以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本発明の実施形態として示す視機能検査装置は、人間の視野(視界)の特性、視力の特性、両眼視(立体視)の特性といった、眼の見え方の特性(視覚特性)を利用して構成される。これにより、この視機能検査装置は、一台で視力検査、視野検査、両眼視検査といった複数の検査を行うことができるものである。
先ず、人間の視覚特性と映像解像度との関係について説明する。
人間の片目の視野は、図1(a)に示すように、視野中心の中心窩に対し、上方に60度、下方に70度、耳側に100度、鼻側に60度、程度の広さを有している。この視野のうち、中心視野は、中心窩から15度程度となっている。なお、人間の視野特性のうち、脊椎動物の目の構造上、生理的に存在する暗点(見えない部分)の一つとして盲点がある被験者も存在する。人間の両眼の視野特性は、図1(b)に示すように、中心窩に対し、上下方向に120度、左右方向に120度程度となっている。
このような人間の視野特性に対し、視力特性は、図2に示すようになっている。例えば視野中心においては視力が1.2である場合、視野中心から耳側及び鼻側に10度ずれた位置での視力は、0.03程度である。すなわち、人間が視野中心の物体を見ている場合に、視野中心から10度だけ離れると物体を見ることができる視力は0.03となってしまう。
また、人間の両眼視特性は、両眼で同時にものを見る能力のことをいい、同時視・立体視・融像の能力に分類される。同時視とは、図3に示すように、動物の画像Aを右眼で見ると共に檻の画像Bを左眼で見た時に、その2種類の画像A、Bを一つの像として認識することができる能力のことである。また、立体視とは、左右の眼の位置が違うことにより生じる視差を認識することにより、対象物を立体的に見ることができる能力である。融像は、さらに運動性融像と感覚性融像に分類される。運動性融像とは、輻湊(寄り眼)、開散(離し眼)の眼球運動により、離れた位置に提示された左眼用画像と右眼用画像を一つの像として認識できる能力である。感覚性融像とは、脳の働きにより、同一画像を大きさやボケ差などで見た目を変えて左右の眼に提示されたものを一つの像として認識できる能力である。なお、上記の見た目を変えた映像提示の一例として、大きさを変えたものを図4に、ボケ差を変えたものを図5に示す。
このような人間の視機能を検査するために、視機能検査装置は、図6に示すような映像提示解像度、映像提示視野角の条件を満たした映像を提示する。
視力特性を検査する視力検査を行う場合、視機能検査装置は、視力換算値で0.8以上の映像提示解像度、映像提示視野角で30度程度の条件で映像を提示する。また、視野特性を検査する視野検査を行う場合、視機能検査装置は、視力換算値で0.05程度の映像提示解像度、映像提示視野角で120度〜180度程度の条件で映像を提示する。更に、両眼視特性における同時視、立体視、感覚性融像の検査を行う場合、視機能検査装置は、視力換算値で0.8程度の映像提示解像度、映像提示視野角で30度程度の条件で映像を提示する。更に、両眼視検査における立体視の検査を行う場合、視機能検査装置は、被験者の右眼と左眼とに微小な視差の映像を提示する必要がある。この立体視検査を行う場合、右眼用映像と左眼用映像との距離を視角で100秒程度の視差を付けて表示を行う必要がある。
この視機能検査装置により提示する画像の映像提示解像度は、所定の視力換算値を満たす必要がある。この視力換算値の算出方法を以下に説明する。
ここで、視力とは、視野角の空間的分解能である。ここで、図7に示すように、視点に対してなす角(以下、視角)をθ1とする。この視角は、単位として「分」、この「分」を1/60に分割した「秒」が用いられる。この分は、視角θ1が1度である場合に、その値が「60分」となる。
通常、識別可能な2つの対象間の距離の最小値(最小分離域)を視角で表し、その逆数が視力値となる。つまり、視角にして1分の間隔を見分けることができる視力を1.0とし、0.5分の間隔を見分けることができれば視力値は2.0であり、2分の間隔しか見分けることができなければ視力値は0.5である。
このような視力と視角の関係を、視機能検査装置により表示する映像提示分解能に適用すると、図7のような最小分離域が1画素の大きさで表される。そして、1画素の大きさに対する視角(単位:分)の逆数が視力となる。
よって、映像表示分解能を視力に換算した視力換算値(A)は、下記の式1に示すように、映像提示視角θ[度]と、映像提示解像度X[pixel]によって定義される。
A=1/((θ×60)/X)=X/(θ×60) (式1)
この視力換算値Aを表す式1における映像提示視角θ[度]は、図8に示すように、映像提示面の幅L[m]と、被験者と映像提示面との距離D[m]によって、式2、式3のように定義される。
tan(θ/2)=(L/2)/D=L/2D (式2)
θ=2×tan−1(L/2D) (式3)
そして、式3の映像提示視角θを式1に代入すると、視力換算値Aは、下記の式4のように表される。
A=X/(2×tan−1(L/2D)×60)=X/(120×tan−1(L/2D)) (式4)
つまり、映像提示解像度Xは、下記の式5に示すように、
X=120×A×tan−1(L/2D) (式5)
となる。以上のように、表示したい視力換算値Aと、映像提示面の幅L、被験者と映像提示面との距離Dを特定すれば、式5により、映像提示解像度Xが一意に決まる。
例えば、被験者から映像提示面までの距離Dが5mだけ離れた位置に設置された幅Lが1mの映像提示面に視力換算値Aが1.0の映像を提示する場合、式5により、映像提示解像度X[pixel]はおよそ686となる。
「視機能検査装置の構成例」
つぎに、本発明の実施形態として示す視機能検査装置の具体的な構成について説明する。
この視機能検査装置は、例えば図9に示すように構成される。この視機能検査装置は、被験者の頭部をドーム型スクリーン1に正対して位置し、当該被験者に対して複数の眼科検査を行うものである。
なお、本実施形態において、映像を投影するドーム型スクリーン1は、図10(a)のように被験者の視線方向が水平方向となるように設置しているが、図10(b)のように被験者の視線方向が見上げ方向となるよう、又は、図10(c)のように見下げ方向となるように設置しても良い。被験者の視線方向が見上げ方向となるようにドーム型スクリーン1を設置することで、被験者の瞼を大きく開かせる効果を有する。また、被験者の視線方向が見下げ方向となるようにドーム型スクリーン1を設置することで、被験者の眼球表面の渇きを抑える効果を有する。
この視機能検査装置は、「視力検査」、「視野検査」、「両眼視検査(同時視検査、立体視検査、運動性融像検査、感覚性融像検査)」、「むき眼位検査」を少なくとも行うことができる。この視機能検査装置は、一般的に視野検査で用いられるドーム型スクリーンを採用しながら、視力検査、両眼視検査等の他の眼科検査を実施することができる。以下、このような視機能検査装置について説明する。
視機能検査装置は、ドーム型スクリーン1と、当該ドーム型スクリーン1に投影する映像光を出射する投影手段としてのプロジェクタ2A,2Bと、当該プロジェクタ2A,2Bから出射された映像光をドーム型スクリーン1に向けて反射するミラー3と、被験者の頭部位置をドーム型スクリーン1に対する所定位置とする固定機構5とを備える。また、この視機能検査装置は、ドーム型スクリーン1、プロジェクタ2A,2B、ミラー3及び固定機構5を主要構成要素としたユニットが載置台6に載置される。視機能検査装置は、当該載置台6に設けられた手すり7を被験者が検査中に把持する構成も備えている。なお、この実施形態に限られず、この投影手段としてのプロジェクタ2A,2Bは少なくとも一つあれば良い。
この固定機構5は、被験者の頭部を固定する機能も有する。これにより、視機能検査装置は、眼の位置を固定させた状態にて各種の視機能検査を行うことができる。なお、図9においては、被験者が偏光メガネ8を掛けて視機能検査をしている様子を示している。しかし、例えば視機能検査のうち、視力検査であれば単眼で行うものであるために、偏光メガネ8を被験者に装着させる必要はない。すなわち、両眼視検査で必要な視機能検査の種類のみで被験者に偏光メガネ8を装着させれば良い。
ドーム型スクリーン1は、任意深さのドーム型スクリーン1の全体を指し、ドーム型スクリーン1の中心部を含む凹形状の底部が液晶ディスプレイ部1Bとなっている。すなわち、ドーム型スクリーン1は、当該ドーム型スクリーン1のうちの液晶ディスプレイ部1Bの部分と、当該ドーム型スクリーン1の液晶ディスプレイ部1B以外の部分とを組み合わせて構成されている。なお、以下の説明においては、ドーム型スクリーン1の全体を「ドーム型スクリーン1A」と呼び、ドーム型スクリーン1の全体のうちの底部分を「液晶ディスプレイ部1B」と呼ぶ。
なお、本実施形態において映像を投影するスクリーンは、「ドーム型スクリーン」と呼んでいるが、これは被験者に対して凹面形状を有し、効果的に視野を覆う特徴を有するものである。スクリーン形状は球の一部を構成するような形状が望ましいが、楕円形状や多面体形状でも良い。このような視機能検査装置のドーム型スクリーン1は、図11に示すように、被験者と正対する中心領域が液晶ディスプレイ部1Bとなっており、当該液晶ディスプレイ部1Bを含む中心領域とその周辺がドーム型スクリーン1Aとなっている。
ドーム型スクリーン1Aは、一般的なスクリーン材料からなる。また、液晶ディスプレイ部1Bは、自発光型のディスプレイであれば良い。すなわち液晶ディスプレイに限らず有機ELディスプレイなどであっても良い。
これにより、視機能検査装置は、ドーム型スクリーン1全体の映像提示領域の中心部を含む第1映像提示領域に第1映像を提示する第1映像提示手段を構成する。また、視機能検査装置は、第1映像提示領域の周辺に形成された第2映像提示領域に第2映像を提示する第2映像提示手段を構成する。
この第1映像提示領域と第2映像提示領域とは、当該第1映像提示領域が被験者に表示面を向けた平面形状となっており、第2映像提示領域は凹面形状となっている。また、第1映像提示領域は、平面である必要はなく、第2映像提示領域の凹面形状に合わせて緩やかな凹面形状であっても良い。この第1映像提示領域と第2映像提示領域との境界は、映像に違和感を与えないために、段差がない連続的な形状となっていることが望ましい。しかし、凹面形状のドーム型スクリーン1Aを一体成形して第2映像提示領域を構成し、当該ドーム型スクリーン1Aの被験者側に液晶ディスプレイ部1Bを配置して第1映像提示領域を構成しても良い。
また、視機能検査装置は、ドーム型スクリーン1を構成する周縁部分の4端を支持する4個のスクリーン支持部11を備える。ドーム型スクリーン1は、スクリーン支持部11を介して、ドーム型スクリーン1の周縁部分を支持するアーム12,13、固定部材14及び背面部15で支持されている。
プロジェクタ2A,2Bは、ドーム型スクリーン1の背面部15の略上端部に接続された一対のアーム22に設けられた設置台21に設けられている。この一対のアーム22は、背面部15から被験者側に伸びており、当該アーム22の先端部には、ミラー3が取り付けられている。このような構成において、視機能検査装置は、設置台21におけるプロジェクタ2A,2Bの位置と、アーム22によって決まるミラー3の位置と、プロジェクタ2A,2B及びドーム型スクリーン1に対するミラー3の姿勢との関係が適切な関係となるように設計されている。
このように構成された視機能検査装置は、視力検査、視野検査、両眼視検査を行うことが、図示しない操作部に対する操作によって選択される。視機能検査装置は、図12に示すように、ドーム型スクリーン1の映像提示領域の中心部を含む第1映像提示領域に第1映像を提示する第1映像提示手段34を含む。この第1映像提示手段34は、液晶ディスプレイ部1Bに相当する。この液晶ディスプレイ部1Bを駆動するために、視機能検査装置は、第1映像提示手段34に表示する第1映像を描画するCPU等からなる第1映像描画手段33を含む。この第1映像としては、視力検査用のランドルト環、両眼視検査用の複数の画像などが挙げられる。
更に、視機能検査装置は、液晶ディスプレイ部1B(第1映像描画手段33)の周辺を含む第2映像提示領域に第2映像を提示する第2映像提示手段36を含む。この第2映像提示手段36は、ドーム型スクリーン1A、プロジェクタ2A,2Bに相当する。このために、視機能検査装置は、ドーム型スクリーン1A(第2映像提示手段)に表示する第2映像を描画する後述のCPU等からなる第2映像描画手段35を含む。この第2映像としては、視野検査用の視標画像、むき眼位検査用の格子状画像が挙げられる。
このような第1映像、第2映像は、映像データとして映像生成手段31により生成される。この映像生成手段31は、パーソナルコンピュータ等からなる。映像生成手段31は、第1映像描画手段33及び第2映像描画手段35により描画される第1映像及び第2映像の映像データを生成する。
視野検査、両眼視検査では、第1映像の映像データを映像生成手段31により生成し、第1映像描画手段33により描画して、液晶ディスプレイ部1Bにより第1映像を表示される。視野検査、むき眼位検査では、第2映像の映像データを映像生成手段31により生成し、第2映像描画手段35により描画して、プロジェクタ2A,2Bによりドーム型スクリーン1Aに第2映像を表示させる。
視機能検査装置は、映像生成手段31で生成された映像データに対して、第1映像提示領域(液晶ディスプレイ部1B)に表示される第1映像の第1映像範囲及び第2映像提示領域(ドーム型スクリーン1A)に表示される第2映像の第2映像範囲を設定する映像提示領域設定手段32を備える。
この映像提示領域設定手段32は、視力検査用の画像、両眼視検査用の画像を表示させる場合には、当該視力検査用の画像、両眼視検査用の画像(第1映像)を第1映像範囲(液晶ディスプレイ部1B)に表示させる設定をする。すなわち、映像生成手段31により生成された第1映像の映像データを、液晶ディスプレイ部1Bの全面に表示させる映像データとして第1映像描画手段33に出力する。
また、映像提示領域設定手段32は、視野検査用の画像、むき眼位検査用の升目画像を表示させる場合には、視野検査用の画像、むき眼位検査用の画像(第2映像)を、液晶ディスプレイ部1Bを含むドーム型スクリーン1Aに表示させる。すなわち、映像生成手段31により生成された映像データを、液晶ディスプレイ部1Bを含むドーム型スクリーン1Aに対して第2映像を表示させる映像データとして第2映像描画手段35に出力する。
これにより、視機能検査装置は、液晶ディスプレイ部1B(第1映像提示手段34)により映像提示領域設定手段32が設定した第1映像範囲の第1映像を第1視力にて視機能検査ができる分解能で表示する。一方、視機能検査装置は、ドーム型スクリーン1A(プロジェクタ2A,2B,第2映像提示手段)により、映像提示領域設定手段32が設定した第2映像範囲の第2映像を第2視力にて視機能検査ができる分解能で表示する。
このようにドーム型スクリーン1A及び液晶ディスプレイ部1Bを用いて映像表示する視機能検査装置は、図6に示したように、視力検査、視野検査、立体視検査(両眼視)に対応した映像提示解像度、映像提示視野角で、第1映像、第2映像を提示する。
視機能検査装置は、視力検査時には、映像提示解像度として視力換算値Aで0.8以上の第1映像を液晶ディスプレイ部1Bにより表示させる。なお、視力検査に必要とされる視力換算値Aを0.8以上としたのは、視力検査で検査したい最低限の視力であり、更に高い視力を表示可能としても良い。この場合、液晶ディスプレイ部1Bの映像提示解像度Xを、視力換算値Aに合わせて更に高くする必要がある。
液晶ディスプレイ部1Bの映像提示解像度Xは、式5に示したように、表示したい視力換算値A、映像提示面の幅L、被験者と映像提示面との距離Dが特定されることにより、決定される。また、視機能検査装置は、当該視力検査時の画像を、図11に示したような液晶ディスプレイ部1Bが設置されている映像提示視野角の30度程度で表示できる。この映像提示視野角は、固定機構5により固定される被験者の視点位置と液晶ディスプレイ部1Bとの距離D、液晶ディスプレイ部1Bの映像提示面の幅Lにより決定される。
また、視機能検査装置は、視野検査時には、映像提示解像度として視力換算値Aで0.05以上の第2映像をドーム型スクリーン1A(液晶ディスプレイ部1Bを含む)により表示させる。なお、視野検査に必要とされる視力換算値Aを0.05以上としたのは、一般的に視野と認められる値を設定している。ドーム型スクリーン1Aの映像提示解像度Xは、式5に示したように、表示したい視力換算値A、映像提示面の幅L、被験者と映像提示面との距離Dが特定されることにより、決定される。視野検査時には、視力検査時よりも粗い解像度で提示することができる。
以上のように、本発明の実施形態として示す視機能検査装置によれば、第1映像範囲の第1映像を第1視力にて視機能検査ができる分解能で表示し、第1映像範囲の周囲を含む第2映像範囲の第2映像を第2視力にて視機能検査ができる分解能で表示することができる。これにより、視機能検査装置によれば、人間の眼の見え方(視覚特性)に応じて映像提示解像度を設定し、日常生活に重要な複数の視機能検査(視力、視野、両眼視、むき眼位)を一台で実行できる。
また、この視機能検査装置によれば、第2映像提示手段36であるドーム型スクリーン1Aが、被験者の第2映像を見るための視野角が120度以上となる面積を有する凹面形状で形成されているので、被験者の視界を覆うような第2映像を表示して、視野検査、むき眼位検査を行うことができる。更に、この視機能検査装置によれば、第1映像提示手段34である液晶ディスプレイ部1Bが、被験者の第1映像を見るための視野角が30度以下となる面積を有する平面形状で形成されているので、当該視野角の範囲内に第1映像を表示して、視力検査、両眼視検査を行うことができる。これにより、視機能検査装置は、一台の機器により、視力検査、視野検査、両眼視検査、むき眼位検査を行うことができる。
「映像の歪み補正処理」
上述した視機能検査装置は、被験者が第1映像又は第2映像を視認した場合に第1映像提示手段34又は第2映像提示手段36において当該第1映像又は第2映像を歪みなく観察させるために映像生成手段31により生成された映像データに対して歪み補正をする歪み補正手段を有していることが望ましい。
ここで、ドーム型スクリーン1Aは、凹面形状となっており、液晶ディスプレイ部1Bは、平面形状となっている。また、液晶ディスプレイ部1Bは、ドーム型スクリーン1Aの形状に沿って、その表示面が球面状になっていても良い。このように映像表示面が構成された場合、平面の映像データを第2映像描画手段35により描画して第2映像提示手段36のプロジェクタ2A,2Bからドーム型スクリーン1Aに投影すると、当該ドーム型スクリーン1Aの形状に応じて歪みが発生する。このために、視機能検査装置は、映像データに対して歪み補正を行う。
この歪み補正手段は、映像生成手段31の一機能として含まれ、生成した映像データに対して所定の歪み補正処理を施す。この所定の歪み補正処理は、ドーム型スクリーン1Aの形状に起因して映像が歪む凹面歪み、プロジェクタ2A,2Bとミラー3とドーム型スクリーン1Aとの位置関係に起因して映像が歪む台形歪み、ドーム型スクリーン1Aの凹部と液晶ディスプレイ部1B部分の平面の組合せに起因して映像が歪むことに対応して行われる。
この歪み補正処理のためには、ドーム型スクリーン1A及び液晶ディスプレイ部1Bを含む映像投影面の形状、プロジェクタ2A,2Bとミラー3と映像投影面の位置関係、プロジェクタ2A,2Bの打ち込み角を含む仕様、ドーム型スクリーン1Aと固定機構5により固定される被験者の視点位置との位置関係など、映像が投影されたときの歪みの原因となるパラメータに基づいて、被験者の視点位置から映像が歪み無く見えるように、映像データに含まれる各画素の変換前後の座標値を格納した変換テーブルを作成しておく。そして、映像生成手段31の歪み補正手段は、生成された映像データの画素を取り出し、変換テーブルに従って座標変換をすることにより、歪み補正された映像データに変換する。
このような歪み補正処理の概念的な説明を以下にする。なお、以下の説明は、映像生成手段31における歪み補正手段が、ドーム型スクリーン1Aの形状等のパラメータに基づいて作成された変換テーブルを用いて映像データを補正することにより、任意形状のドーム型スクリーン1Aの投影面に投影された映像が歪み無く見えるようにするための処理である。
例えば図13に示すように、ドーム型スクリーン1Aである任意形状の被投影物体Sとして、被験者に対して距離Lだけ離間し、被験者に対して斜めに傾斜して配置された平板状物体Sを考える。この平板状物体Sは、被験者の視点位置P1から視野角θ1で視認される。被験者の視野中心と交差する平板状物体S上の点P2から被験者までは、距離L1だけ離間している。
視点位置P1と平板状物体S上の点P2との位置関係において、図14(a)に示すように、図14(b)に示す格子状の平面映像Pic(映像データ)を、被験者から見る映像面Uを介して平板状物体S上で見る場合を考える。この場合、映像面Uに図14(b)に示す平面映像Picが表示されていると同じ映像を平板状物体Sに表示させる場合、映像面U上の各座標と平板状物体S上の各座標との対応関係を取得する必要がある。模式的に図14(a)に示しているが、映像面U上の点b1,b2,b3,b4,b5は、平板状物体S上の点a1,a2,a3,a4,a5に対応している。したがって、平板状物体S上の点a1,a2,a3,a4,a5に表示された映像は、被験者からは映像面U上における点b1,b2,b3,b4,b5として視認される。
また、図15に示すように、被験者の視線と平板状物体Sとが交差する点P2と、プロジェクタ2の投影位置P3とは、L2の距離となっている。また、プロジェクタ2は、所定の投影画角θ2の範囲で投影光を投影する。
この場合、プロジェクタ2の映像面Pと平板状物体Sとの位置関係は、図16に示すように、平板状物体S上の点a1,a2,a3,a4,a5が、映像面P上の点c1,c2,c3,c4,c5に対応している。すなわち、プロジェクタ2の投影位置P3から映像面P上の点c1,c2,c3,c4,c5を延長した直線上の点が、平板状物体Sの点a1,a2,a3,a4,a5となる。
このような被験者の視点位置P1及び視野角θ1、平板状物体Sの位置、プロジェクタ2の投影位置P3及び投影画角θ2の関係から、図16(a)に示したプロジェクタ2における映像面P上の点c1,c2,c3,c4,c5に映像を投影させると、平板状物体S上の点a1,a2,a3,a4,a5に映像が投影される。その結果、平板状物体S上の点a1,a2,a3,a4,a5が、図14における映像面U上の点b1,b2,b3,b4,b5として視認されることとなる。したがって、被験者に平面映像Picを視認させるためには、プロジェクタ2は、映像面U上の各座標に対応した平板状物体S上の各座標と、映像面P上の各座標に対応した平板状物体S上の各座標との対応関係に基づいて、図16(b)に示すように歪ませた平面映像Pic’’を投影する必要がある。
このような映像の投影動作を実現するために、視機能検査装置は、図13に示すように、被験者の視点位置P1を示す視点位置及び視線方向を示す視点位置姿勢パラメータ及び被験者の視野角θ1を示す視野角パラメータを取得する。これらの被験者のパラメータは、上述した映像面Uを定める。
また、プロジェクタ2から出射された投影光を投影する平板状物体Sの形状データを取得する。この形状データは、例えばドーム型スクリーン1Aの形状を示すCADデータである。ここで、視点位置姿勢パラメータは、3次元座標空間における、X,Y,Z軸上の位置および軸周りの回転角度を数値で定義したものである。この視点位置姿勢パラメータは、視点位置P1と平板状物体Sとの距離L1と、視点位置P1に対する平板状物体Sの姿勢を一意に定める。また、平板状物体Sの形状データとは、CAD等で作成された電子データを基に、3次元座標空間における形状領域を定義したものである。この形状データは、視点位置P1から見た平板状物体Sの形状を一意に定める。このような平板状物体Sの形状データと被験者のパラメータとは、映像面Uの座標と平板状物体S上の座標との対応関係を定める。
また、図15に示すようにプロジェクタ2が設置されたことに対し、視機能検査装置は、プロジェクタ2の投影位置P3及び当該プロジェクタ2の光軸方向を示す位置姿勢パラメータ及びプロジェクタ2の投影画角θ2を示す投影画角パラメータを取得する。このプロジェクタ2の位置姿勢パラメータ及び投影画角パラメータは、プロジェクタ2が平板状物体Sに対して投影する映像面Pを表す。この映像面Pが定まると、プロジェクタ2から投影される投影光が映像面Pを介して平板状物体Sのどの座標に投影されるかが定められる。すなわち、プロジェクタ2の位置姿勢パラメータ及び投影画角パラメータと、平板状物体Sの位置姿勢パラメータ及び形状データとは、プロジェクタ2から出射された投影光によって覆われる平板状物体Sの範囲が一意に決まる。プロジェクタ2がプロジェクタである場合、投影位置P3はバックフォーカス及び打ち込み角で定義され、投影画角θ2は投影位置P3から一定距離での水平及び垂直方向の投影範囲から算出される。
そして、視機能検査装置は、平板状物体Sに表示される投影光の画素(a1,a2,a3,a4,a5)とプロジェクタ2の投影位置P3とを結ぶ直線と、映像面Pとの交点(c1,c2,c3,c4,c5)に画素を配置して平面映像Pic’’を構成し、その平面映像Pic’’を平板状物体Sに投影させる。そして、映像面P上の点c1,c2,c3,c4,c5、平板状物体S上の点a1,a2,a3,a4,a5、映像面U上の点b1,b2,b3,b4,b5という経路で被験者にとって歪みのない映像を視認させることができる。
同様に、被投影物体が平板状物体Sのような形状ではなく、ドーム型スクリーン1Aのようにドーム型のような任意形状のものであっても歪みなく投影光を投影して、被投影物体を被験者に視認させることができる。図17(a)に示すように被投影物体がドーム型物体Sであり、図17(b)に示すように、被験者に格子状の投影光を視認させる場面を考える。この場合、被験者からは、映像面U上の点b1,b2,b3,b4,b5の延長線上におけるドーム型物体S上の点a1,a2,a3,a4,a5が視認される。これに対し、プロジェクタ2は、図18(a)に示すように映像面Pに投影光を投影する。この映像面Pにおける点c1,c2,c3,c4,c5を通過した投影光は、ドーム型物体Sにおける点a1,a2,a3,a4,a5に投影されて、図17(a)に示す映像面Uの点b1,b2,b3,b4,b5として視認される。したがって、プロジェクタ2は、映像面Pに対して図18(b)に示すように歪ませた平面映像Pic’’を投影する。これに対し、被験者は、図17(b)に示すような歪みのない平面映像Picを視認することができる。
以上のように、この視機能検査装置によれば、プロジェクタ2A,2Bから投影した映像が歪むことを補正することができ、歪みの無い映像をドーム型スクリーン1Aに提示でき、視野検査、むき眼位検査を行うことができる。
「映像提示解像度の具体例」
また、上述した視機能検査装置においては、第1映像提示手段34は、液晶ディスプレイ部1BによりSXGA以上の解像度で第1映像を表示し、第2映像提示手段36は、プロジェクタ2A,2BによりVGA以上の解像度で第2映像を表示することが望ましい。このために、映像生成手段31は、第1映像のための映像データをSXGA(Super eXtended Graphics Array)の1280×1024ピクセルの解像度以上とする。また、映像生成手段31は、第2映像のための映像データをVGA(Video Graphics Array)の640×480ピクセルの解像度以上とする。
これにより、この視機能検査装置によれば、高い映像提示解像度が要求される視力検査、両眼視検査では液晶ディスプレイ部1BにSXGAの第1映像を表示することができ、低い映像提示解像度で充分な視野検査ではVGAの第2映像を表示することができる。これにより、視機能検査装置は、第1映像範囲では第1映像により第1視力での視機能検査を行い、第2映像範囲では第2映像により第2視力での視機能検査を行うことを実現できる。
「映像提示解像度の加工処理」
上述した視機能検査装置において、映像生成手段31は、第1映像提示手段34と第2映像提示手段36との境界部分において、第1映像提示手段34の内側から終端部に向かって映像分解能を次第に低下させ、第1映像提示手段34の終端部に表示する映像分解能と第2映像提示手段36に表示される映像分解能とを同等にするように、映像生成手段31により生成された映像データを加工する映像加工手段を備えることが望ましい。
このとき、映像生成手段31は、図19に示すように、映像データとして、ドーム型スクリーン1Aの中心部分の映像解像度をcという高い値とする。これにより、映像生成手段31は、ドーム型スクリーン1Aの中心部分である液晶ディスプレイ部1B部分では視力検査、両眼視検査が行える映像提示解像度の映像を表示させる。
そして、液晶ディスプレイ部1Bの端部を挟む所定幅の領域では、ドーム型スクリーン1Aの内側から端部に向かうに従い映像提示解像度から次第に映像提示解像度を低くさせて、液晶ディスプレイ部1Bの端部では視野検査を行える映像提示解像度とする。液晶ディスプレイ部1Bの端部を挟む所定幅の領域は、液晶ディスプレイ部1Bの映像解像度cよりも低く、ドーム型スクリーン1Aの映像解像度aよりも高い、中間の映像解像度bで映像を表示させる。
このような視機能検査装置によれば、液晶ディスプレイ部1Bのある範囲から液晶ディスプレイ部1Bの周囲に向かい、映像分解能を次第に低下させるようにしたので、液晶ディスプレイ部1B及び当該液晶ディスプレイ部1Bの周囲に亘って映像を表示させる場合に、映像提示解像度が段階的に変化することを回避できる。これにより、視機能検査装置は、被験者に対して違和感を与えることがない映像提示をすることができる。
「両眼分離映像提示処理」
つぎに、上述した視機能検査装置により両眼分離映像を表示するものについて説明する。
両眼分離映像は、両眼視検査において、左右の眼に異なる映像を提示した時に、被験者がどのように認識するかを検査するために表示される。
両眼分離映像を表示させる場合、映像生成手段31は、被験者の左眼により観察される左眼用映像を提示する左眼用映像データ、被験者の右眼により観察される右眼用映像を提示する右眼用映像データを生成し、各映像データを分離して提示する(両眼分離手段)。この両眼分離手段とは、両眼分離映像の投影手段と同様で、一例として、シルバー塗布されたスクリーン、2台のプロジェクタと偏光フィルタ、偏光メガネ8で構成される。また、この両眼分離手段としては、プロジェクタとしての投影手段及び映像光が投影されるスクリーンを備えた構成に限らず、自発光スクリーンであっても良い。また、この自発光スクリーンは、その表示面がドーム形状であり、被験者に対して凹面を向けて配置されても良い。
右眼用映像、左眼用映像を液晶ディスプレイ部1Bにより表示させる場合、一例として、当該液晶ディスプレイ部1Bは、偏光方式立体視ディスプレイを使用する。第1映像描画手段33は、当該右眼用映像と左眼用映像とを重畳させた両眼分離映像を描画して、第1映像提示手段34により表示させる。これにより、視機能検査装置は、高い映像提示解像度の両眼分離映像を表示して、両眼視検査を行うことができる。
また、右眼用映像、左眼用映像は、それぞれプロジェクタ2A,2Bから出力しても良い。この場合、視機能検査装置は、図6に示した視力換算値Aが0.05以上となる映像提示解像度を満たす両眼分離映像をプロジェクタ2A,2Bから投影させることが条件となる。そして、視機能検査装置は、両眼視検査を行う場合に、当該左眼用、右眼用それぞれのプロジェクタ2A,2Bによって両眼分離映像を投影させる動作を行う。この場合、例えば左眼用のプロジェクタ2Aに左眼用の偏光フィルタを設けると共に右眼用のプロジェクタ2Bに右眼用の偏光フィルタを設け、被験者が装着する偏光メガネ8の左眼部分を左眼用の偏光フィルタとすると共に右眼部分を右眼用の偏光フィルタとする。
このような視機能検査装置によれば、両眼視検査のうちの両眼視検査を行う場合であっても、右眼用映像と左眼用映像とを液晶ディスプレイ部1Bに表示させて、図6に示した所定の映像提示視野角、映像提示解像度により両眼分離映像(第1映像)を表示することができる。また、この視機能検査装置によれば、両眼分離映像としてドーム型スクリーン1Aを用いる場合であっても、2台のプロジェクタ2A,2Bにより右眼用映像、左眼用映像を表示させることができる。
また、この視機能検査装置は、映像生成手段31が生成する左眼用映像データ、右眼用映像データを特定の条件にて変化させても良い。この特定の条件は、両眼視検査を行う医者等によって自由に設定できる。この特定の条件としては、例えば、両眼分離映像の大きさ、左右上下移動、回転、ボケ、明るさ等が挙げられる。
更に、この視機能検査装置は、図示しない被験者のための操作入力機構を備え、同時視検査や融像検査をするときに右眼用映像、左眼用映像を独立して表示して、被験者の操作により当該右眼用映像と左眼用映像との距離を移動させる。そして、視機能検査装置は、被験者の入力値を視野角θに変換する。これにより、視機能検査装置は、被験者が右眼用映像と左眼用映像とで独立した両眼分離映像を見て、両画像が重なって見えるときの映像間距離を視野角に変換して、両眼視検査を実施する眼科医等に提示することができる。
「視機能検査装置の具体的な表示例」
以上説明した視機能検査装置によれば、視力検査を行う場合には、図20に示したように、視力検査用視標として、視力換算値Aで0.8上の高い映像提示解像度のランドルト環を表示させる。このとき、視機能検査装置は、視力検査用視標を立体映像で表示し、偏光メガネ8を介して被験者が右眼、左眼で分離して見ることができるようにする。これにより、視機能検査装置は、単眼及び両眼視下の視力検査を行うことができる。なお、図20においては、被験者が偏光メガネ8を掛けて視力検査をしている様子を示している。しかし、視力検査において偏光メガネ8が必要ない場合や、両眼視検査を行っていない場合には、偏光メガネ8は不要である。
また、視機能検査装置は、視野検査を行う場合には、図21に示すように、2台のプロジェクタ2A,2Bからミラー3を介してドーム型スクリーン1Aの略全面の広視野領域に、視力換算値Aが0.05以上の映像提示解像度の視野検査用視標を表示する。このとき、視機能検査装置は、視野検査用視標を立体映像で表示し、偏光メガネ8を介して被験者が右眼、左眼で分離して見ることができるようにする。これにより、視機能検査装置は、単眼及び両眼視下の視野検査を行うことができる。
更に、視機能検査装置は、両眼視検査を行う場合には、図22に示すように、両眼視検査用視標として、両眼視検査用視標を表示させる。このとき、視機能検査装置は、例えばライオンと檻のような両眼視検査用視標を立体映像で表示し、偏光メガネ8を介して被験者がライオンと檻とを右眼、左眼で分離して見ることができるようにする。なお、図22においては、被験者が偏光メガネ8を掛けて両眼視検査をしている様子を示している。しかし、両眼視検査を行っていない場合には、偏光メガネ8は不要である。
更に、視機能検査装置は、むき眼位検査を行う場合には、図23に示すように、2台のプロジェクタ2A,2Bからミラー3を介してドーム型スクリーン1Aの略全面の広視野領域に、所定の映像提示解像度のむき眼位検査用視標(升目)及び被験者の操作により移動される矢印を表示する。このとき、視機能検査装置は、映像データに対して歪み補正処理を施して、歪みのない升目状のむき眼位検査用視標を表示する。また、視機能検査装置は、偏光メガネ8を介して被験者が右眼、左眼で分離して見ることができるようにする。これにより、視機能検査装置は、単眼及び両眼視下のむき眼位検査を行うことができる。
「視機能検査装置の操作インターフェース」
つぎに、上述したように複数の視機能検査を行うことができる視機能検査装置の操作インターフェースについて説明する。
各視機能検査は、図24に示すように、当該視機能検査ごとに要求される患者(被験者)の操作と、当該視機能検査ごとに視機能検査装置が入力する必要がある操作内容とが予め決められている。視力検査は、被験者によってランドルト環の方向を指す操作がされる。このとき、視機能検査装置は、上、下、左、右という4方向操作を区別して入力する必要がある。視野検査は、被験者によって光点が見えるときにボタン操作がされる。このとき、視機能検査装置は、オフからオンとなるボタン操作を入力する必要がある。両眼視検査は、右眼用画像及び/又は左眼用画像を動かす操作がされる。このとき、視機能検査装置は、上、下、左、右という4方向操作と、回旋操作とを区別して入力する必要がある。眼位検査は、被験者が升目に沿って矢印を移動させる操作がされる。このとき、視機能検査装置は、上、下、左、右という4方向操作に加えて、斜め方向を組み合わせた合計で8方向の操作を区別して入力する必要がある。
以上のように、視機能検査装置の操作インターフェースは、上記の4種類の視機能検査を行うとした場合には、上、下、左、右という4方向操作と斜め方向とを組み合わせた8方向操作と、ボタン入力操作と、回旋操作とを区別して入力する必要がある。この入力操作を実現する操作インターフェース(操作手段)100は、例えば図25に示すように構成される。
操作インターフェース100は、台部101と、操作入力部102と、押しボタン103と、回旋用ボタン104とを有する。なお、回旋用ボタン104は、図25に示しているように、操作入力部102の側面に一つだけでも良く、操作入力部102の反対側の側面にもう一つ設けられていても良い。また、操作インターフェース100は、図26乃至図28に示すように、操作入力部102に接続され、台部101の内部に端部が固定された中心軸105を備える。
操作インターフェース100は、図26(a)に示すように、操作入力部102を右に傾倒させる操作によってX軸の正方向に動作する。また、操作インターフェース100は、図26(b)に示すように、操作入力部102を左に傾倒させる操作によってX軸の負方向に動作する。操作インターフェース100は、図27(a)に示すように、操作入力部102を前に傾倒させる操作によってY軸の正方向に動作する。また、操作インターフェース100は、図27(b)に示すように、操作入力部102を後ろに傾倒させる操作によってY軸の負方向に動作する。これにより、視機能検査装置は、操作インターフェース100に対する、被験者の上、下、左、右という4方向操作を入力できる。また、視機能検査装置は、4方向に加えて、斜め方向にまで操作入力部102を可動にすれば、斜め方向とを組み合わせた8方向操作を入力できる。
更に、操作インターフェース100は、回旋用ボタン104が押圧操作されている場合において、中心軸105の傾倒操作がロックされた状態となる。この傾倒操作のロック状態において、操作インターフェース100は、図28に示すように、操作入力部102を回旋させることができる。図28(a)には、操作入力部102が負方向の右方向に回旋する様子を示している。図28(b)には、操作入力部102が正方向に回旋する様子を示している。回旋量[θ]は、例えば、−30度≦θ≦+30度であり、分解能は、0.1度である。これにより、視機能検査装置は、操作インターフェース100に対する、被験者の回旋操作を入力できる。
このような視機能検査装置は、図29に示すような機能的な内部構成を有している。視機能検査装置は、操作インターフェース(操作手段)100と接続された入力信号送信手段111と、信号記録手段112と、信号遮断手段113と、制御手段114とを備えている。
操作インターフェース100は、上述したように、視機能検査時に被験者により操作され、上下方向、左右方向、前後方向を含む3軸方向と、当該3軸方向に対する回転方向とのいずれかの方向が入力可能なものである。
入力信号送信手段111は、操作インターフェース100に対する操作に応じた操作信号を送信する。
信号遮断手段113は、操作インターフェース100に対する操作方向を特定し、入力信号送信手段111による所定の操作信号の送信を遮断する。すなわち、信号遮断手段113は、操作インターフェース100に対する操作に対して信号出力を制限する制限手段である。
信号記録手段112は、操作インターフェース100が操作されることによって入力信号送信手段111から送信された操作信号を記録する。信号記録手段112に操作信号が記録される条件は、信号遮断手段113によって入力信号送信手段111から送信された操作信号が遮断されないことである。
制御手段114は、視機能検査の種類に基づいて、制限手段である信号遮断手段113による所定の操作信号を遮断する信号送信条件を制御する。
すなわち、制御手段114は、視力検査において、上、下、左、右という4方向の操作信号のみを入力信号送信手段111から信号記録手段112に送信させる。視野検査において、信号遮断手段113は、ボタン操作のみを入力信号送信手段111から信号記録手段112に送信させる。両眼視検査において、信号遮断手段113は、上、下、左、右という4方向の操作信号及び回旋による操作信号のみを、入力信号送信手段111から信号記録手段112に送信させる。眼位検査において、信号遮断手段113は、被験者が升目に沿って矢印を移動させる上、下、左、右及び斜め方向を組み合わせた合計で8方向の操作信号のみを入力信号送信手段111から信号記録手段112に送信させる。
このように、視機能検査装置は、選択された視機能検査の種類に応じて、制御手段114が、信号遮断手段113による所定の操作信号を遮断する信号送信条件を制御する。これにより、視機能検査装置によれば、選択された視機能検査の種類に応じた操作信号のみを信号記録手段112に記録させることができる。したがって、視機能検査装置によれば、操作インターフェース100に対して被験者が誤った操作をした場合であって、当該誤った操作による操作信号を生成しても、当該操作信号を遮断して誤操作が視機能検査結果として記録されることを回避できる。具体的には、視機能検査を行っていて、操作インターフェース100を見ることができず誤操作が多い状況でも、視機能検査に対応した操作のみを記録できる。
また、視機能検査装置は、図30及び図31に示すように、被験者による操作に応じて、操作インターフェース100を所定の操作方向に動作させるための動作手段115及び動作固定手段106を備えていても良い。この動作機構は、操作インターフェース100における台部101に内蔵されている。
動作固定手段106は、図30に示すように、中心軸105の動作方向を制限する制限手段である。動作手段115は、動作固定手段106を駆動するアクチュエータ等からなり、選択された視機能検査の種類に応じて動作固定手段106を駆動する。これにより、動作手段115は、方向操作ができず回旋操作のみが可能な状態と、上、下、左、右という4方向の操作が可能な状態と、上、下、左、右及び斜め方向を組み合わせた合計で8方向の操作が可能な状態との間で、中心軸105の状態を変更する。
動作固定手段106は、例えば図30に示すように、中心軸105の4方に配置されたストッパー106a,106b,106c,106dからなる。これらストッパー106a,106b,106c,106dは、動作手段115により中心軸105を中心として図30(a)、(b)、(c)の状態が切り換えられる。
方向操作ができず回旋操作のみが可能な状態とするとき、動作手段115は、図30(a)に示すように、中心軸105に接するようにストッパー106a,106b,106c,106dを配置する。これにより、中心軸105は、中心から操作できない無可動状態(ロック)となる。
上、下、左、右という4方向の操作が可能な状態とするとき、動作手段115は、図30(b)に示すように、中心軸105から離間するようにストッパー106a,106b,106c,106dを配置する。これにより、中心軸105は、4方向のみに操作可能な状態となる。
上、下、左、右及び斜め方向を組み合わせた合計で8方向の操作が可能な状態とするとき、動作手段115は、図30(c)に示すように、図30(b)と比較して更に中心軸105から離間するようにストッパー106a,106b,106c,106dを配置する。これにより、中心軸105は、自由な方向に操作可能な状態となる。
このように、視機能検査装置は、制御手段114によって、選択された視機能検査の種類に基づいて、動作手段115を動作させて動作固定手段106により中心軸105(操作手段)の操作を制限することができる。
このような操作インターフェース100を備えた視機能検査装置は、視機能検査の種類が選択されることに応じて、動作手段115が動作固定手段106を駆動する。これにより、視機能検査装置によれば、操作インターフェース100に対して被験者が誤った操作ができない状態とし、視機能検査の種類に応じた視機能検査結果を記録することができる。
また、上述した視機能検査装置においては、図32に示すように、視機能検査をする時に、動作固定手段106である制限手段により制限された操作を解除する解除手段116を備えている。すなわち、操作インターフェース100は、動作固定手段106により固定された中心軸105に対する操作を解除するために解除手段116を備えている。解除手段116は、例えば動作固定手段106を動作させる動作手段115の動作を解除する構造で構成されている。これにより、視機能検査しない時には操作を固定し、視機能検査時に操作に対する制限を解除できる。
更に、視機能検査装置は、視機能検査の種類に応じて操作インターフェース100に対する操作制限をパターン化して、制限パターンとして記憶しておくことが望ましい。この制限パターンは、図24に示したように、視機能検査装置が実行できる視機能検査ごとの被験者の操作を制限するパターンである。視力検査の場合、制限パターンは、上、下、左、右という4方向の操作以外の操作である。視野検査の場合、制限パターンは、ボタン操作以外の操作である。両眼視検査の場合、制限パターンは、上、下、左、右という4方向の操作及び回旋操作以外の操作である。眼位検査の場合、制限パターンは、上、下、左、右及び斜め方向を組み合わせた合計で8方向の操作以外の操作である。そして、視機能検査装置は、制限パターンを設定し、当該制限パターン以外の正常な操作のみを記録する。
このような視機能検査装置は、図33に示すように、上述した視機能検査装置に加えて、制限パターン設定手段117と、制限パターン呼出手段118と、制限パターン保存手段119とを備える。
制限パターン保存手段119は、上述の制限パターンがデータ化されて記憶されている。なお、制限パターンには、上述した視機能検査に対応する制限のみならず、更に他の視機能検査に対応する制限が含まれていても良く、更に追加及び変更ができるようにしても良い。
制限パターン呼出手段118は、視機能検査の種類が選択されることに応じて、制限パターン保存手段119に記憶された視機能検査に対応した制限パターンを呼び出す。呼び出された制限パターンは、制限パターン設定手段117に供給される。
制限パターン設定手段117は、制限パターン呼出手段118により呼び出された制限パターンを制御手段114に供給する。これにより、制御手段114は、信号遮断手段113を制御して、入力信号送信手段111から信号記録手段112に供給する操作信号を制限する。又は、制限パターン設定手段117は、制限パターンに基づいて動作手段115を動作させて、動作固定手段106を駆動しても良い。これによっても、制限パターン設定手段117は、誤操作ができないようにして、誤操作に基づく操作信号を出力することを回避できる。
このような視機能検査装置によれば、検査項目ごとの操作制限内容をパターン化して設定しておくことで、いずれの視機能検査かを選択されると、それに対応して操作を制限することができる。
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
例えば、上述した視機能検査装置では、第1映像を提示する場合には液晶ディスプレイ部1Bのみを用い、第2映像を表示させる場合には液晶ディスプレイ部1Bを用いずにプロジェクタ2A,2Bを用いる場合について説明した。しかし、ドーム型スクリーン1Aに映像を提示する場合には、プロジェクタ2A,2B及び液晶ディスプレイ部1Bにより表示させても良い。また、ドーム型スクリーン1A及び液晶ディスプレイ部1Bの双方を含む映像を提示する場合、プロジェクタ2A,2B及び液晶ディスプレイ部1Bにより表示させても良い。この場合、第2映像の一部を液晶ディスプレイ部1Bにより表示させ、残りの一部をドーム型スクリーン1Aに表示させる。
また、上述した視機能検査装置では、投影手段としてのプロジェクタを単一のものとし、当該単一のプロジェクタのみにより第1映像、第2映像を投影しても良く、2つのプロジェクタを設けてそれぞれのプロジェクタにより第1映像、第2映像を投影しても良い。
更に、上述した視機能検査装置は、被験者の視点位置を検出する構成を備えていても良く、当該視点位置の変化に追従して第1映像を提示する第1映像範囲を変更しても良い。