JP2011196074A - イワダレソウを利用した法面緑化吹付システム - Google Patents

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Abstract

【課題】法面にイワダレソウに加わる衝撃を最小限に抑えた状態で吹付け、法面の緑化、及び土壌表面の保護及び安定化を図ることが可能なイワダレソウを利用した法面緑化吹付システムを提供することを課題とする。
【解決手段】本実施形態の吹付システム1は、所定サイズにカットされたイワダレソウを含む緑化基材3の貯留された基材タンク9と、団粒剤水溶液4の貯留された団粒剤タンク10と、緑化基材3を撹拌及び混合し、所定粘度の泥状緑化基材11に調製する撹拌部12と、泥状混合体21をを法面5に対して吹付ける混合ノズル部2と、泥状緑化基材11等を圧送する圧送部13とを主に具備する。圧送部13による泥状緑化基材11の配管25aの搬送を層流状態とすることにより、イワダレソウに与えるダメージを抑えることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、イワダレソウを利用した法面緑化吹付システム(以下、単に「吹付システム」と称す)に関するものであり、特に、造成地や道路、河川等の法面に適用され、匍匐茎の一種であるイワダレソウを利用し、法面に吹付けることによって植生し、法面の緑化、及び保存、安定化を図ることが可能な吹付システムに関するものである。
従来から、造成地や道路、河川等の法面の安定化等を図るため、各種の工法が採用されている。例えば、法面に対し、砂、セメント、及び水を混練し、調製したモルタルを吹付け、乾燥させることにより、法面上に強固なモルタル層を構築するモルタル工法、或いは、法面上にビニール製等のシートを被せ、法面全体を当該シートで被覆するシート工法等が知られている。さらに、法面を構成する土壌に植物の種子を含んだ材料を吹付け、法面で植物の生育、繁殖を行うことにより、土壌を緑化することで、法面の安定化を行う種子吹付工法も知られている。
ここで、モルタル工法では、法面上に形成された強固なモルタル層の強度によって法面の保護及び安定化を図るものであった。しかしながら、モルタル層は、経年変化によって徐々にその強度が低下することが知られ、長期的な使用の場合、法面上に構築されたモルタル層にひび割れ等の亀裂が発生したり、モルタル層に対して強い衝撃が加わることによって、欠けや破断等が生じることがあった。これにより、モルタル層自体の強度が低下し、法面の保護及び安定化が十分にできないことがあった。さらに、上記不具合を解消するために、モルタル層の経年変化を逐次チェックしたり、亀裂等が発見された場合には補修や改修作業を行う必要があった。そのため、モルタル層の管理及び維持に時間及びコストを要することがあった。
一方、シート工法は、法面上にビニール製等のシートを被せることによって、太陽光を遮断し、法面の土壌中に混入した雑草(若しくは雑草の種子)の繁殖を抑制したり、鳥や風等の手段によって運ばれる雑草の種子等が法面に付着することを防ぐものであり、主として防草機能を目的とするものであった。また、法面に雨水等が直に接触することがないため、土壌の流れ落ちを防ぐ機能も有していた。すなわち、シート工法は、法面自体の強度を向上させるものではなく、構築された法面をシートによって保護し、雑草の繁殖等を抑えるものに過ぎなかった。また、モルタル工法と同様に、長期的な使用の場合、シートに破れ等の破損が生じ、上記の作用効果を十分に奏することができないことがあった。また、シートの破損によって美観が損なわれるため、周囲の景観に影響を及ぼすことがあった。
これに対し、種子吹付工法は、法面に特定の植物の種子を吹付け、法面全体を緑化し、法面を構成する土壌に根を張り巡らす植物の力を利用して土壌表面の雨水等により浸食を防止することを可能とするものである。そのため、施工後の管理及び維持のためのコストを比較的低く抑えることができ、長期的な法面の保護及び安定化に特に有用な工法である。一方、種子吹付工法に使用する植物は、種子から繁殖する植物(種子繁殖性植物)であり、当該植物は一般的に根長が比較的短いものが多かった。そのため、法面の土壌表面付近でのみ根を張り巡らし、土壌深くまで当該根が侵出するものは少なかった。そのため、法面の保護及び安定化の機能が低いことがあった。さらに、種子吹付工法によって吹付けられた種子が法面の土壌で発芽する前に、風などによって飛散し、法面以外の緑化非対象の地域で生育することにより、問題が生じる場合もあった。
一方、種子繁殖をしない、品種改良されたイワダレソウ(クラピア)の苗を河川敷や公園等の平地に吹付け、生育させることにより、当該平地を緑化する試みも行われている(例えば、非特許文献1参照)。これによると、マット上に生育させたクラピアの苗を適当な大きさにカットし、平地に対して吹付け、生育させることにより、河川敷等の広域的な範囲の緑地化を簡便に行うことができる。ここで、品種改良されたイワダレソウは、高さが5cm程度の植物であり、葉が密生して生育する特徴を有している。そのため、イワダレソウの葉の下に生える雑草は、イワダレソウの密生した葉によって太陽光が遮られ、光合成が阻害されることによって生育が抑えられる。そのため、雑草等の除去作業を行う必要がなく、緑地化に係るコスト及び労力を低減することができる。
また、品種改良されたイワダレソウは、種子繁殖性ではなく、根茎から成長し、土壌表面を覆うように繁殖するものであり、上述した種子繁殖性植物のように風等によって種子が飛散し、非緑化対象の地域で生育するような問題を生じることがなかった。さらに、根長さがが改良前に比べて比較的長いものが多く、土壌深くまで根茎を侵入させることができ、土壌の侵食を防止する高い効果を示し、さらにpHの高いアルカリ性土壌のような劣悪な環境下であっても成長及び繁殖が良好である等の優れた特性を有している。
一般に、イワダレソウのような匍匐茎を河川等の広域面を対象に植生させようとした場合、セル苗やポット苗で予め生育させたイワダレソウを所定間隔で植生させることが行われていた。この場合、苗等を準備するための材料費や植生に要する人件費等が嵩むことがあり、上記吹付作業はこの問題を解消することが可能であった。
しかしながら、イワダレソウのような種子繁殖を行わない匍匐茎を傾斜した法面に吹付け、緑化させる場合、下記に掲げるような問題点を生じることがあった。すなわち、非特許文献1に示した河川敷や公園等の平地に対して品種改良されたイワダレソウを吹付ける方法を利用した場合、吹付後の法面との接着性(密着性)が十分でない可能性が高かった。カットしたイワダレソウ(クラピア)の苗を単純に平地に対して吹付けたものであるため、イワダレソウは、吹付対象の平地に重力によって載置されている状態に過ぎなかった。そのため、所定の傾斜勾配を有する法面に吹付けた場合、法面との接着性が十分でないため、傾斜に沿って落下し、法面の下部に吹付けられたイワダレソウが溜まる可能性があった。その結果、法面の上部及び下部でイワダレソウの生育状況に偏りが生じ、法面上部にはほとんどイワダレソウが生育していないこともあった。そのため、イワダレソウの緑化による法面の保護及び安定化の効果が、特に法面の上部で奏せられないことがあった。さらに、イワダレソウが法面に十分に定着する前に、降雨等によって法面から洗い流される可能性が高くなった。そのため、法面を均一な状態で緑化することがほとんど困難であった。
加えて、従来の種子吹付工法では、硬質の外皮(外殻)を有する種子を高い吹付圧力を利用して吹付を行っていた。これに対し、カットされたイワダレソウは、上述の硬質の外皮を有するものではなく、衝撃や振動によるダメージを受けやすい性状を備えていた。そのため、従来の種子吹付工法に使用される一般的な吹付設備をそのまま流用し、同じような吹付条件(吹付圧力等)で吹付を行った場合、イワダレソウに加えられる衝撃によって損傷を受けることがあり、法面に付着した後でも、十分に根茎等の生育が行われない可能性があった。そのため、吹付作業時のイワダレソウに加わる衝撃、ダメージを最小のものに抑える必要があった。
さらに具体的に説明すると、一般的な種子吹付工法に使用される吹付設備は、高圧のエアー(空気圧)を利用して種子等の吹付対象物を吹付用のノズルまで搬送することを行っていた。すなわち、種子等が貯留されたタンクからノズルに至るまでの配管内では、高圧のエアーの影響によって種子等が配管内壁に複数回に亘って衝突を繰返し、その後、所定の吹付圧力で法面に衝突するように吹付けられていた。すなわち、配管内を搬送される種子は、高速の乱流状態で搬送されていた。
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、イワダレソウを含む緑化基材を用い、傾斜した法面に対し、イワダレソウに加わる衝撃を抑えた状態で吹付け、法面の緑化、及び土壌表面の保護及び安定化を図ることが可能な吹付システムの提供を課題とするものである。
上記の課題を解決するため、本発明の吹付システムは、「イワダレソウを含む緑化基材を貯留する基材タンクと、前記緑化基材を団粒化するための団粒剤水溶液を貯留する団粒剤タンクと、前記基材タンクに貯留された前記緑化基材を混練及び撹拌し、泥状緑化基材に調製する撹拌手段と、調製された前記泥状緑化基材、前記団粒剤水溶液、及び空気供給口から供給されたエアーを混合する混合室、及び混合された泥状混合体を噴射するノズル先端部を有し、傾斜した法面に前記泥状混合体を吹付ける混合ノズル部と、前記基材タンク及び前記団粒剤タンクと接続され、前記緑化基材及び前記団粒剤水溶液を前記混合室まで圧送し、前記ノズル先端部から前記泥状混合物を噴射させる圧送手段と」を具備するものから主に構成されている。
ここで、イワダレソウとは、クマツヅラ科イワダレソウ属に属する植物で、熱帯から亜熱帯地域に広く分布するものである。その外観は、細長い茎を有し、基部で枝分かれすることにより地表を這って生育するものである。さらに、園芸用としてヒメイワダレソウが栽培されている。なお、緑化基材の中には、上記イワダレソウの他に、泥状の緑化基材として調製されるために、肥料による効果を持続させるための肥料を含む養生剤、団粒反応を促進するための安定剤、吹付後の団粒基盤を造成するための客土材、及び緑化基材を所定の粘土に調製するための水等の各種資材を含んで構成されている。
さらに具体的に説明すると、養生剤は、植物性繊維に肥料を付着させたものが使用され、基材タンク内での肥料の沈殿を防ぐとともに、緑化基材の混合を均一化する作用を有している。一方、安定剤は、天然植物性油脂の誘導体から構築されたエマルジョンが使用され、吹付時の団粒化反応を促進し、安定した団粒基盤の造成をすることができるものである。また、客土材は、粘土、砂、有機物を所定割合で配合したものであり、団粒基盤の造成の主成分となるものである。
ここで、撹拌手段によって泥状緑化基材を形成する場合、予めイワダレソウ以外の資材を基材タンク中で十分に撹拌及び混合し、最後の段階でイワダレソウを混入する処理を行っている。これにより、撹拌等によるダメージを最小限に抑えることとなる。そして、粘度の調製された泥状緑化基材が圧送ポンプ等の圧送手段によって混合ノズル部まで搬送される。
一方、団粒化とは、土壌がイオン等の作用によって結合し、小粒の集合体(団粒)を形成することであり、内部に微細な間隙を有する構造(団粒構造)を構成したものである。微細な間隙によって、保水性及び通気性を確保することができ、植物等の生育に好適な状態とすることができる。そのため、本発明の吹付システムでは、団粒化のために団粒剤水溶液を用い、吹付直前に泥状緑化基材と混合し、団粒化反応を促進しながら吹付を行っている。ここで、団粒剤水溶液は、団粒剤として線状高分子を用い、これを水に溶解させたものであり、泥状緑化基材を混合ノズル部から吐出(吹付)した瞬間に団粒化させることが可能である。これにより、吹付後の法面で団粒構造を構築することが可能となり、イワダレソウの生育を促進することができる。ここで、基材タンク、団粒剤タンク、ミキサー等の撹拌手段、混合ノズル部、及び空気圧による圧送するためのエアーポンプ等の圧送手段は、既存の種子吹付工法等において採用される設備を流用、若しくは新たにシステム化された圧送設備を利用し、吹付条件等を変更することによって本発明に適用することができる。そのため、詳細な説明については省略する。
したがって、本発明の吹付システムによれば、緑化基材及び団粒剤水溶液がそれぞれ個別に調製され、各タンクから圧送手段を利用して圧送された混合ノズル部の混合室で、空気供給口から供給されたエアーとともに吹付直前に混合され、法面に吹付けられる。これにより、イワダレソウに衝撃を加えることなく、かつ混合ノズル部での目詰まり等の不具合を生じることなく、法面に団粒化反応を促進した状態での吹付が可能となる。その結果、法面におけるイワダレソウの生育を阻害することがなく、緑化及び土壌表面の保護等が図られる。ここで、空気供給口から混合室に供給されるエアーは、圧搾空気或いは圧縮空気等を使用することができる。すなわち、混合室に対して強制的に供給されるものであっても構わない。
さらに、本発明の吹付システムは、上記構成に加え、「前記圧送手段は、粘度調製され、前記基材タンクから前記混合室に圧送される前記泥状緑化基材を層流状態で搬送する」ものであっても構わない。
したがって、本発明の吹付システムによれば、圧送手段を利用して基材タンクから混合ノズル部の混合室に圧送される泥状緑化基材が、層流状態で搬送される。ここで、撹拌手段によって調製された緑化基材が泥状で所定の粘度を有している。そのため、基材タンクから混合ノズル部の混合室に至るまでの経路において、搬送経路の内壁で激しくぶつかるような衝撃が加わることが抑制される。そのため、イワダレソウに対するダメージを抑えることができる。
さらに、本発明の吹付システムは、上記構成に加え、「前記緑化基材は、前記イワダレソウの発芽初期の保水性を確保するための保水剤」を具備するものであっても構わない。
したがって、本発明の吹付システムによれば、緑化基材に保水剤が含まれている。ここで、イワダレソウの生育において、根茎から発芽した直後から2週間程度の間は、十分な水分が与えられることが、その後のイワダレソウの成長に特に重要であることが知られている。そのため、緑化基材の中に保水剤を添加することにより、法面に形成された団粒基盤の保水性を高めている。これにより、吹付後のしばらくの間は団粒基盤中に水分が保持されているため、イワダレソウの生育が阻害されることがない。なお、保水剤としては、市販されている吸水性ポリマーを応用することができる。
さらに、本発明の吹付システムは、上記構成に加え、「前記イワダレソウは、クラピア」であっても構わない。
したがって、本発明の吹付システムによれば、イワダレソウとして品種改良されたクラピアが用いられる。クラピアを利用することにより、従来のイワダレソウに比べて根長が長いため、土壌の深くまで根茎を侵出させることができ、土壌の安定化が図られる。さらに、pHの高いアルカリ性土壌等の劣悪な環境下であっても生育が容易であり、法面の緑化が良好となり、吹付後の管理及び維持作業も比較的簡略化することができる。
さらに、本発明の吹付システムは、上記構成に加え、「前記法面は、傾斜勾配が0°を越え、45°以下に設定されている」ものであっても構わない。
したがって、本発明の吹付システムによれば、所定の傾斜勾配(傾斜角度)の傾斜面で形成された法面に対し、泥状混合体を吹付け、イワダレソウによる緑化が可能となる。ここで、本発明の吹付システムでは、傾斜勾配が0°を越える低勾配の法面にも適用可能である。さらに、45°以上の傾斜勾配を有する法面は、実質的に構築することが困難である。そのため、本発明の吹付システムは、0°を越え、45°以下の傾斜勾配の法面に適用され、さらに20°以上、40°以下の緑化される一般的な法面に適用されるものが好適である。
本発明の効果として、イワダレソウを用い、法面に団粒反応とともに吹付けることによって、法面の緑化及び土壌の保護及び安定化を長期的に図ることができる。特に、イワダレソウを含む緑化基材を泥状に調製し、層流状態で搬送することにより、イワダレソウに加わる衝撃を最小限に抑え、法面に付着後の生育を阻害することがない。さらに、品種改良されたイワダレソウを用いることにより、アルカリ性土壌等の劣悪な環境下であっても根長の長い根茎を法面の土壌深くまで侵出させることができ、緑化及び安定化がさらに図られる。
本実施形態の吹付システムの概略構成を示す模式図である。 吹付システムにおける混合ノズル部の構成を示す一部切欠断面図である。 緑化機材及び団粒剤水溶液の各資材の一例を示す一覧表である。 法面に形成されたイワダレソウ及び団粒基盤の一例を示す説明図である。
以下、本発明の一実施形態である吹付システム1(イワダレソウを利用した法面緑化吹付システムに相当)について、図1乃至図4に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の吹付システム1の概略構成を示す模式図であり、図2は吹付システム1における混合ノズル部2の構成を示す一部切欠断面図であり、図3は緑化基材3及び団粒剤水溶液4の各資材の一例を示す一覧表であり、図4は法面5に形成されたイワダレソウ6及び団粒基盤7の一例を示す説明図である。ここで、本実施形態の吹付システム1は、40°の傾斜勾配に設定された法面5に対し、品種改良されたイワダレソウ6(クラピア)を吹付け、法面5を緑化するものについて例示する。
本実施形態の吹付システム1は、図1乃至図4に示すように、緑化基材3の貯留された基材タンク9と、団粒剤水溶液4の貯留された団粒剤タンク10と、緑化基材3を撹拌及び混合し、所定粘度の泥状緑化基材11に調製する第一撹拌部12a及び団粒剤水溶液4を撹拌する第二撹拌部12bからなる撹拌部12と、泥状混合体21を法面5に対して吹付ける混合ノズル部2と、泥状緑化基材11等を圧送する第一圧送ポンプ13a及び第二圧送ポンプ13bからなる圧送部13とを具備して主に構成されている。ここで、撹拌部12が本発明における撹拌手段に相当し、圧送部13が本発明における圧送手段に相当する。ここで、図1に示されるように、基材タンク9、団粒剤タンク10、撹拌部12,及び圧送部13は、吹付機100として一体的に構築されている。なお、吹付機100には、吹付時の各種操作及び圧送圧力の調整等を行うための操作パネル101、及び撹拌部12や圧送部13等を稼働させるための電源設備等の各種設備が付帯されている。
さらに詳細に説明すると、基材タンク9は、法面5を緑化するための複数の資材から構成された緑化基材3及び泥状に粘度調製された泥状緑化基材11を一時的に貯留するためのものである。ここで、緑化基材3(泥状緑化基材11)は、図3に示されるように、品種改良されたイワダレソウ6の根茎を所定サイズ(例えば、数cm程度)に裁断した植物を含み、さらに、養生材14(商品名「ジェットシードD」)、安定剤15(商品名「マグゾールD」)、客土材16(商品名「ジェットソイル」)、吸水性ポリマーからなる保水剤17、及び水18を各配合比率で混合して構成されている。ここで、各資材の作用及び効果については既に説明を行っているため、ここでは詳細な説明は省略する。
そして、上述した資材を基材タンク9に順次投入し、所定の粘度の泥状緑化基材11として形成するために、基材タンク9の下部には、第一撹拌モータ12c及び第一撹拌モータ12cと連結され、基材タンク9内を撹拌する一対の撹拌羽根12dを有する第一撹拌部12aが設置されている。第一撹拌モータ12cを稼働させることにより、軸回転を伝達ベルト12eを介して撹拌羽根12dに伝達することができ、基材タンク9に貯留された各資材の分布が均一となるように撹拌及び混合することができる。
さらに詳細に説明すると、基材タンク9には規定配合量の水18に対し、養生材14、安定剤15、客土材16、及び保水剤17の順序で各資材が基材タンク9に投入される。このとき、水18の投入量を調整することで、各資材が均一に分散した泥状緑化基材11に調製することができる。なお、カットされたイワダレソウ6の根茎は、上述の各資材が基材タンク9に投入され、十分に撹拌及び混合がされた後に投入される。すなわち、後述の混合ノズル部2へ圧送する直前のタイミングで実施される。これにより、基材タンク9内で撹拌羽根12dの回転によるイワダレソウ6へのダメージを抑えることができる。
一方、団粒剤タンク10は、泥状緑化基材11の団粒化を促進するために使用される団粒剤水溶液4を一時的に貯留するためのものである。具体的に説明すると、団粒剤水溶液4は、団粒剤19(商品名「ソイルフロック」)を水18で所定濃度となるように溶解することで構成される。なお、団粒剤19の溶解は、固形状である所定量の団粒剤19を団粒剤タンク10内に投入し、水18を勢いよく注入することで、水18の水圧を利用して溶解させることができる。なお、団粒剤タンク10には第二撹拌モータ12f及び第二撹拌モータ12fに軸支された撹拌プロペラ12gを有する第二撹拌部12bが取設され、団粒剤19及び水18が一定の濃度で混合可能となっている。係る処理により、タンク9,10に泥状緑化基材11及び団粒剤水溶液4がそれぞれ独立して準備される。
混合ノズル部2は、前述の基材タンク9及び団粒剤タンク10とそれぞれ配管25a,25bを介して接続され、調製された泥状緑化基材11及び団粒剤水溶液4が圧送され、両者が互いに混合される混合室20と、混合室20で混合された泥状緑化基材11及び団粒剤水溶液4を含む混合泥状体21を、法面5に対して勢いよく吐出し、吹付作業を行うためのノズル先端部22とを主に具備して構成されている(図2参照)。ここで、ノズル先端部22の内壁には複数の突起が設けられ、ノズル先端部22から吐出される混合泥状体21の二次撹拌が行われている。
さらに具体的に説明すると、混合ノズル部2の混合室20は、各タンク9,10と接続するための配管25a、25bが取設され、混合室20内に外部の空気(圧搾空気24)を取込むための空気供給口23が設けられている。すなわち、泥状混合体21は、泥状緑化基材11及び団粒剤水溶液4とともに、空気供給口23から強制的に供給された圧搾空気24をその構成中に含むことになり、ノズル先端部22から法面5に到達するまでの間で、当該圧搾空気24によって団粒剤水溶液4の作用による団粒化反応がより促進されることになる。これにより、法面5に形成された団粒基盤7には圧搾空気24が多量に含まれることになり、泥状緑化基材11に混入されたイワダレソウ6の発芽及び生育を良好にすることができる。さらに、混合ノズル部2の混合室20及び各タンク9,10を連結する配管25a,25bには、それぞれの圧送量及び混合比率を調整(及び微調整)可能な調整コック26a,26bが設けられている。そのため、当該調製コック26a等を操作することにより、混合室20に導入される泥状緑化基材11及び団粒剤水溶液4の導入量を調整することができ、良好な配合比率及び泥状混合体21の吹付量に任意に合わせることができる。
圧送部13は、第一圧送ポンプ13a及び第二圧送ポンプ13bを利用して各タンク9,10から泥状緑化基材11と団粒剤水溶液4等を混合室20へ圧送するためのものであり、基材タンク9及び団粒剤タンク10のそれぞれに第一圧送ポンプ13a及び第二圧送ポンプ13bが独立して設けられている。そして、その圧送力を利用して、各タンク9,10の下方からそれぞれの貯留物(泥状緑化基材11又は団粒剤水溶液4)を吸込み、ノズル先端部22から泥状混合体21を吐出(吹付)可能な機能を有している。ここで、圧送部13の構成については、既存の圧送ポンプ等の圧送機器を利用することが可能であり、詳細な説明については省略する。上記構成を採用することで、本発明の吹付システム1の構築が可能となる。
次に、本実施形態の吹付システム1を利用したイワタレソウ6の法面6に対する吹付の具体例について説明する。ここで、吹付機100の基材タンク9及び団粒剤タンク10には、前述したように規定の配合量で調製された泥状緑化基材11及び団粒剤水溶液4が準備されている。そして、吹付機100の操作パネル101を使用者が操作し、第一圧送ポンプ13a及び第二圧送ポンプ13bを稼働状態とする。これにより、各タンク9,10から吸込まれた泥状緑化基材11及び団粒剤水溶液4が第一圧送ポンプ13a及び第二圧送ポンプ13bを介して混合ノズル部2に伝送される。このとき、各圧送ポンプ13a等にそれぞれ独立して設けられた圧力調整バルブ(図示しない)、及びタンク9,10と混合室20との間の配管25a,25bにそれぞれ設けられた調整コック26a,26bによって、混合室20へ送出される泥状緑化基材11等の圧送量、及び泥状緑化基材11と団粒剤水溶液4との混合比率、搬送量および搬送速度等が調整される。
ここで泥状緑化基材11は、撹拌部12に予め所定の粘度に調整された粘土状(泥状)の物質であり、応力に対して変形し、流動する流動性を有している。そのため、圧送部13の圧送力を調整することで、配管25a内を流れる泥状緑化基材11の流れの状態をコントロールすることができる。さらに具体的に示すと、配管25a内を「層流」の状態で搬送する、換言すれば、「非乱流」の状態で圧送することができる。ここで、層流とは、各流体要素の運動が揃うようにして流れるものであり、一方、「乱流」は各流体要素の運動がばらばらで独立して流れるものである。層流状態で圧送(搬送)される泥状緑化基材11は、当該搬送中に配管25aの内壁等に激しく衝突することがなく、第一圧送ポンプ13aによって一定の速度で押出されるようにして混合室20に送られる。その結果、泥状緑化基材11に含まれるイワダレソウ6に加わる衝撃(ダメージ)を必要最小限に抑えることができる。これにより、イワダレソウ6の生育を悪化させる要因を排除して混合室20まで搬送することができる。
そして、混合室20に圧送された泥状緑化基材11は、同様に第二圧送ポンプ13bを利用して団粒剤タンク10から圧送された団粒剤水溶液4、及び空気供給口23から吸気された圧搾空気24と混合され、泥状混合体21を構成する。ここで、混合室20を含む混合ノズル部2は、吹付作業者によって把持され、ノズル口22aが法面5に向けられている。そして、混合室20からノズル先端部22に送られた泥状混合体21は、先端のノズル口22aから所定の噴射圧力で噴射され、法面5に付着するように吹付けられる。
このとき、団粒剤水溶液4及び圧搾空気24の作用によって、泥状混合体21の中で団粒化反応が促進され、法面5に到達し、土壌表面に付着した段階で内部に空気を多量に含む団粒基盤7が形成される。そして、吹付作業者は、法面5に対する吹付量が均等になるように混合ノズル部2の向きを上下左右に移動させる。その結果、法面5に泥状混合体21の付着した付着層(団粒基盤7及びイワダレソウ6)が形成される。このとき、法面5に付着した泥状混合体21には、さらに遅れてくる泥状混合体21及びその噴射圧力によって、より法面5に押付けられる力が作用する。すなわち、泥状混合体21自体の接着性に加え、吹付作業時の噴射圧力(吹付圧力)によって、法面5に対する付着力がさらに高められることになる。そのため、イワダレソウ6に対するダメージを抑えた噴射圧力であっても、十分な接着性を確保することができる。
上記吹付作業によって、法面5に対する十分な接着性を確保した状態で泥状混合体21が吹付けられる。そのため、泥状混合体21の自重によって傾斜面に沿って落下したり、付着層の層圧が法面5の上部及び下部で偏ることがない。これにより、法面5に対し、均一な厚さのイワダレソウ6及び団粒基盤7による付着層が形成される。そのため、イワダレソウ6の生育に偏りが生じることがない。
吹付後から所定時間を経過することにより、団粒基盤7に含まれるイワダレソウ6の根茎から発芽し、法面5を葉茎で覆うようなる。一方、法面5の土壌深くに根茎部分が深く侵出しようとする。これにより、法面5の緑化が行われる。このとき、団粒化を促進して空気及び水分を十分に含んだ状態の団粒基盤7が形成されていることにより、上記イワダレソウ6の生育が良好な状態で行われる。
すなわち、既存の種子吹付工法に使用される設備と略同一のものを用い、吹付条件等を変化させて、カットしたイワダレソウ6を各種資材とともに吹付けることにより、イワダレソウ6に加わる衝撃を少ない状態で吹付けが完了し、事後の生育に影響を及ぼすことがない。加えて、団粒基盤7を構築するための緑化基材3の中には、吸水性ポリマーからなる保水剤が含まれている。当該吸水性ポリマーからなる保水剤は、一定量の水分を自らの構成成分内に保持する機能を有し、紙おむつ等の各種製品に多く使用されている素材である。そのため、法面5の吹付後に、自然降雨が全く起こらない状況であってもイワダレソウ6の根茎からの発芽反応の促進及び保持をすることができる。ここで、イワダレソウ6は、発芽直後から約2週間程度は、生育のために十分な水分が特に必要であることが知られている。そのため、係る保水剤17を含むことにより、吹付後の暫くの期間の水分の安定的な確保が可能となり、イワダレソウ6による緑化を促進することができる。
さらに、本実施形態の吹付システム1は、緑化を行う匍匐茎の植物として、品種改良されたイワダレソウ6(「クラピア」)を所定サイズにカットしたものを使用している。そのため、一般的なイワダレソウに比べ、根長が長い特性を生かし、法面5の土壌深くまで根を侵出させることができる。その結果、土壌の安定化が効果的に図られる。さらに、係るクラピアは、アルカリ性土壌等の劣悪な環境下であっても生育が可能となる。なお、法面5の場所や土壌成分の条件によっては、通常のイワダレソウを吹付けるものであっても構わない。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
すなわち、本実施形態の吹付システム1において、品種改良されたイワダレソウ6を使用する例を示したが、これに限定されるものではなく、従来型のイワダレソウを用いるものであっても構わない。さらに、緑化基材3(泥状緑化基材11)において、養生材14、安定剤15等の各資材を利用するものを示したが、これに限定されるものではなく、法面5の構築される場所や環境、或いは法面5の傾斜勾配等に応じて混合される資材の種類及び配合量等を適宜変更するものであっても構わない。さらに、本実施形態の吹付システム1において、撹拌羽根12dを有する撹拌部12を示したが、これに限定されるものではなく、例えばパドル型やスクリュー型等の周知の撹拌手段を利用するものであっても構わない。さらに、モータ12c等の軸回転を伝達するものとして、伝達ベルト12e等のベルト機構を利用するものを示したが、これに限定されるものではなく、チェーン等のその他の動力伝達機構を用いるものであっても構わない。さらに、第一圧送ポンプ13a等として、スクイーズ型やプランジャー型等の各種方式のものを採用しても構わない。
1 吹付システム(イワダレソウを利用した法面緑化吹付システム)
2 混合ノズル部
3 緑化基材
4 団粒剤水溶液
5 法面
6 イワダレソウ
7 団粒基盤
9 基材タンク
10 団粒剤タンク
11 泥状緑化基材
12 撹拌部(撹拌手段)
12a 第一撹拌部
12b 第二撹拌部
12c 第一撹拌モータ
12d 撹拌羽根
12e 伝達ベルト
12f 第二撹拌モータ
12g 撹拌プロペラ
13 圧送部(圧送手段)
13a 第一圧送ポンプ
13b 第二圧送ポンプ
14 養生材
15 安定剤
16 客土材
17 保水剤
18 水
19 団粒剤
20 混合室
21 混合泥状体
22 ノズル先端部
22a ノズル口
23 空気供給口
24 圧搾空気(エアー)
25a,25b 配管
26a,26b 調整コック
100 吹付機
101 操作パネル
東急建設株式会社、ニュース&トピックス "ローメンテナンスを実現する「クラピア苗吹付け緑化工法」を開発"、[online]、2009年12月16日、[平成22年1月19日検索]、インターネット< URL:http://const.tokyu.com/topics/topics_06.html>

Claims (5)

  1. イワダレソウを含む緑化基材を貯留する基材タンクと、
    前記緑化基材を団粒化するための団粒剤水溶液を貯留する団粒剤タンクと、
    前記基材タンクに貯留された前記緑化基材を混練及び撹拌し、泥状緑化基材に調製する撹拌手段と、
    調製された前記泥状緑化基材、前記団粒剤水溶液、及び空気供給口から供給されたエアーを混合する混合室、及び混合された泥状混合体を噴射するノズル先端部を有し、傾斜した法面に前記泥状混合体を吹付ける混合ノズル部と、
    前記基材タンク及び前記団粒剤タンクと接続され、前記緑化基材及び前記団粒剤水溶液を前記混合室まで圧送し、前記ノズル先端部から前記泥状混合物を噴射させる圧送手段と
    を具備することを特徴とするイワダレソウを利用した法面緑化吹付システム。
  2. 前記圧送手段は、
    粘度調製され、前記基材タンクから前記混合室に圧送される前記泥状緑化基材を層流状態で搬送することを特徴とする請求項1に記載のイワダレソウを利用した法面緑化吹付システム。
  3. 前記緑化基材は、
    前記イワダレソウの発芽初期の保水性を確保するための保水剤をさらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のイワダレソウを利用した法面緑化吹付システム。
  4. 前記イワダレソウは、
    クラピアであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のイワダレソウを利用した法面緑化吹付システム。
  5. 前記法面は、
    傾斜勾配が0°を越え、45°以下に設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載のイワダレソウを利用した法面緑化吹付システム。
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