JP2011190181A - 光学活性を有する化合物の製造方法 - Google Patents

光学活性を有する化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光学活性アンモニウムベタイン類が有するアニオン部位の求核性に基づくイオン性求核触媒としての作用を利用した光学活性を有する化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(I)で表されるアンモニウムベタイン類及びその光学異性体をイオン性求核触媒として用いる光学活性を有する化合物の製造方法。
【化1】
Figure 2011190181

[式(1)において、RとRとは同じであってもよく異なっていてもよく、各々、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基及び置換基を有するアリール基のうちの少なくとも1種である。Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はスルホニル基である。Meはメチル基である。]
【選択図】なし

Description

本発明は、アンモニウムベタイン類をイオン性求核触媒として用いた光学活性を有する化合物の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、光学活性アンモニウムベタイン類が有するアニオン部位の求核性に基づくイオン性求核触媒としての作用を利用した光学活性を有する化合物の製造方法に関する。
従来、環境負荷の低い持続型プロセスの開発が望まれており、高い機能性が注目を集めている光学活性アンモニウム塩が、世界的に広く研究されている。しかし、これまでカチオン部位のイオン交換能に焦点を当てた研究が精力的に進められる一方で、対となるアニオン部位の機能性はあまり検討されていない。このアニオン部位の機能性に着目した研究は数少ないが、例えば、両イオン部位を同一分子内に有する光学活性アンモニウムベタインを二官能性有機塩基触媒として用いることで、高エナンチオ選択的な直裁的Mannich反応を実現し、両イオン部位の機能を同時に利用した研究が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
また、光学活性を有する化合物は、医薬及び農薬等に利用することができる中間原料として重要な化合物群であるため、非イオン性の求核触媒を用いて、収率及びエナンチオ選択性の高い光学活性化合物を合成するための種々の触媒が報告されている(例えば、非特許文献2、3参照。)。
Chem.Commun.,2010,46,300. J.Am.Chem.Soc.1998,120,11532. Angew.Chem.Int.Ed.2009,48,8914.
しかし、従来、アニオン性の求核触媒を用いると、中間体の反応性が低下し、結合形成が円滑に進行しないということがよく知られている。このため、これまでアニオン性の求核触媒を用いて光学活性を有する化合物を合成した例は極めて限られており、非特許文献2、3に記載されているような非イオン性の触媒が用いられてきた。しかし、既存の非イオン性の求核触媒を用いた場合においても、基質が有する置換基の種類によっては、収率及びエナンチオ選択性ともに大きく低下することがあり、エナンチオ選択性を高くするため、反応温度を0℃、又は0℃を大きく下回る極低温にしなければならないことがあり、大量の触媒を用いなければならないこともあって、工業的な生産では、装置、操作の観点で問題である。
より具体的には、非特許文献2、3に記載された触媒を用いた場合、反応温度を0℃、又は−50℃という極低温にしなければならないことがある。また、基質が有する置換基によっては、例えば、基質がi−プロピル基を有するときは、反応が進まないこともあり、収率を向上させるため、反応温度を−50℃から室温又は0℃と高くしても、収率は40%未満と極めて低く、同時にエナンチオ選択率も80%と低い。更に、触媒も、十分な収率及びエナンチオ選択性とするためには、10mol%と多量に使用する必要があり、特に、工業的な生産という観点では多くの問題を有している。
本発明は、前記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、光学活性アンモニウムベタイン類が有するアニオン部位の求核性に基づくイオン性求核触媒としての作用を利用した光学活性を有する化合物の製造方法を提供することを目的とする。
アンモニウムベタイン類が有するアニオン部位であるアリールオキシドの求核性に着目し、エノールカーボネート類の触媒的不斉Steglich転移をモデル反応として、新たに合成したアンモニウムベタイン類のイオン性求核触媒としての機能を評価したところ、高い収率及びエナンチオ選択性で光学活性を有する化合物を合成することができた。1990年代にキラル求核触媒が提案されて以来、種々の求核触媒が開発されてきたが、アニオン種の優れた求核性を利用した例は極めて限られており、前記のアンモニウムベタイン類はオニウム塩の化学及び求核触媒の化学の両面から興味深いものである。また、このアンモニウムベタイン類はエノールカーボネート類の転移反応のみでなく、ニトロアルケン類とイミン類との森田バイリスヒルマン型反応においても有用であることが見出されている。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
本発明は以下のとおりである。
1.一般式(1)で表されるアンモニウムベタイン類及びその光学異性体をイオン性求核触媒として用いることを特徴とする光学活性を有する化合物の製造方法。
Figure 2011190181
[式(1)において、RとRとは同じであってもよく異なっていてもよく、各々、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基及び置換基を有するアリール基のうちの少なくとも1種である。Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はスルホニル基である。Meはメチル基である。]
2.エノールカーボネート類のアシル転移反応、又はニトロアルケン類とイミン類との森田バイリスヒルマン型反応に適用される前記1.に記載の光学活性を有する化合物の製造方法。
3.前記アシル転移反応に適用され、前記Rが塩素原子であり、前記Rが水素原子である前記アンモニウムベタイン類、前記Rがフェニル基であり、前記Rが水素原子である前記アンモニウムベタイン類、前記Rがp−CF−Cであり、前記Rが水素原子である前記アンモニウムベタイン類、又は前記Rが3,5−(CF−Cであり、前記Rが水素原子である前記アンモニウムベタイン類を用いる前記2.に記載の光学活性を有する化合物の製造方法。
4.反応温度が10〜60℃である前記3.に記載の光学活性を有する化合物の製造方法。
5.前記森田バイリスヒルマン型反応に適用され、前記Rがp−CF−Cであり、前記Rがフェニル基である前記アンモニウムベタイン類、又は前記R及び前記Rがp−CF−Cである前記アンモニウムベタイン類を用いる前記2.に記載の光学活性を有する化合物の製造方法。
6.反応温度が−10〜30℃である前記5.に記載の光学活性を有する化合物の製造方法。
本発明の光学活性を有する化合物の製造方法によれば、好ましくは触媒量3mol%以下、特に2mol%以下で、且つ反応温度は0℃を少し下回る温度から常温、又は常温を少し上回る温度範囲で、例えば、エノールカーボネート類のアシル転移反応、及びニトロアルケン類とイミン類との森田バイリスヒルマン型反応等によって、高い収率及びエナンチオ選択性で、光学活性を有する化合物を効率よく製造することができる。
また、エノールカーボネート類のアシル転移反応、又はニトロアルケン類とイミン類との森田バイリスヒルマン型反応に適用される場合は、それぞれの反応において、目的とする光学活性を有する化合物を高い収率及びエナンチオ選択性で効率よく製造することができる。
更に、アシル転移反応に適用され、Rが塩素原子であり、Rが水素原子であるアンモニウムベタイン類、Rがフェニル基であり、Rが水素原子であるアンモニウムベタイン類、Rがp−CF−Cであり、Rが水素原子であるアンモニウムベタイン類、又はRが3,5−(CF−Cであり、Rが水素原子であるアンモニウムベタイン類を用いる場合、及び森田バイリスヒルマン型反応に適用され、Rがp−CF−Cであり、Rがフェニル基であるアンモニウムベタイン類、又はR及びRがp−CF−Cであるアンモニウムベタイン類を用いる場合は、各々の反応において用いる基質から、より高い収率及びエナンチオ選択性で、光学活性を有する化合物をより効率よく製造することができる。
また、アシル転移反応の反応温度が10〜60℃である場合、及び森田バイリスヒルマン型反応の反応温度が−10〜30℃である場合は、簡易な装置、且つ簡便な操作で、高い収率及びエナンチオ選択性で、光学活性を有する化合物を容易に製造することができ、工業的な生産にも十分に適用することができる。
本発明の光学活性を有する化合物の製造方法は、一般式(1)で表されるアンモニウムベタイン類及びその光学異性体をイオン性求核触媒として用いることを特徴とする。
Figure 2011190181
[式(1)において、RとRとは同じであってもよく異なっていてもよく、各々、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基及び置換基を有するアリール基のうちの少なくとも1種である。Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はスルホニル基である。Meはメチル基である。]
[1]アンモニウムベタイン類
前記一般式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立してハロゲン原子、水素原子、アルキル基、アリール基及び置換基を有するアリール基のうちの少なくとも1種である。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はスルホニル基であり、水素原子であっても求核触媒として十分に機能する。
アルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常、1〜20であり、1〜15、特に1〜8、更に1〜6であることが好ましい。また、アルキル基の構造も特に限定されず、直鎖アルキル基でもよく、分岐アルキル基でもよく、シクロアルキル基でもよい。更に、アルキル基は置換基を有していてもよく、炭素原子及び水素原子を除く少なくとも1個の他の原子を有していてもよい。即ち、アルキル基は、置換基として、炭素原子及び水素原子を除く他の原子を有する置換基を備えていてもよい。この炭素原子及び水素原子を除く他の原子としては、例えば、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子等が挙げられる。
直鎖及び分岐アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、及び2−エチルヘキシル基等が挙げられる。また、シクロアルキル基としては、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及び2−メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
アリール基の炭素数も特に限定されないが、通常、6〜20であり、6〜12、特に6〜10であることが好ましい。また、アリール基の構造も特に限定されず、置換基を有していなくてもよく、少なくとも1個の置換基を有していてもよい。即ち、アリール基が有する芳香環は、置換基を有していなくてもよく、少なくとも1個の置換基を有していてもよい。更に、置換基の位置は、o位、m位、及びp位のうちのいずれであってもよい。この置換基としては、具体的には、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、及びアルコキシル基等が挙げられる。
置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。また、置換基であるアルキル基及びアルケニル基としては、炭素数1〜6、特に1〜4のアルキル基及びアルケニル基が挙げられる。このアルキル基及びアルケニル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ビニル基、及びアリル基等が挙げられ、アルキル基及びアルケニル基は、更に他の置換基を有していてもよい。更に、ハロゲン化アルキル基及びハロゲン化アルケニル基でもよい。例えば、アルキル基として、メチル基及びエチル基の水素原子の一部又は全てがハロゲン原子で置換された基(CF−、CCl−等)でもよい。更に、置換基であるアルコキシル基としては、炭素数1〜6、特に1〜4、更に1〜3のアルコキシル基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、及びt−ブトキシ基が挙げられる。
また、アリール基が有する芳香環は、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子等のヘテロ原子を有していてもよい。即ち、アリール基が有する芳香環は、フラン、チオフェン、ピロール、ベンゾフラン、インドール、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、イソキサゾール、オキサゾール、イソチアゾール、チアゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、及びピリミジン等の芳香族複素環であってもよい。この芳香族複素環を構成する炭素数も特に限定されないが、2〜9であることが好ましい。また、芳香族複素環は、五員環〜十員環、特に五員環又は六員環であることが好ましい。芳香族複素環は置換基を有していてもよく、縮環していてもよい。このアリール基としては、具体的には、フェニル基、(o位、m位、及びp位)トリル基、(o位、m位、及びp位)エチルフェニル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、(o位、m位、及びp位)メトキシフェニル基、(o位、m位、及びp位)エトキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ビフェニリル基、並びにターフェニル基等が挙げられる。
更に、アルコキシル基の炭素数も特に限定されないが、通常、1〜6、特に1〜4であることが好ましい。また、アルコキシル基の構造も特に限定されず、直鎖又は分岐アルキル基を有するアルコキシル基が挙げられる。アルコキシル基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、及びi−プロポキシ基等が挙げられる。更に、アシル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、アシル基としては、具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基等が挙げられる。また、アルコキシカルボニル基の炭素数も特に限定されないが、通常、2〜10であり、構造も直鎖状でもよく、分岐状でもよい。アルコキシカルボニル基としては、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
[2]アンモニウムベタイン類の合成
本発明の光学活性を有する化合物の製造方法で用いられるアンモニウムベタイン類は、例えば、下記の反応式(I)のようにして合成することができるが、この方法に限られるものではない。
市販の1,1’−ビス−2−ナフトールを用いて常法によりRがトリフルオロメタンスルホニルオキシ基(OTf)である化合物2を準備する。その後、メトキシカルボニル化によってRがメトキシカルボニル基である化合物3を生成させる。次いで、選択的なオルソメタレーションとそれに続くクロル化によって化合物3のオルソ位にクロル基が結合した化合物4を生成させる。その後、エステルを還元させ、生成する1級アルコールをブロム化してRがCHBrである化合物5を生成させる。
次いで、生成したブロム化ベンジル構造を有する化合物5によりジメチルアミンをアルキル化させ、続いてメトキシメチル基のオルト位リチオ化−ブロム化により重要な中間体であり、3位と3’位に異なるハロゲン置換基が結合した化合物7を生成させる。ここで、鈴木−三浦カップリング条件下に、3位と3’位に種々の芳香族系の置換基を選択的に導入して化合物8及び化合物9を生成させることもできる。また、ヨウ化メチルによる化合物9の3級アミン部分の四級化と、メトキシメチル基の脱保護によりアンモニウム塩を生成させ、これを炭酸水素ナトリウム水溶液で処理することにより目的とするアンモニウムベタイン類を得ることができる。
Figure 2011190181
尚、「OMOM」はメトキシメチルエーテル基、OTfはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基である。
[3]アンモニウムベタイン類のイオン性求核触媒としての使用
一般式(1)で表されるアンモニウムベタイン類は、各種の不斉合成においてイオン性求核触媒(光学活性を有する化合物を製造することができるイオン性求核触媒)として作用し、光学活性を有する化合物を効率よく製造することができ、例えば、種々の求核反応に適用することができる。この求核反応としては、(1)エノール化合物からケト化合物を生成させる反応[後記の反応式(II)参照]、(2)ニトロアルケン化合物とイミン化合物とを反応させて二重結合の位置を変化させる反応[後記の反応式(III)参照]、等が挙げられ、より具体的には、エノールカーボネート類のアシル転移反応及びニトロアルケン類とイミン類との森田バイリスヒルマン型反応等において有用である。
以下、エノールカーボネート類のアシル転移反応及びニトロアルケン類とイミン類との森田バイリスヒルマン型反応について詳述する。
(1)アシル転移反応
エノールカーボネート類のアシル転移反応は、前記のようにして合成したアンモニウムベタイン類を有機溶媒に溶解させた溶液と、エノールカーボネート類を有機溶媒に溶解させた溶液とを調製し、通常、アンモニウムベタイン類を溶解させた溶液に、エノールカーボネート類を溶解させた溶液を、所定温度で所定時間かけて徐々に添加し、反応させて、行うことができる。溶媒は特に限定されず、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、トルエン等の各種の有機溶媒を用いることができ、アンモニウムベタイン類を溶解させる溶媒と、エノールカーボネート類を溶解させる溶媒とは同じでもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。また、アンモニウムベタイン類の溶液には、通常、モレキュラーシーブスが分散され、含有されている。このモレキュラーシーブスにより反応にとって好ましくない溶媒中の水及び酸素等を除去することができる。更に、トリフルオロ酢酸等を加えて反応を停止させ、次いで、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等により精製することで、目的とする光学活性を有する化合物を製造することができる。
エノールカーボネート類のアシル転移反応の場合、イオン性求核触媒としては、式(1)におけるRが塩素原子であり、Rが水素原子であるアンモニウムベタイン類、Rがフェニル基であり、Rが水素原子であるアンモニウムベタイン類、Rがp−CF−Cであり、Rが水素原子であるアンモニウムベタイン類、又はRが3,5−(CF−Cであり、Rが水素原子であるアンモニウムベタイン類を用いることが好ましい。これらのアンモニウムベタイン類を使用すれば、反応性が高く、且つエナンチオ選択率の高い化合物を製造することができる。
アンモニウムベタイン類の使用量は特に限定されないが、エノールカーボネート類に対して0.3〜4mol%であることが好ましく、0.5〜3.5mol%、特に0.7〜3mol%であることがより好ましい。また、アシル転移反応の反応温度は特に限定されないが、10〜60℃とすることができ、15〜50℃、特に20〜45℃であることが好ましい。また、この反応温度はエノールカーボネート類が有する置換基の種類等を勘案して設定することが好ましい。更に、反応時間も特に限定されず、反応温度にもよるが、10〜60分間とすることができ、10〜40分間、特に10〜30分間であることが好ましい。
アシル転移反応に用いるエノールカーボネート類は特に限定されず、式(2)で表される各種のエノールカーボネート類を使用することができる。
Figure 2011190181
式(2)におけるR、R及びRは特に限定されないが、Rとしてはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基及びアリール基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。また、Rとしてはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基及びアリール基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよく、Rとしてはエナンチオ選択性の観点でtert−ブチル基が好ましい。更に、Rとしてはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基及びアリール基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよく、Rとしては反応性の観点でハロゲン原子を有するアルキル基が好ましく、2,2,2−トリフルオロエチル基及び2,2,2−トリクロロエチル基がより好ましい。
また、アシル転移反応において、アンモニウムベタイン類の有機溶媒溶液と、不斉合成に用いられる基質の有機溶媒溶液とは、一方を他方に添加し、反応させることができるが、アンモニウムベタイン類の有機溶媒溶液に、不斉合成に用いられる基質の有機溶媒溶液を添加し、反応させることが好ましい。このように、アンモニウムベタイン類の有機溶媒溶液に、不斉合成に用いられる基質の有機溶媒溶液を添加し、反応させることで、触媒として機能するアンモニウムベタイン類の周囲に過剰な基質が存在せず、基質が求核触媒として作用する好ましくない副反応が起きないため、より高い収率及びエナンチオ選択性で、目的とする光学活性を有する化合物をより効率よく合成することができる。
(2)森田バイリスヒルマン型反応
ニトロアルケン類とイミン類との森田バイリスヒルマン型反応は、前記のようにして合成したアンモニウムベタイン類とニトロアルケン類とを有機溶媒に溶解させた溶液に、イミン類をそのまま或いは有機溶媒に溶解させた溶液として所定温度で所定時間かけて徐々に添加し、反応させて、行うことができる。溶媒は特に限定されず、i−プロピルエーテル等のエーテル類、トルエン等の芳香族溶媒などの各種の有機溶媒を用いることができ、アンモニウムベタイン類とニトロアルケン類とを溶解させる溶媒と、イミン類を溶解させる溶媒とは同じでもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。また、反応を停止させた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等により精製することで、目的とする光学活性を有する化合物を製造することができる。尚、この反応では、二重結合の位置が異なる副生成物が生成することがあるが、目的とする光学活性を有する化合物の用途等により、更に精製する等の処理をして使用することができる。
ニトロアルケン類とイミン類との森田バイリスヒルマン型反応の場合、イオン性求核触媒としては、式(1)におけるRがp−CF−Cであり、Rがフェニル基であるアンモニウムベタイン類、又はR及びRがp−CF−Cであるアンモニウムベタイン類を用いることが好ましい。これらのアンモニウムベタイン類を使用すれば、反応性が高く、且つエナンチオ選択率の高い化合物を製造することができる。
アンモニウムベタイン類の使用量は特に限定されないが、ニトロアルケン類及びイミン類に対して0.3〜4mol%であることが好ましく、0.5〜3.5mol%、特に0.7〜3mol%であることがより好ましい。また、アシル転移反応の反応温度は特に限定されないが、−10〜30℃とすることができ、−5〜20℃、特に−5〜10℃であることが好ましい。また、この反応温度はニトロアルケン類及びイミン類の各々が有する置換基の種類等を勘案して設定することが好ましい。更に、反応時間も特に限定されず、反応温度にもよるが、0.1〜72時間とすることができ、0.3〜48時間、特に0.5〜24時間であることが好ましい。
森田バイリスヒルマン型反応に用いるニトロアルケン類は特に限定されず、式(3)で表される各種のニトロアルケン類を使用することができる。
Figure 2011190181
式(3)におけるR及びRは特に限定されないが、Rとしては水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基及びアリール基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよく、Rとしては反応性の観点で水素原子が好ましい。また、Rとしてはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基及びアリール基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよく、Rとしてはエナンチオ選択性の観点でアリール基が好ましい。
また、イミン類も特に限定されず、式(4)で表される各種のイミン類を使用することができる。
Figure 2011190181
式(4)におけるR及びR10は特に限定されないが、Rとしては水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基及びアリール基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよく、Rとしてはエナンチオ選択性の観点でアリール基が好ましい。また、R10としてはアシル基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、ホスホリル基及びスルホニル基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよく、R10としてはエナンチオ選択性の観点でtert−ブトキシカルボニル基が好ましい。
合成例1〜5(アンモニウムベタイン類の合成)
式(1)におけるRがフェニル基、Rが水素原子であるアンモニウムベタイン(1)、Rがp−CF−Cであり、Rが水素原子であるアンモニウムベタイン(2)、Rが3,5−(CF−Cであり、Rが水素原子であるアンモニウムベタイン(3)、Rが塩素原子であり、Rが水素原子であるアンモニウムベタイン(4)、Rがp−CF−Cであり、Rがフェニル基であるアンモニウムベタイン(5)並びにR及びRがp−CF−Cであるアンモニウムベタイン(6)を以下のようにして得た。
対応するアンモニウムクロライド(104.5mg)のメタノール溶液(1mL)をイオン交換樹脂(オルガノ社製、商品名「アンバーリストA−26」、水酸化物イオン型)(5g)が充填されたカラムに載せ、メタノール(50mL)を用いて溶出させた。その後、得られた溶液をロータリーエバポレーターにより濃縮し、残渣である固体をエーテルにより漏斗上で洗浄した。次いで、得られた固体を減圧乾燥させ、黄色固体のアンモニウムベタインを得た。このアンモニウムベタインは更なる精製を要することなく反応に供することができた。
前記のようにして合成したアンモニウムベタイン(1)〜(3)を分析した結果は下記のとおりである。
アンモニウムベタイン(1):H NMR (400 MHz, CDOD) δ 8.00-7.88 (brm), 7.79 (d, J = 8.7 Hz), 7.70-7.43 (brm), 7.35 (br), 7.24 (br), 7.16 (br), 7.08 (br), 7.02 (br), 6.74 (brd, J = 6.4 Hz), 6.66 (br), 5.11 (d, J = 13.3 Hz), 4.99 (d, J = 13.3 Hz), 4.32 (d, J = 13.3 Hz), 2.57 (br), 2.32 (br); IR (KBr) 3365, 3030, 1609, 1587, 1494, 1462, 1422, 1367, 1245, 759 cm−1; HRMS (FAB) Calcd for C30H28NO ([M+H]) 418.2171, Found 418.2153; [α]26 +17.3 (c = 0.95, MeOH).
アンモニウムベタイン(2):H NMR (400 MHz, CDOD) δ 8.01 (br), 7.99 (br), 7.91 (br), 7.83 (br), 7.76 (br), 7.57 (br), 7.41 (br), 7.34 (br), 7.19 (br), 7.13 (br), 7.05 (br), 6.80 (br), 6.69 (br), 4.98 (br), 4.36 (d, J = 11.4 Hz), 2.61 (br), 2.38 (br); 19F NMR (376 MHz, CDOD) δ −65.5; IR (KBr) 3411, 3038, 1613, 1463, 1423, 1369, 1325, 1168, 1125, 1065, 752 cm?1; HRMS (FAB) Calcd for C31H27FNO ([M+H]) 486.2045, Found 486.2038; [α]26 −16.4 (c = 0.33, MeOH).
アンモニウムベタイン(3):H NMR (400 MHz, CDOD) δ 8.53 (br), 8.42 (br), 8.12 (s), 8.02 (d, J = 8.2 Hz), 7.97 (s), 7.79 (d, J = 9.2 Hz), 7.73 (d, J = 6.9 Hz), 7.58 (br), 7.38 (br), 7.32 (br), 7.20 (br), 7.04 (br), 6.69 (br), 4.98 (br), 4.78 (br), 4.44 (br), 2.61 (br), 2.42 (br); 19F NMR (376 MHz, CHOH) δ −65.6; IR (KBr) 3374, 3048, 1611, 1589, 1466, 1423, 1371, 1280, 1181, 1139, 751 cm−1; HRMS (FAB) Calcd for C32H26FNO ([M+H]) 554.1919, Found 554.1932; [α]23 −64.9 (c = 0.21, MeOH).
尚、H−NMRスペクトルは、「JEOL JNM−ECS400スペクトロメーター」により測定して得た。化学シフトは、溶媒の残存シグナル(CDOD;3.31ppm)を内部標準としてppmで記録した。化学シフトは、溶媒の残存シグナルを内部標準としてppmで記録した。スペクトルデータは、化学シフト、積分値、多重度及びカップリング定数(Hz)の順で表記した。また、19F−NMRスペクトルは、「JEOL JNM−ECS400スペクトロメーター」により測定し、化学シフトは、ベンゾトリフルオライド(−64.0ppm)を外部標準としてppmで記録した。
赤外線スペクトルは、「JASCO FT/IR−300Eスペクトロメーター」により測定して得た。高分解能マススペクトル分析は、「JEOL JMS−700(MStation)」により実施した。
用いた分析機器及びスペクトルデータの表示は、以下の実施例においても同様である。更に、実施例における13C−NMRスペクトルは、H−NMRの場合と同じ装置により測定して得た。化学シフトは、溶媒の残存シグナル(CDCl;77.16ppm)を内部標準としてppmで記録した。スペクトルデータは、化学シフト、積分値、多重度及びカップリング定数(Hz)の順で表記した。
実施例1(アシル転移反応)
合成例1で合成したアンモニウムベタイン(1)(2mol%)[下記反応式(II)参照、基質であるエノールカーボネートのRはベンジル基である。]を100mol%とする。]を溶解させ、モレキュラーシーブス4A(100mg)を分散させた1,4−ジオキサン分散液(1mL)に、エノールカーボネート(下記反応式参照、Rはベンジル基である。)(0.25mmol)を溶解させた1,4−ジオキサン溶液(1.5mL)を、シリンジを用いて25℃で15分間かけて滴下した。その後、トリフルオロ酢酸(0.005mmol)を加えて反応を停止させ、次いで、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒)により精製し、目的とする光学活性を有する化合物(下記反応式における生成物)を得た。収率は93%であった。また、高速液体クロマトグラフィ「DAICEL CHIRACEL OJ−H」により検定したエナンチオ選択率は93%であった。
Figure 2011190181
反応式(II)において、「Troc」は2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基であり、「tBu」はt−ブチル基である。
実施例2〜4[アンモニウムベタイン(2)、(3)及び(4)を用いた化合物の合成]
合成例2のアンモニウムベタイン(2)(実施例2)、合成例3のアンモニウムベタイン(3)(実施例3)、合成例4のアンモニウムベタイン(4)(実施例4)を用いた他は、実施例1と同様の操作によって、実施例1で用いたエノールカーボネートを反応させ、目的とする化合物を得た。収率及びエナンチオ選択率は表1のとおりである。
実施例5〜14[アンモニウムベタイン(3)により各種のエノールカーボネートを反応させてなる化合物の合成)
合成例3のアンモニウムベタイン(3)を用いた他は、実施例1と同様の操作によって、反応式(II)における基質のRが異なる表1に記載の各種のエノールカーボネートを反応させ、目的とする化合物を得た。収率及びエナンチオ選択率は表1のとおりである。
Figure 2011190181
実施例3及び5〜14で合成した光学活性を有する化合物の分析結果は下記のとおりである。
下記式(5)で表される実施例3の化合物(この化合物をaとする。)(「Bn」はベンジル基である。)
Figure 2011190181
HPLC: AS-H, H/isopropyl alcohol (IPA) = 99:1, flow rate = 0.5 mL/min, λ = 210 nm, 9.0 min (minor isomer: (R)), 9.8 min (major isomer: (S)), Absolute configuration was assigned by derivatization to 6 (see below);H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.30-7.21 (3H, m), 7.20-7.12 (2H, m), 4.91 (1H, d, J = 11.9 Hz), 4.75 (1H, d, J = 11.9 Hz), 3.56 (1H, d, J = 14.0 Hz), 3.50 (1H, d, J = 14.0 Hz), 1.03 (9H, s); 13C NMR (101 MHz, CDCl) δ 174.3, 174.0, 164.3, 132.5, 130.7, 128.4, 127.9, 94.1, 76.7, 75.0, 39.1, 34.2, 26.3; IR (neat) 2976, 1826, 1769, 1667, 1496, 1456, 1219, 1095, 905, 790 cm−1; HRMS (FAB) Calcd for C17H19ClNO ([M+H]) 406.0380, Found 406.0377; [α]25 −7.7 (c = 1.75, MeOH).
下記式(6)で表される実施例5の化合物(「Me」はメチル基である。)
Figure 2011190181
HPLC: OJ-H, H/IPA = 99:1, flow rate = 0.5 mL/min, λ = 210 nm, 10.0 min (minor isomer), 10.8 min (major isomer), Absolute configuration was assigned on the analogy of aH NMR (400 MHz, CDCl) δ 4.85 (1H, d, J = 12.1 Hz), 4.71 (1H, d, J = 12.1 Hz), 1.72 (3H, s), 1.32 (9H, s); 13C NMR (101 MHz, CDCl) δ 175.1, 174.6, 164.6, 94.0, 75.0, 72.3, 34.6, 26.7, 19.9; IR (neat) 2978, 1828, 1766, 1666, 1452, 1304, 1218, 1126, 1043, 911 cm−1; HRMS (FAB) Calcd for C11H15ClNO ([M+H]) 330.0067, Found 330.0052; [α]23 −97.7 (c = 1.04, CHCl).
下記式(7)で表される実施例6の化合物(「Et」はエチル基である。)
Figure 2011190181
HPLC: AS-H, H/IPA = 199:1, flow rate = 0.5 mL/min, λ = 210 nm, 8.6 min (minor isomer), 9.1 min (major isomer), Absolute configuration was assigned on the analogy of a; H NMR (400 MHz, CDCl) δ 4.84 (1H, d, J = 11.9 Hz), 4.73 (1H, d, J = 11.9 Hz), 2.29 (1H, dq, J = 14.7, 7.6 Hz), 2.22 (1H, dq, J = 14.7, 7.6 Hz), 1.33 (9H, s), 0.87 (3H, t, J = 7.6 Hz); 13C NMR (101 MHz, CDCl) δ 174.7, 174.4, 164.4, 94.1, 76.5, 74.9, 34.6, 26.9, 26.7, 7.4; IR (neat) 2978, 1824, 1770, 1664, 1461, 1368, 1218, 1061, 903, 796 cm−1; HRMS (FAB) Calcd for C12H17ClNO ([M+H]) 344.0223, Found 344.0219; [α]25 −66.5 (c = 1.07, CHCl).
下記式(8)で表される実施例7の化合物(「nBu」はn−ブチル基である。)
Figure 2011190181
HPLC: AD-H, H/IPA = 199:1, flow rate = 0.5 mL/min, λ = 210 nm, 9.4 min (major isomer), 10.1 min (minor isomer), Absolute configuration was assigned on the analogy of a; H NMR (400 MHz, CDCl) δ 4.84 (1H, d, J = 12.1 Hz), 4.73 (1H, d, J = 12.1 Hz), 2.25 (1H, ddd, J = 13.7, 12.2, 5.0 Hz), 2.15 (1H, ddd, J = 13.7, 11.7, 5.0 Hz), 1.36 (2H, sext, J = 7.3 Hz), 1.33 (9H, s), 1.30-1.05 (2H, m), 0.90 (3H, t, J = 7.3 Hz); 13C NMR (101 MHz, CDCl) δ 174.5, 164.5, 94.1, 76.0, 74.9, 34.6, 32.9, 26.8, 25.1, 22.4, 13.8, one carbon was not found probably due to overlapping; IR (neat) 2963, 1827, 1769, 1666, 1461, 1368, 1216, 1067, 903, 793 cm−1; HRMS (FAB) Calcd for C14H21ClNO ([M+H]) 372.0536, Found 372.0522; [α]23 −55.7 (c = 1.12, CHCl).
下記式(9)で表される実施例8の化合物(「iBu」はi−ブチル基である。)
Figure 2011190181
HPLC: AS-H, H/IPA = 199:1, flow rate = 0.5 mL/min, λ = 210 nm, 7.9 min (minor isomer), 8.2 min (major isomer), Absolute configuration was assigned on the analogy of a; H NMR (400 MHz, CDCl) δ 4.83 (1H, d, J = 12.1 Hz), 4.71 (1H, d, J = 12.1 Hz), 2.36 (1H, dd, J = 14.4, 5.7 Hz), 2.03 (1H, dd, J = 14.4, 7.5 Hz), 1.69-1.55 (1H, m), 1.33 (9H, s), 0.96 (3H, d, J = 6.8 Hz), 0.88 (3H, d, J = 6.8 Hz); 13C NMR (101 MHz, CDCl) δ 175.1, 174.2, 164.6, 94.1, 75.6, 75.0, 41.5, 34.6, 26.7, 24.5, 24.0, 22.8; IR (neat) 2964, 1826, 1769, 1663, 1459, 1368, 1201, 1066, 902, 789 cm−1; HRMS (FAB) Calcd for C14H21ClNO ([M+H]) 372.0536, Found 372.0521; [α]25 −82.8 (c = 1.35, CHCl).
下記式(10)で表される実施例9の化合物(「iPr」はi−プロピル基である。)
Figure 2011190181
HPLC: AS-H, H/IPA = 199:1, flow rate = 0.5 mL/min, λ = 210 nm, 8.4 min (minor isomer), 8.7 min (major isomer), Absolute configuration was assigned on the analogy of a; H NMR (400 MHz, CDCl) δ 4.84 (1H, d, J = 12.1 Hz), 4.78 (1H, d, J = 12.1 Hz), 2.77 (1H, sept, J = 6.9 Hz), 1.33 (9H, s), 1.07 (3H, d, J = 6.9 Hz), 0.95 (3H, d, J = 6.9 Hz); 13C NMR (101 MHz, CDCl) δ 174.2, 173.8, 164.3, 94.2, 79.8, 74.9, 34.6, 33.4, 26.9, 17.2, 16.2; IR (neat) 2976, 1823, 1771, 1658, 1462, 1369, 1210, 1152, 1056, 906 cm−1; HRMS (FAB) Calcd for C13H19ClNO ([M+H]) 358.0380, Found 358.0376; [α]27D −40.2 (c = 0.97, CHCl).
下記式(11)で表される実施例10の化合物(「MeO」はメトキシ基である。)
Figure 2011190181
HPLC: AS-H, H/IPA = 99:1, flow rate = 0.5 mL/min, λ = 210 nm, 11.8 min (minor isomer), 14.4 min (major isomer), Absolute configuration was assigned on the analogy of a; H NMR (400 MHz, CDCl) δ 7.08 (2H, d, J = 8.9 Hz), 6.80 (2H, d, J = 8.9 Hz), 4.90 (1H, d, J = 11.9 Hz), 4.74 (1H, d, J = 11.9 Hz), 3.76 (3H, s), 3.50 (1H, d, J = 14.2 Hz), 3.44 (1H, d, J = 14.2 Hz), 1.07 (9H, s); 13C NMR (101 MHz, CDCl) δ 174.2, 174.0, 164.4, 159.3, 131.7, 124.4, 113.8, 94.1, 74.9, 55.4, 38.4, 34.2, 26.4, one carbon was not found probably due to overlapping; IR (neat) 2978, 1825, 1768, 1663, 1612,1514, 1217, 1077, 906, 756 cm−1; HRMS (FAB) Calcd for C18H21ClNO ([M+H]) 436.0485, Found 436.0494; [α]22 +8.3 (c = 1.50, CHCl).
下記式(12)で表される実施例11の化合物
Figure 2011190181
HPLC: AS-H, H/IPA = 99:1, flow rate = 0.5 mL/min, λ = 210 nm, 9.9 min (minor isomer), 12.3 min (major isomer), Absolute configuration was assigned on the analogy of a; H NMR (400 MHz, CDCl) δ 7.25 (2H, d, J = 8.7 Hz), 7.10 (2H, d, J = 8.7 Hz), 4.90 (1H, d, J = 11.9 Hz), 4.74 (1H, d, J = 11.9 Hz), 3.52 (1H, d, J = 14.0 Hz), 3.46 (1H, d, J = 14.0 Hz), 1.07 (9H, s); 13C NMR (101 MHz, CDCl) δ 174.6, 173.8, 164.1, 134.0, 132.0, 131.1, 128.5, 94.0, 76.4, 75.0, 38.4, 34.3, 26.4; IR (neat) 2977, 1826, 1768, 1665, 1493, 1369, 1218, 1093, 907, 757 cm−1; HRMS (FAB) Calcd for C17H18ClNO ([M+H]) 439.9990, Found 439.9972; [α]23 +14.1 (c = 1.14, CHCl).
下記式(13)で表される実施例12の化合物
Figure 2011190181
HPLC: AS-H, H/IPA = 99:1, flow rate = 0.5 mL/min, λ = 210 nm, 9.6 min (minor isomer), 10.3 min (major isomer), Absolute configuration was assigned on the analogy of a; H NMR (400 MHz, CDCl) δ 7.25 (1H, tdd, J = 8.0, 5.0, 1.4 Hz), 7.18 (1H, td, J = 8.0, 1.4 Hz), 7.05 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.03 (1H, dd, J = 9.2, 8.0 Hz), 4.87 (1H, d, J = 11.9 Hz), 4.77 (1H, d, J = 11.9 Hz), 3.73 (1H, d, J = 13.9 Hz), 3.51 (1H, d, J = 13.9 Hz), 1.05 (9H, s); 13C NMR (101 MHz, CDCl) δ 174.6, 174.0, 164.1, 161.5 (d, JF−C = 252.6 Hz), 132.3 (d, JF−C = 2.9 Hz), 129.8 (d, JF−C = 8.7 Hz), 124.1 (d, JF−C = 3.9 Hz), 120.0 (d, JF−C = 15.5 Hz), 115.6 (d, JF−C = 22.3 Hz), 94.0, 76.2, 75.0, 34.3, 32.0, 26.3; 19F NMR (376 MHz, CDCl) δ −115.9; IR (neat) 2976, 1827, 1769, 1665, 1494, 1457, 1234, 1116, 995, 905 cm−1; HRMS (FAB) Calcd for C17H18ClFNO ([M+H]) 424.0285, Found 424.0265; [α]20 −2.0 (c = 1.13, MeOH).
下記式(14)で表される実施例13の化合物(「MeO」はメトキシ基である。)
Figure 2011190181
HPLC: AS-H, H/IPA = 99:1, flow rate = 0.5 mL/min, λ = 210 nm, 11.3 min (minor isomer), 12.4 min (major isomer), Absolute configuration was assigned on the analogy of a; H NMR (400 MHz, CDCl) δ 4.86 (1H, d, J = 11.9 Hz), 4.67 (1H, d, J = 11.9 Hz), 3.45 (1H, ddd, J = 9.6, 5.5, 3.0 Hz), 3.38 (1H, ddd, J = 11.4, 9.6, 3.0 Hz), 3.22 (3H, s), 2.66 (1H, ddd, J = 14.7, 11.4, 5.5 Hz), 2.49 (1H, dt, J = 14.7, 3.0 Hz), 1.34 (9H, s); 13C NMR (101 MHz, CDCl) δ 175.4, 174.9, 164.7, 94.1, 75.0, 73.5, 67.1, 58.8, 34.7, 32.8, 26.8; IR (neat) 2977, 1827, 1768, 1660, 1461, 1218, 1135, 1029, 905, 790 cm−1; HRMS (FAB) Calcd for C13H19ClNO ([M+H]) 374.0329, Found 374.0315; [α]26 −102.1 (c = 1.01, CHCl).
下記式(15)で表される実施例14の化合物(「MeS」はメチルスルフィド基である。)
Figure 2011190181
HPLC: AS-H, H/IPA = 99:1, flow rate = 0.5 mL/min, λ = 210 nm, 10.5 min (minor isomer), 11.4 min (major isomer), Absolute configuration was assigned on the analogy of a; H NMR (400 MHz, CDCl) δ 4.83 (1H, d, J = 11.9 Hz), 4.73 (1H, d, J = 11.9 Hz), 2.69-2.41 (4H, m), 2.07 (3H, s), 1.33 (9H, s); 13C NMR (101 MHz, CDCl) δ 175.5, 174.6, 164.3, 94.0, 75.0, 74.7, 34.7, 31.7, 28.1, 26.8, 15.0; IR (neat) 2977, 1825, 1767, 1659, 1437, 1368, 1203, 1092, 904, 792 cm−1; HRMS (FAB) Calcd for C13H19ClNOS ([M+H]) 390.0100, Found 390.0103; [α]24 −114.3 (c = 1.04, CHCl).
尚、式(5)〜(15)において、「Troc」は2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基であり、「tBu」はtert−ブチル基である。
表1によれば、Rが異なるアンモニウムベタイン(1)〜(4)を用いてエノールカーボネートを反応させた実施例1〜4では、収率、エナンチオ選択率ともに高く、特にフェニル基に置換基が結合したアンモニウムベタイン(2)、(3)、及び塩素原子を有するアンモニウムベタイン(4)を用いた実施例2、3、4では、収率、エナンチオ選択率ともにより高くなっている。また、アンモニウムベタイン(3)を用いて、Rが異なる各種のエノールカーボネートを反応させた実施例5〜14でも、収率は91%以上、エナンチオ選択率は94%以上であって、良好な結果が得られている。更に、エノールカーボネートのRがイソプロピル基である実施例9では、収率を向上させるため反応温度を40℃としたが、他と同様に収率、エナンチオ選択率ともに高いことが分かる。
実施例15(合成例5のアンモニウムベタインを用いた森田バイリスヒルマン型反応)
合成例5のアンモニウムベタイン(2mol%)及びニトロアルケン(0.15mmol)をジ−i−プロピルエーテルに溶解させた溶液(1.0mL)に、下記反応式(III)に記載のイミン(0.1mmol)(「Boc」はtert−ブトキシカルボニル基、「Me」はメチル基、「Ph」はフェニル基である。)を加え、0℃で6.5時間反応させた後、氷冷した1N塩酸に投入して反応を停止させた。次いで、水相を酢酸エチルで2回抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。その後、有機相を無水硫酸ナトリウムにより乾燥させ、濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒)により精製し、目的とする光学活性を有する化合物を得た。収率は85%であった。また、主ジアステレオマーと副ジアステレオマーとの比は19:1であり、高速液体クロマトグラフィ「DAICEL CHIRALPAK AS−H」により検定した主ジアステレオマーのエナンチオ選択率は94%、副ジアステレオマーのエナンチオ選択率は89%であった。
Figure 2011190181
尚、副生成物として、下記の式(16)で表される二重結合の位置が異なる光学活性化合物が生成していた(「Boc」はtert−ブトキシカルボニル基、「Me」はメチル基、「Ph」はフェニル基である。)。
Figure 2011190181
実施例16(合成例6のアンモニウムベタインを用いた森田バイリスヒルマン型反応)
合成例6のアンモニウムベタインを使用し、溶媒をトルエンとした他は、実施例15と同様にして、目的とする光学活性を有する化合物を得た。収率は59%であった。また、主ジアステレオマーと副ジアステレオマーとの比は12:1であり、実施例14と同様にして検定した主ジアステレオマー及び副ジアステレオマーのエナンチオ選択率は98%であった。このときも、副生成物として、上記の式(16)で表される二重結合の位置が異なる光学活性化合物が生成していた。
尚、本発明においては、前記の実施例に限られず、目的、用途等に応じて、本発明の範囲内で種々変更した実施態様とすることができる。例えば、式(1)における−NMeの「Me」は、メチル基以外の他のアルキル基等(アルケニル基、アルキニル基、アリール基は除く。)であってもよい。
本発明は、主として薬品化学及び材料化学産業等において利用することができ、例えば、医薬品、農薬、液晶及び機能性材料等の原料又はその中間体として有用な光学活性を有する化合物を合成する際に利用することができる。

Claims (6)

  1. 一般式(I)で表されるアンモニウムベタイン類及びその光学異性体をイオン性求核触媒として用いることを特徴とする光学活性を有する化合物の製造方法。
    Figure 2011190181
    [式(1)において、RとRとは同じであってもよく異なっていてもよく、各々、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基及び置換基を有するアリール基のうちの少なくとも1種である。Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はスルホニル基である。Meはメチル基である。]
  2. エノールカーボネート類のアシル転移反応、又はニトロアルケン類とイミン類との森田バイリスヒルマン型反応に適用される請求項1に記載の光学活性を有する化合物の製造方法。
  3. 前記アシル転移反応に適用され、前記Rが塩素原子であり、前記Rが水素原子である前記アンモニウムベタイン類、前記Rがフェニル基であり、前記Rが水素原子である前記アンモニウムベタイン類、前記Rがp−CF−Cであり、前記Rが水素原子である前記アンモニウムベタイン類、又は前記Rが3,5−(CF−Cであり、前記Rが水素原子である前記アンモニウムベタイン類を用いる請求項2に記載の光学活性を有する化合物の製造方法。
  4. 反応温度が10〜60℃である請求項3に記載の光学活性を有する化合物の製造方法。
  5. 前記森田バイリスヒルマン型反応に適用され、前記Rがp−CF−Cであり、前記Rがフェニル基である前記アンモニウムベタイン類、又は前記R及び前記Rがp−CF−Cである前記アンモニウムベタイン類を用いる請求項2に記載の光学活性を有する化合物の製造方法。
  6. 反応温度が−10〜30℃である請求項5に記載の光学活性を有する化合物の製造方法。
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