JP2011201987A - リン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 擂潰もしくは粉末化した原料である穀類及び/又は豆類(特に稲や大豆等の種子)を、水と混合することによって、脂質を含む水分散粒を得て回収することを特徴とするリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法、;特には、前記水分散粒の回収が、前記水分散粒が凝集したクリーム状の沈殿として回収するものである、リン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法;を提供する。
【選択図】 なし
Description
また、‘リゾリン脂質’は、疎水基として1本の脂肪酸鎖を有し、現在は主にリン脂質を酵素的に処理して生産されている。リゾリン脂質にはリゾホスファチジルコリンなどが挙げられる。例えば、リゾリン脂質の一種であるリゾホスファチジルコリンは、神経が死滅するのを防止する作用を有することが近年報告されている(非特許文献2参照)。またリゾホスファチジルコリンは神経突起伸展を誘導する作用を有することも報告されている(非特許文献3参照)。
このように、リン脂質やリゾリン脂質には、様々な機能性が見いだされており、高齢化社会の到来や健康志向の増大に伴い、脳関連疾患や悪性腫瘍性疾患の治療に利用するための研究が幅広く行われるなど、今後、ますます社会から必要とされる化合物である。
また、リン脂質やリゾリン脂質の供給源として使用される動物性原料には、牛脳ではBSE問題、豚脳では豚コレラの問題、鶏卵では鳥インフルエンザの問題があり、なるべく植物性原料からリン脂質やリゾリン脂質を抽出する動きが企業に見られる。しかし、植物性原料には細胞壁多糖が存在するため、植物性原料にクロロホルムを含有する有機溶媒を加えると不溶性のガム状物質が形成され、効率的にリン脂質などを抽出できない問題点が存在する。
即ち、請求項1に係る発明は、擂潰もしくは粉末化した原料である穀類及び/又は豆類を、水と混合することによって、脂質を含む水分散粒を得て回収することを特徴とする、リン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法に関する。
また、請求項2に係る発明は、前記水分散粒の回収が、前記水分散粒が凝集したクリーム状の沈殿として回収するものである、請求項1に記載のリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法に関する。
また、請求項3に係る発明は、前記水混合と同時にもしくはその後に、強い攪拌もしくは振動を与えることによって、前記水分散粒の凝集を促進させる処理を行うものである、請求項1又は2に記載のリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法に関する。
また、請求項4に係る発明は、前記水分散粒及び/又はクリーム状の沈殿を、さらに透析、塩析もしくはクロマトグラフィーカラムにより精製する、請求項1〜3のいずれかに記載のリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法に関する。
また、請求項5に係る発明は、前記原料が稲の種子である、請求項1〜4のいずれかに記載のリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出法に関する。
また、請求項6に係る発明は、前記原料が大豆、小麦、もしくは大麦の種子である、請求項1〜4のいずれかに記載のリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出法に関する。
また、請求項7に係る発明は、前記水が1〜60℃の水である、請求項1〜6のいずれかに記載のリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出法に関する。
これにより、本発明は、原料の適用範囲が広く且つ工程が容易であるため、リン脂質やリゾリン脂質を‘安価に’提供することを可能とする。
また、本発明は、抽出原料として穀類、豆類を使用でき、製造工程においてクロロホルムをはじめとする有害な塩素系薬品等を用いないため、環境や人体への‘安全性の高い’リン脂質やリゾリン脂質の抽出法を提供することを可能とする。
これにより、高齢化社会の到来により深刻さを増している認知症やアルツハイマー病などの神経疾患に有効な治療予防手段に繋がることが期待される。
本発明における原料として、穀類及び/又は豆類を用いるものである。
ここで「穀類」としては、イネ科植物のうち、食用となる澱粉質を含む種子をつける植物を指し、麦や稲だけでなく雑穀に分類される種類も含むものである。
具体的には、イネ科に属する稲(イネ)、小麦(コムギ)、大麦(オオムギ)、ライ麦(ライムギ)、燕麦(エンバク、オーツ麦、カラス麦の栽培種)、ワイルドグラス、シコクビエ、キビ、ヒエ、アワ、ハトムギ、トウモロコシ、モロコシ(タカキビ、コウリャン、ソルガム)、トウジンビエ、テフ、フェニオ、コドラ(コードンビエ)、マコモ、などを挙げることができる。
本発明では、これらの中でも、特に主要な穀類である‘稲’、‘小麦’、‘大麦’を好適に用いることができる。なお、小麦や大麦に近縁なライ麦、燕麦も好適に用いることができる。特に‘稲’を用いると、リン脂質やリゾリン脂質を多く含むクリーム状沈殿を多く得ることができる。
また、‘小麦’(コムギ、wheat)としては、コムギ属(Triticum)に属する植物であれば、如何なる種、品種、系統のものも用いることができる。例えば、T. aestivum(普通コムギ、パンコムギ)、T. compactum(クラブコムギ、密穂コムギ)、T. durum(デュラムコムギ、マカロニコムギ)、などを挙げることができる。
また、‘大麦’(オオムギ、barley)としては、Hordeum vulgareに属する植物であれば、如何なる品種、系統のものも用いることができる。例えば、二条大麦、六条大麦、裸大麦、皮大麦などを挙げることができる。
‘大豆’(ダイズ、Glycine max)としては、Glycine maxに属する植物であれば如何なる品種、系統のものも用いることができる。例えば、黒豆、赤豆、だだちゃ豆、青大豆、白大豆(別名:黄大豆)、雁食豆、などを挙げることができる。
また、種子に由来する組織であれば、胚、胚芽、胚乳、種皮、糠、糊粉層、澱粉貯蔵部、子葉などいかなる組織や部分でも用いることができる。また、種子全体(全粒)を用いることもできる。好ましくは、米糠(米糊粉層)、白米表層、小麦ふすま、大麦ふすま、大豆子葉を用いることができ、最も好ましくは、米糠、白米表層を用いることができる。
またさらには、廃棄対象となる、精米過程や精白過程で生じる糠(米糠、コムギフスマ、オオムギフスマ、胚芽など)、澱粉を抽出した残り粕、焼酎絞りかす、大豆製品粕、規格外や余剰の収穫物、なども好適に用いることができる。
本発明では、前記原料は、擂潰、粉末化など(好ましくは粉末化)を行った状態にして用いることを要する。
このように粉末等の状態にした原料は、水を混合することで、リン脂質やリゾリン脂質を含む水分散粒を得ることができる。
ここで得られる‘水分散粒’とは、両親媒性脂質をはじめとする多数の分子が集合して形成される粒子(粒子径約100〜1500nm)であり、粒子表面は親水性の性質を有するため、水中に分散する性質を有する。当該粒の性質により水の外観は白濁する。当該粒子は、原料である植物組織や細胞中に元々含まれていた粒子や、当該操作によって形成された粒子であると考えられる。
なお、最初に穀類や豆類そのものを水に浸漬した後、水の中で直接、擂潰等の処理(水挽き)を行った場合でも、当該水分散粒を得ることができる。
なお、これらの処理は、公知技術のどのような方法で行うことができる。例えば、穀類の種子を粉末化する場合は、粉砕機(Ultracentrifugal Mill, MRK-RETSCH製、又はCyclone Sample Mill, UDY CORPORATION製)、あるいは研削式精米機(Grain Testing Mill, SATAKE製)を用いて粉末化することができる。また、これらの装置を組み合わせて粉末化することもできる。
また、穀類の種子から糠を調製する場合は、ブラシ式精米機(HRG-122、みのる産業製)あるいは研削式精米機(Grain Testing Mill, SATAKE製)、精米器(RICEPAL31、山本製作所製)を用いることができる。小麦からふすまを製造する場合は、ビューラー製粉機を用いることができる。
また、豆類については、粉砕機(Ultracentrifugal Mill, MRK-RETSCH製、又はCyclone Sample Mill, UDY CORPORATION製)、あるいは研削式精米機(Grain Testing Mill, SATAKE製)を用いて粉末化することができる。
なお、本工程で用いる水として、水分散粒が凝集したクリーム状沈殿よりもやや比重が高いもの(例えば、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、キシリトールなど糖類、;食塩、;などを加えて比重1.05〜1.5、望ましくは比重1.05〜1.4に調製したもの)を用いた場合、他の油成分(比重1.0未満)や澱粉粒(無水状態では比重約1.5〜1.6)の混入を防ぎつつ、当該クリーム状沈殿を浮上させて回収しやすくでき、操作上好ましい。
なお、本工程では、水分散粒を破壊するアルコール(例えばエタノール)等の有機溶媒を混合することは好ましくないが、水分散粒に影響を与えない程度であれば、若干量を含有するものであってもよい。
攪拌混合の操作としては、攪拌棒を用いての単純混合だけでなく、転倒混合、ミキサー、ボルテックス、シェーカー、ローテーター、大型攪拌槽などによっても行うことができる。なお、超音波処理、曝気等を行ってもよいが、本工程では必須ではない。
なお、特には、澱粉が糊化しない温度(例えば60℃以下)で行った場合、リン脂質やリゾリン脂質を多く含むクリーム状沈殿が形成されやすくなり好適である。しかし、水の温度が高すぎる場合、原料が糊化し水分散粒が得られにくくなるため好ましくない。
また、当該混合処理(もしくは自然沈降のための放置)を長時間行う場合は、酵素代謝による変化を防ぐために、低めの温度(例えば10℃以下)で行うことが望ましい。
また、上限としては、原料由来の内在性酵素による分解を防止するため60分以下で、好ましくは10分以下で行うことが望ましい。
なお、工業的な実用の観点を踏まえると、前記分散粒は、凝集した‘クリーム状の沈殿’として回収することが収率の点で好適である。
なお、当該クリーム状沈殿は、沈降させた場合、比重の関係により下層沈殿(残渣である澱粉や細胞壁残渣など白色沈殿)の上に‘中間層’として積層する。
また、水分散粒を含む液を残渣より分別した後は、水分散粒を含む液にエタノールを注加することによって、沈殿させて濃縮・回収することもできる。
なお、上清を回収後に、クリーム状沈殿よりもやや高い比重に調製した水(例えば、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、キシリトールなどの糖類や、;食塩、;などを含有する比重1.05〜1.5、望ましくは比重1.05〜1.4に調製した水)を加えて遠心(即ち、密度勾配遠心)等を行うことによって、当該クリーム状沈殿を浮上させて効率的に回収することもできる。
上記のようにして得られた白濁上清(分散粒)やクリーム状沈殿は、精製を行うことで、リン脂質やリゾリン脂質の含量をさらに高めることができる。
具体的には、透析、塩析、もしくはクロマトグラフィーカラムによって、リン脂質やリゾリン脂質を多く含む画分を分離し、回収することで行うことができる。
なお、これらのうち、工業的な実用の観点を踏まえると、透析法が特に好適である。
また、‘塩析’としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、などによって行うことができる。
また、‘クロマトグラフィーカラム’としては、アフィニティーカラム(レクチンアフィニティー担体カラム、ヘパリンカラム、抗体カラム、など)、イオン交換カラム(4級アンモニウム基結合担体カラム、ジエチルアミノエチル基結合担体カラム、など)、ゲル濾過カラム(架橋アガロースゲルカラム、架橋デキストランゲルカラム、など)、吸着樹脂カラム(多孔性吸着樹脂カラム、活性炭カラムなど)、シリカゲルカラム、修飾基付きシリカゲルカラム、などによって行うことができる。
また、カラム形態も、高速液体クロマトグラフィーに用いられるような一般的なカラムだけではなく、固相カートリッジのような使い捨てカラムでも問題なく目的を達することができる。
上記工程によって得られる(抽出される)リン脂質とリゾリン脂質の分子種は、用いた原料によって異なる。
具体的に含有されうる‘リン脂質’の分子種としては、ホスファチジルコリン(PC:別名レシチン)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE:別名セファリン)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ジホスファチジルグリセロール(DPG:別名カルジオリピン)などを挙げることができる。
また、‘リゾリン脂質’の分子種としては、具体的には、リゾホスファチジルコリン(LPC)、リゾホスファチジルセリン(LPS)、リゾホスファチジン酸(LPA)、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、スフィンゴシン1リン酸(S1P)、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)などを挙げることができる。
なお、これらのリン脂質とリゾリン脂質それぞれについて、分子内に含まれる脂肪酸の種類(C14〜C24、好ましくはC16〜C18)が異なる、複数の分子種が存在する。
また、大豆の種子に由来する粉を用いた場合、ホスファチジルセリン(PS)、リゾホスファチジルセリン(LPS)、を多く含むものが得ることができる。なお、これらの分子に含まれる脂肪酸の種類としては、C16〜C18のものを挙げることができる。
リン脂質やリゾリン脂質(特に、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンなど)は、神経細胞の分化、成長、維持に効果を有する物質であり、アルツハイマー病、認知症、などに有効な治療や予防効果を有する有効成分となることが期待できる。また、前記疾患以外にも、記憶改善作用が期待できる。
従って、上記工程を経て得たリン脂質やリゾリン脂質は、各種原料に混合することで、薬剤、機能性飲食品とすることができる。
なお、本発明における有効成分である当該抽出物は、穀類や豆類の種子由来であるため、投与や摂取の上で安全性に優れたものである。
以下に、共通の測定条件である質量分析の条件を記載する。
「FAB−MS分析」は、日本電子JMS-700を使用し、加速電圧:8kV、FABガス:キセノン(電圧6kV)、FABマトリックス:m−ニトロベンジルアルコール(m−NBA)、測定質量範囲:0〜2000、の条件で行った。
カラム分離は、L−カラム(ODS相当) 2.1φ×15cm(化学物質評価機構)を使用し、移動相:A液として精製水(0.028%NH3)、B液としてエタノール(0.028%NH3)、グラジェント条件:B液を15分間に70〜100%まで溶媒グラジェント、測定時間:40分間、流量:0.2mL/min、の条件で行った。
米(ひとめぼれ)の全粒を粉砕器(Cyclone Sample Mill、UDY CORPORATION製)によって粉砕することで得た粉(粒子径約280μm以下)3gに、メタノール(室温)15mLを加え、ガラス棒を用いてよく混合した。この処理物を直ちに3000rpm、10分間の遠心分離により固液分離した。
固液分離して得られた上清は、窒素気流によって濃縮して濃縮液とし、ゲル濾過カラム(Shodex Asahipak GS-620 2GおよびGS-220 2Gを連結して使用、どちらも2.0cm×50cm)を接続した高速液体クロマトグラフィーシステム(本体:日本分析工業:LC-9201、示差屈折検出器:RI-50s)で分画した。なお、溶離液はメタノールを用いた。分画結果を図1に示す。
次いで、図1の矢印で指示した画分をFAB−MS分析し、図2に示す分析結果を得た。m/z=200付近の拡大図を図3に示す。
玄米(コシヒカリ)を精米機(RICEPAL31、山本製作所製)で糠部分、すなわち玄米を100質量%とすると最外層部分および糊粉層部分に相当する100〜91質量%部分を除去した後、研削式精米機(Grain Testing Mill、SATAKE製)で外側から順次研削し、玄米を100質量%とすると白米表層部分に相当する91〜86質量%部分(白米表層部分)由来の粉(粒子径約135μm以下)3gに、水(約20℃)15mLを加え、ガラス棒を用いてよく混合した。
この処理物をただちに、3000rpm、10分間の遠心分離により固液分離した。
分離した上清は、ただちに粒度分布測定装置(LB-550、堀場製作所製)で粒度分布測定を行い、分離した上清中に存在する水分散粒の粒度分布データを得た。結果を表1に示す。
玄米(ひとめぼれ)をブラシ式精米機(HRG-122、みのる産業製)で糠部分、すなわち玄米を100質量%とすると最外層部分および糊粉層部分に相当する100〜91質量%部分を除去した後、研削式精米機(Grain Testing Mill、SATAKE製)で外側から順次研削し、玄米を100質量%とすると白米表層部分に相当する91〜86質量%部分由来の粉(粒子径約135μm以下)3gに、水(約20℃)15mLを加え、ガラス棒を用いてよく混合した。
この処理物をただちに、1000rpm、10分間の遠心分離により固液分離した。
分離した上清は、排除限界分子量100(MWCO=100)の透析膜(スペクトラポア、Cellulose Ester(CE) Dialysis Membranes、Spectrum製)に封入し、純水に対して透析を行った。
透析膜内側の内容物は、Freezdryer FD-1(EYELA製)により凍結乾燥し、質量分析(JMS-700、日本電子製)に供した。結果を図4に示す。
このことから、白米表層粉−水混合物白濁上清には複数種のリゾリン脂質が含まれ、透析によって高純度化されることが明らかとなった。
(1)リン脂質・リゾリン脂質の回収及び透析
玄米(ひとめぼれ)をブラシ式精米機(HRG-122、みのる産業製)で糠部分、すなわち玄米を100質量%とすると最外層部分および糊粉層部分に相当する100〜91質量%部分を除去した後、研削式精米機(Grain Testing Mill、SATAKE製)で外側から順次研削し、玄米を100質量%とすると白米表層部分に相当する91〜86質量%部分由来の粉(粒子径約135μm以下)3gに、水(約20℃)15mLを加え、ガラス棒を用いてよく混合した。
この混合物をただちに、1000rpm、10分間の遠心分離により固液分離した。これにより、混合物は、白濁上清、中間層であるクリーム状沈殿(沈殿上層)、白色沈殿(沈殿下層)に分離した。
分離した上清およびクリーム状沈殿は、各々排除限界分子量100(MWCO=100)の透析膜(スペクトラポア、Cellulose Ester(CE) Dialysis Membranes、Spectrum製)に封入し、純水に対して透析を行った。
そして、透析膜内側の内容物は、Freezdryer FD-1(EYELA製)により凍結乾燥した。
まず、白濁上清の透析物について、ODSカラムを用いて含まれる物質の分離(分画)を行った。分離結果を図5に示す。
そして、図5におけるピーク2〜12の画分を質量分析した結果を図6〜16に示す(なお、図5中のピーク1は糖を示すものである)。また、これらの結果をまとめたものを表2に示す。
まず、ピーク2を質量分析した結果(図6)において、m/z=542のピークはC18:2の脂肪酸鎖をもつLPCにNa+が付加したものである。
また、m/z=520のピークはC18:2の脂肪酸鎖をもつLPCにH+が付加したものである。
また、m/z=518のピークはC16:0の脂肪酸鎖をもつLPCにNa+が付加したもの、m/z=496のピークはC16:0の脂肪酸鎖をもつLPCにH+が付加したものである。
また、m/z=522のピークはC18:1の脂肪酸鎖をもつLPCにH+が付加したものである。
また、m/z=806のピークはC18:1およびC18:2の脂肪酸鎖をもつPCにNa+が付加したものである。
また、m/z=784のピークはC18:1およびC18:2の脂肪酸鎖をもつPCにH+が付加したものである。
また、m/z=780のピークはC16:1およびC18:1の脂肪酸鎖をもつPCにNa+が付加したもの若しくC16:0およびC18:2の脂肪酸鎖をもつPCにNa+が付加したものである。
また、m/z=758のピークはC16:1およびC18:1の脂肪酸鎖をもつPCにH+が付加したもの若しくC16:0およびC18:2の脂肪酸鎖をもつPCにH+が付加したものである。
また、m/z=782のピークはC16:0およびC18:1の脂肪酸鎖をもつPCにNa+が付加したもの若しくC16:1およびC18:0の脂肪酸鎖をもつPCにNa+が付加したものである。
また、m/z=760のピークはC16:0およびC18:1の脂肪酸鎖をもつPCにH+が付加したもの若しくC16:1およびC18:0の脂肪酸鎖をもつPCにH+が付加したものである。
また、m/z=639のピークはC18:2の脂肪酸鎖を2つもつDGにNa+が付加したものである。
また、m/z=617のピークはC18:2の脂肪酸鎖を2つもつDGにH+が付加したものである。
また、m/z=909のピークはC18:0の脂肪酸鎖を2つおよびC18:2の脂肪酸鎖を1つ持つTGにNa+が付加したもの若しくはC18:0の脂肪酸鎖を1つおよびC18:1の脂肪酸鎖を2つ持つTGにNa+が付加したものである。
また、クリーム状沈殿の透析物について、ODSカラムで含まれる物質の分離を行った。分離結果を図17に示す。
そして、図17におけるピーク2を質量分析した結果を図18に示す(なお、図17中のピーク1は糖を示すものである)。また、これらの結果をまとめたものを表3に示す。
ピーク2を質量分析した結果(図18)において、m/z=518のピークはC16:0の脂肪酸鎖をもつLPCにNa+が付加したものである。
また、m/z=496のピークはC16:0の脂肪酸鎖をもつLPCにH+が付加したものである。
上記のように、稲の種子由来の粉に、水(室温)を加えて単に混合操作をすることによって、リン脂質やリゾリン脂質を多く含む画分(白濁上清やクリーム状沈殿)を得ることができることが示された。
また、当該画分から、透析やカラムによりリン脂質やリゾリン脂質を簡便に精製できることも示された。
これにより、高齢化社会の到来により深刻さを増している認知症やアルツハイマー病などの神経疾患に有用である薬剤や機能性食品の供給に貢献できることが期待できる。
また、本発明によれば、植物由来廃棄物である米糠、規格外の米や大豆などの新規用途創出に貢献することが期待される。
Claims (7)
- 擂潰もしくは粉末化した原料である穀類及び/又は豆類を、水と混合することによって、脂質を含む水分散粒を得て回収することを特徴とする、リン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法。
- 前記水分散粒の回収が、前記水分散粒が凝集したクリーム状の沈殿として回収するものである、請求項1に記載のリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法。
- 前記水混合と同時にもしくはその後に、強い攪拌もしくは振動を与えることによって、前記水分散粒の凝集を促進させる処理を行うものである、請求項1又は2に記載のリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法。
- 前記水分散粒及び/又はクリーム状の沈殿を、さらに透析、塩析もしくはクロマトグラフィーカラムにより精製する、請求項1〜3のいずれかに記載のリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法。
- 前記原料が稲の種子である、請求項1〜4のいずれかに記載のリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出法。
- 前記原料が大豆、小麦、もしくは大麦の種子である、請求項1〜4のいずれかに記載のリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出法。
- 前記水が1〜60℃の水である、請求項1〜6のいずれかに記載のリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出法。
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