにして拘束層となる一対の収縮抑制用グリーンシート15を配置した。そして、一対の収縮抑制用グリーンシート15とその間に配置されたグリーンシート13を積層方向に74MPaでプレスすることによって積層体59を得た。
実施例1と同様にして、積層体59を焼成し、図10(b)に示すような、ビア電極24を有するガラスセラミックス基板12c,12d,12e,12fと、端子電極部22aを有するガラスセラミックス基板12gがこの順で積層された積層素体57を得た。焼成後の積層素体57の合計厚さは0.2mmであり、積層素体57におけるガラスセラミックス基板の板状アルミナフィラーの含有量は30体積%であった。積層素体57におけるガラスセラミックス基板12cのX線回折測定を実施例1と同様に行って、ピーク強度比を求めた。その結果は、表1に示すとおりであった。
積層素体57の面から露出した端子電極部22aを覆うように、ニッケル及び金の2層構造を有するめっき膜を形成し、端子電極部22a及び金属めっき膜(表面層)22bが順次積層された端子電極22を得た。以上の工程によって、図10(c)に示すような薄膜回路形成用基板58を得た。
薄膜回路形成用基板58の面58aの上に、実施例1と同様にして薄膜プロセスによって薄膜回路部を形成した。薄膜回路部形成後にダイシングを行なって、図1及び図2に示すような薄膜回路部品10を得た。薄膜回路部品10のサイズは、横×縦×厚さ=0.6mm×0.5mm×0.3mmであった。ビア電極24の径方向断面における直径は、0.08mmであり、薄膜回路部品10の端子電極22のサイズは、縦×横×厚さ=0.24mm×0.10mm×0.02mmであった。これを実施例1の薄膜回路部品とした。これを実施例2の薄膜回路部品とした。この薄膜回路部品の評価を実施例1と同様にして行った。固着強度の測定結果を表1に示す。
実施例1及び実施例2の薄膜回路部品は、板状アルミナフィラーが配向した状態でガラス中に分散されたガラスセラミックス基板を備えていたため、固着強度測定時に薄膜回路部品本体は破損せず、端子電極22とガラスセラミックス基板との界面で破壊が発生した。表1に示す結果から明らかなように、実施例1の薄膜回路部品は、実用上十分な固着強度を有することが確認された。また、実施例2の薄膜回路部品は、端子電極がガラスセラミックス基板に埋設されているため、端子電極がガラスセラミックス基板に埋設されていない実施例1の薄膜回路部品よりも、さらに優れた固着強度を有することが確認された。