JP2011173287A - インクジェット記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂膜と原紙との密着性及び樹脂膜とインク受容層との密着性に優れ、インク受容層の面状故障の発生が抑制され、画像を記録したときの写像性及び画質に優れるインクジェット記録媒体を提供する。
【解決手段】表面のSRa値がカットオフ1〜2mm以下の条件下で0.4μm以上2.5μm以下である面を少なくとも片面に有する原紙、並びに、前記原紙の前記面の上に設けられるとともにJISK7210(1999)によるMFR2g/10min以上30g/10min以下のポリエチレン樹脂及び軟化点90℃以上のタッキファイヤーを含む膜厚が35μm未満の樹脂膜、を有する支持体と、前記支持体の前記樹脂膜の上に設けられるとともに無機微粒子及び水溶性多価金属化合物を含むインク受容層と、を有するインクジェット記録媒体。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録媒体に関する。
インクジェット記録方法は、多種多様な記録媒体に記録可能なこと、装置が比較的安価でコンパクトであること、静粛性に優れること等の利点から、オフィスユースはもちろん、ホームユースにおいても広く用いられている記録方法である。
この技術分野では、インクジェット記録装置(プリンタ)の高解像度化に伴い、プリンタの性能を十分に活かし、銀塩写真並みの高品質な記録や保存特性を可能にするためのインクジェット記録媒体の開発が進んでいる。インクジェット記録媒体に要求される特性として、インク吸収性、発色性、光沢性、表面平滑性、耐水性、耐湿性、プリンタ搬送性、等が挙げられる。
上記の特性の向上を目的として、インク受容層に多孔質構造を有するインクジェット記録媒体が開発されており、微細な無機微粒子及び親水性バインダーを含有し、高い空隙率を有する空隙層が支持体上に設けられたインクジェット記録媒体が開発されている。
また、銀塩写真印画紙用の支持体として普及していたポリオレフィン樹脂被覆紙と同様の支持体を用いたインクジェット記録媒体が開発され、フォトライクインクジェット記録媒体として普及している。
これに関連して、広葉樹パルプから抄紙された坪量70〜300g/m且つコッブサイズ20g/m/30秒以上の紙を、ポリオレフィン及び粘着付与剤を含む樹脂層で両面被覆した樹脂被覆紙に、無機微粒子とポリビニルアルコールを含むインク受容層を設けたインクジェット記録材料が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このインクジェット記録材料に用いられる樹脂被覆紙は、水中でパルプ繊維と樹脂膜が容易に分離できるとされている。
また、地合指数値が60以上で、SRa値がカットオフ0.05〜0.5mmの条件下で0.70μm以上且つカットオフ1〜3mmの条件下で0.80μm以下の基紙に、膜厚35〜60μmの熱可塑性樹脂層を設けた画像記録材料用支持体が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この画像記録材料用支持体は、高光沢で平滑さに優れ、写真風合いのある高画質画像を形成しうるとされている。
特許第4181031号公報 特開2006−240287号公報
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット記録材料、及び特許文献2に記載の画像記録材料用支持体を用いて構成したインクジェット記録材料は、低温低湿下での樹脂膜と原紙との密着性及び樹脂膜とインク受容層との密着性に改良の余地があり、また、インク受容層を高速塗布により形成した場合に、クレーター状の面状故障が起きることがあった。
また、一般に、インクジェット記録媒体の生産性の点では、原紙を被覆する樹脂膜の膜厚は薄いほうが望ましいが、樹脂膜が薄くなれば、樹脂膜と原紙との密着性及び樹脂膜とインク受容層との密着性は低下するという問題がある。
本発明は、上記従来技術の諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち本発明は、樹脂膜と原紙との密着性及び樹脂膜とインク受容層との密着性に優れ、インク受容層の面状故障の発生が抑制され、画像を記録したときの写像性及び画質に優れるインクジェット記録媒体を提供することを目的とする。
<1> 表面のSRa値がカットオフ1〜2mmの条件下で0.4μm以上2.5μm以下である面を少なくとも片面に有する原紙、並びに、前記原紙の前記面の上に設けられるとともにJISK7210(1999)によるMFR2g/10min以上30g/10min以下のポリエチレン樹脂及び軟化点90℃以上のタッキファイヤーを含む膜厚が35μm未満の樹脂膜、を有する支持体と、前記支持体の前記樹脂膜の上に設けられるとともに無機微粒子及び水溶性多価金属化合物を含むインク受容層と、を有するインクジェット記録媒体。
<2> 前記水溶性多価金属化合物が、水溶性アルミニウム化合物及び水溶性ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種である<1>に記載のインクジェット記録媒体。
<3> 前記タッキファイヤーの含有量が、前記ポリエチレン樹脂の質量に対して5質量%以上50質量%以下である<1>又は<2>に記載のインクジェット記録媒体。
<4> 前記タッキファイヤーが、テルペン系タッキファイヤー、ロジン系タッキファイヤー、及び石油樹脂系タッキファイヤーから選ばれる少なくとも1種である<1>から<3>のいずれか1つに記載のインクジェット記録媒体。
<5> 前記樹脂膜の膜厚が5μm以上30μm未満である<1>から<4>のいずれか1つに記載のインクジェット記録媒体。
<6> 前記樹脂膜が、更に二酸化チタン、ステアリン酸亜鉛及び群青を含むことを特徴とする<1>から<5>のいずれか1つに記載のインクジェット記録媒体。
<7> 前記インク受容層が、前記無機微粒子として平均一次粒子径30nm以下の気相法シリカを含み、更にポリビニルアルコール、架橋剤、及び有機媒染剤を含む<1>から<6>のいずれか1つに記載のインクジェット記録媒体。
本発明によれば、樹脂膜と原紙との密着性及び樹脂膜とインク受容層との密着性に優れ、インク受容層の面状故障の発生が抑制され、画像を記録したときの写像性及び画質に優れるインクジェット記録媒体を提供することができる。
<インクジェット記録媒体>
本発明のインクジェット記録媒体は、表面のSRa値がカットオフ1〜2mmの条件下で0.4μm以上2.5μm以下である面を少なくとも片面に有する原紙、並びに、前記原紙の前記面の上に設けられるとともにJISK7210(1999)によるメルトフローレート(MFR)2g/10min以上30g/10min以下のポリエチレン樹脂及び軟化点90℃以上のタッキファイヤーを含む膜厚が35μm未満の樹脂膜、を有する支持体と、前記支持体の前記樹脂膜の上に設けられるとともに無機微粒子及び水溶性多価金属化合物を含むインク受容層と、を有する。
かかる構成とすることにより、本発明のインクジェット記録媒体は、樹脂膜と原紙との密着性及び樹脂膜とインク受容層との密着性に優れ、インク受容層の面状故障の発生が抑制されており、画像を記録したときの写像性及び画質に優れる。
なお、本発明において、SRa値は、カットオフ1〜2mmの条件下で、ナノメトロ110F(黒田精工(株)製)を用いることにより測定される値である。ここで、カットオフ1〜2mmの条件下でとは、波長が1〜2mmの凹凸について測定することを意味する。
本発明のインクジェット記録媒体において、樹脂膜と原紙との密着性が優れるメカニズムについては、以下のように推定される。
本発明のインクジェット記録媒体を構成する支持体は、表面のSRa値がカットオフ1〜2mmの条件下で0.4μm以上2.5μm以下である面を少なくとも片面に有する原紙を有する。原紙の表面粗さSRa値を上記範囲とすることにより、例えば溶融押出機を用いて原紙上に樹脂膜を設ける場合に、溶融した樹脂に対して原紙のアンカー効果が生じ、樹脂膜と原紙との密着性が向上すると推定される。
また、本発明のインクジェット記録媒体を構成する支持体は、前記原紙の前記面の上に設けられるとともにJISK7210(1999)によるMFR2g/10min以上30g/10min以下のポリエチレン樹脂及び軟化点90℃以上のタッキファイヤーを含む膜厚が35μm未満の樹脂膜を有する。樹脂膜が上記範囲のMFRのポリエチレン樹脂を含むことにより、樹脂膜を形成するときの樹脂の流動性が良好となり、原紙と樹脂膜との間のアンカー効果が向上すると推定される。加えて、樹脂膜が軟化点90℃以上のタッキファイヤーを含むことにより、樹脂膜を形成するときの樹脂の流動性が良好となり、原紙と樹脂膜との間のアンカー効果が向上するとともに、樹脂膜に原紙への密着に適した粘着性が付与されると推定される。
即ち、本発明のインクジェット記録媒体は、原紙の表面粗さSRa値が特定の範囲にあること、樹脂膜が前記ポリエチレン樹脂を含むこと、及び樹脂膜が前記タッキファイヤーを含むことの相乗効果により、樹脂膜と原紙との密着性に優れ、特に低温低湿条件下での樹脂膜と原紙との密着性に優れると推定される。
本発明のインクジェット記録媒体において、インク受容層の面状故障の発生が抑制されるメカニズムについては、以下のように推定される。
インク受容層表面の面状故障は、インク受容層形成用塗布液の塗布速度が例えば50m/min.以上になった場合、支持体とインク受容層形成用塗布液との間に同伴エアーを巻き込み、乾燥後その気泡部がつぶれてクレーター状の細孔が発生することによるものと推定される。
従って、面状故障を改善するためには支持体表面の濡れ性をよくするか、支持体とインク受容層形成用塗布液との相互作用を強くすることが有効であると考えられる。
そこで従来、ポリエチレン樹脂で被覆された支持体の表面をコロナ放電処理し、樹脂膜表面にカルボキシル基やカルボニル基等の官能基を発生させ、インク受容層形成用塗布液との濡れ性をよくする手段が採用されている。
本発明のインクジェット記録媒体を構成する支持体は、樹脂膜が軟化点90℃以上のタッキファイヤーを含むことにより、樹脂膜表面に粘着性と極性を付与するとともに、例えばコロナ放電処理を行ったときに樹脂膜表面に発生する官能基の量が増え、インク受容層形成用塗布液との濡れ性が改善されるものと推定される。
また、本発明のインクジェット記録媒体を構成するインク受容層は水溶性多価金属化合物を含む。即ち、インク受容層形成用塗布液に水溶性多価金属塩を添加することにより、支持体の樹脂膜表面に発生した官能基との相互作用が強くなり、支持体とインク受容層形成用塗布液との間に同伴エアーの巻き込みが抑制され、面状故障の発生が抑制されると推定される。
更に、原紙の表面粗さSRa値を2.5μm以下とすることにより、支持体の樹脂膜表面が原紙の表面粗さの影響を受けにくく、面状故障の発生が抑制されるのと推定される。
同時に、上記の面状故障の発生抑制のメカニズムと同様のメカニズムにより、本発明のインクジェット記録媒体は、樹脂膜とインク受容層との密着性に優れるものと推定される。
本発明のインクジェット記録媒体は、樹脂膜と原紙との密着性及び樹脂膜とインク受容層との密着性に優れることから、裁断加工時の粉落ちの発生が抑制され加工性に優れる。また、エンドユーザー取り扱い時のドッグイヤー耐性が向上する。特に低温低湿条件下での、裁断加工時の粉落ちの発生抑制、及びドッグイヤー耐性に優れる。
更に、本発明のインクジェット記録媒体は、前述の構成とすることにより、写像性に優れる。また、本発明のインクジェット記録媒体は、平面性、光沢性、及び滲み抑制に優れ、記録された画像の画質が良好である。
本発明のインクジェット記録媒体は、表面のSRa値がカットオフ1〜2mmの条件下で0.4μm以上2.5μm以下である面を少なくとも片面に有する原紙の前記面上に、JISK7210(1999)によるMFR2g/10min以上30g/10min以下のポリエチレン樹脂及び軟化点90℃以上のタッキファイヤーを含む膜厚35μm未満の樹脂膜を備え、更に、前記樹脂膜上に無機微粒子及び水溶性多価金属化合物を含むインク受容層を少なくとも1層備える。
本発明のインクジェット記録媒体は、カール等の変形を防止する目的や両面鑑賞用の目的で、前記支持体の両面に前記インク受容層を有してもよい。
本発明のインクジェット記録媒体が前記支持体の両面に前記インク受容層を有する場合、前記支持体は、両面において表面のSRa値が前記範囲である原紙と、前記原紙の両面に備えられた前記樹脂膜とを有することが好ましい。
以下、本発明のインクジェット記録媒体を構成する支持体並びにインク受容層について、詳しく説明する。
[支持体]
本発明における支持体は、表面のSRa値がカットオフ1〜2mmの条件下で0.4μm以上2.5μm以下である面を少なくとも片面に有する原紙と、前記原紙の前記面の上に設けられるとともにJISK7210(1999)によるMFR2g/10min以上30g/10min以下のポリエチレン樹脂及び軟化点90℃以上のタッキファイヤーを含む膜厚が35μm未満の樹脂膜と、を有する。
前記原紙が片面において表面のSRa値が上記範囲である場合は、その片面上に前記樹脂膜が設けられる。
前記原紙が両面において表面のSRa値が上記範囲である場合は、どちらの面上に前記樹脂膜を設けてもよい。当該原紙を用いて構成された本発明のインクジェット記録媒体が、両面鑑賞用などの目的で支持体の両面にインク受容層を有する場合は、当該原紙の両面に前記樹脂膜を設けることが好ましい。
本発明における支持体は、耐水性、表面光沢性などの観点から、前記原紙の両面が樹脂の膜で被覆されていることが好ましい。この場合、本発明における支持体は、前記原紙の少なくとも片面が前記樹脂膜で被覆され、前記原紙のもう一方の面は、前記樹脂膜と同様の樹脂の膜で被覆されていてもよく、公知の如何なる樹脂の膜で被覆されていてもよい。
(原紙)
前記原紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、あるいはナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙されたものが好適である。上記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及び/又はLDPの比率としては、10質量%以上70質量%以下が好ましい。
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長としては、JIS P8207(2009)に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
前記原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等の内添サイズ剤、無機顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
前記原紙は、原紙上に設けられる層との密着性、原紙ブロッキング防止、白色度、及び写像性の観点から、ポリビニルアルコールおよび蛍光増白剤のそれぞれ1種を少なくとも含み、これらの固形分含有量が片面で0.05〜5g/mであることが好ましく、0.1〜5.0g/mがより好ましく、0.5〜4.0g/mが特に好ましい。
前記無機顔料としては、通常用いられる無機顔料を特に制限なく用いることができる。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料が挙げられる。
また前記蛍光増白剤としては、通常用いられる蛍光増白剤を特に制限なく用いることができる。例えば、K.Veen−Rataramann編「合成色素の化学」(the Chemistry of Synthetic Dyes)V巻第8章に記載されている化合物を用いることができる。より具体的にはスチルベン系化合物、クマリン系化合物、ビフェニル系化合物、ベンゾオキサゾリル系化合物、ナフタルイミド系化合物、ピラゾリン系化合物、カルボスチリル系化合物などが挙げられる。
前記原紙のJIS P8140(1998)によるコッブ吸水度としては、コックリング抑制の観点から、15〜40g/mであることが好ましい。
前記コッブ吸水度は、JIS P8140(1998)に準拠した吸水度試験により測定されるものであり、原紙の片面の表面から一定時間水が接触した場合に吸収される水の量を測定したものである。本発明においては、接触時間は120秒間である。
前記原紙の坪量としては、30〜250g/mが好ましく、特に50〜200g/mが好ましい。前記原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。前記原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。前記原紙の密度としては、0.7〜1.1g/cm(JIS P8118(1998))が好ましい。前記原紙の剛度としては、JIS P8143(2009)に規定される条件で20〜200gが好ましい。
前記原紙の表面には表面サイズ剤が塗布されていてもよく、表面サイズ剤としては、前記原紙中に添加できるサイズ剤と同様のサイズ剤を使用できる。
前記原紙のpHは、JIS P−8113(2006)で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
前記原紙の表面粗さSRa値は、少なくとも片面において、カットオフ1〜2mmの条件下で0.4μm以上2.5μm以下である。前記樹脂膜を設ける面の表面のSRa値が0.4μm未満であるとアンカー効果が不充分となり、前記樹脂膜と原紙との充分な密着が得られない。一方、表面のSRa値が2.5μmを超えるとインクジェット記録媒体とした時の面状故障の発生が充分に抑制できないとともに写像性が劣る。
前記原紙の表面のSRa値は、前記樹脂膜と原紙との密着性向上と、インクジェット記録媒体とした時の面状故障の発生抑制、及び写像性の観点から、カットオフ1〜2mmの条件下で0.45〜2.0μmであることが好ましく、0.50〜1.5μmがより好ましく、0.60〜1.2μmが特に好ましい。
前記原紙の表面のSRa値は、パルプの選択や紙料の叩解によって調整することができ、また、表面サイズ剤の塗布によって調整することができ、更に、前記表面サイズ剤の塗布後のカレンダー処理によっても容易に調整することができる。
前記原紙の片面又は両面には、その上に設けられる前記樹脂膜やその他の層との密着性を改良する目的で、種々の表面処理や下塗り処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、光沢面、特開昭55−26507号公報記載の微細面、マット面、又は絹目面の型付け処理、コロナ放電処理、火炎処理、グロー放電処理、プラズマ処理等の活性化処理、等が挙げられる。下塗り処理としては、例えば、特開昭61−846443号公報に記載の方法が挙げられる。
これらの処理は、単独で施してもよいし、また、前記型付け処理等を行った後に前記活性化処理を施してもよいし、更に前記活性化処理等の表面処理後に前記下塗り処理を施してもよく、任意に組み合せることができる。
本発明において、前記原紙上に例えば溶融押出機により前記樹脂膜を形成するとき、前記原紙と前記樹脂膜との接着をさらに強固にするために、前記原紙の表面に、コロナ放電処理量が10〜60Wmin/mであるコロナ放電処理を施すことが好ましく、更に、溶融押出機から押し出されたときの樹脂膜の表面温度が270〜350℃であることが原紙と樹脂膜との密着性向上の点から好ましい。より好ましくは、コロナ放電処理量が10〜60Wmin/mで、かつ、樹脂膜の表面温度が270〜350℃であり、更に好ましくは、コロナ放電処理量が20〜55Wmin/mで、かつ、樹脂膜の表面温度が280〜340℃である。
(樹脂膜)
本発明における樹脂膜は、JISK7210(1999)によるメルトフローレート(MFR)が2g/10min〜30g/10minであるポリエチレン樹脂の少なくとも1種と、軟化点が90℃以上であるタッキファイヤーの少なくとも1種とを含み、膜厚が35μm未満であり、前記原紙の、表面のSRa値がカットオフ1〜2mmの条件下で0.4μm以上2.5μm以下である面の上に設けられる。
上記MFRが2g/10min未満のポリエチレン樹脂では、前記原紙へのアンカー効果が不足して、樹脂膜と前記原紙との充分な密着を得ることができない。一方、MFRが30g/10minを超えるポリエチレン樹脂では、溶融押し出しで樹脂膜を形成した場合の樹脂膜の安定性に欠ける。
また、タッキファイヤーの軟化点が90℃未満では、溶融押し出しで樹脂膜を形成した場合の樹脂膜の安定性に欠け、樹脂膜と前記原紙及び樹脂膜と前記インク受容層との充分な密着を得ることができない。
上記MFRが2g/10min〜30g/10minであるポリエチレン樹脂の中でも前記樹脂膜の原紙及びインク受容層への密着性、並びに溶融押し出しで前記樹脂膜を形成した場合の樹脂膜の安定性向上の観点から、特定の密度を有する高密度ポリエチレン及び/又は特定の密度を有する低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
低密度ポリエチレンとしては、密度が0.930g/cm以下で、MFRが2〜30g/10minであり、好ましくはMFRが3〜28g/10minであり、より好ましくはMFRが5〜25g/10minである。
高密度ポリエチレンとしては、密度が0.945g/cm以上で、MFRが2〜30g/10minであり、好ましくはMFRが3〜28g/10minであり、より好ましくはMFRが5〜25g/10minである。
タッキファイヤーは、粘着付与剤とも称される、分子量数百〜数千の無定形オリゴマーである。タッキファイヤーは、各種ポリマーに添加することにより、流動性及びタックを付与し、接着力を向上せしめるものである。
タッキファイヤーはその出発原料の違いから、(i)炭化水素系樹脂;石油を原料とした脂肪族、脂環族、及び芳香族系の炭化水素、(ii)ロジン系樹脂;松ヤニや松根油中のアビエチン酸を主成分としたロジン酸やロジン酸のエステル化物、及びそれらの水添物、不均化物、(iii)テルペン樹脂;松に含まれるテレピン油やオレンジの皮等に含まれるテルペンを重合したもの、等がある。
本発明におけるタッキファイヤーの種類に特に制限はなく、軟化点が90℃以上であればよい。
タッキファイヤーの軟化点は、前記樹脂膜の原紙及びインク受容層との密着性をより向上させる観点から、90℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上が更に好ましい。
タッキファイヤーの具体例としては、テルペン系タッキファイヤーとしては、テルペン樹脂(α−ピネン、β−ピネン)、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素化テルペン樹脂等が挙げられる。
ロジン系タッキファイヤーとしては、ロジン、水素化ロジン(水添ロジン)、ロジン誘導体、水素化ロジン誘導体、不均化ロジン誘導体、重合ロジン誘導体、エステル化ロジン誘導体等が挙げられる。
石油樹脂系タッキファイヤーとしては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、水素化石油樹脂、脂環族系石油樹脂等が挙げられる。
その他、合成樹脂系タッキファイヤーとしては、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂、MQ樹脂、tert-ブチルフェノール樹脂等が挙げられる。
本発明においてタッキファイヤーは1種単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。タッキファイヤーは、前記樹脂膜の原紙及びインク受容層との密着性をより向上させる観点から、テルペン系タッキファイヤー、ロジン系タッキファイヤー、及び石油樹脂系タッキファイヤーから選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
上記具体例の中でも、テルペン系タッキファイヤーとしては、芳香族変性テルペン樹脂、水素化テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂が好適であり、ロジン系タッキファイヤーとしては、水素化ロジンエステル、無色又は淡色ロジン、無色又は淡色ロジンエステル、ペンタエリスリトールエステル変性ロジンが好適であり、石油樹脂系タッキファイヤーとしては、水素化石油樹脂が好適である。
タッキファイヤーの含有量としては、特に制限はないが、前記樹脂膜の原紙及びインク受容層との密着性をより向上させる観点から、前記ポリエチレン樹脂の質量に対して、5質量%〜50質量%が好ましく、10質量%〜40質量%がより好ましく、10質量%〜30質量%が更に好ましい。
本発明における樹脂膜の膜厚は、35μm未満である。前記樹脂膜の原紙及びインク受容層との密着性、低温低湿条件下でのドッグイヤー耐性の良化、溶融押し出しで前記樹脂膜を形成した場合の樹脂膜の安定性、並びに生産性の観点から、前記樹脂膜の膜厚は、5μm以上30μm未満が好ましく、5μm以上25μm以下がより好ましく、8μm以上20μm以下がさらに好ましく、10μm以上18μm以下が特に好ましい。
本発明における樹脂膜は、前記ポリエチレン樹脂及び前記タッキファイヤー以外に本発明の効果を損なわない範囲でその他の公知の樹脂を添加してもよい。
本発明における樹脂膜は、溶融押出機を用いて従来公知の方法により、前記原紙上に前記ポリエチレン樹脂及び前記タッキファイヤーを含む樹脂組成物を付与することにより形成することができる。溶融押出機から押し出されたときの樹脂膜の表面温度は、270〜350℃であることが原紙と樹脂膜との密着性向上の点から好ましい。前記表面温度は、より好ましくは280〜340℃である。
本発明において、前記樹脂組成物はポリエチレン成分として少なくとも低密度ポリエチレンを含むことが好ましく、必要に応じて、高密度ポリエチレンなどの他の樹脂成分や、二酸化チタン、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の白色顔料、群青等の青色顔料、蛍光白色剤等の他の成分を用いて構成することができる。中でも、前記樹脂組成物は、二酸化チタンとステアリン酸亜鉛と群青とから選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、二酸化チタンとステアリン酸亜鉛と群青とを含むことがより好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して概ね3〜40質量%が好ましく、4〜30質量%がより好ましい。
本発明における支持体の密度としては、特に制限はないが、写像性、取り扱い性の観点から、0.7〜1.15g/cmであることが好ましく、0.75〜1.15g/cmであることがより好ましく、0.8〜1.15g/cmであることが更に好ましい。
本発明における支持体にはバックコート層を設けることもでき、このバックコート層に添加可能な成分としては、白色顔料や水性バインダー、その他の成分が挙げられる。
バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
バックコート層に用いられる水性バインダーとしては、例えば、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン、ポリウレタンエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。
バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
[インク受容層]
本発明におけるインク受容層は、無機微粒子の少なくとも1種及び水溶性多価金属化合物の少なくとも1種を含み、前記支持体の前記樹脂膜上に少なくとも1層設けられる。本発明におけるインク受容層は、更に、水溶性樹脂(好ましくは、ポリビニルアルコール)、架橋剤、有機媒染剤(好ましくは、含窒素有機カチオンポリマー)等を含んで構成することができる。
本発明におけるインク受容層は1層のみで構成されていても、2層以上から構成されていてもよい。
(無機微粒子)
本発明におけるインク受容層は、無機微粒子を少なくとも1種含有する。無機微粒子は、インク受容層を形成した際に多孔質構造を形成し、インクの吸収性能を向上させる役割を持つ。
特に、無機微粒子のインク受容層における固形分含有量が50質量%以上、より好ましくは60質量%を超えていると、更に良好な多孔質構造を形成することが可能となり、十分なインク吸収性を備えたインクジェット記録媒体が得られるので好ましい。ここで、微粒子のインク受容層における固形分含有量とは、インク受容層を構成する組成物中の水以外の成分に基づき算出される含有量である。
本発明における無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が挙げられる。これらの中でも良好な多孔質構造を形成する観点より、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子又は擬ベーマイトが好ましい。微粒子は1次粒子のまま用いても、又は2次粒子を形成した状態で使用してもよい。これら微粒子の平均一次粒径は2μm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
更に、平均一次粒径が30nm以下のシリカ微粒子、平均一次粒径が30nm以下のコロイダルシリカ、平均一次粒径が20nm以下のアルミナ微粒子、又は平均細孔半径が2〜15nmの擬ベーマイトがより好ましく、特にシリカ微粒子、アルミナ微粒子、擬ベーマイトが好ましい。
シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。上記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、「気相法シリカ」とは該気相法によって合成されたシリカ(無水シリカ微粒子)を意味する。本発明に用いるシリカ微粒子としては、特に気相法シリカ微粒子が好ましい。
上記気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nmで多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nmであり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
上記気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散をおこなえば受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用媒体に適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
上記気相法シリカの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、10nm以下が更に好ましく、3〜10nmが特に好ましい。上記気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
また、シリカ微粒子は、前述の他の微粒子と併用してもよい。該他の微粒子と上記気相法シリカとを併用する場合、全微粒子中の気相法シリカの含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
本発明における無機微粒子としては、アルミナ微粒子、アルミナ水和物、これらの混合物又は複合物も好ましい。この内、アルミナ水和物は、インクを良く吸収し定着することなどから好ましく、特に、擬ベーマイト(Al・nHO)が好ましい。アルミナ水和物は、種々の形態のものを用いることができるが、容易に平滑な層が得られることからゾル状のベーマイトを原料として用いることが好ましい。
擬ベーマイトの細孔構造については、その平均細孔半径は1〜30nmが好ましく、2〜15nmがより好ましい。また、その細孔容積は0.3〜2.0ml/gが好ましく、0.5〜1.5ml/gがより好ましい。ここで、上記細孔半径及び細孔容積の測定は、窒素吸脱着法により測定されるもので、例えば、ガス吸脱着アナライザー(例えば、コールター社製の商品名「オムニソープ369」)により測定できる。
また、アルミナ微粒子の中では気相法アルミナ微粒子が、その比表面積が大きく好ましい。該気相法アルミナの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましい。
上述の微粒子をインクジェット記録媒体に用いる場合は、例えば、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号等の各公報に開示された態様でも、好ましく用いることができる。
(水溶性多価金属化合物)
本発明のインクジェット記録媒体を構成するインク受容層は、水溶性多価金属化合物の少なくとも1種を含むことにより、前記樹脂膜との密着性に優れ、面状故障の発生が抑制される。
また、水溶性多価金属化合物は、例えば媒染剤として機能することで、インクジェット記録媒体の耐オゾン性等が良好になる。
本発明において、水溶性多価金属化合物における水溶性とは、20℃の水に1質量%以上溶解することを意味する。
本発明に用いられる水溶性多価金属化合物としては、3価以上の金属化合物が好ましい。例えば、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。
具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酪酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウム、ナフトレゾルシンカルボン酸バリウム、酪酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、酪酸銅(II)、シュウ酸銅、フタル酸銅、クエン酸銅、グルコン酸銅、ナフテン銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、スルファミン酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケル、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性チオグリコール酸アルミニウム、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、クエン酸鉄(III)、乳酸鉄(III)三水和物、三シュウ酸三アンモニウム鉄(III)三水和物、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、四塩化ジルコニウム、塩化ジルコニル、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニル、酢酸クロム、硫酸クロム、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等、アルミニウムミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、フェノールスルホン酸亜鉛、酢酸亜鉛アンモニウム、亜鉛アンモニウムカーボネート、が挙げられる。
これらの水溶性多価金属化合物は2種以上を併用してもよい。
上記の水溶性多価金属化合物の中でも、水溶性アルミニウム化合物または周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましく、水溶性アルミニウム化合物がより好ましい。
水溶性アルミニウム化合物としては、例えば無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物(以下、「塩基性ポリ塩化アルミニウム」「ポリ塩化アルミニウム」ともいう)が知られており、好ましく用いられる。
上記塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の一般式1、2又は3で示され、例えば[Al(OH)153+、[Al(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
[Al(OH)Cl6−n ・・式1
[Al(OH)AlCl ・・式2
Al(OH)Cl(3n−m) 0<m<3n ・・式3
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりHAP−25の名で、大明化学(株)よりアルファイン83の名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。
前記周期表4A族元素を含む水溶性化合物としては、ジルコニウムまたはチタンを含む水溶性化合物が好ましく、ジルコニウムを含む水溶性化合物(水溶性ジルコニウム化合物)がより好ましい。
チタンを含む水溶性化合物としては、塩化チタン、硫酸チタン、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン等が挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性化合物としては、酢酸ジルコニル、塩化ジルコニル、ヒドロキシ塩化ジルコニル、硝酸ジルコニル、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、炭酸ジルコニルカリウム、硫酸ジルコニル、フッ化ジルコニル等が挙げられる。
上記した水溶性多価金属化合物は、形成される画像の質の観点から、前記無機微粒子に対して0.1〜10質量%の割合で添加するのが好ましく、0.5〜8質量%がより好ましい。
(水溶性樹脂)
本発明におけるインク受容層は、水溶性樹脂を少なくとも1種含有することが好ましい。
上記水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
上記の中でも、本発明に用いる水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂が好ましい。
該ポリビニルアルコールの例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2537827号、特公平7−57553号、特許第2502998号、特許第3053231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号、特開昭58−181687号、特開平10−259213号、特開2001−72711号、特開2002−103805号、特開2000−63427号、特開2002−308928号、特開2001−205919号、特開2002−264489号等の各公報に記載されたものなどが挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の水溶性樹脂の例としては、特開平11-165461号公報の[0011]〜[0012]に記載の化合物、特開2001−205919号公報、特開2002−264489号公報に記載の化合物なども挙げられる。
これら水溶性樹脂はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。本発明において水溶性樹脂の含有量としては、インク受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
本発明におけるインク受容層を主として構成する、上記水溶性樹脂と上記無機微粒子とは、それぞれ単一素材であってもよいし、複数の素材の混合系を使用してもよい。
尚、透明性を保持する観点からは、無機微粒子特にシリカ微粒子に組み合わされる水溶性樹脂の種類が重要となる。前記気相法シリカを用いる場合には、該水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、その中でも、鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と前記シリカ微粒子の表面シラノール基とが水素結合を形成するため、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く十分な強度のある多孔質構造のインク受容層を形成されると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得られた多孔質のインク受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、前記その他の水溶性樹脂を併用してもよい。該他の水溶性樹脂と上記ポリビニルアルコール系樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
〜無機微粒子と水溶性樹脂との含有比〜
無機微粒子(x)と水溶性樹脂(y)との質量含有比〔PB比(x:y)〕を最適化することで、インク受容層の膜構造及び膜強度を、さらに向上させることが可能である。
インク受容層中における上記質量含有比〔PB比(x:y)〕としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、且つ該PB比が小さ過ぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5:1〜10:1が好ましい。
特に、インク受容層が2層からなる場合、インク受容層の上側半分のx/y比が、下側半分のx/y比以上(上側半分と下側半分でPB比が等しいか、または下側半分の方がバインダーリッチ)であることが好ましく、上側半分と下側半分のPB比が等しいことが特に好ましい。
インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、記録用媒体に応力が加わることがあるので、インク受容層は十分な膜強度を有していることが必要である。またシート状に裁断加工する場合、インク受容層の割れや剥がれ等を防止する上でも、インク受容層には十分な膜強度を有していることが必要である。これらの場合を考慮すると、前記質量比(x:y)としては5:1以下がより好ましく、一方インクジェットプリンターで、高速インク吸収性を確保する観点からは、2:1以上であることがより好ましい。
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカ微粒子と水溶性樹脂とを、質量比(x:y)2:1〜5:1で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成され、その平均細孔径が30nm以下、空隙率が50〜80%、細孔比容積が0.5ml/g以上、比表面積が100m/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
(含窒素有機カチオンポリマー)
本発明におけるインク受容層は、記録された画像のにじみを抑制する観点、シリカを分散する観点から、含窒素有機カチオンポリマーの少なくとも1種を含有することが好ましい。
本発明における含窒素有機カチオンポリマーとしては、特に限定はないが、1級〜3級アミノ基、又は4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好適である。
前記含窒素有機カチオンポリマーとしては、1級〜3級アミノ基およびその塩、又は4級アンモニウム塩基を有する単量体(含窒素有機カチオンモノマー)の単独重合体である含窒素有機カチオンポリマー、前記含窒素有機カチオンモノマーと他の単量体との共重合体又は縮重合体として得られる含窒素有機カチオンポリマー、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体;アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体、アクリル酸およびメタクリル酸の重合体または共重合体等のアクリル系重合体;スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系重合体;エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体;ウレタン結合を有するウレタン系ポリマー等に、カチオン基を含む化合物を用いてカチオン化修飾して得られる含窒素有機カチオンポリマー等を挙げることができる。
本発明における含窒素有機カチオンモノマーの具体例としては、例えば特開2010−006044号公報の段落番号[0025]〜[0033]に記載のものを挙げることができる。
本発明においては含窒素有機カチオンポリマーの中でも、にじみ抑制の観点からは、カチオン変性ポリウレタン、及び特開2004−167784号公報等に記載のカチオン変性ポリアクリレート等が好ましく、カチオン変性ポリウレタンがより好ましい。
カチオン変性ポリウレタンの市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス650」「F−8564D」「F−8570D」、日華化学(株)製、「ネオフィックスIJ−150」などを挙げることができる。
また、無機微粒子分散の観点からは、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド誘導体が好ましく、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドがより好ましい。
市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製の「シャロールDC902P」を挙げることができる。
また、これらの含窒素有機カチオンポリマーは、水溶性ポリマー、水分散性ラテックス粒子、水性エマルションのいずれの形態でも使用できる。
前記水性エマルションとしては、共役ジエン系共重合体エマルション;アクリル系重合体エマルション;スチレン−アクリル系重合体エマルション;ビニル系重合体エマルション;ウレタン系エマルション等にカチオン基を有する化合物を用いてカチオン化したもの、カチオン性界面活性剤にてエマルション表面をカチオン化したもの、カチオン性ポリビニルアルコール下で重合しエマルション表面に該ポリビニルアルコールを分布させたもの等が挙げられる。これらのカチオン性エマルションの中でも主成分がウレタン系エマルションであるカチオン変性ポリウレタンエマルションが好ましい。
本発明において、含窒素有機カチオンポリマーは、にじみ抑制の観点から、カチオン変性ポリウレタンが好ましく、カチオン変性ポリウレタンエマルションがより好ましい。
本発明において、インク受容層に含まれる含窒素有機カチオンポリマーの含有量としては、形成される画質の観点から、例えば、前記無機微粒子に対して0.1〜10質量%とすることができ、0.5〜8質量%であることが好ましい。
(硫黄系化合物)
本発明におけるインク受容層は、耐オゾン性をより向上させる観点から、硫黄系化合物を少なくとも1種含有することが好ましい。
硫黄系化合物としては、チオエーテル系化合物、チオウレア系化合物、ジスルフィド系化合物、スルフィン酸系化合物、チオシアン酸系化合物、硫黄含有複素環式化合物、及びスルホキシド系化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、チオエーテル系化合物及びスルホキシド系化合物の少なくとも1種であることがより好ましく、スルホキシド系化合物の少なくとも1種であることがさらに好ましい。
硫黄系化合物の具体例としては、例えば、特開2008−246988号公報の段落番号0053〜0118に記載の化合物を挙げることができる。
(コロイダルシリカ)
本発明においては、インク受容層の光沢度向上の観点等から、支持体から最も離れた最上層がコロイダルシリカを含有する形態が好ましい。以下、コロイダルシリカを含有する最上層を「コロイダルシリカ層」ともいう。
本発明におけるインク受容層が最上層としてコロイダルシリカ層を有する場合、用いるコロイダルシリカの平均一次粒径としては、10nm〜200nmが好ましく、50nm〜150nmがより好ましい。
また、本発明におけるコロイダルシリカは、アニオン性、ノニオン性が好ましい。特にアニオン性が好ましい。含有量としては、0.01g/m〜5g/mが好ましい。特に0.05g/m〜2g/mが好ましい。
(架橋剤)
本発明におけるインク受容層は、前記水溶性樹脂を架橋する観点から、架橋剤を少なくとも1種含有することが好ましい。
本発明におけるインク受容層は、特に前記無機微粒子と前記水溶性樹脂とを併用し、さらに該架橋剤と水溶性樹脂との架橋反応によって硬化された多孔質層である態様が好ましい。
上記の水溶性樹脂、特にポリビニルアルコールの架橋には、ホウ素化合物が好ましい。 該ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO、ScBO、YBO、LaBO、Mg(BO)、Co(BO)、二硼酸塩(例えば、Mg、Co)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO、Ca(BO)、NaBO、KBO)、四硼酸塩(例えば、Na・10HO)、五硼酸塩(例えば、KB・4HO、Ca11・7HO、CsB)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
上記水溶性樹脂の架橋剤として、ホウ素化合物以外の下記化合物を使用することもできる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N'−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N'−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等を用いることができる。
上記の架橋剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。
架橋剤の使用量は、水溶性樹脂に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
(その他の成分)
本発明におけるインク受容層は、水溶性多価金属化合物、含窒素有機カチオンポリマー、及び硫黄化合物以外の他の媒染剤や、各種界面活性剤等、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、特開2005−14593号公報中の段落番号0088〜0117に記載されている成分や、特開2006−321176号公報中の段落番号0138〜0155に記載されている成分等を、適宜選択して用いることができる。
本発明においてインク受容層の固形分塗布量には、特に制限はないが、画質と生産性の観点から、例えば、30g/m以下とすることができ、20g/m以下であることが好ましく、3〜15g/mであることがより好ましい。尚、本発明においてインク受容層の固形分塗布量は、インク受容層が2以上の層から構成される場合、全インク受容層の固形分塗布量の合計を意味する。
本発明におけるインク受容層が2層以上から構成される場合、無機微粒子と含窒素有機カチオンポリマーとを含む第1の塗布液によって形成される層と、無機微粒子と水溶性アルミニウム化合物とを含む第2の塗布液によって形成される層とが、前記支持体側から順に積層されて構成されることが好ましい。
前記第1の塗布液は、無機微粒子の少なくとも1種と含窒素有機カチオンポリマーの少なくとも1種とを含み、必要に応じて水溶性樹脂、硫黄系化合物、架橋剤、水溶性多価金属化合物、その他の成分を更に含んで構成することができる。また、第2の塗布液は、無機微粒子の少なくとも1種と水溶性アルミニウム化合物の少なくとも1種とを含み、必要に応じて水溶性樹脂、硫黄系化合物、架橋剤、水溶性アルミニウム化合物以外の水溶性多価金属化合物、その他の成分を更に含んで構成することができる。
本発明におけるインク受容層は、2以上の層が積層されて形成されることが好ましく、支持体から遠い層(以下、「第2の層」ということがある。)よりも支持体に近い層(以下、「第1の層」ということがある。)における含窒素有機カチオンポリマーの含有量が多いように積層され、かつ、第2の層よりも第1の層の水溶性アルミニウム化合物の含有量が少ないように積層されていることが好ましい。
第2の層よりも第1の層における含窒素有機カチオンポリマーの含有量が多いように積層されることで、記録された画像の濃度がより向上し、耐オゾン性がより良好になる。
また、第2の層よりも第1の層における水溶性アルミニウム化合物の含有量が少ないように積層されることで、ひび割れの発生が抑制等され面状がより良好になり、さらに耐オゾン性がより向上する。
本発明において、インク受容層中の含窒素有機カチオンポリマーの存在分布は、元素分析により確認することができる。具体的には、SEM−EDX法によるマッピング分析を行い、得られた画像を観察すればよい。この場合、インク受容層の主成分(例えばSi元素)のマッピング分析によりインク受容層全体の存在位置を確認し、続けてN元素のマッピング分析を行い、インク受容層の支持体から遠い層と支持体から近い層におけるN元素の量のどちらが多いかをマッピング画像により判定する。
またインク受容層中の水溶性アルミニウム化合物の存在分布も、同様にして確認することができる。
本発明においては、インク受容層中の含窒素有機カチオンポリマーの含有量比(インク受容層の支持体から遠い層における含有量/インク受容層の支持体から近い層における含有量)が、1.0未満であることが好ましい。
本発明の効果をより効果的に得る観点からは、前記含有量比は0〜0.8がより好ましく、0〜0.4がさらに好ましい。
含窒素有機カチオンポリマーを上記含有量比で含有するインク受容層は、例えば、後述の本発明のインクジェット記録媒体の製造方法において、含窒素有機カチオンポリマーの含有量比(第2の塗布液中における含有量/第1の塗布液中における含有量)を後述のとおりに構成することで形成することができる。
また、本発明の効果をより効果的に得る観点からは、インク受容層中の第1の層における含窒素有機カチオンポリマーの含有率としては、該第1の層の全固形分に対し、2〜25質量%が好ましく、4〜20質量%がより好ましく、6〜18質量%が特に好ましい。
一方、本発明の効果をより効果的に得る観点からは、インク受容層の第2の層における含窒素有機カチオンポリマーの含有率としては、該第2の層の全固形分に対し、1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましく、4〜12質量%が特に好ましい。
さらに、本発明の効果をより効果的に得る観点からは、前記第1の層と前記第2の層とを含むインク受容層全体における、含窒素有機カチオンポリマーの含有量としては、インク受容層全体の全固形分に対し、1〜15質量%が好ましく、1.5〜12質量%がより好ましく、2〜10質量%が特に好ましい。
なお、本発明において、インク受容層の全固形分とは、インク受容層を構成する組成物から水を除いた全成分を指す。
また、本発明の効果をより効果的に得る観点からは、第2の層における含窒素有機カチオンポリマー/無機微粒子の比率よりも、第1の層における含窒素有機カチオンポリマー/無機微粒子の比率が大きいことが好ましい。
本発明においては、インク受容層中の水溶性アルミニウム化合物の含有量比(インク受容層の支持体に近い層における含有量/インク受容層の支持体から遠い層における含有量)が、1.0未満であることが好ましい。
本発明の効果をより効果的に得る観点からは、前記含有量比は0〜0.8がより好ましく、0〜0.4がさらに好ましい。
水溶性アルミニウム化合物を上記含有量比で含有するインク受容層は、例えば、後述の本発明のインクジェット記録媒体の製造方法において、水溶性アルミニウム化合物の含有量比〔第1の塗布液中における含有量/第2の塗布液中における含有量〕を後述のとおりに構成することで形成することができる。
また、本発明の効果をより効果的に得る観点からは、インク受容層中の第2の層における水溶性アルミニウム化合物の含有率としては、該第2の層の全固形分に対し、2〜25質量%が好ましく、4〜20質量%がより好ましく、6〜18質量%が特に好ましい。
一方、本発明の効果をより効果的に得る観点からは、インク受容層の第2の層における水溶性アルミニウム化合物の含有率としては、該第2の層の全固形分に対し、1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましく、4〜12質量%が特に好ましい。
さらに、本発明の効果をより効果的に得る観点からは、前記第1の層と前記第2の層とを含むインク受容層全体における、水溶性アルミニウム化合物の含有量としては、インク受容層全体の全固形分に対し、1〜15質量%が好ましく、1.5〜12質量%がより好ましく、2〜10質量%が特に好ましい。
上記インク受容層の層厚としては、液滴を全て吸収するだけの吸収容量を得る観点からは、層中の空隙率との関連で決定することが好ましい。例えば、インク量が8nL/mmで、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。この点を考慮すると、インク受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましく、20〜40μmがより好ましい。
また、本発明における第1の層および第2の層の層厚は、それぞれ5〜25μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。
一方、インク受容層中に含まれることがある前記コロイダルシリカ層の層厚は、インク吸収性及び光沢の観点から、0.05〜5μmが好ましく、0.1〜3μmがより好ましい。
また、インク受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。
上記空隙率および細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター((株)島津製作所製の商品名「ポアサイザー9320−PC2」)を用いて測定することができる。
また、インク受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、インク受容層を透明フィルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
上記ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株))を用いて測定することができる。
本発明のインクジェット記録媒体は、インク受容層に加えて、さらにインク溶媒吸収層、中間層、保護層等を有していてもよい。また、前記支持体上には、前記インク受容層と前記支持体との間の接着性を高め、電気抵抗値を適切に調整する等の目的で、下塗層を設けてもよい。
本発明のインクジェット記録媒体の構成層(例えば、インク受容層あるいはバックコート層など)には、ポリマー微粒子分散物を添加してもよい。このポリマー微粒子分散物は、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止等のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマー微粒子分散物については、特開昭62−245258号、特開平10−228076号の各公報に記載がある。尚、ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマー微粒子分散物を、前記媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマー微粒子分散物をバック層に添加しても、カールを防止することができる。
<インクジェット記録媒体の製造方法>
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法としては、以下の製造方法が好適である。
即ち、表面のSRa値がカットオフ1〜2mmの条件下で0.4μm以上2.5μm以下である面を少なくとも片面に有する原紙を得る工程と、
前記原紙の前記面の上に、溶融押出機を用いてJISK7210(1999)によるMFR2g/10min以上30g/10min以下のポリエチレン樹脂及び軟化点90℃以上のタッキファイヤーを含む膜厚が35μm未満の樹脂膜を形成して支持体を得る工程と、
無機微粒子及び水溶性多価金属化合物を含むインク受容層形成用塗布液を前記支持体の前記樹脂膜の上に付与してインク受容層を形成する工程と、
を有するインクジェット記録媒体の製造方法である。
かかる製造方法で得られたインクジェット記録媒体は、樹脂膜と原紙との密着性及び樹脂膜とインク受容層との密着性に優れ、面状故障の発生が抑制されている。
上記の製造方法において、インク受容層を形成する工程には、特に制限なく通常用いられる方法を適用することができる。
本発明において前記インク受容層を形成する工程は、生産性とインク吸収性の観点から、平均一次粒子径が30nm以下の気相法シリカ、ポリビニルアルコール、架橋剤、有機媒染剤、及び水溶性多価金属化合物を含むインク受容層形成用塗布液を、好ましくは固形分塗布量が30g/m以下、より好ましくは20g/m以下、更に好ましくは15g/m以下となるように付与する工程を含むことが好ましい。
前記インク受容層は、具体的には例えば、前記インク受容層形成用塗布液を、前記支持体上に塗布して塗布層を形成し、これを乾燥することでインク受容層を形成することができる。また、前記インク受容層形成用塗布液を、前記支持体上に塗布して塗布層を形成し、前記塗布層に、(1)前記インク受容層形成用塗布液を塗布すると同時、又は(2)前記インク受容層形成用塗布液を塗布して形成された塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、塩基性化合物を含む液を付与し、前記塗布層の架橋硬化を行なう工程とを含む製造方法で製造することができる。
インク受容層が2種以上の塗布液から形成される場合、各塗布液は公知の方法により同時重層塗布して形成してもよいし、各塗布液を公知の方法により逐次塗布して形成してもよい。前記同時重層塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーター等、公知の塗布装置を用いて行うことができる。また、前記逐次塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布装置を用いて行うことができる。
またインク受容層が1種の塗布液から形成される場合、前記逐次塗布と同様にしてインク受容層を形成することができる。
本発明におけるインク受容層の形成方法の詳細については、例えば、特開2008−246988号公報に記載のインク受容層の形成方法を本発明においても好適に適用することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
(支持体1の作製)
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量し170g/mの原紙基体を得た。
上記で得られた原紙基体の両面に、下記に示す組成の「表面サイズ塗布液1」を、両面固形分で1.0g/mとなる様にサイズプレスした。
「表面サイズ塗布液1」
(1)ポリビニルアルコール(クラレ製 KL−118) 1.0部
(2)蛍光増白剤(チバ・ジャパン社製 Tinopal SFP) 0.1部
(3)塩化カルシウム 0.1部
(4)水 19.8部
次いで、原紙基体の両面にカレンダー処理を行い、密度1.0g/cmの原紙を得た。下記の条件で測定した原紙の両面の表面粗さSRa値は、カットオフ1〜2mmの条件下で0.60μmであった。
・使用機器
ナノメトロ110F(黒田精工(株)製)
・測定及び解析条件
走査方向:サンプルのMD方向
測定長さ:X方向50mm、Y方向30mm
測定ピッチ:X方向0.1mm、Y方向0.1mm
走査速度:30mm/sec
バンドパスフィルター:1〜2mm
上記の原紙の裏面(後でインク受容層を設ける側と反対の面をいう。)に放電処理量40Wmin/mでコロナ放電処理をした。次いで、溶融押出機を用いて、原紙の裏面を、MFR16g/10minの高密度ポリエチレンを主成分とし、ポリエチレンに対して15質量%のタッキファイヤー(荒川化学工業製 アルコンM−135、軟化点135℃、水素化石油樹脂)を含む膜厚10μmの樹脂膜で被覆した。
次に、原紙のオモテ面(後でインク受容層を設ける側の面をいう。)に放電処理量40Wmin/mでコロナ放電処理をした。次いで、溶融押出機を用いて、原紙のオモテ面を、MFR15g/10minの低密度ポリエチレンを主成分とし、ポリエチレンに対して15質量%のアルコンM−135、同20質量%の二酸化チタン、同2質量%のステアリン酸亜鉛、同0.3質量%の群青、及び同0.02質量%の酸化防止剤を含む膜厚15μmの樹脂膜で、膜の表面温度315℃にて被覆し、支持体1を得た。
(支持体2の作製)
上記支持体1の作製において、原紙のオモテ面の樹脂膜に含まれるタッキファイヤーとしてアルコンM−135の代わりにパインクリスタルKE−604(荒川化学工業製、軟化点122〜134℃、酸変性超淡色ロジン)を用いたこと以外は支持体1の作製と同様にして、支持体2を作製した。
(支持体3の作製)
上記支持体1の作製において、原紙のオモテ面の樹脂膜に含まれるタッキファイヤーとしてアルコンM−135の代わりにYSレジンTO−125(ヤスハラケミカル製、軟化点125℃、芳香族変性テルペン重合体)を用いたこと以外は支持体1の作製と同様にして、支持体3を作製した。
(支持体4の作製)
上記支持体1の作製において、原紙のオモテ面の樹脂膜に含まれるタッキファイヤーとしてアルコンM−135の代わりにパインクリスタルKE−100(荒川化学工業製、軟化点95〜105℃、超淡色ロジンエステル)を用いたこと以外は支持体1の作製と同様にして、支持体4を作製した。
(支持体5の作製)
上記支持体1の作製において、原紙の裏面の樹脂膜、及び原紙のオモテ面の樹脂膜に含まれるタッキファイヤーの添加量をポリエチレンに対して5質量%とした以外は支持体1の作製と同様にして、支持体5を作製した。
(支持体6の作製)
上記支持体1の作製において、原紙の裏面の樹脂膜、及び原紙のオモテ面の樹脂膜に含まれるタッキファイヤーの添加量をポリエチレンに対して45質量%とした以外は支持体1の作製と同様にして、支持体6を作製した。
(支持体7の作製)
上記支持体1の作製において、カレンダー処理後の原紙の表面粗さSRa値を0.45μmとした以外は支持体1の作製と同様にして、支持体7を作製した。
(支持体8の作製)
上記支持体1の作製において、カレンダー処理後の原紙の表面粗さSRa値を2.4μmとした以外は支持体1の作製と同様にして、支持体8を作製した。
(支持体9の作製)
上記支持体1の作製において、原紙の裏面の樹脂膜に含まれる高密度ポリエチレンとしてMFR3g/10minの高密度ポリエチレンを用い、原紙のオモテ面の樹脂膜の主成分をMFR3g/10minの低密度ポリエチレンとした以外は支持体1の作製と同様にして、支持体9を作製した。
(支持体10の作製)
上記支持体1の作製において、原紙の裏面の樹脂膜に含まれる高密度ポリエチレンとしてMFR28g/10minの高密度ポリエチレンを用い、原紙のオモテ面の樹脂膜の主成分をMFR28g/10minの低密度ポリエチレンとした以外は支持体1の作製と同様にして、支持体10を作製した。
(支持体11の作製)
上記支持体1の作製において、原紙の裏面の樹脂膜の膜厚を20μmとし、原紙のオモテ面の樹脂膜の膜厚を25μmとした以外は支持体1の作製と同様にして、支持体11を作製した。
(比較支持体1の作製)
上記支持体1の作製において、原紙の裏面の樹脂膜の成分、及び原紙のオモテ面の樹脂膜の成分からタッキファイヤーを除いた以外は支持体1の作製と同様にして、比較支持体1を作製した。
(比較支持体2の作製)
上記支持体1の作製において、原紙のオモテ面の樹脂膜に含まれるタッキファイヤーの代わりに特殊ロジンエステル(荒川化学工業製 スーパーエステルA−75、軟化点70〜80℃)を用いた以外は支持体1の作製と同様にして、比較支持体2を作製した。
(比較支持体3の作製)
上記支持体1の作製において、カレンダー処理後の原紙の表面粗さSRa値を2.7μmとした以外は支持体1の作製と同様にして、比較支持体3を作製した。
(比較支持体4の作製)
上記支持体1の作製において、カレンダー処理後の原紙の表面粗さSRa値を0.35μmとした以外は支持体1の作製と同様にして、比較支持体4を作製した。
(比較支持体5の作製)
上記支持体1の作製において、原紙の裏面の樹脂膜に含まれる高密度ポリエチレンとしてMFR1g/10minの高密度ポリエチレンを用い、原紙のオモテ面の樹脂膜の主成分をMFR1g/10minの低密度ポリエチレンとした以外は支持体1の作製と同様にして、比較支持体5を作製した。
(比較支持体6の作製)
上記支持体1の作製において、原紙の裏面の樹脂膜に含まれる高密度ポリエチレンとしてMFR32g/10minの高密度ポリエチレンを用い、原紙のオモテ面の樹脂膜の主成分をMFR32g/10minの低密度ポリエチレンとした以外は支持体1の作製と同様にして、比較支持体6を作製した。
(比較支持体7の作製)
上記支持体1の作製において、原紙の裏面の樹脂膜の膜厚を35μmとし、原紙のオモテ面の樹脂膜の膜厚を40μmとした以外は支持体1の作製と同様にして、比較支持体7を作製した。
(比較支持体8の作製)
上記支持体1の作製において、原紙の裏面の樹脂膜に含まれる高密度ポリエチレン、及び原紙のオモテ面の樹脂膜に含まれる低密度ポリエチレンをMFR20g/10minのポリプロピレンに代えた以外は支持体1の作製と同様にして、比較支持体8を作製した。
<実施例1>
[インク受容層形成用塗布液Aの調製]
下記「シリカ分散液A」の組成に従って、シリカ微粒子とイオン交換水とジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体(第一工業製薬製 シャロールDC902P)と酢酸ジルコニルとを混合し、液液衝突型分散機(スギノマシン社製 アルティマイザー)で分散した後、分散液を45℃に加熱して、20時間保持してシリカ分散液Aを調製した。
得られたシリカ分散液Aに、下記組成からなる「ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液A」の31.2部を30℃にて添加し、インク受容層形成用塗布液Aを調製した。
インク受容層形成用塗布液Aにおける水溶性樹脂に対するシリカ微粒子の質量比(P/B比=シリカ微粒子/水溶性樹脂)は4.0/1であり、インク受容層形成用塗布液AのpHは3.4であった。
「シリカ分散液A」
(1)シリカ微粒子(気相法シリカ、平均一次粒子径7nm) 8.9部
(日本アエロジル(株)製 AEROSIL300SF75)
(2)イオン交換水 1.0部
(3)シャロールDC−902P(51.5%溶液) 0.78部
(第一工業製薬(株)製、分散剤)
(4)酢酸ジルコニル(50%溶液) 0.48部
(第一稀元素化学工業(株)製 ジルコゾールZA−30)
「ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液A」
(1)ポリビニルアルコール 2.2部
(日本酢ビ・ポバール製 JM−33、鹸化度94.3mol%、重合度3300)
(2)イオン交換水 28.2部
(3)ジエチレングリコールモノブチルエーテル 0.7部
(協和発酵ケミカル(株)製 ブチセノール20P)
(4)ポリオキシエチレンラウリルエーテル 0.1部
(花王(株)製 エマルゲン109P)
[インク受容層形成用塗布液Bの調製]
下記「シリカ分散液B」の組成に従って、シリカ微粒子とイオン交換水とジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体(第一工業製薬製 シャロールDC902P)と酢酸ジルコニルとメチオニンスルホキシドとホウ酸とを混合し、液液衝突型分散機(スギノマシン社製 アルティマイザー)で分散した後、分散液を45℃に加熱して、20時間保持してシリカ分散液Bを調製した。
次いでシリカ分散液Bに、下記組成からなる「ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液B」の31.2部とカチオン変性ポリウレタン(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックス650(25%液))3.1部とを30℃にて添加し、インク受容層形成用塗布液Bを調製した。
インク受容層形成用塗布液Bにおける水溶性樹脂に対するシリカ微粒子の質量比(P/B比=シリカ微粒子/水溶性樹脂)は4.0/1であり、インク受容層形成用塗布液BのpHは3.8であった。
「シリカ分散液B」
(1)シリカ微粒子(気相法シリカ、平均一次粒子径7nm) 8.9部
(日本アエロジル(株)製 AEROSIL300SF75)
(2)イオン交換水 1.0部
(3)シャロールDC−902P(51.5%溶液) 0.78部
(第一工業製薬(株)製、分散剤)
(4)酢酸ジルコニル(50%溶液) 0.24部
(第一稀元素化学工業(株)製 ジルコゾールZA−30)
(5)30%メチオニンスルホキシド(硫黄系化合物) 1.76部
(6)ホウ酸(架橋剤) 0.4部
「ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液B」
(1)ポリビニルアルコール 2.2部
(日本酢ビ・ポバール製 JM−33、鹸化度94.3mol%、重合度3300)
(2)イオン交換水 28.2部
(3)ジエチレングリコールモノブチルエーテル 0.7部
(協和発酵ケミカル(株)製 ブチセノール20P)
(4)ポリオキシエチレンラウリルエーテル 0.1部
(花王(株)製 エマルゲン109P)
[インク受容層R−1の形成]
支持体1のオモテ面にコロナ放電処理を行った後、支持体1のオモテ面に、インク受容層形成用塗布液Bの98ml/mに対して、下記組成からなる「インライン液」を6.4ml/mの速度でインライン混合した下層用塗布液と、インク受容層形成用塗布液Aの88ml/mに対して、下記組成からなる「インライン液」を19.2ml/mの速度でインライン混合した上層用塗布液とを、エクストルージョンダイコーターで同時重層塗布し、塗布層を形成した。
その後、塗布層の固形分濃度が17%になるまで、熱風乾燥機にて90℃(露点5℃)、風速3〜8m/秒で乾燥させ、次いで、塗布層の固形分濃度が24%になるまで55℃(露点5℃)、風速3〜8m/秒で乾燥させた。塗布層は、この間は恒率乾燥速度を示した。
その直後、下記組成からなる「塩基性化合物を含む溶液」に3秒間浸漬して上記塗布層上にその13g/mを付着させ、更に72℃下で10分間乾燥させた。塗布機のライン速度は70m/minであった。これにより、乾燥膜厚が35μmのインク受容層R−1を支持体上に設けて、実施例1のインクジェット記録媒体を得た。
「インライン液」
(1)ポリ塩化アルミニウム水溶液 2.0部
(大明化学工業(株)製 アルファイン83、塩基度83%)
(2)イオン交換水 7.8部
(3)SC−505(ハイモ(株)製) 0.2部
「塩基性化合物を含む溶液」
(1)ホウ酸 1.3部
(2)炭酸アンモニウム(1級)(関東化学(株)) 5.0部
(3)炭酸ジルコニルアンモニウム(28%水溶液) 2.5部
(第一稀元素化学工業(株)製 ジルコゾールAC−7)
(4)イオン交換水 85.2部
(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル 6.0部
(花王(株)製 エマルゲン109P、10%水溶液、HLB値13.6)
<実施例2〜11>
実施例1において、支持体1の代わりに支持体2〜11の支持体をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録媒体2〜11を作製した。
<実施例12>
実施例1において、「インライン液」からポリ塩化アルミニウム水溶液を除いた以外は実施例1と同様にして、実施例12のインクジェット記録媒体を作製した。
<実施例13>
[インク受容層形成用塗布液Cの調製]
下記「インク受容層組成」に水を加え、常法により固形分濃度が25質量%のインク受容層形成用塗布液Cを調製した。
「インク受容層組成」
(1)合成非晶質シリカ(平均一次粒子径50nm) 100部
(2)ヘキサメタリン酸ソーダ 1部
(3)シラノール変性ポリビニルアルコール 42.5部
(クラレ製 R−1130、重合度1700)
(4)蛍光増白剤 3部
(5)アニオン系界面活性剤 7部
(6)ポリジメチルジアミノアンモニウムクロライド 1部
(7)ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン 3.5部
(荒川化学工業(株)製 アラフィックス300)
(8)酢酸ジルコニル(50%溶液) 1部
(第一稀元素化学工業(株)製 ジルコゾールZA−30)
[インク受容層R−2の形成]
支持体1のオモテ面にコロナ放電処理を行った後、支持体1のオモテ面に、上記で得られたインク受容層形成用塗布液Cを、固形分12g/mとなるように塗布した。塗布機のライン速度は70m/minであった。これにより、インク受容層R−2を支持体上に設けて、実施例13のインクジェット記録媒体を得た。
<実施例14>
実施例1において、[インク受容層形成用塗布液Aの調製]と[インク受容層形成用塗布液Bの調製]の酢酸ジルコニル及び「塩基性化合物を含む溶液」の炭酸ジルコニルアンモニウムを除いた以外は実施例1と同様にして、実施例14のインクジェット記録媒体を作製した。
<比較例1〜8>
実施例1において、支持体1の代わりに比較支持体1〜8をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1〜8のインクジェット記録媒体を作製した。
<比較例9>
[インク受容層形成用塗布液Dの調製]
実施例1のインク受容層形成用塗布液Aの調製において、「シリカ分散液A」の成分から酢酸ジルコニルを除いた以外はインク受容層形成用塗布液Aの調製と同様にして、インク受容層形成用塗布液Dを調製した。
インク受容層形成用塗布液Dにおける水溶性樹脂に対するシリカ微粒子の質量比(P/B比=シリカ微粒子/水溶性樹脂)は4.0/1であり、インク受容層形成用塗布液DのpHは3.4であった。
[インク受容層形成用塗布液Eの調製]
実施例1のインク受容層形成用塗布液Bの調製において、「シリカ分散液B」の成分から酢酸ジルコニルを除いた以外はインク受容層形成用塗布液Bの調製と同様にして、インク受容層形成用塗布液Eを調製した。
インク受容層形成用塗布液Eにおける水溶性樹脂に対するシリカ微粒子の質量比(P/B比=シリカ微粒子/水溶性樹脂)は4.0/1であり、インク受容層形成用塗布液EのpHは3.8であった。
[インク受容層R−3の形成]
実施例1のインク受容層R−1の形成において、インク受容層形成用塗布液Aの代わりにインク受容層形成用塗布液Dを用い、インク受容層形成用塗布液Bの代わりにインク受容層形成用塗布液Eを用い、「インライン液」からポリ塩化アルミニウム水溶液を除き、「塩基性化合物を含む溶液」から炭酸ジルコニルアンモニウムを除いた以外はインク受容層R−1の形成と同様にして、乾燥膜厚が35μmのインク受容層R−3を支持体に設けて、比較例9のインクジェット記録媒体を得た。
<評価>
上記で得られた支持体およびインクジェット記録媒体について、以下のような評価を行なった。実施例及び比較例の構成を表1に、評価結果を表2に示す。
(樹脂膜/原紙密着性)
上記で得られた各支持体を10℃RH15%で24時間調湿し、オモテ面の樹脂膜と原紙の間の密着力を、東洋精機製STROGRAPH R−1を用い、CROSS HEAD SPEED 50mm/minにて180°剥離法にて測定した。下記評価基準に従って、剥離力から樹脂/原紙密着性を評価した。
〜評価基準〜
AA:剥離力が250g/15mm以上。
BB:剥離力が150g/15mm以上250g/15mm未満。
CC:剥離力が50g/15mm以上150g/15mm未満。
DD:剥離力が50g/15mm未満。
(裁断時粉落ち)
上記で得られた各インクジェット記録媒体(A4版)を10℃RH15%で24時間調湿し、各々250枚重ね、インク受容層形成面とは反対の面から、ギロチンカッターで断裁する試験を6回繰り返し、発生した粉落ち量を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
〜評価基準〜
AA:粉落ちが殆ど発生しなかった。
BB:粉落ちの発生が微かに認められた。
CC:粉落ちの発生が少し認められたが、実用上支障のない程度であった。
DD:粉落ちの発生が多く、実用上支障があった。
(ドッグイヤー耐性)
上記で得られた各インクジェット記録媒体(A4版)を10℃RH15%で24時間調湿し、その端部を一辺2cmの二等辺三角形となるように折り(ドッグイヤー)、元に戻し、この作業を3回繰り返し、折り目の状態を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
〜評価基準〜
AA:折り目の部分の跡は殆ど目立たない程度であった。
BB:折り目部での樹脂膜やインク受容層の剥がれは認められなかった。
CC:折り目部での樹脂膜やインク受容層の剥がれが少し認められたが実用上支障のない程度であった。
DD:折り目部での樹脂膜やインク受容層の剥がれは実用上支障があった。
(面状故障)
上記で得られた各インクジェット記録媒体の面状を目視で観察し、1m中の凹凸状故障の数を、下記評価基準に従って評価した。
〜評価基準〜
AA:凹凸状故障は全く観察されなかった。
BB:軽微な凹凸状故障が1〜2個認められた。
CC:凹凸状故障が10個以内認められたが、実用上支障のない程度であった。
DD:凹凸状故障が11個以上認められ、実用上支障があった。
(写像性)
上記で得られた各インクジェット記録媒体に対し、インクジェットプリンターPM−G800(セイコーエプソン(株)製)を用いて黒(K)のベタ画像を印画して、測定用サンプルを作製した。
得られた測定用サンプルを写像性測定機(スガ試験機(株)製 ICM−1)を用いて、JIS H8686−2(1999年)に基づいて、写像性C値の測定を行い、下記評価基準に従って評価した。尚、測定条件は以下の通りである。
測定方法;反射、測定角度;60度、光学くし;1.0mm。
〜評価基準〜
AA:写像性C値50%以上。
BB:写像性C値30%以上50%未満。
CC:写像性C値20%以上30%未満。
DD:写像性C値20%未満。
(画質)
上記で得られた各インクジェット記録媒体に対し、インクジェットプリンターPM−G800(セイコーエプソン(株)製)を用いて、人物及び風景の画像を印画し、30℃RH80%の条件で1週間保存後、画像を目視で観察し、下記の評価基準に従って評価した。
〜評価基準〜
AA:画質が非常に良好であった。
BB:画質が良好であった。
CC:画質がやや劣るが、実用上支障のない程度であった。
DD:画質が劣った。
Figure 2011173287

Figure 2011173287

表2から明らかな通り、本発明の構成を有する実施例はいずれの評価項目においても優れていることが判る。

Claims (7)

  1. 表面のSRa値がカットオフ1〜2mmの条件下で0.4μm以上2.5μm以下である面を少なくとも片面に有する原紙、並びに、前記原紙の前記面の上に設けられるとともにJISK7210(1999)によるMFR2g/10min以上30g/10min以下のポリエチレン樹脂及び軟化点90℃以上のタッキファイヤーを含む膜厚が35μm未満の樹脂膜、を有する支持体と、
    前記支持体の前記樹脂膜の上に設けられるとともに無機微粒子及び水溶性多価金属化合物を含むインク受容層と、
    を有するインクジェット記録媒体。
  2. 前記水溶性多価金属化合物が、水溶性アルミニウム化合物及び水溶性ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
  3. 前記タッキファイヤーの含有量が、前記ポリエチレン樹脂の質量に対して5質量%以上50質量%以下である請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録媒体。
  4. 前記タッキファイヤーが、テルペン系タッキファイヤー、ロジン系タッキファイヤー、及び石油樹脂系タッキファイヤーから選ばれる少なくとも1種である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
  5. 前記樹脂膜の膜厚が5μm以上30μm未満である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
  6. 前記樹脂膜が、更に二酸化チタン、ステアリン酸亜鉛及び群青を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
  7. 前記インク受容層が、前記無機微粒子として平均一次粒子径30nm以下の気相法シリカを含み、更にポリビニルアルコール、架橋剤、及び有機媒染剤を含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
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