JP2011207841A - 放射線障害防護剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】放射線被ばくや放射線療法に伴う障害を予防または治療し、生存率を上げる医薬を提供することである。
【解決手段】ニトロプルシドまたはその薬理学的に許容される塩を含有する、放射線障害防護剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、放射線被ばくや放射線療法による放射線障害の防護に有用な医薬に関する。
原子力発電所の作業者、非破壊検査員、放射性検査薬を扱う臨床検査技師ならびにレントゲン検査・癌等の放射線療法に従事する医師や診療放射線技師は、わずかな量でも業務中、常に放射線を被ばくしている可能性がある。また、原子力発電所の事故が起きると、作業者の他、周辺地域の住民も一度に大量の放射線を被ばくする可能性がある。
放射線を被ばくすると、生体内に酸素ラジカルが発生し、発生した酸素ラジカルによって、細胞死、突然変異等の障害が引き起こされる。そして、放射線の吸収線量に応じて造血・免疫系、消化器系、呼吸器系、中枢神経系等に障害を生じ、これを原因として被ばく者は死亡する場合がある。
また、放射線療法を受ける癌患者等は、患部に大量の放射線を受けるが、この時、患部周辺の正常組織にも放射線を受けるため、放射線によって生じた酸素ラジカルにより造血・免疫系、消化器系等に障害を生じる場合がある。
このような放射線障害に対して、特許文献1では、2−ピラノン誘導体類が、免疫異常により減少することで知られている特定の血液細胞を増加させることを開示している。また、特許文献2では、1,2−フェニル−1,2−ベンゾイソセレナゾール−3(2H)−オンの投与によって、X線照射されたマウスの生存率が有意に増加することを開示している。しかしながら、これらの剤は、放射線被ばくや放射線療法に伴う障害を防護する放射線障害防護剤としては依然として満足できるものではない。
また、本発明者らによるこれまでの研究により、一酸化窒素が、一過性の放射線抵抗性の獲得や放射線適応応答に関与することが明らかとなり(非特許文献1〜4)、特に、一酸化窒素発生剤である硝酸イソソルビドでwtp53細胞を処理すると一過性の放射線抵抗性を獲得することが明らかになった(非特許文献3)。
一方、ニトロプルシドは、公知の一酸化窒素発生剤であり、血圧降下剤として上市されている。また、ニトロプルシドの薬理効果として血中ホモシステイン濃度抑制作用(特許文献3)が知られている。しかし、この化合物が放射線障害を防護する剤として有用であるということは、知られていない。
特開平5−213758号公報 特開平1−135718号公報 特開平2003−95959号公報
Int J Radiat Biol. 2000 Dec; 76(12): 1649-57 Radiat Res. 2001 Mar; 155(3): 387-96 Cancer Res. 2007 Sep; 67(18): 8574-9 Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2008 Jun; 71(2): 550-8
上記の事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、放射線被ばくや放射線療法に伴う障害を予防または治療し、生存率を上げる医薬を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、従来、高血圧症や狭心症の治療薬として知られていたニトロプルシドが意外にも放射線障害の防護に有用であり、放射線障害を起こした個体の生存率を上昇させることを見出した。
更に、放射線障害からの防護に効果的な投与スケジュールについて検討した。放射線により発生する酸素ラジカルの反応産物の半減期は、通常5分〜20時間といわれている。放射線照射の直後にニトロプルシドを投与することにより良好な放射線防護効果が認められたことから、ニトロプルシドから産生される一酸化窒素が、放射線により発生する酸素ラジカルを消去すると推測された。しかし、更に詳細な検討を加えたところ、意外にも、放射線照射直後のニトロプルシド投与に加えて、放射線による酸素ラジカルの発生が既に終息した時期(放射線照射から1日後以降)に更にニトロプルシドを追加投与することにより、放射線障害防護効果が増強されることを見出した。このような放射線障害防護効果の増強は、試行した一酸化窒素発生剤の中で、ニトロプルシドにのみ確認された。
以上の知見に基づき本発明が完成された。即ち、本発明は以下の通りである。
[1]ニトロプルシドまたはその薬理学的に許容される塩を含有する、放射線障害防護剤。
[2]放射線被ばくの前または後60分以内に投与を開始する、[1]記載の放射線障害防護剤。
[3]放射線被ばくから1日後以降且つ10日以内に更に1回以上追加投与する、[2]記載の放射線障害防護剤。
[4]放射線被ばくの翌日に追加投与する、[3]記載の放射線障害防護剤。
[5]放射線被ばくの2日後に更に追加投与する、[4]記載の放射線障害防護剤
[6]放射線被ばくから6〜10日後に、更に追加投与する、[4]または[5]に記載の放射線障害防護剤。
[7]1回の投与あたり、ニトロプルシドとして0.9〜3.6mg/kgの用量で投与する、[1]〜[6]のいずれかに記載の放射線障害防護剤。
[8]放射線障害が急性放射線障害である、[1]〜[7]のいずれかに記載の放射線障害防護剤。
[9]急性放射線障害が造血・免疫系障害である、[8]記載の放射線障害防護剤。
本発明によれば、造血・免疫系機能の改善効果、延命効果および生存率の向上効果が得られ、放射線被ばくや放射線療法に伴う障害に有用な放射線障害防護剤を提供することができる。しかも、毒性が低く、低用量投与で放射線障害の防護能が得られる。したがって、短時間に放射線被ばくしたときの治療薬はもとより、癌等の放射線療法が長期に必要な患者、放射線関連の業務に携わる従事者に対しても放射線障害の軽減、健康維持の観点から有用である。
X線照射後にニトロプルシドナトリウムを投与(照射直後とX線照射から1日後、2日後および7日後の計4回)したマウスと、X線照射のみのマウスの、X線照射後の生存率を示す図である。 X線照射後にニトロプルシドナトリウムを投与(照射直後とX線照射から1日後、2日後および7日後の計4回)したマウスと、X線照射のみのマウスの、X線照射から14日目における白血球、赤血球および血小板の値を示す図である。 X線照射直後にニトロプルシドナトリウム、硝酸イソソルビド、ニコランジル、ニトログリセリンまたはニプラジロールを投与したマウスと、X線照射のみで薬剤を投与しないマウス(NT)の、X線照射後の生存日数を示す図である。また、図におけるコントロールは、X線を照射せず、薬剤のみを投与スケジュールに従って投与したマウスである。 X線照射直後とX線照射から1日後の計2回、ニトロプルシドナトリウム、硝酸イソソルビド、ニコランジル、ニトログリセリンまたはニプラジロールを投与したマウスと、X線照射のみで薬剤を投与しないマウス(NT)の、X線照射後の生存日数を示す図である。また、図におけるコントロールは、X線を照射せず、薬剤のみを投与スケジュールに従って投与したマウスである。 X線照射直後とX線照射から1日後および2日後の計3回、ニトロプルシドナトリウムを投与したマウスと、X線照射のみで薬剤を投与しないマウス(NT)の、X線照射後の生存日数を示す図である。また、図におけるコントロールは、X線を照射せず、薬剤のみを投与スケジュールに従って投与したマウスである。 X線照射直後とX線照射から1日後、2日後および7日後の計4回、ニトロプルシドナトリウム、硝酸イソソルビド、ニコランジル、ニトログリセリンまたはニプラジロールを投与したマウスと、X線照射のみで薬剤を投与しないマウス(NT)の、X線照射後の生存日数を示す図である。また、図におけるコントロールは、X線を照射せず、薬剤のみを投与スケジュールに従って投与したマウスである。
本発明は、ニトロプルシド、またはその薬理学的に許容される塩を含有する放射線障害防護剤を提供するものである。
本発明におけるニトロプルシドとは、式(Fe(CN)NO)2−で表される化合物であり、一酸化窒素を放出する作用を有する。放射線に被ばくすると生体内には酸素ラジカルが発生し、様々な障害を引き起こす。理論的には拘束されないが、一酸化窒素は、放射線により発生する酸素ラジカルをラジカル反応により消去し得るため、ニトロプルシドは放射線障害防護能を有すると考えられる。
ニトロプルシドの薬理学的に許容される塩としては、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩などが挙げられる。
無機塩基との塩の好適な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;ならびにアルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
有機塩基との塩の好適な例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。
ニトロプルシドの薬理学的に許容される塩の好適な例としては、ニトロプルシドのナトリウム塩(NaFe(CN)NO)やカリウム塩(KFe(CN)NO)が挙げられる。
ニトロプルシドまたはその薬理学的に許容される塩は、結晶であってもまた非結晶であってもよく、水和物および/または溶媒和物の形で存在することもあるので、これらの水和物および/または溶媒和物も「ニトロプルシドまたはその薬理学的に許容される塩」に包含される。化学量論量の水和物および凍結乾燥のような方法によって得られる種々の量の水を含む化合物も本発明の範囲内にある。ニトロプルシドのナトリウム塩やカリウム塩は、通常2水和物の形で利用される。
本発明における放射線とは、放射性物質から放出されるα線、β線、γ線や人工的に作り出したX線、陽子線、炭素線、中性線、電子線を含み、本発明における放射線障害とは、かかる放射線の被ばくや放射線療法に伴う障害であり、天然に存在する放射線源による被ばく(自然被ばく)は含まない。例えば、原発事故や核爆発による全身性の放射線被ばくに起因する急性および/または晩発性放射線障害、あるいは癌治療等の医療目的での放射線照射または放射線被ばく事故等による局所性の放射線被ばくによる急性および/または晩発性放射線障害が挙げられる。これらのうち、局所性または全身性の急性放射線障害の防護に用いることが好ましく、特に好ましくは造血・免疫系障害である。
また、本発明における防護は、このような放射線被ばくや放射線療法に伴う障害の予防および/または治療が含まれるが、治療に用いることが好ましい。
本発明の放射線障害防護剤は、ニトロプルシド、またはその薬理学的に許容される塩を活性成分として含有し、任意の他の治療のための有効成分との混合物として含有することもできる。また、放射線障害防護剤は、活性成分を薬理学的に許容される一種もしくはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造される。
薬理学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、その具体例としては、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などが挙げられる。製剤化の際には、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの製剤添加剤を用いてもよい。
また、投与経路は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、通常は、経皮、静脈内等の非経口または経口で投与される。非経口投与に適当な製剤は、好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物を含む滅菌水性剤からなる。例えば、注射剤の場合は、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩水とブドウ糖溶液の混合物からなる担体等を用いて注射用の溶液を調製する。これら非経口剤には、更に、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤等を添加することもできる。また、非経口に適当な製剤は、本発明におけるニトロプルシド、またはその薬理学的に許容される塩を、注射用蒸留水または植物油に懸濁して調製したものであってもよく、この場合、必要に応じて基剤、懸濁化剤、粘調剤等を添加することができる。また、非経口に適当な製剤は、本発明におけるニトロプルシド、またはその薬理学的に許容される塩の粉末または凍結乾燥品を用時溶解する形であってもよく、必要に応じて賦形剤等を添加することができる。経口製剤としては、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊剤を含む)、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤、顆粒剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などが挙げられる。これらの製剤は、速放性製剤または除放性製剤などの放出制御製剤(例、除放性マイクロカプセル)であってもよい。
なお、本発明におけるニトロプルシド、またはその薬理学的に許容される塩として、ニトロプルシドナトリウムを有効成分とする血圧降下剤(注射剤)が、すでに臨床において使用されているので〔ニトプロ(丸石製薬(株)製)、Nitropress(Abbott(株)製)、Nipride(Roche(株)製)〕、本発明の放射線障害防護剤として、上記市販製剤をそのまま用いることができる。
本発明の放射線障害防護剤の投与対象は、哺乳動物であり、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ等が挙げられ、好ましくはヒトである。
本発明の放射線障害防護剤は、放射線を被ばくし、生体内で酸素ラジカルが発生する直前または直後に投与することが好ましく、具体的には、放射線被ばくの前または後60分以内、好ましくは30分以内、より好ましくは15分以内、さらに好ましくは10分以内、特に好ましくは5分以内に投与を開始する。また、放射線被ばくから、放射線による酸素ラジカルの発生が既に終息した時期(放射線被ばくから1日後以降)に更に追加投与をすることが、延命効果や生存率向上の観点から好ましい。具体的には、放射線被ばくから1日後以降且つ10日以内(より好ましくは8日以内、特に好ましくは7日以内)に更に1回以上(例えば1回、好ましくは2回、より好ましくは3回)追加投与することが好ましい。投与と投与の間隔は、通常0.5日以上(例えば1日)であるが、放射線被ばくの前または後60分以内の単独投与と比較して放射線障害防護効果が増強される限りこれに限定されない。例えば、追加投与を放射線被ばくの翌日に行うことが好ましく、放射線被ばくの翌日と2日後に行うことがさらに好ましい。
また、放射線被ばくの翌日、もしくは翌日と2日後の追加投与に加えて、放射線被ばくから6〜10日後(好ましくは7日後)に、更に追加投与することが延命効果や生存率を更に向上させる観点から好ましい。具体的な投与スケジュールの例としては、放射線被ばくの前または後60分以内、放射線被ばくから1日後、2日後および7日後の計4回投与を挙げることができる。
なお、上記の追加投与の記載は、それ以外の時期に投与することを排除するものではない。
本発明の放射線障害防護剤の投与量は、放射線障害の防護(予防または治療)の目的、患者の年齢や状態などの条件に応じて適宜選択可能であるが、生体内でのニトロプルシドまたはその薬理学的に許容される塩の濃度が、投与直後に15〜60μM(好ましくは30〜60μM)となるように、投与することが好ましい。具体的に投与量は、ニトロプルシドが細胞外液に均等分配されると仮定して、平均細胞外液量、ニトロプルシドの分子量(251.95、ニトロプルシドナトリウムを用いる場合は297.95)および上記で設定した生体内でのニトロプルシドの投与直後の濃度から算出することができる。また平均細胞外液量は、細胞外液の比重を1.00として、ヒトの場合は体重(kg)×0.2、マウスの場合は体重(kg)×0.35から得られる。ただし、血圧降下作用が生じないような低用量が好ましく、1回の投与あたりの投与量は、体重1kgあたり、ニトロプルシドとして0.9〜3.6mg、さらに好ましくは1.8〜3.6mg、特に好ましくは2.3〜3.6mgである。また、投与制限速度は、2.0〜2.5μg/kg/分である。
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
以下に実施例で用いた材料をまとめて記載する。
<正常ヒト線維芽細胞>
AG1522細胞を用いた。AG1522細胞は、15%ウシ胎仔血清および20mM HEPESを含むダルベッコ変法培養液を用いて培養した。
<正常マウス>
8週齢のjcl:ICRマウスを用いた。jcl:ICRマウスは市販固形飼料で飼育した。
<ニトロプルシド>
丸石製薬(株)製のニトプロ(登録商標、ニトロプルシドナトリウム注射液)を用いた。
<硝酸イソソルビド>
エーザイ(株)製のニトロール(登録商標)注を用いた。
<ニトログリセリン>
日本化薬(株)製のミリスロール(登録商標)注を用いた。
<ニコランジル>
富士製薬(株)製のニコランジル点滴静注用を用いた。
<ニプラジロール>
(株)ニッテン製のニプラジロール点眼液0.25%「ニッテン」を用いた。
また、実施例における、「生体内での投与直後の濃度が30μMとなるようにニトロプルシドナトリウムを投与した」とは、ニトロプルシドナトリウムが細胞外液に均等分配されると仮定して、平均細胞外液量、ニトロプルシドナトリウムの分子量(297.95)および設定した生体内でのニトロプルシドナトリウムの投与直後の濃度(30μM)から投与量を算出し、投与したものである。また、平均細胞外液量は、マウスの細胞外液の比重を1.00とし、マウスの体重(kg)×0.35から求めた。
以下に試験方法および結果を記載する。
<毒性試験>
正常マウスに対して、生体内での投与直後の濃度が30μMとなるようにニトロプルシドナトリウムを腹腔内投与するとともに(投与量:2.8〜3.2mg/kg)、この腹腔内投与(1回目投与)から1日後、2日後および7日後に1回目投与と同様にニトロプルシドナトリウムを更に投与し経過観察したが、マウスの死亡は認められなかった(計4回投与、n=3)。
また、ニトロプルシドナトリウムと同じく一酸化窒素を放出する作用を有する硝酸イソソルビド、ニコランジル、ニトログリセリンおよびニプラジロールについて同様に行ったが、これらの薬剤に対して死亡するマウスは認められなかった。
<X線照射後の生存率>
1.AG1522細胞
(1)AG1522細胞培養ディッシュに対し、X線発生装置(HITEX 150 ハイテックス(株)製)を用いて、X線を線量率1Gy/minで3.5Gy照射(0.5mmのアルミニウム・フィルターを使用)したところ、生存率は約10%(5枚のディッシュの平均値)であった。
(2)AG1522細胞培養ディッシュを数枚用意し、各ディッシュの培養液中のニトロプルシドナトリウム濃度が0.3μMまたは1.0μMとなるようにニトロプルシドナトリウムを添加してから120分後、X線発生装置(HITEX 150 ハイテックス(株)製)を用いて、各ディッシュに対しX線を線量率1Gy/minで3.5Gy照射(0.5mmのアルミニウム・フィルターを使用)したところ、生存率は、ニトロプルシドナトリウム濃度が0.3μMの場合は48%、1.0μMの場合は57%(いずれも5枚のディッシュの平均値である。)となり、ニトロプルシドナトリウムを添加しない(1)と比較して生存率は上昇した。
(3)ニトロプルシドナトリウムと同じく一酸化窒素を放出する作用を有する硝酸イソソルビド、ニコランジル、ニトログリセリンおよびニプラジロールについて(2)と同様に行ったところ、いずれも生存率は10%を超え(硝酸イソソルビドは24%、ニコランジルは27%、ニトログリセリンは16%、ニプラジロールは29%)、これらの薬剤を添加しない(1)と比較して生存率は上昇した。
2.正常マウス
試験1
(1)正常マウス(n=51)に対し、X線発生装置(MBR−1520A−3 日立メディコ(株)製)を用いて、X線を線量率0.5Gy/minで6.5Gy照射(0.5mmアルミニウム/0.3mm銅・フィルターを使用)したところ、生存率は約30〜40%であった(図1参照)。
(2)正常マウス(n=51)に対し、X線発生装置(MBR−1520A−3 日立メディコ(株)製)を用いて、X線を線量率0.5Gy/minで6.5Gy照射(0.5mmアルミニウム/0.3mm銅・フィルターを使用)した。次に、生体内での投与直後の濃度が30μMとなるように、X線照射したマウスにニトロプルシドナトリウムを腹腔内投与した(1回目投与、X線照射から5分後、投与量:2.8〜3.2mg/kg)。さらに、X線照射から1日後、2日後および7日後に1回目投与と同様にニトロプルシドナトリウムを腹腔内投与した。その結果、生存率は約80%となり、ニトロプルシドナトリウムを投与しない(1)と比較して、大幅に生存率が向上した(図1参照)。
(3)また、(1)および(2)において、X線照射から14日目に血液を採取し、血液検査を行ったところ(n=10)、ニトロプルシドナトリウムを腹腔内投与したネズミの白血球、赤血球および血小板の値が、投与しない場合と比較して上昇し、造血・免疫系機能の改善効果が認められた(図2参照)。
試験2
(1)正常マウスに対し、X線発生装置(MBR−1520A−3 日立メディコ(株)製)を用いて、X線を線量率0.5Gy/minで6.5Gy照射(0.5mmアルミニウム/0.3mm銅・フィルターを使用)した。
(2)次に、生体内での投与直後の濃度が30μMとなるように、(1)でX線照射したマウスにニトロプルシドナトリウムを腹腔内投与した(計1回投与、n=3、X線照射から5分後、投与量:2.8〜3.2mg/kg、図3参照)。
(3)(2)と同様にして、硝酸イソソルビド、ニコランジル、ニトログリセリンまたはニプラジロールを、(1)のX線照射したマウスにそれぞれ腹腔内投与した(各薬剤につきそれぞれn=3、図3参照)。
試験3
試験3では、薬剤としてニトロプルシドナトリウム、硝酸イソソルビド、ニコランジル、ニトログリセリンおよびニプラジロールを用いた。そして、試験2と同様にして、正常マウスにX線照射するとともに、X線照射したマウスに対して薬剤を投与し(1回目投与)、X線照射から1日後に1回目投与と同様に薬剤を投与した(計2回投与、各薬剤につきそれぞれn=3、図4参照)。
試験4
試験4では薬剤としてニトロプルシドナトリウムを用いた。そして、試験2と同様にして、正常マウスにX線照射するとともに、X線照射したマウスに対して薬剤を投与し(1回目投与)、X線照射から1日後および2日後に1回目投与と同様に薬剤を投与した(計3回投与、n=3、図5参照)。
試験5
試験5では、薬剤として、ニトロプルシドナトリウム、硝酸イソソルビド、ニコランジル、ニトログリセリンおよびニプラジロールを用いた。そして、試験2と同様にして正常マウスにX線照射するとともに、X線照射したマウスに対して薬剤を投与し(1回目投与)、X線照射から1日後、2日後および7日後に1回目投与と同様に薬剤を投与した(計4回投与、各薬剤につきそれぞれn=3、図6参照)。
試験2〜5より、ニトロプルシドナトリウムは、使用した薬剤の中で高い延命効果を有していた(図3参照)。また、X線照射直後の投与に加えて、更に追加投与すると延命効果が大幅に向上した(図3〜図6参照)。特に、X線照射から1日後および2日後に連日して追加投与するとともに、X線照射から7日後に更に追加投与すると、X線照射から30日後もマウスが3匹中2匹生存していた(図6参照)。
一方、硝酸イソソルビド、ニコランジル、ニトログリセリンおよびニプラジロールは延命効果が認められたが、ニトロプルシドナトリウムのような高い延命効果は得られなかった(図3参照)。また、ニトロプルシドナトリウムのような追加投与による延命効果の向上は認められなかった(図4および図6参照)。
以上より、ニトロプルシドナトリウムは、毒性が低く、しかも低用量投与で造血・免疫系機能の改善効果、延命効果および生存率の向上効果が得られた。また、ニトロプルシドナトリウムと同じく一酸化窒素を放出する作用を有する硝酸イソソルビド、ニコランジル、ニトログリセリンおよびニプラジロールと比較しても、優れた放射線障害防護能を有していた。
本発明の放射線障害防護剤は、造血・免疫系機能の改善効果、延命効果、生存率の向上効果を有し、放射線被ばくや放射線療法に伴う障害の予防や治療に有用である。

Claims (9)

  1. ニトロプルシドまたはその薬理学的に許容される塩を含有する、放射線障害防護剤。
  2. 放射線被ばくの前または後60分以内に投与を開始する、請求項1記載の放射線障害防護剤。
  3. 放射線被ばくから1日後以降且つ10日以内に更に1回以上追加投与する、請求項2記載の放射線障害防護剤。
  4. 放射線被ばくの翌日に追加投与する、請求項3記載の放射線障害防護剤。
  5. 放射線被ばくの2日後に更に追加投与する、請求項4記載の放射線障害防護剤。
  6. 放射線被ばくから6〜10日後に、更に追加投与する、請求項4または5に記載の放射線障害防護剤。
  7. 1回の投与あたり、ニトロプルシドとして0.9〜3.6mg/kgの用量で投与する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の放射線障害防護剤。
  8. 放射線障害が急性放射線障害である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の放射線障害防護剤。
  9. 急性放射線障害が造血・免疫系障害である、請求項8記載の放射線障害防護剤。
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