JP2011196840A - 急性大動脈解離の検査方法 - Google Patents

急性大動脈解離の検査方法 Download PDF

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Abstract

【課題】新規且つ有効な急性大動脈解離の検査方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る急性大動脈解離の検査方法は、非マルファン症候群患者の血液検体におけるTGF−β1の濃度を測定し、測定された前記濃度に基づいて、急性大動脈解離を検査することを特徴とする。この急性大動脈解離の検査方法においては、測定された前記濃度が、予め決定された閾値より大きいか否かを評価することとしてもよい。この場合、前記閾値は、急性大動脈解離患者と健常者との比較に基づき予め決定された閾値であることとしてもよい。また、前記閾値は、スタンフォードA型の急性大動脈解離患者とスタンフォードB型の急性大動脈解離患者との比較に基づき予め決定された閾値であることとしてもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、急性大動脈解離の検査方法に関し、特に、血液中のTGF−β1を指標として急性大動脈解離を検査する方法に関する。
大動脈疾患は、症状が出現する前に発見し、病態の管理及び治療を早期に行うことが特に必要とされる疾患群である。急性大動脈解離、大動脈瘤、大動脈径拡大は、いずれも大動脈疾患に分類されるが、その診断の容易性や治療方法は異なる。例えば、大動脈瘤及び大動脈径拡大は、CT(Computed Tomography)等の画像診断により、比較的容易に発見することができる。
また、マルファン症候群(Marfan’s syndrome)患者の血液中におけるTGF(Transforming Growth Factor)−βの濃度が、大動脈径の拡大と共に上昇することが報告されている(非特許文献1、非特許文献2参照)。マルファン症候群は、TGF−βの活性を調整するタンパク質であるフィブリリン1(fibrillin 1)をコードする遺伝子FBN1の変異を伴う先天性の遺伝子疾患である。そして、フィブリリン1の変異により引き起こされるTGF−βの異常制御が、マルファン症候群の中心的な発病機構であると考えられている(非特許文献3参照)。
Matt P, Schoenhoff F, Habashi J, et al; GenTAC Consortium. Circulating Transforming Growth Factor-beta in Marfan Syndrome. Circulation 2009;120:526-32. Ahimastos AA, Aggarwal A, D'Orsa KM, et al. Effect of perindopril on large artery stiffness and aortic root diameter in patients with Marfan syndrome: a randomized controlled trial. JAMA 2007;298:1539-47. Judge DP, Dietz HC. Marfan's syndrome. Lancet 2005;366:1965-76.
しかしながら、急性大動脈解離については、発症すると死亡率が極めて高い疾患であるにもかかわらず、従来、その診断は容易でなかった。すなわち、例えば、急性大動脈解離については、心筋梗塞に対するトロポニンT(Troponin−T)に代表されるような血液中の特異的急性期マーカーは見出されていなかった。
このため、例えば、胸痛を有する患者が腎臓機能低下等により造影CTを受けることが難しく、単純(非造影)CTで画像診断しても異常が認められない場合には、当該胸痛が心筋梗塞によるものであるのか、又は急性大動脈解離の初期症状によるものであるのかを判断することが困難であった。したがって、このような患者については、その後に急性大動脈解離を発症する可能性を否定できないため、引き続き経過を慎重に観察する必要があった。
また、患者が胸痛を訴える場合、既に大動脈の解離又は切迫破裂が発生していることがある。このため、上述のような画像診断に時間をかけて治療の開始が遅れることにより、予後不良となることがあった。
また、CT等の画像診断には、患者に対する放射線被ばくの問題、費用対効果が必ずしも高くないという問題、画像診断装置を備えた施設でしか診断を受けられないという問題があった。
また、心臓の左心室から延び出る大動脈は、上行大動脈、弓部大動脈、下行大動脈、腹部大動脈からなるが、急性大動脈解離には、当該上行大動脈に解離が発生するスタンフォードA型と、当該上行大動脈以外の部分に解離が発生するスタンフォードB型とがある。そして、これら病型の違いにより、急性大動脈解離の治療法は異なってくる。すなわち、スタンフォードA型の急性大動脈解離は、解離が心臓にまで及ぶことがある致死率の高い重症型であり、ひとたび発症すると緊急の外科手術が必須となる。
しかしながら、従来、患者の急性大動脈解離がスタンフォードA型か否かを予測又は判断するための有効な検査方法はなかった。
また、急性大動脈解離を発症し治療を受けた患者の予後を予測又は評価する有効な検査方法もなかった。
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、新規且つ有効な急性大動脈解離の検査方法を提供することをその目的の一つとする。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る急性大動脈解離の検査方法は、非マルファン症候群患者の血液検体におけるTGF−β1の濃度を測定し、測定された前記濃度に基づいて、急性大動脈解離を検査することを特徴とする。本発明によれば、新規且つ有効な急性大動脈解離の検査方法を提供することができる。
また、前記急性大動脈解離の検査方法においては、測定された前記濃度が、予め決定された閾値より大きいか否かを評価することとしてもよい。この場合、前記閾値は、急性大動脈解離患者と健常者との比較に基づき予め決定された閾値であることとしてもよい。また、前記閾値は、スタンフォードA型の急性大動脈解離患者とスタンフォードB型の急性大動脈解離患者との比較に基づき予め決定された閾値であることとしてもよい。
また、前記急性大動脈解離の検査方法において、前記患者は、急性大動脈解離を発症していると診断されていない患者であることとしてもよい。この場合、前記患者は、胸痛の症状を有する患者であることとしてもよい。さらにこの場合、前記患者は、画像診断において異常が認められなかった患者であることとしてもよい。また、前記急性大動脈解離の検査方法において、前記患者は、急性大動脈解離の治療を受けた患者であることとしてもよい。
本発明によれば、新規且つ有効な急性大動脈解離の検査方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る実施例において、スタンフォードA型の急性大動脈解離患者、スタンフォードB型の急性大動脈解離患者及び健常者のそれぞれについて、血清中のTGF−β1濃度を測定した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る実施例において、急性大動脈解離患者及び健常者のそれぞれについて、血清中の活性TGF−β1濃度を測定した結果の一例を示す説明図である。
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は、本実施形態に限られるものではない。
本実施形態に係る急性大動脈解離の検査方法(以下、「本方法」という。)は、非マルファン症候群患者(以下、「非マルファン患者」という。)の血液検体におけるTGF−β1の濃度を測定し、測定された当該濃度に基づいて、急性大動脈解離を検査する方法である。
すなわち、本発明の発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、非マルファン患者の血液中のTGF−β1が、急性大動脈解離のバイオマーカーとして有用であることを独自に見出した。
本方法において検査の対象となる非マルファン患者は、マルファン症候群患者ではないヒト患者であれば特に限られない。また、測定の対象となる血液検体は、非マルファン患者から得られた血液検体であれば特に限られず、例えば、血液、血清又は血漿を使用することができる。
TGF−β1の濃度を測定する方法は、血液検体中のTGF−β1を定量できる方法であれば特に限られない。すなわち、例えば、ELISA(enzyme−linked Immunosorbent assay)等、TGF−β1に対する抗体を使用した免疫学的測定法を使用することができる。抗体としては、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を使用することができ、特にモノクローナル抗体を好ましく使用することができる。
ここで、非マルファン患者から得られた血液検体には、TGF−β1として、活性型のTGF−β1と不活性型(潜在型)のTGF−β1とが含まれる。そこで、本発明においては、活性型のTGF−β1と不活性型のTGF−βとを特に区別する場合には、これらをそれぞれ「活性TGF−β1」及び「不活性TGF−β1」といい、これらを区別しない場合には、単に「TGF−β1」という。
したがって、本発明において「血液検体におけるTGF−β1の濃度」は、当該血液検体に含まれる活性TGF−β1の濃度と不活性TGF−β1の濃度との合計値、すなわち全TGF−β1の濃度を意味する。
このTGF−β1濃度は、例えば、活性TGF−β1と不活性TGF−β1とを含む血液検体に対して、当該不活性TGF−β1を活性化する(より正確には、不活性TGF−β1から活性TGF−β1を生成する)処理を施し、次いで、当該活性化処理が施された血液検体に含まれる活性TGF−β1の濃度を測定することにより求めることができる。
活性化処理としては、例えば、血液検体に塩酸等の酸を添加する酸処理を使用することができる。活性TGF−β1の濃度は、例えば、上述のとおり、当該活性TGF−β1に対する抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を使用した免疫学的測定法により測定することができる。
本方法においては、例えば、こうして測定されたTGF−β1の濃度が、予め決定された閾値より大きいか否かを評価する。そして、この評価の結果に基づいて、急性大動脈解離の可能性を検査する。すなわち、例えば、TGF−β1の濃度が閾値より大きい場合には、急性大動脈解離の可能性について肯定的な結果を示すことになる。
この閾値は、例えば、急性大動脈解離患者と健常者との比較に基づき予め決定された閾値(以下、「正常閾値」という。)とすることができる。正常閾値は、急性大動脈解離患者の血液検体におけるTGF−β1濃度と、健常者の血液検体におけるTGF−β1濃度と、の境界値として統計学的に決定される。
なお、この急性大動脈解離患者のTGF−β1濃度としては、スタンフォードA型とスタンフォードB型とを区別しない全急性大動脈解離患者のTGF−β1濃度を使用することができ、又はスタンフォードB型急性大動脈解離患者のTGF−β1濃度を使用することもできる。
正常閾値は、例えば、複数の健常者の血液検体におけるTGF−β1濃度を測定した結果に基づき統計学的に決定される。具体的に、正常閾値は、例えば、複数の健常者の血液検体中のTGF−β1濃度から統計学的に決定された平均値(例えば、算術平均値)とすることができ、又は当該平均値より大きく、当該TGF−β1濃度から統計学的に決定された範囲(例えば、平均値±標準偏差で示される範囲)の上限値以下の任意の値とすることができる。
また、正常閾値は、例えば、複数の急性大動脈解離患者の血液検体におけるTGF−β1濃度を測定した結果に基づき統計学的に決定される。具体的に、正常閾値は、例えば、複数の急性大動脈解離患者の血液検体中のTGF−β1濃度から統計学的に決定された平均値(例えば、算術平均値)とすることができ、又は当該平均値より小さく、当該TGF−β1濃度から統計学的に決定された範囲(例えば、平均値±標準偏差で示される範囲)の下限値以上の任意の値とすることができる。
また、正常閾値は、例えば、複数の健常者及び複数の急性大動脈解離患者の血液検体におけるTGF−β1濃度を測定した結果に基づき統計学的に決定される。具体的に、正常閾値は、例えば、複数の健常者の血液検体中のTGF−β1濃度から統計学的に決定された平均値(例えば、算術平均値)以上であって、複数の急性大動脈解離患者の血液中のTGF−β1濃度から統計学的に決定された平均値(例えば、算術平均値)以下である任意の値とすることができる。
正常閾値は、当該正常閾値を決定するために使用された統計学的処理の条件に応じて変動し得るが、例えば、7ng/mLとすることができ、9ng/mLとすることができる。
また、本方法における閾値は、例えば、スタンフォードA型の急性大動脈解離患者(以下、「スタンフォードA型患者」という。)とスタンフォードB型の急性大動脈解離患者(以下、「スタンフォードB型患者」という。)との比較に基づき予め決定された閾値(以下、「A型/B型閾値」という。)とすることができる。
A型/B型閾値は、スタンフォードA型患者の血液検体におけるTGF−β1濃度と、スタンフォードB型患者の血液検体におけるTGF−β1濃度と、の境界値として統計学的に決定される。なお、A型/B型閾値は、上述の正常閾値より大きくなる。
A型/B型閾値は、例えば、複数のスタンフォードB型患者の血液検体におけるTGF−β1濃度を測定した結果に基づき統計学的に決定される。具体的に、A型/B型閾値は、例えば、複数のスタンフォードB型患者の血液検体中のTGF−β1濃度から統計学的に決定された平均値(例えば、算術平均値)とすることができ、又は当該平均値より大きく、当該TGF−β1濃度から統計学的に決定された範囲(例えば、平均値±標準偏差で示される範囲)の上限値以下の任意の値とすることができる。
また、A型/B型閾値は、例えば、複数のスタンフォードA型患者の血液検体におけるTGF−β1濃度を測定した結果に基づき統計学的に決定される。具体的に、A型/B型閾値は、例えば、複数のスタンフォードA型患者の血液検体中のTGF−β1濃度から統計学的に決定された平均値(例えば、算術平均値)とすることができ、又は当該平均値より小さく、当該TGF−β1濃度から統計学的に決定された範囲(例えば、平均値±標準偏差で示される範囲)の下限値以上の任意の値とすることができる。
また、A型/B型閾値は、例えば、複数のスタンフォードB型患者及び複数のスタンフォードA型患者の血液検体におけるTGF−β1濃度を測定した結果に基づき統計学的に決定される。具体的に、A型/B型閾値は、例えば、複数のスタンフォードB型患者の血液検体中のTGF−β1濃度から統計学的に決定された平均値(例えば、算術平均値)以上であって、複数のスタンフォードA型患者の血液中のTGF−β1濃度から統計学的に決定された平均値(例えば、算術平均値)以下である任意の値とすることができる。
A型/B型閾値は、当該A型/B型閾値を決定するために使用された統計学的処理の条件に応じて変動し得るが、例えば、13ng/mLとすることができ、18ng/mLとすることができ、20ng/mLとすることができ、24ng/mLとすることもできる。
そして、本方法において、非マルファン患者の血液検体中のTGF−β1の濃度が正常閾値より大きい場合には、当該患者が急性大動脈解離を発症している可能性がある若しくは当該可能性が高い、又は当該患者が今後急性大動脈解離を発症する可能性がある若しくは当該可能性が高い、との検査結果を示す。
一方、非マルファン患者のTGF−β1濃度が正常閾値以下である場合には、例えば、当該患者が急性大動脈解離を発症している可能性は低い、又は当該患者が今後急性大動脈を発症する可能性は低いとの検査結果を示す。
また、本方法において、非マルファン患者の血液検体中のTGF−β1の濃度がA型/B型閾値より大きい場合には、当該患者がスタンフォードA型の急性大動脈解離を発症している可能性がある若しくは当該可能性が高い、又は当該患者が今後スタンフォードA型の急性大動脈解離を発症する可能性がある若しくは当該可能性が高い、との検査結果を示す。
また、本方法において、非マルファン患者の血液検体中のTGF−β1の濃度が、正常閾値より大きく、且つA型/B型閾値以下である場合には、当該患者がスタンフォードB型の急性大動脈解離を発症している可能性がある若しくは当該可能性が高い、又は当該患者が今後スタンフォードB型の急性大動脈解離を発症する可能性がある若しくは当該可能性が高い、との検査結果を示す。
なお、これらの検査結果は、例えば、当該検査結果を示すデータや通知において、可能性の有無を示す表示(例えば、検査項目に対応する欄における「イエス/ノー」や「*/−」等の表示)や、可能性の高さを複数のレベルで示す複数段階の表示(例えば、検査項目に対応する欄におけるA、B、Cの3段階評価等の表示)にて示すことができる。
このように、本方法によれば、従来にない新規且つ有効な急性大動脈解離の検査及び診断(急性大動脈解離の発症の有無、急性大動脈解離の病型、治療効果、予後等の予測及び判定)を実現することができる。
すなわち、本方法によれば、例えば、不安定な大動脈(Vulnerable Aorta)を有する患者の抽出が可能となり、当該患者について、さらなる画像診断を行うべきか否かの判断が容易となる。
具体的に、非マルファン患者が、急性大動脈解離を発症していると診断されていない患者である場合には、当該患者のTGF−β1濃度と正常閾値とを比較することにより、画像診断を受ける前に、当該患者の急性大動脈解離の可能性を簡便に検査することができる。
特に、非マルファン患者が、胸痛を有する患者である場合には、従来であれば次に画像診断を受ける必要があったが、本方法によれば、当該患者のTGF−β1濃度と正常閾値とを比較することにより、当該画像診断を受ける前に、急性大動脈解離の可能性を簡便に検査することができる。したがって、例えば、胸痛の原因となっている大動脈の解離又は切迫破裂を早期に発見し、その治療を早期に開始することができる。
なお、本方法において、胸痛を有しない患者を対象として検査を行うことにより、不安定な大動脈を有する健常者(例えば、具体的な症状を有していないものの、急性大動脈解離等の大動脈疾患を発症する可能性が高い潜在的な患者)をスクリーニングすることもできる。
さらに、患者のTGF−β1濃度とA型/B型閾値とを比較することにより、画像診断を受ける前に、当該患者のスタンフォードA型急性大動脈解離の可能性を簡便に検査することもできる。
すなわち、本方法によれば、急性大動脈解離の病型がスタンフォードA型かスタンフォードB型かの検査を早期に簡便に行うことができる。そして、本方法によりスタンフォードA型の急性大動脈解離の可能性が示された場合には、早期に適切な治療を準備又は開始できるため、致死率の低減及び予後の改善が可能となる。
なお、本方法による検査結果と、その後のCT等の画像診断と、を組み合わせることにより、患者の急性大動脈解離の可能性や病型の予測又は判定を早期に確実に行うことができる。
また、非マルファン患者が、胸痛を有するものの、画像診断において異常が認められなかった患者である場合には、従来であれば経過を慎重に観察するしかなかったが、本方法によれば、当該患者のTGF−β1濃度と正常閾値とを比較することにより、急性大動脈解離の可能性を早期に簡便に検査することができる。
さらに、患者のTGF−β1濃度とA型/B型閾値とを比較することにより、当該患者のスタンフォードA型急性大動脈解離の可能性を早期に簡便に検査することもできる。そして、本方法によりスタンフォードA型の急性大動脈解離の可能性が示された場合には、早期に適切な治療を準備又は開始できるため、致死率の低減及び予後の改善が可能となる。
また、非マルファン患者が、画像診断において軽度の大動脈拡張が認められた患者である場合には、従来であれば急性大動脈解離の可能性に基づく慎重な経過観察の頻度や必要性を決定することが難しかったが、本方法によれば、当該患者のTGF−β1濃度と正常閾値又はA型/B型とを比較することにより、急性大動脈解離の可能性や病型を早期に簡便に検査することができるため、当該慎重な経過観察の頻度や必要性を早期に適切に決定することができる。
また、本方法において、非マルファン患者が、急性大動脈解離の治療を受けた患者である場合には、当該患者の血液検体におけるTGF−β1濃度の時間的変化を追跡することにより、当該治療の効果、病勢の推移、予後を簡便に検査することができる。
すなわち、例えば、患者のTGF−β1濃度が経時的に低下する傾向にある場合には、治療の効果が出ている、又は予後が良好となる可能性が高いという検査結果を示す。一方、患者のTGF−β1濃度が経時的に増加する傾向にある場合には、治療の効果が不十分である、又は予後が不良となる可能性があるという検査結果を示す。この場合、さらなる治療の要否等を検討することとなる。
また、例えば、急性大動脈解離の治療を受けた患者のTGF−β1濃度と正常閾値とを比較することもできる。すなわち、患者のTGF−β1濃度が正常閾値以下となったか否かを評価する。そして、患者のTGF−β1濃度が正常閾値以下となった場合には、例えば、急性大動脈解離が治癒したという検査結果を示す。
また、例えば、急性大動脈解離の治療を受け、その後、TGF−β1濃度が正常閾値以下となった患者であって、TGF−β1濃度が再び当該正常閾値より大きくなった場合には、急性大動脈解離を再発している可能性がある、又は急性大動脈解離を再発する可能性があるという検査結果を示す。
さらに、TGF−β1濃度がA型/B型閾値より大きくなった場合には、スタンフォードA型の急性大動脈解離を発症している可能性がある、又はスタンフォードA型の急性大動脈解離を今後発症する可能性があるという検査結果を示す。
なお、本発明の発明者らの検討によれば、非マルファン患者の血液検体における活性TGF−β1の濃度を測定し、測定された当該濃度に基づいて、急性大動脈解離を検査する方法もまた有用なものと考えられる。
すなわち、この場合、非マルファン患者から得られた血液検体に含まれる活性TGF−β1及び不活性TGF−β1のうち、当該活性TGF−β1のみをバイオマーカーとして使用する。
活性TGF−β1と不活性TGF−β1とを含む血液検体における当該活性TGF−β1の濃度のみを選択的に測定するには、例えば、当該血液検体に上述のような活性化処理を施すことなく、当該活性TGF−β1に対する抗体を使用して、当該血液検体に含まれる活性TGF−β1の濃度を測定する。このように活性TGF−β1を指標とする場合においても、上述の例と同様にして、正常閾値等の閾値を決定し使用することができる。
また、非マルファン患者の血液検体における活性TGF−β1の濃度と、不活性TGF−β1又は全TGF−β1の濃度と、を測定し、測定された当該濃度に基づいて、急性大動脈解離を検査する方法もまた有用なものと考えられる。
すなわち、活性TGF−β1濃度と全TGF−β1濃度(活性TGF−β1濃度と不活性TGF−β1濃度との合計値)との比率や、活性TGF−β1濃度と不活性TGF−β1濃度との比率もまた、急性大動脈解離の検査における指標となり得るものと考えられる。
次に、本実施例形態に係る具体的な実施例について説明する。
スタンフォードA型又はスタンフォードB型の急性大動脈解離を発症した非マルファンヒト成人患者の血液を、発症から24時間以内に採取した。採取した血液を遠心分離することにより血清を調製し、得られた血清を−80℃で凍結保存した。保存された血清を解凍し、当該血清中のTGF−β1濃度を測定した。測定には、市販のELISAキット(Quantikine(登録商標)、コスモ・バイオ株式会社製)を使用した。
すなわち、まず血清中のTGF−β1を全て活性型に変換するため、当該血清に、不活性TGF−β1を活性化する酸処理を施した。具体的には、40μLの血清に20μLの1N HClを加えて混合し、室温で10分間保持した。
次いで、20μLの1.2N NaOH/0.5M HEPESを加えて中和した。そして、活性TGF−β1に対するモノクローナル抗体を使用したELISA法により、血清中のTGF−β1濃度を測定した。
なお、上記の酸処理を施していない血清を使用することにより、当該血清中の活性TGF−β1の濃度も測定した。また、同様にして、ヒト成人健常者から得られた血清中のTGF−β1濃度及び活性TGF−β1の濃度も測定した。
図1は、スタンフォードA型患者、スタンフォードB型患者及び健常者の血清中のTGF−β1濃度(ng/mL)を測定した結果を示す。図1に示すように、健常者のTGF−β1濃度は、8.63±3.39ng/mL(mean±SD、n=5)であったのに対して、スタンフォードB型患者のTGF−β1濃度は、12.8±5.69ng/mL(mean±SD、n=5)であり、スタンフォードA型患者のTGF−β1濃度は、24.5±14.2ng/mL(mean±SD、n=17)であった。
すなわち、スタンフォードB型患者のTGF−β1濃度は、健常者の約1.5倍であり、スタンフォードA型患者のTGF−β1濃度は、当該健常者の約2.8倍であった。したがって、血清中のTGF−β1は、急性大動脈解離の検査におけるバイオマーカーとして有用であることが確認された。
さらに、スタンフォードA型患者のTGF−β1濃度は、スタンフォードB型患者の約1.9倍であった。したがって、血清中のTGF−β1は、急性大動脈解離の病型がスタンフォードA型かスタンフォードB型かの検査におけるバイオマーカーとしても有用であることが確認された。
図2は、急性大動脈解離患者(スタンフォードA型患者とスタンフォードB型患者とを含む)及び健常者の血清中の活性TGF−β1濃度(ng/mL)を測定した結果を示す。図2に示すように、健常者の活性TGF−β1濃度は、0.76±0.46ng/mL(mean±SD、n=4)であったのに対して、急性大動脈解離患者のTGF−β1濃度は、1.07±0.62ng/mL(mean±SD、n=4)であった。
すなわち、急性大動脈解離患者の活性TGF−β1濃度は、健常者の活性TGF−β1濃度に比べて高くなる傾向が認められた。したがって、血清中の活性TGF−β1もまた、急性大動脈解離の検査におけるバイオマーカーになり得ることが確認された。

Claims (8)

  1. 非マルファン症候群患者の血液検体におけるTGF−β1の濃度を測定し、測定された前記濃度に基づいて、急性大動脈解離を検査する
    ことを特徴とする急性大動脈解離の検査方法。
  2. 測定された前記濃度が、予め決定された閾値より大きいか否かを評価する
    ことを特徴とする請求項1に記載された急性大動脈解離の検査方法。
  3. 前記閾値は、急性大動脈解離患者と健常者との比較に基づき予め決定された閾値である
    ことを特徴とする請求項2に記載された急性大動脈解離の検査方法。
  4. 前記閾値は、スタンフォードA型の急性大動脈解離患者とスタンフォードB型の急性大動脈解離患者との比較に基づき予め決定された閾値である
    ことを特徴とする請求項2に記載された急性大動脈解離の検査方法。
  5. 前記患者は、急性大動脈解離を発症していると診断されていない患者である
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載された急性解離の検査方法。
  6. 前記患者は、胸痛の症状を有する患者である
    ことを特徴とする請求項5に記載された急性大動脈解離の検査方法。
  7. 前記患者は、画像診断において異常が認められなかった患者である
    ことを特徴とする請求項6に記載された急性大動脈解離の検査方法。
  8. 前記患者は、急性大動脈解離の治療を受けた患者である
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載された急性大動脈解離の検査方法。
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