JP2011182342A - アンテナ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】2つの軸モードヘリカルアンテナを有し、主ビームのφ方向及びθ方向の指向性を、各アンテナに入力される高周波信号の位相と強度によって制御できるアンテナ装置において、小型化と広帯域化を図る。
【解決手段】各アンテナの螺旋部は誘電体内に配置されている。第1螺旋部は、1回巻き部分の周囲長がm・λ(mは正の整数)とされている。一方、第2螺旋部は、第1螺旋部の軸方向に垂直な方向において第1螺旋部の外側に間隔をあけて配置されるとともに第1螺旋部の軸方向に沿って巻き上げられている。また、地板側の端部から1回巻き部分の周囲長ksが使用波長n・λ(nはmより大きい正の整数)とされている。さらに、地板に近い側の第1の1回巻き部分の周囲長k1が、第1の1回巻き部分に連続する第2の1回巻き部分の周囲長k2以上とされ、且つ、地板の一面にもっとも遠い1回巻き部分の周囲長keが(m・λ)<ke<ksを満たしている。
【選択図】図6

Description

本発明は、ヘリカルアンテナを備えたアンテナ装置に関するものである。
従来、良好な円偏波特性を有する線状アンテナとして、ヘリカルアンテナが広く利用されている。
このようなヘリカルアンテナは、単一で用いると指向性制御が困難である。そこで、特許文献1に示されるように、複数のヘリカルアンテナを反射板の同一面に配列したアレー構造のものが知られている。
特開平8−789946号公報
しかしながら、特許文献1に示されるアレー構造のアンテナ装置では、アンテナビームの形状を維持したまま指向性を制御するために、各ヘリカルアンテナを使用波長λの1/2の間隔で配置する必要がある。このため、アンテナ装置を小型化するのが困難である。
これに対し、本出願人は、2つのヘリカルアンテナを備えたアンテナ装置を提案している(特願2009−7545号)。このアンテナ装置は、第1アンテナ及び第2アンテナの2つの軸モードヘリカルアンテナを有している。第1アンテナは、地板の一面に対して垂直方向に延びており、1回巻き部分の周囲長が使用波長λのα倍(αは正の整数)の一定長さで螺旋状に巻き上げられた第1螺旋部を有している。一方、第2アンテナは、地板の一面に対して垂直方向に延びており、第1螺旋部の軸方向に垂直な方向において第1螺旋部の外側に間隔をあけて配置されるとともに、1回巻き部分の周囲長が使用波長λのβ倍(βはαより大きい正の整数)の一定長さで螺旋状に巻き上げられた第2螺旋部を有している。
また、上記先願のアンテナ装置は、発信器、該発信器に接続された分配器、分配器の出力側及び第1アンテナの給電点に接続された第1位相器、分配器の出力側及び第2アンテナの給電点に接続された第2位相器を有する給電回路を備えている。
例えば、第1螺旋部の1回巻き部分の周囲長が使用波長λとほぼ同じ(α=1)場合、第1アンテナから放射されるビームの最大利得方向は、地板の一面に垂直な方向、すなわち第1螺旋部の軸方向となる。一方、第2螺旋部の1回巻き部分の周囲長が使用波長λの2倍程度(β=2)の場合、地板の一面に平行な軸を中心とする回転方向をθ方向(第2螺旋部の軸方向に対する傾き方向)とすると、θ=30°が、第2アンテナから放射されるビームの最大利得方向となる。
そして、2つの位相器にて、上記した2つのアンテナにそれぞれ入力される高周波信号の位相差を制御することで、2つのアンテナが同一タイミングで動作し、相互作用にて生じる主ビームのφ方向の指向性を、任意方向(φ方向に360°の範囲)に制御できるようになっている。なお、φ方向とは、地板の一面に垂直な方向に沿う軸を中心とする回転方向である。
また、分配器にて、上記した2つのアンテナにそれぞれ入力される高周波信号の強度(振幅)を制御することで、相互作用にて生じる主ビームのθ方向の指向性を、任意方向(θ方向に0°〜30°の範囲)に制御できるようになっている。
このように、本出願人による先のアンテナ装置は、主ビームのφ方向及びθ方向の指向性を、各アンテナに入力される高周波信号の位相と強度によって制御できる構成となっている。また、第2螺旋部の内側に第1螺旋部を配置することで、複数のヘリカルアンテナを有しながら、上記した特許文献1に示す構成よりも体格を小型化することができる。
本発明者は、このような構成のアンテナ装置について、誘電体による波長短縮効果を利用することで、さらなる体格の小型化を検討した。しかしながら、アンテナの構成によっては、誘電体によって小型化は図れるものの、第2アンテナが狭帯域性となることが明らかとなった。
本発明は上記問題点に鑑み、2つの軸モードヘリカルアンテナを有し、主ビームのφ方向及びθ方向の指向性を、各アンテナに入力される高周波信号の位相と強度によって制御できるアンテナ装置において、小型化と広帯域化を図ることを目的とする。
上記目的を達成する為に、請求項1に記載の発明は、
地板と、
地板の一面上に配置された誘電体と、
誘電体の内部に配置された部分として、地板の一面に対して垂直方向に延び、1回巻き部分の周囲長が使用波長λのm倍(mは正の整数)の一定長さで螺旋状に巻き上げられた第1螺旋部を有する第1アンテナと、
誘電体の内部に配置された部分として、第1螺旋部の軸方向に垂直な方向において第1螺旋部の外側に間隔をあけて配置されるとともに第1螺旋部の軸方向に沿って螺旋状に巻き上げられた第2螺旋部を有する第2アンテナと、
発信器、該発信器に接続された分配器、分配器の出力側及び第1アンテナの給電点に接続された第1位相器、分配器の出力側及び第2アンテナの給電点に接続された第2位相器を有する給電回路と、を備え、
第2螺旋部は、地板側の端部から1回巻き部分の周囲長ksが使用波長λのn倍(nはmより大きい正の整数)の長さとされるとともに、地板に近い側の第1の1回巻き部分の周囲長k1と、第1の1回巻き部分における地板に遠い側の端部に連続する第2の1回巻き部分の周囲長k2とがk1≧k2を満たし、且つ、地板の一面にもっとも遠い位置の1回巻き部分の周囲長keが(m・λ)<ke<ks(=n・λ)を満たすように、螺旋状に巻き上げられていることを特徴とする。
本発明者による鋭意検討の結果、第1螺旋部を誘電体の内部に配置し、第2螺旋部を誘電体の表面に巻回した構成では、波長短縮効果が殆ど得られないことが明らかとなった。これに対し、本発明では、第1螺旋部及び第2螺旋部が、ともに誘電体の内部に配置されている。このような構成とすると、誘電体の波長短縮効果により、アンテナの体格、ひいてはアンテナ装置の体格を小型化することができる。
また、鋭意検討の結果、第2螺旋部が、1回巻き部分の周囲長が使用波長λのn倍(nはmより大きい正の整数)の一定長さで巻き上げられた構成、例えば第2螺旋部が、軸方向に垂直な断面形状が円形とされ、1回巻き部分の直径が軸方向のいずれの箇所でも一定とされた構成では、誘電体のないと第2アンテナの帯域が広帯域であり、誘電体があると狭帯域となること明らかとなった。
このように、アンテナが狭帯域性を有すると、製造ばらつきが生じた際に、所望の使用波長λが第2アンテナ、ひいては2つのアンテナの帯域から外れ、アンテナが安定して動作しない恐れがある。
このような誘電体による狭帯域化は、第2螺旋部に流れる進行波電流から放射された電界が誘電体と外部雰囲気(空気)との境界で反射されて反射波が生じ、この反射波により第2螺旋部に反射波電流が誘起されることで、第2螺旋部に定在波が生じるためであると考えられる。また、このような電界の反射は、第2螺旋部において、地板から離れた部分ほど、電界が軸方向に垂直な方向において地板の遠くの部分まで作用するため、電界が誘電体と外部雰囲気(空気)との境界に到達しやすく、影響が大きくなると考えられる。
これに対し、本発明では、第2螺旋部の1回巻き部分の周囲長が一定でなく、地板側の端部から1回巻き部分の周囲長が最も長く、地板の一面にもっとも遠い位置の1回巻き部分の周囲長が最も短くなっている。また、連続する任意の2つの1回巻き部分において、地板に遠い側の第2の1回巻き部分の周囲長k2が、地板に近い側の第1の1回巻き部分の周囲長k1以上の長さとなっている。
したがって、誘電体の大きさが同じであれば、1回巻き部分の周囲長が一定長さで巻き上げられた構成の第2螺旋部に比べて、電界の反射の影響を低減することができる。そして、これにより、第2アンテナの帯域を従来よりも広帯域とすることができる。
以上より、本発明によれば、2つの軸モードヘリカルアンテナを有し、主ビームのφ方向及びθ方向の指向性を、各アンテナに入力される高周波信号の位相と強度によって制御できるアンテナ装置において、小型化と広帯域化を図ることができる。
具体的には、請求項2に記載のように、第2螺旋部として、地板の一面から遠ざかるほど1回巻き部分の周囲長が短くなるようなテーパを有して、螺旋状に巻き上げられた構成を採用することができる。
より具体的には、請求項4に記載のように、第2螺旋部として、地板の一面に対して垂直な方向において、1回巻き部分の周囲長の変化量が一定のテーパを有したものを採用することができる。これによれば、変化量が一定であるので、テーパを持った第2螺旋部を形成しやすいという利点がある。
なお、テーパとしては、上記以外にも、1回巻き部分の周囲長の変化量が地板に近いほど大きいテーパや、1回巻き部分の周囲長の変化量が地板に近いほど小さいテーパを採用することもできる。
また、請求項3に記載のように、第2螺旋部が、地板の一面から遠ざかるほど1回巻き部分の周囲長が短くなる部分と、連続する複数の1回巻き部分の周囲長が等しい部分を含む構成としても良い。このように、第2螺旋部の一部に、1回巻き部分の周囲長が変化しない部分を含む構成も採用が可能である。
請求項5に記載のように、第1螺旋部の1回巻き部分の周囲長は使用波長と同じ(m=1)長さとされ、第2螺旋部の地板側の端部から1回巻き部分の周囲長ksは、使用波長の2倍(n=2)の長さとされた構成を採用すると良い。これによれば、使用波長に対してアンテナの体格を最も小型化することが可能である。
請求項6に記載のように、第1螺旋部及び第2螺旋部は、ともに軸方向に垂直な断面形状が円形とされ、第2螺旋部は、第1螺旋部に対して径方向外側に配置された構成としても良い。この場合、請求項7に記載のように、第2螺旋部において、地板側の端部から1回巻き部分の直径Dsと、地板の一面にもっとも遠い位置の1回巻き部分の直径Deとの比(De/Ds)が0.7以上0.8以下の範囲内となるように、第2螺旋部が構成されることが好ましい。
上記した本発明によれば、軸方向に垂直な方向において、第1螺旋部と第2螺旋部の間隔が、1回巻き部分の周囲長が一定長さで巻き上げられた第2螺旋部を有する構成のアンテナ装置に比べて、部分的に狭くなる。このため、第1螺旋部に流れる進行波電流に対して、第2螺旋部にイメージ電流が誘起され、このイメージ電流により、第1螺旋部の進行波電流が一部相殺され、第1アンテナの利得、ひいては2つのアンテナの利得が低下する恐れがある。
これに対し、上記条件を満たすように第2螺旋部を設定すると、第2アンテナの帯域を、誘電体無しの状態の帯域以上の広さとすることができ、且つ、第1アンテナの利得を、1回巻き部分の周囲長が一定長さで巻き上げられた第2螺旋部を有する構成の第1アンテナの利得と同程度(±0.25dBiの範囲内)とすることができる。
参考例としての、アンテナ装置の概略構成を示す図である。 参考例として、図1に示す構成に、誘電体を付加したアンテナ装置の、アンテナ付近の概略構成を示す図である。 図1、図2に示すアンテナ装置の、周波数と電圧定在波比(VSWR)との関係を示す図である。 図1に示すアンテナ装置の、第2螺旋部にて生じる電界を示す模式的な図である。 図2に示すアンテナ装置の、第2螺旋部にて生じる電界を示す模式的な図である。 第1実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す図である。 図6に示すアンテナ装置の、第2螺旋部にて生じる電界を示す模式的な図である。 図6に示すアンテナ装置の、周波数と電圧定在波比(VSWR)との関係を示す図である。 テーパを有する第2螺旋部に誘起されるイメージ電流を示す図である。 シミュレーションに用いたアンテナ装置の構成を示す図である。 第2螺旋部のテーパの度合い、第1アンテナの利得、及び第2アンテナの帯域の関係を示す図である。 第2螺旋部の変形例を示す図である。 第2螺旋部の変形例を示す図である。
本発明の実施形態について説明する前に、本発明者が本発明を創作するに至った経緯を説明する。
図1は、上記した本出願人による先願(特願2009−7545号)に示されたアンテナ装置を示している。なお、図1に示すように、地板20の螺旋部31,41が配置される一面に沿う方向で、且つ、互いに直交する2軸方向を、x軸方向、y軸方向とし、地板20の厚さ方向を、z軸方向としている。また、z軸を中心とする回転方向をφ方向とし、y軸を中心とする回転方向をθ方向としている。
また、以下に示すアンテナ30,40(螺旋部31,41)の長さ、方向の規定については、その文言が、完全一致のみを指すのではなく、ほぼ一致を指すものとする。例えば、「2倍の長さ」との記載は、2倍程度の長さを指し、「垂直方向」との記載は、略垂直方向を指すものとする。
図1に示すアンテナ装置10は、2つの軸モードヘリカルアンテナを有している。第1アンテナ30は、地板20の一面に対して垂直方向(z軸方向)に延び、1回巻き部分の周囲長が使用波長λのα倍(αは正の整数)の一定長さで螺旋状に巻き上げられた第1螺旋部31を有している。すなわち、第1螺旋部31の軸方向がz軸方向と平行となっている。
一方、第2アンテナ40は、第1螺旋部の軸方向(z軸方向)に垂直な方向において第1螺旋部の外側に間隔をあけて配置されるとともに第1螺旋部31の軸方向(z軸方向)に沿って延び、1回巻き部分の周囲長が使用波長λのβ倍(βはαより大きい正の整数)の一定長さで螺旋状に巻き上げられた第2螺旋部41を有している。
これらアンテナ30,40は、線材を、軸方向に垂直な断面形状(1回巻き部分の、軸方向に垂直な平面形状)が円形となるように巻回してそれぞれ形成されている。そして、第2螺旋部41は、第1螺旋部31に対して径方向外側に配置されている。また、図1に示す例では、第1螺旋部31の1回巻き部分の周囲長が使用波長λと同じ長さ(α=1)とされ、第2螺旋部41の1回巻き部分の周囲長が使用波長λの2倍の長さ(β=2)となっている。したがって、第2螺旋部41の直径Dの長さは、2λ/πとなっている。
また、図1に示すアンテナ装置10では、地板20が所定の厚さを有する平板状とされ、その一面が円形となっている。そして、地板20における一面の中心を、第1アンテナ30の第1螺旋部31の軸と、第2アンテナ40の第2螺旋部41の軸が通るように、2つのアンテナ30,40が配置されている。すなわち、第1螺旋部31と第2螺旋部41とは、地板20の一面の中心に対してほぼ同心円状に配置されている。このため、軸方向(z軸方向)に垂直な方向において、外側に位置する第2アンテナの第2螺旋部41から地板20の端部までの距離は、軸周り(z軸周り)全周でほぼ同じとなっている。
また、アンテナ装置10は、各アンテナ30,40へ高周波信号を供給する給電回路50を備えている。この給電回路50は、高周波信号を生成して出力する発信器51と、この発信器51に接続されるとともに、入力された高周波信号を分配する分配器52を有している。この分配器52は、各位相器53,54に入力される高周波信号の強度(振幅)を制御する機能を有している。すなわち、2つのアンテナ30,40にそれぞれ入力される高周波信号の強度比を任意に制御できる構成となっている。
また、給電回路50は、分配器52から入力された高周波信号の位相を調整する位相器53,54を有している。第1位相器53は、第1アンテナ30の給電点32に接続され、第2位相器54は、第2アンテナ40の給電点42に接続されている。そして、2つの位相器53,54により、2つのアンテナ30,40にそれぞれ入力される高周波信号の位相差を制御することができるようになっている。
このような構成のアンテナ装置10によれば、2つのアンテナ30,40を同一のタイミングで動作させ、相互作用にて生じる主ビームのφ方向及びθ方向の指向性を、各アンテナに入力される高周波信号の位相と強度によって制御することができる。また、第2螺旋部41の内側に第1螺旋部31を配置しているため、複数のヘリカルアンテナ30,40を有しながら、体格の小型化を図ることができる。
なお、図1に示すアンテナ装置10の構成及び作用効果の詳細については、特願2009−7545号に記載されているので、詳細な説明は割愛する。
本発明者は、このような構成のアンテナ装置10について、誘電体を用いることでさらなる体格の小型化を検討した。図2は、図1に示すアンテナ装置10において、地板20の一面上に誘電体60を配置するとともに、2つのアンテナ30,40の螺旋部31,41を、誘電体60の内部に配置した構成を示している。
図2に示す構成では、z軸方向に所定の厚さを有した略円柱状の誘電体60を採用しており、z軸に垂直な方向において、誘電体60の直径を、地板20の一面の直径とほぼ一致させている。すなわち、誘電体60が、地板20の一面全面を覆うように配置されている。
なお、本発明者が検討したところ、第1螺旋部31を誘電体60の内部に配置し、第2螺旋部41を誘電体60の表面に巻回した構成では、第2アンテナ40に対して波長短縮効果が殆ど得られないことが明らかとなった。一方、第2螺旋部41も誘電体60内に配置すると、誘電体60の波長短縮効果により、アンテナ30,40の体格、ひいてはアンテナ装置10の体格を小型化することができることも明らかとなった。この場合、第2螺旋部41の直径Dの長さは、2λ/(π・ε1/2)となる(図5参照)。
そこで、以下においては、図2に示すように、誘電体60の内部に螺旋部31,41を配置した構成について説明する。
本発明者は、図1及び図2に示したアンテナ装置10において、第2アンテナ40の帯域をそれぞれ調査した。その結果、誘電体60を有さない構成(図1に示す構成)では、図3に実線で示すように、第2アンテナ40が広帯域性を示した。一方、誘電体60を有する構成(図2に示す構成)では、図3に破線で示すように、第2アンテナ40が狭帯域性を示した。
このように、誘電体60の有無による第2アンテナ40の帯域の変化は、本発明者による電磁界シミュレーションの結果などから、以下の理由によるものと考えられる。
誘電体60を有さない構成(図1に示す構成)では、第2アンテナ40の動作時に、給電点42から該給電点42とは反対側の先端に向けて、第2アンテナ40を構成する線材の表面を進行波電電流が流れる。すなわち、図4に示すように、第2螺旋部41にも進行波電流43が流れる。このように、第2アンテナ40に進行波電流43が流れるため、第2アンテナ40は軸モードヘリカルアンテナとして動作し、これにより、第2アンテナ40は広帯域性を示す。
このとき、進行波電流43から電界が放射される。なお、図4に実線矢印で示す符号44は、進行波電流43から放射された主たる電界を示している。図4に断面で示される3つの第2螺旋部41を、地板20に近い側から第1の1回巻き部分41a、第2の1回巻き部分41b、第3の1回巻き部分41cとすると、各1回巻き部分41a〜41cにおける進行波電流43(高周波電流)の位相は同一極性となる。このため、各1回巻き部分41a〜41cに流れる進行波電流43から放射された主たる電界44は、z軸方向に垂直な方向において各1回巻き部分41a〜41cから離れた地板20の部分に向けて放射される。また、第2螺旋部41のうち、地板20に対して遠い1回巻き部分(例えば第3の1回巻き部分41c)ほど、z軸方向に垂直な方向において遠くの位置まで、電界44が放射されることとなる。なお、図4では、便宜上、進行波電流43から放射された電界のうち、第2螺旋部41よりも外側の主たる電界44のみを図示している。
一方、図5に示すように、誘電体60を有する構成(図2に示す構成)では、第2アンテナ40に進行波電流が流れると、第2螺旋部41に流れる進行波電流43から電界が放射される。図5に破線矢印で示す符号44aは、進行波電流43から放射された主たる電界を示している。この電界44aは、第2螺旋部41に流れる電流のうち、進行波電流43のみを考慮した仮想的な電界であり、進行波電流43を同じとすると図4に示した電界44と同じである。なお、図5では、電界44a,47や螺旋部31,41などを分かりやすくするために、敢えて誘電体60の断面指示ハッチングを省略している。
しかしながら、誘電体60と外部雰囲気である空気とは媒質が異なるため、電界44aの一部は、誘電体60と空気の境界、換言すれば誘電体60の側面60aにて反射される。このため、誘電体60内に電界44aの反射波45(反射電界)が発生し、この反射波45によって、第2アンテナ40(第2螺旋部41)に反射波電流46が誘起される。この反射波電流46は、進行波電流43と逆向きに流れ、これにより第2アンテナ40に定在波が発生する。
このように、誘電体60があると、電界44aの反射波45により第2アンテナ40に定在波が生じ、この結果、図3に破線で示したように、第2アンテナ40が狭帯域性を示すものと考えられる。
なお、図5に示すように、反射波45が生じると、電界44aのz軸に垂直な方向成分の一部が相殺され、相殺されずに残ったz軸に垂直な方向成分とz軸方向成分とのベクトル和が、第2螺旋部41に流れる電流(進行波電流43及び反射波電流46)から放射された実質的な電界47となる。したがって、z軸に垂直な方向において、実質的な電界47は、仮想的な電界44aよりも第2螺旋部41に近い位置に放射されることとなる。このように、第2アンテナ40の動作時に、第2螺旋部41に流れる電流から放射された主たる電界47は、誘電体60の内部に閉じ込められる。
また、図5に破線矢印で示す仮想的な電界44aと実線矢印で示す実質的な電界47との、地板20への到達点の差は、第2螺旋部41のうち、地板20に対して遠い1回巻き部分(例えば第3の1回巻き部分41c)ほど大きくなる。
そこで、本発明者は、図2に示したアンテナ装置10において、体格の小型化を図りつつ、第2アンテナ40の帯域を広帯域化、具体的には、誘電体60がない状態と同程度以上の帯域とするため、さらに鋭意検討をおこなった。以下に示す実施形態は、上記鋭意検討の結果、得られた知見に基づくものである。
(第1実施形態)
以下において、上記図1、図2に示した参考例の要素と同一若しくは関連する要素には、同一の符号を付与するものとする。また、方向の規定も、上記参考例と同じものとする。
また、以下に示すアンテナ30,40(螺旋部31,41)の長さ、方向の規定については、その文言が、完全一致のみを指すのではなく、ほぼ一致を指すものとする。例えば、「2倍の長さ」との記載は、2倍程度の長さを指し、「垂直方向」との記載は、略垂直方向を指すものとする。
本実施形態に係るアンテナ装置10は、狭域通信用のアンテナ装置として好適である。狭域通信用のアンテナ装置は、ITS(高度道路交通システム)で用いられる、小ゾーン(数m〜数十mの比較的近い距離)での双方向の無線通信、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)用のアンテナ装置である。このようなアンテナ装置としては、米国でのWAVE(Wireless for the Vehicular Environment)に用いられるアンテナ装置も含まれる。
狭域通信に用いられる電波の中心周波数は、日本では中心周波数5.8GHz、米国では中心周波数5.9GHzである。狭域通信用のアンテナ装置との間で双方向の通信をなすインフラとしては、路側機や他の車両の車載器(アンテナ)などが考えられる。
本実施形態では、アンテナ装置10が、ETC用のアンテナ装置となっている。DSRCの一例であるETCは、周知の通り、有料道路の料金所に設置された路側機(基地局)と車両に設置されたETC用のアンテナ装置との無線通信により、車両を停止することなく自動的に料金の支払いを処理するシステムである。なお、ETC(自動料金授受システム)は、財団法人道路システム高速化推進機構の登録商標である。
図6に示すように、本実施形態に係るアンテナ装置10は、図1及び図2に示したアンテナ装置10とほぼ同じ構成を有している。
具体的には、アンテナ装置10が、地板20(換言すれば反射板)と、地板20の一面上に配置された誘電体60を有している。本実施形態では、一例として、図1の構成同様、所定の厚さを有する平面円形状の地板20を採用している。また、略円柱状の誘電体60を採用しており、z軸に垂直な方向において、誘電体60の直径が地板20の一面の直径とほぼ一致している。このような誘電体60としては、樹脂やセラミックからなるものを採用することができる。
また、アンテナ装置10は、2つのアンテナ30,40を有している。第1アンテナ30は、誘電体60の内部に配置された部分として、地板20の一面に対して垂直方向(z軸方向)に延び、1回巻き部分の周囲長が使用波長λのm倍(mは正の整数)の一定長さで螺旋状に巻き上げられた第1螺旋部31を有している。一方、第2アンテナ40は、誘電体60の内部に配置された部分として、第1螺旋部31の軸方向(z軸方向)に垂直な方向において第1螺旋部31の外側に間隔をあけて配置されるとともに第1螺旋部31の軸方向に沿って螺旋状に巻き上げられた第2螺旋部41を有している。すなわち、z軸方向に垂直な方向において、第2螺旋部41が第1螺旋部31を包囲するように配置されている。
本実施形態では、一例として、図1の構成同様、線材を、軸方向に垂直な断面形状(1回巻き部分の、軸方向に垂直な平面形状)が円形となるように巻回して、第1螺旋部31及び第2螺旋部41が形成されている。そして、第2螺旋部41は、第1螺旋部31に対して径方向外側に配置されている。また、地板20における円形の一面の中心を、第1螺旋部31の軸及び第2螺旋部41の軸が通るように、2つのアンテナ30,40が配置されている。すなわち、第1螺旋部31と第2螺旋部41とは、地板20の一面の中心に対してほぼ同心円状に配置されている。このため、軸方向(z軸方向)に垂直な方向において、外側に位置する第2アンテナの第2螺旋部41から地板20の端部までの距離が、軸周り(z軸周り)全周でほぼ同じとなっている。
また、アンテナ装置10は、各アンテナ30,40へ高周波信号(進行波電流)を供給する給電回路50を備えている。この給電回路50の構成は、図1と同じである。すなわち、給電回路50は、発信器51、該発信器51に接続された分配器52、分配器52の出力側及び第1アンテナ30の給電点32に接続された第1位相器53、分配器52の出力側及び第2アンテナ40の給電点42に接続された第2位相器54を有している。
そして、このような構成のアンテナ装置10において、本実施形態では、第2アンテナ40における第2螺旋部41の形状に特徴がある。
第2螺旋部41において、地板20側の端部から1回巻き部分の周囲長ksは、使用波長λのn倍(nはmより大きい正の整数)の長さとされている。また、任意の連続する2つの1回巻き部分のうち、地板20に近い側の第1の1回巻き部分の周囲長k1と、地板20に遠い側の第2の1回巻き部分の周囲長k2とがk1≧k2を満たし、且つ、地板20の一面にもっとも遠い位置の1回巻き部分の周囲長keが(m・λ)<ke<ks(=n・λ)を満たしている。
本実施形態では、一例として、第1螺旋部31及び第2螺旋部41の巻き数が3となっており、各螺旋部31,41のピッチが互いにほぼ等しくなっている。また、地板20から先端までの長さ(高さ)も、第1螺旋部31と第2螺旋部41とでほぼ等しくなっている。
また、第1螺旋部31の1回巻き部分の周囲長は、使用波長λと同じ長さ(m=1)となっている。すなわち、1波長相当の長さとなっている。また、第2螺旋部41において、地板20側の端部から1回巻き部分の周囲長ksは、使用波長λの2倍(n=2)の長さとなっている。すなわち、2波長相当と長さとなっている。これにより、第2螺旋部41において、地板20側の端部から1回巻き部分の直径Dsは、図7に示すように、2λ/(π・ε1/2)となっている。
また、第2螺旋部41は、図6及び図7に示すように、地板20の一面から遠ざかるほど、1回巻き部分の周囲長が短くなるようなテーパを有して、螺旋状に巻き上げられている。換言すれば、地板20の一面から遠ざかるほど、1回巻き部分の直径が小さくなるようなテーパを有して、螺旋状に巻き上げられている。
より詳しくは、図7に示すように、第2螺旋部41が、z軸方向において1回巻き部分の周囲長の変化量が一定のテーパ、換言すれば直線状のテーパを有している。ここで、図7に断面で示される3つの第2螺旋部41を、地板20に近い側から第1の1回巻き部分41a、第2の1回巻き部分41b、第3の1回巻き部分41cとすると、第1の1回巻き部分41aの周囲長がks、第3の1回巻き部分41cの周囲長がkeとなる。第2の1回巻き部分41bの周囲長をkmとすると、ks>km>keとなっている。また、第1の1回巻き部分41aと第2の1回巻き部分41bの周囲長の差(ks−km)が、第2の1回巻き部分41bと第3の1回巻き部分41cの周囲長の差(km−ke)と等しくなっている。
これにより、第2螺旋部41において、地板20の一面にもっとも遠い位置の1回巻き部分の直径Deは、上記した地板20側の端部から1回巻き部分の直径Dsよりも小さく、且つ、第1螺旋部31の直径よりも大きい値となっている。なお、図7においても、電界48や螺旋部31,41などを分かりやすくするために、敢えて誘電体60の断面指示ハッチングを省略している。
次に、このように構成されたアンテナ装置10において、第2アンテナ40を広帯域化できる理由について説明する。なお、図7では、比較として、図5に示した第2螺旋部41と、該第2螺旋部41に流れる進行波電流43から放射される電界44aとを、破線で示している。
第2アンテナ40に進行波電流が流れると、第2螺旋部41に流れる進行波電流43から電界が放射される。図7に実線矢印で示す電界48は、進行波電流43から放射された主たる電界を示している。
本実施形態では、上記したように、第2螺旋部41が、地板20の一面から遠ざかるほど、1回巻き部分の周囲長が短くなるようなテーパを有して、螺旋状に巻き上げられている。これにより、第2螺旋部41のうち、地板20に対して遠い1回巻き部分ほど、z軸方向に垂直な方向において、誘電体60と空気との境界、すなわち誘電体60の側面60aまでの距離が長くなっている。地板20側の端部から1回巻き部分の周囲長ks(地板20側の端部から1回巻き部分の直径Ds)を同じとすると、図7に示すように、第2の1回巻き部分41bから誘電体60の側面60aまでの距離と、第3の1回巻き部分41cから誘電体60の側面60aまでの距離が、一定の周囲長で巻き上げられた第2螺旋部41(図7の破線)に比べて長くなっている。
このため、各1回巻き部分41a〜41cに流れる進行波電流43から放射された電界48、特に第2の1回巻き部分41bや第3の1回巻き部分41cに流れる進行波電流43から放射された電界48は、誘電体60と空気との境界で反射されるまえに、地板20の一面に到達する。
このように、本実施形態によれば、進行波電流43から放射される電界の、誘電体60と空気との境界での反射を低減することができる。そして、これにより、誘電体60を有さない構成での主たる電界44と同等の主たる電界48を確保することができる。また、反射を低減できるので、第2アンテナ40の定在波が生じるのを抑制することができ、この結果、図8に実線で示すように、第2アンテナ40の帯域を、誘電体なしの場合(図3参照)と同等の広帯域性とすることができる。なお、図8では、比較として、誘電体60を有しつつ第2螺旋部41がテーパなし(図2に示す構成)、第2アンテナ40の帯域を破線で示している。
以上示したように、本実施形態に係るアンテナ装置10によれば、誘電体60の波長短縮効果により、z軸に垂直な方向において第2アンテナ40の体格を、誘電体60を有さない構成の1/ε1/2倍の大きさとすることができる。第2アンテナ40の第2螺旋部41は、第1アンテナ30の第1螺旋部31の外側に配置されており、2つのヘリカルアンテナ30,40の体格は、第2アンテナ40によって決定される。したがって、上記した波長短縮効果により、アンテナ30,40、ひいてはアンテナ装置10の体格を、誘電体60を有さない構成に比べて小型化することができる。
また、このように小型化しつつ、第2螺旋部41をテーパ形状とすることで、第2アンテナ40の狭帯域化を抑制することができる。本実施形態に係るアンテナ装置10は、2つの軸モードヘリカルアンテナ30,40を有し、主ビームのφ方向及びθ方向の指向性を、各アンテナ30,40に入力される高周波信号の位相と強度によって制御する構成のものである。したがって、第2アンテナ40の狭帯域化を抑制することで、主ビームの狭帯域性も抑制することができる。
これにより、製造ばらつきが生じても、所望の使用波長λが第2アンテナ40の帯域内に含まれる。そして、第2アンテナ40、ひいては2つのアンテナ30,40は、使用波長λで安定して動作することができる。
また、本実施形態で例示したように、第1螺旋部31の1回巻き部分の周囲長を使用波長λと同じ(m=1)長さとし、第2螺旋部41の地板20側の端部から1回巻き部分41aの周囲長ksを使用波長λの2倍(n=2)の長さとすると、使用波長λに対してアンテナ30,40の体格を最も小型化することが可能である。
(第2実施形態)
上記実施形態の構成を採用すると、第2螺旋部41のうち、地板20の一面からz軸方向において離れた1回巻き部分ほど、第2螺旋部41の内側に位置する第1螺旋部31との間隔が狭くなり、2つのアンテナ30,40間に相互作用が生じやすくなる。例えば、図9に示すように、第1螺旋部31に流れる進行波電流33により、第2螺旋部41に進行波電流33とは逆向きのイメージ電流49が誘起され、間隔が狭いほどイメージ電流が増加する。このため、地板20の一面側に第1アンテナ30から放射されるビームの利得が低下してしまう。
そこで、本発明者は、第2アンテナ40の帯域を、誘電体60を有さない構成(図1、図4参照)と同等以上としつつ、第1アンテナ30のアンテナ利得を、一定周囲長の第2螺旋部41を有する構成(図2、図5参照)と同程度とすることのできる、第2螺旋部41の形状についてシミュレーションを用いて検討を行った。
シミュレーションに用いた構成は、第1実施形態に示した構成と同じである。具体的には、第1螺旋部31及び第2螺旋部41の巻き数を3とし、各螺旋部31,41のピッチを互いに等しくした。地板20から先端までの長さ(高さ)も、第1螺旋部31と第2螺旋部41とでほぼ等しくした。
また、第1螺旋部31の1回巻き部分の周囲長を、使用波長λと同じ長さ(m=1)とし、第2螺旋部41において、地板20側の端部から1回巻き部分(第1の1回巻き部分41a)の周囲長ksを使用波長λの2倍(n=2)の長さとした。すなわち、地板20側の端部から1回巻き部分の直径Dsを、2λ/(π・ε1/2)とした。
具体的には、図10に示すように、誘電体60の比誘電率εを7とした。z軸方向において、地板20の厚みを0.01λ、第1螺旋部31及び第2螺旋部41の高さを0.11λ、地板20における一面の裏面から誘電体60の表面までの厚みを0.14λとした。
また、z軸に垂直な方向において、第1螺旋部31の直径をλ/(π・ε1/2)にほぼ等しい長さ0.1λ、第2螺旋部41の直径Dsを2λ/(π・ε1/2)に等しい長さ0.24λ、地板20の直径を、直径Dsの約2倍の0.45λとした。
さらに、z軸方向において1回巻き部分の周囲長の変化量が一定のテーパを有する第2螺旋部41において、地板20の一面にもっとも遠い1回巻き部分(第3の一回巻き部分41c)の直径Deを、上記直径Dsを基準にDs×テーパ係数Sとした。すなわち、テーパ係数Sが1.0のとき、第2螺旋部41の形状は、1回巻き部分の周囲長が一定、すなわち、直径Dが上記Dsで一定となる。このテーパ係数Sが、特許請求の範囲に記載の比(De/Ds)に相当する。
そして、テーパ係数Sが種々の値をとったときの、第1アンテナ30のアンテナ利得と第2アンテナ40の帯域とを求めた。その結果を図11に示す。
図11では、白抜き四角(□)が第1アンテナ30の利得を示し、白抜き三角(△)が第2アンテナ40の帯域を示している。それぞれのデータは、テーパ係数Sが、0.5〜1.0まで0.1刻みで示されている。
一定周囲長の第2螺旋部41、すなわちテーパ係数Sが1.0のとき、図11に示すように第1アンテナ30の利得は約5dBiである。そして、図11に示すように、テーパ係数Sを0.7以上1.0未満とすれば、テーパ係数Sが1.0のときの第2アンテナ40のアンテナ利得と同程度(5±0.25dBiの範囲内)にできるのが明らかである。
一方、一定周囲長の第2螺旋部41、すなわちテーパ係数Sが1.0のとき、図11に示すように第2アンテナ40の帯域は、250MHz程度である。また、図10に示す構成において誘電体60を無くした構成(図1、図4参照)での、第2アンテナ40の帯域は、900MHz程度であった。そして、図11に示すように、テーパ係数Sを0.8以下(図11では0.5以上)とすれば、第2アンテナ40の帯域を、誘電体60の無い構成における第2アンテナ40の帯域と同等以上にできることが明らかである。
このように、地板20側の端部から1回巻き部分41aの直径Dsと、地板20の一面にもっとも遠い位置の1回巻き部分の直径Deとの比(De/Ds)、すなわちテーパ係数Sが、0.7以上0.8以下の範囲内となるように、第2螺旋部41を構成すると、第2アンテナ40の帯域を、誘電体60を有さない構成と同等以上としつつ、第1アンテナ30のアンテナ利得を、誘電体60を有しつつ一定周囲長の第2螺旋部41を有する構成と同程度とすることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
本実施形態では、第1螺旋部31の1回巻き部分の周囲長を使用波長λと同じ(m=1)長さとし、第2螺旋部41の地板20側の端部から1回巻き部分41aの周囲長ksを使用波長λの2倍(n=2)の長さとする例を示した。しかしながら、第1螺旋部31の1回巻き部分の周囲長は使用波長λのm倍(mは正の整数)の長さとされ、第2螺旋部41の地板20側の端部から1回巻き部分41aの周囲長ksは使用波長λのn倍(nはmより大きい正の整数)の長さであれば良い。
本実施形態では、地板20の一面から遠ざかるほど、1回巻き部分の周囲長が短くなるようなテーパを有する第2螺旋部41の例として、図7に示したように、z軸方向において1回巻き部分の周囲長の変化量が一定のテーパ(直線状のテーパ)を有する例を示した。しかしながら、例えば図12に示すように、z軸方向において1回巻き部分の周囲長の変化量が地板20に近いほど大きいテーパを有する第2螺旋部41を採用することもできる。この場合、第1の1回巻き部分41aと第2の1回巻き部分41bの周囲長の差(ks−km)が、第2の1回巻き部分41bと第3の1回巻き部分41cの周囲長の差(km−ke)よりも大きくなっている。なお、図12においても、螺旋部31,41を分かりやすくするために、敢えて誘電体60の断面指示ハッチングを省略している。
また、図示しないが、z軸方向において1回巻き部分の周囲長の変化量が地板20に近いほど小さいテーパを有する第2螺旋部41を採用することもできる。
さらには、第2螺旋部41として、地板の一面から遠ざかるほど1回巻き部分の周囲長が短くなる部分と、連続する複数の1回巻き部分の周囲長が等しい部分を含む構成を採用することもできる。すなわち、第2螺旋部41の一部に、1回巻き部分の周囲長が変化しない部分を含む構成も採用が可能である。
一例として示す図13では、第2螺旋部41が、地板20に近い側から第1の1回巻き部分41a、第2の1回巻き部分41b、第3の1回巻き部分41c、第4の1回巻き部分41dを有している。この構成では、第1の1回巻き部分41aの周囲長がks、第4の1回巻き部分41dの周囲長がkeとなっている。第2の1回巻き部分41bの周囲長をkm1、第3の1回巻き部分41cの周囲長をkm2とすると、km1とkm2が等しい長さとなっている。そして、各周囲長はks>km1=km2>keの関係を満たしている。このような構成としても、一定周囲長の従来の第2螺旋部41に比べて、第2アンテナ40を広帯域性とすることができる。なお、図13においても、螺旋部31,41を分かりやすくするために、敢えて誘電体60の断面指示ハッチングを省略している。
なお、図13に示す例では、第2の1回巻き部分41bの周囲長をkm1と、第3の1回巻き部分41cの周囲長km2を等しくしているが、連続する複数の1回巻き部分の周囲長が等しい部分は、上記例に限定されるものではない。例えば、第1の1回巻き部分41aと第2の1回巻き部分41bの周囲長が互いに等しい構成や、第3の1回巻き部分41cと第4の1回巻き部分41dの周囲長が互いに等しい構成を採用することもできる。
本実施形態では、第1螺旋部31及び第2螺旋部41の断面形状(1回巻き部分の、z軸方向に垂直な平面形状)がともに円形とされる例を示した。しかしながら、必ずしも円形に限定されるものではない。多角形としても良い。その際、地板20の一面の平面形状も、1螺旋部31及び第2螺旋部41の断面形状と同じ形状とし、第1螺旋部31及び第2螺旋部41の軸が、地板20の一面の中心を通るように配置された構成とすると良い。これによれば、第2アンテナ40の第2螺旋部41から、地板20の端部までの距離を、軸周り全周でほぼ一定とすることができる。
また、本実施形態では、第1螺旋部31及び第2螺旋部41が、いずれも誘電体60内に完全に埋設される例を示した。しかしながら、例えばz軸方向(軸方向)において、各螺旋部31,41のうちの、1回巻き部分が複数が誘電体60内に配置され、給電点32,42とは反対の先端側の一部が誘電体60の外に露出された構成も可能である。
本実施形態では、巻き数3の例を示した。しかしながら、巻き数は上記例に限定されるものではない。
10・・・アンテナ装置
20・・・地板
30・・・第1アンテナ
31・・・第1螺旋部
40・・・第2アンテナ
41・・・第2螺旋部
50・・・給電回路
60・・・誘電体

Claims (7)

  1. 地板と、
    前記地板の一面上に配置された誘電体と、
    前記誘電体の内部に配置された部分として、前記地板の一面に対して垂直方向に延び、1回巻き部分の周囲長が使用波長λのm倍(mは正の整数)の一定長さで螺旋状に巻き上げられた第1螺旋部を有する第1アンテナと、
    前記誘電体の内部に配置された部分として、前記第1螺旋部の軸方向に垂直な方向において前記第1螺旋部の外側に間隔をあけて配置されるとともに前記第1螺旋部の軸方向に沿って螺旋状に巻き上げられた第2螺旋部を有する第2アンテナと、
    発信器、該発信器に接続された分配器、前記分配器の出力側及び前記第1アンテナの給電点に接続された第1位相器、前記分配器の出力側及び前記第2アンテナの給電点に接続された第2位相器を有する給電回路と、を備え、
    前記第2螺旋部は、前記地板側の端部から1回巻き部分の周囲長ksが使用波長λのn倍(nはmより大きい正の整数)の長さとされるとともに、前記地板に近い側の第1の1回巻き部分の周囲長k1と、前記第1の1回巻き部分における前記地板に遠い側の端部に連続する第2の1回巻き部分の周囲長k2とがk1≧k2を満たし、且つ、前記地板の一面にもっとも遠い位置の1回巻き部分の周囲長keが(m・λ)<ke<ks(=n・λ)を満たすように、螺旋状に巻き上げられていることを特徴とするアンテナ装置。
  2. 前記第2螺旋部は、前記地板の一面から遠ざかるほど1回巻き部分の周囲長が短くなるようなテーパを有して、螺旋状に巻き上げられていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
  3. 前記第2螺旋部は、前記地板の一面から遠ざかるほど1回巻き部分の周囲長が短くなる部分と、連続する複数の1回巻き部分の周囲長が等しい部分を含むことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
  4. 前記第2螺旋部は、前記地板の一面に対して垂直な方向において、1回巻き部分の周囲長の変化量が一定のテーパを有していることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
  5. 前記第1螺旋部の1回巻き部分の周囲長は使用波長と同じ(m=1)長さとされ、
    前記第2螺旋部の前記地板側の端部から1回巻き部分の周囲長ksは、使用波長の2倍(n=2)の長さとされていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載のアンテナ装置。
  6. 前記第1螺旋部及び前記第2螺旋部は、ともに前記軸方向に垂直な断面形状が円形とされ、
    前記第2螺旋部は、前記第1螺旋部に対して径方向外側に配置されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載のアンテナ装置。
  7. 前記第2螺旋部は、前記地板側の端部から1回巻き部分の直径Dsと、前記地板の一面にもっとも遠い位置の1回巻き部分の直径Deとの比(De/Ds)が、0.7以上0.8以下の範囲内となるように、螺旋状に巻き上げられていることを特徴とする請求項6に記載のアンテナ装置。
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