JP2011182832A - 袋体 - Google Patents
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Abstract
【課題】蓄熱体を間接的に加熱する。
【解決手段】袋体18は、内部に蓄熱体12の収納空間18aを有する袋状に形成され、誘電加熱可能な高い誘電率を有する液状の加熱媒体を吸収・保持可能で、該液状の加熱媒体より誘電率が低い多孔質または繊維材料からなる保持部20と、気密性を有すると共に液状の加熱媒体より誘電率が低い材料からなり、保持部20の外側を覆う被覆部22とを備えている。保持部20および被覆部22には、外方から収納空間18aに連通し、液状の加熱媒体を外部から収納空間18aに供給可能で、気化した加熱媒体を収納空間18aから外部へ放出可能な連通部26が形成されている。
【選択図】図1
【解決手段】袋体18は、内部に蓄熱体12の収納空間18aを有する袋状に形成され、誘電加熱可能な高い誘電率を有する液状の加熱媒体を吸収・保持可能で、該液状の加熱媒体より誘電率が低い多孔質または繊維材料からなる保持部20と、気密性を有すると共に液状の加熱媒体より誘電率が低い材料からなり、保持部20の外側を覆う被覆部22とを備えている。保持部20および被覆部22には、外方から収納空間18aに連通し、液状の加熱媒体を外部から収納空間18aに供給可能で、気化した加熱媒体を収納空間18aから外部へ放出可能な連通部26が形成されている。
【選択図】図1
Description
この発明は、保持した加熱媒体を誘電加熱によって加熱して収納した物品を加熱する袋体に関するものである。
温熱療法や携帯用や就寝時等に使用される保温具としては、硬質ケースや袋等からなる容器の内部に蓄熱材を封入して、電子レンジまたは湯煎によって蓄熱材を加熱することで、蓄熱材に熱を蓄積するものがある。この種の保温具は、金属製、陶器製、プラスチック製等の容器内部にお湯を注入して用いる湯たんぽに比べ、使用時にお湯を容器に注入する等の手間が省ける点で利便性に優れている。
前記保温具は、蓄熱材として、水のみや、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の高分子素材またはこれらの高分子素材に水を混合したものが用いられている。蓄熱材は、ポリアミド系樹脂やABS樹脂等の非オレフィン系合成樹脂からなる容器や袋等の収容材に封入されている。これらの蓄熱材および収容材は、何れも極性を有する素材であって、電子レンジにおけるマイクロ波の照射により直接加熱されるようになっている。
前記保温具は、電子レンジによるマイクロ波の照射によって蓄熱材自体が加熱される構成であるので、誤って出力を高く設定したり、加熱時間を長く設定した場合に、蓄熱材が100℃を越えて過熱されてしまう。このため、電子レンジから保温具を取り出す際や使用に際して注意を要したり、蓄熱材の気化等による内圧の上昇により容器が破裂したり、容器から蓄熱材が漏出あるいは飛散することがある。また、電子レンジは、時間を設定することなく所定の温度まで自動で加熱する自動加熱モードにおいて、加熱度合いを加熱対象物から発生する水蒸気の検知により制御する水蒸気制御タイプがある。保温具は、蓄熱材が容器に封入されて外部に水蒸気が放出されないので、この水蒸気制御タイプの電子レンジで自動加熱すると、蓄熱材が際限なく加熱されてしまう大きな問題がある。
仮に、蓄熱材を収容する容器に毛細管等の水蒸気を逃す孔を設けた場合は、容器の破裂のおそれを減じることができるものの、水等が孔から蒸気として漏出することで蓄熱材の成分が変化し、使うにつれて保温性能が低下してしまう不具合がある。また、容器に孔を設けると、容器の構造が複雑になってコストがかかったり、孔からの漏出を考慮して容器の内部に入れる蓄熱材が制限される難点もある。
更に、前記保温具は、蓄熱材を収容する収容材自体が誘電加熱される構成であるので、電子レンジ等の出力を誤って高く設定したり、加熱時間を長く設定した場合に、収容材が溶けたり変形したり等して、収容材から蓄熱材が漏出あるいは飛散することがある。
すなわち本発明は、従来の技術に係る袋体に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、自身が誘電加熱されることなく、内部に収納した物品を間接的に加熱することができる袋体を提供することを目的とする。
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の袋体は、
内部に物品の収納空間を有する袋状に形成され、誘電加熱可能な高い誘電率を有する液状の加熱媒体を吸収・保持可能で、該液状の加熱媒体より誘電率が低い多孔質または繊維材料からなる保持部と、
気密性を有すると共に前記液状の加熱媒体より誘電率が低い材料からなり、前記保持部の外側を覆う被覆部とを備え、
前記保持部および前記被覆部には、外方から収納空間に連通し、液状の加熱媒体を外部から収納空間に供給可能で、気化した加熱媒体を収納空間から外部へ放出可能な連通部が形成されることを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、袋体を構成する保持部および被覆部が誘電率が低い材料から構成されているので、保持部および被覆部が誘電加熱されることなく、保持部に保持した加熱媒体を誘電加熱することができ、発熱した加熱媒体によって保持部の内側に収納された物品を加熱することができる。また、袋体は、保持部の外側が気密性を有する被覆部で覆われているので、加熱媒体を物品と適切に熱交換させることができる。
内部に物品の収納空間を有する袋状に形成され、誘電加熱可能な高い誘電率を有する液状の加熱媒体を吸収・保持可能で、該液状の加熱媒体より誘電率が低い多孔質または繊維材料からなる保持部と、
気密性を有すると共に前記液状の加熱媒体より誘電率が低い材料からなり、前記保持部の外側を覆う被覆部とを備え、
前記保持部および前記被覆部には、外方から収納空間に連通し、液状の加熱媒体を外部から収納空間に供給可能で、気化した加熱媒体を収納空間から外部へ放出可能な連通部が形成されることを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、袋体を構成する保持部および被覆部が誘電率が低い材料から構成されているので、保持部および被覆部が誘電加熱されることなく、保持部に保持した加熱媒体を誘電加熱することができ、発熱した加熱媒体によって保持部の内側に収納された物品を加熱することができる。また、袋体は、保持部の外側が気密性を有する被覆部で覆われているので、加熱媒体を物品と適切に熱交換させることができる。
請求項2に係る発明では、前記保持部は、無極性分子からなる材料または誘電率が2.5以下の材料から構成されることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、保持部の誘電率を2.5以下に設定することで、電子レンジ等でのマイクロ波の照射により昇温するほど誘電加熱されない。
請求項2に係る発明によれば、保持部の誘電率を2.5以下に設定することで、電子レンジ等でのマイクロ波の照射により昇温するほど誘電加熱されない。
請求項3に係る発明では、前記保持部および前記被覆部は、前記加熱媒体の沸点より融点またはガラス転移点が高い耐熱性を有していることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、袋体は、加熱媒体が連通部を介して外方へ放出されるので、加熱媒体の沸点より温度が上がり難いので、保持部および被覆部の融点またはガラス転移点を加熱媒体の沸点より高く設定することで、十分な耐熱性を担保し得る。
請求項3に係る発明によれば、袋体は、加熱媒体が連通部を介して外方へ放出されるので、加熱媒体の沸点より温度が上がり難いので、保持部および被覆部の融点またはガラス転移点を加熱媒体の沸点より高く設定することで、十分な耐熱性を担保し得る。
請求項4に係る発明では、前記保持部には、無極性分子からなる材料または前記加熱媒体より誘電率が低い材料からなる補助蓄熱体が分散されることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、補助蓄熱体を保持部に分散することで、蓄熱量を増大できる。
請求項4に係る発明によれば、補助蓄熱体を保持部に分散することで、蓄熱量を増大できる。
請求項5に係る発明では、前記被覆部の外側を囲んで設けられた保護部を有し、
前記保護部は、前記液状の加熱媒体より誘電率が低く、かつ被覆部より熱伝導率が低い材料から構成されることを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、保護部により加熱媒体の誘電加熱により昇温する保持部および被覆部を遮蔽することができる。
前記保護部は、前記液状の加熱媒体より誘電率が低く、かつ被覆部より熱伝導率が低い材料から構成されることを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、保護部により加熱媒体の誘電加熱により昇温する保持部および被覆部を遮蔽することができる。
本発明に係る袋体によれば、自身がマイクロ波により誘電加熱されることなく、内部に収納した物品を保持部に保持した加熱媒体の誘電加熱により間接的に加熱することができる。
次に、本発明に係る袋体につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、実施例では、袋体を保温具に用いる場合を例に挙げる。
図1または図2に示すように、実施例1の保温具10は、熱を蓄積・放散可能な蓄熱材14を備えた蓄熱体12と、この蓄熱体12の外側に設けられ、蓄熱体12に熱を与える加熱媒体を保持可能な袋体18とから基本的に構成されている。保温具10は、電子レンジ等の装置によってマイクロ波を照射することで、袋体18に保持した加熱媒体を誘電加熱して蓄熱体12を間接的に加熱するようになっている。そして、保温具10は、蓄熱体12に蓄積した熱の放散により保温対象を温め可能になっている。実施例1の保温具10は、袋体18の内部に画成された収納空間18aに蓄熱体12を収納する構成であって、略矩形状に形成された袋体18の内部に同じく略矩形状に画成された収納空間18aに合わせて、蓄熱体12が略矩形状に形成されている。
前記加熱媒体としては、極性分子であって誘電率が高い材料または高誘電率材料を含む材料が用いられ、マイクロ波の照射によって効率よく誘電加熱可能な常温で液状にあるものを使用できる。ここで、本願の「誘電率が高い」とは、ポリエチレングリコールと同等以上(誘電率:35)の誘電率を有している材料を指す。実施例1では、入手および取り扱いが容易な水(誘電率:80)が加熱媒体として採用される。なお、本願で云う「常温」とは、熱したり冷やしたりしない自然な温度のことである。
前記蓄熱体12は、熱の蓄積を担う蓄熱材14と、この蓄熱材14を収容する収容材16とから構成され、蓄熱材14が収容材16に封入されている(図2参照)。蓄熱体12を構成する蓄熱材14および収容材16は、無極性分子からなる材料または加熱媒体より誘電率が低い材料で構成される。このように、蓄熱体12の構成材として、誘電加熱されないまたは誘電加熱され難い材料が採用されている。すなわち、蓄熱体12は、マイクロ波の照射により自己発熱せず、また自己発熱したとしてもその発熱量が微少であるので外部に放散する熱量との関係により昇温しないよう構成される。ここで、本願で云う「誘電率が低い」とは、極性分子で構成されていたりまたは極性分子を含んでいても加熱媒体より誘電率が低い条件を満たし、誘電率が80程度の水や35程度のポリエチレングリコールと比べて少なくとも桁1つ小さい範囲(誘電率:10未満)をいう。そして、蓄熱体12の構成材として、誘電率が2.5以下の範囲にある材料を用いるのがより望ましい。
前記蓄熱材14は、常温から加熱媒体の沸点の範囲内で設定される保温具10の使用温度範囲の間に、融点がある材料を採用するとよい。すなわち、蓄熱材14は、保温具10の使用温度範囲において液体と固体の間で相転移するよう設定されている。ここで、保温具10の「使用温度範囲」とは、保温具10で保温する対象および用途等に合わせて設定され、例えば保温する対象が人であり、保温具10をカイロやあんか等として用いる場合には、使用温度範囲が体温近傍の30℃から60℃の範囲に設定される。従って、保温具10は、カイロやあんか等として用いる場合には、使用温度が30℃〜60℃の範囲であるので、蓄熱材14の融点が30℃〜60℃の範囲に設定される。また、保温する対象が酒等の飲料であり、温めた飲料を保温する用途の場合は、使用温度範囲が60℃から80℃の範囲に設定される。この場合は、蓄熱材14の融点が60℃〜80℃の範囲に設定される。また、蓄熱材14は、その沸点が加熱媒体の沸点より大きい材料が好ましく、実施例1では加熱媒体として水が用いられるので、蓄熱材14として沸点が100℃より大きい材料が選択される。
前記蓄熱材14としては、例えば脂肪族炭化水素化合物やシリコーン等が挙げられ、脂肪族炭化水素化合物の中でもパラフィンが特に好適である。パラフィンは、化学的安定性が高く、また熱容量および比熱が大きくて一旦加熱されると冷め難い性質を有しているので、蓄熱材用途に適している。また、パラフィンは、分子量によって融点を簡単にコントロールすることができ、保温具10の使用温度範囲に合わせて蓄熱材14の相転移のタイミングを設定し易い。なお、蓄熱材14は、水等の誘電率の高い材料を含まなければ、単一の材料で構成しても、複数の材料を組み合わせて構成してもよい。例えば、蓄熱材14としてパラフィンを用いる場合に、分子量の異なる複数のパラフィンを組み合わせることも可能である。
実施例1の収容材16は、例えば脂肪族炭化水素化合物やシリコーン等からなる薄肉の袋状物である。収容材16としては、脂肪族炭化水素化合物の中でもポリエチレン(誘電率2.2〜2.4)やポリプロピレン(誘電率2.0〜2.3)等のオレフィン系合成樹脂が好適である。また、収容材16に用いられる材料としては、融点またはガラス転移点が加熱媒体の沸点より高いものが採用される。実施例1では、加熱媒体として水が用いられるので、収容材16の融点またはガラス転移点が100℃より高く設定され、収容材16は、誘電加熱による加熱媒体の沸点までの昇温によって溶融または変形しない耐熱性を有している。更に、収容材16は、蓄熱材14を内部に封入すると共に外部から液状の加熱媒体の侵入を阻む液密性だけでなく、気化した加熱媒体が内部に入らない気密性を有している。また、蓄熱体12は、収容材16が柔軟性を有しており、蓄熱材14が液状である場合に曲げたり捻ったり等、ある程度の変形が可能になっていることが好ましい。
前記袋体18は、内部に画成された収納空間18aに収納した蓄熱体12の外側を覆うようになっている(図1参照)。袋体18は、蓄熱体12の外側に配置されて、液状の加熱媒体を保持可能な保持部20と、この保持部20の外側を覆うように設けられ、気密性を有する被覆部22とを備えている(図2参照)。なお、袋体18では、蓄熱体12の臨む側を内側といい、これと反対を外側という。また、実施例1の袋体18は、保持部20および被覆部22の2層に加えて、被覆部22の外側に配置された保護部24を備えている。このように、実施例1の袋体18は、3つの層で構成されており、蓄熱体12に臨む最も内側に保持部20が配置されると共に、保温具10の取り扱いに際して使用者が触れる外側に保護部24が配置され、保持部20と保護部24との間が被覆部22で気密的に遮蔽されている。袋体18を構成する3つの層は、接着等により互いに固定しても、外側に位置する部分に収納することで一体化して、必要に応じて互いに分離可能に構成してもよい。保温具10では、蓄熱体12が袋体18の内部に画成された収納空間18aに保持部20に接するように収納され、蓄熱体12と保持部20(保持部20に保持された加熱媒体)との間で熱伝導可能になっている。
前記袋体18は、該袋体18における収納空間18a側の内側(蓄熱体12に臨む面)に保持部20が配置され、この保持部20に液状の加熱媒体を供給可能である一方、マイクロ波の照射による誘電加熱によって気化した加熱媒体を外方へ放散可能に構成される。ここで、袋体18には、保持部20への液状の加熱媒体の供給および気化した加熱媒体の保持部20からの放散を許容する連通部26が設けられている。実施例1の袋体18では、袋状に形成された保持部20、被覆部22および保護部24の一辺(略矩形状における短辺)を開放して、外方から収納空間18aに連通する連通部26が形成されて、この連通部26を介して蓄熱体12を収納空間18aに出し入れ可能になっている。このように、袋体18では、液状の加熱媒体を保持部20へ供給すると共に気化した加熱媒体を外方へ放散する連通部26が、蓄熱体12を収納空間18aに出し入れする開口としても共用されている。そして、袋体18には、ファスナー、面ファスナー、ボタン、ホック等の連通部26の全部または一部を閉じる係止手段28が設けられている。保温具10は、使用に際して係止手段28で連通部26を閉じることで、収納空間18aに収納した蓄熱体12の連通部26からの抜け出しを防止できる。
前記袋体18を構成する保持部20、被覆部22および保護部24は、無極性分子からなる材料または加熱媒体より誘電率が低い材料で構成される。このように、袋体18の構成材として、誘電加熱されないまたは誘電加熱され難い材料が採用されている。すなわち、袋体18は、マイクロ波の照射により自己発熱せず、また自己発熱したとしてもその発熱量が微少であるので外部に放散する熱量との関係により昇温しないよう構成される。袋体18の構成材としては、蓄熱体12と同様に、誘電率が2.5以下の範囲にある材料を用いるのがより望ましい。また、保持部20に保持した液状の加熱媒体に対してマイクロ波を照射する都合上、袋体18の構成材は、マイクロ波を反射せず、かつマイクロ波を透過するものが好適である。更に、袋体18の構成材としては、融点またはガラス転移点が加熱媒体の沸点より高いものが採用される。実施例1では、加熱媒体として水が用いられるので、保持部20、被覆部22および保護部24の夫々の融点またはガラス転移点が100℃より高く設定され、袋体18は、誘電加熱による加熱媒体の沸点までの昇温によっても溶融または変形しない耐熱性を有している。袋体18の構成材としては、例えば脂肪族炭化水素化合物やシリコーン等が挙げられ、脂肪族炭化水素化合物の中でもポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系合成樹脂が好適である。
前記保持部20は、多孔質または繊維材料で形成され、液状の加熱媒体を吸収および保持可能で、かつ気化した加熱媒体を放散可能に構成されている。保持部20は、短手辺の一方が開口した矩形状の袋状物であって、当該開口により構成される袋体18の連通部26を介して外方へ連通するようになっている。実施例1の保持部20は、柔軟性および可撓性を有するソフトな部分であって、収納空間18aに収納した蓄熱体12と接するよう形成されている。保持部20としては、スポンジ、フォームラバーまたは発泡体等の多孔質材料や、不織布、織布または紙等の繊維材料を選択することができ、実施例1では、オレフィン系の合成樹脂繊維からなる不織布から保持部20が形成されている。不織布からなる保持部20は、表面張力により繊維の間に液状の加熱媒体を吸収して該加熱媒体を繊維の間に保持できると共に、誘電加熱により気化した加熱媒体を繊維の間から放散することができる。しかも、不織布からなる保持部20は、繊維の種類、繊維の径や目付量を調節することで、保持する液状の加熱媒体の量を簡単に調節できると共に、柔軟性、可撓性や手触り等を簡単に変えることができる。
前記被覆部22は、気密性を有するフィルム材で形成され、連通部26を構成する開口を除く保持部20の外面に積層されている。被覆部22は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系合成樹脂からなる柔軟な部分であって、内側に加熱媒体を閉じこめるようになっている。保護部24は、加熱媒体の誘電加熱によって該加熱媒体の沸点近傍まで昇温する保持部20および被覆部22を隔てる部位であって、保温具10の外郭を構成している。保護部24としては、スポンジ、フォームラバーまたは発泡体等の多孔質材料や、不織布、織布または紙等の繊維材料や、軟質または硬質の中実材料を選択でき、保温具10の保温対象や用途等に合わせて適宜選択される。実施例1の保護部24は、オレフィン系の合成樹脂繊維からなる不織布であって、柔軟性および可撓性を有している。保護部24として不織布を採用することで、不織布を構成する繊維の種類、繊維の径や目付量の調節によって、柔軟性、可撓性や手触り等を簡単に設定することができる。
このように、袋体18は、全体として柔軟性および可撓性を有し、蓄熱材14が加熱媒体の誘電加熱により液状になったもとで、保温具10は、保温対象に合わせて変形可能な形状追随性を有している。実施例1の袋体18のように、袋状に形成して内部の収納空間18aに蓄熱体12を収納し、被覆部22で気化した加熱媒体の流通を阻む構成にあっては、収納空間18aにこもった加熱媒体により高温になるので、袋体18の構成材の耐熱性能を加熱媒体の沸点より余裕を見て設定するのが望ましい。例えば、実施例1では、加熱媒体として水を用いているので、袋体18の構成材の融点またはガラス転移点が100℃より高い耐熱性能を有し、より好ましくは耐熱性能を120℃以上に設定するとよい。
実施例1の保温具10は、蓄熱体12と袋体18の内側を構成する保持部20との少なくとも一部が接するよう構成され、保持部20と蓄熱材14との間で伝熱可能になっている。すなわち、保温具10は、保持部20に保持された加熱媒体の誘電加熱による熱および蓄熱材14に蓄積された熱が、主として蓄熱体12と袋体18との接触による熱伝導によって熱が互いに伝わるようになっている。
〔実施例の作用〕
次に、実施例1に係る保温具10の作用について説明する。保温具10は、蓄熱材14の融点が使用温度範囲内に設定されているので、蓄熱材14が加熱前(常温)の状態で基本的に固体状態にある。保温具10を使用する際は、先ず液状の加熱媒体を袋体18の連通部26から収納空間18aに供給することで、保持部20に加熱媒体を含ませる。このとき、実施例1の保温具10は、保持部20の外側が気密性を有する被覆部22で覆われているので、収納空間18aに供給した加熱媒体が被覆部22で阻まれて漏出しない。不織布からなる保持部20は、目付量等の調節によって吸収可能な加熱媒体の量を設定できるので、保持部20に吸収されずに余った加熱媒体を連通部26から排出する。次いで、袋体18の連通部26を開放したまま保持部20に加熱媒体を含ませた保温具10を電子レンジ等の装置で加熱することで、保持部20に保持された加熱媒体に対してマイクロ波が照射され、これにより極性を有する加熱媒体が誘電加熱により発熱する。これに対して、蓄熱体12および袋体18の構成材は、何れも無極性分子からなる材料または低誘電率の材料から構成されているので、マイクロ波の照射によって実質的に自己発熱しない。保温具10は、発熱した加熱媒体によって蓄熱材14が間接的に加熱され、固体状態にあった蓄熱材14が液体に相転移し、蓄熱材14に顕熱だけでなく潜熱としても熱が蓄えられる。保温具10は、誘電加熱により液体から気体に相転移した加熱媒体が保持部20から連通部26を介して外方へ放散し、蓄熱材14に熱が十分に蓄えられた時点で保持部20が乾いた状態になる。そして、保温具10は、連通部26を係止手段28で閉じて、保温対象の保温に使用される。
次に、実施例1に係る保温具10の作用について説明する。保温具10は、蓄熱材14の融点が使用温度範囲内に設定されているので、蓄熱材14が加熱前(常温)の状態で基本的に固体状態にある。保温具10を使用する際は、先ず液状の加熱媒体を袋体18の連通部26から収納空間18aに供給することで、保持部20に加熱媒体を含ませる。このとき、実施例1の保温具10は、保持部20の外側が気密性を有する被覆部22で覆われているので、収納空間18aに供給した加熱媒体が被覆部22で阻まれて漏出しない。不織布からなる保持部20は、目付量等の調節によって吸収可能な加熱媒体の量を設定できるので、保持部20に吸収されずに余った加熱媒体を連通部26から排出する。次いで、袋体18の連通部26を開放したまま保持部20に加熱媒体を含ませた保温具10を電子レンジ等の装置で加熱することで、保持部20に保持された加熱媒体に対してマイクロ波が照射され、これにより極性を有する加熱媒体が誘電加熱により発熱する。これに対して、蓄熱体12および袋体18の構成材は、何れも無極性分子からなる材料または低誘電率の材料から構成されているので、マイクロ波の照射によって実質的に自己発熱しない。保温具10は、発熱した加熱媒体によって蓄熱材14が間接的に加熱され、固体状態にあった蓄熱材14が液体に相転移し、蓄熱材14に顕熱だけでなく潜熱としても熱が蓄えられる。保温具10は、誘電加熱により液体から気体に相転移した加熱媒体が保持部20から連通部26を介して外方へ放散し、蓄熱材14に熱が十分に蓄えられた時点で保持部20が乾いた状態になる。そして、保温具10は、連通部26を係止手段28で閉じて、保温対象の保温に使用される。
前記保温具10によれば、保持部20に含ませた加熱媒体を誘電加熱する構成であるから、加熱媒体が沸点より高い温度まで昇温せず、この加熱媒体の発熱によって加熱される保持部20を含む袋体18全体および蓄熱材14を含む蓄熱体12全体が加熱媒体の沸点より高い温度まで昇温され難い。また、保温具10は、保持部20の外側を被覆部22で覆っているので、保持部20の内側に位置する蓄熱体12と反対側から気化した加熱媒体が逃げることがなく、蓄熱体12が収納された収納空間18aに加熱媒体をある程度こもらせることができる。また、保温具10は、マイクロ波の照射時間の経過につれて、保持部20から加熱媒体が気化して放出されるので、保持部20から誘電加熱される対象が無くなる。しかも、保温具10は、袋体18に連通部26が設けられて収納空間18aが密閉されてないので、保持部20から収納空間18a側に放散した加熱媒体が収納空間18aにある程度こもって蓄熱材14と熱交換するものの、開放された連通部26から外方に放出される。すなわち、保温具10は、加熱媒体が袋体18または蓄熱体12に封入される構成ではなく、気化した加熱媒体が袋体18から外方へ放散可能に構成されているので、誘電加熱される加熱媒体が保温具10自体から無くなる。従って、保温具10は、長時間に亘ってまたは大出力でマイクロ波を照射しても、蓄熱体12および袋体18が加熱媒体との熱交換で得た熱量以上に過剰に加熱されることはない。また、保温具10は、連通部26を介して気化した加熱媒体を外方へ逃がすことで、気化した加熱媒体自体の過熱、逃げ場を失った加熱媒体による袋体の膨張や変形等の不都合を回避できる。
前記保温具10は、蓄熱体12および袋体18の構成材の全てがマイクロ波の照射により直接発熱せず、保持部20に含んだ加熱媒体の発熱のみによって間接的に加熱されるので、電子レンジ等の出力が大きい場合や電子レンジ等での加熱時間が長くなっても、これらの構成材が熱的な影響を直接受けない。また、収容材16に封入された蓄熱材14は、加熱媒体より沸点が高く設定されており、加熱媒体が沸点を越えて昇温しないので、加熱媒体による加熱によって蓄熱材14が気化することがない。すなわち、蓄熱体12は、電子レンジ等の出力が大きい場合や電子レンジ等での加熱時間が長くなっても、膨張や破裂等することはなく、安全性が非常に高い。すなわち、蓄熱体12は、収容材16に孔等の蒸気逃がしを設ける必要がなく、蓄熱体12の構成を簡易にでき、蓄熱材14の漏出や湿気の侵入による蓄熱材14の変質等の収容材16に蒸気逃がしを設けることによる弊害を回避できる。保温具10は、特に加熱媒体として水を用いることで、水の高い誘電率により効率よく蓄熱できると共に、取り扱い時の安全性が高いので好適である。
前記保温具10は、加熱度合いを加熱対象物から発生する水蒸気の検知により制御するオート制御を行う水蒸気制御タイプの電子レンジにおいて、オート制御により加熱しても不都合が起きない。すなわち、保温具10によれば、保持部20に含ませた加熱媒体がマイクロ波の照射により蒸発して連通部26を介して外方へ放散されるので、電子レンジが水蒸気を検知することができ、設定値まで加熱された段階で自動停止されるから際限なく加熱されることはない。このように、保温具10は、該保温具10に予め設定してある推奨加熱時間を越えて加熱したり、推奨出力を越えた大出力で加熱する等の誤った取り扱いをしても、前述の如く蓄熱体12および袋体18が過熱したり、蓄熱体12および袋体18が変形や破裂等しない最低限の安全性を有している。すなわち、保温具10は、使用者に過度の取り扱いの注意を負担させることがなく、簡単に使用することができる。
前記蓄熱材14は、その融点が保温具の使用温度範囲内に設定されている。すなわち、保温具10は、加熱前の状態において蓄熱材14が固体状態にあり、電子レンジで加熱することで、固体状態から液体状態になり、主に液体状態で使用される。保温具10は、固体である蓄熱材14が、加熱媒体の発熱により加熱されて液体に相転移するときに吸熱するので、固体または液体から相転移しない蓄熱材と比べて、より多くの熱量を蓄積することができる。そして、保温具10は、使用時に液体から固体に蓄熱材14が相転移するときに発熱するので、固体または液体から相転移しない蓄熱材と比べて、より多くの熱量を放散することができる。前述の如く、保温具10は、蓄熱材14の融点を使用温度範囲内に設定してあり、特に使用温度範囲で相転移するように設定することで、潜熱による発熱作用が得られるので、顕熱のみの場合と比べて、1回当たりの保温可能時間や対象を温める能力を向上することができる。また、保温具10は、蓄熱材14を液体状態で使用すると共に柔軟な収容材16および袋体18を用いることで、使用時に全体として柔軟性を有することになるので、保温対象への形状追随性が向上する。しかも、実施例1の保温具10は、蓄積された熱が失われると蓄熱材14が液体から固体に変わるので、使用終了時期が分かり易い。
前記保温具10は、保持部20として不織布を用いることで、繊維の種類、繊維の太さや繊維の目付量によって保持部20に保持可能な水の量を簡単に調節することができる。すなわち、保温具10は、蓄熱材14に十分蓄熱するのに足りる加熱媒体を保持部20に保持するよう設定しておくことで、蓄熱材14が蓄熱できる量を越えて無駄に加熱されることを防ぎ、使用時に加熱媒体が保持部20に残っている状態を回避して使用時の取り扱い性を向上できる。また、保温具10は、保持部20を構成する不織布の目付量等を調節することで、保持部20に加熱媒体を付与した際に袋体18から垂れることを防ぎ、加熱時の取り扱い性も向上できる。
前記袋体18は、保持部20の外側が気密性を有する被覆部22で覆われているので、保持部20に保持された加熱媒体を誘電加熱した際に、気化した加熱媒体が被覆部22で外方へ逃げることを阻むことができる。保温具10では、気化した加熱媒体が保持部20の内側に接している蓄熱体12に接触するように案内されるので、蓄熱材14を効率よく加熱することができる。しかも、実施例1の保温具10は、袋体18の内部に画成された収納空間18aに蓄熱体12を収納する構成であるので、気化した加熱媒体を被覆部22で囲われた収納空間18aに充満させることができ、気化した加熱媒体と蓄熱体12とを効果的に接触させることが可能である。すなわち、保温具10は、保持部20の外側を被覆部22で覆うことで、電子レンジ等での加熱時間を短縮化することができる。
前述の如く、被覆部22は、気化した加熱媒体の外側への流通を防ぐ部分なので、加熱媒体に加熱されて比較的温度が高くなり易い。保温具10は、保持部20および加熱媒体に直接触れていない分だけ被覆部22と比較して加熱され難い保護部24で外郭を構成しているので、保持部20に保持された加熱媒体の誘電加熱に伴って昇温する被覆部22を使用者が直接触らなくてもよく、より安全性を高めることができる。また、袋体18は、被覆部22の外側を保護部24で覆うことで、蓄熱体12または保持部20の熱が収納空間側から外方へ放散され難くなり、電子レンジ等において蓄熱体12を効率よく間接的に加熱することができる。しかも、保温具10は、保護部24によって蓄熱体12からの熱の放散が緩やかになるよう調節することができ、保温具10を長時間に亘って使用できる。保護部24としては、不織布や発泡体等の被覆部22と比べて熱伝導率が低い材料を選択すれば、電子レンジ等での加熱後の取扱い性が良くなり、保温具10(蓄熱体12)からの熱の放散をより緩やかに調節でき、保温対象が人であるカイロ等に用いられる場合は特に有用である。
(実験1)
実験1では、以下の条件で作成した実験例1,2および比較例1に係る保温具について、電子レンジで加熱試験を行った。
・実験例1
蓄熱材:パラフィン(WAX-120:日本精蝋製)、融点50℃、誘電率1.2〜2.5
収容材:ポリエチレン製袋、厚さ0.2mm、誘電率2.2〜2.4
保持部:不織布(ポリプロピレン製、目付量200g/m2)、厚さ5mm、誘電率2.0〜2.3
実験例1の保温具は、収容材に蓄熱材100mlを封入した蓄熱体を、袋状に形成した保持部のみからなる袋体の中に収納して構成される。
・実験例2
蓄熱体:ポリエチレン製の板状体(縦5mm、横5mm、厚さ4mm)、誘電率1.7〜2.4
保持部:不織布(ポリプロピレン製、目付量200g/m2)、厚さ5mm、誘電率2.0〜2.3
実験例2の保温具は、蓄熱体を袋状に形成した保持部のみからなる袋体の中に収納して構成される。
・比較例1
蓄熱材:ポリエチレングリコール(PEG-1500:三洋化成製)、融点40℃、誘電率35
収容材:ポリエチレン製袋、厚さ0.2mm、誘電率2.2〜2.4
保持部:不織布(ポリプロピレン製、目付量200g/m2)、厚さ5mm、誘電率2.0〜2.3
比較例1の保温具は、収容材に蓄熱材100mlを封入した蓄熱体を、袋状に形成した保持部のみからなる袋体の中に収納して構成される。
実験1では、以下の条件で作成した実験例1,2および比較例1に係る保温具について、電子レンジで加熱試験を行った。
・実験例1
蓄熱材:パラフィン(WAX-120:日本精蝋製)、融点50℃、誘電率1.2〜2.5
収容材:ポリエチレン製袋、厚さ0.2mm、誘電率2.2〜2.4
保持部:不織布(ポリプロピレン製、目付量200g/m2)、厚さ5mm、誘電率2.0〜2.3
実験例1の保温具は、収容材に蓄熱材100mlを封入した蓄熱体を、袋状に形成した保持部のみからなる袋体の中に収納して構成される。
・実験例2
蓄熱体:ポリエチレン製の板状体(縦5mm、横5mm、厚さ4mm)、誘電率1.7〜2.4
保持部:不織布(ポリプロピレン製、目付量200g/m2)、厚さ5mm、誘電率2.0〜2.3
実験例2の保温具は、蓄熱体を袋状に形成した保持部のみからなる袋体の中に収納して構成される。
・比較例1
蓄熱材:ポリエチレングリコール(PEG-1500:三洋化成製)、融点40℃、誘電率35
収容材:ポリエチレン製袋、厚さ0.2mm、誘電率2.2〜2.4
保持部:不織布(ポリプロピレン製、目付量200g/m2)、厚さ5mm、誘電率2.0〜2.3
比較例1の保温具は、収容材に蓄熱材100mlを封入した蓄熱体を、袋状に形成した保持部のみからなる袋体の中に収納して構成される。
実験1では、各保温具の保持部に水10mlを吸収させた状態で電子レンジで500Wの出力で加熱した。実験例1および2の保温具の夫々を、電子レンジで20分間加熱した後、外気温20℃の条件下で保持部表面の温度を測定したところ、実験例1の保温具は当初20℃から40℃まで昇温し、実験例2の保温具は加熱開始当初の20℃から30℃まで昇温していた。なお、実験例1および2の保温具は、目視で確認したところ、構成材に変形や溶融等の変化もない。これに対し、比較例1の保温具は、加熱時間が20分になる前に蓄熱体が破裂した。
実験1の結果より判るように、蓄熱材、収容材、保持部の夫々が誘電率2.5以下の誘電加熱され難い構成材だけから構成された実験例1および実験例2の保温具であっても、電子レンジでの加熱後に昇温していることから、保持部に含ませた水の誘電加熱によって蓄熱体に熱を蓄積可能であることが確認できる。なお、蓄熱材としては、ポリエチレンよりパラフィンのほうが蓄熱性がよいことも確認できる。また、誘電率2.5以下の構成材で構成された実験例1および2の保温具は、誘電率が35もある高い蓄熱材からなる比較例1の保温具が破裂する時間以上の長時間に亘って加熱しても、構成材の膨張や変形等の変化はなく、安全性に優れていることが確認できる。
実験2では、以下の条件で作成した実験例3の保温具および比較例2〜4の保温具について、蓄熱体の保温性能を比較した。比較例2の蓄熱材としては、一般的な蓄熱材として使用されるポリエチレングリコールを採用し、比較例3の蓄熱材としては、一般的な湯たんぽに使用されるものとして、水を想定し、比較例4として市販されている電子レンジ加熱型の湯たんぽに採用されている蓄熱材を用いている。
・実験例3
蓄熱材:パラフィン(WAX-120:日本精蝋製)、融点50℃
・比較例2
蓄熱材:ポリエチレングリコール(PEG-1500:三洋化成製)、融点40℃
・比較例3
蓄熱材:水
・比較例4
蓄熱材:ポリビニルアルコールと水とのジェル状混合物
実験例3、比較例2〜4は、ポリプロピレン製容器(厚さ1.0mm、誘電率2.0〜2.3)からなる収容材に、蓄熱材80gを入れて蓄熱体を夫々作成した。
・実験例3
蓄熱材:パラフィン(WAX-120:日本精蝋製)、融点50℃
・比較例2
蓄熱材:ポリエチレングリコール(PEG-1500:三洋化成製)、融点40℃
・比較例3
蓄熱材:水
・比較例4
蓄熱材:ポリビニルアルコールと水とのジェル状混合物
実験例3、比較例2〜4は、ポリプロピレン製容器(厚さ1.0mm、誘電率2.0〜2.3)からなる収容材に、蓄熱材80gを入れて蓄熱体を夫々作成した。
実験例3、比較例2〜4の蓄熱体を、恒温槽で80℃に設定された水の中に3時間浸漬し、不織布を袋状に形成した保持部からなる袋体に、恒温槽から取り出した蓄熱体を収納し、蓄熱体の外面に温度センサを付けて20℃に設定した恒温室で温度変化を測定した。その結果を図3に示す。図3より判るように、実験例3の蓄熱体は、融点が50℃であって当該温度近傍で顕熱だけでなく潜熱が放出されるので、40〜50℃の範囲で温度が下がり難く、また比較例2〜4の蓄熱体と遜色ない保温性能を有していることを確認できる。
(実験3)
実験3では、以下の条件で作成した実験例4の保温具および比較例5の保温具について、電子レンジで加熱した際の温度変化を検証した。
・実験例4
蓄熱材:パラフィン(WAX-120:日本精蝋製)、融点50℃、誘電率1.2〜2.5
収容材:ポリプロピレン製袋、厚さ0.2mm、誘電率2.0〜2.3
保持部:不織布(ポリプロピレン製、目付量200g/m2)、厚さ5mm、誘電率2.0〜2.3
実験例4の保温具は、収容材に蓄熱材80gを封入した蓄熱体を、袋状に形成した保持部のみからなる袋体の中に収納して構成される。
・比較例5
蓄熱材:ポリエチレングリコール(PEG-1500:三洋化成製)、融点40℃
比較例5は、ポリエチレン製容器(厚さ0.2mm、誘電率2.2〜2.4)からなる収容材に、蓄熱材80gを入れて蓄熱体を作成し、この蓄熱体を実験例4と同じ保持部からなる袋体に収納して構成される。
実験3では、以下の条件で作成した実験例4の保温具および比較例5の保温具について、電子レンジで加熱した際の温度変化を検証した。
・実験例4
蓄熱材:パラフィン(WAX-120:日本精蝋製)、融点50℃、誘電率1.2〜2.5
収容材:ポリプロピレン製袋、厚さ0.2mm、誘電率2.0〜2.3
保持部:不織布(ポリプロピレン製、目付量200g/m2)、厚さ5mm、誘電率2.0〜2.3
実験例4の保温具は、収容材に蓄熱材80gを封入した蓄熱体を、袋状に形成した保持部のみからなる袋体の中に収納して構成される。
・比較例5
蓄熱材:ポリエチレングリコール(PEG-1500:三洋化成製)、融点40℃
比較例5は、ポリエチレン製容器(厚さ0.2mm、誘電率2.2〜2.4)からなる収容材に、蓄熱材80gを入れて蓄熱体を作成し、この蓄熱体を実験例4と同じ保持部からなる袋体に収納して構成される。
実験3では、実験例4の保温具の保持部に水20mlを吸収させた状態で電子レンジで500Wの出力で加熱し、比較例5は、保持部に水を付与することなく、実験例4と同様に加熱した。また、比較例6として、実施例4と同一構成の保温具に水を含ませない状態で実験例4と同様に加熱した。その結果を図4に示す。図4に示すように、比較例5の保温具は、時間と共に際限なく温度上昇する一方、実験例4の保温具は、100℃を越えて温度上昇しないことが確認される。また、実験例4の保温具は、保持材に含ませた水が放散すると、誘電加熱される媒体が保温具からなくなってしまうので温度降下する。更に、比較例6の保温具の温度変化結果より判るように、実験例4の保温具は、保持材に水を付与しないと加熱されない。
図5に示す実施例2の袋体52を備えた保温具50は、保持部54を除いて実施例1の保温具10と同様の構成である。よって、実施例2については、実施例1と同じ部分については同じ符号を付して説明を省略し、実施例1と異なる部分について以下説明する。
図5に示すように、実施例2の保持部54には、カプセル状の補助蓄熱体(蓄熱体)56が分散されている。補助蓄熱体56は、熱の蓄積を担う補助蓄熱材(蓄熱材)58と、この補助蓄熱材58を収容する補助収容材(外皮材)60とから構成され、補助蓄熱材58が補助収容材60に封入されている。補助蓄熱体56を構成する補助蓄熱材58および補助収容材60は、実施例1の蓄熱体12と同様に、無極性分子からなる材料または加熱媒体より誘電率が低い材料で構成される。このように、補助蓄熱体56の構成材として、誘電加熱されないまたは誘電加熱され難い材料が採用される。すなわち、補助蓄熱体56は、マイクロ波の照射により自己発熱せず、また自己発熱したとしてもその発熱量が微少であるので外部に放散する熱量との関係により昇温しないよう構成される。ここで、補助蓄熱体56の構成材として、誘電率が2.5以下の範囲にある材料を用いるのがより望ましい。
前記補助蓄熱材58は、常温から加熱媒体の沸点の範囲内で設定される保温具50の使用温度範囲の間に、融点がある材料を採用するとよい。すなわち、補助蓄熱材58は、保温具50の使用温度範囲において液体と固体の間で相転移するよう設定されている。また、補助蓄熱材58は、その沸点が加熱媒体の沸点より大きい材料が好ましく、実施例2では加熱媒体として水が用いられるので、補助蓄熱材として沸点が100℃より大きい材料が選択される。補助蓄熱材58としては、例えば脂肪族炭化水素化合物やシリコーン等が挙げられ、脂肪族炭化水素化合物の中でもパラフィンが特に好適である。なお、補助蓄熱材58は、水等の誘電率の高い材料を含まなければ、単一の材料で構成しても、複数の材料を組み合わせて構成してもよい。
前記補助収容材60は、例えば脂肪族炭化水素化合物やシリコーン等からなる膜状物である。補助収容材60としては、脂肪族炭化水素化合物の中でもポリエチレン(誘電率2.2〜2.4)やポリプロピレン(誘電率2.0〜2.3)等のオレフィン系合成樹脂が好適である。また、補助収容材60に用いられる材料としては、融点またはガラス転移点が加熱媒体の沸点より高いものが採用される。補助収容材60は、補助蓄熱材58を内部に封入すると共に外部から液状の加熱媒体の侵入を阻む液密性だけでなく、気化した加熱媒体が内部に入らない気密性を有している。
前記補助蓄熱体56は、補助収容材60に0.027ml(半径0.18mm程度の球に相当)〜8ml(半径1.25mm程度の球に相当)の範囲で補助蓄熱材58を封入して構成するのが好ましい。補助蓄熱材58が0.027ml未満になると、個々の補助蓄熱体56に保持できる熱量が小さくなり、外気温の影響を受け易くなって保温性能が低下する傾向が強くなる。また、小さい補助蓄熱体56は、製造コストが嵩んでしまう。これに対して、補助蓄熱材58が8mlより多くなると、個々の補助蓄熱材58が大きくなるので、保持部54(袋体52)の機械的物性を阻害する傾向が強くなる。特に、補助蓄熱材58として、常温で固体となるものを選択した際に、補助蓄熱体56が大きくなると、保持部54の柔軟性等を損なうことになり、使用感を悪化させる要因となる。すなわち、実施例2の保温具50は、補助蓄熱材58を8ml以下封入した補助蓄熱体56を保持部54に分散することで、実施例1の如く被覆部22や保護部24を柔軟性を有する材料で構成すれば袋体52全体として柔軟性を保つことができる。
前記補助蓄熱体56は、保持部54の体積に対して50%〜80%の範囲で該保持部54に分散するとよい。保持部54の体積に対する補助蓄熱体56の総体積が50%未満であると、補助蓄熱体56による十分な保温性能が得られ難くなる。一方、保持部54の体積に対する補助蓄熱体56の総体積が80%より多くなると、保持部54の断熱作用が得られ難くなるので補助蓄熱体56が冷め易くなってしまう。
実施例2の保持部54は、実施例1と同様に、多孔質または繊維材料で形成され、液状の加熱媒体を吸収および保持可能で、かつ気化した加熱媒体を放散可能に構成されている。保持部54としては、スポンジ、フォームラバーまたは発泡体等の多孔質材料や、不織布、織布または紙等の繊維材料を選択することができ、実施例2では、オレフィン系の合成樹脂繊維からなる不織布から保持部54が形成されている。不織布からなる保持部54であれば、繊維に接着剤等によって補助蓄熱体56が固定され、多孔質材料からなる保持部であれば、補助蓄熱体を混合した発泡原料を発泡成形することで、保持部中に補助蓄熱体が分散される。
実施例2の保温具50は、補助蓄熱材58の融点が使用温度範囲内に設定されているので、補助蓄熱材58が加熱前(常温)の状態で基本的に固体状態にある。保温具50は、保持部54に液状の加熱媒体を含ませて、電子レンジ等の装置で加熱することで、保持部54に保持された加熱媒体に対してマイクロ波が照射され、これにより極性を有する加熱媒体が誘電加熱により発熱する。これに対して、補助蓄熱体56の構成材は、何れも無極性分子からなる材料または低誘電率の材料から構成されているので、マイクロ波の照射によって実質的に自己発熱しない。そして、補助蓄熱体56は、発熱した加熱媒体によって間接的に加熱され、固体状態にあった補助蓄熱材58が液体に相転移し、補助蓄熱材58に顕熱だけでなく潜熱としても熱が蓄えられる。
実施例2の保温具50は、前述した実施例1の作用効果に加えて、以下のような作用効果がある。保温具50は、補助蓄熱体56が保持部54と一体になっているので、保持部54に保持された加熱媒体との間で熱交換し易く、補助蓄熱体56を効率よく加熱することができる。また、保持部54は、加熱媒体を保持できる間隙(多孔質材料であれば連通孔、繊維材料であれば繊維間の隙間)を有しているので、誘電加熱により間隙から加熱媒体が気化して外方へ放散すると、この間隙が断熱空間として機能する。すなわち、保持部54に分散された補助蓄熱体56は、断熱材で囲われた状態にあり、実施例2の保温具50は、補助蓄熱体56から熱を外方へ徐々に放散することができ、使用時間を長くすることが可能となる。そして、実施例2の保温具は、袋体52に収納した蓄熱体12に加えて保持部54に補助蓄熱体56を有しているので、蓄熱量を増大することができる。
(変更例)
前述した実施例の構成に限定されず、以下のように変更することもできる。
(1)実施例では、保持部を構成する不織布の外面にフィルム状の被覆部を積層する構成を例示したが、保持部を構成する不織布の外面を加熱溶融および圧縮することで、気密性を有する被覆部を保持部と一体形成してもよい。
前述した実施例の構成に限定されず、以下のように変更することもできる。
(1)実施例では、保持部を構成する不織布の外面にフィルム状の被覆部を積層する構成を例示したが、保持部を構成する不織布の外面を加熱溶融および圧縮することで、気密性を有する被覆部を保持部と一体形成してもよい。
12 蓄熱体、14 蓄熱材、16 収容材、18,52 袋体、
20,54 保持部、22 被覆部、24 保護部、56 補助蓄熱体
20,54 保持部、22 被覆部、24 保護部、56 補助蓄熱体
Claims (5)
- 内部に物品の収納空間を有する袋状に形成され、誘電加熱可能な高い誘電率を有する液状の加熱媒体を吸収・保持可能で、該液状の加熱媒体より誘電率が低い多孔質または繊維材料からなる保持部と、
気密性を有すると共に前記液状の加熱媒体より誘電率が低い材料からなり、前記保持部の外側を覆う被覆部とを備え、
前記保持部および前記被覆部には、外方から収納空間に連通し、液状の加熱媒体を外部から収納空間に供給可能で、気化した加熱媒体を収納空間から外部へ放出可能な連通部が形成される
ことを特徴とする袋体。 - 前記保持部は、無極性分子からなる材料または誘電率が2.5以下の材料から構成される請求項1記載の袋体。
- 前記保持部および前記被覆部は、前記加熱媒体の沸点より融点またはガラス転移点が高い耐熱性を有している請求項1または2記載の袋体。
- 前記保持部には、無極性分子からなる材料または前記加熱媒体より誘電率が低い材料からなる補助蓄熱体が分散される請求項1〜3の何れか一項に記載の袋体。
- 前記被覆部の外側を囲んで設けられた保護部を有し、
前記保護部は、前記液状の加熱媒体より誘電率が低く、かつ被覆部より熱伝導率が低い材料から構成される請求項1〜4の何れか一項に記載の袋体。
Priority Applications (1)
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