JP2011162985A - 鋼桁の補強構造及びその構築方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の鋼桁の補強構造は、鋼桁の腹板2の表面の少なくとも一部に、(A)セメント、(B)BET比表面積が5〜25m2/gの微粒子、(C)ブレーン比表面積が3,500〜10,000cm2/gの無機粉末、(D)最大粒径が2mm以下の細骨材、(E)減水剤、(F)繊維、及び(G)水を含む配合物の硬化体からなる板状部材9を、接着剤を用いて固着させてなるものである。
【選択図】図2
Description
一般に、鋼構造物の補修・補強方法として、当て板補強工法が多用されている。この工法は、鋼桁に補強用の鋼板をボルトや溶接によって添接する方法である。しかし、この工法は、補強用の鋼板の重量が大きく、施工性に劣ること、補強用の鋼板自体が腐食したときに該鋼板の付け替えや塗装等が必要であり、維持管理の労力やコストが大きいこと、補強用の鋼板の添接時の溶接や削孔によって母材を痛める可能性があること等の問題がある。
このような事情下において、従来より、鋼桁の補修・補強構造に関して、種々の技術が開発されている。一例として、既設鋼桁の補強必要部位にスタッドを溶着し、該スタッドを利用して鉄筋を取り付け、ついでコンクリートを充填した既設鋼桁の補修・補強構造が提案されている(特許文献1)。
一方、鋼桁の補強に際しては、特に、剛性を向上させること、及び、鉛直方向の荷重による降伏に対する抵抗性を向上させることが重要である。
本発明は、剛性、及び、荷重による降伏に対する抵抗性に優れ、補強用の資材が軽量であり、しかも、現場での打設作業を要しない等の点で施工性に優れ、さらに、維持管理の労力が少なく、コスト面でも有利である、鋼桁の補強構造及びその構築方法を提供することを目的とする。
[1] 鋼桁の補強構造であって、鋼桁の腹板の表面の少なくとも一部に、(A)セメント、(B)BET比表面積が5〜25m2/gの微粒子、(C)ブレーン比表面積が3,500〜10,000cm2/gの無機粉末、(D)最大粒径が2mm以下の細骨材、(E)減水剤、(F)繊維、及び(G)水を含む配合物の硬化体からなる板状部材が固着されていることを特徴とする鋼桁の補強構造。
[2] 上記板状部材は、降伏の発生が予想される領域の少なくとも一部を覆うように配設されている、前記[1]に記載の鋼桁の補強構造。
[3] 上記板状部材は、鉛直方向に延びるように配設されている、前記[1]又は[2]に記載の鋼桁の補強構造。
[4] 上記板状部材は、上記の鋼桁の腹板の表面との間に、接着剤層を介在させて固着されている、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の鋼桁の補強構造。
[5] 上記板状部材は、5〜30mmの厚さを有する、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の鋼桁の補強構造。
[6] 上記鋼桁の腹板の両面の少なくとも互いに重なり合う部分を有する領域に、一対の板状部材が配設されている、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の鋼桁の補強構造。
[7] 上記[1]〜[5]のいずれかに記載の鋼桁の補強構造を構築するための方法であって、上記鋼桁の腹板の表面の少なくとも一部に、上記板状部材を、接着剤を用いて貼付することを特徴とする鋼桁の補強構造の構築方法。
[8] 上記板状部材の貼付の前に、上記鋼桁の腹板の表面をブラスト処理する前記[7]に記載の鋼桁の補強構造の構築方法。
また、本発明によると、特定の材料を含む配合物(超高強度繊維補強モルタル)の硬化体からなる板状部材を用いているため、通常のモルタルに比べて、板状部材の厚さを小さくしても、大きな剛性、及び、荷重による降伏に対する十分な抵抗性を確保することができ、補強用の資材の軽量化を図ることができる。
また、本発明によると、板状部材を鋼桁の表面に固着させるという簡易な作業により、鋼桁の補強構造を構築することができ、打設作業を要しない等の点で施工性に優れる。
さらに、本発明によると、特定の材料を含む配合物(超高強度繊維補強モルタル)の硬化体からなる板状部材を用いているため、耐久性に優れている。特に、補強用の部材として鋼板を用いる場合に比べて、補強用の部材の付け替えや防錆のための塗装の必要がなく、維持管理の労力の軽減、及びコストの削減を図ることができる。
本発明で用いる板状部材は、(A)セメント、(B)BET比表面積が5〜25m2/gの微粒子、(C)ブレーン比表面積が3,500〜10,000cm2/gの無機粉末、(D)最大粒径が2mm以下の細骨材、(E)減水剤、(F)繊維、及び(G)水、を含む配合物の硬化体からなる。
(A)セメントの種類としては、特に限定されないが、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントが挙げられる。
本発明において、硬化体の早期強度を向上させようとする場合には、早強ポルトランドセメントを使用することが好ましく、配合物の流動性(施工性)を向上させようとする場合には、中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントを使用することが好ましい。
本発明で用いられる(B)微粒子としては、シリカフューム、シリカダスト、フライアッシュ、スラグ、火山灰、シリカゾル、沈降シリカ、石灰石粉末等が挙げられる。一般に、シリカフュームやシリカダストは、そのBET比表面積が5〜25m2/gであり、粉砕等をする必要がないので、好適に用いられる。また、被粉砕性や流動性等の観点から、石灰石粉末も好適に用いられる。
(B)微粒子の配合量は、(A)セメント100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部である。該配合量が5質量部未満であると、硬化体の強度、緻密性、耐衝撃性等が低下するため好ましくない。該配合量が50質量部を超えると、所定の流動性を得るための水量が多くなり、硬化体の強度、緻密性、耐衝撃性等が低下するため好ましくない。また、該配合量が前記の数値範囲外では、剛性を向上させることが困難であり、また、鋼桁の降伏に対する抵抗性の低下などを招くことがある。
本発明で用いられる(C)無機粉末としては、セメント以外の無機粒子、例えば、スラグ、石灰石粉末、長石類、ムライト類、アルミナ粉末、石英粉末、フライアッシュ、火山灰、シリカゾル、炭化物粉末、窒化物粉末等が挙げられる。中でも、スラグ、フライアッシュ、石灰石粉末、石英粉末は、コストの点や硬化体の品質安定性の点で好ましく用いられる。
(C)無機粉末の配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは5〜55質量部、より好ましくは10〜50質量部である。(C)無機粉末の配合量が、上記範囲外であると、配合物の流動性の低下や、硬化体の強度、緻密性、耐衝撃性等の低下や、鋼桁の降伏に対する抵抗性の低下などを招くことがあり、また、剛性を向上させることが困難である。
(D)細骨材の最大粒径は、2mm以下、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1mm以下である。細骨材の最大粒径が2mmを超えると、硬化体の強度が低下することがあり、また、硬化体を薄肉化(例えば厚さ5〜30mm)することも困難となる。
(D)細骨材の配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは50〜250質量部、より好ましくは80〜180質量部である。(D)細骨材の配合量が上記範囲外であると、硬化体の強度の低下や、収縮の増大や、鋼桁の降伏に対する抵抗性の低下などを招くことがあり、また、剛性を向上させることが困難である。
(E)減水剤の配合量は、セメント100質量部に対して固形分換算で、好ましくは0.1〜4.0質量部、より好ましくは0.1〜1.0質量部である。該配合量が0.1質量部未満では、配合物の混練が困難となるうえ、流動性が極端に低くなるため成形が困難となる。該配合量が4.0質量部を超えると、配合物の材料分離や、得られる硬化体の強度及び緻密性の低下や、鋼桁の降伏に対する抵抗性の低下などを招くことがあり、また、剛性を向上させることが困難である。
金属繊維としては、鋼繊維、アモルファス繊維等が挙げられる。中でも鋼繊維は、高強度であり、低コストでしかも入手し易いなどの点で好ましく用いられる。
金属繊維は、直径が0.01〜1.0mmでかつ長さが2〜30mmであることが好ましい。該直径が0.01mm未満であると、繊維自体の強度が不足し、張力を受けた際に破断しやすくなる。該直径が1.0mmを超えると、同一配合量での本数が少なくなり、剛性、及び、鋼桁の降伏に対する抵抗性を向上させる効果が低下する。また、該長さが2mm未満では、剛性、及び、鋼桁の降伏に対する抵抗性を向上させる効果が低下する。該長さが30mmを超えると、混練の際にファイバーボールを生じやすくなる。
金属繊維の配合量は、セメント組成物の全体積中、好ましくは0.1〜4.0%、より好ましくは0.5〜3.0%、特に好ましくは0.7〜3.0%である。該配合量が0.1%未満では、硬化体の曲げ強度や破壊エネルギーが小さくなり、剛性、及び、鋼桁の降伏に対する抵抗性を向上させる効果が低下する。該配合量が4.0%を超えると、混練時の作業性等を確保するために多量の水が必要となるため、得られる硬化体の強度、破壊エネルギー等が小さくなり、また、剛性、及び、鋼桁の降伏に対する抵抗性を向上させる効果も低下する。
炭素繊維としては、PAN系炭素繊維やピッチ系炭素繊維が挙げられる。
有機質繊維、炭素繊維は、直径が0.005〜1.0mm、長さが2〜30mmであることが好ましい。該直径が0.005mm未満では、繊維自身の耐力が不足し、張力を受けた際に破断し易くなる。該直径が1.0mmを超えると、同一配合量での本数が少なくなり、破壊エネルギー等を向上させる効果が低下する。該長さが2mm未満では、マトリックスに対する付着力が低下して、破壊エネルギー等を向上させる効果が低下する。該直径が30mmを超えると、混練の際にファイバーボールが生じ易くなる。
有機質繊維又は炭素繊維の配合量は、セメント組成物の全体積中、好ましくは0.5〜10%、より好ましくは1.0〜7.0%、特に好ましくは1.5〜5.0%である。該配合量が0.5%未満では、硬化体の破壊エネルギーが小さくなり、剛性、及び、鋼桁の降伏に対する抵抗性を向上させる効果が低下する。該配合量が10%を超えると、混練時の作業性等を確保するために多量の水が必要となるため、得られる硬化体の強度、破壊エネルギー等が小さくなり、剛性、及び、鋼桁の降伏に対する抵抗性を向上させる効果が低下する。
配合物における水/セメント比は、配合物の流動性や、硬化体の強度、耐久性、緻密性、耐衝撃性等の観点から、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは15〜25質量%である。該比が10質量%未満では、配合物の混練が困難であるうえ、流動性が極端に小さくなるので、成形が困難となる。該比が30質量%を超えると、硬化体の強度や緻密性等が低下することがあり、剛性、及び、鋼桁の降伏に対する抵抗性を向上させる効果も低下する。
繊維状粒子としては、ウォラストナイト、ボーキサイト、ムライト等が挙げられる。薄片状粒子としては、マイカフレーク、タルクフレーク、バーミキュライトフレーク、アルミナフレーク等が挙げられる。
繊維状粒子及び/又は薄片状粒子は、平均粒度が1mm以下であることが好ましい。このような粒度を有する粒子を用いることによって、硬化体の靭性を向上させることができる。平均粒度が1mmを超えると、配合物の流動性や硬化体の強度等が低下するため好ましくない。なお、粒子の粒度とは、その最大寸法の大きさ(特に、繊維状粒子ではその長さ)である。
繊維状粒子及び/又は薄片状粒子の配合量(これら2種の粒子を併用する場合は、その合計量)は、セメント100質量部に対して、好ましくは35質量部以下、より好ましくは0.1〜20質量部である。繊維状粒子及び/又は薄片状粒子の配合量を上記範囲内とすることにより、配合物の流動性や、硬化体の靭性等を高めることができる。
なお、繊維状粒子としては、硬化体の靭性を高める観点から、長さ/直径の比で表される針状度が3以上のものを用いることが好ましい。
配合物の成形・養生方法も、特に限定されるものではないが、硬化体(板状部材)の生産性、強度発現性等を考慮すると、一次養生及び二次養生を行う方法が好ましい。このような方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
まず、混練した配合物を所定の型枠を用いて成形し、一次養生を行う。ここで、成形方法としては、特に限定されるものではなく、流し込み成形等の慣用の成形方法を採用することができる。一次養生の方法としては、型枠に混練した配合物を収容した状態で、5〜40℃で所定時間、例えば3〜48時間静置する方法が挙げられる。一次養生終了後、脱型し、その後、二次養生を行い、硬化体(板状部材)を製造する。一次養生後の脱型時の硬化体の圧縮強度は、10N/mm2以上であることが好ましい。圧縮強度が10N/mm2未満であると、脱型が困難となる。二次養生の方法としては、例えば、75〜95℃で10〜48時間蒸気養生する方法が挙げられる。
また、本発明で用いる板状部材の厚さは、好ましくは5〜30mm、より好ましくは5〜20mm、特に好ましくは5〜15mmである。該厚さが5mm未満では、製造が困難になるとともに、板状部材に反り等の変形が生じることがある。また、この場合、剛性、及び、鋼桁の降伏に対する抵抗性を向上させる効果も低下する。該厚さが30mmを超えると、板状部材の重量が大きくなるために、鋼桁への貼り付け作業が困難となり、また、材料費が高くなるため好ましくない。
本発明で用いる板状部材の長さの下限値は、小さ過ぎると、板状部材を多数用いる必要が生じ、取付け作業が煩雑になることがあるので、好ましくは15cm以上、より好ましくは20cm以上である。
本発明で用いる板状部材の幅は、取付け時の作業性の観点から、好ましくは100cm以内、より好ましくは90cm以内、特に好ましくは80cm以内である。
本発明で用いる板状部材の幅の下限値は、小さ過ぎると、板状部材を多数用いる必要が生じ、取付け作業が煩雑になることがあるので、好ましくは5cm以上、より好ましくは10cm以上である。
板状部材の長さ及び幅の好ましい一例は、長さが50〜150cmで、かつ、幅が10〜80cmである。
なお、本明細書において、長さは、幅以上の寸法を有するものとする。
本発明の鋼桁の補強構造は、鋼桁の腹板の表面の少なくとも一部に、前記の配合物の硬化体からなる板状部材が固着されているものである。
本発明で用いられる板状部材は、鋼桁の降伏の発生が予想される領域の少なくとも一部を覆うように配設されていることが望ましい。
なお、降伏は、腹板の中央部付近から開始し、その後、対角線上に伸展し、次いで、対角線の両末端まで伸展した降伏帯が、該対角線と垂直の方向に拡幅され、最終的に、腹板の崩壊に至るという経緯を辿る。
本発明で用いられる板状部材は、鉛直方向に延びるように配設されていることが望ましい。このように配設することによって、鉛直方向の荷重(例えば、橋梁上の通行車両による鉛直下方への荷重)に対して、優れた降伏抵抗性を発揮することができる。
本発明で用いる板状部材は、十分な補強効果を得る観点から、腹板(ただし、フランジまたは垂直補剛材によって積層されている部分を除く。)の面積の10%以上を覆うことが好ましく、20%以上を覆うことがより好ましく、30%以上を覆うことが特に好ましい。また、フランジ及び垂直補剛材によって囲まれた矩形の腹板の部分は、1枚の板状部材のみを用いて補強してもよいし、複数の板状部材を用いて補強してもよい。
本発明で用いる板状部材は、鋼桁の腹板の表面との間に、接着剤層を介在させて固着されることが好ましい。この場合、板状部材の固着作業を、補強対象物である鋼桁を傷付けることなく、容易かつ迅速に行なうことができる。
接着剤層を形成するための接着剤としては、エポキシ樹脂系接着剤等の合成樹脂系接着剤が挙げられる。エポキシ樹脂系接着剤の市販品としては、コニシ社製の「E256」、「E258」等が挙げられる。
本発明においては、接着剤とともに、アンカーを使用することもできる。
板状部材を固着させる際に、腹板の固着対象領域をブラスト処理することが望ましい。ブラスト処理によって、腹板の表面が粗化され、固着強度を向上させることができる。
[1.材料の準備]
配合物の材料として、以下に示すものを使用した。
(A)セメント:低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(B)微粉末:シリカフューム(BET比表面積10m2/g)
(C)無機粉末:石英粉末(ブレーン比表面積7,000cm2/g)
(D)細骨材:珪砂5号(最大粒径0.6mm以下)
(E)減水剤:ポリカルボン酸系高性能減水剤
(F)金属繊維:鋼繊維(直径:0.2mm、長さ:15mm)
(G)水:水道水
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム32質量部、石英粉末35質量部、細骨材105質量部、減水剤0.8質量部(固形分換算)、水22質量部、及び鋼繊維(鋼繊維の量は、セメント組成物の全体積の2%となるように定めた。)を、二軸練りミキサに投入し、混練して配合物を得た。得られた配合物のフロー値(0打ち)は270mmであった。
なお、配合物のフロー値(0打ち)は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載の方法において、15回の落下運動を行わずに測定した値である。
次いで、上記配合物を用いて硬化体を製造し、圧縮強度及び曲げ強度測定用の試供体とした。
具体的には、上記配合物を、所定の型枠(圧縮強度測定用の型枠;φ50×100mm、曲げ強度測定用の型枠;4×4×16cm)を用いて成形し、20℃で24時間静置(一次養生)した後脱型し、さらに90℃で48時間蒸気養生(二次養生)して、硬化体を得た。そして、得られた硬化体の圧縮強度及び曲げ強度を、各々、「JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)」、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準じて測定した。
その結果は、圧縮強度210N/mm2、曲げ強度47N/mm2であった。
なお、結果は、硬化体3本に対する平均値である。
鋼I桁供試体(断面がI字形状である鋼桁)を準備した。なお、鋼I桁供試体は、せん断破壊が先行するように土木学会発行「座屈設計ガイドライン」に従って設計した。
鋼I桁供試体の材料特性を表1に、鋼I桁供試体の構造及び寸法を図1に示す。
図1中、左側の平面図において、鋼I桁供試体1は、腹板2と、腹板2の上端及び下端に取り付けたフランジ3と、腹板2の上端と下端を結ぶように取り付けた垂直補剛材4を備えている。また、腹板2と、フランジ3及び垂直補剛材4は、高力ボルト5を用いて摩擦接合で固着されている。
図1中、右側の側面図は、腹板2、及び、腹板2の上端及び下端に取り付けたフランジ3を示すものである。垂直補剛材4の図示は省略している。
なお、フランジ3及び垂直補剛材4は、山形鋼(65×65×6mm)である。高力ボルト5は、呼び寸法が「M16」、種類が「F10T」のものである。
上記「2.配合物の調製、及び、硬化体の物性の測定」で調製した配合物と同様の配合物を用いて、7×200×480mmの型枠を用いて成形し、20℃で24時間静置(一次養生)した後脱型し、さらに90℃で48時間蒸気養生(二次養生)して、板状部材(長さ480mm、幅200mm、厚さ7mm)を得た。
図2(図1の平面図の左半分を示す。)に示すように、得られた板状部材9を、接着剤を用いて、腹板2の両面の各々の中央に接着した。板状部材9の数は、一方の面に2枚、他方の面に2枚の合計4枚である(図1、図2参照)。なお、接着前に、腹板2の接着面はブラスト処理し、板状部材の接着面はグラインダによって表面処理した。接着剤としては、エポキシ樹脂系接着剤(コニシ社製の「E258」)を用いた。接着作業は、腹板2と板状部材9の両方に接着剤を塗布した後に、腹板2と板状部材9を圧着して固定し、その状態で24時間静置することにより行なった。
図1に示すように、得られた補強供試体に対して、2,000kN万能試験機を用いて、4点曲げ載荷試験を行ない、載荷点7の直下の変位を測定した。図1中、載荷点7は、補強供試体の上部中央付近の2箇所であり、支点6は、補強供試体の下部両端付近の2箇所である。
実験により得られた降伏せん断力(降伏時の荷重)、及び最大荷重時のせん断力(座屈時の荷重)を表2に、初期剛性を表3に示す。
[比較例1]
鋼I桁供試体に対して板状部材を貼り付けない以外は実施例1と同様にして、4点曲げ載荷試験を行なった。結果を表2及び表3に示す。
なお、表2及び表3中、「増加率」は、比較例1の値に対する実施例1の値の比を示す。
2 腹板
3 フランジ
4 垂直補剛材
5 高力ボルト
6 支点
7 載荷点
9 板状部材
Claims (8)
- 鋼桁の補強構造であって、上記鋼桁の腹板の表面の少なくとも一部に、(A)セメント、(B)BET比表面積が5〜25m2/gの微粒子、(C)ブレーン比表面積が3,500〜10,000cm2/gの無機粉末、(D)最大粒径が2mm以下の細骨材、(E)減水剤、(F)繊維、及び(G)水を含む配合物の硬化体からなる板状部材が固着されていることを特徴とする鋼桁の補強構造。
- 上記板状部材は、降伏の発生が予想される領域の少なくとも一部を覆うように配設されている請求項1に記載の鋼桁の補強構造。
- 上記板状部材は、鉛直方向に延びるように配設されている請求項1又は2に記載の鋼桁の補強構造。
- 上記板状部材は、上記鋼桁の腹板の表面との間に、接着剤層を介在させて固着されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼桁の補強構造。
- 上記板状部材は、5〜30mmの厚さを有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼桁の補強構造。
- 上記鋼桁の腹板の両面の少なくとも互いに重なり合う部分を有する領域に、一対の板状部材が配設されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼桁の補強構造。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の鋼桁の補強構造を構築するための方法であって、上記鋼桁の腹板の表面の少なくとも一部に、上記板状部材を、接着剤を用いて貼付することを特徴とする鋼桁の補強構造の構築方法。
- 上記板状部材の貼付の前に、上記鋼桁の腹板の表面をブラスト処理する請求項7に記載の鋼桁の補強構造の構築方法。
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