JP2011190135A - 結晶の製造装置、結晶の製造方法およびフィルター部材 - Google Patents

結晶の製造装置、結晶の製造方法およびフィルター部材 Download PDF

Info

Publication number
JP2011190135A
JP2011190135A JP2010056519A JP2010056519A JP2011190135A JP 2011190135 A JP2011190135 A JP 2011190135A JP 2010056519 A JP2010056519 A JP 2010056519A JP 2010056519 A JP2010056519 A JP 2010056519A JP 2011190135 A JP2011190135 A JP 2011190135A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
crystal
filter member
solution
seed crystal
space
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2010056519A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011190135A5 (ja
Inventor
Motohide Hatanaka
基秀 畑中
Koichi Shibata
浩一 柴田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Seiko Epson Corp
Original Assignee
Seiko Epson Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Seiko Epson Corp filed Critical Seiko Epson Corp
Priority to JP2010056519A priority Critical patent/JP2011190135A/ja
Publication of JP2011190135A publication Critical patent/JP2011190135A/ja
Publication of JP2011190135A5 publication Critical patent/JP2011190135A5/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)

Abstract

【課題】不純物粒子を確実に捕捉することにより、良質な結晶を効率よく製造し得る結晶の製造装置および結晶の製造方法、およびかかる結晶の製造装置に用いられるフィルター部材を提供すること。
【解決手段】結晶の製造装置1は、水熱合成法により人工的に結晶を製造するための装置である。結晶の製造装置1は、溶解液5、結晶原料11および種子結晶12を収納するチャンバー2を有している。また、チャンバー2内には、対流制御板3とこの対流制御板3より上方にフィルター部材4とが、それぞれチャンバー2内の空間を仕切るように設けられている。そして、フィルター部材4は、骨格部41と、骨格部41の表面に付着した不純物粒子とを有するものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、結晶の製造装置、結晶の製造方法およびフィルター部材に関するものである。
酸化ケイ素の単結晶である水晶は、圧電デバイスや光学デバイスの原材料として、電子機器、通信機器、光学機器等に大量に使用されている。
このようなデバイス用の水晶は、当初、天然水晶から切り出して製造されていたが、近年は、より良質な水晶を効率よく製造できることから、工業的に育成した人工水晶から切り出す方法が用いられている。
この人工水晶を製造する方法としては、結晶の製造方法の一つである水熱合成法(水熱温度差法、水熱育成法、ともいう)が、例えば、特許文献1により提案されている。
水熱合成法は、圧力容器(チャンバー)内において、容器下部で水晶原料を溶解液に溶解させるとともに熱対流で循環させ、容器上部に固定した種子結晶に溶解液を接触させることにより、種子結晶を育成して人工水晶を製造する方法である。
人工水晶の育成法について簡単に説明すると、人工水晶の育成は水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を充填したオートクレーブと呼ばれる高圧容器内において、高温高圧下で育成するいわゆる水熱合成法が一般的である。この育成法の特徴は、高圧容器内の下部を高温部、上部を低温部として、高圧容器内に温度差を設けることにより、高圧容器下部の高温部でラスカ(屑水晶)と呼ばれる水晶原材料を溶融させて、高温溶液の対流を生じさせることである。この対流により前記高温溶液は高圧容器上部の低温部に達し、冷却して過飽和溶液となり、予め高圧容器上部の低温部に吊してある水晶の種子結晶上に過飽和状態となった酸化ケイ素(SiO)の結晶を析出して結晶が成長するのである。
ところが、水熱合成法では、溶解液中に浮遊するアクマイト等の不純物が成長過程の人工水晶中に取り込まれるという問題がある。このような不純物を含む人工水晶は、格子欠陥や転位を発生させ、人工水晶の品質を低下させる主な原因となっている。
かかる問題を解決するため、特許文献1では、圧力容器内の種子結晶の収納領域よりも上方に、複数の貫通孔を備え、溶解液の対流量を制御するフィルター部材を設けることにより、フィルター部材より上方の空間における過飽和度を高めることが提案されている。これにより、フィルター部材の上方において不純物粒子の生成が促され、さらにはフィルター部材によって不純物粒子が捕捉されることにより、種子結晶に不純物粒子が付着するのを抑制している。
しかしながら、このフィルター部材で、不純物粒子を完全に捕捉することは困難である。すなわち、不純物粒子は微小であり、しかも溶解液の対流に乗って圧力容器内を移動するため、溶解液中にはフィルター部材で捕捉しきれない不純物粒子が多数存在しており、これが成長過程の人工水晶に取り込まれる可能性がある。
また、特許文献2〜5にも、不純物が人工水晶に取り込まれるのを防止する手段について開示されているものの、やはり上記の課題を解決することができない。
特開2007−31254号公報 特開昭55−51800号公報 特開昭55−56089号公報 特開平7−133182号公報 特開2003−277182号公報
本発明の目的は、不純物粒子を確実に捕捉することにより、良質な結晶を効率よく製造し得る結晶の製造装置および結晶の製造方法、およびかかる結晶の製造装置に用いられるフィルター部材を提供することにある。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本発明の結晶の製造装置は、容器内に、溶解液、原料および種子結晶を収納し、水熱合成法により前記種子結晶を育成する結晶の製造装置であって、
前記容器内の前記種子結晶より上部に設けられたフィルター部材を有し、
前記フィルター部材は、骨格部と、該骨格部の表面に付着させた不純物粒子とを有するものであることを特徴とする。
これにより、不純物粒子を確実に捕捉することにより、良質な結晶を効率よく製造し得る結晶の製造装置が得られる。
[適用例2]
本発明の結晶の製造装置では、前記骨格部は、複数の板状体を積層してなる積層体で構成されていることが好ましい。
これにより、各板状体の配置をそれぞれ変更することにより、フィルター部材による遮蔽率を容易に調整することができる。
[適用例3]
本発明の結晶の製造装置では、前記フィルター部材は、前記溶解液の対流を制御する機能を有することが好ましい。
これにより、フィルター部材の上下間において過飽和度の差を生み出すことができる。その結果、フィルター部材の上部空間において、過飽和度を高め、不純物を優先的に析出させることができるので、不純物が種子結晶に付着する確率を下げることができる。
[適用例4]
本発明の結晶の製造装置では、前記フィルター部材による前記容器の横断面の遮蔽率は、10%以上70%以下であることが好ましい。
これにより、不純物の捕捉と種子結晶の成長に必要かつ十分な過飽和度差を形成することができる。その結果、転位等を含んだ結晶が生成されない範囲で、十分な成長速度が得られるとともに、不純物の捕捉率を最大限に高めることができる。
[適用例5]
本発明の結晶の製造装置では、前記骨格部は、鉄または鉄基合金で構成されていることが好ましい。
これにより、骨格部は、十分な機械的強度と化学的安定性とを備えたものとなり、長期にわたる結晶の成長期間の間も、フィルター部材の骨格としての機能を維持することができる。
[適用例6]
本発明の結晶の製造装置では、前記骨格部は、その平面視形状が、前記容器の中心点に対して点対称の関係になるよう構成されていることが好ましい。
これにより、圧力容器内の溶解液の対流の均一化が図られ、種子結晶を均一に成長させることができる。また、不純物も、フィルター部材全体で均一に捕捉されるため、捕捉が偏る場合に比べて捕捉率を高めることにもつながる。
[適用例7]
本発明の結晶の製造装置では、前記不純物粒子は、水熱合成法により前記結晶を育成する際に得られたものであることが好ましい。
これにより、骨格部全体に均一に分布した不純物粒子を容易に生成することができるので、不純物の捕捉率やフィルター部材の製造効率の観点から有効である。
[適用例8]
本発明の結晶の製造装置では、前記種子結晶が水晶種子であり、水晶を育成するものであることが好ましい。
これにより、不純物の捕捉率が向上し、結晶の品質向上に大きく寄与する。
[適用例9]
本発明の結晶の製造装置では、前記不純物粒子は、少なくともアクマイト粒子またはエメリューサイト粒子のうちのいずれか一方であることが好ましい。
これにより、不純物粒子を確実に捕捉することにより、良質な結晶を効率よく製造することができる。
[適用例10]
本発明の結晶の製造方法は、オートクレーブ内に収納された種子結晶を水熱合成法により育成して結晶を製造する方法であって、
溶解液が満たされた前記オートクレーブ内のうち、前記種子結晶より上部に、骨格部と、該骨格部の表面に付着した不純物粒子とを有するフィルター部材を配置した状態で、前記種子結晶を育成することを特徴とする。
これにより、フィルター部材の上方において不純物がより析出し易くなる。その結果、溶解液中の不純物の含有率を低下させ、不純物が結晶中に取り込まれるのを防止することができる。
[適用例11]
本発明の結晶の製造方法では、前記種子結晶を成長させる成分の前記溶解液に対する過飽和度について、前記フィルター部材の上方における前記過飽和度を、下方における前記過飽和度よりも高くすることが好ましい。
これにより、フィルター部材には、次々と不純物が析出して不純物粒子が成長していくことになるので、不純物粒子の占める面積が大きくなり、ますます不純物の捕捉率が高くなる。
[適用例12]
本発明の結晶の製造方法では、溶解液が満たされた前記オートクレーブ内のうち、前記種子結晶より上部に、前記フィルター部材を配置し、前記種子結晶を育成した後、前記フィルター部材をそのまま用いて、前記種子結晶とは別の種子結晶を種子結晶収納部に配置し、前記別の種子結晶を育成することが好ましい。
これにより、不純物粒子を確実に捕捉することにより、良質な結晶を効率よく製造し得る結晶の製造装置に用いられるためのフィルター部材が得られる。
[適用例13]
本発明のフィルター部材は、種子結晶を水熱合成法により育成する際に用いられるオートクレーブ内の、前記種子結晶より上部に配置されるフィルター部材であって、
骨格部と、該骨格部の表面に付着させた不純物粒子とを有することを特徴とするフィルター部材。
これにより、骨格部全体に均一に分布した不純物粒子を容易に生成することができるので、不純物の捕捉率やフィルター部材の製造効率の観点から有効である。
[適用例14]
本発明のフィルター部材では、当該フィルター部材は、前記オートクレーブ内の前記種子結晶より上部に前記骨格部を配置した状態で、前記種子結晶を育成し、前記不純物粒子を形成することで得られたものであることが好ましい。
これにより、結晶育成の度に、フィルター部材には次々と不純物が析出して成長していくことになるので、不純物粒子の占める面積が大きくなり、ますます不純物の捕捉率が高くなる。したがって、フィルター部材を取り換えることなく使い続けることで、結晶の製造歩留まりをより高めることができる。
本発明の結晶の製造装置の実施形態を示す概略図(縦断面図)である。 図1に示す結晶の製造装置のA−A線断面図(フィルター部材の平面図)である。 図2に示すフィルター部材の斜視図である。 図2に示すフィルター部材のB−B線断面図である。 フィルター部材の他の構成例を示す平面図である。
以下、本発明の結晶の製造装置、結晶の製造方法およびフィルター部材を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
(結晶の製造装置およびフィルター部材)
図1は、本発明の結晶の製造装置の実施形態を示す概略図(縦断面図)、図2は、図1に示す結晶の製造装置のA−A線断面図(フィルター部材の平面図)、図3は、図2に示すフィルター部材の斜視図、図4は、図2に示すフィルター部材のB−B線断面図、図5は、フィルター部材の他の構成例示す平面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」という。
図1に示す結晶の製造装置(オートクレーブ)1は、水熱合成法により結晶を製造するための装置である。
この結晶の製造装置1は、結晶の原料を溶解する溶解液5、結晶原料11および種子結晶12を収納し、鉛直方向に長い形状をなす育成容器であるチャンバー2と、このチャンバー2の外周部に設けられ、チャンバー2を加熱することにより、チャンバー2内において溶解液5に熱対流を生じさせる加熱手段9とを有している。
ここで、水熱合成法により人工的に製造可能な結晶としては、酸化ケイ素の単結晶(水晶)、酸化鉄の単結晶(マグネタイト)、酸化アルミニウムの単結晶(コランダム)、酸化亜鉛の単結晶、硫化亜鉛の単結晶等が挙げられる。以下においては、水晶の製造装置および製造方法を例に説明するが、他の単結晶の製造装置および製造方法については、原料や溶解液、製造条件等が異なる以外、水晶の場合と同様である。
図1に示すチャンバー2は、有底筒状の本体部2aと、本体部2aの上部開口を密閉する蓋部2bとで構成されている。
本体部2aの全体形状は、特に限定されないが、断面形状がほぼ円形をなす円筒形状をなしているのが好ましい。これにより、内部に収納された溶解液5を鉛直方向に容易かつ確実に熱対流させることができる。また、後述するように、チャンバー2の内部を加圧する場合には、円筒形状であれば、チャンバー2に対して優れた耐圧性を付与できる。
本体部2aの寸法は、好ましくは内径300〜1000mm程度、高さ(長さ)5〜20m程度とされる。
チャンバー2(本体部2aおよび蓋部2b)の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、高張力鋼、ステンレス鋼のような鉄系金属、チタン系金属、アルミ系金属、ニッケル系金属等が挙げられる。これらの中でも高張力鋼が好ましく用いられる。高張力鋼は、引張強度が特に高く、チャンバー2の耐圧力を特に高めることができる。
チャンバー2の耐圧力としては、特に限定されないが、50MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。水熱合成法では、チャンバー2内に高い圧力を付与することで、溶解液5中により多量の酸化ケイ素(水晶、SiO)を溶解する必要があるが、上記耐圧力であれば、数ヶ月の長期間に渡って高い圧力が付与された場合にも、チャンバー2の破損を確実に防止することができる。
また、チャンバー2(特に、本体部2a)の内壁は、溶解液5に対する耐食性がより高い材料で構成するようにしてもよい。このような材料としては、例えば、フッ素樹脂のような樹脂材料、金、白金のような貴金属材料等が挙げられる。
また、チャンバー2には、図示しない加圧手段が設けられている。この加圧手段は、チャンバー2内を加圧するものであり、チャンバー2内を加圧することにより、溶解液5に対する酸化ケイ素の溶解度を高めることができる。また、加圧の圧力を調整することにより、溶解液5に対する酸化ケイ素の溶解度を変化させることもできる。
また、チャンバー2の上部(蓋部2b)には、圧力計27、安全弁28が備えられている。圧力計27により、チャンバー2内の圧力をモニターすることで、チャンバー2内を所定の圧力に維持することができる。また、所定の圧力を超えた場合に安全弁28が自動的に圧力を解放することで、不要な圧力によるチャンバー2の破損を防止することができる。
チャンバー2の内部には、対流制御板(バッフル板)3と、その上方のフィルター部材4とが、それぞれチャンバー2内の空間を仕切るように設けられている。これにより、チャンバー2内には、対流制御板3より下方の第1の空間21と、対流制御板3とフィルター部材4との間の第2の空間22と、フィルター部材4より上方の第3の空間23とが画成されている。
これらの空間のうち、第1の空間21には、結晶原料11が収納され、第2の空間22には、図示しない治具等により種子結晶12が固定または吊り下げられることにより収納される。そして、通常、第1の空間21、第2の空間22および第3の空間23に溶解液5が満たされている。
ここで、水晶原料である結晶原料11は、水晶を製造するための酸化ケイ素を供給する供給源となるものである。
この結晶原料11には、例えば、天然水晶の小片であるラスカが用いられる。また、水晶以外の結晶を育成する場合には、各種子結晶の成分を含む鉱物等を用いればよい。
第2の空間22に収納される種子結晶12は、結晶を再結晶・成長させるための核となるものである。
この種子結晶12が種子水晶(水晶種子)であるときには、例えば、Y軸方向に細長い棒状の「Y棒」、Y軸方向に長くX軸方向に幅を有する板状の「Z板」等の水晶片等が用いられる。
溶解液5は、第1の空間21に収納された結晶原料11から溶解した酸化ケイ素を、第1の空間21から第2の空間22や第3の空間23へと運搬する媒体として機能する。
この溶解液5には、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液、炭酸ナトリウム(NaCO)水溶液のようなアルカリ溶液、硝酸アンモニウム(NHNO)水溶液、硝酸ナトリウム(NaNO)水溶液、硝酸カルシウム(Ca(NO)水溶液のような溶液等が挙げられるが、アルカリ溶液が好ましい。アルカリ溶液は、酸化ケイ素に対して特に高い溶解度を有することから、酸化ケイ素を運搬する媒体として好適である。
また、アルカリ溶液の中でも、特に水酸化ナトリウム水溶液または炭酸ナトリウム水溶液を用いるのが好ましい。これらのアルカリ溶液は、化学的な安定性が高く、比較的安価であるため、酸化ケイ素を運搬する媒体として特に好適である。
また、溶解液5としてアルカリ溶液を用いる場合、その溶質(アルカリ物質)の濃度は、1重量%以上10重量%以下程度であるのが好ましく、2重量%以上5重量%以下程度であるのがより好ましい。これにより、チャンバー2の腐食・劣化や、雑晶の生成を最小限に抑制しつつ、最大の水晶の析出速度を得ることができる。
対流制御板3は、第1の空間21と第2の空間22との間で対流する溶解液5の対流量を、制御する機能を有するものである。
本実施形態の対流制御板3は、溶解液5の通過を許容する貫通孔が複数形成された板状体のもので構成されている。これにより、熱対流に伴って溶解液5が第1の空間21から第2の空間22へと上昇、および、第2の空間22から第1の空間21へと下降することができる。また、これにより、第1の空間21と第2の空間22との間に、前記対流量に応じた温度差を形成することができる。
なお、この対流制御板3では、貫通孔の大きさや数等を適宜設定することにより、溶解液5の対流量を制御することができる。
対流制御板3の貫通孔の開口率は、目的とする溶解液5の対流量に応じて適宜設定され、特に限定されないが、3%以上50%以下程度であるのが好ましく、5%以上40%以下程度であるのがより好ましい。これにより、溶解液5の熱対流を適度に制御して、対流制御板3で仕切られる上下の各空間(第1の空間21と第2の空間22)の温度差を最適な範囲内に維持することができる。その結果、第1の空間21と第2の空間22との間で、溶解液5に対する酸化ケイ素の過飽和度に差が生じさせ、水晶の析出をより確実に制御することが可能となる。具体的には、第2の空間22における溶解液5に対する酸化ケイ素の過飽和度を、第1の空間21における溶解液5に対する酸化ケイ素の過飽和度より高くすることにより、過飽和状態となった酸化ケイ素を種子結晶12の表面に優先的に析出させることができる。なお、以下では、溶解液5に対する酸化ケイ素の過飽和度を、省略して「過飽和度」ともいう。
このような対流制御板3の構成材料としては、例えば、チャンバー2の構成材料で挙げた材料と同様の材料を用いることができる。
一方、対流制御板3の上方には、第2の空間22を介してフィルター部材4が収納されている。
フィルター部材4は、図示しない固定具等によりチャンバー2の内部に配置されており、第2の空間22内において、熱対流する溶解液5中に生成した不純物を捕捉して、この不純物が種子結晶12に付着するのを阻止するものである。
ここで、上記不純物とは、結晶にとって適正な成長を阻害する物質またはその物質を含む結晶のことをいう。例えば、水晶を製造する場合の不純物としては、結晶原料11に含まれる酸化ケイ素以外の成分、溶解液5によって溶出したチャンバー2の材料成分等が挙げられる。この不純物は、水晶の成長に悪影響を及ぼし、品質を低下させる。
一般に、溶解液5中から結晶が析出する場合、核となり得る物があれば、その周囲に優先的に析出する。水熱合成法ではこれを利用して種子結晶12を成長させ、結晶を得るわけであるが、この成長過程で種子結晶12に不純物が付着すると、結晶の品質を低下させることとなる。
そこで、本発明では、第2の空間22の上部に収納するフィルター部材4として、骨格部41と、骨格部41の表面に付着させた不純物粒子42とを有する部材を用いることとした(図4参照)。
このフィルター部材4は、表面に不純物粒子42を有しているため、溶解液5中の不純物は、種子結晶12に付着して析出するよりも、この不純物粒子42の表面に優先的に析出して付着することとなる。その結果、溶解液5中の不純物は、種子結晶12に付着するよりも先にフィルター部材4で捕捉されることになるので、溶解液5中の不純物含有量を減少させることができる。このようにして、不純物が種子結晶12に付着する確率を大幅に減少させることにより、水晶の品質の低下を防止することに至ったのである。
上記のようにフィルター部材4を構成する骨格部41の表面に不純物粒子42を設けたことにより、従来は捕捉し切れなかった微小な不純物や溶解液の対流に乗って高速で移動しているような不純物をも、確実に捕捉することができるので、単に骨格部41を設けた場合に比べて、不純物の捕捉率を格段に高めることができるのである。以下、フィルター部材4について詳述する。
図1に示すフィルター部材4は、チャンバー2の上下に長い筒状の育成容器の内部空間の断面方向に横切るように配された板状をなしている。
具体的には、骨格部41は複数の板状体を積層してなる積層体で構成されており、各板状体とチャンバー2の内壁面との間には隙間43が設けられている。また、板状体には育成容器の第3の空間23から第2の空間22へ至る方向に対流が通過できるように通路44が設けられている(図2参照)。なお、この通路44は、板状体に形成された貫通孔や、板状体同士の間に設けられた隙間等で構成される。
より具体的には、図2、3に示すように、所定の間隔で厚さ方向に並べられた複数の板状体411と、これらの板状体411の端部を固定する4つの柱状体412とで、骨格部41が構成されている。
各板状体411は4つの柱状体412に対して固定されているものの、必要に応じて取り外したり、別の板状体と容易に交換することもできる。なお、図2、3の場合、各板状体411の配置や、板状体411同士の離間距離を変更することにより、前述した隙間43や通路44の大きさを制御することができる。
この隙間43や通路44は、チャンバー2内を対流する溶解液5の対流経路となっており、対流による過飽和度の差の生成に寄与している。すなわち、隙間43や通路44の大きさを調整することにより、溶解液5の対流を制御することができる。これを利用すれば、フィルター部材4は、単に不純物を析出させ易い不純物粒子42を有しているという特徴のみでなく、フィルター部材4の上下間において過飽和度の差を生み出すことができる。すなわち、図1に示すフィルター部材4は、種子結晶12が存在していない第3の空間23の過飽和度を、第2の空間22の過飽和度よりも高める機能を有する。この機能により、第3の空間23において、不純物粒子42を核にして不純物を優先的に析出させることができ、不純物が第2の空間22の種子結晶12に付着する確率のさらなる低下を図ることができる。
この場合、フィルター部材4の上下間で過飽和度に差が生じるのであれば、隙間43や通路44の大きさは特に限定されないものの、種子結晶12の成長速度や不純物の捕捉率の観点から、以下のように設定される。
例えば、チャンバー2の内部空間の第3の空間23から第2の空間22へ至る方向に対して垂直な方向の断面(以下、「横断面」と称す。)において、フィルター部材4による遮蔽率は、好ましくは10%以上70%以下とされ、より好ましくは20%以上60%以下とされる。フィルター部材4の遮蔽率を前記範囲内とすることにより、不純物の捕捉と種子結晶12の成長に必要かつ十分な過飽和度差を形成することができる。その結果、転位等を含んだ結晶が生成されない範囲で、十分な成長速度が得られるとともに、不純物の捕捉率を最大限に高めることができる。
また、上述したような観点から、フィルター部材4は、できるだけ表面積が大きい方が好ましい。これにより、より多くの不純物粒子42と溶解液5との接触機会が確保されるので、溶解液5から析出する不純物の捕捉効率を高めることができる。
図3に示す骨格部41は、複数の板状体を積層してなる積層体で構成されているが、このような構成にすることにより、フィルター部材4が表面積を大きくなり、不純物の捕捉効率が向上する。さらには、必要に応じて、骨格部41の表面に凹凸を形成したり、粗面化処理を施すなどして、フィルター部材4の表面積を広げるようにしてもよい。
骨格部41を構成する材料は、不純物粒子42を固定可能な材料であれば特に限定されないが、鉄、チタン、アルミニウム、ニッケル、またはこれらの合金のような各種金属系材料、アルミナ、ジルコニア等の各種セラミックス系材料等が挙げられ、これらの複合材料も用いられる。
このうち、鉄または鉄基合金が特に好ましい。これにより、骨格部41は、十分な機械的強度および化学的安定性を備えたものとなり、長期にわたる結晶の成長期間の間も、フィルター部材4の骨格としての機能を維持することができる。
骨格部41を構成する板状体の枚数は、特に限定されないが、2枚以上100枚以下であるのが好ましく、5枚以上50枚以下であるのがより好ましい。これにより、溶解液5の対流がフィルター部材4によって阻害されるのを防止しつつ、フィルター部材4の表面積を十分に確保することができる。
また、各板状体の配置をそれぞれ変更することにより、フィルター部材4による遮蔽率を容易に調整することができる。これにより、結晶の成長過程の途中で、フィルター部材4の遮蔽率を変更する等の操作が容易に行えるため、例えば結晶の成長段階に応じて、成長速度と不純物の捕捉率との関係を調整する等の制御を行うことができる。その結果、より高品質な結晶の製造が可能になる。
なお、第3の空間23の容積は、フィルター部材4の位置に応じて決まり、好ましくはチャンバー2内の容積の3%以上20%以下とするのが好ましく、5%以上15%以下とするのがより好ましい。これにより、不純物の捕捉に必要かつ十分な大きさの第3の空間23を確保することができる。
骨格部41を構成する板状体は、平面視において前述した隙間43や通路44を備えているが、形状において特に制約はない。例えば、長方形、正方形、菱形のような四辺形、真円、楕円のような円形、多角形、十字形等が挙げられる。
また、骨格部41は、その平面視形状が、チャンバー2の中心軸(中心点)O(図2参照)に対して点対称の関係になるよう構成されているのが好ましい。これにより、チャンバー2内の溶解液の対流の均一化が図られ、種子結晶12を均一に成長させることができる。また、不純物も、フィルター部材4全体で均一に捕捉されるため、捕捉が偏る場合に比べて捕捉率を高めることにもつながる。
なお、対流のパターン(方向)によっては、骨格部41の平面視形状は、チャンバー2の中心軸と平行な任意の面に対して線対称の関係になるよう構成されていてもよい。
また、骨格部41を構成する複数の板状体は、板状体ごとに形状が同じでもよいが、異なっていてもよい。さらに、板状体ごとの形状が同じ場合でも、板状体ごとに面方向の角度、面方向の位置、隣り合う板状体との離間距離、傾き等を異ならせるようにしてもよい。
図2に示す骨格部41の平面視形状は、その一例であり、4枚の板状体がチャンバー2の中心軸Oを囲む四角形の各辺となるよう配置されて構成されている。このような骨格部41は、チャンバー2との間に生じる隙間43と、チャンバー2の中心軸Oの周囲に生じる通路44との面積比や形状、配置等のバランスが優れているため、成長速度と不純物の捕捉率とを高度に両立可能である。特に、チャンバー2の内壁面近傍や中心軸O近傍は、対流が起こり易い領域であるため、その対流を確保し易いという観点から、図2に示す骨格部41は有用である。
なお、チャンバー2内における溶解液5の対流方向(対流パターン)は、特に限定されないが、中心軸Oに沿って上昇し、内壁面に沿って下降する対流パターン、内壁面に沿って上昇し、中心軸Oに沿って下降するパターン、内壁面のうちの一部に沿って上昇し、中心軸Oに対してこの一部の反対側の部分に沿って下降する対流パターン等が知られている。
図2に示す骨格部41は、これらいずれの対流パターンに対しても、フィルター部材4の作用・効果を確実に発揮させ得るものである。
一方、骨格部41に付着させる不純物粒子42は、製造する結晶の種類に応じて異なり、例えば水晶を製造する場合は、アクマイト、エメリューサイト、ペクトライト等の粒子が不純物粒子42として知られている。
不純物粒子42は、骨格部41の表面に固定されていればよく、その固定方法は特に限定されない。一般には、骨格部41の表面に不純物を析出させることにより、析出物(不純物粒子42)と骨格部41とを固定させる。この他、金属線等の固定具を用いて固定したり、接着剤等を介して固定するようにしてもよい。この場合、固定具や接着剤には、溶解液5に対する十分な耐久性を備えたものが用いられる。必要に応じて、フッ素樹脂のような樹脂材料、金、白金のような貴金属材料を主材料とするもの、またはこれらの材料でコーティングしたものを用いるようにしてもよい。
不純物粒子42の平均粒径は、特に限定されないものの、0.5μm以上10mm以下程度であるのが好ましく、1μm以上5mm以下程度であるのがより好ましく、10μm以上3mm以下程度であるのがさらに好ましい。不純物粒子42の平均粒径を前記範囲内とすることにより、不純物粒子42が脱落し難くなり、しかも不純物粒子42と溶解液5との接触面積を十分に確保することができる。その結果、不純物粒子42による不純物の捕捉率をより高めることができる。
なお、骨格部41の表面には、多数の不純物粒子42が固定されるが、この際、隣り合う不純物粒子42同士は接していてもよいが、図4に示すように分離しているのが好ましい。これにより、不純物粒子42に不純物が析出するためのスペースが確保されることとなり、さらには不純物粒子42の露出面積も大きく確保されることから、不純物の捕捉率を高めることができる。
また、骨格部41の表面に不純物粒子42を固定する方法として、あらかじめ、骨格部41をチャンバー2の第3の空間23内に収納し、骨格部41の表面に不純物を析出させ、この析出物を不純物粒子42として用いる方法もある。すなわち、過飽和度の高い第3の空間に骨格部41を収納し、骨格部41の表面に不純物を析出させた上で、これをフィルター部材4として用いる方法である。
この方法によれば、やや時間を要するものの、骨格部41の全体に均一に分布した不純物粒子42を容易に生成することができるので、不純物の捕捉率やフィルター部材4の製造効率の観点から有効である。
さらには、成長した結晶を取り出し、次の成長のために別の種子結晶12を収納する際に、フィルター部材4を特に取り外したり、清掃したりする必要もないので、ランニングコストの上昇やメンテナンスの手間の増大を防止しつつ、結晶の製造歩留まりを高められるという観点からも有効である。
また、各種成膜方法を利用して、骨格部41の表面に不純物粒子42を形成するようにしてもよい。かかる成膜方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等の各種物理的成膜法、プラズマCVD法、熱CVD法等の各種化学的成膜法等が挙げられる。
なお、前述したアクマイト、エメリューサイト、ペクトライト等の不純物のうち、問題となっている不純物の中では特にアクマイト、エメリューサイトの割合が大きく、また水晶の品質に及ぼす影響も大きいので、これらの不純物を不純物粒子42とすることにより、不純物の捕捉率が向上し、水晶の品質向上にも大きく寄与する。また、このアクマイトはNaO・Fe・4SiO等の組成式で表され、エメリューサイトはLiO・2NaO・Fe・12SiO等の組成式で表わされるものであり、いずれも鉄を含む不純物である。そこで、骨格部41の構成材料として前述した鉄または鉄基合金を用いることにより、骨格部41に対してアクマイト、エメリューサイトの固着を強固にする。すなわち、鉄または鉄基合金で構成された骨格部41を用いることにより、アクマイトやエメリューサイトの捕捉率を特に高めることができる。
以上、フィルター部材4について説明したが、このフィルター部材4は、前述したような溶解液5の対流を制御する機能を有していなくてもよい。すなわち、単に不純物粒子42が付着した骨格部41を第3の空間23に配置しておけば、上述したような作用・効果を奏するものである。
チャンバー2の外周部には、その長手方向に沿って加熱手段9が設けられている。
図1に示す加熱手段9は、第1の空間21に対応する部分に設けられたヒーター91と、第2の空間22に対応する部分に設けられたヒーター92と、第3の空間23に対応する部分に設けられたヒーター93とで構成されている。
各ヒーター91〜93は、それぞれ、チャンバー2の外周面に巻き付けられるように取り付けられている。これにより、第1の空間21、第2の空間22および第3の空間23内の溶解液5を、それぞれチャンバー2の周方向においてムラなく加熱し、溶解液5に鉛直方向の熱対流を確実に生じさせることができる。
このようなヒーター91〜93は、例えば、シーズヒーター等で構成することができる。このシーズヒーターは、発熱線が金属管中に封入されてなるヒーターであるため、発熱線の酸化等による劣化を抑制し、長期間の連続加熱が可能である。
また、これらのヒーター91〜93は、図示しない制御手段により、それぞれ独立して出力を制御するよう構成されている。すなわち、第1の空間21内の溶解液5の温度、第2の空間22内の溶解液5の温度および第3の空間23内の溶解液5の温度が、それぞれ異なるように制御し得るよう構成されている。これにより、第1の空間21内の過飽和度、第2の空間22内の過飽和度および第3の空間23内の過飽和度が、それぞれ異なるように調整することができる。
なお、各ヒーター91〜93は必要に応じて設ければよく、一部を省略してもよい。
(結晶の製造方法)
次に、上記のような結晶の製造装置1の作用(本発明に係る結晶の製造方法)について説明する。
[1] まず、チャンバー2内の第1の空間21に結晶原料11を入れるとともに、第2の空間22に種子結晶12を吊り下げる。また、対流制御板3とフィルター部材4を取り付け、チャンバー2内に溶解液5を所定量満たす。
このとき、溶解液5の量(チャンバー2の容積に対する充填率)としては、第3の空間23の少なくとも一部が満たされる量であり、60%以上95%以下程度であるのが好ましく、70%以上85%以下程度であるのがより好ましい。
[2] 次に、チャンバー2の内部を加圧する。
チャンバー2内部を加圧する際の圧力としては、50MPa以上200MPa以下程度であるのが好ましく、90MPa以上150MPa以下程度であるのがより好ましい。チャンバー2内の圧力が前記範囲を超えると、チャンバー2の耐圧力を高めるために、チャンバー2の構成材料を引張強度のより高い高価な材料に変更したり、チャンバー2の肉厚を厚くする必要が生じ、製造コストの増大につながる。これに対し、チャンバー2内の圧力が前記範囲を下回ると、酸化ケイ素の溶解液5に対する溶解度が低下し、水晶の析出速度が低下するおそれがある。
[3] 次に、ヒーター91、92、93を制御して、第1の空間21、第2の空間22および第3の空間23をそれぞれ加熱する。これにより、チャンバー2内は、高温・高圧状態となり、酸化ケイ素の溶解液5に対する溶解度が増加する。その結果、結晶原料11中の酸化ケイ素が溶解液5中に多量に溶解する。
加熱の際には、チャンバー2内の第1の空間21、第2の空間22および第3の空間23の溶解液5の温度が、それぞれ異なる温度になるように加熱するのが好ましい。
具体的には、ヒーター91、92、93をそれぞれ制御して、第1の空間21内の溶解液5の温度より第2の空間22内の溶解液5の温度が低く、第2の空間22内の溶解液5の温度より第3の空間23内の溶解液5の温度が低くなるように加熱するのが好ましい。これにより、チャンバー2内に温度差が生じ、この温度差に伴う熱対流によって、溶解液5に一定の流れが生起する。
すなわち、このような温度差を設けることだけで、第2の空間22内の過飽和度を第1の空間21内の過飽和度より高くすることができ、種子結晶12を成長させることができる。さらには、第3の空間23内の過飽和度を、第2の空間22内の過飽和度より高くすることができる。これにより、第3の空間23内おいて溶解液5中の不純物がより析出し易くなり、主にフィルター部材4の上面近傍において、不純物粒子42に対する不純物の析出を促進する。その結果、溶解液5中の不純物の含有率を低下させ、結晶の成長過程において、不純物が前記結晶中に取り込まれるのを防止することができる。
具体的な温度差としては、第2の空間22内の溶解液5の温度は、第1の空間21の溶解液5の温度より20℃以上60℃以下程度低くなるよう設定されるのが好ましく、30℃以上50℃以下程度低くなるよう設定されるのがより好ましい。これにより、第1の空間21と第2の空間22との間に適度な過飽和度の差が生じ、種子結晶12の成長速度が最適化される。
また、第3の空間23内の溶解液5の温度は、第2の空間22の溶解液5の温度より10℃以上40℃以下程度低くなるよう設定されるのが好ましく、15℃以上30℃以下程度低くなるよう設定されるのがより好ましい。これにより、第2の空間22と第3の空間23との間に適度な熱対流と過飽和度の差が生じ、第3の空間23内で不純物が確実に析出するとともに、第2の空間22内での種子結晶12の成長速度が最適化される。
このような温度差を設けた場合、第1の空間21内の溶解液5の温度は、好ましくは360℃以上410℃以下程度、第2の空間22内の溶解液5の温度は、好ましくは320℃以上360℃以下程度、第3の空間23内の溶解液5の温度は、好ましくは300℃以上340℃以下程度とされる。
[4] 前記工程[3]の状態で所定の期間放置することにより、種子結晶12の表面に水晶を連続的に析出・成長させる。
放置期間(成長期間)は、必要とする水晶(育成する結晶)のサイズや過飽和状態となった水晶(酸化ケイ素)が溶解液から析出する析出速度によっても異なるが、1ヶ月以上6ヶ月以下程度が好ましい。
以上のようにして、結晶が得られる。
このようにして結晶を得た後は、第2の空間22から結晶を取り出す。その後、第2の空間22には別の種子結晶12を吊り下げて、再び前記工程[1]〜[4]を行い、結晶を製造する。
この際、フィルター部材4は、取り外して別のフィルター部材4を収納するようにしてもよいが、そのまま取り替えることなく、再び前記工程[1]〜[4]に供されるのが好ましい。このようにすれば、フィルター部材4には、次々と不純物が析出して成長していくことになるので、不純物粒子42の占める面積が大きくなり、ますます不純物の捕捉率が高くなる。したがって、フィルター部材4を取り替えることなく使い続けることで、結晶の製造歩留まりをより高めることができる。
なお、以上のような結晶の製造方法では、例えば、工程[2]と工程[3]とを同時に、または、順序を逆にして行うこともできる。また、任意の工程を追加するようにしてもよい。
以上のような本発明によれば、高純度で結晶欠陥の極めて少ない良質な結晶を高い製造歩留まりで製造することができる。
育成により得られた結晶は、種々の分野で用いられる。例えば、水晶は、水晶発振器、水晶振動子のような水晶デバイス、光学フィルター、波長板のような光学デバイス、SAWフィルターのような弾性表面波素子等の各種デバイスの原材料として好適に用いられる。
(フィルター部材の他の構成例)
ところで、フィルター部材4には、図2に示す構成のもの他、例えば、図5に示す構成のものを用いることができる。
図5(a)に示すフィルター部材4は、チャンバー2の内径より若干小さい外径の円盤状をなす網状体45が複数枚積層した積層体で構成されている。そして、これらの各網状体45には、ほぼ全体に多数の貫通孔451が設けられている。この貫通孔451は、フィルター部材4の中央部と周辺部とで配置密度が異なっている。これにより、フィルター部材4を通過する溶解液5の抵抗を調整し、チャンバー2の横断面における中央部と周辺部の対流量をそれぞれ制御することができる。
一方、図5(b)に示すフィルター部材4は、平面視で正方形をなす網状体46、47が複数枚積層した積層体で構成されており、上側の網状体46が下側の網状体47に対して45°回転している。これらの各網状体46、47にも、全体に多数の貫通孔451が設けられている。
また、各網状体46、47は、仮に不純物粒子42が骨格部41から脱落したとしても、それを第2の空間22へと落下させないよう、不純物粒子42を濾し取ることもできる。その結果、脱落した不純物粒子42が結晶中に取り込まれるのを防止することができる。
この場合、網状体46と網状体47との重なり方を変えることにより、積層体全体を貫通している貫通孔451の実質的なサイズを変えることができる。これにより、フィルター部材4で濾し取ることのできる不純物粒子42のサイズ(粒径)を調整することもできる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明の結晶の製造装置およびフィルター部材を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.人工水晶の作製
(実施例1)
図1および図2に示す人工水晶の製造装置を用いて人工水晶を作製した。作製時の条件を以下に示す。
チャンバーの寸法 :内径650mm×高さ14m
チャンバーの構成材料 :高張力鋼
チャンバー内の圧力 :130MPa
溶解液の組成 :水酸化ナトリウム水溶液
溶解液の濃度 :4重量%
溶解液の充填率 :85%
種子結晶の種類 :Z板水晶
対流制御板の開口率 :10%
フィルター部材(骨格部)の遮蔽率 :5%
フィルター部材(骨格部)の板状体の積層数:50枚
フィルター部材(骨格部)の構成材料 :軟鋼材
骨格部の表面に形成する不純物粒子の組成:エメリューサイト
不純物粒子の平均粒径 :100μm
第1の空間内の溶解液の温度:390℃
第2の空間内の溶解液の温度:350℃
第3の空間内の溶解液の温度:335℃
育成期間 :3ヶ月
人工結晶の作製個数 :1500個
なお、フィルター部材については、その遮蔽率を5%としたことにより、溶解液の対流に対して影響を及ぼさないものとした。
(実施例2)
フィルター部材の遮蔽率を50%としたことにより、溶解液の対流を規制し、制御する機能を持たせた以外は、実施例1と同様にして人工水晶を作製した。
(比較例1)
フィルター部材を省略した以外は、前記実施例1と同様にして人工水晶を作製した。
(比較例2)
表面に不純物粒子が付着していないフィルター部材(骨格部)を用いるようにした以外は、前記実施例2と同様にして人工水晶を作製した。
2.評価
実施例および比較例で得られた各1500個の人工水晶について、それぞれ人工水晶中に含まれる異物の含有密度を評価した。なお、この評価は、JIS C 6704に規定の試験方法および評価基準にしたがって行った。表1に評価基準を示す。
Figure 2011190135
また、評価項目としては、表1に示す5段階の等級のうち、等級I、等級Ibおよび等級Iaを満足する人工水晶を良品として、全数に対する良品の割合を良品率とした。また、良品のうち、等級I、等級Ibおよび等級Iaの3つの等級の内訳(等級ごとの占有率)を表2に示す。
Figure 2011190135
まず、実施例1、2で得られた人工水晶は、比較例1、2で得られた人工水晶に比べて、良品率が高かった。
また、良品中における等級I、等級Ibおよび等級Iaの内訳を比較したところ、表2に示すように、実施例1、2では、比較例1、2に比べて、等級Iの割合が低下している一方、最も高品質である等級Iaの割合が高くなっている。すなわち、実施例1、2では、従来に比べて、異物の取り込みを減少させることが実現できた結果、良品率が向上しただけでなく、良品における等級の底上げを図ることもできた。
さらに、実施例1と実施例2を比較すると、実施例1で使用した対流制御の機能をほとんど有しないフィルター部材(遮蔽率:5%)に対して、第2の空間22に対して第3の空間23における過飽和度を高くするよう対流制御機能を持たせたフィルター部材4(遮蔽率:50%)を使用した実施例2は、実施例1に対して、良品に占める等級Iaの比率が向上し、良品における等級の更なる底上げを図るという優れた効果を奏することが実証された。
以上のことから、本発明によれば、良質な結晶を高い製造歩留まりで効率よく製造できることが明らかとなった。
1……結晶の製造装置(オートクレーブ) 2……チャンバー(育成容器) 2a……本体部 2b……蓋部 3……対流制御板 4……フィルター部材 41……骨格部 411……板状体 412……柱状体 42……不純物粒子 43……隙間 44……通路 45、46、47……網状体 451……貫通孔 5……溶解液 11……結晶原料(ラスカ) 12……種子結晶(水晶種子) 21……第1の空間 22……第2の空間 23……第3の空間 27……圧力計 28……安全弁 9……加熱手段 91、92、93……ヒーター

Claims (14)

  1. 容器内に、溶解液、原料および種子結晶を収納し、水熱合成法により前記種子結晶を育成する結晶の製造装置であって、
    前記容器内の前記種子結晶より上部に設けられたフィルター部材を有し、
    前記フィルター部材は、骨格部と、該骨格部の表面に付着させた不純物粒子とを有するものであることを特徴とする結晶の製造装置。
  2. 前記骨格部は、複数の板状体を積層してなる積層体で構成されている請求項1に記載の結晶の製造装置。
  3. 前記フィルター部材は、前記溶解液の対流を制御する機能を有する請求項1または2に記載の結晶の製造装置。
  4. 前記フィルター部材による前記容器の横断面の遮蔽率は、10%以上70%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の結晶の製造装置。
  5. 前記骨格部は、鉄または鉄基合金で構成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の結晶の製造装置。
  6. 前記骨格部は、その平面視形状が、前記容器の中心点に対して点対称の関係になるよう構成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の結晶の製造装置。
  7. 前記不純物粒子は、水熱合成法により前記結晶を育成する際に得られたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の結晶の製造装置。
  8. 前記種子結晶が水晶種子であり、水晶を育成するものである請求項1ないし7のいずれかに記載の結晶の製造装置。
  9. 前記不純物粒子は、少なくともアクマイト粒子またはエメリューサイト粒子のうちのいずれか一方である請求項8に記載の結晶の製造装置。
  10. オートクレーブ内に収納された種子結晶を水熱合成法により育成して結晶を製造する方法であって、
    溶解液が満たされた前記オートクレーブ内のうち、前記種子結晶より上部に、骨格部と、該骨格部の表面に付着した不純物粒子とを有するフィルター部材を配置した状態で、前記種子結晶を育成することを特徴とする結晶の製造方法。
  11. 前記種子結晶を成長させる成分の前記溶解液に対する過飽和度について、前記フィルター部材の上方における前記過飽和度を、下方における前記過飽和度よりも高くする請求項10に記載の結晶の製造方法。
  12. 溶解液が満たされた前記オートクレーブ内のうち、前記種子結晶より上部に、前記フィルター部材を配置し、前記種子結晶を育成した後、前記フィルター部材をそのまま用いて、前記種子結晶とは別の種子結晶を種子結晶収納部に配置し、前記別の種子結晶を育成する請求項10または11に記載の結晶の製造方法。
  13. 種子結晶を水熱合成法により育成する際に用いられるオートクレーブ内の、前記種子結晶より上部に配置されるフィルター部材であって、
    骨格部と、該骨格部の表面に付着させた不純物粒子とを有することを特徴とするフィルター部材。
  14. 当該フィルター部材は、前記オートクレーブ内の前記種子結晶より上部に前記骨格部を配置した状態で、前記種子結晶を育成し、前記不純物粒子を形成することで得られたものである請求項13に記載のフィルター部材。
JP2010056519A 2010-03-12 2010-03-12 結晶の製造装置、結晶の製造方法およびフィルター部材 Withdrawn JP2011190135A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010056519A JP2011190135A (ja) 2010-03-12 2010-03-12 結晶の製造装置、結晶の製造方法およびフィルター部材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010056519A JP2011190135A (ja) 2010-03-12 2010-03-12 結晶の製造装置、結晶の製造方法およびフィルター部材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011190135A true JP2011190135A (ja) 2011-09-29
JP2011190135A5 JP2011190135A5 (ja) 2013-04-04

Family

ID=44795447

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010056519A Withdrawn JP2011190135A (ja) 2010-03-12 2010-03-12 結晶の製造装置、結晶の製造方法およびフィルター部材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2011190135A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013095643A (ja) * 2011-11-02 2013-05-20 Seiko Epson Corp 結晶の製造方法、結晶の製造装置および結晶育成用治具

Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5551800A (en) * 1978-10-12 1980-04-15 Seiko Epson Corp Production of artificial quartz crystal
JPS5556089A (en) * 1978-10-19 1980-04-24 Seiko Epson Corp Production of artificial rock crystal
JPH02229781A (ja) * 1989-03-01 1990-09-12 Seiko Electronic Components Ltd 人工水晶製造装置
JPH07133182A (ja) * 1993-11-02 1995-05-23 Ngk Insulators Ltd 水熱合成方法及び水熱合成用育成容器
JP2001010897A (ja) * 1999-06-28 2001-01-16 Meidensha Corp 人工水晶の製造方法
JP2003277182A (ja) * 2002-03-19 2003-10-02 Mitsubishi Chemicals Corp 窒化物単結晶の製造方法
JP2005194109A (ja) * 2003-12-26 2005-07-21 Kyocera Kinseki Corp 人工水晶の製造方法
JP2006069827A (ja) * 2004-08-31 2006-03-16 Kyocera Kinseki Corp 人工水晶の製造方法
JP2007031254A (ja) * 2005-07-29 2007-02-08 Seiko Epson Corp 人工水晶の製造装置、人工水晶の製造方法および人工水晶

Patent Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5551800A (en) * 1978-10-12 1980-04-15 Seiko Epson Corp Production of artificial quartz crystal
JPS5556089A (en) * 1978-10-19 1980-04-24 Seiko Epson Corp Production of artificial rock crystal
JPH02229781A (ja) * 1989-03-01 1990-09-12 Seiko Electronic Components Ltd 人工水晶製造装置
JPH07133182A (ja) * 1993-11-02 1995-05-23 Ngk Insulators Ltd 水熱合成方法及び水熱合成用育成容器
JP2001010897A (ja) * 1999-06-28 2001-01-16 Meidensha Corp 人工水晶の製造方法
JP2003277182A (ja) * 2002-03-19 2003-10-02 Mitsubishi Chemicals Corp 窒化物単結晶の製造方法
JP2005194109A (ja) * 2003-12-26 2005-07-21 Kyocera Kinseki Corp 人工水晶の製造方法
JP2006069827A (ja) * 2004-08-31 2006-03-16 Kyocera Kinseki Corp 人工水晶の製造方法
JP2007031254A (ja) * 2005-07-29 2007-02-08 Seiko Epson Corp 人工水晶の製造装置、人工水晶の製造方法および人工水晶

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013095643A (ja) * 2011-11-02 2013-05-20 Seiko Epson Corp 結晶の製造方法、結晶の製造装置および結晶育成用治具

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10370773B2 (en) Process for manufacturing synthetic single crystal diamond material using a pressure driven growth process and a plurality of seed pads with each seed pad comprising a plurality of single crystal diamond seeds
RU2296189C2 (ru) Способ и устройство для получения объемного монокристаллического галлийсодержащего нитрида (варианты)
US20100031873A1 (en) Basket process and apparatus for crystalline gallium-containing nitride
JP4457995B2 (ja) 人工水晶の製造装置、人工水晶の製造方法およびフィルタ部材
JP2010241628A (ja) 炭化珪素単結晶の製造装置
JP6181620B2 (ja) 多結晶シリコン製造用反応炉、多結晶シリコン製造装置、多結晶シリコンの製造方法、及び、多結晶シリコン棒または多結晶シリコン塊
JP2011190135A (ja) 結晶の製造装置、結晶の製造方法およびフィルター部材
KR20140016384A (ko) 질화물 단결정의 제조 방법 및 그것에 이용하는 오토클레이브
CN105887198B (zh) 一种清除蓝宝石晶体熔体料中气泡装置及清除方法
Feng et al. Influence of processing parameter on phase transformation and superelastic recovery strain of laser solid forming NiTi alloy
JP2013095643A (ja) 結晶の製造方法、結晶の製造装置および結晶育成用治具
JP5033386B2 (ja) 人工水晶の製造方法及び人工水晶
JP2008189520A (ja) 人工水晶の製造装置、人工水晶の製造方法および人工水晶
JP2018043893A (ja) 13族窒化物結晶の製造方法及び13族窒化物結晶基板の製造方法
JP6334426B2 (ja) 濾過用フィルター
JP2010024117A (ja) 炭化珪素単結晶の製造装置及び炭化珪素単結晶の製造方法
JP6116866B2 (ja) SiC単結晶成長用種結晶、及びSiC単結晶の製造方法
JP2006069827A (ja) 人工水晶の製造方法
JP2011190135A5 (ja) 人工水晶の製造装置、人工水晶の製造方法およびフィルター部材
JP5953943B2 (ja) 窒化物半導体結晶の製造方法、反応容器および部材
Yasnikov et al. Electrodeposition of nanostructure objects with pentagonal symmetry
JPH07133182A (ja) 水熱合成方法及び水熱合成用育成容器
JP6251204B2 (ja) 濾過用フィルター
JP6506910B2 (ja) 人工水晶の製造方法
WO2010084681A1 (ja) 3b族窒化物結晶の製法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130220

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130220

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130925

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20131001

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20131118