JP2011190135A - 結晶の製造装置、結晶の製造方法およびフィルター部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】結晶の製造装置1は、水熱合成法により人工的に結晶を製造するための装置である。結晶の製造装置1は、溶解液5、結晶原料11および種子結晶12を収納するチャンバー2を有している。また、チャンバー2内には、対流制御板3とこの対流制御板3より上方にフィルター部材4とが、それぞれチャンバー2内の空間を仕切るように設けられている。そして、フィルター部材4は、骨格部41と、骨格部41の表面に付着した不純物粒子とを有するものである。
【選択図】図1
Description
このようなデバイス用の水晶は、当初、天然水晶から切り出して製造されていたが、近年は、より良質な水晶を効率よく製造できることから、工業的に育成した人工水晶から切り出す方法が用いられている。
水熱合成法は、圧力容器(チャンバー)内において、容器下部で水晶原料を溶解液に溶解させるとともに熱対流で循環させ、容器上部に固定した種子結晶に溶解液を接触させることにより、種子結晶を育成して人工水晶を製造する方法である。
かかる問題を解決するため、特許文献1では、圧力容器内の種子結晶の収納領域よりも上方に、複数の貫通孔を備え、溶解液の対流量を制御するフィルター部材を設けることにより、フィルター部材より上方の空間における過飽和度を高めることが提案されている。これにより、フィルター部材の上方において不純物粒子の生成が促され、さらにはフィルター部材によって不純物粒子が捕捉されることにより、種子結晶に不純物粒子が付着するのを抑制している。
また、特許文献2〜5にも、不純物が人工水晶に取り込まれるのを防止する手段について開示されているものの、やはり上記の課題を解決することができない。
[適用例1]
本発明の結晶の製造装置は、容器内に、溶解液、原料および種子結晶を収納し、水熱合成法により前記種子結晶を育成する結晶の製造装置であって、
前記容器内の前記種子結晶より上部に設けられたフィルター部材を有し、
前記フィルター部材は、骨格部と、該骨格部の表面に付着させた不純物粒子とを有するものであることを特徴とする。
これにより、不純物粒子を確実に捕捉することにより、良質な結晶を効率よく製造し得る結晶の製造装置が得られる。
本発明の結晶の製造装置では、前記骨格部は、複数の板状体を積層してなる積層体で構成されていることが好ましい。
これにより、各板状体の配置をそれぞれ変更することにより、フィルター部材による遮蔽率を容易に調整することができる。
本発明の結晶の製造装置では、前記フィルター部材は、前記溶解液の対流を制御する機能を有することが好ましい。
これにより、フィルター部材の上下間において過飽和度の差を生み出すことができる。その結果、フィルター部材の上部空間において、過飽和度を高め、不純物を優先的に析出させることができるので、不純物が種子結晶に付着する確率を下げることができる。
本発明の結晶の製造装置では、前記フィルター部材による前記容器の横断面の遮蔽率は、10%以上70%以下であることが好ましい。
これにより、不純物の捕捉と種子結晶の成長に必要かつ十分な過飽和度差を形成することができる。その結果、転位等を含んだ結晶が生成されない範囲で、十分な成長速度が得られるとともに、不純物の捕捉率を最大限に高めることができる。
本発明の結晶の製造装置では、前記骨格部は、鉄または鉄基合金で構成されていることが好ましい。
これにより、骨格部は、十分な機械的強度と化学的安定性とを備えたものとなり、長期にわたる結晶の成長期間の間も、フィルター部材の骨格としての機能を維持することができる。
本発明の結晶の製造装置では、前記骨格部は、その平面視形状が、前記容器の中心点に対して点対称の関係になるよう構成されていることが好ましい。
これにより、圧力容器内の溶解液の対流の均一化が図られ、種子結晶を均一に成長させることができる。また、不純物も、フィルター部材全体で均一に捕捉されるため、捕捉が偏る場合に比べて捕捉率を高めることにもつながる。
本発明の結晶の製造装置では、前記不純物粒子は、水熱合成法により前記結晶を育成する際に得られたものであることが好ましい。
これにより、骨格部全体に均一に分布した不純物粒子を容易に生成することができるので、不純物の捕捉率やフィルター部材の製造効率の観点から有効である。
本発明の結晶の製造装置では、前記種子結晶が水晶種子であり、水晶を育成するものであることが好ましい。
これにより、不純物の捕捉率が向上し、結晶の品質向上に大きく寄与する。
[適用例9]
本発明の結晶の製造装置では、前記不純物粒子は、少なくともアクマイト粒子またはエメリューサイト粒子のうちのいずれか一方であることが好ましい。
これにより、不純物粒子を確実に捕捉することにより、良質な結晶を効率よく製造することができる。
本発明の結晶の製造方法は、オートクレーブ内に収納された種子結晶を水熱合成法により育成して結晶を製造する方法であって、
溶解液が満たされた前記オートクレーブ内のうち、前記種子結晶より上部に、骨格部と、該骨格部の表面に付着した不純物粒子とを有するフィルター部材を配置した状態で、前記種子結晶を育成することを特徴とする。
これにより、フィルター部材の上方において不純物がより析出し易くなる。その結果、溶解液中の不純物の含有率を低下させ、不純物が結晶中に取り込まれるのを防止することができる。
本発明の結晶の製造方法では、前記種子結晶を成長させる成分の前記溶解液に対する過飽和度について、前記フィルター部材の上方における前記過飽和度を、下方における前記過飽和度よりも高くすることが好ましい。
これにより、フィルター部材には、次々と不純物が析出して不純物粒子が成長していくことになるので、不純物粒子の占める面積が大きくなり、ますます不純物の捕捉率が高くなる。
本発明の結晶の製造方法では、溶解液が満たされた前記オートクレーブ内のうち、前記種子結晶より上部に、前記フィルター部材を配置し、前記種子結晶を育成した後、前記フィルター部材をそのまま用いて、前記種子結晶とは別の種子結晶を種子結晶収納部に配置し、前記別の種子結晶を育成することが好ましい。
これにより、不純物粒子を確実に捕捉することにより、良質な結晶を効率よく製造し得る結晶の製造装置に用いられるためのフィルター部材が得られる。
本発明のフィルター部材は、種子結晶を水熱合成法により育成する際に用いられるオートクレーブ内の、前記種子結晶より上部に配置されるフィルター部材であって、
骨格部と、該骨格部の表面に付着させた不純物粒子とを有することを特徴とするフィルター部材。
これにより、骨格部全体に均一に分布した不純物粒子を容易に生成することができるので、不純物の捕捉率やフィルター部材の製造効率の観点から有効である。
本発明のフィルター部材では、当該フィルター部材は、前記オートクレーブ内の前記種子結晶より上部に前記骨格部を配置した状態で、前記種子結晶を育成し、前記不純物粒子を形成することで得られたものであることが好ましい。
これにより、結晶育成の度に、フィルター部材には次々と不純物が析出して成長していくことになるので、不純物粒子の占める面積が大きくなり、ますます不純物の捕捉率が高くなる。したがって、フィルター部材を取り換えることなく使い続けることで、結晶の製造歩留まりをより高めることができる。
(結晶の製造装置およびフィルター部材)
図1は、本発明の結晶の製造装置の実施形態を示す概略図(縦断面図)、図2は、図1に示す結晶の製造装置のA−A線断面図(フィルター部材の平面図)、図3は、図2に示すフィルター部材の斜視図、図4は、図2に示すフィルター部材のB−B線断面図、図5は、フィルター部材の他の構成例示す平面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」という。
この結晶の製造装置1は、結晶の原料を溶解する溶解液5、結晶原料11および種子結晶12を収納し、鉛直方向に長い形状をなす育成容器であるチャンバー2と、このチャンバー2の外周部に設けられ、チャンバー2を加熱することにより、チャンバー2内において溶解液5に熱対流を生じさせる加熱手段9とを有している。
本体部2aの全体形状は、特に限定されないが、断面形状がほぼ円形をなす円筒形状をなしているのが好ましい。これにより、内部に収納された溶解液5を鉛直方向に容易かつ確実に熱対流させることができる。また、後述するように、チャンバー2の内部を加圧する場合には、円筒形状であれば、チャンバー2に対して優れた耐圧性を付与できる。
チャンバー2(本体部2aおよび蓋部2b)の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、高張力鋼、ステンレス鋼のような鉄系金属、チタン系金属、アルミ系金属、ニッケル系金属等が挙げられる。これらの中でも高張力鋼が好ましく用いられる。高張力鋼は、引張強度が特に高く、チャンバー2の耐圧力を特に高めることができる。
また、チャンバー2には、図示しない加圧手段が設けられている。この加圧手段は、チャンバー2内を加圧するものであり、チャンバー2内を加圧することにより、溶解液5に対する酸化ケイ素の溶解度を高めることができる。また、加圧の圧力を調整することにより、溶解液5に対する酸化ケイ素の溶解度を変化させることもできる。
ここで、水晶原料である結晶原料11は、水晶を製造するための酸化ケイ素を供給する供給源となるものである。
第2の空間22に収納される種子結晶12は、結晶を再結晶・成長させるための核となるものである。
この種子結晶12が種子水晶(水晶種子)であるときには、例えば、Y軸方向に細長い棒状の「Y棒」、Y軸方向に長くX軸方向に幅を有する板状の「Z板」等の水晶片等が用いられる。
この溶解液5には、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液、炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液のようなアルカリ溶液、硝酸アンモニウム(NH4NO3)水溶液、硝酸ナトリウム(NaNO3)水溶液、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)水溶液のような溶液等が挙げられるが、アルカリ溶液が好ましい。アルカリ溶液は、酸化ケイ素に対して特に高い溶解度を有することから、酸化ケイ素を運搬する媒体として好適である。
また、溶解液5としてアルカリ溶液を用いる場合、その溶質(アルカリ物質)の濃度は、1重量%以上10重量%以下程度であるのが好ましく、2重量%以上5重量%以下程度であるのがより好ましい。これにより、チャンバー2の腐食・劣化や、雑晶の生成を最小限に抑制しつつ、最大の水晶の析出速度を得ることができる。
対流制御板3は、第1の空間21と第2の空間22との間で対流する溶解液5の対流量を、制御する機能を有するものである。
なお、この対流制御板3では、貫通孔の大きさや数等を適宜設定することにより、溶解液5の対流量を制御することができる。
一方、対流制御板3の上方には、第2の空間22を介してフィルター部材4が収納されている。
フィルター部材4は、図示しない固定具等によりチャンバー2の内部に配置されており、第2の空間22内において、熱対流する溶解液5中に生成した不純物を捕捉して、この不純物が種子結晶12に付着するのを阻止するものである。
一般に、溶解液5中から結晶が析出する場合、核となり得る物があれば、その周囲に優先的に析出する。水熱合成法ではこれを利用して種子結晶12を成長させ、結晶を得るわけであるが、この成長過程で種子結晶12に不純物が付着すると、結晶の品質を低下させることとなる。
そこで、本発明では、第2の空間22の上部に収納するフィルター部材4として、骨格部41と、骨格部41の表面に付着させた不純物粒子42とを有する部材を用いることとした(図4参照)。
具体的には、骨格部41は複数の板状体を積層してなる積層体で構成されており、各板状体とチャンバー2の内壁面との間には隙間43が設けられている。また、板状体には育成容器の第3の空間23から第2の空間22へ至る方向に対流が通過できるように通路44が設けられている(図2参照)。なお、この通路44は、板状体に形成された貫通孔や、板状体同士の間に設けられた隙間等で構成される。
各板状体411は4つの柱状体412に対して固定されているものの、必要に応じて取り外したり、別の板状体と容易に交換することもできる。なお、図2、3の場合、各板状体411の配置や、板状体411同士の離間距離を変更することにより、前述した隙間43や通路44の大きさを制御することができる。
例えば、チャンバー2の内部空間の第3の空間23から第2の空間22へ至る方向に対して垂直な方向の断面(以下、「横断面」と称す。)において、フィルター部材4による遮蔽率は、好ましくは10%以上70%以下とされ、より好ましくは20%以上60%以下とされる。フィルター部材4の遮蔽率を前記範囲内とすることにより、不純物の捕捉と種子結晶12の成長に必要かつ十分な過飽和度差を形成することができる。その結果、転位等を含んだ結晶が生成されない範囲で、十分な成長速度が得られるとともに、不純物の捕捉率を最大限に高めることができる。
図3に示す骨格部41は、複数の板状体を積層してなる積層体で構成されているが、このような構成にすることにより、フィルター部材4が表面積を大きくなり、不純物の捕捉効率が向上する。さらには、必要に応じて、骨格部41の表面に凹凸を形成したり、粗面化処理を施すなどして、フィルター部材4の表面積を広げるようにしてもよい。
このうち、鉄または鉄基合金が特に好ましい。これにより、骨格部41は、十分な機械的強度および化学的安定性を備えたものとなり、長期にわたる結晶の成長期間の間も、フィルター部材4の骨格としての機能を維持することができる。
また、各板状体の配置をそれぞれ変更することにより、フィルター部材4による遮蔽率を容易に調整することができる。これにより、結晶の成長過程の途中で、フィルター部材4の遮蔽率を変更する等の操作が容易に行えるため、例えば結晶の成長段階に応じて、成長速度と不純物の捕捉率との関係を調整する等の制御を行うことができる。その結果、より高品質な結晶の製造が可能になる。
骨格部41を構成する板状体は、平面視において前述した隙間43や通路44を備えているが、形状において特に制約はない。例えば、長方形、正方形、菱形のような四辺形、真円、楕円のような円形、多角形、十字形等が挙げられる。
また、骨格部41を構成する複数の板状体は、板状体ごとに形状が同じでもよいが、異なっていてもよい。さらに、板状体ごとの形状が同じ場合でも、板状体ごとに面方向の角度、面方向の位置、隣り合う板状体との離間距離、傾き等を異ならせるようにしてもよい。
一方、骨格部41に付着させる不純物粒子42は、製造する結晶の種類に応じて異なり、例えば水晶を製造する場合は、アクマイト、エメリューサイト、ペクトライト等の粒子が不純物粒子42として知られている。
この方法によれば、やや時間を要するものの、骨格部41の全体に均一に分布した不純物粒子42を容易に生成することができるので、不純物の捕捉率やフィルター部材4の製造効率の観点から有効である。
また、各種成膜方法を利用して、骨格部41の表面に不純物粒子42を形成するようにしてもよい。かかる成膜方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等の各種物理的成膜法、プラズマCVD法、熱CVD法等の各種化学的成膜法等が挙げられる。
チャンバー2の外周部には、その長手方向に沿って加熱手段9が設けられている。
各ヒーター91〜93は、それぞれ、チャンバー2の外周面に巻き付けられるように取り付けられている。これにより、第1の空間21、第2の空間22および第3の空間23内の溶解液5を、それぞれチャンバー2の周方向においてムラなく加熱し、溶解液5に鉛直方向の熱対流を確実に生じさせることができる。
このようなヒーター91〜93は、例えば、シーズヒーター等で構成することができる。このシーズヒーターは、発熱線が金属管中に封入されてなるヒーターであるため、発熱線の酸化等による劣化を抑制し、長期間の連続加熱が可能である。
なお、各ヒーター91〜93は必要に応じて設ければよく、一部を省略してもよい。
次に、上記のような結晶の製造装置1の作用(本発明に係る結晶の製造方法)について説明する。
[1] まず、チャンバー2内の第1の空間21に結晶原料11を入れるとともに、第2の空間22に種子結晶12を吊り下げる。また、対流制御板3とフィルター部材4を取り付け、チャンバー2内に溶解液5を所定量満たす。
このとき、溶解液5の量(チャンバー2の容積に対する充填率)としては、第3の空間23の少なくとも一部が満たされる量であり、60%以上95%以下程度であるのが好ましく、70%以上85%以下程度であるのがより好ましい。
チャンバー2内部を加圧する際の圧力としては、50MPa以上200MPa以下程度であるのが好ましく、90MPa以上150MPa以下程度であるのがより好ましい。チャンバー2内の圧力が前記範囲を超えると、チャンバー2の耐圧力を高めるために、チャンバー2の構成材料を引張強度のより高い高価な材料に変更したり、チャンバー2の肉厚を厚くする必要が生じ、製造コストの増大につながる。これに対し、チャンバー2内の圧力が前記範囲を下回ると、酸化ケイ素の溶解液5に対する溶解度が低下し、水晶の析出速度が低下するおそれがある。
加熱の際には、チャンバー2内の第1の空間21、第2の空間22および第3の空間23の溶解液5の温度が、それぞれ異なる温度になるように加熱するのが好ましい。
このような温度差を設けた場合、第1の空間21内の溶解液5の温度は、好ましくは360℃以上410℃以下程度、第2の空間22内の溶解液5の温度は、好ましくは320℃以上360℃以下程度、第3の空間23内の溶解液5の温度は、好ましくは300℃以上340℃以下程度とされる。
放置期間(成長期間)は、必要とする水晶(育成する結晶)のサイズや過飽和状態となった水晶(酸化ケイ素)が溶解液から析出する析出速度によっても異なるが、1ヶ月以上6ヶ月以下程度が好ましい。
以上のようにして、結晶が得られる。
このようにして結晶を得た後は、第2の空間22から結晶を取り出す。その後、第2の空間22には別の種子結晶12を吊り下げて、再び前記工程[1]〜[4]を行い、結晶を製造する。
なお、以上のような結晶の製造方法では、例えば、工程[2]と工程[3]とを同時に、または、順序を逆にして行うこともできる。また、任意の工程を追加するようにしてもよい。
育成により得られた結晶は、種々の分野で用いられる。例えば、水晶は、水晶発振器、水晶振動子のような水晶デバイス、光学フィルター、波長板のような光学デバイス、SAWフィルターのような弾性表面波素子等の各種デバイスの原材料として好適に用いられる。
ところで、フィルター部材4には、図2に示す構成のもの他、例えば、図5に示す構成のものを用いることができる。
図5(a)に示すフィルター部材4は、チャンバー2の内径より若干小さい外径の円盤状をなす網状体45が複数枚積層した積層体で構成されている。そして、これらの各網状体45には、ほぼ全体に多数の貫通孔451が設けられている。この貫通孔451は、フィルター部材4の中央部と周辺部とで配置密度が異なっている。これにより、フィルター部材4を通過する溶解液5の抵抗を調整し、チャンバー2の横断面における中央部と周辺部の対流量をそれぞれ制御することができる。
また、各網状体46、47は、仮に不純物粒子42が骨格部41から脱落したとしても、それを第2の空間22へと落下させないよう、不純物粒子42を濾し取ることもできる。その結果、脱落した不純物粒子42が結晶中に取り込まれるのを防止することができる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明の結晶の製造装置およびフィルター部材を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
1.人工水晶の作製
(実施例1)
図1および図2に示す人工水晶の製造装置を用いて人工水晶を作製した。作製時の条件を以下に示す。
チャンバーの構成材料 :高張力鋼
チャンバー内の圧力 :130MPa
溶解液の組成 :水酸化ナトリウム水溶液
溶解液の濃度 :4重量%
溶解液の充填率 :85%
種子結晶の種類 :Z板水晶
対流制御板の開口率 :10%
フィルター部材(骨格部)の遮蔽率 :5%
フィルター部材(骨格部)の板状体の積層数:50枚
フィルター部材(骨格部)の構成材料 :軟鋼材
骨格部の表面に形成する不純物粒子の組成:エメリューサイト
不純物粒子の平均粒径 :100μm
第1の空間内の溶解液の温度:390℃
第2の空間内の溶解液の温度:350℃
第3の空間内の溶解液の温度:335℃
育成期間 :3ヶ月
人工結晶の作製個数 :1500個
なお、フィルター部材については、その遮蔽率を5%としたことにより、溶解液の対流に対して影響を及ぼさないものとした。
フィルター部材の遮蔽率を50%としたことにより、溶解液の対流を規制し、制御する機能を持たせた以外は、実施例1と同様にして人工水晶を作製した。
(比較例1)
フィルター部材を省略した以外は、前記実施例1と同様にして人工水晶を作製した。
(比較例2)
表面に不純物粒子が付着していないフィルター部材(骨格部)を用いるようにした以外は、前記実施例2と同様にして人工水晶を作製した。
実施例および比較例で得られた各1500個の人工水晶について、それぞれ人工水晶中に含まれる異物の含有密度を評価した。なお、この評価は、JIS C 6704に規定の試験方法および評価基準にしたがって行った。表1に評価基準を示す。
また、良品中における等級I、等級Ibおよび等級Iaの内訳を比較したところ、表2に示すように、実施例1、2では、比較例1、2に比べて、等級Iの割合が低下している一方、最も高品質である等級Iaの割合が高くなっている。すなわち、実施例1、2では、従来に比べて、異物の取り込みを減少させることが実現できた結果、良品率が向上しただけでなく、良品における等級の底上げを図ることもできた。
以上のことから、本発明によれば、良質な結晶を高い製造歩留まりで効率よく製造できることが明らかとなった。
Claims (14)
- 容器内に、溶解液、原料および種子結晶を収納し、水熱合成法により前記種子結晶を育成する結晶の製造装置であって、
前記容器内の前記種子結晶より上部に設けられたフィルター部材を有し、
前記フィルター部材は、骨格部と、該骨格部の表面に付着させた不純物粒子とを有するものであることを特徴とする結晶の製造装置。 - 前記骨格部は、複数の板状体を積層してなる積層体で構成されている請求項1に記載の結晶の製造装置。
- 前記フィルター部材は、前記溶解液の対流を制御する機能を有する請求項1または2に記載の結晶の製造装置。
- 前記フィルター部材による前記容器の横断面の遮蔽率は、10%以上70%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の結晶の製造装置。
- 前記骨格部は、鉄または鉄基合金で構成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の結晶の製造装置。
- 前記骨格部は、その平面視形状が、前記容器の中心点に対して点対称の関係になるよう構成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の結晶の製造装置。
- 前記不純物粒子は、水熱合成法により前記結晶を育成する際に得られたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の結晶の製造装置。
- 前記種子結晶が水晶種子であり、水晶を育成するものである請求項1ないし7のいずれかに記載の結晶の製造装置。
- 前記不純物粒子は、少なくともアクマイト粒子またはエメリューサイト粒子のうちのいずれか一方である請求項8に記載の結晶の製造装置。
- オートクレーブ内に収納された種子結晶を水熱合成法により育成して結晶を製造する方法であって、
溶解液が満たされた前記オートクレーブ内のうち、前記種子結晶より上部に、骨格部と、該骨格部の表面に付着した不純物粒子とを有するフィルター部材を配置した状態で、前記種子結晶を育成することを特徴とする結晶の製造方法。 - 前記種子結晶を成長させる成分の前記溶解液に対する過飽和度について、前記フィルター部材の上方における前記過飽和度を、下方における前記過飽和度よりも高くする請求項10に記載の結晶の製造方法。
- 溶解液が満たされた前記オートクレーブ内のうち、前記種子結晶より上部に、前記フィルター部材を配置し、前記種子結晶を育成した後、前記フィルター部材をそのまま用いて、前記種子結晶とは別の種子結晶を種子結晶収納部に配置し、前記別の種子結晶を育成する請求項10または11に記載の結晶の製造方法。
- 種子結晶を水熱合成法により育成する際に用いられるオートクレーブ内の、前記種子結晶より上部に配置されるフィルター部材であって、
骨格部と、該骨格部の表面に付着させた不純物粒子とを有することを特徴とするフィルター部材。 - 当該フィルター部材は、前記オートクレーブ内の前記種子結晶より上部に前記骨格部を配置した状態で、前記種子結晶を育成し、前記不純物粒子を形成することで得られたものである請求項13に記載のフィルター部材。
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