JP2011195025A - 棒の製造方法及びねじ棒 - Google Patents

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Abstract

【課題】周面に凹凸部が形成された棒の製造方法およびねじ棒に関し、重量が重くならず、低コストで強度が向上する棒の製造方法およびねじ棒を提供することを目的とする。
【解決手段】丸棒51を引き抜く工程と、引き抜かれた丸棒51’の周面に転造加工によりナット螺合部(凹凸部)25と、セレーション(凹凸部)21とを形成する工程とから、一方の端部側から順に、周面に凹凸が形成されたセレーション部、周面が円柱面である無ねじ部、周面に凹凸が形成されたねじ部、周面が円柱面である無ねじ部が形成されたねじ棒20を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、周面に凹凸部が形成された棒の製造方法及びねじ棒に関する。
車両用のパワーシートトラックは、車両床面に前後方向に向けて固定されるロアレールに、シートに固定されるアッパレールを移動可能に係合させる基本構造を有している。
アッパレール、ロアレールのうちのいずれか一方のレールには、モータの回転を減速するギヤボックスと、レールの長手方向に沿って回転可能に設けられ、ギヤボックスの出力側に接続されたねじ棒とが設けられている。他方のレールには、ねじ棒に螺合するナット部材が固定されている。
そして、ねじ棒を回転駆動させることで、アッパレールを移動させるようになっている。
ねじ棒の長手方向の中間部の周面には、ナット部材が螺合するねじが刻設され、一方の端部側の周面には、ギヤボックスの出力側からの回転が伝達されるセレーションが刻設されている。
ねじ棒の周面に形成されたねじ、セレーションは、丸棒の周面を転造加工することにより形成されている(例えば、特許文献1参照)
特開2009−090800号公報
近年、車両用のパワーシートトラックにおいては、車両が衝突すると、シートバックに作用する力は、アッパレール、ロアレールを介してフロアに伝達される。
詳しく説明すると、ねじ棒がアッパレール、ナット部材がロアレールに設けられている場合は、アッパレール→ねじ棒→ナット部材→ロアレールという経路で伝達される。また、ねじ棒がロアレール、ナット部材がアッパレールに設けられている場合は、アッパレール→ナット部材→ねじ棒→ロアレールという経路で伝達される。
従って、シートバックに作用する力は、ねじ棒に伝達され、ねじ棒には変形しない強度が要求される。
ねじ棒の強度を向上するには、ねじ棒の径を大きくしたり、材質を高強度のものにしたりする方法があるが、ねじ棒の径を大きくすると重量が重くなり、材質を高強度に変更するとコストが高くなる問題点がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、重量が重くならず、低コストで強度が向上する棒の製造方法及びねじ棒を提供することにある。
上記課題を解決する請求項1に係る発明は、転造加工により周面に凹凸部が形成された棒の製造方法において、丸棒を引き抜く工程と、引き抜かれた丸棒の周面に転造加工により凹凸を形成する工程と、からなることを特徴とする棒の製造方法である。
請求項2に係る発明は、引き抜く前の丸棒の径をa、引き抜いた丸棒の径をb、凹凸が形成された棒の径をcとすると、a>c、b<c、であり、周面に転造加工により凹凸が形成された棒のビッカース硬度(Hv)が300以上であることを特徴とする請求項1記載の棒の製造方法である。
請求項3に係る発明は、一方の端部側から順に、周面に凹凸が形成されたセレーション部、周面が円柱面である無ねじ部、周面に凹凸が形成されたねじ部、周面が円柱面である無ねじ部が形成されたねじ棒であって、請求項1または請求項2に係る発明の棒の製造方法によって製造されたことを特徴とするねじ棒である。
請求項1−3に係る発明によれば、丸棒を引き抜く工程を有することにより、丸棒は塑性変形し、丸棒には加工硬化が発生する。このため、丸棒の強度が向上する。
引き抜かれた丸棒の周面に転造加工により凹凸を形成する工程を有する。転造加工は塑性変形加工であるので、更に丸棒の強度が向上する。
よって、重量が重くならず、低コストで棒の強度が向上する。
ねじ棒の製造する方法を示す図である。 図1のII−II切断線における断面図である。 引抜き加工を説明する図である。 実施例を説明する表が記載された図である。 実施の形態の製造方法で製造されたねじ棒を有するパワーシートトラックが設けられたシートを説明する図である。 図5のパワーシートトラックの縦断面図である。
最初に、図5、図6を用いて実施形態の丸棒の製造方法で製造されたねじ棒を有するパワーシートトラックを説明する。
パワーシートトラックは、図5に示すように、車両用のシートSと床面Fとの間に位置し車両前後方向に延びる左右一対のシートトラック10を有する。左右のシートトラック10は、同一(対称)構造であり、床面Fに前後のブラケット11、12で固定される。
シートトラック10は、ロアレール13と、シートSに固定されるアッパレール14とを有し、アッパレール14は、ロアレール13に移動可能に係合している。
ロアレール13には、図6に示すように、固定ねじ16Gを用いてナット部材16が固定されている。
アッパレール14には、このナット部材16のめねじ穴に螺合するねじ棒20が回転自在に支持されている。すなわち、アッパレール14には、その前端部と後端部に、ねじ棒20の前端部と後端部を回転自在に支持するギヤボックス30と軸受部材17が設けられており、ねじ棒20には、その前端部から順に、セレーション部21、無ねじ部22、メインナット螺合部25及び無ねじ部(後端軸受部)26が形成されている。セレーション部21は、周面にセレーション(凹凸)が形成されている。無ねじ部22は、周面が円柱面となっている。メインナット螺合部25は、周面におねじ(凹凸)が形成され、ナット部材16のめねじ穴16Dに螺合するようになっている。無ねじ部26は、周面が円柱面となっており、軸受部材17に回転自在に支持されるようになっている。
ギヤボックス30は、接続ブラケット31によってアッパレール14に固定されている。ギヤボックス30内には、セレーション部21と相対回転不能に係合するセレーション穴32aを軸部に有するウォームホイル32が回転自在に支持されている。ウォームホイル32は、軸線を車両左右方向に向けたウォーム33と噛み合っていて、ウォーム33が正逆に回転すると、ウォームホイル32が正逆に回転し、セレーション部21(ねじ棒20)が正逆に回転する。
左右のアッパレール14のギヤボックス30内のウォーム33は、連動機構によって連動して回転するものであり、この連動回転により、左右のアッパレール14のねじ棒20が正逆に回転する。すると、ねじ棒20は、ロアレール13に固定したナット部材16と螺合しているため、アッパレール14(シートS)が前後に移動する。図6は、アッパレール14(シートS)のロアレール13に対する前方移動端を示している。
ここで、ねじ棒20の製造方法を図1、図2を用いて説明する。
図1(a)、図(b)に示すように、径aの丸棒を引抜き加工により径b(b<a)の丸棒とする。引抜き加工とは、図3に示すように、径がaの丸棒51をダイス53のこう配穴53aを通して引き抜き、径がbの丸棒51’を形成する加工方法である。
次に、図1(c)、図2に示すように、径bの丸棒51’に転造加工で、丸棒51’の周面にセレーション部21(凹凸)と、径がcのナット螺合部25(凹凸)とを形成し、セレーション部21、無ねじ部22、ナット螺合部25、無ねじ部26が形成されたねじ棒20を形成する。ナット螺合部25を形成する転造加工とは、丸棒51’を、外周がねじの形をした円筒形状の複数の転造ダイスにより挟み込み、丸棒51’素材を回転させながら、丸棒51’の中心方向へ転造ダイスに圧力を加える。丸棒51’の素材の降伏点を超えた圧力をかけることにより、丸棒51’は塑性され永久的に変形し、ナット螺合部25を形成する加工方法である。また、セレーション部21を形成する転造加工とは、丸棒51’を、外周にセレーションが刻設された円筒形状の複数の転造ダイスにより挟み込み、丸棒51’素材を回転させながら、丸棒51’の中心方向へ転造ダイスに圧力を加える。丸棒51’の素材の降伏点を超えた圧力をかけることにより、丸棒51’は塑性され永久的に変形し、セレーション部21を形成する加工方法である。
更に、この転造加工により、a>c、b<c、となるように、また、ねじ棒20のビッカース硬度(Hv)が300以上となるようにした。
このような製造方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 径aの丸棒を引き抜いて、径cの丸棒51’とする工程を有することにより、丸棒は塑性変形し、丸棒51’には加工硬化が発生する。そして、降伏応力が引抜き加工前よりも高くなり、丸棒51’の強度(引張強度)が向上する。
よって、重量が重くならず、低コストでねじ棒20の強度が向上する。
(2) 引き抜かれた丸棒の周面に転造加工により、セレーション部21、ナット螺合部25を形成しねじ棒20とする工程を有する。転造加工は塑性変形加工であるので、更にねじ棒20の強度が向上する。
よって、重量が重くならず、低コストでねじ棒20の強度が向上する。
本願発明者は、引抜き加工される丸棒素材の径を変えることにより、ねじ棒の強度がどのように変わるか、また、転造加工により形成されるナット螺合部の谷の径を変えることにより、ねじ棒の強度がどのように変わるかを調査した。
No.1のサンプルは、径9.00mm、材質S45Cの丸棒を径7.17mmに引き抜き、転造で径8.00mm、谷の径5.85mmのナット螺合部を形成した。
No.2のサンプルは、径9.40mm、材質S45Cの丸棒を径7.17mmに引き抜き、転造で径8.00mm、谷の径5.85mmのナット螺合部を形成した。
No.3のサンプルは、径9.00mm、材質S45Cの丸棒を径7.17mmに引き抜き、転造で径8.00mm、谷の径6.50mmのナット螺合部を形成した。
No.4のサンプルは、径9.40mm、材質S45Cの丸棒を径7.17mmに引き抜き、転造で径8.00mm、谷の径6.50mmのナット螺合部を形成した。
なお、いずれのサンプルも、
a(引抜き加工前の丸棒の径)>c(転造加工したナット螺合部の径)、
b(引抜き加工後の丸棒の径)<c(転造加工したナット螺合部の径)となっている。
これらのサンプルの硬度、引張強度等を図4に示す。
(引抜き加工される丸棒素材の径を変えることにより、引張強度がどのように変わるかの考察)
No.1,No.3は、引抜き加工により径9.00mmの丸棒を径7.17mmの丸棒に形成したサンプルである。一方、No.2,No.4は、引抜き加工により径9.40mmの丸棒を径7.17mmの丸棒に形成したサンプルである。
そして、No.1,No.3のサンプルは、引張強度が510N/mm2から570N/mm2へ増加している。一方、No.2,No.4のサンプルは、引張強度が510N/mm2から950N/mm2へ増加している。
引抜き加工による塑性変形量が大きいほど、加工硬化の度合いが大きくなり、引張強度も大きくなることが確認できた。
(転造加工により形成されるナット螺合部の谷の径を変えることにより、強度がどのように変わるかの考察)
No.1のサンプルは、転造加工前の引張強度が570N/mm2で転造加工後のナット螺合部の谷の径が5.85mmのサンプルである。一方、No.3のサンプルは、転造加工前の引張強度が570N/mm2で転造加工後の谷の径が6.50mmのサンプルである。
そして、No.1のサンプルは、谷の径が5.85mmとなる転造加工をすることにより引張強度は、570N/mm2から800N/mm2へ増加している。一方、No.3のサンプルは、谷の径が6.50mmとなる転造加工をすることにより引張強度は、570N/mm2から780N/mm2へ増加している。
転造加工による塑性変形量が大きいほど、加工硬化の度合いが大きく、引張強度も大きくなることが確認できた。
また、No.2のサンプルは、転造加工前の引張強度が950N/mm2で転造加工後のナット螺合部の谷の径が5.85mmのサンプルである。一方、No.4のサンプルは、転造加工前の引張強度が950N/mm2で転造加工後の谷の径が6.50mmのサンプルである。
そして、No.2のサンプルは、谷の径が5.85mmとなる転造加工をすることにより引張強度は、950N/mm2から1200N/mm2へ増加している。一方、No.4のサンプルは、谷の径が6.50mmとなる転造加工をすることにより引張強度は、950N/mm2から980N/mm2へ増加している。
これによっても、転造加工による塑性変形量が大きいほど、加工硬化の度合いが大きく、引張強度も大きくなることが確認できた。
(引き抜き加工、転造加工によって硬化した硬度とねじ棒強度との考察)
谷の断面積(A)と転造加工後の引張強度(B)とをかけることにより、各サンプルのねじ棒の引張強度(A×B)を求めた。車両用のパワーシートトラックでは、要求されるねじ棒の最低引張強度は、20000N以上であり、好ましくは30000N以上である。No.1〜No.4のいずれのサンプルも、最低引張強度(20000N以上)を有している。特に、No.2,No.4のサンプルは、好ましい引張強度(30000N以上)を有している(判定欄参照:○は最低引張強度以上を有し、◎は好ましい引張強度以上を有している。)。
そして、好ましい引張強度を有するNo.2のサンプルのビッカース硬度は380であり、同様に好ましい引張強度を有するNo.4のサンプルのビッカース硬度は300であった。
従って、転造加工後のビッカース硬度が300以上あれば、好ましい引張強度のねじ棒が得られることがわかった。
21 ねじ棒
21 セレーション
25 ナット螺合部
51 丸棒

Claims (3)

  1. 周面に凹凸部が形成された棒の製造方法において、
    丸棒を引き抜く工程と、
    引き抜かれた丸棒の周面に転造加工により凹凸を形成する工程と、
    からなることを特徴とする棒の製造方法。
  2. 引き抜く前の丸棒の径をa、
    引き抜いた丸棒の径をb、
    凹凸が形成された棒の径をcとすると、
    a>c、
    b<c、
    であり、
    周面に転造加工により凹凸が形成された棒のビッカース硬度(Hv)が300以上であることを特徴とする請求項1記載の棒の製造方法。
  3. 一方の端部側から順に、周面に凹凸が形成されたセレーション部、周面が円柱面である無ねじ部、周面に凹凸が形成されたねじ部、周面が円柱面である無ねじ部が形成されたねじ棒であって、
    請求項1または請求項2に係る発明の棒の製造方法によって製造されたことを特徴とするねじ棒。
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