JP2011195896A - 金属膜形成方法、透過率制御板の製造方法及び配線基板の製造方法 - Google Patents

金属膜形成方法、透過率制御板の製造方法及び配線基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】生産性よく化学めっきを行う方法を提供する。
【解決手段】基板2上に機能液18を配置し、機能液18を固化して下地膜40を形成する下地膜形成工程と、化学めっき処理を行って下地膜40上に金属膜45を形成する化学めっき工程と、を有し、機能液18は樹脂、金属触媒及びレベリング剤を含む。金属触媒は金属を含む官能基を備えたシランカップリング剤であり、機能液18を加熱または光照射して固化する。
【選択図】図3

Description

本発明は、金属膜形成方法にかかわり、特に化学めっきを用いて金属膜を形成する方法に関するものである。
樹脂やガラス等の電気伝導性の低い素材に対して化学めっき処理をして金属膜を形成する方法が広く用いられている。この化学めっきは無電解メッキとも言われ、基材に電圧を印加せずに基材の表面に金属膜を形成する。その方法は、金属イオンを含む溶液に基材を浸漬し、金属イオンを化学的に還元析出させる。そして、基材の表面に金属膜を形成する方法である。
化学めっきにより形成した金属膜は基材との密着性が低い場合がある。そのため、化学めっきを行う前工程にて基材に化学的エッチングをおこない基材の表面を粗面化する方法が行われていた。この方法を改良し、基材上に生産性良く金属膜を形成する化学めっきの方法が特許文献1に開示されている。それによると、基材をオゾン水に浸漬し、さらに、アルカリ液に浸漬して基材の表面を改質した。その後、銀触媒浴に浸漬した後化学めっきを行っていた。
他にも、基材と金属膜との密着性を向上させる方法が特許文献2に開示されている。それによると、基材上にパラジウム化合物を含むポリイミド樹脂前躯体層を形成する。次に、水中にて紫外光を照射することによりパラジウムイオンを露出させてパラジウム金属に還元していた。その後、化学めっきを行っていた。
特開2006−70319号公報 特開2002−30216号公報
金属膜の密着性を確保するために、化学的エッチング、オゾン水に浸漬、アルカリ液に浸漬等の処理が必要であった。また、ポリイミド樹脂前躯体層を形成する方法では、パラジウムイオンを露出させて還元するために特殊な工程が必要であった。このために、簡単な工程で生産性よく化学めっきを行う方法が望まれていた。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本適用例にかかる金属膜形成方法であって、基材上に機能液を配置し、前記機能液を固化して下地膜を形成する下地膜形成工程と、化学めっき処理を行って前記下地膜上に金属膜を形成する化学めっき工程と、を有し、前記機能液は樹脂及び金属触媒を含むことを特徴とする。
この金属膜形成方法によれば、機能液には樹脂及び金属触媒が含まれている。そして、機能液には樹脂が含まれているので、機能液を固化することができる。機能液を固化する過程で金属触媒が樹脂の表面に並ぶ。化学めっき工程では、樹脂の表面に並んだ金属触媒を核にして金属膜が形成される。
基材上に触媒を含む膜を形成した後、触媒を含む膜に化学めっき処理をする方法がある。この方法では、密着性をあげるために基材をオゾン溶液やアルカリ溶液を用いて表面改質する必要があった。そして、表面改質した基材上に触媒を含む液を塗布していた。本適用例では下地膜に含まれる樹脂が基材との密着性を確保する。さらに、下地膜に含まれる金属触媒を核にして金属膜が形成されるので、下地膜と金属膜との密着性が確保される。従って、密着性をあげるために基材の表面改質する工程を省略することができる。その結果、生産性良く基材上に金属膜を形成することができる。
[適用例2]
上記適用例にかかる金属膜形成方法において、前記機能液はレベリング剤をさらに含むことを特徴とする。
この金属膜形成方法によれば、機能液にはレベリング剤が含まれている。レベリング剤が機能液に作用することにより金属触媒が下地膜の表面に一様に分布する。金属膜は金属触媒を核にして形成されるので、金属膜は下地膜の表面に一様に形成される。従って、下地膜上に形成される金属膜の膜厚の分散を小さくすることができる。
[適用例3]
上記適用例にかかる金属膜形成方法において、前記金属触媒は金属を含む官能基を備えたシランカップリング剤であり、前記下地膜形成工程では前記機能液を加熱または光照射して固化することを特徴とする。
この金属膜形成方法によれば、金属触媒は金属を含む官能基を備えたシランカップリング剤であることから、機能液の表面に金属を並び易くすることができる。そして、機能液を固化するために加熱または光を照射するとき、金属がイオンの状態から金属の状態に還元される。従って、下地膜の表面に金属を並ばせることができる。
[適用例4]
上記適用例にかかる金属膜形成方法において、前記機能液は前記金属触媒が溶解した触媒溶液と前記樹脂が溶解した樹脂溶液とを含み、前記触媒溶液の比重は前記樹脂溶液の比重より小さいことを特徴とする。
この金属膜形成方法によれば、触媒溶液の比重は樹脂溶液の比重より小さく調整されている。従って、機能液に重力が作用するとき触媒溶液は機能液の表面に移動し易くなっている。これにより機能液の表面に触媒溶液が多く分布する。この分布状態にて機能液を固化させることにより、金属触媒を下地膜の表面に並ばせ易くすることができる。
[適用例5]
上記適用例にかかる金属膜形成方法において、前記触媒溶液に含まれる溶媒を触媒用溶媒とし、前記樹脂溶液に含まれる溶媒を樹脂用溶媒とするとき、前記触媒用溶媒の沸点は前記樹脂用溶媒の沸点より高い温度であることを特徴とする。
この金属膜形成方法によれば、触媒用溶媒の沸点は樹脂用溶媒の沸点より高い温度となっている。これにより、樹脂用溶媒は触媒用溶媒より揮発しやすくなるので、触媒より早く樹脂が結合する。従って、下地膜の内部で樹脂が重合反応するとき、下地膜の表面では触媒が触媒用溶媒中を移動できる為、下地膜の表面に触媒を並ばせ易くすることができる。
[適用例6]
上記適用例にかかる金属膜形成方法において、前記下地膜形成工程と前記化学めっき工程との間に基材変形工程をさらに有し、前記基材変形工程では前記基材を変形させることを特徴とする。
この金属膜形成方法によれば、下地膜形成工程で基材上に下地膜を形成した後に基材変形工程にて基材を変形させている。このとき、下地膜は基材の表面と密着した状態で変形させられる。下地膜は主に樹脂を材料として形成されているので、基材が変形するときにも断裂し難くなっている。そして、基材と下地膜とが変形した後に化学めっき工程が行われる。化学めっき工程では変形した下地膜に沿って金属膜が形成される。従って、断裂や内部応力の少ない金属膜を形成することができる。金属膜を形成した後で基材を変形させるときには、金属膜が断裂したり、金属膜に内部応力が残留し易くなる。この方法に比べて本適用例の方法は品質の良い金属膜を形成することができる。
[適用例7]
上記適用例にかかる金属膜形成方法において、前記下地膜形成工程では、前記機能液を液滴にして吐出し、前記基材上の所定の場所に前記機能液を配置することを特徴とする。
この金属膜形成方法によれば、機能液を液滴にして配置している。液滴の液量を小さくすることにより微細なパターンを形成することができる。そして、化学めっき工程では液滴により形成された微細なパターンと同じパターンに金属膜を形成することができる。従って、微細なパターンの金属膜を形成することができる。
[適用例8]
本適用例にかかる透過率制御板の製造方法は、光透過性を有する基板上に所定の開口率を有する金属膜のパターンが配置された透過率制御板の製造方法であって、前記金属膜が上記に記載の金属膜形成方法を用いて形成されたことを特徴とする。
この透過率制御板の製造方法によれば、基板に金属膜が形成され、金属膜が光の透過量を限定させることにより所定の開口率の光学特性を実現している。そして、金属膜は生産性の良い形成方法を用いて形成されている為、この透過率制御板は生産性良く製造することができる。
[適用例9]
本適用例にかかる配線基板の製造方法は、基板上に配線が配置された配線基板の製造方法であって、前記配線は金属膜を有し、前記金属膜が上記に記載の金属膜形成方法を用いて形成されたことを特徴とする。
この配線基板の製造方法によれば、基板上に金属膜が形成され、この金属膜が配線となっている。そして、金属膜は生産性の良い形成方法を用いて形成されている為、この配線基板は生産性良く製造することができる。
第1の実施形態にかかわり、(a)は、透過率制御板の構造を示す概略斜視図、(b)は、液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図、(c)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す要部模式断面図。 (a)は、透過率制御板の製造工程を示すフローチャート、(b)〜(d)は、透過率制御板を製造する工程を説明するための模式図。 透過率制御板を製造する工程を説明するための模式図。 第2の実施形態にかかわり、(a)は配線基板の構造を示す概略斜視図、(b)は、配線基板の製造工程を示すフローチャート。(c)〜(d)は、配線基板を製造する工程を説明するための模式図。 配線基板を製造する工程を説明するための模式図。
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
(第1の実施形態)
本実施形態では、透過率制御板及び液滴吐出装置を説明する。次に、この液滴吐出装置を用いて透過率制御板を製造する工程を通じて本発明の特徴的な金属膜形成方法の例について、図1〜図3に従って説明する。液滴吐出装置に関しては様々な種類の装置があるが、インクジェット法を用いた装置が好ましい。インクジェット法は微小液滴の吐出が可能であるため、微細加工に適している。尚、以下の説明に用いた各図においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせてある。
(透過率制御板)
図1(a)は、透過率制御板の構造を示す概略斜視図である。最初に、透過率制御板1について図1に従って説明する。透過率制御板1は四角の板状の基材としての基板2を備えている。基板2は光透過性の板であれば良く、基板2は各種の樹脂材料を板状にして用いることができる。樹脂材料としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリスチレン、エチレン− 酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリアクリロニトリル、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、エラストマーとポリプロピレンを含むポリマーアロイ、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなるものを用いることができる。さらに、ガラス板等の無機質を原料とした板も用いることができる。他にも樹脂フィルムの樹脂シート等も基材として用いることができる。基板2の一面には凸状の反射膜3がマトリクス状に配置されている。本実施形態では5行6列のパターンで30個の反射膜3が配置されているが、反射膜3の個数やパターンは特に限定されない。用途や光学特性に合わせて反射膜3を配置して良い。尚、基板2と反射膜3との密着性を強くしたいときには基板2の材料を樹脂材料にするのが好ましい。
反射膜3の表面には金属膜が形成されている。これにより、透過率制御板1に光を照射するとき反射膜3を照射する光は反射される。一方、基板2を照射する光は基板2を透過する。従って、基板2において反射膜3の占める面積を変えることにより入射する光量に対して反射する光量を制御することができる。このとき、基板2を反射する光量も制御できるので、透過率制御板1は反射率制御板としても用いることができる。
透過率制御板1は光学機能素子や外装を装飾する部材として用いることができる。例えば、ソーラー発電素子を備えた腕時計においてソーラー発電素子を覆う外装に透過率制御板1を用いて外観の意匠性を向上することができる。他にも、近接プロジェクター用のスクリーンにおいて反射方向を制御する光学素子として透過率制御板1を用いることができる。他にも園芸用の遮光シートにおいて透過光の遮光率を制御する手段として透過率制御板1を用いることができる。さらに、液晶表示装置の背面に透過率制御板1を設置し、透過率制御板1に光を照射する。そして、光を拡散させて液晶パネルを照射する光学素子として透過率制御板1を用いることができる。
(液滴吐出装置)
図1(b)は、液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図である。液滴吐出装置4により、膜を構成する材料を含む機能液が吐出されて塗布される。図1(b)に示すように液滴吐出装置4は直方体形状に形成される基台5を備えている。この基台5の長手方向をY方向とし、水平面内にてY方向と直交する方向をX方向とする。そして、鉛直方向をZ方向とする。
基台5の上にはY方向に延びる一対の案内レール6が同Y方向全幅にわたり凸設されている。その基台5の上側には、一対の案内レール6に対応する図示しない直動機構を備えた移動部としてのステージ7が取付けられている。この直動機構には、例えば、リニアモーターが用いられる。
ステージ7の上面には吸引式の基板チャック機構が設けられている。操作者がステージ7上に載置案内板8を載置して所定の位置に位置決めする。その後、基板チャック機構により載置案内板8はステージ7に固定される。載置案内板8上には15個の基板2が配列して配置されている。載置案内板8には基板2の外形形状と同じ形状の凹部が複数形成されている。そして、各凹部には基板2が固定されている。
基台5のX方向をまたぐように門型の支持台9が立設され、支持台9の下側には、X方向に延びる案内レール10がX方向全幅にわたり設置されている。そして、案内レール10に沿って移動するキャリッジ11が配置されている。キャリッジ11はステージ7と同様な直動機構を備えている。キャリッジ11のステージ7側にはヘッドユニット12が配置され、ヘッドユニット12の下側には液滴を吐出する図示しない液滴吐出ヘッドが凸設されている。
キャリッジ11の図中上側には収容タンク13が配置されている。ヘッドユニット12の液滴吐出ヘッドと収容タンク13とは図示しないチューブにより接続され、収容タンク13内の機能液がチューブを介して液滴吐出ヘッドに供給される。
図1(c)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す要部模式断面図である。図1(c)に示すように、液滴吐出ヘッド14はノズル15が形成されたノズルプレート16を備えている。ノズルプレート16の上側であってノズル15と相対する位置には、キャビティ17が形成されている。そして、キャビティ17には収容タンク13に貯留されている機能液18が供給される。キャビティ17の上側には、上下方向に振動して、キャビティ17内の容積を拡大縮小する振動板19と、上下方向に伸縮して振動板19を振動させる圧電素子20が配設されている。
液滴吐出ヘッド14が圧電素子20を制御駆動するためのノズル駆動信号を受けると、圧電素子20が上下方向に伸縮する。そして、圧電素子20は振動板19を振動させるので、振動板19と隣接するキャビティ17の容積が拡大縮小する。それにより、キャビティ17内に供給された機能液18のうち縮小した容積分の機能液18がノズル15を通り、液滴21となって吐出される。液滴吐出装置4はステージ7とキャリッジ11とを往復移動させる。そして、ノズル15が所定の場所に位置するときに液滴21を吐出することにより、所望のパターンを描画することができる。
(金属膜形成方法)
次に、上述した液滴吐出装置4を用いて、透過率制御板を製造する工程について図2〜図3にて説明する。図2(a)は、透過率制御板の製造工程を示すフローチャートである。図2(b)〜図3は、透過率制御板を製造する工程を説明するための模式図である。
図2(a)に示すフローチャートにおいて、ステップS1は調合工程に相当する。この工程は、液滴吐出ヘッドから吐出する機能液を調合する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は基板表面処理工程に相当する。この工程は、基板の表面を清浄にする工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は描画工程に相当する。この工程は、液滴吐出装置を用いて基板上に機能液を塗布する工程である。次にステップS4に移行する。ステップS4は下地膜固化工程に相当する。この工程は、塗布した機能液を加熱乾燥して下地膜を固化する工程である。ステップS2〜ステップS4を合わせてステップS11の下地膜形成工程とする。次にステップS5に移行する。ステップS5は化学めっき工程に相当し、下地膜上に金属膜を形成する工程である。次にステップS6に移行する。ステップS6は金属膜硬化工程に相当し、金属膜を加熱して金属膜を硬化させる工程である。以上の工程にて透過率制御板を製造する工程を終了する。
次に、図2(b)〜図3(d)を用いて、図2(a)に示したステップと対応させて、透過率制御板を製造する工程における金属膜の形成方法を詳細に説明する。ステップS1の調合工程において機能液18の調合を行う。機能液18は主に樹脂が溶媒に溶解された樹脂溶液と触媒が溶媒に溶解された触媒溶液とから構成され、樹脂溶液にはレベリング剤が添加されている。
樹脂溶液の樹脂は重合反応によりポリマーを形成する材料であれば良く、その種類は特に限定されない。例えば、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン、エポキシ樹脂の材料を採用することができる。特に、ポリイミド樹脂の材料が好適に用いられる。樹脂材料の形態としてはオリゴマーが好ましく、モノマーがさらに好ましい。分子量の小さい方が液滴にして吐出し易くすることができる。樹脂材料を溶解する樹脂用溶媒についても、樹脂を溶解可能であれば良く、その種類は特に限定されない。炭化水素類、塩化炭化水素類、アルコール類、酢酸エステル類、ケトン類、セロソルブ類、グリコールエーテル類、エーテル類等の各種溶媒を採用することができる。例えば、PEGMEA(1−メトキシプル−2−アセテート)、n−ブタノールを好適に採用することができる。
触媒溶液に用いる触媒は触媒作用のある金属であれば良く、その種類は特に限定されない。触媒作用のある金属には、例えば、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、金、銀、鉛、プラチナ等を採用することができる。尚、触媒作用のある金属は化学めっきにて形成する金属膜を形成し易い金属を採用するのが好ましい。例えば、ニッケルの膜、金の膜を形成するときにはパラジウム、金を触媒に採用するのが好ましい。銀の膜を形成するときにはパラジウム、金、銀を触媒に採用するのが好ましい。スズの膜を形成するときには銅を触媒に採用するのが好ましい。銅の膜を形成するときにはパラジウム、金、銀、銅を触媒に採用するのが好ましい。
樹脂溶液に添加されるレベリング剤にはアクリル系、シリコーン系、フッ素系の各種レベリング剤を採用することができる。レベリング剤は特に限定されないが、例えば、アクリル系ではビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK−352、BYK−354、シリコーン系では日信化学工業株式会社製のサーフィノール DF−58、フッ素系ではDIC株式会社製のメガファック F−482、F−483、F−484を好適に採用することができる。
機能液18にレベリング剤を入れないときには重合した樹脂表面の一部に触媒が偏って分布することがある。その後に化学めっきを行うとき触媒の多い場所に金属が析出し易くなる。これにより、化学めっきによる金属膜の膜厚が一部だけ厚くなる現象になる。機能液18にレベリング剤を入れると重合した樹脂表面の全体に触媒が広がって分布する。これにより、化学めっきによる金属膜の膜厚の分散を小さくすることができる。
触媒溶液には触媒作用のある金属を含む官能基を備えたシランカップリング剤が用いられる。このようなシランカップリング剤は公知の方法を用いて製造することが可能である。例えば、国際特許番号WO2003/091476A1号パンフレットに記載されている方法を参考にすることができる。これによると、金属捕捉能を持つ官能基を有するシランカップリング剤の溶液を基板に塗布し、さらに、金属化合物の有機溶媒溶液をこの基板に塗布する。この方法により金属を含む官能基を備えたシランカップリング剤が形成される。例えば、この方法を応用することにより触媒作用のある金属を含む官能基を備えたシランカップリング剤である金属触媒を製造することができる。樹脂材料を溶解する溶媒と同様にこの触媒材料を溶解する溶媒は各種溶媒の中から選択することができる。触媒材料を溶解する触媒用溶媒についても、触媒を溶解可能であれば良く、その種類は特に限定されない。例えば、オクタノールを好適に採用することができる。
樹脂用溶媒及び触媒用溶媒を選定するときには溶媒の沸点を考慮するのが好ましい。触媒用溶媒の沸点は樹脂用溶媒の沸点より高い温度となるように溶媒を選定する。これにより、触媒用溶媒が揮発し難くなるので、樹脂材料が重合反応をする間に触媒材料が機能液18の表面に移動し易くなる。その結果、触媒が樹脂の表面に並び易くすることができる。
樹脂溶液及び触媒溶液の調合には各溶液の比重を考慮するのが好ましい。つまり、樹脂材料とレベリング剤とを樹脂用溶媒に溶解した樹脂溶液の比重は触媒材料を触媒用溶媒に溶解した比重より大きくなるように調合する。基板2に機能液18を塗布した後、機能液18に重力が作用する。これにより、触媒溶液は機能液18の液面側に移動するので、触媒材料が溶液の表面に移動し易くなる。その結果、触媒が樹脂の表面に並び易くすることができる。
図2(b)はステップS2の基板表面処理工程に対応する図である。図2(b)に示すように、ステップS2において、基板2の表面を洗浄する。水銀ランプ24及び反射鏡25配置された紫外線照射装置26の内部に基板2を設置する。そして、水銀ランプ24が射出する紫外光27を基板2に照射する。このとき、紫外光27の進行方向と交差する方向に基板2を移動して基板2の全体に紫外光27を照射する。これにより、基板2の表面に紫外光27が照射されるため、基板2の表面に付着する異物にエネルギーが加えられて異物が基板2から離脱する。そして、基板2の表面が洗浄される。
基板2を洗浄する方法としては、水銀ランプを用いた紫外線照射以外にも、例えば、水素バーナー、エキシマレーザー、プラズマ放電部、コロナ放電部等を例示できる。他にも、超音波洗浄等の洗浄を行っても良い。尚、基板2に加えるエネルギー量を調整することにより、基板2の表面状態を改質しても良い。機能液18に対して撥液性または親液性を付与することにより基板2に着弾する液滴21の形状を制御することができる。機能液18に対して撥液性を持たせることにより着弾した液滴21は球状に近くなり、機能液18に対して親液性を持たせることにより着弾した液滴21は広がり易くなる。
水素バーナーを用いる場合、基板2の酸化した表面を一部還元することで表面を粗面化することができ、エキシマレーザーを用いる場合、基板2の表面を一部溶融固化することで粗面化することができ、プラズマ放電或いはコロナ放電を用いる場合、基板2の表面を機械的に削ることで粗面化することができる。他にも、表面処理剤を塗布して表面改質を行っても良い。例えば、撥液性を付与する方法として、フッ素系表面処理剤である住友スリーエム社のEGC−1720やフルオロアルキルシラン(FAS)を含有する表面処理剤を塗布して皮膜を形成しても良い。尚、この表面改質は機能液18に対して撥液性や親液性を持たせるための処理であるので密着性を向上させるための処理に比べて面を改質する程度は小さくすることができる。表面処理をしなくても所定の形状に描画できる場合には表面状態を改質する処理を省いても良い。
図2(c)はステップS3の描画工程に対応する図である。図2(c)に示すように、ステップS3において、基板2が搭載された載置案内板8を操作者は液滴吐出装置4のステージ7上に設置する。液滴吐出装置4はステージ7とキャリッジ11とを駆動して液滴吐出ヘッド14と基板2とを相対移動させながらノズル15から液滴21を吐出させる。そして、基板2上に液滴21をマトリクス状に着弾させる。液滴21は1つの場所に1滴のみ着弾させても良く、1つの場所に複数の液滴21を着弾させて液滴21を大きくしても良い。基板2上に塗布される機能液18が所望の形状になるように液滴吐出装置4は基板2と液滴吐出ヘッド14とを相対移動させて液滴21を吐出して描画する。
図2(d)〜図3(c)はステップS4の下地膜固化工程に対応する図である。図2(d)に示すように、ステップS4において機能液18が塗布された基板2を乾燥装置28の内部に配置する。乾燥装置28は乾燥室29を備えている。乾燥室29は載置台30を備え、基板2がこの載置台30に設置される。乾燥室29は図中上側の供給管31及び供給バルブ32を介して乾燥気体供給部33と接続されている。さらに、乾燥室29は図中下側の排気管34及び排気バルブ35を介して排気部36と接続されている。そして、乾燥気体供給部33は乾燥気体37を加熱した熱風を供給する。乾燥気体供給部33は温度調整機能を備え、乾燥室29内の温度が所定の温度となるように乾燥気体37の温度を制御する。乾燥気体供給部33から供給される乾燥気体37は供給バルブ32及び供給管31を介して乾燥室29に供給される。次に、乾燥気体37は基板2に塗布された機能液18に沿って流動する。このとき、乾燥気体37は機能液18を加熱し、機能液18に含まれる溶媒及び分散媒を蒸発させて除去することにより、乾燥装置28は機能液18を乾燥させる。そして、機能液18が加熱されて重合反応し、下地膜が形成される。次に、溶媒及び分散媒を含んだ乾燥気体37は排気管34及び排気バルブ35を通過して、排気部36により図示しない排気処理装置に排気される。乾燥室29の温度を200℃以上にするときには窒素雰囲気等の無酸素雰囲気にするのが好ましい。これにより、金属触媒38が酸化することを防止することができる。
図3(a)は基板2上に着弾した機能液18が固化する前の状態を示している。機能液18には金属触媒38が無秩序に存在している。金属触媒38の一端には触媒機能を有する金属が金属イオン38aの状態で接続されている。図3(b)は基板2上に着弾した機能液18が固化する途中の状態を示している。機能液18に重力が作用し、機能液18の基板2側には樹脂溶液18aの比率が高くなり、機能液18の上側では触媒溶液18bの比率が高くなる。そして、樹脂溶液18aが加熱されて樹脂材料の重合反応が進行する。触媒溶液18bの溶媒は樹脂溶液18aの溶媒より沸点が高いので、樹脂材料の重合反応が進行しても触媒溶液18b中の金属触媒38は移動し易くなっている。これにより、金属触媒38は機能液18の表面に移動し易くなっている。そして、機能液18にはレベリング剤が添加されているので、機能液18の表面には金属触媒38が均一に分布した状態になる。
図3(c)は基板2上に着弾した機能液18の固化がさらに進行した状態を示している。機能液18の表面では金属触媒38の密度が高くなり、複数の金属イオン38aが接触する。そして、複数の金属イオン38aが接触した状態で加熱されることにより金属イオン38aは還元されて金属粒39となって析出する。樹脂溶液18aは重合反応が進行することにより樹脂による下地膜40が形成される。この下地膜40の表面には金属粒39が均一に分布した状態になる。
図3(d)はステップS5の化学めっき工程に対応する図である。図3(d)に示すように、ステップS5において、下地膜40が形成された基板2を化学めっき浴43の内に設置する。化学めっき浴43内には金属イオン44が溶解している。金属イオン44が下地膜40の金属粒39と接触するとき金属が下地膜40の表面に析出するので、下地膜40の表面には金属膜45が形成される。下地膜40の表面には金属粒39が均一に分布しているため、金属膜45の膜厚は均一に形成される。
ステップS6の金属膜硬化工程では、ステップS4の下地膜固化工程と同様に、基板2を乾燥装置28内に設置する。そして、加熱した乾燥気体37を基板2の表面を通過させて金属膜45を乾燥させる。以上の工程により、透過率制御板を製造する工程を終了する。
(実施例)
ステップS1の調合工程では、樹脂材料であるシリコーン樹脂13.2gとレベリング剤であるDIC株式会社製のメガファック F−482を0.06g用意した。樹脂用溶媒にはPEGMEA(沸点146℃)及びn−ブタノール(沸点118℃)とを合わせて46.04gの溶媒を用意した。樹脂材料とレベリング剤とをこの樹脂用溶媒に溶解して樹脂溶液を調合した。この樹脂溶液の比重は1.09g/cm3となった。さらに、パラジウムを官能基に有するシランカップリング剤を触媒用溶媒であるオクタノール(沸点194℃)に溶解して118.6gの触媒溶液を調合した。この触媒溶液の比重は0.83g/cm3となった。樹脂溶液と触媒溶液とを混合して機能液18を調合した。この調合において樹脂溶液の比重は触媒溶液の比重より大きくなっている。そして、樹脂用溶媒の沸点は触媒用溶媒の沸点より低い温度となっている。
ステップS2の基板表面処理工程では基板2に紫外線を照射して基板2を洗浄した。ステップS3の描画工程では基板2上に機能液18のドットをマトリクス状に配置した。ステップS4の下地膜固化工程では、基板に150℃の熱風を1時間吹きつけて下地膜40を形成した。ステップS5の化学めっき工程では、めっき浴に上村工業製のスルカップ PEA−3を使用した。めっき条件としては、塩化銅 0.5mol/L、塩化コバルト 1.5mol/L、Pn 0.7mol/L、塩酸 0.375mol/L、HBr 0.11mol/L、pH 6.85、温度 24℃にて実施した。ステップS6の金属膜硬化工程では100℃の乾燥気体37を1時間吹き付けて乾燥させた。以上の工程により良好な外観で密着性の高い金属膜を形成できた。
(比較例)
図3(e)は機能液にレベリング剤が添加されないときの比較例の図である。図3(e)に示すように、下地膜40の上部では金属膜45が薄くなり、下地膜40の基板2側では金属膜45が厚くなる。この理由として、触媒溶液18bが乾燥するときにコーヒーステイン現象が生じること及び金属触媒38に重力が作用することにより、金属触媒38が基板2側に多く分布することが考えられる。そして、金属触媒38が多い場所では金属膜45が形成され易いので、下地膜40の基板2側では金属膜45が厚くなると推定される。
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、機能液18には樹脂及び金属触媒38が含まれている。そして、ステップS4の下地膜固化工程では機能液18に樹脂が含まれているので、機能液18が固化される。機能液18を固化する過程で金属触媒38が樹脂の表面に並ぶ。ステップS5の化学めっき工程では、樹脂の表面に並んだ金属触媒38を核にして金属膜45が形成される。
基板上に触媒を含む膜を形成した後、触媒を含む膜に化学めっき処理をする方法がある。この方法では、密着性をあげるために基板をオゾン溶液やアルカリ溶液を用いて表面改質する必要があった。そして、表面改質した基板上に触媒を含む液を塗布していた。本実施形態では下地膜40に含まれる樹脂が固化するとき基板との密着性が確保される。さらに、下地膜40に含まれる金属触媒38を核にして金属膜45が形成されるので、下地膜40と金属膜45との密着性が確保される。従って、密着性をあげるために基板2の表面改質する工程を省略することができる。その結果、生産性良く基板2上に金属膜45を形成することができる。
(2)本実施形態によれば、機能液18にはレベリング剤が含まれている。レベリング剤が機能液18に作用することにより金属触媒38が下地膜40の表面に一様に分布する。これにより、下地膜40の表面に一様に金属粒39が分布し、金属粒39を核として金属膜45が形成される。従って、下地膜40上に形成される金属膜45の膜厚の分散を小さくすることができる。
(3)本実施形態によれば、金属触媒は金属を含む官能基を備えたシランカップリング剤であることから、機能液の表面に金属触媒38を並び易くすることができる。そして、機能液を固化するために加熱するとき、金属イオン38aがイオンの状態から金属の状態に還元される。従って、下地膜40の表面に触媒である金属粒39を並ばせることができる。
(4)本実施形態によれば、触媒溶液の比重は樹脂溶液の比重より小さく調整されている。従って、機能液に重力が作用するとき触媒溶液は機能液の表面に移動し易くなっている。その状態にて機能液を固化させることにより、金属触媒38を下地膜40の表面に並ばせ易くすることができる。
(5)本実施形態によれば、触媒用溶媒の沸点は樹脂用溶媒の沸点より高い温度となっている。これにより、樹脂用溶媒は触媒用溶媒より揮発しやすくなるので、金属触媒38より早く樹脂が結合する。従って、下地膜40の内部で樹脂が重合反応するとき、下地膜40の表面では金属触媒38が触媒用溶媒中を移動できるので金属触媒38を並ばせ易くすることができる。
(6)本実施形態によれば、機能液18を液滴21にして配置している。液滴21の液量を小さくすることにより微細なパターンを形成することができる。そして、化学めっき工程では液滴21により形成された微細なパターンと同じパターンに金属膜45を形成することができる。従って、微細なパターンの金属膜45を形成することができる。また、下地膜40を基板2の全面に形成した後フォトリソグラフィーやレーザーパターニング法を用いて所定のパターンに描画する方法に比べて簡単なプロセスで微細なパターンを形成することができる。さらに、機能液18の消費量が少なくできるので、省資源な方法とすることができる。
(7)本実施形態によれば、基板2に金属膜45が形成され、金属膜45が光の透過量を限定させることにより所定の開口率の光学特性を実現している。そして、金属膜45は生産性の良い形成方法を用いて形成されている為、この透過率制御板1は生産性良く製造することができる。
(8)本実施形態によれば、機能液18に金属触媒38が含まれている。そして、この機能液18を液滴21にして吐出することにより、樹脂による凸状の膜を形成する工程と、金属触媒38を吸着させる工程とが同じ工程にて行われる。従って、下地膜40を形成する工程と金属触媒38を吸着させる工程とを別工程にて行う方法に比べて生産性よく下地膜40を形成することができる。
(9)本実施形態によれば、下地膜40の表面に金属触媒38が並ぶ。金属触媒38が下地膜40の内部に内在するときには下地膜40の表面を取り除く工程が必要となる。本実施形態では下地膜40の表面に金属触媒38が並ばされるので、下地膜40の表面を取り除く工程が不要となっている。従って、生産性良く下地膜40の表面に金属触媒38を並ばせることができる。
(10)本実施形態によれば、基板2上に下地膜40を形成して、下地膜40上に金属膜45を形成している。基板2が樹脂を材料とする板のときには、基板2上に同じく樹脂を材料とする下地膜40を密着性良く形成することができる。そして、下地膜40上には金属触媒を核として金属膜45が形成されるので、下地膜40に対して金属膜45を密着性良く形成することができる。従って、基板2に対して金属膜45を密着性良く形成することができる。
(第2の実施形態)
次に、配線基板を製造する一実施形態について図4及び図5を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、配線基板を製造する点とステップS11の下地膜形成工程とステップS5の化学めっき工程との間に基材を変形する工程が入る点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
すなわち、本実施形態では、第1の実施形態に示した金属膜を形成する方法を応用して配線基板を製造する。図4(a)は配線基板の構造を示す概略斜視図である。最初に、配線基板48について図4(a)に従って説明する。配線基板48はシート状の基板49を備えている。基板49は熱可塑性の樹脂から形成されている。基板49の材質は特に限定されないが、例えば、ポリイミド、ポリエステル等の樹脂を採用することができる。
基板49上には複数の配線50が配置されている。配線50の形状や本数等のパターンは特に限定されず、必要とされる条件に合わせて設定して良い。配線50は金属膜により構成され、この金属膜が第1の実施形態に示した金属膜を形成する方法を用いて形成されている。そして、基板49は4箇所の直線にて直角に折り曲げられて凸状の形状に形成されている。図4(b)は、配線基板の製造工程を示すフローチャートであり、図4(c)〜図5は、配線基板を製造する工程を説明するための模式図である。
図4(b)に示すフローチャートにおいて、ステップS21は調合工程に相当する。この工程は、第1の実施形態の調合工程と同じ工程であり液滴吐出ヘッドから吐出する機能液を調合する工程である。次にステップS22に移行する。ステップS22は下地膜形成工程に相当し、第1の実施形態の下地膜形成工程と同様の工程である。この工程では基板の表面を清浄にした後、液滴吐出装置を用いて基板上に機能液を塗布する。次に、塗布した機能液を加熱乾燥して下地膜を固化する工程である。次にステップS23に移行する。ステップS23は、基材変形工程に相当し、基板49を折り曲げる工程である。次にステップS24に移行する。ステップS24は化学めっき工程に相当する。この工程は第1の実施形態の化学めっき工程と同様の工程であり、下地膜上に金属膜を形成する工程である。次にステップS25に移行する。ステップS25は金属膜硬化工程に相当する。この工程は第1の実施形態の金属膜硬化工程と同様の工程であり、金属膜を加熱して金属膜を硬化させる工程である。以上の工程にて配線基板を製造する工程を終了する。
次に、図4(c)〜図5を用いて、図4(b)に示したステップと対応させて、配線基板を製造する工程における金属膜の形成方法を詳細に説明する。ステップS21の調合工程は第1の実施形態の調合工程と同じ工程であり説明を省略する。図4(c)はステップS22の下地膜形成工程に対応する図である。ステップS22では第1の実施形態のステップS2の基板表面処理工程と同様の方法を用いて基板49の表面を清浄にする。次に、操作者は基板49を液滴吐出装置4のステージ7上に載置して固定する。液滴吐出装置4はステージ7とキャリッジ11とを駆動して液滴吐出ヘッド14と基板49とを相対移動させながらノズル15から液滴21を吐出させる。そして、基板49上に液滴21を配線パターンに沿って着弾させる。これにより、配線50を配置する予定の場所に機能液18が塗布される。続いて、第1の実施形態のステップS4の下地膜固化工程と同様の方法を用いて機能液18を加熱乾燥させる。そして、機能液18が加熱されて重合反応することにより、下地膜51が形成される。
図4(d)及び図5(a)はステップS23の基材変形工程に対応する図である。図4(d)に示すように、ステップS23において、基板49は基板曲げ装置52により曲げ加工が施される。基板曲げ装置52は下型53及び上型54を備え、上型54は主に押さえ部54a、第1回転部54b、第2回転部54cにより構成されている。押さえ部54aと第1回転部54bとは第1回転軸54dを介して接続され、第1回転部54bは第1回転軸54dを回転中心にして回転可能となっている。同様に、押さえ部54aと第2回転部54cとは第2回転軸54eを介して接続され、第2回転部54cは第2回転軸54eを回転中心にして回転可能となっている。基板曲げ装置52は加熱装置と冷却装置とを備え、下型53及び上型54を短時間で加熱または冷却することができる。
下地膜51が形成された基板49を操作者は下型53の上に配置する。基板49には図示しない位置決め用の穴が形成され、下型53には図示しない位置決め用の凸部が形成されている。操作者がこの穴と凸部とを合わせて配置することにより基板49は下型53の所定の場所に配置される。続いて、基板曲げ装置52は上型54を下降させて押さえ部54aが基板49を下型53に押圧する。次に、基板曲げ装置52は下型53及び上型54を加熱した後、第1回転部54b及び第2回転部54cを回転させる。
その結果、図5(a)に示すように基板49が下型53と上型54とに挟まれて加熱されることにより、基板49は所定の形状に折り曲げられる。次に、基板曲げ装置52は下型53及び上型54を冷却する。これにより、基板49は曲げられた形状の状態を維持する。続いて、基板曲げ装置52が上型54を上昇させることにより、基板49は下型53から取り外し可能となる。操作者は曲げ加工された基板49を次工程の処理を行う場所に移動する。
図5(b)はステップS24の化学めっき工程に対応する図である。図5(b)に示すように、ステップS24において、下地膜51が形成された基板49を化学めっき浴43の内に設置する。化学めっき浴43内には金属イオン44が溶解している。金属イオン44が下地膜51の金属粒39と接触するとき金属イオン44は下地膜51の表面に析出するので、下地膜51の表面には金属膜55が形成される。下地膜51の表面には金属粒39が均一に分布しているため、金属膜55の膜厚は均一に形成される。
図5(c)はステップS25の金属膜硬化工程に対応する図である。図5(c)に示すように、ステップS25では、第1の実施形態のステップS4の下地膜固化工程と同様に、基板49を乾燥装置28内に設置する。そして、加熱した乾燥気体37を基板49に吹き付けて金属膜55を乾燥させる。これにより金属膜55から水分を除去し金属膜55の硬度をあげることができる。以上の工程にて配線基板を製造する工程を終了する。
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、ステップS22の下地膜形成工程で基板49上に下地膜51を形成した後にステップS23の基材変形工程にて基板49を変形させている。このとき、下地膜51は基板49の表面に密着した状態で変形させられる。下地膜51は主に樹脂を材料として形成されているので、基板49が変形するときにも断裂し難くなっている。そして、基板49と下地膜51とを変形した後にステップS24の化学めっき工程が行われる。化学めっき工程では変形した下地膜51に沿って金属膜55が形成される。従って、断裂や内部応力の少ない金属膜55を形成することができる。ステップS24の化学めっき工程の後にステップS23の基材変形工程を行うときには、金属膜55に断裂が生じたりや内部応力の多い金属膜55となる。この方法に比べて、品質の良い金属膜55を形成することができる。
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態では、基板2上に反射膜3を形成したが、反射膜3を形成する基材は基板2に限らず、直方体等のようにZ方向の高さがある物や凹凸のある物にも適用することができる。この場合にも生産性良く金属膜45を形成することができる。
(変形例2)
前記第1の実施形態では、加熱により重合が開始される機能液18を採用した。光を照射して重合を開始する機能液18を用いても良い。機能液18には硬化剤としての光重合開始剤を添加する。この光重合開始剤はポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させる添加剤であり、例えば、ベンジルジメチルケタール等を用いることができる。そして、ヘッドユニット12の内部に紫外線を照射する照射装置を配置しても良い。照射装置は紫外光を発光する多数のLED(Light Emitting Diode)素子を配列させて形成することができる。
機能液18の表面では金属触媒38の密度が高くなっているとき、複数の金属イオン38aが接触する。そして、複数の金属イオン38aが接触した状態で紫外光が照射されることにより金属イオン38aは還元されて金属粒39となって析出する。従って、液滴21の吐出と液滴21の硬化及び金属粒39の還元作用を連続して行うことができる。その結果、さらに生産性良く下地膜40を形成することができる。
さらに、ヘッドユニット12の内部に熱風を噴出すブロアーを配置しても良い。これにより金属粒39の析出をさらに促進することができる。その結果、金属粒39が一様に並ぶ為、品質良く下地膜40を形成することができる。
(変形例3)
前記第1の実施形態では、ステップS4の下地膜固化工程において、機能液18を加熱することにより、金属触媒38の金属イオン38aを還元して金属粒39を析出させた。これによらず、機能液18に紫外線を照射することにより、金属触媒38の金属イオン38aを還元して金属粒39を析出させても良い。
(変形例4)
前記第1の実施形態では、金属触媒38に金属を含む官能基を備えたシランカップリング剤を用いた。金属触媒38の代わりに触媒作用のある金属をナノメートルの大きさに形成したナノ粒子の状態にして用いても良い。そして、金属のナノ粒子を分散媒に分散させた分散液を触媒溶液18bの代わりに用いても良い。尚、分散液にはナノ粒子の凝集を防ぐために分散剤を添加するのが好ましい。品質良く液滴21を吐出することができる。そして、下地膜40上に金属粒子を一様に並ばせることができる。
(変形例5)
前記第1の実施形態では、樹脂溶液18a及び触媒溶液18bを含む機能液18を液滴21にして吐出した。樹脂溶液18aを液滴21にして吐出し、次に、着弾した液滴21に重ねて触媒溶液18bを液滴21にして吐出しても良い。これにより、樹脂溶液18aの液滴21に重ねて触媒溶液18bの液滴21が塗布される。従って、着弾した液滴21の基板2側には樹脂溶液18aが位置し、液滴21の表面側には触媒溶液18bが位置する。これにより、下地膜40の表面に金属触媒38を並ばせ易くすることができる。
(変形例6)
前記第2の実施形態では、金属膜55を化学めっきにて形成し、この金属膜55を配線50とした。この金属膜55上にさらに電気めっきにて金属膜を積層して形成しても良い。これにより、配線50の断面積を広くして配線50の電気抵抗を小さくすることができる。
1…透過率制御板、2,49…基材としての基板、18…機能液、18a…樹脂溶液、18b…触媒溶液、21…液滴、38…金属触媒、40,51…下地膜、45,55…金属膜、48…配線基板。

Claims (9)

  1. 基材上に機能液を配置し、前記機能液を固化して下地膜を形成する下地膜形成工程と、
    化学めっき処理を行って前記下地膜上に金属膜を形成する化学めっき工程と、を有し、
    前記機能液は樹脂及び金属触媒を含むことを特徴とする金属膜形成方法。
  2. 請求項1に記載の金属膜形成方法であって、
    前記機能液はレベリング剤をさらに含むことを特徴とする金属膜形成方法。
  3. 請求項2に記載の金属膜形成方法であって、
    前記金属触媒は金属を含む官能基を備えたシランカップリング剤であり、前記下地膜形成工程では前記機能液を加熱または光照射して固化することを特徴とする金属膜形成方法。
  4. 請求項3に記載の金属膜形成方法であって、
    前記機能液は前記金属触媒が溶解した触媒溶液と前記樹脂が溶解した樹脂溶液とを含み、前記触媒溶液の比重は前記樹脂溶液の比重より小さいことを特徴とする金属膜形成方法。
  5. 請求項4に記載の金属膜形成方法であって、
    前記触媒溶液に含まれる溶媒を触媒用溶媒とし、前記樹脂溶液に含まれる溶媒を樹脂用溶媒とするとき、前記触媒用溶媒の沸点は前記樹脂用溶媒の沸点より高い温度であることを特徴とする金属膜形成方法。
  6. 請求項5に記載の金属膜形成方法であって、
    前記下地膜形成工程と前記化学めっき工程との間に基材変形工程をさらに有し、
    前記基材変形工程では前記基材を変形させることを特徴とする金属膜形成方法。
  7. 請求項6に記載の金属膜形成方法であって、
    前記下地膜形成工程では、前記機能液を液滴にして吐出し、前記基材上の所定の場所に前記機能液を配置することを特徴とする金属膜形成方法。
  8. 光透過性を有する基板上に所定の開口率を有する金属膜のパターンが配置された透過率制御板の製造方法であって、
    前記金属膜が請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属膜形成方法を用いて形成されたことを特徴とする透過率制御板の製造方法。
  9. 基板上に配線が配置された配線基板の製造方法であって、
    前記配線は金属膜を有し、前記金属膜が請求項1〜7のいずれか一項に記載の金属膜形成方法を用いて形成されたことを特徴とする配線基板の製造方法。
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