JP2011159559A - 燃料電池に用いられる固体高分子電解質膜の機械的劣化を予測する方法、および、劣化予測装置 - Google Patents

燃料電池に用いられる固体高分子電解質膜の機械的劣化を予測する方法、および、劣化予測装置 Download PDF

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Abstract

【課題】燃料電池に用いられる固体高分子電解質膜の機械的劣化を予測する。
【解決手段】固体高分子電解質膜の応力−歪み曲線に基づいて、固体高分子電解質膜が塑性変形して破断に至るまでの破断エネルギを算出する破断エネルギ算出工程と、固体高分子電解質膜が膨潤・収縮したときに、膨潤・収縮の1サイクルについて、固体高分子電解質膜の塑性変形によって吸収される塑性吸収エネルギを算出する塑性吸収エネルギ算出工程と、破断エネルギ、および、塑性吸収エネルギに基づいて、固体高分子電解質膜が破断するまでの膨潤・収縮のサイクル数を算出するサイクル数算出工程と、を備える。
【選択図】図3

Description

本発明は、燃料電池に用いられる固体高分子電解質膜の膨潤・収縮による機械的劣化を予測する技術に関するものである。
燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応によって発電する燃料電池がエネルギ源として注目されている。この燃料電池には、電解質膜として固体高分子膜(固体高分子電解質膜)を用いた固体高分子型燃料電池がある。そして、従来、燃料電池について、固体高分子電解質膜の寿命を予測する種々の技術が提案されている。
例えば、下記特許文献1には、開回路放置試験とクロスオーバー量測定とを交互に繰り返す工程と、クロスオーバー量が所定値に達するまでに、燃料電池から排出されたフッ素の積算量を求める工程と、発電試験において排出されるフッ素の排出速度を求める工程と、フッ素の積算量と排出速度とに基づいて、高分子膜の寿命を算出する工程と、を含むことを特徴とする高分子膜の寿命予測試験方法が記載されている。この方法によれば、固体高分子電解質膜の化学的劣化による寿命を予測することができる。
特開2007−311027号公報 特開2009−26567号公報
しかし、上記特許文献1に記載された技術では、高分子膜の寿命予測に際し、固体高分子電解質膜の機械的劣化については考慮されていなかった。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池に用いられる固体高分子電解質膜の機械的劣化を予測する技術を提供することを目的とする。なお、本明細書において、「燃料電池」という文言は、電解質膜として固体高分子電解質膜を用いた「固体高分子型燃料電池」を意味するものとする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
燃料電池に用いられる固体高分子電解質膜の機械的劣化を予測する方法であって、
前記固体高分子電解質膜の応力−歪み曲線に基づいて、前記固体高分子電解質膜が塑性変形して破断に至るまでの破断エネルギを算出する破断エネルギ算出工程と、
前記固体高分子電解質膜が膨潤・収縮したときに、該膨潤・収縮の1サイクルについて、前記固体高分子電解質膜の塑性変形によって吸収される塑性吸収エネルギを算出する塑性吸収エネルギ算出工程と、
前記破断エネルギ、および、前記塑性吸収エネルギに基づいて、前記固体高分子電解質膜が破断するまでの前記膨潤・収縮のサイクル数を算出するサイクル数算出工程と、
を備える方法。
周知の通り、固体高分子電解質膜は、その材料に固有の弾性係数を有しており、固体高分子電解質膜に加えられる応力が弾性限界以下であって、歪み量が弾性領域内である場合には(弾性歪み)、その応力を取り除くことによって、固体高分子電解質膜は、弾性変形によって元の形状に収縮する。しかし、固体高分子電解質膜に加えられる応力が弾性限界を超えて、歪み量が塑性領域に達すると、固体高分子電解質膜は、塑性変形し(塑性歪み)、その応力が取り除かれて収縮しても、弾性歪みのみが回復され、塑性歪みは永久歪みとして固体高分子電解質膜に残留する。つまり、塑性変形によって、固体高分子電解質膜には、塑性吸収エネルギが吸収されて蓄積される。さらに、固体高分子電解質膜に加えられる応力が破断応力に達して、すなわち、固体高分子電解質膜に加えられる歪みが破断歪みに達して、固体高分子電解質膜に蓄積された塑性吸収エネルギの総和が破断エネルギに達すると、固体高分子電解質膜は破断する。
ところで、燃料電池では、発電、すなわち、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応によって水(生成水)が生成される。このため、燃料電池に備えられる固体高分子電解質膜は、燃料電池の起動および停止の繰り返しによって、膨潤・収縮を繰り返す。このとき、固体高分子電解質膜の膨潤量(歪み量)は、弾性限界を超えて塑性領域に達し、塑性変形する。そして、固体高分子電解質膜には、塑性吸収エネルギが蓄積される。なお、燃料電池に備えられた固体高分子電解質膜の膨潤時、すなわち、燃料電池による発電時には、その歪み量は、常に塑性領域に達する。
適用例1の方法では、固体高分子電解質膜の上記破断エネルギ、および、上記塑性吸収エネルギに基づいて、換言すれば、上記破断エネルギを上記塑性吸収エネルギによって除することによって、固体高分子電解質膜が破断するまでの上記サイクル数を概算的に算出する。そして、この算出されたサイクル数と、実際の膨潤・収縮のサイクル数とを比較することによって、燃料電池に用いられる固体高分子電解質膜の機械的劣化を予測することができる。なお、適用例1の方法では、固体高分子電解質膜の膨潤・収縮の各サイクルについての塑性吸収エネルギは、それぞれ、ほぼ等しいものとしている。
[適用例2]
適用例1記載の方法であって、
前記応力−歪み曲線は、加湿環境下における前記固体高分子電解質膜について測定された応力−歪み曲線であり、
前記塑性吸収エネルギ算出工程は、
乾燥環境下における前記固体高分子電解質膜の平面方向の収縮量εdを取得する工程と、
前記加湿環境下における前記固体高分子電解質膜の平面方向の膨潤量εwを取得する工程と、
前記加湿環境下における前記応力−歪み曲線を参照して、降伏点における前記固体高分子電解質膜の歪み量εbを取得する工程と、
前記加湿環境下における前記応力−歪み曲線を参照して、前記固体高分子電解質膜の降伏応力Sbを取得する工程と、
下記式によって、前記塑性吸収エネルギEを算出する工程と、
を含む方法。
E≒(εw−εd−εb)×Sb
適用例2の方法によって、燃料電池に用いられる固体高分子電解質膜の機械的劣化を、比較的簡易に近似的に予測することができる。なお、本適用例において、「乾燥環境下」および「加湿環境下」における温度や湿度は、任意に設定可能である。これらの値を燃料電池の使用環境に適合させることによって、燃料電池に用いられる固体高分子電解質膜の機械的劣化を、より精度良く予測することができる。
[適用例3]
適用例1または2記載の方法であって、
前記固体高分子電解質膜は、前記固体高分子電解質膜の表面に対して圧力が加えられた状態で使用される固体高分子電解質膜であり、
前記サイクル数算出工程は、前記固体高分子電解質膜の表面に対して前記圧力が加えられた状態における前記固体高分子電解質膜の含水量に基づいて定められた補正係数を用いて、前記塑性吸収エネルギまたは前記サイクル数を補正する工程を含む、
方法。
燃料電池は、一般に、固体高分子電解質膜の両面に、それぞれ、アノード、および、カソードを接合してなる膜電極接合体を、集電板によって挟持することによって構成される。つまり、燃料電池において、固体高分子電解質膜は、その表面に対して圧力が加えられた状態で使用される。このため、実際に燃料電池に備えられた固体高分子電解質膜の膨潤量は、固体高分子電解質膜の表面に対して圧力が加えられていない場合よりも小さい。したがって、適用例3の方法によって、実際に燃料電池に用いられている状態における固体高分子電解質膜の機械的劣化を、比較的精度良く予測することができる。なお、上記補正係数は、実験的、あるいは、解析的に求めることができる。
[適用例4]
燃料電池に備えられた固体高分子電解質膜の劣化を予測する劣化予測装置であって、
前記燃料電池の起動および停止の繰り返しによって、前記固体高分子電解質膜が膨潤・収縮したときの、前記固体高分子電解質膜が破断するまでの前記膨潤・収縮のサイクル数を記憶する記憶部と、
前記燃料電池の起動回数をカウントする起動回数カウント部と、
前記サイクル数、および、前記起動回数に基づいて、前記固体高分子電解質膜の機械的劣化を予測する劣化予測部と、
を備える劣化予測装置。
適用例4の劣化予測装置において、上記記憶部には、例えば、上述した適用例3の方法によって求められた上記サイクル数が記憶される。適用例4の劣化予測装置では、上記サイクル数、および、上記起動回数に基づいて、燃料電池に備えられた固体高分子電解質膜の機械的劣化を予測することができる。例えば、上記起動回数と上記サイクル数との差を算出したり、上記起動回数と上記サイクル数の商を算出したりすることによって、燃料電池に備えられた固体高分子電解質膜が破断するまでの残寿命や、固体高分子電解質膜の機械的劣化の程度を、予測、推定することができる。
[適用例5]
適用例4記載の劣化予測装置であって、さらに、
前記劣化予測部による予測結果に基づいて、前記固体高分子電解質膜の機械的劣化の程度、および、前記固体高分子電解質膜が破断するまでの残寿命の少なくとも一方を表示する表示部を備える、
劣化予測装置。
適用例5の劣化予測装置では、燃料電池のユーザが上記表示部を見ることによって、燃料電池に備えられた固体高分子電解質膜の機械的劣化の程度、および、破断するまでの残寿命の少なくとも一方を視認することができる。なお、上記表示部の表示態様は、アナログ表示であってもよいし、ディジタル表示であってもよい。
[適用例6]
適用例4または5記載の劣化予測装置であって、さらに、
前記固体高分子電解質膜の化学的劣化を予測するために用いられるパラメータ値を取得するパラメータ値取得部を備え、
前記劣化予測部は、さらに、前記取得されたパラメータ値に基づいて、前記固体高分子電解質膜の化学的劣化を予測する、
劣化予測装置。
適用例6の劣化予測装置によって、燃料電池に備えられた固体高分子電解質膜の機械的劣化の予測とともに、固体高分子電解質膜の化学的劣化を予測することができる。さらに、上記パラメータ値取得部が取得するパラメータ値を適宜選択することによって、固体高分子膜を備える膜電極接合体の化学的劣化を予測するようにすることも可能である。なお、上記パラメータ値としては、種々のパラメータ値を適用することが可能である。このパラメータ値としては、例えば、燃料電池のアノードやカソードから排出される排出ガスに含まれる所定のガスやイオンの濃度や、燃料電池におけるアノードとカソードとの間の電圧(いわゆるセル電圧)等が挙げられる。
[適用例7]
適用例6記載の劣化予測装置であって、さらに、
前記劣化予測部による予測結果に基づいて、前記固体高分子電解質膜の化学的劣化の程度、および、前記固体高分子電解質膜の残寿命の少なくとも一方を表示する表示部を備える、
劣化予測装置。
適用例7の劣化予測装置では、燃料電池のユーザが上記表示部を見ることによって、燃料電池に備えられた固体高分子電解質膜の化学的劣化の程度、および、固体高分子電解質膜の残寿命の少なくとも一方を視認することができる。
[適用例8]
適用例4ないし7のいずれかに記載の劣化予測装置であって、さらに、
前記劣化予測部による予測結果が、前記固体高分子電解質膜を交換すべき予測結果である場合に、前記固体高分子電解質膜の交換を促す警告を行う警告部を備える、
劣化予測装置。
適用例8の劣化予測装置によって、燃料電池のユーザに対して、燃料電池に備えられた固体高分子電解質膜の交換を促すようにすることができる。なお、上記警告部としては、例えば、警告ランプや警告ブザーを用いることができる。
本発明は、上述した種々の特徴を必ずしも全て備えている必要はなく、その一部を省略したり、適宜、組み合わせたりして構成することができる。また、本発明は、上述の劣化予測装置としての構成の他、これを実現するコンピュータプログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体、そのプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号など種々の態様で実現することが可能である。なお、それぞれの態様において、先に示した種々の付加的要素を適用することが可能である。
本発明をコンピュータプログラムまたはそのプログラムを記録した記録媒体等として構成する場合には、上述の劣化予測装置の動作を制御するプログラム全体として構成するものとしてもよいし、本発明の機能を果たす部分のみを構成するものとしてもよい。また、記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置などコンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。
本発明の一実施例としての劣化予測装置100の概略構成を示す説明図である。 劣化予測装置100の動作処理の流れを示すフローチャートである。 本実施例の固体高分子電解質膜の機械的劣化の予測方法の概要を示すための説明図である。 本実施例における許容サイクル数の算出の流れを示すフローチャートである。 固体高分子電解質膜の各種状況下における寸法をそれぞれ模式的に示す説明図である。 変形例の一例としての固体高分子電解質膜の応力−歪み曲線を示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき以下の順序で説明する。
A.劣化予測装置の構成:
B.劣化予測装置の動作処理:
C.固体高分子電解質膜の機械的劣化の予測方法:
D.変形例:
A.劣化予測装置の構成:
図1は、本発明の一実施例としての劣化予測装置100の概略構成を示す説明図である。この劣化予測装置100は、燃料電池(固体高分子型燃料電池)を備える燃料電池システム(図示省略)に並設される。燃料電池では、発電、すなわち、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応によって水(生成水)が生成される。このため、燃料電池に備えられる固体高分子電解質膜は、燃料電池の起動および停止の繰り返しによって、膨潤・収縮を繰り返す。また、燃料電池に備えられる固体高分子電解質膜には、経時的に、化学的劣化が生じる。そこで、劣化予測装置100は、後述するように、例えば、燃料電池が備える固体高分子電解質膜の機械的劣化を予測したり、固体高分子電解質膜や膜電極接合体の化学的劣化を予測したりする。なお、これらの劣化予測方法については、後から詳述する。
図示するように、劣化予測装置100は、起動回数カウント部10と、パラメータ値取得部20と、記憶部30と、劣化予測部40と、表示部50と、警告部60と、を備える。
起動回数カウント部10は、図示しない燃料電池の起動ごとに、燃料電池の起動回数をカウントする。なお、起動回数カウント部10には、図示しないリセット操作部(例えば、リセットボタン)が設けられている。そして、このリセット操作部は、燃料電池に備えられた膜電極接合体、すなわち、固体高分子電解質膜が交換されたとき、あるいは、燃料電池が交換されたときに、累算された燃料電池の起動回数を0(ゼロ)にリセットすべく、ユーザによって操作される。そして、起動回数カウント部10は、上記リセット操作部が操作されたときに、燃料電池の起動回数を、0(ゼロ)にリセットする。
パラメータ値取得部20は、燃料電池システムから、固体高分子電解質膜や膜電極接合体の化学的劣化を予測するために用いられる各種パラメータ値を取得する。このパラメータ値としては、例えば、燃料電池のアノードやカソードから排出される排出ガスに含まれる所定のガスやイオンの濃度や、燃料電池におけるアノードとカソードとの間の電圧(いわゆるセル電圧)等が挙げられる。
記憶部30は、固体高分子電解質膜の機械的劣化や、固体高分子電解質膜や膜電極接合体の化学的劣化を予測するために用いられる各種データを記憶する。記憶部30は、例えば、固体高分子電解質膜の機械的劣化を予測するために用いられるデータの1つとして、燃料電池の起動および停止の繰り返しによって、固体高分子電解質膜が膨潤・収縮したときに、固体高分子電解質膜が破断するまでに許容される膨潤・収縮のサイクル数である許容サイクル数を記憶する。この許容サイクル数は、後述する方法によって、予め算出されている。
劣化予測部40は、記憶部30を参照して、後述するように、上述した許容サイクル数、および、起動回数カウント部10によってカウントされた燃料電池の起動回数に基づいて、燃料電池に備えられた固体高分子電解質膜の機械的劣化を予測する。また、劣化予測部40は、パラメータ値取得部20によって取得された各種パラメータ値に基づいて、固体高分子電解質膜や膜電極接合体の化学的劣化を予測する。劣化予測部40は、例えば、先述した燃料電池のアノードやカソードから排出された定ガスの濃度に基づいて、化学的劣化による固体高分子電解質膜のピンホールの有無を判断したり、燃料電池のアノードやカソードから排出された所定のイオン(例えば、固体高分子電解質膜がいわゆるフッ素系の固体高分子電解質膜である場合には、フッ素イオン)の濃度に基づいて、固体高分子電解質膜の化学的劣化を予測したり、セル電圧に基づいて、膜電極接合体における電極(触媒層)の劣化を予測することができる。
表示部50は、劣化予測部40による予測結果に基づいて、固体高分子電解質膜の機械的劣化の程度、および、固体高分子電解質膜の化学的劣化の程度を表示する。燃料電池のユーザは、この表示部50を見ることによって、固体高分子電解質膜の機械的劣化の程度や、化学的劣化の程度を視認することができる。なお、表示部50の表示態様は、アナログ表示であってもよいし、ディジタル表示であってもよい。
警告部60は、劣化予測部40による予測結果が、固体高分子電解質膜を交換すべき予測結果である場合に、固体高分子電解質膜の交換を促す警告を行う。警告部60としては、例えば、警告ランプや警告ブザーを用いることができる。この警告部60によって、燃料電池のユーザに対して、固体高分子電解質膜の交換を促すようにすることができる。
B.劣化予測装置の動作処理:
図2は、劣化予測装置100の動作処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、燃料電池が起動されるごとに実行される処理である。
劣化予測装置100は、燃料電池が起動されると、起動回数カウント部10によって、燃料電池の起動回数をカウントする(ステップS100)。そして、劣化予測装置100は、劣化予測部40によって、記憶部30を参照し、燃料電池の起動回数が許容サイクル数よりも大きいか否かを判断する(ステップS110)。燃料電池の起動回数が許容サイクル数よりも大きい場合には(ステップS110:YES)、劣化予測装置100は、警告部60によって、ユーザに対して、固体高分子電解質膜を交換すべき警告を行う(ステップS150)。例えば、警告ランプを点灯あるいは点滅させたり、警告ブザーを鳴らしたりする。燃料電池の起動回数が許容サイクル数よりも大きい場合には、固体高分子電解質膜に、継続使用に不適な程度の機械的劣化が生じていると考えられるからである。
一方、ステップS110において、燃料電池の起動回数が許容回数以下である場合には(ステップS110:NO)、劣化予測装置100は、パラメータ値取得部20によって、固体高分子電解質膜の化学的劣化を予測するために用いられる各種パラメータ値を取得する(ステップS120)。そして、劣化予測装置100は、劣化予測部40によって、記憶部30を参照し、取得した各種パラメータ値に基づいて、固体高分子電解質膜に、継続使用に不適な程度の化学的劣化が生じているか否かを判断する(ステップS130)。上記パラメータ値としては、先に説明したように、例えば、燃料電池のアノードやカソードから排出される排出ガスに含まれる所定のガスやイオンの濃度や、燃料電池におけるアノードとカソードとの間の電圧(いわゆるセル電圧)等が挙げられる。
ステップS130において、劣化予測部40は、先に説明したように、例えば、燃料電池のアノードやカソードから排出された定ガスの濃度に基づいて、化学的劣化による固体高分子電解質膜のピンホールの有無を判断したり、燃料電池のアノードやカソードから排出された所定のイオン(例えば、固体高分子電解質膜がいわゆるフッ素系の固体高分子電解質膜である場合には、フッ素イオン)の濃度に基づいて、固体高分子電解質膜の化学的劣化を予測したり、セル電圧に基づいて、膜電極接合体における電極(触媒層)の劣化を予測することができる。
固体高分子電解質膜に、継続使用に不適な程度の化学的劣化が生じていると判断された場合には(ステップS130:YES)、劣化予測装置100は、警告部60によって、ユーザに対して、固体高分子電解質膜を交換すべき警告を行う(ステップS150)。なお、ステップS150において、固体高分子電解質膜の機械的劣化に基づく警告方法と、化学的劣化に基づく警告方法とは、同一方法としてもよいし、別方法段としてもよい。
ステップS130において、固体高分子電解質膜に、継続使用に不適な程度の化学的劣化が生じていない場合には(ステップS130:NO)、劣化予測装置100は、表示部50に、固体高分子電解質膜の予測残寿命を表示する(ステップS140)。
本実施例では、表示部50には、ステップS110に基づく固体高分子電解質膜の機械的劣化についての予測残寿命と、ステップS130に基づく固体高分子電解質膜の化学的劣化についての予測残寿命とが別個に表示されるものとした。ステップS110に基づく固体高分子電解質膜の機械的劣化についての予測残寿命は、例えば、燃料電池の起動回数と後述する許容サイクル数との差を算出したり、燃料電池の起動回数と許容サイクル数の商を算出したりすることによって算出される。また、ステップS130に基づく固体高分子電解質膜の化学的劣化についての予測残寿命は、固体高分子電解質膜に化学的劣化が生じていない場合のパラメータ値と、固体高分子電解質膜に化学的劣化が生じている場合のパラメータ値との比較によって算出される。
その後、劣化予測装置100は、燃料電池の運転が停止されたか否かを判断する(ステップS160)。燃料電池の運転が停止された場合には(ステップS160:YES)、劣化予測装置100は、動作を終了する。一方、燃料電池の運転が停止されていない場合には(ステップS160:NO)、劣化予測装置100は、処理をステップS120に戻す。
C.固体高分子電解質膜の機械的劣化の予測方法:
図3は、先に説明した劣化予測装置100における劣化予測部40が行う、本実施例の固体高分子電解質膜の機械的劣化の予測方法の概要を示すための説明図である。固体高分子電解質膜の応力−歪み曲線(S−Sカーブ)を示した。なお、図示した応力−歪み曲線では、理解を容易にするため、塑性領域において、固体高分子電解質膜の歪み量が増大しても応力は一定であるものとした。
図3(a)に示したように、膨潤によって、固体高分子電解質膜が弾性限界を超えてさらに歪み、塑性領域において、固体高分子電解質膜の歪み量が破断歪みに達すると、固体高分子電解質膜は破断する。図3(a)において、応力−歪み曲線で囲まれた領域、すなわち、ハッチングを付して示した領域の面積が、固体高分子電解質膜が塑性変形して破断に至るまでの破断エネルギとなる。
周知の通り、固体高分子電解質膜は、その材料に固有の弾性係数を有しており、固体高分子電解質膜に加えられる応力が弾性限界以下であって、歪み量が弾性領域内である場合には(弾性歪み)、その応力を取り除くことによって、固体高分子電解質膜は、弾性変形によって元の形状に収縮する。例えば、図3(b)において、弾性領域における点Oから点Aまでの固体高分子電解質膜の弾性歪みは、固体高分子電解質膜に加えられる応力を取り除くことによって、点Oに戻る。
しかし、固体高分子電解質膜に加えられる応力が弾性限界を超えて、歪み量が塑性領域に達すると、固体高分子電解質膜は、塑性変形し(塑性歪み)、その応力が取り除かれて収縮しても、弾性歪みのみが回復され、塑性歪みは永久歪みとして固体高分子電解質膜に残留する。例えば、図3(b)において、膨潤によって、点O→点A→点Bのように塑性変形した固体高分子電解質膜は、応力が取り除かれて収縮しても、点Cにしか戻らない。つまり、塑性変形によって、固体高分子電解質膜には、塑性吸収エネルギが吸収されて蓄積される。なお、燃料電池に備えられた固体高分子電解質膜の膨潤時、すなわち、燃料電池による発電時には、その歪み量は、常に塑性領域に達する。
図3(b)に示した例では、図中に矢印とともに示したように、固体高分子電解質膜が膨潤し、その後、収縮した場合(点O→点A→点B→点C)、その軌跡において、線分OAと線分BCとは平行となり、ハッチングを付して示した平行四辺形OABCの面積が、固体高分子電解質膜の膨潤・収縮の1サイクルについての塑性吸収エネルギとして、固体高分子電解質膜に蓄積される。そして、固体高分子電解質膜が、膨潤・収縮を複数サイクル繰り返し、固体高分子電解質膜に蓄積された塑性吸収エネルギの総和が破断エネルギに達すると、固体高分子電解質膜は破断する。
そこで、本実施例では、図3(a)に示した固体高分子電解質膜の破断エネルギを、図3(b)に示した固体高分子電解質膜の膨潤・収縮の1サイクルについての塑性吸収エネルギで除することによって、固体高分子電解質膜が破断するまでの膨潤・収縮のサイクル数を概算的に算出する。なお、本実施例では、固体高分子電解質膜の膨潤・収縮の各サイクルについての塑性吸収エネルギは、それぞれ、ほぼ等しいものとしている。
そして、この算出されたサイクル数に、後述する補正係数Wを乗ずることによって、許容サイクル数を算出する。なお、許容サイクル数は、先に説明したように、固体高分子電解質膜が実際に燃料電池に備えられ、燃料電池の起動および停止の繰り返しによって、固体高分子電解質膜が膨潤・収縮したときに、固体高分子電解質膜が破断するまでに許容される膨潤・収縮のサイクル数である。このため、補正係数Wは、固体高分子電解質膜が実際に燃料電池に備えられている状態を考慮して設定されている。この補正係数Wについては、後述する。
図4は、本実施例における許容サイクル数の算出の流れを示すフローチャートである。また、図5は、固体高分子電解質膜の各種状況下における寸法をそれぞれ模式的に示す説明図である。なお、図5に模式的に示した各寸法は、それぞれ、固体高分子電解質膜の平面方向の寸法を表している。
図5(a)に、室温(例えば、25(℃))、常湿(例えば、相対湿度:50(%))の環境下で切り出された固体高分子電解質膜の寸法を示した。なお、常湿とは、日本工業規格によれば、相対湿度が45〜85(%)の範囲を言う。
また、図5(b)に、収縮時(乾燥時)の固体高分子電解質膜の寸法を示した。なお、図5(b)では、図5(a)に示した固体高分子電解質膜の両面に、それぞれ、アノード、および、カソードを形成することによって膜電極接合体を作製し、この膜電極接合体の両面に、それぞれ、ガス拡散層を熱圧着して、固体高分子電解質膜が収縮した状態であって、固体高分子電解質膜の伸縮が拘束された状態の固体高分子電解質膜の寸法を示した。この乾燥環境下における固体高分子電解質膜の収縮量を収縮量εdとする。この収縮量εdの値は、例えば、固体高分子電解質膜が切り出された環境条件や、上述したガス拡散層の熱圧着の条件に応じて変化する。
また、図5(c)に、膨潤時の固体高分子電解質膜の寸法を示した。なお、図5(c)では、図5(a)に示した固体高分子膜の伸縮が拘束されていない状態で、燃料電池の運転環境下、すなわち、加湿環境下(湿潤環境下)において膨潤したときの固体高分子電解質膜の寸法を示している。
また、図5(d)に、膨潤時の固体高分子電解質膜の寸法を示した。なお、図5(d)では、固体高分子電解質膜の伸縮が拘束された状態(図5(b)参照)で、燃料電池の運転環境下、すなわち、加湿環境下(湿潤環境下)におかれたときの固体高分子電解質膜の寸法を示している。図5(b)と図5(d)との比較からも分かるように、伸縮が拘束された固体高分子電解質膜の膨潤時の寸法(図5(d))は、収縮時(乾燥時)の固体高分子電解質膜の寸法(図5(b))とほぼ等しい。この伸縮が拘束された固体高分子電解質膜が、加湿環境下において、伸縮が拘束されていなければ膨潤していたはずの仮想的な膨潤量を、加湿環境下における膨潤量εwとする。
本実施例における許容サイクル数の算出では、図4に示したように、まず、図5(b)に示した乾燥環境下における収縮量εdを取得する(ステップS200)。そして、図5(d)に示した加湿環境下における膨潤量εwを取得する(ステップS210)。また、上記加湿環境下における応力−歪み曲線を取得する(ステップS220)。これらは、予め、実験的に取得する。なお、ステップS200〜220の順序は、任意に変更可能である。
次に、上記加湿環境下における応力−歪み曲線を参照して、降伏点における固体高分子電解質膜の歪み量である降伏歪みεb、および、降伏点における固体高分子電解質膜の応力である降伏応力Sbを取得する(ステップS230)。例えば、図3(b)に示した応力−歪み曲線では、点Aが降伏点であり、点Aにおける歪み量が降伏歪みεb、点Aにおける応力が降伏応力Sbである。そして、上記加湿環境下における応力−歪み曲線に基づいて、固体高分子電解質膜の破断エネルギ(図3(a)参照)を算出する(ステップS240)。なお、ステップS230と、ステップS240との順序は、入れ替えてもよい。
次に、燃料電池の起動および停止による固体高分子電解質膜の膨潤・収縮の1サイクルについての塑性吸収エネルギEを算出する(ステップS250)。本実施例では、この塑性吸収エネルギEは、下記式(1)によって算出するものとした。
E≒(εw−εd−εb)×Sb ・・・(1)
例えば、図3(b)において、点Bにおける歪み量が上記式(1)におけるεwに相当し、点A(降伏点)における歪み量が上記式(1)におけるεbに相当し、点Oにおける歪み量が上記式(1)における(−εd)に相当し、点A(降伏点)における応力が上記式(1)におけるSbに相当する。すなわち、上記式(1)における(εw−εd−εb)は、図3(b)に描かれた平行四辺形OABCの底辺の長さに相当する。また、上記式(1)におけるSbは、図3(b)に描かれた平行四辺形OABCの高さに相当する。そして、上記式(1)において算出される塑性吸収エネルギEは、図3(b)に描かれた平行四辺形OABCの面積に相当する。
図4におけるステップS250の後、固体高分子電解質膜が破断に至るサイクル数を算出する(ステップS260)。このサイクル数は、先に説明したように、ステップS240において算出された固体高分子電解質膜の破断エネルギを、ステップS250において算出された塑性吸収エネルギEによって除することによって算出される。そして、この算出されたサイクル数に、補正係数Wを乗ずることによって、許容サイクルを算出する(ステップS270)。なお、補正係数Wは1よりも大きい値となる。上述したように、補正係数Wを用いて許容サイクル数を算出するのは、以下の理由による。
すなわち、固体高分子電解質膜が実際に燃料電池に備えられる場合には、固体高分子電解質膜を備える膜電極接合体が、集電板によって挟持され、固体高分子電解質膜の表面に対して圧力が加えられる。このため、実際に燃料電池に備えられた固体高分子電解質膜では、その表面に加えられた圧力の影響によって、加湿環境下における膨潤量εwが、固体高分子電解質膜の表面に圧力が加えられていない場合よりも小さくなる。これは、固体高分子電解質膜の表面に対して圧力が加えられている場合には、加湿環境下における固体高分子電解質膜の含水量が、固体高分子電解質膜の表面に圧力が加えられていない場合よりも少なくなるからである。そして、ステップS260において算出されたサイクル数は、固体高分子電解質膜の表面に圧力が加えられていない場合の値であり、実際に燃料電池に備えられた固体高分子電解質膜が破断するまでの膨潤・収縮のサイクル数(許容サイクル数)は、ステップS260において算出されたサイクル数より大きな値となるからである。
なお、上記補正係数Wは、固体高分子電解質膜の表面に対して圧力が加えられた状態における固体高分子電解質膜の含水量に基づいて定められ、含水量の逆数により展開される級数で表すことができる。具体的には、補正係数Wは、近似的に、下記式(2)によって求められる。
Figure 2011159559
ここで、aは、j次の展開関数である。以上の流れによって、許容サイクルは算出される。
なお、劣化予測装置100における記憶部30に記憶される許容サイクル、すなわち、図2に示した劣化予測装置100の動作処理のステップS110において参照される許容サイクルは、上記式(2)によって算出された許容サイクル数に、所定の安全率(係数)が乗じられている。この安全率は、例えば、固体高分子電解質膜や燃料電池の製造誤差やバラつきを考慮して、固体高分子電解質膜に、継続使用に不適な程度の機械的劣化が生じる前に、確実に、ユーザに対して、固体高分子電解質膜を交換すべき警告を行うことができるように設定されている。
以上説明した本実施例の劣化予測装置100によれば、燃料電池に備えられた固体高分子電解質膜が破断するまでの残寿命や、固体高分子電解質膜の機械的劣化の程度を、予測、推定することができる。また、本実施例の固体高分子電解質膜の機械的劣化の予測方法によれば、燃料電池に用いられる固体高分子電解質膜の機械的劣化を予測することができる。
また、本実施例の劣化予測装置100では、燃料電池に備えられた固体高分子電解質膜の機械的劣化の予測とともに、固体高分子電解質膜や、固体高分子膜を備える膜電極接合体の化学的劣化を予測することも可能である。
D.変形例:
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、以下のような変形が可能である。
D1.変形例1:
上記実施例では、図3に示した固体高分子電解質膜の応力−歪み曲線は、塑性領域において、固体高分子電解質膜の歪み量が増大しても応力は一定であるものとしたが、本発明は、これに限られない。
図6は、変形例の一例としての固体高分子電解質膜の応力−歪み曲線を示す説明図である。図6に示した固体高分子電解質膜の応力−歪み曲線では、図3に示した固体高分子電解質膜の応力−歪み曲線とは異なり、塑性領域においても、固体高分子電解質膜の歪み量の増大に伴い、応力も増大している。このような応力−歪み曲線を有する固体高分子電解質膜については、固体高分子電解質膜の機械的劣化の予測において、塑性吸収エネルギの算出に際して、例えば、降伏点における歪み量と破断点における歪み量との相加平均、および、降伏点における応力と破断点における応力との相加平均をそれぞれ求め、これらの値を用いて、塑性吸収エネルギの算出を行うようにすればよい。また、応力−歪み曲線が塑性領域において湾曲している場合には、塑性吸収エネルギの算出方法を、適宜、変更するようにすればよい。
また、上記実施例では、上記式(1)によって、塑性吸収エネルギEを近似的に算出するものとしたが、本発明は、これに限られない。他の方法や演算式によって、塑性吸収エネルギEの算出を行うようにしてもよい。
D2.変形例2:
上記実施例では、劣化予測装置100における表示部50は、固体高分子電解質膜の機械的劣化の程度、および、固体高分子電解質膜の化学的劣化の程度を表示するものとしたが、本発明は、これに限られない。表示部50は、固体高分子電解質膜の機械的劣化の程度、および、固体高分子電解質膜の化学的劣化の程度を表示する代わりに、あるいは、固体高分子電解質膜の機械的劣化の程度、および、固体高分子電解質膜の化学的劣化の程度を表示することに加えて、固体高分子電解質膜の残寿命を表示するようにしてもよい。
D3.変形例3:
上記実施例では、劣化予測装置100は、パラメータ値取得部20を備え、劣化予測部40は、燃料電池が備える固体高分子電解質膜の化学的劣化の予測を行うものとしたが、これを省略するようにしてもよい。
D4.変形例4:
上記実施例では、劣化予測装置100は、警告部60を備えるものとしたが、本発明は、これに限られない。劣化予測装置100において、警告部60を省略するようにしてもよい。
D5.変形例5:
上記実施例では、劣化予測装置100は、表示部50を備えるものとしたが、本発明は、これに限られない。劣化予測装置100において、表示部50を省略するようにしてもよい。
D6.変形例6:
上記実施例では、図2に示した劣化予測装置100の動作処理のステップS110において、起動回数が許容サイクル数よりも大きい場合に、ステップS150に進むものとしたが、本発明は、これに限られない。これと並行して、ステップS120にも進むものとしてもよい。
D7.変形例7:
上記実施例では、図4に示した許容サイクル数の算出に際し、ステップS270において、ステップS260において算出されたサイクル数に補正係数Wを乗ずることによって、許容サイクル数を算出するものとしたが、本発明は、これに限られない。ステップS250において塑性吸収エネルギを算出する際に、固体高分子電解質膜の膨潤量について、固体高分子電解質膜の表面に対して圧力が加えられた状態を考慮して求められた補正係数を用いて、塑性吸収エネルギを補正するようにしてもよい。この場合には、ステップS270において算出される許容サイクル数と同等のサイクル数が、ステップS260において算出されることになる。
D8.変形例8:
上記実施例では、図4に示した許容サイクル数の算出に際し、ステップS270において、上記式(2)によって求められる補正係数Wを用いるものとしたが、本発明は、これに限られない。許容サイクル数の算出に、他の補正係数を用いるものとしてもよい。また、燃料電池に備えられていない固体高分子電解質膜、すなわち、その表面に対して圧力が加えられていない状態の固体高分子電解質膜の機械的劣化を評価する場合(例えば、固体高分子電解質膜の機械的劣化についての加速試験を行う場合)には、上記実施例における補正係数Wを省略するようにしてもよい。
100…劣化予測装置
10…起動回数カウント部
20…パラメータ値取得部
30…記憶部
40…劣化予測部
50…表示部
60…警告部

Claims (8)

  1. 燃料電池に用いられる固体高分子電解質膜の機械的劣化を予測する方法であって、
    前記固体高分子電解質膜の応力−歪み曲線に基づいて、前記固体高分子電解質膜が塑性変形して破断に至るまでの破断エネルギを算出する破断エネルギ算出工程と、
    前記固体高分子電解質膜が膨潤・収縮したときに、該膨潤・収縮の1サイクルについて、前記固体高分子電解質膜の塑性変形によって吸収される塑性吸収エネルギを算出する塑性吸収エネルギ算出工程と、
    前記破断エネルギ、および、前記塑性吸収エネルギに基づいて、前記固体高分子電解質膜が破断するまでの前記膨潤・収縮のサイクル数を算出するサイクル数算出工程と、
    を備える方法。
  2. 請求項1記載の方法であって、
    前記応力−歪み曲線は、加湿環境下における前記固体高分子電解質膜について測定された応力−歪み曲線であり、
    前記塑性吸収エネルギ算出工程は、
    乾燥環境下における前記固体高分子電解質膜の平面方向の収縮量εdを取得する工程と、
    前記加湿環境下における前記固体高分子電解質膜の平面方向の膨潤量εwを取得する工程と、
    前記加湿環境下における前記応力−歪み曲線を参照して、降伏点における前記固体高分子電解質膜の歪み量εbを取得する工程と、
    前記加湿環境下における前記応力−歪み曲線を参照して、前記固体高分子電解質膜の降伏応力Sbを取得する工程と、
    下記式によって、前記塑性吸収エネルギEを算出する工程と、
    を含む方法。
    E≒(εw−εd−εb)×Sb
  3. 請求項1または2記載の方法であって、
    前記固体高分子電解質膜は、前記固体高分子電解質膜の表面に対して圧力が加えられた状態で使用される固体高分子電解質膜であり、
    前記サイクル数算出工程は、前記固体高分子電解質膜の表面に対して前記圧力が加えられた状態における前記固体高分子電解質膜の含水量に基づいて定められた補正係数を用いて、前記塑性吸収エネルギまたは前記サイクル数を補正する工程を含む、
    方法。
  4. 燃料電池に備えられた固体高分子電解質膜の劣化を予測する劣化予測装置であって、
    前記燃料電池の起動および停止の繰り返しによって、前記固体高分子電解質膜が膨潤・収縮したときの、前記固体高分子電解質膜が破断するまでの前記膨潤・収縮のサイクル数を記憶する記憶部と、
    前記燃料電池の起動回数をカウントする起動回数カウント部と、
    前記サイクル数、および、前記起動回数に基づいて、前記固体高分子電解質膜の機械的劣化を予測する劣化予測部と、
    を備える劣化予測装置。
  5. 請求項4記載の劣化予測装置であって、さらに、
    前記劣化予測部による予測結果に基づいて、前記固体高分子電解質膜の機械的劣化の程度、および、前記固体高分子電解質膜が破断するまでの残寿命の少なくとも一方を表示する表示部を備える、
    劣化予測装置。
  6. 請求項4または5記載の劣化予測装置であって、さらに、
    前記固体高分子電解質膜の化学的劣化を予測するために用いられるパラメータ値を取得するパラメータ値取得部を備え、
    前記劣化予測部は、さらに、前記取得されたパラメータ値に基づいて、前記固体高分子電解質膜の化学的劣化を予測する、
    劣化予測装置。
  7. 請求項6記載の劣化予測装置であって、さらに、
    前記劣化予測部による予測結果に基づいて、前記固体高分子電解質膜の化学的劣化の程度、および、前記固体高分子電解質膜の残寿命の少なくとも一方を表示する表示部を備える、
    劣化予測装置。
  8. 請求項4ないし7のいずれかに記載の劣化予測装置であって、さらに、
    前記劣化予測部による予測結果が、前記固体高分子電解質膜を交換すべき予測結果である場合に、前記固体高分子電解質膜の交換を促す警告を行う警告部を備える、
    劣化予測装置。
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