JP2011181294A - 電子デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】低閾値電圧で電子放出し、基板上に高密度、且つ均一に分布し、長寿命なCNT集合体を備えた電子デバイスを提供する
【解決手段】本発明によると、基板と、基板に設けられた金属部材を介して延出し、無配向に、かつ弧状形状を有する複数のCNTを備え、閾値値電圧が2.0V/μm以下であるCNT集合体と、を備える電子デバイスが提供される。CNT集合体は、基板上にCNT密集層を備え、CNT密集層の上部に弧状形状を有する複数のCNTを備える。本発明の電子デバイスによると、弧状形状を有するCNTから電子が放出される。
【選択図】図1

Description

本発明は、カーボンナノチューブ(以下、CNTという)を用いた電子デバイスに関する。
特に、低閾値電圧で、長寿命なCNT集合体を備えた電子デバイス、及びその製造方法に関する。
機能性新素材としてCNTは、用途開発、品質及び量産性の向上等の実用化に向けた研究開発が進められている。CNTは電場をかけると電子が放出されるため、CNTの電子放出特性は低電圧、高電流の電子放出源としての利用が期待され、FED(Field Emission Display)、平面蛍光管、冷陰極管のカソード(陰極)デバイス等への応用も研究されている。
電子放出源は、先端の尖ったシリコンや金属先端に強電界を印加して、電子を放出させる素子である。シリコンや金属を人工的に尖らせた従来の電子放出源は、その先端径が20〜30nmと大きいため、電子放出に100V以上の電圧を要する。また、微細加工のばらつきにより、尖ったシリコンや金属の先端の作製は歩留りが悪く、電子放出源の実用化への大きな妨げとなっていた。
一方、CNTは直径が1〜10nmと微細な構造であり、電子放出源としては最適である。従来は、CNTを含むペーストを基板に塗布して焼成することで電子放出源を形成しており、CNTから電子放出させるためには、CNTの先端部を基板面に対して垂直方向に配向させる必要がある。そこで、上述のような電子放出源製造プロセスにおいて、たとえば、貫通孔を有するシート部材の一方の面がCNTを含むペーストを塗布して形成したCNT層の表面に付着させて、CNTを貫通孔内に侵入させた状態で乾燥させ、CNT層とシート部材を一体化した後に、シート部材を上方に引き上げて剥離させることにより、CNT層内部に含まれるCNTを露出させて基板面に対して垂直方向に配向させる方法が特許文献1に記載されている。
また、CNTの先端部を基板面に対して垂直方向に配向させるために、マイクロ波プラズマCVD法を用いて、基板上にCNTを直接合成する方法が特許文献2に、CVD法を用いる方法が特許文献3に記載されている。
特開2001−35360号公報 特開2001−229806号公報 特開2003−123623号公報
しかし、ディスプレイなどに用いるためには、電子放出源は、低閾値電圧で電子放出し、基板上に高密度、且つ均一に分布し、寿命が長い必要がある。しかし、電子放出源の密度が高くなると、電界集中が起きにくくなり、閾値電圧が増加するため、電子放出源の密度は非常に精度よく制御する必要がある。上述のようなシート部材によりCNTを配向させる方法では、配向したCNTの高精度な密度制御は難しい。また、化学気相成長法(以下、CVDという)によるCNT合成は設計自由度が高いが、電界集中がおきやすく、かつ適切な密度を有し、かつ長い寿命を実現する頑強性を備えたCNT膜を合成することは極めて困難であった。
本発明は、低閾値電圧で電子放出し、基板上に高密度、且つ均一に分布し、長寿命なCNT集合体を備えた電子デバイスを提供することを課題とする。
本発明の一実施形態によると、基板と、該基板に設けられた金属部材を介して延出し、無配向に、かつ弧状形状を有する複数のCNTを備え、閾値値電圧が2.0V/μm以下であるCNT集合体と、を備える電子デバイスが提供される。
前記電子デバイスは、前記CNT集合体は、前記基板上にCNT密集層を備え、前記CNT密集層の上部に前記弧状形状を有する複数のCNTを備えてもよい。
前記電子デバイスは、前記弧状形状を有する前記CNTから電子が放出されてもよい。
前記電子デバイスは、前記CNTの前記弧状形状が外表面に位置してもよい。
前記電子デバイスは、前記CNT集合体の外表面から均一に電子が放出されていてもよい。
前記電子デバイスは、前記弧状形状を有する複数のCNTは網目構造を備えてもよい。
前記電子デバイスは、前記CNT集合体は、前記弧状形状を有するCNTと外表面に先端が延伸するCNTとが混在してもよい。
前記電子デバイスは、前記閾値電圧は、前記弧状形状部を有するCNTの数に依存して可変し、且つ、前記弧状形状部を有するCNTの数の増大と共に低下してもよい。
前記電子デバイスは、前記金属部材がCNTを成長させる触媒を備えてもよい。
前記電子デバイスは、前記基板が導電性基板であってもよい。
また、本発明の一実施形態によると、基板と、該基板に設けられた金属部材を介して延出し、無配向に、かつ弧状形状を有する複数のCNTを備え、前記弧状形状を有するCNTの数に依存して可変する2.0V/μm以下の閾値電圧を備えるCNT集合体と、を備える電子デバイスが提供される。
前記電子デバイスは、前記閾値電圧は、前記弧状形状を有するCNTの数の増大と共に低下してもよい。
前記電子デバイスは、前記閾値電圧は、1.5V/μm以下であってもよい。
前記電子デバイスは、前記閾値電圧は、前記弧状形状を有するCNTの数の増大と共に低下してもよい。
本発明の方法によると、低閾値電圧で電子放出し、基板上に高密度、且つ均一に分布し、長寿命なCNT集合体を備えた電子デバイスが提供される。
本発明に係るCNT集合体を備えた電子デバイスの模式図である。 本発明に係る電子デバイスの電子顕微鏡像であり、(a)はSEM像であり、(b)はCNT集合体層の拡大した模式図である。 本発明に係る電子デバイスの基板を示し、(a)は基板の顕微鏡像であり、(b)は断面図を示す。 本発明に係る電子デバイスに形成された弧状形状CNT含有層35を拡大した図であり、(a)は弧状形状CNT含有層35を拡大したSEM像であり、(b)は弧状形状CNT含有層35を拡大した模式図である。 本発明に係る電子デバイスに形成された弧状形状を有するCNTのTEM像である。 本発明の本実施に係る電子デバイスの製造工程のフローチャート及び製造条件。 積層する触媒量(Fe−Mo)とCNT集合体の表面構造との関係を示す図であり、(a)は鉄にモリブデンを重層する割合を変更した概念図であり、(b)は形成した鉄とモリブデンの層の厚さとCNT集合体の表面構造との関係を示す図である。 本発明に適用されるCVD装置の一例を示す模式図である。 本発明に係る本実施例のフォーメーション工程の時間とVthとの関係を示す図である。 本発明に係る本実施例のCNT集合体の表面のSEM像であり、(a)はCを4%供給した条件で合成されたCNT集合体の表面のSEM像であり、(b)は、Cを10%供給した条件で合成されたCNT集合体の表面のSEM像である。 本発明に係る本実施例のエチレン(原料ガス)濃度とVthとの関係を示す図である。 本発明に係る本実施例の成長時間とVthとの関係を示す図である。 本発明に係る本実施例のガス流量の総量およびエチレン濃度とVthとの関係を示す図である。 本発明に係る本実施例のCNT陰極アセンブリを示す図である。 本発明に係る本実施例の電子放出特性測定法の模式図である。 本発明に係る本実施例のCNTサンプルの電流密度を示し、(a)は2次元分布を、(b)は3次元分布を示す。 本発明に係る本実施例の電子放出特性を示し、(a)はI−V曲線を示し、(b)はFowler−Nordheim Plotを示す。 本発明に係る本実施例の弧状形状を有するCNTの計数方法を示す。(a)は毛羽立った表面のCNT集合体を示し、(b)は中間構造の表面のCNT集合体を示し、(c)は平坦な表面のCNT集合体を示す。また、それぞれの図は左から上方から撮影したSEM像、レーザー顕微鏡像、弧状形状を有するCNTの解析像を示す。 本発明に係るCNT集合体を形成した基板の一部を示す図であり、(a)はSEM像であり、(b)はレーザー顕微鏡像の視像であり、(c)は高さをマッピングした図である。 本発明に係る本実施例のCNTサンプルの電流密度を示し、(a)は3次元分布を示し、(b)は2次元分布を示す。 本発明に係る本実施例のCNT集合体の表面構造とVthの関係を示す図であり、(a)は毛羽立った表面のCNT集合体を示し、(b)は中間構造の表面のCNT集合体を示し、(c)は平坦な表面のCNT集合体を示す。また、それぞれの図は左から断面方向から撮影したSEM像、上方から撮影したSEM像、I−V曲線を示す。 本発明に係る本実施例の弧状形状を有するCNTの密度とVthの関係を示す図であり、(a)は弧状形状を有するCNTの密度の異なるCNT集合体のI−V曲線を一つの図にまとめた図であり、(b)は弧状形状を有するCNTの密度とVthの関係を示した図である。 本発明に係る本実施例の電子放出特性を示す図であり、(a)は弧状形状を有するCNTの密度と電子放出特性の関係をFowler−Nordheim plotで示し、(b)はVthと電界集中計数βとの関係を弧状形状を有するCNTの密度毎にプロットした図である。 本発明に係る本実施例の弧状形状を有するCNTの密度と電界集中計数βとの関係を示す図である。 本発明に係る本実施例の電子デバイスの電界放出特性の耐久試験結果を示す図である。 従来のSWCNTの配向集合体を示し、(a)はSEM像であり、(b)はその模式図である。 比較例のSWCNT集合体を示す図であり、左からSEM像、上方から撮影したSEM像を拡大した図、及び断面方向から撮影したSEM像を拡大した図である。 比較例のSWCNT集合体の電子放出特性を示す図であり、(a)の上段は電流密度の3次元分布を示し、下段は2次元分布を示す。また、(b)はI−V曲線を示す。 実施例の本発明に係るCNT集合体を形成した電子デバイスと、比較例のSWCNT集合体を形成した電子デバイスとの電界放出特性の耐久試験結果を比較した図である。
以下、図面を参照して本発明に係る電子デバイスとその製造方法について説明する。本発明に係る電子デバイスとして、特に、電子放出源としてCNT集合体を備えた電子デバイスを例に説明する。但し、本発明の電子デバイスとその製造方法は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
本発明者らは、これまでに、CVDを用いた配向性の高いCNT構造体について研究し、例えば、単層CNT(以下、SWCNTという)構造体及びその製造方法については、Science 306, 1362−1364 (2004)や、国際公表番号WO2006/011655において報告した。また、二層CNT(以下、DWCNTという)構造体及びその製造方法については、Nature Nanotechnology 1, 131−136 (2006)や、特開2007−145634号公報において報告した。
上述のようなCVDを用いた配向性の高いCNT構造体の製造技術を、低閾値電圧で電子放出し、基板上に高密度、且つ均一に分布し、長寿命なCNT電子放出源の製造に応用すべく鋭意検討を行った。
(CNT電子放出源のCNT構造)
図27は、上述の本発明者らが報告した製造法(以下、スーパーグロース法という)によるSWCNT集合体を示し、図27(a)は、走査型電子顕微鏡(SEM)像を示し、図27(b)はその模式図である。上述したように、電子放出源には、SWCNTのように細いCNTが適していると考えられていた。図27(a)に示したSWCNTは配向性が高く、直径が3 nm以下で、密度が0.03 g/cm、単位面積当たりの本数が5x1011 tubes/cm、1本あたりの表面積が234 nmであり、配向集合体の表面ではCNTがからみ合い、その結果、表面密度も高い。
しかし、スーパーグロース法により形成した細いCNT集合体は配向性が高いが、密度が高すぎるため電界集中が起きにくくなる。そこで、電子放出源として適切な密度を有し、低閾値電圧で電子放出するような電子デバイスのCNTの構造について検討した。
図1は、本発明に係るCNT集合体を備えた電子デバイス100の模式図である。本発明に係る電子デバイス100は、導電性の基板10上に触媒粒子21が形成された触媒層20と、金属部材等の触媒粒子から成長したCNT集合体層30とを有する。CNT集合体層30は、触媒粒子21から成長したCNT31が密集するCNT密集層33と、形成されたCNT31の平均的な長さより基板の上方に位置し、CNT密集領層33より延出する複数の弧状形状を有するCNT39を含み、CNT31の密度が低くなる弧状形状CNT含有層35とに分類される。この弧状形状を有するCNT39は、金属部材等の触媒粒子を介して延出し、無配向に成長している。
図2は、本発明に係る電子デバイス100の図であり、図2(a)は電子デバイス100の断面方向から撮影したSEM像であり、図2(b)は電子デバイス100のCNT集合体層30の拡大した模式図である。基板10から上方ほど、CNT集合体層30の密度が小さくなっているのがわかる。条件検討の中で、図2(a)及び図2(b)に示すような弧状形状を有するCNTを含むCNT集合体30が低閾値電圧で電子放出することが明らかとなった。図2(a)に示されるように、弧状形状CNT含有層35の表面部においては、CNTが毛羽立ったような構造を示している。この毛羽立ったような構造は、弧状形状CNT含有層35の表面部に存在するCNT密集層33より突出した弧状形状を有するCNT39に起因する。弧状形状を有するCNT39は、CNT密集層33を介して延出することで高い導電性を有する。また、CNT密集層33から、時間の経過とともにCNTが弧状に延出し、弧状形状を有するCNT39が増加する。
図3は、本発明に係る電子デバイス100の基板10を示し、図3(a)は基板10の顕微鏡像で、左図は基板10の全体図であり、右図は拡大図である。また、図3(b)は断面図を示す。本発明に係る基板には、導電性を有する基板、特に金属基板を用い、例えば、SUS304などのステンレス鋼やYEF42−6合金などを利用できる。図3(a)には一例としてYEF42−6合金基板を示す。基板10は、平面視略六角形の貫通孔12が二次元的に整列配置されたメッシュ形状をしている。
図3(a)右図におけるIb−Ib’線方向の断面図が図3(b)である。一例として、基板10の厚みは100μm程度、メッシュのライン幅は90μm程度、貫通孔2の寸法は300μm程度であるが、寸法はこれに限定されるものではない。また、貫通孔2は、必ずしも開いていなければならないものではない。
図4は本発明に係る電子デバイスに形成された弧状形状CNT含有層35を拡大した図であり、図4(a)は弧状形状CNT含有層35を拡大したSEM像であり、図4(b)は弧状形状CNT含有層35を拡大した模式図である。複数の弧状形状を有するCNT39が弧状形状CNT含有層35の表面部に突出している(約0.05〜0.1本/μm)。弧状形状CNT含有層35には、弧状形状を有するCNT39と、先端が突出したCNT37とを含む。このCNT集合体30の表面に存在するCNTの先端および/またはCNTの弧状部が、本発明に係る電子デバイス100の電子放出源である。
図5は、本発明に係る電子デバイスに形成された弧状形状を有するCNT39の透過型電子顕微鏡(TEM)像である。TEM像の解析の結果、弧状形状を有するCNT39は、直径5〜20nmの多層カーボンナノチューブ(以下、MWCNTという)からなることが分かった。さらに、後述するフライングCNTの計数法により、弧状形状を有するCNT39は約0.05〜0.1本/μmの密度で存在することが分かった。
以上説明したように本発明に係る電子デバイスは、基板上に形成されたCNT集合体層の表面に先端が突出したCNTおよび/または弧状形状を有するCNTを有する。本発明に係る電子デバイスは、弧状形状を有するCNTをCNT密集層上に多数、且つ均一に有することで、低閾値電圧で電子放出を実現する優れた効果を奏する。また、本発明に係る電子デバイスは、弧状形状を有するCNTを有することで長寿命な電子デバイスを提供することができる。
本発明に係る電子デバイスは、弧状形状を有するCNTがCNT密集層上に存在することで、弧状形状を有するCNTの高い導電性が保持される。また、時間とともに弧状形状を有するCNTがCNT密集層から延出することにより、長寿命、且つ安定した電界放出が可能となる。
上述した本発明に係る電子デバイスの一例について、以下に詳細に説明する。なお、以下の実施例は、一例であってこれらに限定されるものではない。
(電子デバイスの製造方法)
図6に、本発明の本実施に係る電子デバイスの製造工程のフローチャート及び製造条件を示す。基板10として、YEF426金属基板(直径12mm、厚み100μm、メッシュ形状)を用い、基板10の上部表面に、アルミナ(Al)からなる厚さ40nmの助触媒層を高周波スパッタリング(RFスパッタリング)法により形成した。次に、アルミナ層上に鉄(Fe)からなる厚さ1〜3nmの触媒層をRFスパッタリングによって形成し、鉄層上にモリブデン(Mo)からなる厚さ1−8nmの層をRFスパッタリングによってさらに形成した。
一般にCNTの製造に実績のある触媒としては、鉄・ニッケル・コバルト・モリブデン、およびこれらの塩化物並びに合金や、これらがさらにアムミニウム・アルミナ・チタニア・窒化チタン・酸化シリコンと複合化、または重層化したもの等がある。本発明者らが以前に報告したスーパーグロース法においては、触媒はFeのみであったが、その場合、配向性が高く密度の高いCNT集合体が成長し、表面に弧状形状を有するCNT39を合成することはできない。そこで、弧状形状を有するCNT39を合成するために、CNT集合体30の密度を下げる検討を行った。触媒の構成は、製造されるCNTの重量密度、比表面積、平均外径、および製造収率に大きな影響を与えるため、所望のCNT集合体を製造するためには、適切な触媒の構成の検討が必要である。鋭意検討の結果、上述したFe層の上にMoをコーティングすることにより、基板上に形成される触媒の活性部位(触媒粒子)を減少させ、形成するCNTの密度を抑制することができた。その結果、上述した弧状形状を有するCNT39をCNT集合体層30の表面部に形成することができた。
図7は、積層する触媒量(Fe−Mo)とCNT集合体の表面構造との関係を示す図である。図7(a)は鉄にモリブデンを重層する割合を変更した概念図であり、図7(b)は形成した鉄とモリブデンの層の厚さとCNT集合体の表面構造との関係を示す図である。触媒をFe(1.8nm)のみとした場合、弧状形状を有するCNT39は合成されない。また、Moを3〜8nm重層した場合も、合成される弧状形状を有するCNT39の数は減少する。本実施例におけるFe層を1〜3nm形成し、Mo層を0〜8nm重層した条件においては、Fe層を1.8nm前後形成し、Mo層を2nm前後形成する条件が好適であった。このように触媒層を形成した基板を還元して、触媒粒子21を形成した。
基板表面への触媒層の形成は、ウェットプロセスまたはドライプロセスのいずれをも適用することができる。具体的には、スパッタリング蒸着法や、金属微粒子を適宜な溶媒に分散させた液体の塗布・焼成法などを適用することができる。本実施例においてはスパッタリング蒸着法を用いた。
ここで、本実施例に用いるCNT製造装置は、触媒を担持した基板を受容する合成炉(反応チャンバ)および加熱手段を備えることが必須であるが、各部の構造・構成については特に限定されることはなく、公知のCNT製造装置がいずれも使用できる。
本発明に適用されるCVD装置の一例を図8に示す。CVD装置301は、触媒を担持した基板10を収容する例えば石英ガラスや耐熱金属などからなる管状の合成炉304と、合成炉304を外囲するように設けられた例えば抵抗発熱コイルなどからなる加熱手段305とを備える。
合成炉304の一端壁には、合成炉304内に開口するガス供給管306が接続され、合成炉304の他端壁には、合成炉304内に開口するガス排出管307が接続される。ガス供給管306には、集合・分岐管路部308を介して原料ガス供給部311、触媒賦活物質供給部312、雰囲気ガス供給部313、並びに還元ガス供給部314が接続される。
合成炉304内の下方位置には、触媒微粒子21を備えた基板10を保持する基板ホルダー302が設けられる。
ガス供給管306、ガス排出管307、並びに各供給部39〜42の適所には、逆止弁、流量制御弁、および流量センサが設けられており、図示しない制御装置からの制御信号によって各流量制御弁を適宜に開閉制御することにより、所定流量の原料ガス、触媒賦活物質、雰囲気ガス、および還元ガスが、ガス供給管306から、反応プロセスに応じて連続的にまたは間欠的に合成炉304内に供給される。
触媒賦活物質供給部312には、別のキャリアガス供給部(図示省略)が付設されており、触媒賦活物質は、例えばヘリウムなどのキャリアガスと共に供給される。
CVD装置31により、集合・分岐管路部308を介してそれぞれ供給されるガスを、ガス供給管306の開口から合成炉304内に送り込み、基板10の触媒微粒子21にCNTを成長させることができる。
ここで、一般的な石英ホルダーを使用してCNTを合成した場合、本実施例の基板上に形成した触媒層では原料ガスに対する触媒量が少なすぎるため触媒の寿命が短くなり、CNTが長時間成長できない。一方、本発明に係る弧状形状を有するCNT39を合成するには、CNTを長時間成長させる必要がある。そこで、本実施例の基板上の少ない触媒を補うために、FeをスパッタしたSi基板を基板ホルダー代わりに使用した。その結果、基板上に形成した触媒層の触媒寿命が延び、CNTの長時間成長が可能となり、弧状形状を有するCNT39をCNT集合体層30の表面部に合成することができた。
触媒層を形成した基板10を、FeをスパッタしたSi基板に乗せ、炉内圧力:1.02×10Paに保持されたCVD装置の合成炉内に搬送・設置し、合成炉304内のガス流量の総量が1500sccmとなるように、雰囲気ガスとしてHeを900sccm、還元ガスとしてHを600sccmの割合で、12分間でガス供給管から導入した。この12分間で炉内温度を室温から800℃まで昇温した。この工程(以下、フォーメーション工程という)は、触媒(Fe)を微粒子化する工程であり、炉内温度、還元ガス流量、ガスの種類、還元時間で、触媒粒子の大きさや個数密度を調整するものである。触媒粒子の大きさと密度は、成長するCNTの外径と密度に反映される。
例えば、合成炉304の炉内温度750℃、炉内圧力1.02×10Paで、He(雰囲気ガス)10%、H(還元ガス)90%で6分間導入すると、1×10〜5×10個/μmの個数密度を持つ触媒微粒子が得られる。この触媒微粒子を用いてCNTを成長させると、以前に報告したスーパーグロース法においては、配向性の高い、直径1.5nm〜4.0nmの単層CNT配向集合体が成長し、最表面には約1×10〜5×10個/μmのCNTの先端が形成され、弧状形状を有するCNTは形成できない。
しかし、弧状形状を有するCNTの表面密度は0.05〜0.1個/μmが好適である(単層CNT配向集合体の約1/1000〜1/1000000の密度)ため、触媒粒子の個数密度を減らし、CNT集合体の表面密度を減らす必要があった。そのため、基板10上に形成する触媒粒子21を大きくして個数密度を減らし、CNT集合体の表面密度を減らして、弧状形状を有するCNTを形成することを検討した。触媒粒子を大きくするには、一般に炉内温度を上げ、還元ガス流量を下げ、還元時間を長くする。本実施例においては、炉内温度800℃、炉内圧力1.02×10Paとし、He(雰囲気ガス)60%、H(還元ガス)40%で12分間導入することにより、弧状形状を有するCNTを合成するのに適した触媒条件に調整することができた。
図9は、フォーメーション工程の時間とVthとの関係を示す図である。フォーメーション工程の時間は8〜12分前後でVthの値が低いCNT集合体が得られることがわかる。
ここで、本実施例においては、還元ガスとして水素を用いたが、これまでのCNTの製造に実績のある還元性を有するガスであれば適宜を用いることができる。例えば水素・アンモニア・水、およびそれらの混合ガスを適用することができる。また、水素を、ヘリウム・アルゴン・窒素などの不活性ガスと混合した混合ガスでもよい。なお、還元ガスは、フォーメーション工程のみならず、成長工程で適宜に用いても良い。
また、上述したCVDの雰囲気ガス(キャリアガス)としてヘリウムを用いたが、CNTの成長温度で不活性であり、成長するCNTと反応しないガスであればよく、不活性ガスが好ましく、ヘリウム・アルゴン・水素・窒素・ネオン・クリプトン・二酸化炭素・塩素などや、これらの混合ガスが挙げられる。
次に、炉内温度:800℃、炉内圧力:1.02×10Pa(大気圧)に保持された状態の合成炉内に、He(雰囲気ガス):750sccm、H(還元ガス):600sccm、HO含有He(相対湿度23%)(キャリアガスに混入した触媒賦活物質):150sccmを、ガス供給管から3分間供給した。この時間を3分、8分で試したところ、有意差はなかった。
つづいて、炉内温度:800℃、炉内圧力:1.02×10Pa(大気圧)に保持された状態の合成炉内に、ガス流量の総量が1500sccmとなるようにHe(雰囲気ガス):690sccm、H(還元ガス):600sccm(ガス流量の総量の40%に相当)、C(原料ガス):60sccm(ガス流量の総量の4%に相当)、HO含有He(相対湿度23%)(キャリアガスに混入した触媒賦活物質):150sccmをガス供給管306から50分間供給した。
従来のスーパーグロース法では、配向性が高く、重量密度が高い単層CNT集合体を効率よく、大量に合成するために、成長速度を上げる。しかし、本発明に係る弧状形状を有するCNTを合成するには、成長速度を下げ、長時間成長する必要がある。そこで、成長工程中にも水素を入れて、CNTの成長を抑制し、成長速度を下げた。
また、従来のスーパーグロース法では、C(原料ガス)濃度10%で重量密度の高い単層CNT配向集合体を合成していたが、CNT集合体の表面に弧状形状を有するCNTを合成するには、CNTの成長速度を落とし、触媒寿命を延ばし、長時間成長する必要があった。
図10は、本発明に係る本実施例のCNT集合体の表面のSEM像である。図10(a)は、Cを4%供給した条件で合成されたCNT集合体の表面のSEM像であり、図10(b)は、Cを10%供給した条件で合成されたCNT集合体の表面のSEM像である。C流量を1%〜10%の範囲で適正な濃度を検討した結果、4%のCを供給する条件が、CNT集合体の表面に最も弧状形状を有するCNTを多く合成することができた。
図11は、C(原料ガス)濃度(%)と、Vthの関係を示した。C流量を1%〜10%の範囲で検討した結果、4%のCを供給する条件が、最もVthを低くすることができた。また、原料ガスとしてアセチレン(C)とエチレン(C)とを検討したが、Cの方が弧状形状を有するCNTの数が多く、Vthも低くなり、適することが分かった。
さらに、CNT集合体の表面密度が所望の密度となるよう制御するために、CNTを成長させる時間についても検討を行った。図12に成長時間とVthの関係を示す。本実施例においては、CNTの成長時間を10分、15分、20分、30分、40分、50分で成長させたところ、成長時間が長いほど弧状形状を有するCNTの数が増え、Vthが低くなることがわかった。
さらに、CNT集合体の表面密度が所望の密度となるよう制御するために、合成炉304内へのガス流量の総量についても検討を行った。図13は、Vthに対するガス流量の総量とエチレン濃度とによる効果を示す図である。本発明に係るCNT集合体の製造においては、ガス流量の総量を、1000sccm、1500sccm、2000sccmで成長させ比較した。その結果、ガス流量の総量は1500sccm前後が好適であり、供給するエチレン濃度を3〜5%前後とすることで閾値電圧が低いCNT集合体が得られることがわかる。
また、本発明に係るCNT集合体の製造に用いる原料としては、芳香族化合物・飽和炭化水素・不飽和炭化水素・不飽和鎖式炭化水素・飽和鎖式炭化水素・環状不飽和炭化水素・環状飽和炭化水素などのガス状炭素化合物を用いることもできる。また、メタノール・エタノールなどの低級アルコールや、アセトン・一酸化炭素などの低炭素数の含酸素化合物でもよく、これらの混合物も使用可能である。これらの原料ガスが成長工程において触媒と接触することにより、触媒表面にCNTが生成される。
CNTを成長させる雰囲気の圧力は、10Pa以上、10Pa(100気圧)以下が好ましく、5×10Pa以上、2×10Pa(2大気圧)以下がさらに好ましく、9×10Pa以上、1.1×10Pa以下が特に好ましい。9×10Pa以上、1.1×10Paの間で、真空や高圧を用いない、大気圧や大気圧に近い圧力下では、CNTの製造効率は非常に良好である。また、シャッターやバルブを用いない開放系の製造装置が使用可能となるので量産の観点からも好ましい。
CNTの成長工程において、触媒賦活物質を添加するとよい。触媒賦活物質の添加により、触媒の寿命を延長し、且つ活性を高め、結果としてCNTの生産効率向上や高純度化を推進することができる。この触媒賦活物質の添加による触媒の活性を高め、且つ触媒の寿命を延長する作用(触媒賦活作用)により、従来は高々2分間程度で終了したCNTの成長が数十分間継続する上、成長速度が従来に比べて100倍以上、さらには1000倍にも増大することになった。この結果、その高さが著しく増大したCNT集合体が得られることとなった。
ここで用いる触媒賦活物質としては、酸素を含む物質であり、且つ成長温度でCNTに多大なダメージを与えない物質であればよく、水・酸素・オゾン・酸性ガス、および酸化窒素・一酸化炭素・二酸化炭素などの低炭素数の含酸素化合物、またはエタノール・メタノール・イソプロパノールなどのアルコール類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトンなどのケトン類、アルデヒドロ類・酸類・塩類・アミド類・エステル類、並びにこれらの混合物が有効である。この中でも、水・酸素・二酸化炭素・一酸化炭素・エーテル類・アルコール類が好ましいが、特に、極めて容易に入手できる水が好適である。
触媒賦活物質の機能発現のメカニズムは、現時点では以下のように推測される。CNTの成長過程において、アモルファスカーボンやグラファイトなどが副次的に発生し、触媒に付着し、触媒を失活させる。触媒賦活物質は、触媒を失活させた副次生成物を酸化し、一酸化炭素や二酸化炭素などにガス化し、触媒を清浄化する。この結果、触媒の活性が高められ、且つ寿命が長くなると考えられる。つまるところ、触媒賦活物質とは上記作用を持つ物質であればよく、酸素を含む物質以外にも、酸化力を有する物質、例えば、硫黄などの六属の元素を含む物質が例示できる。
また、グリッドを形成した基板は表面に凹凸がありCNT集合体の均一な形成に影響を与える場合もあるため、表面研磨した基板を用いた比較を行ったが、基板の表面研磨はCNT集合体の均一性の向上には寄与しなかった。
(TOVの測定方法)
ここで、上述したTOVの測定方法について説明する。図14は、CNT陰極アセンブリを示す図である。アセンブリ・リング401を、2cm×2cm、厚さ1mmのSUS304試料板上にウェルダーで固定し、その中央に本実施例で合成したCNTサンプル405を置き、端を4か所ウェルダーで固定、その上にアセンブリ・カバー403を重ねて、ウェルダーで固定する。アセンブリ・カバー403の中心の穴(直径4mm)が測定エリアとなる。これを、試料ホルダーにセットする。
次に、図15に示すように、試料ホルダーを真空度1×10−7Paに保たれた東京カソード研究所製FE性能評価装置(CEPS−NW)500内にセットする。CNT陰極アセンブリ電子放出素子501−陽極503間の距離Hを200μmに設定する。陽極と試料ホルダーとを接触させ、それを起点として陽極を200μm離す。電子放出特性を走査モード(素子面に平行な面上で小さな孔であるアノードホール(ANODE−HOLE)505を持つ陽極503を計算機によって制御されたステッピングモータでXY方向に移動させ、アノードホール505を通過した電子流をファラデーケージ(FARADAY CAGE)507に捕獲して計測し、その電流値をXY座標値とともに計算機に取り入れる。測定データを計算機が処理し、電子電流密度分布を表示画面に表示する。)で測定する。(走査範囲は4mm×4mm、走査ステップは40μm、陽極電圧Vaは測定エリア全体の電流値が1600μAとなる電圧(最大電圧Va)を示す。)。
図16に本実施例のCNTサンプルの電流密度を示し、図16(a)は2次元分布を示し、図16(b)は3次元分布を示す。陽極電圧Vaに対する全体の電子放出特性の測定を行う。電子放出測定は、4mm×4mmの走査領域で、陽極電圧Vaは、300Vから最大電圧Vaまでの範囲で50分割したステップ幅で昇圧させながら測定する。このとき、昇圧する度に3秒間キープして、電流値を測定した。
図17に本実施例の電子放出特性を示す。図17(a)はI−V曲線を示し、図17(b)はFowler−Nordheim Plotを示す。I−V曲線の出発点が、求める平均閾値電圧を表す。また、Fowler−Nordheim Plotの傾きが、電界集中係数βを表す。ここで、Fowler−Nordheim式は次式で示される。
(弧状形状を有するCNTの計数方法)
次に、図18に弧状形状を有するCNTの計数方法を示す。図18(a)は弧状形状を有するCNTを含む毛羽立った表面のCNT集合体を示し、図18(b)は中間構造の表面のCNT集合体を示し、図18(c)は平坦な表面のCNT集合体を示す。また、それぞれの図は左から上方から撮影したSEM像、レーザー顕微鏡像、弧状形状を有するCNTの解析像を示す。CNT集合体のレーザー顕微鏡像において、深さが最も浅い位置に配置しているCNTは赤、深さが最も深い位置に配置しているCNTは黒となるように表示している。弧状形状を有するCNTの解析像においては、所定の高さのCNTを、弧状形状を有するCNTとして黒で表示している。CNT集合体の密度が低密度であるほど、CNT集合体の表面部に弧状形状を有するCNTが多く見られる。
図19は、本発明に係るCNT集合体を形成した基板の一部を示す図であり、図19(a)はSEM像であり、図19(b)はレーザー顕微鏡像の視像であり、図19(c)は高さをマッピングした図である。基板に形成したCNT集合体の表面全体にわたって、弧状形状を有するCNTが均一に形成されていることがわかる。
図20は、本実施例の弧状形状を有するCNTサンプルの電流密度分布を示し、図20(a)は3次元分布を示し、図21(b)は2次元分布を示す。均一に存在した弧状形状を有するCNTが、均一な電界放出を実現していることがわかる。図20に示すように、本実施例のCNTサンプルにおいては、直径4mmの測定面全体に1mA/cm以上の電界放出が均一に起こっている。
図21は、CNT集合体の表面構造とVthの関係を示す図である。図21(a)は、毛羽立った表面のCNT集合体を示し、図21(b)は中間構造の表面のCNT集合体を示し、図21(c)は平坦な表面のCNT集合体を示す。また、それぞれの図は左から断面方向から撮影したSEM像、上方から撮影したSEM像、I−V曲線を示す。毛羽立った表面構造のCNT集合体ほどVthが低くなることがわかる。閾値電圧(1.09〜4V/μm)は、弧状形状を有するCNTの密度に強く依存する。0.1 loop/μmのループ密度を有する時、1.09V/μmの低い平均閾値電圧(直径4mmの測定範囲全体の平均閾値電圧)を実現することができた。本発明に係る電子デバイスとしては、2.0V/μm以下の閾値電圧を有するCNT集合体が好ましい。より好ましい閾値電圧は、1.5V/μm以下である。
図22は、弧状形状を有するCNT密度とVthの関係を示す図である。図22(a)は弧状形状を有するCNTの密度が異なる10種類のCNT集合体のI−V曲線を一つの図にまとめた図で、図22(b)はこの10種類のCNT集合体の、弧状形状を有するCNT密度とVthとの関係を示した図である。弧状形状を有するCNTの密度が高くなるに連れて閾値電圧が低くなることがわかる。
図23は、電子放出特性を示す図である。図23(a)は弧状形状を有するCNT密度の異なる10種類のCNT集合体のFowler−Nordheim plot(以下、F−Nプロットという)を一つの図にまとめた図で、図23(b)はこの10種類のCNT集合体のVthと電界集中計数βとの関係を示した図である。電界集中係数βが高くなるほどVthが低くなることがわかる。つまり、弧状形状を有するCNTの密度が高くなるほど、電界集中係数βが高くなり、Vthを下げることができる。
図24は、弧状形状を有するCNTの密度と電界集中計数βとの関係を示す図である。上述したように、弧状形状を有するCNTの密度が高いCNT集合体は、大きな電界集中計数βを有する。弧状形状を有するCNTの密度と電界集中計数βとは、正の相関関係を有することがわかる。したがって、本発明に係るCNT集合体は、弧状形状を有するCNTの密度を高めることで電子放出特性を向上させることができることが明らかとなった。
さらに、本発明に係るCNT集合体を備えた電子デバイスについて、電界放出特性の耐久試験をおこなった。図25は耐久試験の結果を示す図である。本発明に係るCNT集合体を備えた電子デバイスは、1mA/cmの電流密度が5,000時間以上持続していることがわかる。なお、本耐久試験は、出願時点でも継続中であった為、耐久時間については確定していない。
(比較例)
一方、実施例の本発明に係るCNT集合体で行った上述の製造条件を適用しない、従来のSWCNTで電子デバイスを形成した場合の構造及び特性について以下に示す。
図27は、実施例と同様の基板上に形成した従来のSWCNT集合体を示す図である。左からSEM像、上方から撮影したSEM像を拡大した図、及び断面方向から撮影したSEM像を拡大した図である。基板上に従来のSWCNT集合体を形成すると、高配向で均一にSWCNTが形成される。また、実施例とは異なり、SWCNT集合体の上部表面はSWCNTの先端部が密集していることがわかる。
図28は、比較例のSWCNT配向集合体の電子放出特性を示す図であり、図28(a)の上段は電子密度の3次元分布を示し、下段は2次元分布を示す。図28(b)はI−V曲線を示す。比較例のSWCNT配向集合体においては、図28(a)に示すように、電子放出の均一性は良好である。しかし、図28(b)からわかるように、実施例のCNT集合体に比して閾値電圧は高い値(3.9V/μm)となった。したがって、実施例の本発明に係る弧状形状を有するCNT集合体は、SWCNT配向集合体に対して有意に電子放出特性が優れていることがわかる。
図29は、実施例の本発明に係る弧状形状を有するCNT集合体を形成した電子デバイスと、比較例のSWCNT集合体を形成した電子デバイスとの高電流密度(8mA/cm)における電界放出特性の耐久試験結果を比較した図である。図から明らかなように、実施例の電子デバイスが長期間にわたり高い電子放出特性を維持しているのに対して、比較例のSWCNT配向集合体電子デバイスは、試験開始後から電子放出特性が低下し、500時間程度で劣化して使用できなくなってしまった。したがって、実施例の本発明に係る弧状形状を有するCNT集合体は、SWCNT配向集合体に対して有意に耐久性が優れていることがわかる。
以上説明したように、本発明に係るCNT集合体を備えた電子デバイスは、基板上に形成されたCNT集合体表面に弧状形状を有するCNTを高密度、且つ均一に分布させることで、低閾値電圧で電子放出することができるCNT電子放出源を提供する優れた効果を奏する。また、本発明に係るCNT集合体は、長寿命なCNT電子放出源を提供することができる。
本発明のCNT集合体を備えた電子デバイスは、電子放出源を始め、高ピーク電流、低電界、長寿命、大電流、高温環境下での動作が要求される電子機器等、様々な用途に用いることが可能である。例えば、サージ防護素子、電界放出ディスプレイ(FED)、走査プローブ顕微鏡(SPM)、エネルギー回収型加速器(ERL)、自由電子レーザー(FEL)、人工衛星等の電子源および帯電防止機構、医療用X線発生装置、プラズマ発生装置の電子源、高周波発生用の電子源、高機能性電磁波源、センサ、撮像素子、超小型自由電子レーザー、高機能ホログラフィー、位相制御型情報処理装置等が挙げられる。また、フィラメントとして用いることもできる。
10 基板
12 貫通孔
20 触媒層
21 触媒粒子
30 CNT集合体
31 CNT
33 高密度層
35 弧状形状CNT含有層
39 弧状形状を有するCNT
100 電子デバイス
301 CVD装置
302 基板ホルダー
304 合成炉
305 加熱手段
306 ガス供給管
307 ガス排出管
308 集合・分岐管路部
311 原料ガス供給部
312 触媒賦活物質供給部
313 雰囲気ガス供給部
314 還元ガス供給部
401 アセンブリ・リング
403 アセンブリ・カバー
405 CNTサンプル
500 FE性能評価装置
501 CNT陰極アセンブリ電子放出素子
503 陽極
505 アノードホール
507 ファラデーケージ

Claims (14)

  1. 基板と、
    該基板に設けられた金属部材を介して延出し、無配向に、かつ弧状形状を有する複数のCNTを備え、閾値値電圧が2.0V/μm以下であるCNT集合体と、
    を備える電子デバイス。
  2. 前記CNT集合体は、前記基板上にCNT密集層を備え、前記CNT密集層の上部に前記弧状形状を有する複数のCNTを備えることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
  3. 前記弧状形状を有する前記CNTから電子が放出されることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
  4. 前記CNTの前記弧状形状が外表面に位置することを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
  5. 前記CNT集合体の外表面から均一に電子が放出されていることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
  6. 前記弧状形状を有する複数のCNTは網目構造を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
  7. 前記CNT集合体は、前記弧状形状を有するCNTと外表面に先端が延伸するCNTとが混在することを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
  8. 前記閾値電圧は、前記弧状形状部を有するCNTの数に依存して可変し、且つ、前記弧状形状部を有するCNTの数の増大と共に低下することを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
  9. 前記金属部材がCNTを成長させる触媒を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
  10. 前記基板が導電性基板であることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
  11. 基板と、
    該基板に設けられた金属部材を介して延出し、無配向に、かつ弧状形状を有する複数のCNTを備え、前記弧状形状を有するCNTの数に依存して可変する2.0V/μm以下の閾値電圧を備えるCNT集合体と、
    を備える電子デバイス。
  12. 前記閾値電圧は、前記弧状形状を有するCNTの数の増大と共に低下することを特徴とする請求項11に記載の電子デバイス。
  13. 前記閾値電圧は、1.5V/μm以下であることを特徴とする請求項11に記載の電子デバイス。
  14. 前記閾値電圧は、前記弧状形状を有するCNTの数の増大と共に低下することを特徴とする請求項11に記載の電子デバイス。
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