JP2011207655A - 接合材料およびそれを用いた部材接合方法 - Google Patents

接合材料およびそれを用いた部材接合方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性および耐候性に優れた半導体発光素子デバイス等の製品を製造することが可能な接合材料を提供する。
【解決手段】軟化点500℃以下のガラスフィルムからなることを特徴とする接合材料、および当該接合材料を複数の被接合部材間に設置し、接合材料の軟化点より低い温度で加熱接合することを特徴とする部材接合方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば半導体発光素子デバイス等の製品において、構成部材の接合に好適な接合材料に関するものである。
近年、白色LED等の半導体発光素子デバイスは、白熱電球や蛍光灯に代わる次世代の光源として照明用途への応用が期待されている。一般に、白色LEDは無機蛍光体粉末と樹脂の混合物を励起光源であるLEDチップ上に被覆モールドした構造を有している。しかしながら、LEDチップから照射される熱や光は、限られた部分に集中的に照射されるため、耐熱性に乏しい樹脂が容易に着色あるいは変形してしまう。そのため、短期間で発光色の変化が生じ、半導体発光素子デバイスとしての寿命が短くなるという問題がある。LEDチップの高出力化に伴ってこのような問題は深刻化すると考えられており、耐熱性に優れる半導体発光素子デバイスの開発が望まれていた。
これに対し、樹脂を用いない無機材料のみからなる波長変換部材を使用した半導体発光素子デバイスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。当該波長変換部材には耐熱性に劣る樹脂が使用されておらず無機材料のみからなるため、優れた耐熱性を有し熱劣化がほとんど生じない。
例えばフリップチップタイプの半導体発光素子デバイスの場合、波長変換部材は半導体発光素子基板上にシリコーン樹脂等の樹脂からなる接合材料を用いて直接接合される。シリコーン樹脂等の樹脂を用いれば、比較的低温で接合が可能であるため、波長変換部材や半導体発光素子等の構成部材が接合時に熱変形することがない。
特開2003−258308号公報
波長変換部材と半導体発光素子基板の接合を樹脂を用いて行った場合、半導体発光素子から発生する熱によって樹脂が変色し、経時的に励起光の透過率が低下し、光束値が低下しやすくなる。また、熱による樹脂の変質が原因で剥離等の破壊が生じるおそれもある。
したがって、本発明は、耐熱性および耐候性に優れた半導体発光素子デバイス等の製品を製造することが可能な接合材料を提供することを目的とする。
本発明者等は鋭意検討した結果、半導体発光素子デバイス等の製品において構成部材の接合に用いられていた樹脂の代わりに、耐熱性および耐候性に優れた特定の部材を用いることで前記課題を解決できることを見出し、本発明として提案するものである。
すなわち、本発明は、軟化点500℃以下のガラスフィルムからなることを特徴とする接合材料に関する。
既述のように、例えば半導体発光素子デバイスにおいて、半導体発光素子と波長変換部材を樹脂により接合した場合、半導体発光素子から発生する熱や光により樹脂が変色するという問題があった。一方、本発明の接合材料は、無機材料であるガラスフィルムからなるため、半導体発光素子からの発熱による変色を防止することができる。その結果、経時的な光束値の低下を防止することが可能となる。
ところで、ガラスフィルムによる接合は、複数の被接合部材間にガラスフィルムを設置し、必要に応じて外部から圧力を印加した状態で、ガラスフィルムの軟化点付近にまで加熱することにより行われる。このように、ガラスフィルムによる接合は、樹脂を用いた接合と比較して高温下で行われるため、波長変換部材や半導体発光素子等の被接合部材自体の特性が劣化したり、熱変形したりするおそれがある。本発明の接合材料は500℃以下という低軟化点のガラスフィルムを用いているため、ガラス材料にもかかわらず低温接合が可能となり、接合時における被接合部材の特性劣化や熱変形が生じにくい。
なお、接合材料としてガラスフリットやゾルゲルガラス等を用いた場合、接合層の厚さを均一に調整することが困難であったり、熱処理後に気泡が発生しやすいという問題がある。例えば半導体発光素子デバイスにおいて、半導体発光素子と波長変換部材の接合層の厚さが不均一であると発光色にばらつきが生じやすく、また接合層に気泡が存在すると光散乱の原因となり、発光効率が低下しやすくなる。なお、ガラスフリットは通常ペースト状で使用されるため、ペースト化工程および脱バインダー工程が必要となり製造工程が煩雑になる。
一方、接合材料としてガラスフィルムを用いれば、接合層の厚さを均一にすることが容易であり、気泡も発生しくい。特に、ガラスフィルムの厚さを適宜選択することにより、接合層の厚さを薄く(例えば200μm以下)することも容易である。また、製造工程も非常にシンプルである。
また本発明の接合部材を用いれば、従来の樹脂接合剤と比較して接合強度が高く、被接合部材同士の剥離の問題を大幅に改善することができる。
第二に、本発明の接合材料は、ガラスフィルムの厚さが200μm以下であることを特徴とする。
ガラスフィルムの厚さを200μm以下と非常に薄くすることにより、接合材料内部での光の吸収を抑制できる。したがって、例えば半導体発光素子デバイスにおいて、光の吸収ロスを低減することができ、発光効率を向上させることができる。また、接合材料と各被接合部材との間の線熱膨張係数差が大きくても、発生応力が小さくなるため剥離などの破壊が発生しにくい。
第三に、本発明の接合材料は、ガラスフィルムがスズリン酸塩ガラスからなることを特徴とする。
スズリン酸塩ガラスは、軟化点を低くしやすいため、本発明の接合材料として好適である。
第四に、本発明の接合材料は、スズリン酸塩ガラスが、組成としてモル%で、SnO 35〜80%、P 5〜40%、B 1〜30%を含有することを特徴とする。
スズリン酸塩ガラスが上記組成を有することにより、低軟化点であり、かつ耐候性に優れた接合材料を得ることができる。
第五に、本発明は、前記いずれかに記載の接合材料を被接合部材間に設置し、接合材料の軟化点より低い温度で加熱接合することを特徴とする部材の接合方法に関する。
本発明の接合材料を用いたフリップチップタイプの半導体発光素子デバイスの模式図である。
本発明の接合材料に用いられるガラスフィルムとしては、軟化点が500℃以下、好ましくは450℃以下のものであれば材質は特に限定されず、例えばスズリン酸塩ガラスや亜鉛ホウ酸ガラス等が使用可能である。特にスズリン酸塩ガラスは軟化点を低くしやすいため好ましい。
スズリン酸塩ガラスとしては、組成としてモル%で、SnO 35〜80%、P 5〜40%、B 1〜30%を含有するものであることが好ましい。ガラスの組成を上記のように限定した理由は以下の通りである。
SnOはガラス骨格を形成するとともに、軟化点を低下させる成分である。SnOの含有量は35〜80%、40〜70%、50〜70%、特に55〜65%であることが好ましい。SnOの含有量が少なくなると、軟化点が上昇して低温接合が困難となる傾向がある。一方、SnOの含有量が多くなると、ガラス中にSnに起因する失透ブツが析出し、透過率が低下する傾向にある。また、ガラス化しにくくなる。
はガラス骨格を形成する成分である。Pの含有量は5〜40%、10〜30%、特に15〜24%であることが好ましい。Pの含有量が少なくなると、ガラス化しにくくなる。一方、Pの含有量が多くなると、軟化点が上昇して低温接合が困難となる傾向がある。また、耐候性が著しく低下する傾向にある。
なお、SnO/Pの値はモル比で0.9〜16、1.5〜16、1.5〜10、特に2〜5の範囲であることが好ましい。SnO/Pの値が0.9より小さくなると、軟化点が上昇して低温接合が困難となる傾向がある。また、耐候性が著しく低下する傾向にある。一方、SnO/Pの値が16より大きくなると、ガラス中にSnに起因する失透ブツが析出し、ガラスの透過率が低下する傾向にある。
は耐候性を向上させる成分である。また、ガラスを安定化させる成分でもある。Bの含有量は1〜30%、2〜20%、特に4〜18%であることが好ましい。Bの含有量が少なくなると、上記効果が得られにくくなる。一方、Bの含有量が多くなると、逆に耐候性が低下しやすくなる。また、軟化点が上昇して低温接合が困難となる傾向がある。
なお、上記成分以外にも下記の成分を添加することが可能である。
Alはガラスを安定化させる成分である。Alの含有量は0〜10%、0〜7%、特に1〜5%であることが好ましい。Alの含有量が多くなると、軟化点が上昇して低温接合が困難となる傾向がある。
SiOはAlと同様にガラスを安定化させる成分である。SiOの含有量は0〜10%、0〜7%、特に0.1〜5%であることが好ましい。SiOの含有量が多くなると、軟化点が上昇して低温接合が困難となる傾向がある。また、ガラスが分相しやすくなる。
LiOは軟化点を著しく低下させる成分である。LiOの含有量は0〜10%、0〜7%、特に1〜5%であることが好ましい。LiOの含有量が多くなると、ガラスが著しく不安定になってガラス化しにくくなる。
NaOはガラスの軟化点を低下させる成分である。NaOの含有量は0〜10%、0〜7%、特に0.1〜5%であることが好ましい。NaOの含有量が多くなると、ガラスが不安定になってガラス化しにくくなる。
Oはガラスの軟化点を若干低下させる成分である。KOの含有量は0〜10%、0〜7%、特に1〜5%であることが好ましい。KOの含有量が多くなると、ガラスが不安定になってガラス化しにくくなる。
なお、LiO、NaO、KOは合量で0〜10%、0〜7%、特に1〜5%であることが好ましい。これら成分の合量が10%より多くなると、ガラスが不安定になってガラス化しにくくなる。
MgO、CaO、SrOはガラスを安定化させてガラス化しやすくする成分である。これらの成分の含有量はそれぞれ0〜10%、0〜7%、特に1〜5%であることが好ましい。各成分の含有量が上記範囲より多くなると、失透しやすくなり透過率低下の原因となる。
BaOもガラスを安定化させてガラス化しやすくする成分である。BaOの含有量は0〜5%、0〜3%、特に0.1〜1%であることが好ましい。BaOの含有量が多くなると、ガラスが著しく失透して透過率低下の原因になりやすい。
なお、MgO、CaO、SrO、BaOは合量で0〜10%、0〜7%、特に1〜5%であることが好ましい。これら成分の合量が10%より多くなると、失透して透過率低下の原因となるおそれがある。
また、上記成分以外にも、本発明の主旨を損なわない範囲で種々の成分を添加することができる。例えば、耐候性を向上させるために、ZnO、Ta、TiO、Nb、Gd、Laを合量で10%まで添加してもよい。
ただし、Fe、Cr、CoO、CuO、NiO等の着色成分は、ガラスを着色させて、ガラスの内部透過率を低下させるため、これら成分は合量で0.02%以下に抑えることが好ましい。
ガラスフィルムの厚さは200μm以下、100μm以下、特に50μm以下であることが好ましい。ガラスフィルムの厚さが200μmを超えると、接合材料内部での光の吸収が大きくなる。例えば、半導体発光素子デバイスの構成部材の接合に使用した場合、発光効率の低下の原因となる。また、接合材料と各被接合部材との間の線熱膨張係数差が大きい場合に、発生応力が大きくなって剥離などの破壊が発生しやすくなる。一方、ガラスフィルムの厚さが薄すぎると、破損しやすく取り扱いが困難になるため、下限は1μm以上、特に5μm以上であることが好ましい。
本発明の接合材料は、上記材質からなる略矩形状の母材ガラスを所定条件で加熱しながら延伸する方法や、上記材質の溶融ガラスをオーバーフローダウンドロー法やスロットダウンドロー法により成形する方法によって作製することができる。
本発明の接合材料を用いて部材の接合を行う際の接合温度は、接合材料の軟化点より低いことが好ましい。具体的には、接合材料の軟化点と接合温度の差(接合材料の軟化点−接合温度)は0℃超、さらには5℃以上、特に10℃以上であることが好ましい。接合温度が接合材料の軟化点以上であると、接合時に接合材料が流動して気泡や空隙が発生しやすくなったり、接合層の厚さが不均一になりやすくなる。一方、接合温度が接合材料の軟化点と比較して低すぎる場合は、接合材料の軟化状態が不十分となり、接合が困難になる傾向がある。したがって、接合材料の軟化点と接合温度の差は35℃以下、特に30℃以下であることが好ましい。
なお本発明の接合材料の軟化点は被接合部材の軟化点よりも低いことが好ましく、それにより接合時の被接合部材の軟化変形を抑制することができる。具体的には、接合材料の軟化点は、被接合部材の軟化点よりも50℃以上、特に100℃以上低いことが好ましい。
接合材料と各被接合部材との線熱膨張係数差が小さいほど、接合時の熱や得られた製品の使用時に発生する熱(例えば、半導体発光素子デバイスにおける半導体発光素子が発する熱)による各材料間の発生応力が小さく、剥離などの破壊が発生しにくい。具体的には、接合部材と各被接合部材の各線熱膨張係数差は50×10−7以下、特に30×10−7以下であることが好ましい。
また、接合材料と各被接合部材との屈折率nd差が小さいほど、各材料界面での光の散乱ロスを抑制することができる。これにより、例えば本発明の接合材料を半導体発光素子デバイスに適用した場合、発光効率を向上させることが可能となる。したがって、接合部材と各被接合部材の屈折率nd差は0.5以下、特に0.3以下であることが好ましい。
次に、本発明の接合材料の実施形態の一例として、本発明の接合材料を用いたフリップチップタイプの半導体発光素子デバイスについて図1の模式図を用いて説明する。
半導体発光素子デバイス1は、基体7上に半導体発光素子3がボンディング8により接着され、また半導体発光素子3の上部には接合材料6を介して波長変換部材2が接合された構造を有している。ここで、半導体発光素子3は、基板4と、基板4上に形成された半導体層5から形成されており、基板4が接合材料6により波長変換部材2と、半導体層5がボンディング8により基体7とそれぞれ接合されている。
半導体発光素子デバイス1は、例えば波長変換部材2と半導体発光素子3における基板4とを、接合材料6を介して設置した状態で加熱処理を施すことにより波長変換部材2と基板4を接合し、その後、半導体発光素子3における半導体層5と基体7をボンディング8により接着することにより作製することができる。ここで、波長変換部材2と半導体発光素子3の間に接合材料6を設置し、外部から圧力を印加した状態で加熱処理することにより接合状態が強固なものとなる。
基板4と波長変換部材2の接合は、基板4に対してエピタキシャル成長処理を施して半導体層5を形成する前に行ってもよいし、基板4に対して半導体層5を形成した後に行ってもよい。また、波長変換部材2と基板4の接合を、半導体発光素子3と基体7をボンディング8により接着した後に行っても構わない。
なお、波長変換部材2と接合材料6または接合材料6と基板4の間に異物が存在すると気泡や空隙の発生原因となるため、加熱処理はクラス1000以下のクリーンルームで行うことが好ましい。
半導体発光素子の基板側に波長変換部材を接合した半導体発光素子デバイス(フリップチップタイプ)はハイパワーLED等に採用されている。フリップチップタイプ実装時の電極接合には300〜350℃で加熱処理が行われるが、半導体発光素子と波長変換部材を無機材料であるガラスフィルムからなる接合材料により接合することにより、実装時の加熱処理によって変色や変形が生じることがない。また、ガラスフィルムの軟化点が500℃以下であるため、低温接合が可能となり、接合時に半導体発光素子や波長変換部材の特性が劣化したり、変形するといった問題が生じにくい。
なお、波長変換部材としては、ガラスマトリクス中に無機蛍光体粉末が分散してなるものであると、耐熱性に優れるため好ましい。具体的には、無機蛍光体粉末とガラス粉末を含む混合粉末の焼結体からなるものや、蛍光体含有結晶化ガラスなどが挙げられる。
無機蛍光体粉末としては、一般的に市中で入手できるものであれば使用できる。無機蛍光体粉末には、YAG等の酸化物や、窒化物、酸窒化物、硫化物、希土類酸硫化物、ハロゲン化物、アルミン酸塩化物、ハロリン酸塩化物などからなるものがある。
なお、励起光や発光の波長域に合わせて、複数の無機蛍光体粉末を混合して用いてもよい。例えば、紫外域の励起光を照射して白色光を得る場合は、青色、緑色、黄色、赤色等の蛍光を発する無機蛍光体粉末を混合して使用すればよい。
ガラス粉末には、無機蛍光体粉末を安定に保持するための媒体としての役割がある。また、ガラス粉末のガラス組成によって波長変換部材の色調が異なり、また無機蛍光体粉末との反応性に差が出るため、これらの条件を考慮して使用するガラス組成を選択することが好ましい。さらに、ガラス組成に適した無機蛍光体粉末の添加量や、波長変換部材の厚さを決定することも重要である。
ガラス粉末としては、例えば、SiO−B−RO系ガラス(RはMg、Ca、Sr、Baを示す)、SiO−B−R’O系ガラス(R’はLi、Na、Kを示す)、SiO−B−Al系ガラス、SiO−B−ZnO系ガラス、ZnO−B系ガラス、SnO−P系ガラスを用いることができる。これらのガラスは目的とする特性に応じて適宜選択すればよい。例えば低温で焼成したい場合は、比較的軟化点が低いZnO−B系ガラス、SnO−P系ガラスを選択すればよく、波長変換部材の耐候性を向上させたい場合は、SiO−B−RO系ガラス、SiO−B−R’O系ガラス、SiO−B−Al系ガラス、SiO−B−ZnO系ガラスを選択すればよい。
ガラス粉末の平均粒径D50は、0.1〜100μm、特に1〜50μmであることが好ましい。ガラス粉末の平均粒径D50が小さすぎると、焼成する際に気泡の発生量が多くなる。波長変換部材中に気泡が多く含まれると光散乱の原因となり発光効率が低下する傾向がある。好ましい気孔率は2%以下、特に1%以下である。一方、平均粒径D50が大きすぎると、波長変換部材中に無機蛍光体粉末が均一に分散されにくくなり、結果として、波長変換部材の発光色にばらつきが生じやすくなる。
波長変換部材の発光効率(lm/W)は、ガラスマトリクス中に分散した無機蛍光体粉末の種類や含有量、さらには発光色変換部材の肉厚によって変化する。波長変換部材の発光効率を高めたい場合、肉厚を薄くして励起光や蛍光の透過率を高めたり、無機蛍光体粉末の含有量を多くして、変換させる光量を増加させることで調整すればよい。しかしながら、無機蛍光体粉末の含有量が多くなりすぎると、緻密な構造が得られにくくなり気孔率が大きくなる傾向がある。また、白色光を得るために厚みを薄くする必要が生じる。結果として、励起光が効率良く無機蛍光体粉末に照射されにくくなったり、波長変換部材の機械的強度が低下しやすくなるなどの問題が生じる。一方、無機蛍光体粉末の含有量が少なすぎると、十分な発光が得られにくくなる。したがって、波長変換部材における無機蛍光体粉末の含有量は、質量%で、0.01〜30%、0.05〜20%、特に0.08〜15%であることが好ましい。
半導体発光素子の基板としては、一般的にはAl(サファイア)が用いられるが、その他にSi(シリコン)、GaAs(ガリウム砒素)、SiC(シリコンカーバイド)などが挙げられる。
以下に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1は本発明の接合材料を半導体発光素子デバイスの製造に適用した場合の実施例および比較例を示している。
まず波長変換部材は以下のようにして作製した。SiO−B−RO系ガラス組成となるように原料粉末を調製し、白金坩堝において900〜1400℃で1時間溶融してガラス化した。溶融ガラスをフィルム状に成形し、得られたフィルム状ガラスをボールミルで粉砕した後、325メッシュの篩に通して分級し、平均粒径D50が45μmのガラス粉末(軟化点 850℃、屈折率nd 1.56)を得た。
次に、ガラス粉末に対してYAG蛍光体粉末を混合し、金型を用いて加圧成形して直径1cmのボタン状の予備成形体を作製した。この予備成形体を800℃で焼成し焼結体を得た。焼結体に対して荒削り研磨処理を施して直径8mm、厚さ0.2mmに加工した。続いて、ダイヤモンド砥粒と繊維を織り込んだクロス材を表面にもつ定盤を用いて両面鏡面研磨を行い、波長変換部材を得た。
あらかじめ清浄されたアルミナ製セッター上に、単結晶サファイア基板(屈折率nd 1.76)、接合材料、波長変換部材をこの順に積層させて設置し、クリーンオーブンにて加熱処理を行うことにより接合を行った。なお、単結晶サファイア基板、接合材料、波長変換部材は、予め純水による精密洗浄を行ったものを用いた。加熱処理は20℃/分で250℃まで昇温、380℃で30分保持し、その後常温まで自然冷却することによって行った。
接合材料は、実施例1および2についてはスズリン酸塩ガラス板(ガラス組成(モル%):SnO 62%、P 21%、B 11%、MgO 3%、Al 3%)を、比較例1についてはケイ酸塩ガラス板を所定の温度で加熱延伸成形して作製したガラスフィルムを用いた。なお比較例2では、2液性シリコーン樹脂を指定比率で混合して単結晶サファイア基板と波長変換部材間に塗布し、密着させ、120℃で1時間硬化させることにより接合を行った。ガラスフィルムの軟化点は、ガラスフィルムを粉砕して得られたガラス粉末について、マクロ型示差熱分析(DTA)装置を用いて測定した。
本実施例では、上記のようにして得られた単結晶サファイア基板と波長変換部材の接合体に対して青色LEDを組み合わせて模擬的な半導体発光素子デバイスを作製し、発光効率を測定した。
また、接合体に対して、フリップチップ実装時の電極接合に必要とされる温度を想定した350℃で10分間の再加熱を行い、同様に発光効率を測定した。加熱にはホットプレートを用いた。
発光効率は次のようにして評価した。青色LED上に、上記接合体を単結晶サファイア基板が青色LED発光面と接するように設置し、校正された積分球内で青色LEDを点灯させ、接合体を介して発せられる光を小型分光器で受光し、CCDを通してPC上に発光スペクトルを得た。得られたスペクトルから全光束値(lm)を解析ソフト(オーシャンフォトニクス社製 OP−Wave)から算出し、青色LEDに印加した電力(W)で除して発光効率を算出した。
表1から明らかなように、実施例1、2では、単結晶サファイア基板と波長変換部材を低温接合することができ、しかもフリップチップ実装時の電極接合を想定した350℃での加熱処理後にも発光効率の低下が小さく、耐熱性に優れていることがわかる。
一方、比較例1では、接合材料の軟化点が高く、500℃以下の低温接合はできなかった。また比較例2では、350℃での加熱処理後に発光効率が著しく低下していることがわかる。
なお本実施例では、本発明の接合材料を半導体発光素子デバイスの製造に適用した例を示したが、本発明は当該用途に限定されるものではなく、部材の低温接合が要求される種々の用途に適用することができる。
本発明の接合材料は、例えばフリップチップタイプの半導体素子発光デバイスにおける半導体発光素子と波長変換部材の接合に使用できるほか、有機EL照明、太陽電池、有機ELディスプレイ等のデバイスの基板間のシール材としても好適である。
1 半導体発光素子デバイス
2 波長変換部材
3 半導体発光素子
4 基板
5 半導体層
6 接合材料(ガラスフィルム)
7 基体
8 ボンディング

Claims (5)

  1. 軟化点500℃以下のガラスフィルムからなることを特徴とする接合材料。
  2. ガラスフィルムの厚さが200μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の接合材料。
  3. ガラスフィルムがスズリン酸塩ガラスからなることを特徴とする請求項1または2に記載の接合材料。
  4. スズリン酸塩ガラスが、組成としてモル%で、SnO 35〜80%、P 5〜40%、B 1〜30%を含有することを特徴とする請求項3に記載の接合材料。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の接合材料を被接合部材間に設置し、接合材料の軟化点より低い温度で加熱接合することを特徴とする部材接合方法。
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