JP2011161411A - 濾過方法および濾過装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来技術の欠点に鑑み、ペーストを連続的に、かつ気泡を混入させること無く濾過する濾過方法および濾過装置を提供する。
【解決手段】ペーストP1を収容する鉛直方向の円筒1と、円筒1の下部に固定されたフィルタ2と、円筒1内のペーストP1を吸引する減圧容器7および減圧ポンプ8とからなる吸引装置13を用いてペーストP1を濾過する方法において、フィルタ2上の不均一な濾過の進行によって生じたフィルタ2の表面の露出部を、フィルタ2上の他の部分に残存するペーストP1で覆い、吸引装置13の吸引力の減少を避けるか、またはフィルタ2上のペーストP1の表面を被覆して、ペーストP1の表面と大気との接触を避け、ペーストP1中の揮発溶剤の揮散や、濾過中のペーストP1の乾燥を防止して、ペーストP1の粘度の高まり、流動性の低下を防止し、濾過速度の低下を避ける。
【選択図】図1

Description

本発明は、粘性流動体のスラリ(原液)としてのペーストをフィルタに通過させ、フィルタの目より大きな固体粒子、異物や凝集物などをペーストから除去する技術に関し、さらに詳しくは、フィルタでの圧力差を利用して吸引濾過を行う技術に関する。
従来、フィルタ上に貯留されたペーストの濾過においては、濾過速度を高めるべく、吸引濾過方法が採用されている。吸引濾過では、フィルタ面上で、局所的に目詰まりが起きて、濾過速度が低下する部分が発生する一方で、濾過が円滑に進む部分では、その部分の上に貯留されたペーストが全て濾過され、大気に接するペーストの表面がフィルタ表面まで下降した後、大気がフィルタから下方に吸い込まれる。すなわち、ペーストの表面がフィルタ表面まで下降すると、その部分でフィルタ上面のペーストに孔が開くという現象が生じる。大気がペーストの孔を介してフィルタから吸い込まれると、フィルタ下面の吸引力は弱まる。通常、大気の吸入は、孔あきの後も際限なく続くため、フィルタ上の他の部分に残ったペーストの濾過が進まないといった問題があった。
これに対して、特許文献1、特許文献2および特許文献3に開示された従来の流体物濾過装置は、底面にフィルタを配置した濾過装置内にフィルタより流体物を押し出すためのブレードを回転可能に取付けた構造になっている。それらの技術においては、ブレードが回転して濾過されていないペーストをフィルタに押し付けていくため、上記フィルタ上面のペーストに開いた孔を塞ぐ効果は期待できる。しかし、それらの技術の問題は、ブレードによるペーストのフィルタへの押し付け時に、フィルタ上のペースト層に押し付けられるペースト層が重畳する際に、層間に大気を巻き込むことによって、気泡がペースト内に混入することである。気泡は、大気と異なり、有限の体積であるため、フィルタの孔あきと違って際限のない吸引力の減退を招くことはないが、濾過されたペーストが気泡を内包すると、後にこれを脱泡するための工程を要するといった問題があった。また、ブレードが回転している部分は、気密性を期待できるが、ブレードの外側は機密性が担保されず、万全ではない。
また、特許文献4に開示された発明は、タンクに納めた攪拌後のペーストをタンクに嵌合する加圧板で吐出口から押し出すミキサーに関連する。その発明は、攪拌、混練、捏和等の処理と加圧押し出しの処理とを1台のミキサーで行うものであり、そこに濾過機能は記載されていないが、吐出口手前にフィルタを設置すれば、濾過を行いながら押し出しを行うことは可能と思われる。かかる発明では、特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示された濾過装置が有する問題、すなわちペースト中に気泡が混入するという問題はないが、逆に上記濾過装置が有する生産上の問題、すなわち随時にペーストを追加投入することはできず、間欠処理に限られ、ペーストの投入時には装置の停止を要するので、生産性を向上できないといった問題があった。
特許文献5に開示された発明は、下部にフィルタと吐出口とを供えた袋状体にあらかじめペーストを封入しておき、これを加圧してペーストを濾過する濾過装置に関する。かかる装置も、濾過工程においてペーストに気泡を混入する問題はないが、事前に袋状体にペーストを封入する作業が生じ、同作業において、気泡を混入する可能性があった。また、濾過作業は、袋ごとの間欠作業となり、事前の袋詰め作業も考慮すれば、生産性を十分に高めることはできなかった。
特許文献6に開示された発明は、重合槽に投入した溶融ポリマーを不活性ガスの圧力で払い出し弁を通してメッシュ状金網に送り、さらにノズルでストランド状のポリマーを形成する造粒装置に関する。かかる装置においては、ペーストに相当する溶融ポリマーは、重合槽において不活性ガスと接しているが、特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示された濾過装置のブレードが行う攪拌的作業がないため、溶融ポリマーへの気泡の混入問題はない。しかし、重合槽が密閉構造になっているため、溶融ポリマーの追加投入時に、重合槽を開ければ、不活性ガスの圧力は下がり、濾過作業は停止するといった生産性の阻害要因を有している。
特許第3014411 特開2001−288201 特開2007−313377 特開2008−12370 実公平03−37691 特開2005−224982
本発明の課題は、以上のような従来技術の欠点に鑑み、ペーストを連続的に、かつ気泡を混入させること無く濾過する濾過方法および濾過装置を提供することである。本発明の他の課題や特徴は、以下の説明を添付図と照らし合わせて読むことによりより完全なものになる。
上記課題の達成のために、請求項1の発明は、ペーストを収容する鉛直方向の円筒と、円筒の下部に固定されたフィルタと、円筒内のペーストを吸引する減圧容器および減圧ポンプからなる吸引装置とを用いて、円筒内のペーストを吸引してフィルタにより濾過する方法において、フィルタ上の不均一な濾過の進行によって生じたフィルタ表面の露出部に、フィルタ上の他の部分に残存するペーストを移動させ、フィルタ表面の露出部をペーストで覆い、フィルタの位置での吸引力の減少を避けている。
また、請求項2の発明は、ペーストを収容する鉛直方向の円筒と、円筒の下部に固定されたフィルタと、円筒内のペーストを吸引する減圧容器および減圧ポンプからなる吸引装置とを用いて、円筒内のペーストを吸引してフィルタにより濾過する方法において、フィルタ上のペースト表面を被覆して、ペースト表面と大気との接触を避けている。
そして請求項3の発明は、ペーストを収容する鉛直方向の円筒と、円筒の下部に固定されたフィルタと、円筒内のペーストを吸引する減圧容器および減圧ポンプからなる吸引装置とを有し、円筒内のペーストを吸引してフィルタにより濾過する濾過装置において、フィルタ上のペースト表面に被覆体を被せ、ペースト表面と大気との接触を避けている。
請求項4の発明は、ペーストを収容する鉛直方向の円筒と、円筒の下部に固定されたフィルタと、円筒内のペーストを吸引する減圧容器および減圧ポンプからなる吸引装置とを有し、円筒内のペーストを吸引してフィルタにより濾過する濾過装置において、濾過装置にペーストに対して振動を与える加振機構を付加し、フィルタ上のペーストに振動を与えることによって、フィルタ上で均一な濾過の進行を促している。
上記の被覆体は、請求項5では、円筒内で移動可能な気密シートとし、請求項6では、円筒内で鉛直方向に移動可能な円板としている。
上記の円板は、付属の機構として、請求項7では、回転もしくは回動させる駆動機構を有しており、請求項8では、振動を与える加振機構を有している。
さらに、請求項9において、円筒は、高さ方向の中央部で絞った形状とされており、請求項10において、高さ方向の中央部で絞った円筒は、ペーストに対して振動を与える加振機構を有している。
請求項1の濾過方法によれば、フィルタの露出部がペーストの移動によって覆われ、ペーストの孔からの大気の吸入が避けられるため、吸引濾過時の吸引圧力の低下がなくなって、濾過速度の低下が避けられる。
請求項2の濾過方法によれば、フィルタ上のペースト表面が被覆され、ペースト表面と大気との接触が避けられるため、吸引濾過時の吸引圧力の低下がなくなり、濾過速度の低下が回避でき、さらにペースト表面と大気との接触が避けられるため、ペースト中の揮発溶剤の揮散や、濾過中のペーストの乾燥が防止でき、これによってペーストの粘度が高くなり、流動性が低下して、濾過速度が低下することも避けられる。
請求項3の濾過装置によれば、フィルタ上のペースト表面が被覆体によって被覆され、ペースト表面と大気との接触が避けられるため、吸引濾過時の吸引圧力の低下がなく、濾過速度の低下が回避でき、さらにペースト表面と大気との接触が避けられるため、ペースト中の揮発溶剤の揮散や、濾過中のペーストの乾燥が防止でき、これによってペーストが乾燥してその粘度が高くなり、流動性が低下して、濾過速度が低下することも避けることができる。
請求項4の濾過装置によれば、ペーストを加振する加振機構が付加されているため、振動によってペーストの粘度が均一化し、局部的な粘度の上昇や凝集による濾過速度の低下が回避できる。この結果、フィルタの全域でペーストの吸引濾過が均等に進行するため、フィルタ上でのペーストの部分的な孔あきが無くなり、吸引濾過時の吸引圧力の低下や、濾過速度の低下が回避できる。
請求項5の濾過装置によれば、被覆体が円筒内で移動可能なフイルム状の気密シートにより構成され、ペーストの上面が気密シートによって隙間のない状態として簡単に被覆できるため、これによってペースト表面と大気との接触が避けられ、吸引濾過時の吸引圧力の低下がなくなり、濾過速度の低下が回避でき、さらにペースト表面と大気との接触が避けられるため、ペースト中の揮発溶剤の揮散や、濾過中のペーストの乾燥が防止でき、これにより濾過中にペーストの粘度が高くなり、流動性が低下して、濾過速度が低下することも避けられる。
請求項6の濾過装置によれば、被覆体が円筒内で鉛直方向に移動可能な円板によって構成され、ペーストの高さが円板により平坦に規制され、かつペーストの表面が大気に触れないよう気密になっているため、仮にペーストの濾過がフィルタの面で不均一のまま進行したとしても、フィルタが部分的に露出せず、大気開放されることもなく、吸引濾過が安定に続けられる。また円板の自重によってペーストが吸引濾過の方向に加圧されるため、濾過の速度が向上する。
請求項7の濾過装置によれば、駆動機構が円板に回転運動を与えるため、フィルタ上のペーストにせん断力が作用し、局部的な粘度上昇や凝集による濾過速度の低下を避けることができる。濾過速度の低下を避けることによって、濾過処理時間の短縮が図られる他、凝集の解消によって濾過されないペーストの体積を減少させ、濾過収率を高めるといった効果が得られる。
請求項8の濾過装置によれば、上記の請求項4の効果、すなわちペーストの加振、振動によってペーストの粘度が均一化し、局部的な粘度の上昇や凝集による濾過速度の低下が回避でき、フィルタの全域でペーストの吸引濾過が均等に進行するため、フィルタ上でのペーストの部分的な孔あきが無くなり、吸引濾過時の吸引圧力の低下や、濾過速度の低下が回避できる、という効果に加えて、上記の請求項6の効果、すなわちペーストの高さが円板により平坦に規制され、かつペーストの表面が大気に触れないよう気密になっているため、ペーストの濾過がフィルタの面で不均一のまま進行したとしても、フィルタが部分的に露出せず大気開放されず、吸引濾過が安定に続けられ、また、円板の自重によってペーストが吸引濾過の方向に加圧されるため、濾過の速度が向上する、という効果の相乗効果が同時に得られる。
請求項9の濾過装置によれば、円筒の高さ方向の中央部が絞った形状となっているため濾過の進行に従い、ペースト表面の大気に露出している部分が絞り部に近づき、次第に露出部の面積が減少し、これによっても、ペースト表面と大気との接触を減少できるため、濾過中にペーストが乾燥して粘度が高くなり流動性が低下して濾過速度が低下することが抑えられる。
請求項10の濾過装置によれば、上記の請求項9の効果、つまり濾過の進行にともなうースト表面の露出部面積の減少の他に、ペーストの加振、振動の効果、すなわちペーストの粘度が均一化し、局部的な粘度の上昇や凝集による濾過速度の低下が回避でき、フィルタの全域でペーストの吸引濾過が均等に進行するため、フィルタ上でのペーストの部分的な孔あきが無くなり、吸引濾過時の吸引圧力の低下や、濾過速度の低下が回避できる。
本発明の各実施例の前提となる濾過装置を正面から見た断面図である。 濾過装置においてペーストの表面にフィルタ表面が露出した状態を示す円筒の部分的な断面図である。 本発明の実施例1を示す円筒の部分の断面図である。 本発明の実施例2を示す円筒の部分の断面図である。 本発明の実施例3を示す円筒の部分の断面図である。
本発明においては、フィルタ上面に貯留されたペーストが、一様に濾過されないことによって生じるペースト表面へのフィルタの部分的な露出を避けることが第一義であり、その対策を採るにあたり、ペーストに気泡を混入しないこと、生産性を低下させないこと、を要件としている。
まず、上記フィルタの部分的露出が生じる原因は、ペーストの不均一な吸引によるペースト表面の波打ちである。ペーストの不均一な吸引の原因は、フィルタの部分的目詰まりが主であるが、一定寸法以上の異物等を濾過するフィルタの原理上、かかる目詰まりが生じることは避け得ない。
これによって生じるペースト表面の波打ちに関しては、一つにはペーストの残存量が少ないことがあり、常に多量のペーストが貯留されていれば、ペースト表面に深い窪みができず、フィルタ表面が部分的に露出することは稀である。深い窪みを避けるためには、常に一定量以上のペーストをフィルタ上に貯留しておくことが望ましく、そのためには密閉容器などを用いず、ペースト表面を常に開放しておくか、容易に開閉できる表面封止手段を採用し、常時ペーストを追加供給可能とすべきである。それでも、濾過するペーストの品種が切り替わる場合などは、フィルタ上のペーストを濾過し尽くす必要があり、常に一定以上の貯留量を保つという手段だけでは不十分である(請求項1に関連する説明)。
ペースト表面の波打ちに関しては、ペーストの粘度も影響する。ペーストの粘度が高くなると、流動性が損われ、重力と表面張力とにより、あるべき水平面の状態に復元することが困難となる。粘度上昇の対策として、ペースト表面からの溶剤など揮発成分の揮散を防ぐため、表面を覆うことが一対策となる(請求項2に関連する説明)。
また、ペーストに振動を加えると、丁度、地震によって砂地の地盤が液状化するがごとく、粘度が下がり、表面の波打ちも均されやすくなる。このようなペースト粘度対策は、ペーストの貯留量を維持できない場合に、特に有効である(請求項4、請求項8、請求項10に関連する説明)。
ペースト表面からの揮発成分の揮散を防止策として、ペースト表面を揮散ガスバリア性のある被覆体として気密シート(フィルム)で覆う手段が採用できる。このような気密シート(フィルム)を用いれば、その上からへらなどで表面の波打ち状態を平滑化する場合にも、気泡を混入することが避けられる(請求項3、請求項5に関連する説明)。
ペースト表面を気密シート(フィルム)で覆う代わりに、ペースト表面を円板で覆う手段も採用できる。円板を採用した場合、ペースト表面からの揮発成分の揮散を避けられると共に、ペースト表面が円板の下面に密着するので、波打ち状態は発生せず、フィルタと円板との間に挟まれたペーストの層内で流動が起こり、ペーストの残存高さは均等に減少し、濾過を終えることができる。円板は、その上面に適宜取っ手等を設けることにより、容易に脱着させられ、また、重量を増加することで、フィルタ下方からの吸引に加えて、上方からの円板の自重による加圧で濾過速度を増大することができる。また、円板を回転(一方向連続)もしくは回動(左右交互に回る)駆動機構により駆動すれば、ペーストの貯留量が少なくなった場合の濾過をペーストにせん断力を与えることで促進することができる(請求項6、請求項7に関連する説明)。
ペースト表面をシートや円板で覆う代わりに、鉛直方向の円筒の高さの中央部を細く絞った筒にペーストを貯留する手段も採用できる。かかる円筒を使用した場合、ペーストの貯留量に対する表面の高さを高く維持することができ、ペーストの自重が絞った部分からフィルタの中心部分に加圧され、全周縁に拡散するため、濾過速度を増大することができる。円筒の高さの中央部にくびれがあれば、ペーストの貯留量が少なくなったときに、ペースト表面がくびれの近くに位置すれば、大気との接触面積を減少でき、揮発成分の揮散を減少できる。さらに加振機構を併用することによって、断面積が一定でない円筒の内部で、ペーストの流下を円滑に進めることができる(請求項9、請求項10に関連する説明)。
以下、実施例1、実施例2および実施例3に共通して用いる濾過装置や濾過条件の詳細を図面とともに記載する。ただし、図面は解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
図1は、実施例1〜3に共通して用いる濾過装置の具体例を示す。濾過装置は、内径約140mm、高さ約90mm、材質ステンレスの円筒1の下部に、一例としてメッシュ45μmのフィルタ2を有し、さらに、フィルタ2の下に、漏斗4、容量約2.5リットル程度の受け容器5、受け容器5を置く台6、受け容器5および台6を気密状態として収納する減圧容器7からなる。なお、フィルタ2は、円筒1の内部で、格子状またはリング状のフィルタ支え3により取り付けられている。
そして、減圧容器7に減圧ポンプ8として排気能力100L/minのロータリーポンプが繋がれている。ここで減圧容器7および減圧ポンプ8は、吸引装置13を構成している。
円筒1、フィルタ2、フィルタ支え3および漏斗4は、気密性を担保するために、減圧容器7にねじで接合し、外からビニールテープなどで巻くか、またはパッキン付きのフランジなどを用いて、ねじ止めされている。また、濾過装置の各部の材質は、好ましくはステンレスであるが、特にそれに限定されるものではない。フィルタ2のメッシュ寸法もペースト性状に応じて任意に設定できることは言うまでもない。
本実施例で使用した原液つまり濾過前のペーストP1は、導電路形成用ペーストとして固体粒子としての粒径数μmのAg粉とエポキシ樹脂とモノエポキシ系に代表される希釈剤などとを混合したものであり、粘度が50回転時で9.0〜13.0Pa.secであるが、これに限らず、種々のペーストも処理対象となり得る。円筒1に初回に投入されるペーストP1の量は、約1.0リットルであり、一処理あたりに濾過するペーストP1の総量は、約2.0リットルである。
濾過時に、減圧ポンプ8の作動により、減圧容器7の内部の圧力は、約0.1MPaに保たれる。濾過速度は0.03〜0.7L/min程度である。
図2は、以上の条件で濾過を進めた場合に生じる従来技術の不具合を示す。フィルタ2上にある濾過前のペーストP1は、減圧容器7の吸引によってフィルタ2を通過し、濾液つまり濾過後のペーストP2として受け容器5の内部に収納される。この吸引濾過によって、ペーストP1中に固体粒子の異物や凝集物が存在すると、それらは、フィルタ2上で留まるため、その部分で十分な吸引濾過が行なわれない。既に記載したように、異物や凝集物の近くにあるペーストP1は他の部分に比べてペーストP1の濾過速度が遅くなり、ペーストP1の高さがフィルタ2上で不均一になる。この現象によって、局所的にフィルタ2上にペーストP1が無くなり、減圧容器7は、フィルタ2上でペーストP1の無い孔あき部分により大気開放状態となり、それ以降ペーストP1の濾過は、十分に行なわれなくなるという不具合が生じる。
以下の実施例は、上記の従来技術の不具合を解決するとともに、本発明の課題を具体的に実現する。
図3は、本発明の実施例1による濾過装置の円筒部分を示しており、基本構成は、図1と共通である。実施例1の濾過装置の特徴は、フィルタ2上に載せた濾過前のペーストP1の表面に、被覆体としてラップのような柔軟なフィルム状の気密シート9を円筒1の内面で隙間のないように覆い被せていることである。
まず、吸引濾過のために、減圧容器7の内部を減圧ポンプ8により適当な真空状態とすると、減圧容器7の内部つまりフィルタ2の下面側とフィルタ2の上面側との間に圧力差が生じる。フィルタ2の上面には、濾過前のペーストP1が載っており、それがフィルタ2を通過し、濾過後のペーストP2となって受け容器5に回収される。フィルタ2の上面に残った異物や凝集物などが存在する場所では、それ以上濾過が進まないため、フィルタ2の全面で見ると、ペーストP1の高さは一様に減少しない。濾過が速い場所では、フィルタ2が露出するが、ペーストP1の上面が気密シート9で覆われているため、フィルタ2の露出部分は、大気に開放されない。そのため、フィルタ2の露出部分以外の部分で、所定の圧力差のもとで引き続き吸引濾過が継続される。このようなフィルム状の気密シート9を用いれば、その上からへらなどでペーストP1の表面の波打ち状態を平滑化する場合にも、気泡を混入することが避けられる点で有利となる。
また、実施例1の濾過装置は、吸引濾過の速度を向上させる目的で、ペーストP1に振動を与える加振機構11を具備している。加振機構11は、一例として円筒1の側面に取り付けられており、吸引濾過中に、円筒1の内部のペーストP1に振動を与えることによって、フィルタ2上の不均一な濾過の進行によって生じるフィルタ2の表面の露出部をフィルタ2上の他の部分に残存するペーストP1の振動移動によって覆い、吸引装置13の吸引力の減少を避けている。
実施例1では、濾過装置に、気密シート9および加振機構11が設けられているが、濾過装置に、気密シート9または加振機構11のいずれか一つのみを設けて、実施することもできる。
図4は、本発明の実施例2による濾過装置の円筒部分を示しており、基本構成は、図1と共通である。実施例2の濾過装置の特徴は、フィルタ2上に載せたペーストP1の表面に、被覆体として上下動可能な円板10を円筒1の内面に対して隙間のないように覆い被せていることである。
上述したように、減圧ポンプ8により減圧容器7が減圧されると、フィルタ2上のペーストP1は吸引濾過され始める。ペーストP1中の異物や凝集物などは、フィルタ2の上面に留まるため、その箇所ではそれ以降、吸引濾過が十分に進まない。このため、ペーストP1の高さが不均一のまま減少していき、ついにはフィルタ2が部分的に露出することがある。フィルタ2が部分的に露出すると、大気開放されるが、実施例2では、円板10がペーストP1の上面を覆い、気密性が保たれているため、フィルタ2の部分的な露出が発生せず、吸引濾過が続けられる。円板10は、その自重によってペーストP1を加圧するため、自重によっても吸引濾過の速度を向上させるようにも働く。
そして、必要に応じて、円板10に駆動機構12が付属している。回動運動付与用の駆動機構12は、図示しない上下案内手段によって上下動自在に支持されており、吸引濾過の進行にともなう円板10と共に下降して、円板10に一方向の回転運動もしくは往復の回動運動をさせることによって、ペーストP1にせん断力を与え、フィルタ2に対するペーストP1の通過を促進し、均一で無駄の少ない吸引濾過を行わせる。
実施例2でも、濾過装置に、加振機構11が設けられているが、加振機構11や駆動機構12は、いずれも必要に応じて設けられる。
図5は、本発明の実施例3による濾過装置の円筒部分を示しており、基本構成は、図1と共通である。実施例3の濾過装置の特徴は、円筒1の略中央部分を絞った形状とし、絞ったネック部分より上方を上向きの漏斗状、ネック部分より下方を下向きの漏斗状としていることである。
上述したように、減圧ポンプ8で減圧容器7の内部を減圧すると、フィルタ2上のペーストP1は、吸引濾過され始める。円筒1のほぼ中央部が絞られていると、ペーストP1の貯留量に対する表面の高さを高く維持することができ、ペーストP1の自重が絞った部分からフィルタ2の中心部分に加圧され、全周縁に拡散するため、濾過速度を増大することができ、吸引濾過の進行にともなってペーストP1の表面によって外気に接する面積が小さくなるため、ペーストP1中の揮発成分の揮散を減少でき、局所的な粘度変化が抑制される。
さらに実施例3では、円筒1に加振機構11が付属しているため、フィルタ2上に留まったペーストP1を一様にす均すことができ、効率的な吸引濾過が可能となる。
実施例3においても、実施例1の柔軟な気密シートは上向きの漏斗状の部分で利用することもできる。
本発明は、ある程度の粘性を有する上記例以外のペーストのような粘性流動体を濾過して、その中の一定の大きさ以上の固体粒子などの異物を取り除く必要がある分野でも広く利用できる。
1 円筒
2 フィルタ
3 フィルタ支え
4 漏斗
5 受け容器
6 台
7 減圧容器
8 減圧ポンプ
9 気密シート
10 円板
11 加振機構
12 駆動機構
13 吸引装置
P1 濾過前のペースト
P2 濾過後のペースト

Claims (10)

  1. ペーストを収容する鉛直方向の円筒と、円筒の下部に固定されたフィルタと、円筒内のペーストを吸引する減圧容器および減圧ポンプとからなる吸引装置を用いて、円筒内のペーストを吸引してフィルタにより濾過する方法において、
    フィルタ上の不均一な濾過の進行によって生じたフィルタ表面の露出部に、フィルタ上の他の部分に残存するペーストを移動させ、フィルタ表面の露出部をペーストで覆い、フィルタの位置での吸引力の減少を避ける、ことを特徴とする濾過方法。
  2. ペーストを収容する鉛直方向の円筒と、円筒の下部に固定されたフィルタと、円筒内のペーストを吸引する減圧容器および減圧ポンプとからなる吸引装置を用いて、円筒内のペーストを吸引してフィルタにより濾過する方法において、
    フィルタ上のペースト表面を被覆して、ペースト表面と大気との接触を避ける、ことを特徴とする濾過方法。
  3. ペーストを収容する鉛直方向の円筒と、円筒の下部に固定されたフィルタと、円筒内のペーストを吸引する減圧容器および減圧ポンプとからなる吸引装置を有し、円筒内のペーストを吸引してフィルタにより濾過する濾過装置において、
    フィルタ上のペースト表面に被覆体を被せ、ペースト表面と大気との接触を避ける、ことを特徴とする濾過装置。
  4. ペーストを収容する鉛直方向の円筒と、円筒の下部に固定されたフィルタと、円筒内のペーストを吸引する減圧容器および減圧ポンプとからなる吸引装置を有し、円筒内のペーストを吸引してフィルタにより濾過する濾過装置において、
    濾過装置に、ペーストに対して振動を与える加振機構を付加し、フィルタ上のペーストに振動を与えることによって、フィルタ上で均一な濾過の進行を促す、ことを特徴とする濾過装置。
  5. 被覆体を円筒内で移動可能な気密シートとする、ことを特徴とする請求項3記載の濾過装置。
  6. 被覆体を円筒内で鉛直方向に移動可能な円板とする、ことを特徴とする請求項3記載の濾過装置。
  7. 円板に、回転もしくは回動させる駆動機構を付属させる、ことを特徴とする請求項6記載の濾過装置。
  8. 円板に、振動を与える加振機構を付属させる、ことを特徴とする請求項6記載の濾過装置。
  9. 円筒を高さ方向の中央部で絞った形状とする、ことを特徴とする請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、または請求項8記載の濾過装置。
  10. 高さ方向の中央部で絞った円筒に、ペーストに対して振動を与える加振機構を付属させる、ことを特徴とする請求項9記載の濾過装置。
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