JP2011200800A - 磁力選別装置および磁力選別方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】平坦な基板上に散布された微粒子群を、磁力の付与により着磁する着磁性微粒子と着磁しない非着磁性微粒子とに選別する磁力選別装置100に、内部に1または2以上の貫通孔を有する柱状の磁石110と、貫通孔内の圧力を少なくとも負圧と大気圧との間で切り替えるように制御する圧力制御装置120と、透明かつ非着磁性の材質により形成されて圧力制御装置120による貫通孔内の圧力の切り替えに応じて、磁石110の先端部に着脱自在に設けられる分離板130と、を設けた。
【選択図】図1
Description
本発明は、各種の工業的な分析に用いられる検体を分析するための予備処理に関するものである。具体的には、本発明は、平坦な基板上に散布された微粒子群を、磁力の付与により着磁する着磁性微粒子と着磁しない非着磁性微粒子とに選別する磁力選別装置、および、この装置を用いて平坦な基板上に散布された微粒子群を着磁性微粒子と非着磁性微粒子とに分離する磁力選別方法である。このような本発明の好適な実施の形態について説明する前に、まず、本発明の基本となる技術思想や本発明の優位性について説明する。
本発明によれば、分析対象の粒子を、その粒子の磁気物性別に、磁石を用いて容易に分離することができる。その理由を以下に説明する。
本発明では、磁石を微粒子に直接接触させずに、透明の分離板(例えば、カバーグラス)を介して着磁性の微粒子を磁石に着磁させる。また、本発明では、微粒子と直接接触する透明の分離板は、例えば、微粒子が画像処理用の検体である場合には、微粒子とともに撮影の際に用いる基板上に留置し続けることができる。
本発明では、磁力選別に用いる磁石として、原則として永久磁石を使用し、かつ、分離板(カバーグラス)を介して微粒子を磁石に着磁させるため、分離板を介して磁石に吸着した微粒子を磁石から離脱させるために、微粒子が付着した分離板から磁石を引き離す必要がない。具体的な方法は後述するが、分離板自身の重力を利用したり、必要に応じて、分離板の表面へポンプ等により圧力を付与したりすることによって、着磁性の微粒子を分離板ごと磁石から容易に離脱させることができる。従って、磁力選別装置を簡易な構造とすることができる。
上述したように、本発明では磁石内外の圧力差(磁石外部は大気圧)を利用して、分離板を磁石に吸着している。ここで、仮に、磁石内外の圧力差を利用せずに分離板を磁石に付着させようとした場合には、次の2つの方法が考えられる。第1は、分離対象である着磁性粒子と磁石の間にはたらく磁力によって磁石と着磁性粒子の間にはさまれた分離板を固定、保持する方法である。第2は、分離板を着磁性の材料とすることで、分離板を磁石に直接、吸着させる方法である。しかし、第1の方法の場合、本発明で対象とする着磁性粒子はそもそも微量であるため、分離板の重量を支えうるような強力な磁力を磁石との間に発生させることは困難である。また、検査対象粒子のなかに常に着磁性粒子が含まれているとも限らない。従って、第1の方法は安定的に実現しえない。
上述したように、本発明で対象としているような微粒子の質量は小さいものが多いが、なかには、分析対象の微粒子群の中には、質量が大きな着磁性の粒子(検体)が含まれている場合もあり得る。このように質量の大きな検体がある場合には、吸着器等からの分離板の吸引を停止したとしても、磁石と着磁性の粒子との間に分離板が挟まれて、分離板が磁石から脱離しない場合もある。本発明では、このような場合でも、磁石内部を正圧にすることにより、分離板の表面に圧力を付与することができ、これにより、容易に分離板を磁石から脱離させることができる。
本発明における磁力選別の処理は、乾式、または、微量の添加液のみを用いた湿式処理であるので、添加液への分析対象の物質(微粒子)の溶解が無いか、極めて少ない。そのため、上記特許文献1〜4に記載された従来の湿式処理で生じるような問題、すなわち、マイクロウェル中で添加液中に懸濁させた着磁性粒子と非着磁性粒子とをピペットと磁石を用いて分離する、といった一般的な磁力選別法では、分析対象となる微粒子を懸濁させるために、分析の検体として必要な微粒子量に対して多量の添加液を供給する必要があり、添加液への微粒子の溶出が避けられず、分析時の大きな誤差になり得る、という問題を解消することができる。
また、本発明の磁力選別装置を用いた磁力選別の対象となる粒子群として、例えば、高炉法による製鉄プラント由来の降下煤塵も含めることができる。このような降下煤塵によって引き起こされる、製鉄プラント構内に乗り入れる車両を汚損する等の問題への対策として、捕集された降下煤塵の煤塵種を特定することが有力であると考えられる。
以上、本発明の先行技術に対する優位性について説明したが、続いて、図1及び図2を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る微粒子の磁力選別装置について詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る微粒子の磁力選別装置の全体構成を示す説明図である。また、図2は、図1に示した磁力選別装置のうちA部分の拡大図である。なお、図2では、中心線の左側を断面図で、中心線の右側を側面図で示している。
基板1の材質としては、硬質で平滑であり、かつ、静電気を保持しにくい物質が好適である。基板1の材質が軟質の物質の場合、分析対象の微粒子Pを基板1に押し付けて載置する際に、基板1に微粒子Pが食い込むため好適でない。また、基板1の材質が静電気を保持しやすい材質の場合、荷電粒子が吸着または飛散するので好適でない。
磁石110は、図1に示すように、後述する真空ポンプ121により吸引された状態で先端に分離板130が吸着されており、また、後端(分離板130が吸着される側と反対側の端部)は磁石保持器111により保持されている。また、磁石保持器111は、配管123に接続されている。
また、磁石110は、内部に1または2以上の貫通孔を有する柱状(円柱、角柱など)、特に、図2に示すように、中心に貫通孔110aを有する円筒状の形状を有していることが好ましい。
磁石110の種類としては、永久磁石と電磁石のいずれでもよいが、永久磁石であれば、ネオジウム磁石、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石等を使用することができる。このうち、ネオジウム磁石やサマリウムコバルト磁石は、分析対象の微粒子Pとして、強磁性材料だけでなく比較的強い常磁性材料まで含む場合に有効であり、フェライト磁石は、分析対象の微粒子Pとして強常磁性材料のみを含む場合に有効である。また、磁石110として電磁石を使用した場合には、一般には磁力選別装置100の構造が比較的複雑になるが、永久磁石では実現できない磁力を用いて、比較的弱い常磁性材料までを分離対象の微粒子Pとして含む場合に電磁石を使用することが有効である。
磁石保持器111は、上述したように磁石110の後端部を保持しており、内部に貫通孔111aを有している。この貫通孔111aは、磁石110の内部の貫通孔110aと配管123とを連通させるように設けられている。また、磁石110の磁石保持器111への固定方法は特に限定はされないが、例えば、接着剤を用いて磁石110を磁石保持器111に固定してもよい。また、図2に示すように、強磁性材料(例えば、鋼等)製の固定具113を用いて磁石110を磁石保持器111に固定してもよい。すなわち、磁石保持器111の内部に強磁性材料製の固定具113を取り付け、この固定具113を磁石110の磁力を利用して磁石110に吸着させることにより、磁石110を磁石保持器111に固定してもよい。この場合は、真空ポンプ121による真空吸引を確実に行うために、磁石110と磁石保持器111との間にガスケット115等のシール材を設けることが好ましい。
また、磁力選別装置100は、図2に示すように、磁石110の先端部に取り付けられるスペーサ140をさらに備えていてもよい。このスペーサ140は、真空ポンプ121により分離板130が吸引されて磁石110の先端部に吸着された状態で、磁石110の先端と分離板130との間に位置している。言い換えると、スペーサ140が設けられている場合には、分離板130は、スペーサ140を介して磁石110に吸着することとなる。
本実施形態では、真空ポンプ121に接続された配管123内、貫通孔111a内および貫通孔110a内の圧力を設定して、磁石110の内部の貫通孔110a内の圧力を負圧にしたり正圧(または大気圧)にしたりする圧力の調整を行うことが必要である。そのため、磁力選別装置100の使用者は、手動で真空ポンプ121のスイッチや弁の切り替え等を行って、真空ポンプ121による真空吸引を作動させたり停止させたりすることにより、磁石110の内部の貫通孔110a内の圧力を調整する。
真空ポンプ121としては、市販のものを使用でき、その方式としては、ダイヤフラム式、ピストン式等、特に限定はされない。また、真空ポンプ121の到達真空度は、分離板130を磁石110の先端部に吸着可能にするという観点から、絶対圧で1000〜70000Pa程度が好ましい。また、真空ポンプ121により吸引した際の、貫通孔110a内の空気の流量は、貫通孔110a1つ当たり1〜100NL/分程度であることが好ましい。
配管123,124としては、市販の真空機器用の配管、ホース等を使用することができ、この配管123,124には、市販の弁等を接続してもよい。このとき、後述するように、真空ポンプ121と磁石保持器111との間に四方弁(図3を参照)を設けると、分離板130の磁石110からの脱離時に、貫通孔110a内の圧力を正圧に維持して、分離板130の表面に空気を吐出して押圧力を付与することができる。一方、四方弁を設けない場合には、真空ポンプ121を用いて貫通孔110a内の圧力を正圧に維持することはできず、空気を吸引できるのみで吐出することはできない。従って、分離板130の脱離時には、真空ポンプ121による吸引を停止して貫通孔110a内の圧力を大気圧に戻して、分離板130への吸引力を0にする。
上述したように、圧力制御装置120は、貫通孔110a内の圧力を正圧にも切り替えることができる。この場合の手段としては、例えば、上述したように、真空ポンプ121と磁石保持器111との間に四方弁を設ける方法がある。
分離板130は、透明かつ非着磁性の材質により形成され、圧力制御装置120による貫通孔内の圧力の切り替えに応じて、磁石110の先端部に着脱自在に設けられる。より詳細には、上述したように、圧力制御装置120により磁石110に形成された貫通孔110a内の圧力が負圧に維持されている場合に、磁石110の先端部に吸着される。
分離板130は、着磁性微粒子上に留置されて、そのまま着磁性微粒子の画像処理等の分析が行われる。そのため、留置した分離板17を通して着磁性微粒子のサンプルを撮像できるように、分離板130は、透明な材質である必要がある。また、上述したように、分離板130は繰り返して使用されるが、この際、分離板130の洗浄や清掃等の工程を不要とするために、着磁性微粒子が分離板130から容易に脱離するように、分離板130は、非着磁性の材質である必要がある。以上のような条件を満たす分離板130の材質の好適な例としては、透明ガラス、透明アクリル板、透明塩化ビニル板等の透明で平滑な板状のものが挙げられる。
分離板130は、磁石110の先端の断面を全て覆うことができる形状や寸法であることが好ましく、特に、磁石110の先端の断面積よりも5%〜50%大きい断面積を有することが好ましい。分離板130の具体的な形状としては、断面が略円形や略長方形等が好ましく、これに上述した開口部が形成されていることが必要である。また、分離板130の厚みは、微粒子Pに付与される磁力が弱くならないように、分離板130の機械的強度を維持できる範囲でなるべく薄い方が好ましい。具体的には、分離板130の厚みは、0.01mm以上1mm以下であることが好ましく、0.1mm程度であることがさらに好ましい。
上述した磁力選別装置100を用いた分析(磁力選別)の対象となる微粒子(検体)Pの第1の例としては、ステンレス鋼(SUS304等)製のボールミル等の破砕機で破砕することにより製造した高純度セラミックス粒が挙げられる。このセラミックス粒中には、通常、破砕作業時に破砕機から剥離するなどしてステンレス鋼粒を主体として不純物粒子が含まれる。また、例えば、ネオジウム磁石等の強力な磁石に対しては、SUS304等のステンレス鋼は着磁するが、セラミックス粒は着磁しない。従って、高純度セラミックス粒を分析対象とした場合には、磁力選別に用いる磁石として、ネオジウム磁石等を使用すれば、セラミックス粒と、当該セラミック粒中のステンレス鋼粒を主体とした不純物粒子とを磁力選別することができる。これを利用すれば、セラミックス粒中の不純物粒子の濃度の測定を行うことができる。
また、上述したような微粒子(着磁性微粒子および非着磁性微粒子)は、揮発性の液体に浸された状態で基板上に散布されていてもよい。このような状態で磁力選別(湿式分離)が行われることにより、微粒子Pにおける静電気の影響を取り除くことができる。また、湿式分離には、揮発性の液体を添加することから、磁力選別が行われた後の微粒子Pを単に放置しておけば、添加した液体は自然に揮発して除去されるため、作業が容易となる、という利点もある。
以上、本実施形態に係る磁力選別装置100について詳細に説明したが、続いて、図4および図5を参照しながら、上述した磁力選別装置100を用いた本実施形態に係る磁力選別方法について詳細に説明する。図4は、本実施形態に係る磁力選別方法における処理の流れを示すフローチャートである。図5は、本実施形態に係る磁力選別装置を用いた磁力選別方法における各処理の具体的な方法の一例を示す説明図である。なお、図5では、図2で示したスペーサ140を使用しない場合の例を示している。
まず、第1の工程を実施する前に、分析(磁力選別用のサンプルを加工する。具体的には、検体となる微粒子(例えば、製鉄所内の特定の場所で捕集された降下煤塵粒子)を第1の基板(図5に示した基板1)上に散布する。この際、各粒子同士がなるべく接触しないように、散布量を調整し、さらに、適宜、ヘラ等により散布された微粒子Pをならす。なお、第1の基板上に散布する微粒子Pの個数は特に限定されないが、試料のばらつきの影響を評価するためには、少なくとも100個以上の微粒子Pを分析用サンプルとして供用することが好ましい。
まず、第1の工程では、図4および図5(a),(b)に示すように、圧力制御装置120により磁石110の貫通孔110a内の圧力を負圧に維持し、分離板130を磁石110の先端に吸着させる(S101)。すなわち、圧力制御装置120が、非吸引の状態である真空ポンプ121を作動させて吸引している状態となるように真空ポンプ121を制御した後に、磁石110の先端を分離板130に接触させることにより、分離板130を磁石110の先端に吸着させる。
次に、第2の工程では、図4および図5(b),(c)に示すように、磁石110を第1の基板(基板1)上に散布された微粒子群(着磁性微粒子Pmおよび非着磁性微粒子Pnが含まれた粒子群)に接近させ、着磁性微粒子Pmを分離板130を介して磁石110の先端に吸着させる。このとき、着磁性微粒子Pmは、分離板130の下面(磁石110またはスペーサ140がある側と反対側の面)に付着することになる(S103)。ここで、磁石110を微粒子群に接近させる際には、着磁性微粒子Pm同士の接触や重なりを極力少なくするために、磁石110の先端の平坦面を基板1の表面と平行な状態にすることが好ましい。また、着磁性微粒子Pmを磁石110に吸着させる際の着磁性微粒子Pmと分離板130との接触時間は、例えば1秒以上とすればよい。
の下面に付着させる際
次に、第3の工程では、図4および図5(c),(d)に示すように、磁石110を基板1から離隔させ、分離板130の下面に付着した着磁性微粒子Pmを第2の基板(基板2)上に載置する(S105)。ここで、磁石110を基板1から離隔させる際、分離板130を磁石110の先端に吸着させたままの状態で、磁石110を基板1の上方に引き上げる。このとき、基板1上に残留した微粒子が、非着磁性微粒子Pnのサンプルである(図5(d)を参照)。また、着磁性微粒子Pmを基板2上に載置する際には、着磁性微粒子Pmが吸着した磁石110を基板2に向けて下降させ、着磁性微粒子Pmと基板2とを接触させればよい。
次に、第4の工程では、図4および図5(d)に示すように、圧力制御装置120により磁石110の貫通孔110a内の圧力を大気圧または正圧に切り替える(S107)。ここで、貫通孔110a内の圧力の切り替え方法については上述したので、ここでは詳細な説明を省略するが、大気圧に切り替える場合には、例えば、圧力制御装置120により真空ポンプ121による吸引を停止すればよい。また、正圧に切り替える場合には、例えば、磁力選別装置100に四方弁127を設け、この四方弁127による配管の接続を切り替えればよい。
次に、第5の工程では、図4および図5(e)に示すように、磁石110を基板2から離隔させ、分離板130の下面に付着した着磁性微粒子Pmを分離板130とともに基板2上に留置する(S109)。すなわち、この第5の工程では、磁石110を分離板130(および着磁性微粒子P)から引き離す。具体的に、磁石110がネオジウム磁石等の永久磁石の場合には、分離板130を基板2上に固定し、磁石110のみを引き上げて、分離板130の下に着磁性微粒子Pmを残留させる。こうすることで、着磁性微粒子Pmを分離板130の重力によって上方から押さえ、着磁性微粒子Pmを永久磁石である磁石110から引き離すことができる。分離板130を固定するためには、分離板130の重力を利用して、単に、分離板130を基板2上に静置すればよい。一方、磁石110が電磁石の場合には、電磁石に流していた電流を切り(消磁機能のある装置では、消磁電量を供給した後に電流を切り)、そのまま、磁石110のみを引き上げて、着磁性微粒子Pmを基板2上に残留させる。
また、本実施形態に係る磁力選別方法では、図6(a)に示すように、基板1上に散布された微粒子群(着磁性微粒子Pmと非着磁性微粒子Pnとを含む。)を揮発性の液体Lに浸漬させた後に、図6(b)に示すように、上述した第2の工程(磁石110を用いた着磁性微粒子Pmと非着磁性微粒子Pnとの分離)を実施してもよい(湿式分離)。このような湿式分離を行うことにより、微粒子Pにおける静電気の影響を取り除くことができる。また、湿式分離では、揮発性の液体Lを添加することから、磁力選別が行われた後の微粒子Pを単に放置しておけば、添加した液体Lは自然に揮発して除去されるため、作業が容易となる、という利点もある。
微粒子群に添加する揮発性の液体Lとしては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコールや、アセトン等のケトンや、灯油、ガソリン等の石油や、トルエン、ヘキサン等の環状炭化水素や、水などを用いることができる。ここで、分析対象の粒子種の範囲が予め判明している場合には、この粒子種と親和性の高い液体Lを用いればよい。例えば、分析対象の微粒子が親水性の高い粒子であれば、極性の高い液体(例えば、メタノール等)が親和性の高い液体Lとなり、分析対象の微粒子が親油性の高い粒子であれば、極性の低い液体(例えば、ヘキサン等)が親和性の高い液体Lとなる。
次に、図7を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る磁力選別装置200について詳細に説明する。図7は、本実施形態に係る微粒子の磁力選別装置の全体構成を示す説明図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
続いて、再び図7を参照しながら、磁力選別装置200を用いた本実施形態に係る磁力選別方法について説明する。
実施例1として、SUS製のボールミルで破砕して製造したアルミナ微粒子中の不純物粒子の分離(磁力選別)を行い、各種分析を行った。
磁力選別装置としては、上述した図1および図2に示すような装置を用いた。具体的には、磁石保持器111としては、真鍮製のものを使用し、炭素鋼製の固定具113により磁石110を磁石保持器111に固定した。また、磁石110としては、外径13mm、内径4mm、高さ10mmの円筒型のネオジウム磁石を使用した。分離板130としては、直径15mm、0.1mm厚のガラス製の板を使用した。スペーサ140としては、外径13mm、内径4mm、高さ1mmの円筒型の天然ゴム製のものを使用した。また、このスペーサ140の開口部の位置と磁石110の貫通孔110aの位置とを合わせて、スペーサ140を磁石110の先端に接着固定した。また、アルミナ微粒子を載置する基板としては、50mm角の正方形の形状で、5mm厚のソーダガラス製の基板を使用した。
分析としては、電子天秤を使用した着磁性微粒子と非着磁性微粒子のそれぞれの質量測定と、ICP質量分析装置を用いた着磁性微粒子と非着磁性微粒子のそれぞれの成分分析(Feの定量)を行った。
その結果、着磁性微粒子と非着磁性微粒子との質量比(着磁物/非着磁物)は、0.12であり、着磁性微粒子中のFe量は85質量%であり、非着磁性微粒子中のFe量は90ppmであった。この結果から、実施例1では、Feを主体とするアルミナ微粒子中の不純物は、90%以上の量を着磁性微粒子として分離できたことがわかった。
実施例2として、高炉法による製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種ごとの分離(磁力選別)を行い、各種分析を行った。
磁力選別装置としては、実施例1と同様の装置を使用した。
分析としては、実施例1と同様に、電子天秤を使用した着磁性微粒子と非着磁性微粒子のそれぞれの質量測定と、ICP質量分析装置を用いた着磁性微粒子と非着磁性微粒子のそれぞれの成分分析を行った。ただし、成分分析は、Feだけでなく、C、Si、Ca、Alの定量も行った。
その結果、着磁性微粒子と非着磁性微粒子との質量比(着磁物/非着磁物)は、2.6であった。また、着磁性微粒子の成分は、質量%で、Fe:58、C:2、Si:31、Ca:3、Al:2(酸素除く)であった。また、非着磁性微粒子の成分は、質量%で、Fe:11、C:65、Si:19、Ca:0、Al:1(酸素除く)であった。
100 磁力選別装置
110 磁石
110a 貫通孔
111 磁石保持器
111a 貫通孔
113 固定具
115 ガスケット
120 圧力制御装置
121 真空ポンプ
123、124、125、126、127、128 配管
129 四方弁
130 分離板
P 微粒子(検体)
Pm 着磁性微粒子
Pn 非着磁性微粒子
Claims (10)
- 平坦な基板上に散布された微粒子群を、磁力の付与により着磁する着磁性微粒子と着磁しない非着磁性微粒子とに選別する磁力選別装置であって、
内部に1または2以上の貫通孔を有する柱状の磁石と、
前記貫通孔内の圧力を、少なくとも負圧と大気圧との間で切り替えるように制御する圧力制御装置と、
透明かつ非着磁性の材質により形成され、前記圧力制御装置による前記貫通孔内の圧力の切り替えに応じて、前記磁石の先端部に着脱自在に設けられる分離板と、
を備えることを特徴とする、磁力選別装置。 - 前記圧力制御装置により前記貫通孔内の圧力が負圧に維持されている状態で前記磁石の一端と前記分離板との間に位置するように前記磁石の先端部に取り付けられ、前記貫通孔の少なくとも1つと対応する位置に開口部を有するスペーサをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の磁力選別装置。
- 前記磁石は、前記分離板の前記微粒子群側の面における平均磁束密度が0.1T以上0.4T以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の磁力選別装置。
- 前記圧力制御装置は、前記貫通孔内の圧力をさらに正圧にも切り替え可能であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁力選別装置。
- 前記磁石と前記分離板とをそれぞれ複数備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁力選別装置。
- 前記微粒子群は、高炉法による製鉄プラントから発生した降下煤塵からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁力選別装置。
- 前記基板は、ガラス板であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁力選別装置。
- 前記微粒子群は、揮発性の液体に浸された状態で前記基板上に散布されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁力選別装置。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の磁力選別装置を用いて、平坦な基板上に散布された微粒子群を前記着磁性微粒子と前記非着磁性微粒子とに分離する磁力選別方法であって、
前記貫通孔内の圧力を負圧に維持し、前記分離板を前記磁石の先端部に吸着させる第1の工程と、
前記磁石を第1の基板上に散布された微粒子群に接近させ、前記着磁性微粒子を前記分離板の表面に付着させる第2の工程と、
前記磁石を前記第1の基板から離隔させ、前記分離板の表面に付着した前記着磁性微粒子を第2の基板上に載置する第3の工程と、
前記貫通孔内の圧力を大気圧または正圧に切り替える第4の工程と、
前記磁石を前記第2の基板から離隔させ、前記分離板の表面に付着した前記着磁性微粒子を前記分離板とともに前記第2の基板上に留置する第5の工程と、
を含むことを特徴とする、磁力選別方法。 - 前記第1の基板上に散布された微粒子群を揮発性の液体に浸漬させた後、前記第2の工程を実施することを特徴とする、請求項9に記載の磁力選別方法。
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