JP2011175327A - シミュレーション方法及びプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】 計算規模を小さくすることが可能なシミュレーション方法を提供する。
【解決手段】 シミュレーション対象を粒子の集まりで表現し、ある時間刻み幅で、粒子に関して数値計算を行い、時間軸上で離散的に分布する時刻ごとの該シミュレーション対象の状態を解析する粒子法におけるシミュレーション方法であって、(a)第1の領域、第2の領域、及び第1の領域と第2の領域との境界領域を、それぞれ複数の粒子の集合で定義する工程と、(b)第2の領域の粒子から境界領域の粒子に与えられる熱的寄与を加味して、第1の領域及び境界領域の粒子の温度を求める工程と、(c)工程(b)で求められた境界領域の粒子の温度を加味して、第2の領域の粒子の位置を求める工程とを有するシミュレーション方法を提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、シミュレーション方法及びプログラムに関する。特に、2つの領域のエネルギの授受を、2つの領域の境界に存在する粒子を媒介として行うシミュレーション方法、及びそのシミュレーションをコンピュータで実行するプログラムに関する。
有限要素法(finite elemental method; FEM)と分子動力学法(molecular dynamics method; MD)との連成解析が行われている(たとえば、非特許文献1参照)。しかしながら、FEMとMDとの連成解析や、有限体積法(finite volume method; FVM)とMDとの連成解析において、熱伝導による熱流束のやり取りを動的に行った例はない。
MDのみによっても、たとえば温度場と構造変化を同時に解析することは可能である。しかし計算規模が極めて大きくなるため、現実的ではない。
「三次元分子動力学:有限要素法連結手法に関する基礎的検討」,原祥太郎,熊谷知久,泉聡志,酒井信介,計算力学講演会講演論文集2004(17),pp.137−138
本発明の目的は、新規なシミュレーション方法、及びそのシミュレーションを実行するプログラムを提供することである。
また、本発明の目的は、計算規模を小さくすることが可能なシミュレーション方法、及びそのシミュレーションを実行するプログラムを提供することである。
本発明の一観点によれば、シミュレーション対象を粒子の集まりで表現し、ある時間刻み幅で、粒子に関して数値計算を行い、時間軸上で離散的に分布する時刻ごとの該シミュレーション対象の状態を解析する粒子法におけるシミュレーション方法であって、(a)第1の領域、第2の領域、及び前記第1の領域と前記第2の領域との境界領域を、それぞれ複数の粒子の集合で定義する工程と、(b)前記第2の領域の粒子から前記境界領域の粒子に与えられる熱的寄与を加味して、前記第1の領域及び前記境界領域の粒子の温度を求める工程と、(c)前記工程(b)で求められた前記境界領域の粒子の温度を加味して、前記第2の領域の粒子の位置を求める工程とを有するシミュレーション方法が提供される。
また、本発明の他の観点によれば、シミュレーション対象を粒子の集まりで表現し、ある時間刻み幅で、粒子に関して数値計算を行い、時間軸上で離散的に分布する時刻ごとの該シミュレーション対象の状態を解析する粒子法におけるシミュレーションを行うためにコンピュータを、第1の領域、第2の領域、及び前記第1の領域と前記第2の領域との境界領域の粒子の初期状態を入力する入力手段、前記第2の領域の粒子から前記境界領域の粒子に与えられる熱的寄与を加味して、前記第1の領域及び前記境界領域の粒子の温度を求める手段、前記第1の領域及び前記境界領域の粒子の温度を求める手段で求められた前記境界領域の粒子の温度を加味して、前記第2の領域の粒子の位置を求める手段、少なくとも前記第1の領域の温度、前記第2の領域の粒子の位置のうちの一方を表示する表示手段として機能させるためのプログラムが提供される。
本発明によれば、新規なシミュレーション方法、及びそのシミュレーションを実行するプログラムを提供することができる。
また、本発明によれば、計算規模を小さくすることが可能なシミュレーション方法、及びそのシミュレーションを実行するプログラムを提供することができる。
(A)〜(D)は、実施例によるシミュレーション方法を説明する図である。 実施例によるシミュレーション方法を用いてシミュレーションを行うシミュレーション装置のシステム構成図である。 (A)〜(D)は、本願発明者らが行った温度解析シミュレーションについて説明する図である。 (A)〜(F)は、シミュレーション結果を示すグラフである。
以下、シミュレーション対象を粒子の集まりで表現し、ある時間刻み幅Δtで各粒子に関して数値計算を行い、時間軸上で離散的に分布する時刻ごとのシミュレーション対象の状態を解析する粒子法を用いたシミュレーション方法、及びそのシミュレーションをコンピュータで実行するプログラムの実施例について説明する。
図1(A)〜(D)を参照して、実施例によるシミュレーション方法を説明する。
図1(A)は、実施例によるシミュレーション方法を示すフローチャートである。実施例によるシミュレーション方法では、まずステップS101において、シミュレーション対象、たとえばある物体につき、第1の領域、第2の領域、及び両領域の境界領域を、それぞれ複数の粒子の集合で定義する。ここで第1の領域と第2の領域とは、同じ材料で構成される領域でもよいし、異なる材料で構成される領域であってもよい。
図1(B)を用いてステップS101を詳説する。第1の領域とは、たとえば本図に示す下側の領域であり、有限体積法(FVM)で温度場の計算を行う領域である。第2の領域とは、たとえば本図に示す上側の領域であり、分子動力学法(MD)を適用して、粒子の挙動を解析する領域である。そして境界領域とは、第1の領域と第2の領域の境界に存在する粒子から構成される領域である。
説明の便宜のため、第1の領域に属する粒子をFVM粒子、第2の領域に属する粒子をMD粒子、境界領域に属する粒子をP粒子と呼称する。FVM粒子は、たとえばFVM解析を行うメッシュの中心点に配置される粒子である。MD粒子については、MD解析が行われる。P粒子は、第1の領域と第2の領域の境界に存在し、FVM粒子からの影響と、MD粒子からの影響の双方を受け、2つの領域のエネルギ授受を媒介する粒子である。なお、P粒子は、たとえば第1の領域の表面の粒子(MD粒子と隣接するFVM粒子)と考えることも可能である。
次に、図1(A)のステップS102において、粒子の位置、速度、温度など、シミュレーションを行うに当たっての初期状態を決定する。
ステップS103においては、第2の領域の粒子から境界領域の粒子に与えられる熱的寄与、たとえば熱量を加味して、第1の領域及び境界領域で、FVMを用い温度場の解析を行う。第2の領域の粒子から境界領域の粒子に与えられる熱的寄与については、ステップS105を説明する際に触れる。第1の領域と境界領域の粒子には、温度のパラメータをもたせる。温度場解析には、たとえばボロノイ(voronoi)分割と熱伝導方程式を用いる。
図1(C)を参照して、ボロノイ分割について説明する。ボロノイ分割とは、粒子iと、その周囲に存在するすべての粒子とを線分で結び、その線分の垂直二等分面(2次元の場合は垂直二等分線)で領域を分ける分割方法をいう。ボロノイ分割によって形成された多面体をボロノイ多面体、多面体を構成する面をボロノイ面という。本明細書においては、粒子ij間の距離をrij、粒子iが含まれるボロノイ多面体をV、その体積をΔV、粒子iと粒子jを結ぶ線分の垂直二等分面の一部で構成されるボロノイ面(粒子iとjとの間にあるボロノイ面)をSij、その面積をΔSijと記述する。ボロノイ分割によって、ボロノイ多面体の寸法や相対位置関係、たとえばΔSij、ΔV、rijを得ることができる。
ボロノイ分割で得られるrij、ΔSij、ΔV、一つ前の時刻(時間刻み幅Δtだけ前の時刻)の温度場の情報、及び第2の領域の粒子から境界領域の粒子に与えられる熱的寄与を用いて、現在時刻の温度場解析を行う。解析においては、ボロノイ多面体の各々をFVMの1つのコントロールボリュームとする。
具体的には、たとえば下式(1)で示される熱伝導方程式を解く。
・・(1)

式(1)において、ρは第1の領域及び境界領域を構成する材料の密度、Cは比熱、Kは熱伝導率、Tは温度、tは時間を示す。

(Qト゛ット)は、単位時間当たりの発熱量を示し、実施例においては、第2の領域の粒子から与えられる単位時間当たりの熱量を表す。
式(1)の両辺を体積積分して、下式(2)を得る。
・・(2)

更に、式(2)の右辺第1項にガウスの定理を適用すると、下式(3)が得られる。
・・(3)

そして、式(3)を離散化すると、ある時刻nについて、
・・(4)

を導くことができる。ここで、T [n]は、時刻nにおける粒子iの温度(粒子iが属するボロノイ多面体の温度)、Δtは時間刻み幅(時刻n+1と時刻nとの間の時間間隔)、Kijは粒子iと粒子jとの間の熱伝導率を示す。式(4)により、rij、ΔSij、ΔV、Kij、時刻nにおける粒子の温度、及び時刻nにおいて第2の領域の粒子から与えられる単位時間当たりの熱量

(Qト゛ット)を用いて、時刻n+1における粒子の温度を求めることができる。
ステップS103においては、式(4)を用い、第1の領域及び境界領域の各粒子について、現在時刻の温度を算出する。なお、T [0]には、ステップS102で与えられた初期状態での粒子iの温度を用いる。
続いて、ステップS104において、境界領域の粒子(P粒子)の温度制御を行いながら、MDを用い、第2の領域及び境界領域で粒子の挙動を解析する。解析によって、一例として第2の領域の粒子の位置が求められる。解析に当たっては、たとえば粒子間ポテンシャルによって第2の領域及び境界領域の各粒子に働く力、及び温度制御によって境界領域の粒子(P粒子)に働く力を求める。
粒子間ポテンシャルには、たとえば下式(5)で示すMorseポテンシャルを用いる。
・・(5)

式(5)の両辺を微分することにより、粒子間ポテンシャルによって第2の領域及び境界領域の各粒子に働く力を求めることができる。なお、式(5)において、φ(r)はポテンシャル、rは粒子間距離、Dはポテンシャルの深さ、Aはポテンシャルの幅、rは安定距離(ポテンシャルの底となる原子間距離)を示す。
P粒子に対する温度制御は、たとえばLangevin法を用いて行うことが可能である。Langevin法はMDにおいてフォノンの伝播速度にしたがって熱の授受を行い、さらに温度Tの熱浴の中にある粒子の運動を模擬する方法である。温度制御する粒子、すなわちP粒子に対して設定温度T、すなわちステップS103で求めたP粒子の温度となるように、次式(6)で表される標準偏差
・・(6)

をもつランダム力と減衰力とを算出して与える。これが温度制御によってP粒子に働く力となる。式(6)において、αは減衰力の減衰係数、kはボルツマン定数、Δtは時間刻み幅である。さらに減衰係数αは、熱の授受がフォノンの伝播速度にしたがうようにするため、
・・(7)

とされる。ここでmは粒子の質量、ωはデバイ振動数である。
粒子間ポテンシャルによって第2の領域及び境界領域の各粒子に働く力、及び温度制御によってP粒子に働く力を求めた後、第2の領域及び境界領域の全ての粒子につき運動方程式を解き、各粒子の位置や速度を数値計算で求め、各粒子を移動させる。
また、このとき第2の領域の粒子の温度を速度の分散として求めてもよい。時刻nにおける粒子の速度は、たとえば時刻n+Δt/2における速度と、時刻n−Δt/2における速度との相加平均として導出する。
このように、ステップS104においては、境界領域の粒子の温度を加味して、第2の領域及び境界領域の粒子の挙動を計算し、必要に応じてたとえば粒子の移動を行う。
ステップS104で第2の領域及び境界領域の粒子の挙動を解析した後、ステップS105において、第2の領域の粒子から境界領域の粒子に与えられる熱的寄与、たとえば熱量を算出する。
図1(D)を参照し、ステップS105について説明する。図1(D)に示す簡易モデルにおいて、粒子aはMD粒子(第2の領域の粒子)、粒子bはP粒子(境界領域の粒子)、バルク部分kはFVM粒子(第1の領域の粒子)全体に相当する。本モデルにおいては、たとえばP粒子を、第1の領域の表面の粒子(MD粒子と隣接するFVM粒子)と考える。
粒子aに働く粒子a、b間の力をf、粒子aの速度をv、粒子bに働く粒子a、b間の力をf、粒子b及びバルク部分kの速度をVとすると、粒子aが粒子bにする仕事の仕事率Pは、
・・(8)

と書ける。ここで粒子bが粒子aにPの仕事率で仕事をされたとき、された仕事のうちの半分が熱となり、半分が内部エネルギの変化に使われるとする。その場合、粒子b内で発生する単位時間当たりの熱量は、
・・(9)

と表すことができる。粒子a、粒子bがそれぞれMD粒子、P粒子であることを明瞭にするため、添え字を書き換えると、
・・(10)

を得る。式(10)において、fはP粒子に働く、MD粒子とP粒子との間の力であり、vMDはMD粒子の速度、VはFVM粒子の速度である。そしてQは、MD粒子からP粒子に与えられる熱量、

(Qト゛ット)は単位時間当たりにMD粒子からP粒子に与えられる熱量を表す。
ステップS105においては、たとえば式(10)を用いて、第2の領域の粒子(MD粒子)から境界領域の粒子(P粒子)に与えられる、単位時間当たりの熱量を算出する。式(10)から明らかなように、これはたとえばMD粒子がP粒子に対してする仕事を加味して計算される。
ステップS106にてシミュレーションを終了するか否かを決定する。終了を選択した場合は、シミュレーションは完了する。終了しない場合は、時刻を一つ進めて、再びステップS103に戻り、ステップS103〜S106の工程を繰り返す。
一つ進んだ時刻のステップS103において、式(10)で算出された

(Qト゛ット)は、式(4)の

(Qト゛ット)に代入され、第1の領域及び境界領域の温度場の解析に使用される。
実施例によるシミュレーション方法は、FVMとMDとの連成解析において、FVM解析を行う第1の領域と、MD解析を行う第2の領域との2つの領域の熱エネルギの授受を、両領域の境界に存在する粒子を媒介として行う、新規なシミュレーション方法である。境界粒子を媒介とすることで、第1の領域と第2の領域との連結部における熱エネルギの授受を、自然に再現することができる。実施例によるシミュレーション方法によれば、たとえばFVMだけでは計算が困難な構造変化や相転移を伴う現象のシミュレーションを行うことが可能である。第2の領域の粒子については熱伝導に関し何の仮定も行っていないため、熱膨張、相変化等の影響を反映させることができる。
また、実施例によるシミュレーション方法は、計算規模を小さくすることが可能なシミュレーション方法である。MDだけでは多大な計算時間を要する現象のシミュレーションを、小さい計算規模で行うことができる。たとえば表面にシリコン薄膜が形成されたガラス基板をシミュレーション対象とする場合、ガラス基板の厚さは、シリコン薄膜の厚さに比べて厚く、MDで全体を計算するのは計算コストがかかる。しかし実施例によるシミュレーション方法を用いると、ガラス基板部分をFVMで解析し、シリコン薄膜部分をMDで計算することによって、ガラス基板及びシリコン薄膜(シミュレーション対象)全体の温度場と、シリコン薄膜内の構造変化を、小さい計算規模でシミュレーションすることが可能である。
実施例によるシミュレーションは、プログラムによりコンピュータで実行することができる。
図2は、実施例によるシミュレーション方法を用いてシミュレーションを行うシミュレーション装置のシステム構成図である。本図に構成を示したシミュレーション装置を使用して、図1(A)にフローチャートで示したシミュレーション方法を実施することができる。
まず、図1(A)のS101に対応して、第1の領域、第2の領域、及び両領域の境界領域を、それぞれ複数の粒子の集合で定義する。各領域の定義、画定は、キーボードなどの入力装置から入力することで行われる。次に、入力装置から、S102に対応して、粒子の位置、速度、温度などの初期状態が入力される。
なお、第1の領域及び境界領域粒子の温度を計算する式、第2の領域の粒子から境界領域の粒子に与えられる、単位時間当たりの熱量を算出する式、粒子間のポテンシャルを表現する関数等は、これらと同時に、またはこれらに先立って、入力装置から入力することができる。
中央処理装置は、メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け、メインメモリ中のFVM・MD連成解析プログラムを実行する。
FVM・MD連成解析プログラムは、たとえばFVMを用い、第1の領域及び境界領域の温度場解析を行う部分(S103の処理を行う部分)、MDを適用し、第2の領域及び境界領域で粒子の挙動を解析する部分(S104の処理を行う部分)、第2の領域の粒子から境界領域の粒子に与えられる、単位時間当たりの熱量を算出する部分(S105の処理を行う部分)に大別される。
図1(A)を参照して説明したように、第2の領域の粒子から境界領域の粒子に与えられる熱的寄与を加味して、第1の領域及び境界領域で、FVMを用い温度場の計算を行う。
次に、境界領域の粒子の温度制御を行いながら、MDを用い、第2の領域及び境界領域で粒子の挙動を解析する。解析に当たっては、たとえば粒子間ポテンシャルによって両領域の各粒子に働く力、及び温度制御によって境界領域の粒子に働く力を求める。
続いて、第2の領域の粒子から境界領域の粒子に与えられる単位時間当たりの熱量を算出する。算出された単位時間当たりの熱量は、次の時刻(時間刻み幅Δtだけ進んだ時刻)のFVMによる温度場解析に用いられる。
シミュレーションの結果は、出力装置、たとえばディスプレイに、時間刻み幅Δtごとに表示される。たとえば1次元的、2次元的、または3次元的に定められた座標系を用い、少なくとも第1の領域の粒子の温度、第2の領域の粒子の位置のうちのいずれか一方が表示される。境界領域や第2の領域の粒子の温度を表示することもできる。表示は、たとえばグラフ形式で行われてもよい。
本願発明者らは、実施例によるシミュレーション方法の妥当性を検証した。図3(A)〜(D)を参照し、本願発明者らが行った温度解析シミュレーションについて説明する。
図3(A)にシミュレーション対象となるアルミニウム板を示す。アルミニウム板は、16.179nmの厚さを有する、XY面内方向に無限に広い板である。このアルミニウム板の下面に、2.002×1011J/m/sの熱エネルギを均等に与える。熱エネルギの付与時間は10psである。その後のエネルギ収支はゼロとする。この条件におけるアルミニウム板の、厚さ方向(Z方向)の温度分布の時間変化を調べた。
図3(B)を参照する。温度解析に当たっては、図3(A)に示すアルミニウム板から、X方向、Y方向に沿う辺の長さがともに1.617nmとなる直方体を厚さ方向に取り出し、この直方体について計算を行った。直方体の高さは、アルミニウム板の厚さと等しく、16.179nmである。熱は、直方体の下面に5.235×10−7J/sで10ps間、付加されることになる。
図3(C)及び(D)を参照する。本願発明者らは、FVMとMDとを連成させた実施例によるシミュレーションと、FVMのみを用いた温度場解析の双方を行い、結果を比較した。
実施例によるシミュレーションにおいては、図3(C)に示すように、アルミニウム直方体を構成する粒子のうち、厚さ方向の中央に位置する粒子をP粒子、P粒子より下方(Z軸負方向)に位置する粒子をFVM粒子、P粒子より上方(Z軸正方向)に位置する粒子をMD粒子とした。MD粒子相互間、及びMD粒子とP粒子との間の粒子間ポテンシャルには、式(5)に示したMorseポテンシャルを用い、アルミニウムのポテンシャルパラメータとして、式(5)においてA=2.35×1010−1、D=1.92×10−20J、r=2.86×10−10mを使用した。
なお、図3(D)に示すように、アルミニウム直方体の温度場をFVMのみで解析する場合、連続体の近似を直接用いるためノイズが少なく、解析値はこの系においては真値と考えることができる。
図4(A)〜(F)は、シミュレーション結果を示すグラフである。グラフの横軸は、アルミニウム板(アルミニウム直方体)の厚さ方向の位置を、下面(Z=0)を基準として単位「nm」で示し、縦軸は、温度を単位「K」で示す。図4(A)〜(F)は順に、熱エネルギを付与して、1ps後、10ps後、20ps後、50ps後、75ps後、100ps後の温度分布を表す。各グラフにおいては、実施例によるシミュレーションによる解析結果を実線で、FVMによる解析結果を黒丸を連ねて表示した。
熱エネルギ付与中の温度分布を示す図4(A)、熱エネルギ付与終了直後の温度分布を示す図4(B)を参照する。実施例によるシミュレーション(実線)においても、FVMによる解析と同様に、系の温度の上昇を示す分布が得られている。
熱エネルギ付与の終了後の温度分布を示す図4(C)〜図4(F)を参照する。どちらの解析手法によっても、時間の経過とともに、系全体の温度が一定値に近づく様子がシミュレートされている。
実施例によるシミュレーション方法を用いた計算の結果は、この場合真値と考えられるFVMによる解析結果と傾向的に一致している。実施例によるシミュレーション方法の妥当性が確認されたといえるであろう。
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
温度解析、伝熱解析を伴うシミュレーションに利用可能である。FVMのみによっては解析が難しい系、一例として物体が流体中に存する系(固体と液体が共存する系)等における温度場解析に適用することができる。また、MD粒子を冷媒と考えることで、冷凍機の解析へ展開することも可能である。
S101〜S106 ステップ

Claims (14)

  1. シミュレーション対象を粒子の集まりで表現し、ある時間刻み幅で、粒子に関して数値計算を行い、時間軸上で離散的に分布する時刻ごとの該シミュレーション対象の状態を解析する粒子法におけるシミュレーション方法であって、
    (a)第1の領域、第2の領域、及び前記第1の領域と前記第2の領域との境界領域を、それぞれ複数の粒子の集合で定義する工程と、
    (b)前記第2の領域の粒子から前記境界領域の粒子に与えられる熱的寄与を加味して、前記第1の領域及び前記境界領域の粒子の温度を求める工程と、
    (c)前記工程(b)で求められた前記境界領域の粒子の温度を加味して、前記第2の領域の粒子の位置を求める工程と
    を有するシミュレーション方法。
  2. 更に、
    前記工程(c)の後に、
    (d)前記第2の領域の粒子から前記境界領域の粒子に与えられる熱的寄与を算出する工程
    を有し、
    前記工程(b)において、前記工程(d)で算出された熱的寄与を加味して、前記第1の領域及び前記境界領域の粒子の温度を求め、
    前記工程(b)乃至(d)を繰り返す請求項1に記載のシミュレーション方法。
  3. 前記工程(d)において、
    前記熱的寄与を、前記第2の領域の粒子が、前記境界領域の粒子に対してする仕事を加味して算出する請求項2に記載のシミュレーション方法。
  4. 前記工程(c)において、
    前記境界領域の粒子が前記工程(b)で求めた温度となるように、前記境界領域の粒子に働く力を算出し、該算出された力を加味して、前記第2の領域の粒子の位置を求める請求項1〜3のいずれか1項に記載のシミュレーション方法。
  5. 前記工程(c)において、
    更に、粒子間ポテンシャルによって前記第2の領域の粒子に働く力を加味して、前記第2の領域の粒子の位置を求める請求項4に記載のシミュレーション方法。
  6. 前記工程(b)において、
    有限体積法を用いて、前記第1の領域及び前記境界領域の粒子の温度を求める請求項1〜5のいずれか1項に記載のシミュレーション方法。
  7. 前記工程(c)において、更に、
    前記工程(b)で求められた前記境界領域の粒子の温度を加味して、前記第2の領域の粒子の速度を求め、前記第2の領域の粒子の温度を、該速度の分散として求める請求項1〜6のいずれか1項に記載のシミュレーション方法。
  8. シミュレーション対象を粒子の集まりで表現し、ある時間刻み幅で、粒子に関して数値計算を行い、時間軸上で離散的に分布する時刻ごとの該シミュレーション対象の状態を解析する粒子法におけるシミュレーションを行うためにコンピュータを、
    第1の領域、第2の領域、及び前記第1の領域と前記第2の領域との境界領域の粒子の初期状態を入力する入力手段、
    前記第2の領域の粒子から前記境界領域の粒子に与えられる熱的寄与を加味して、前記第1の領域及び前記境界領域の粒子の温度を求める手段、
    前記第1の領域及び前記境界領域の粒子の温度を求める手段で求められた前記境界領域の粒子の温度を加味して、前記第2の領域の粒子の位置を求める手段、
    少なくとも前記第1の領域の温度、前記第2の領域の粒子の位置のうちの一方を表示する表示手段
    として機能させるためのプログラム。
  9. 更に、
    前記第2の領域の粒子から前記境界領域の粒子に与えられる熱的寄与を算出する手段を備え、
    前記第1の領域及び前記境界領域の粒子の温度を求める手段は、前記熱的寄与を算出する手段によって算出された熱的寄与を加味して、前記第1の領域及び前記境界領域の粒子の温度を求める請求項8に記載のプログラム。
  10. 前記熱的寄与を算出する手段は、前記熱的寄与を、前記第2の領域の粒子が、前記境界領域の粒子に対してする仕事を加味して算出する請求項9に記載のプログラム。
  11. 前記第2の領域の粒子の位置を求める手段は、前記境界領域の粒子が、前記第1の領域及び前記境界領域の粒子の温度を求める手段によって求められた温度となるように、前記境界領域の粒子に働く力を算出し、該算出された力を加味して、前記第2の領域の粒子の位置を求める請求項8〜10のいずれか1項に記載のプログラム。
  12. 前記第2の領域の粒子の位置を求める手段は、更に、粒子間ポテンシャルによって前記第2の領域の粒子に働く力を加味して、前記第2の領域の粒子の位置を求める請求項11に記載のプログラム。
  13. 前記第1の領域及び前記境界領域の粒子の温度を求める手段は、有限体積法を用いて、前記第1の領域及び前記境界領域の粒子の温度を求める請求項8〜12のいずれか1項に記載のプログラム。
  14. 前記第2の領域の粒子の位置を求める手段は、更に、前記境界領域の粒子の温度を加味して、前記第2の領域の粒子の速度を求め、前記第2の領域の粒子の温度を、該速度の分散として求める請求項8〜13のいずれか1項に記載のプログラム。
JP2010036999A 2010-02-23 2010-02-23 シミュレーション方法及びプログラム Active JP5483342B2 (ja)

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