JP2011191144A - 高層構造物に取り付けられた付属部材の寿命評価方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】高層構造物において付属部材が取り付けられている取付箇所で吹く風のうち、当該付属部材の最小疲労評価応力σc以上の応力を当該付属部材に付与し得る風向(疲労発生風向)を調べる。次に、上記疲労発生風向の風のうち、最小疲労評価応力σc以上の応力を当該付属部材に付与し得る最小疲労評価風速Vcを算出する。次に、最小疲労評価風速Vc以上の風速Vの発生時間に基づいて上記付属部材の寿命を算出する。上記風速Vの発生時間は、付属部材の取付箇所の風況情報から、上記取付箇所で吹く風の風速の出現率分布をワイブル分布で近似したときのワイブルパラメータを抽出し、ワイブルパラメータを利用して算出する。
【選択図】図1
Description
(1) 付属部材の寿命に影響を与え易い風向、
(2) 付属部材の寿命に影響を与え得る風速、
(3) 上記風向であって、かつ上記風速の発生時間、
を考慮することで、上述したような特定の形状の付属部材であっても、付属部材の寿命を適切に評価できると期待される。本発明は、上記知見に基づくものである。
ここでは、付属部材として、図4に示すガイドレールを例にして、その寿命の評価手順を説明する。まず、ガイドレールを説明する。
ガイドレール1は、取付金具200を介して送電用鉄塔100に取り付けられ、当該鉄塔100を昇降する作業者の墜落防止用安全器(図示せず)を走行させるためのものである。このガイドレール1は、断面I字状のアルミニウム合金製の部材であり、対向する一対の短片11,12のうち、一方の短片11には、その表裏を貫通するように、上記安全器のスプロケットの歯部(図示せず)が嵌め込まれる嵌合孔111が設けられている。嵌合孔111を有する短片11の表面が、上記安全器の走行面112として利用される。嵌合孔111は、走行面112の長手方向に沿って一定の間隔で設けられている。他方の短片12は、取付金具200の把持具210が装着される取付片として利用される。ガイドレール1には、その長手方向に沿って所定の取付間隔L(m)ごとに取付金具200が配置され、ガイドレール1は、走行面112が設定方向を向くようにこれら取付金具200により送電用鉄塔100の所定の位置に固定される。
《基本手順》
まず、図1を参照して、実施形態の寿命評価方法の基本的な手順を説明する。
まず、上記ガイドレールの取付箇所で吹く風の情報、具体的には、当該取付箇所で吹く風の風向ごとの風速を取得する。
次に、上記取付箇所で吹く風のうち、付属部材の疲労被害に起因する振動を当該付属部材に付与し得る最小の風速(最小疲労評価風速Vcと呼ぶ)を算出する。
実際の環境では、最小疲労評価風速Vcだけでなく、最小疲労評価風速Vc以上の風速Vの風が吹き得る。これら風速Vの風は、ガイドレール1の疲労被害に影響を与え得る振動を生じ得るため、風速Vによりガイドレール1が振動する振動回数nVを算出する。
ここでは、マイナー則を利用して、上記風速Vによりガイドレール1に1年間に蓄積される累積疲労被害度を求める。具体的には、上記風速V(≧Vc)の風により、ガイドレール1の最小疲労評価応力σcに対して応力変動Δσが生じ、この応力変動による振動をN*回受けると、ガイドレール1は疲労により折損すると推定する。上記応力変動による1年あたりの振動回数がnVであることから、累積疲労被害度Dxは、nV/N*の総和として表される。
ガイドレール1の寿命(年)は、上記累積疲労被害度Dxを用いて、1/Dxで求められる。
《風況情報の取得》
ガイドレールの取付箇所における風向及び風速は、例えば、作業者が送電用鉄塔の設置位置に赴き、市販の風向風速計を用いることで実環境に即した情報が得られるものの、非常に時間が掛かる。一方、気象官署やNEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の地域別測定データを利用すると、上記高層構造物の設置位置、及び当該設置位置における所定の地上高の風向や風速を容易に抽出できる上に、信頼性が高いと考えられる。ここでは、NEDOがインターネット上で開示している「局所的風況予測モデル(H18年度版)」の「局所風況マップ」を利用する。「局所風況マップ」の利用に際して、インターネットが行えるように、コンピュータ、モニタ、回線などを準備しておく。
(1) 16方位の風向別の1m/s刻みの風速の出現頻度(%)、及び年平均風速(m/s)
(2) 全風向における1m/s刻みの風速の出現頻度(%)、及び全風向の年平均風速(m/s)
また、上記「局所風況マップ」では、任意の地点における所定の地上高(30m,50m,70m)ごとにワイブルパラメータ(形状係数k、尺度定数C)を開示している。
送電用鉄塔100にガイドレール1が取り付けられた状態において走行面112が向いている方向(以下、取付方向と呼ぶ)を上述した疲労発生風向とする。残存寿命の評価を行う場合、ガイドレール1の取付状態を設置現場で目視確認することで、走行面112の取付方向を正確に把握することができる。新規に布設する付属部材の寿命評価を行う場合を含めて、設計情報を利用して走行面の取付(予定)方向から疲労発生風向を決定してもよい。
地上高h(m)は、ガイドレールの設置位置における高さ(ここでは設計値)であり、設計情報をそのまま利用することができる。ここでは、「局所風況マップ」を利用するにあたり、設計値と完全一致する地上高が無い場合、30m,50m,70mのうちの最も近い値を利用する。
《ステップS2:最小疲労評価風速Vcの演算》
最小疲労評価風速Vc(m/s)は、最小疲労評価応力σc(kgf/mm2(≒σc×9.8MPa)、取付間隔L(m)、固有振動数f(Hz=1/s)、構造減衰率δ0、及び、ここでは風の乱れ強さに基づく変数xを用いて、式(1):Vc=(σc×L×f×δ0)/xにより求める。風の乱れ強さは、例えば、市販の風速計を用いて測定することができる。
図2を参照して、風速Vにおける1年間の振動回数nVの演算手順を説明する。
この寿命評価方法では、ガイドレールの取付箇所で吹く風の風速の出現率分布をワイブル分布で近似したときのワイブルパラメータを用いて、最小疲労評価風速Vc以上の風速Vの発生時間を求めるところを特徴の一つとする。ここでは、「局所風況マップ」を利用して、送電用鉄塔の設置位置において、ガイドレール1の取付箇所(地上高h(m))での全風向のワイブルパラメータ(形状定数k、尺度定数C)を抽出する(ステップS10)。当該ワイブルパラメータは、上述のように近似データを用いることを許容する。
図3を参照して、1年間の疲労被害度Dxの演算手順を説明する。
この寿命評価方法では、上記ガイドレールのS-N線図と、このガイドレールの最小疲労評価応力σcに対して、最小疲労評価風速Vc以上の風速Vによる応力変動Δσが生じたときのS-N線図(以下、修正S-N線図と呼ぶ)とに基づき、マイナー則により、上記ガイドレールの累積疲労被害度(ここでは、1年間の累積疲労被害度Dx)を利用して、当該ガイドレールの寿命を算出することを特徴の一つとする。そこで、まず、風速Vにおける応力変動Δσを求める(ステップS20)。
実際に送電用鉄塔に付設されて折損したガイドレールの使用年数(折損年数)と、上述した寿命評価方法に基づいて算出したガイドレールの寿命(年)とを比較して、上述した寿命評価方法の妥当性を評価した。その結果を表1に示す。なお、「局所風況マップ」のワイブルパラメータは、5kmメッシュのデータを利用した。
100 送電用鉄塔 200 取付金具 210 把持具
Claims (3)
- 高層構造物において付属部材が取り付けられている取付箇所で吹く風のうち、当該付属部材の最小疲労評価応力σc以上の応力を当該付属部材に付与し得る風向を調べ、
前記風向の風のうち、前記最小疲労評価応力σc以上の応力を当該付属部材に付与し得る風速Vの発生時間を、前記取付箇所で吹く風の風速の出現率分布をワイブル分布で近似したときのワイブルパラメータを利用して求め、
前記発生時間に基づいて前記付属部材の寿命を評価することを特徴とする高層構造物に取り付けられた付属部材の寿命評価方法。 - 前記高層構造物は、鉄塔であり、前記付属部材は、前記鉄塔を昇降する作業者の墜落防止用安全器を走行させるためのガイドレールであることを特徴とする請求項1に記載の高層構造物に取り付けられた付属部材の寿命評価方法。
- 前記付属部材のS-N線図と、前記最小疲労評価応力σcに対して前記風速Vに基づく応力変動Δσが生じたときの前記付属部材のS-N線図とに基づき、マイナー則により前記付属部材の累積疲労被害度を求め、
前記累積疲労被害度により前記付属部材の寿命を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の高層構造物に取り付けられた付属部材の寿命評価方法。
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