JP2011156477A - 異種金属4核錯体及び酸化物の製造方法 - Google Patents

異種金属4核錯体及び酸化物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】酸化触媒として有用な異種金属4核錯体及びこれを用いた酸化反応による酸化物の製造方法を提供する。
【解決手段】下式(1)で表される異種金属4核錯体。
Figure 2011156477

(式中、M及びMは、同一または異なり、周期律表第6族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、R、R、R及びRは、同一または異なり、炭素数1〜20の置換基を表し、RとR及びRとRの少なくとも1組は縮合環を形成していてもよく、k、l、m及びnは各々独立に0〜3の整数を表す。)
【選択図】図1

Description

本発明は、異種金属4核錯体と、これを用いた酸化反応による酸化物の製造方法に関する。
従来、カルボニル化合物の製造方法としては、アルコール類を酸化剤によって酸化する方法が知られている。上記酸化剤としては、例えば活性二酸化マンガン、酸化クロム(VI)−ピリジン錯体、クロム酸t−ブチル、ニクロム酸ナトリウム、四酢酸鉛、酸化セレンなどのように、極めて毒性が高い酸化剤や、高価な酸化剤などが挙げられる。
しかしながら、上記の酸化剤はその毒性等のため、酸化剤そのものの取扱いが困難である上、反応終了後の処理が複雑であるため、環境負荷が増大するおそれがあった。
一方、非特許文献1〜9には、酸素分子と、錯体を形成したバナジウム、白金、ロジウム、パラジウム、ルビジウム、コバルト、ニッケル、銅及びオスミウムなどのような遷移金属とを用いた高選択的な酸化反応が報告されている。中でも、バナジウムは種々の酸化状態を有しているため、バナジウムを用いた酸化反応が注目されている。
また、本発明者らは、3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸をリガンドとする酸化バナジウムの4核錯体を用いて、加圧下でアルコール類を酸化する方法について提案している(特許文献1)。
特開2007−222785号公報
M. Kiriharaら、Chem. Commun.、1999、1387 C.-G. Jiaら、J. Mol. Catal.、91、39 (1994) J. Martinら、Nouv. J. Chim.、8、141 (1984) T. F. Blackburnら、J. Chem. Soc., Chem. Commun.、1977、157 M. Matsumotoら、J. Org. Chem.、49、3435 (1984) T. Iwahamaら、Tetrahedron Lett.、36、6923 (1995) B. M. Choudaryら、Angew. Chem., Int. Ed.、 40、763 (2001) E. Saint-Amanら、New J. Chem.、1998、393. K. S. Colemanら、Tetrahedron Lett.、40、3723 (1999)
カルボニル化合物の製造方法については、製造コストが低く、安全性が高い製造方法が要求されていたが、上述した非特許文献では、これらの要求に対する検討は充分にされていなかった。また、特許文献1においても、加圧下で反応を行う必要があったため、反応装置に耐圧性が要求されていた。そのため、設備コストが嵩み、製造コストを低減することが困難であった。また、加圧下での反応は、安全性を損ねるおそれがあった。
本発明は、例えば酸化触媒に使用された場合に、製造コストの低減が可能であり、かつ製造時の安全性が高い異種金属4核錯体と、これを用いた酸化反応による酸化物の製造方法を提供する。
本発明の異種金属4核錯体は、式(1):
Figure 2011156477

(但し、M及びMは、周期律表第6族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、同一であっても異なっていてもよく、R、R、R及びRは、炭素数1〜20の置換基であり、同一であっても異なっていてもよく、RとR及びRとRの少なくとも1組は縮合環を形成していてもよく、k、l、m及びnは各々独立に0〜3の整数である)で表される、異種金属4核錯体である。
本発明の異種金属4核錯体によれば、例えば酸化触媒に使用すると、常圧下で反応を行うことができるため、反応装置に耐圧性が要求されない。よって、設備コストを抑えることができるため、製造コストを容易に低減できる。また、反応に加圧を必要としないため、安全性を確保できる。なお、本明細書において、「常圧」とは、0.09〜0.11MPaの範囲の圧力をいう。
前記M及びMは、Cr、Mo及びWから選択される1種以上であることが好ましい。上記異種金属4核錯体を容易に合成することができる上、本発明の異種金属4核錯体を酸化触媒に使用した場合、反応の収率を向上させることができるからである。
前記R、R、R及びRは、メチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、t−ブトキシ基、フェニル基及びピリジル基から選択される1種以上であることが好ましい。上記異種金属4核錯体を容易に合成することができる上、本発明の異種金属4核錯体を酸化触媒に使用した場合、反応の収率を向上させることができるからである。
本発明の酸化物の製造方法は、触媒を用いた酸化反応による酸化物の製造方法であって、前記触媒が、上述した本発明の異種金属4核錯体を含む酸化物の製造方法である。
本発明の酸化物の製造方法では、上記本発明の異種金属4核錯体を用いるため、上述したように製造コストを容易に低減できる。また、反応に加圧を必要としないため、安全性を確保できる。特に、上記酸化物としてカルボニル化合物を製造する場合に、上記本発明の効果が有効に発揮される。なお、本発明の「カルボニル化合物」とは、アルデヒド類、ケトン類及びカルボン酸類から選択される少なくとも1種をいう。
本発明の酸化物の製造方法では、常圧下、溶媒中で基質を酸化して前記酸化物を製造することが好ましい。溶媒中で反応を行うことにより、反応の収率を向上させることができるからである。
前記酸化反応は、酸素雰囲気下で行われることが好ましい。酸素は安価で廃棄処理が不要なため、製造コスト及び環境負荷をより低減できるからである。
また、前記酸化反応は、過酸化水素の存在下で行われてもよい。過酸化水素も安価で複雑な廃棄処理が不要であるため、製造コスト及び環境負荷をより低減できるからである。
本発明の酸化物の製造方法において、溶媒中で基質を酸化する場合は、前記溶媒が水であることが好ましい。水は安価で廃棄処理が容易なため、製造コスト及び環境負荷をより低減できるからである。
本発明の酸化物の製造方法において、溶媒中で基質を酸化する場合は、前記基質が芳香環を有する化合物であることが好ましい。本発明の異種金属4核錯体との組み合わせで反応が効率よく行われるからである。特に、基質が、ベンジル骨格を有する化合物であることが好ましい。ベンジル位の炭素を酸素や過酸化水素等の酸化剤で酸化して、容易に酸化物を形成できるからである。
本発明の異種金属4核錯体の一例を示すX線解析図である。 本発明の異種金属4核錯体の別の一例を示すX線解析図である。
本発明の異種金属4核錯体は、上記式(1)で表される錯体である。本発明の異種金属4核錯体によれば、例えば酸化触媒に使用すると、常圧下で反応を行うことができるため、反応装置に耐圧性が要求されない。よって、設備コストを抑えることができるため、製造コストを容易に低減できる。また、反応に加圧を必要としないため、安全性を確保できる。
上記式(1)において、M及びMは、周期律表第6族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、同一であっても異なっていてもよい。なかでも、M及びMが、好ましくはCr、Mo及びWから選択される1種以上、より好ましくはMo及びWから選択される1種以上、更に好ましくはWである場合、上記異種金属4核錯体を容易に合成することができる上、本発明の異種金属4核錯体を酸化触媒に使用した場合、反応の収率を向上させることができる。
上記式(1)において、R、R、R及びRは、炭素数1〜20の置換基であり、同一であっても異なっていてもよく、RとR及びRとRの少なくとも1組は縮合環を形成していてもよい。また、上記式(1)において、k、l、m及びnは各々独立に0〜3の整数である。即ち、1つのピリジン環に対する置換基の数は、0〜3のいずれであってもよい。なお、1つのピリジン環に対して2つ以上の置換基が存在する場合、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
上記異種金属4核錯体を容易に合成するためには、R、R、R及びRは、炭素数1〜10の置換基であることが好ましく、炭素数1〜6の置換基であることがより好ましく、炭素数1〜4の置換基であることが更に好ましい。なかでも、R、R、R及びRが、メチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、t−ブトキシ基、フェニル基及びピリジル基から選択される1種以上である場合は、上記異種金属4核錯体を容易に合成することができる上、本発明の異種金属4核錯体を酸化触媒に使用した場合、反応の収率を向上させることができるため好ましい。また、上記異種金属4核錯体を容易に合成するためには、k、l、m及びnは、1〜3であることが好ましく、1であることがより好ましい。
本発明の異種金属4核錯体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、所望の置換基を有するジピリジルをリガンドとするバナジウム錯体を調製し、第6族元素のオキソ酸の塩と水中で反応させることにより本発明の異種金属4核錯体を得ることができる。具体的な製造方法の一例は、後述する実施例で示す。
本発明の異種金属4核錯体は、酸化触媒として使用することにより、上述した効果がより有効に発揮される。その際、本発明の異種金属4核錯体を単独で酸化触媒として使用してもよく、本発明の異種金属4核錯体とその他の成分との混合触媒として使用してもよい。後者の場合、例えば、炭素粉末、ゼオライト等の従来当該分野で用いられている不活性多孔質担持体等に本発明の異種金属4核錯体を担持させたものを酸化触媒として用いてもよい。その他、アルミナ、シリカゲル等が含まれていてもよい。その場合、本発明の異種金属4核錯体以外の成分の割合は、触媒全体を100重量%とした場合、0.1〜10重量%(好ましくは0.4〜5重量%)程度であればよい。
本発明の酸化物の製造方法は、触媒を用いた酸化反応による酸化物の製造方法であって、上記触媒が、上述した本発明の異種金属4核錯体を含む酸化物の製造方法である。本発明の酸化物の製造方法では、上記異種金属4核錯体を用いるため、上述したように製造コストを容易に低減できる。また、反応に加圧を必要としないため、安全性を確保できる。得られる酸化物としては、カルボニル化合物、エポキシ化合物、ヒドロキシ化合物、イミン化合物、ニトリル化合物、スルホキシド化合物、スルホン化合物、ニトロソ化合物等が挙げられ、特に、カルボニル化合物を製造する場合に、上記本発明の効果が有効に発揮される。
本発明の酸化物の製造方法では、常圧下、溶媒中で基質を酸化して上記酸化物を製造することが好ましい。溶媒中で反応を行うことにより、反応の収率を向上させることができるからである。この場合、上記基質としては、炭素数1〜20の化合物を使用することが好ましく、炭素数1〜15の化合物を使用することがより好ましい。炭素数が上記範囲内であれば反応溶媒に可溶なため、本発明の異種金属4核錯体を均一触媒として使用できるからである。なお、均一触媒は、一般的に収率が高い上、触媒の回収、再利用が容易となる。
上記酸化反応は、酸素雰囲気下で行われることが好ましい。酸素は安価で廃棄処理が不要なため、製造コスト及び環境負荷をより低減できるからである。なお、上記「酸素雰囲気」とは、反応容器内が酸素ガスで置換された状態を意味する。
また、上記酸化反応は、過酸化水素の存在下で行われてもよい。過酸化水素も安価で複雑な廃棄処理が不要であるため、製造コスト及び環境負荷をより低減できるからである。なお、反応溶液中における過酸化水素の含有量は、反応溶液全体に対して0.2〜7重量%程度であればよい。
本発明の酸化物の製造方法において、溶媒中で基質を酸化する場合、反応溶媒として、水、メタノール、エタノール、t−ブタノール等のプロトン性極性溶媒、あるいはジメチルスルホキシド、N,N‐ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,2‐ジクロロメタン、クロロホルム、塩化メチレン、トルエン等の非プロトン性極性溶媒を用いることができる。本発明の異種金属4核錯体は、これらの溶媒中では均一触媒として作用できる。本発明では、上記の溶媒を単独で、又は混合溶媒として用いることができるが、酸化反応における収率の観点からは、水又はアセトニトリルが好ましい。なお、上記列挙した溶媒を使用する際、溶媒中の基質の濃度は、例えば0.05〜1mol/L(好ましくは0.1〜1mol/L)程度であればよい。この場合、溶媒中の異種金属4核錯体の濃度は、基質に対し、例えば0.02〜3.0mol%(好ましくは0.1〜1.0mol%)程度であればよい。また、反応条件については、溶媒温度が例えば-20〜120℃(好ましくは25〜90℃)程度であればよく、反応時間が例えば1〜72時間(好ましくは3〜24時間)程度であればよい。
本発明の酸化物の製造方法において、製造コスト及び環境負荷をより低減するには、反応溶媒として、安価で廃棄処理が容易な水を用いることが好ましい。なお、従来の酸化触媒を用いて水中で酸化反応を行うと、通常、有機溶媒に比べて収率が著しく低下するが、本発明の異種金属4核錯体によれば、従来の酸化触媒に比べ、水中における酸化反応の収率を向上させることができる。
本発明の酸化物の製造方法では、上記基質が芳香環を有する化合物であることが好ましい。本発明の異種金属4核錯体との組み合わせで反応が効率よく行われるからである。また、得られる酸化物が芳香環を有するため、これを用いて剛性が高いポリマーや光機能性材料等を製造できる。上記「芳香環」としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられ、反応溶媒に対する溶解性の観点からベンゼン環が好ましい。
特に、基質が、ベンジル骨格を有する化合物であることが好ましい。ベンジル位の炭素を酸素や過酸化水素等の酸化剤で酸化して、容易に酸化物を形成できるからである。ベンジル骨格を有する化合物としては、ベンジルアルコール、1-フェニルエチルアルコール、ベンズヒドロール、トルエン、trans-スチルベン、フェナントレン、ジベンジル、フルオレン、ベンジルアミン等やこれらの誘導体等が挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以降の説明において使用する装置、試薬等の詳細は、下記のとおりである。
X線結晶構造解析装置:リガク社製 RAXIS-RAPID
赤外吸収スペクトロメーター(IR):日本分光社製 FT/IR 8000m
プロトン核磁気共鳴スペクトロメーター(1H-NMR):JEOL社製 JNM-AL400(300MHz)
過酸化水素水:ナカライ社製(濃度:30重量%)
(錯体Aの調製)
玉入り冷却管を取り付けた二口フラスコに4,4-ジ-t-ブチル-2,2-ジピリジル(アルドリッチ社製 純度95%、269.0mg、1.00mmol)及びエタノール(10mL)を加え、更に5.5mLのエタノールに溶解させたVOSO4 .5H2O(ナカライテスク社製 純度98%、126.9mg、0.50mmol)を加えた。その後、窒素雰囲気下、40℃で2.5時間加熱撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、ジエチルエーテルで吸引ろ過を行い、緑色粉末(249.7mg)を得た。次いで、得られた緑色粉末(209.9mg、0.30mmol)及び水(3mL)を二口フラスコに加え、更に3mLの水に溶解させたNa2WO4 .2H2O(ナカライテスク社製 純度98%、246.4mg、0.75mmol)を加えた。その後、窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。反応終了後、水で吸引ろ過を行い、黄土色粉末(274.6mg)を得た。次いで、この黄土色粉末に対してメタノールを用いて再結晶を行い、下記に構造を示す錯体A(黄色結晶、収率30%)を得た。
Figure 2011156477
得られた錯体AについてX線結晶構造解析を行った結果、図1に示すバタフライ型の4核錯体であることが明らかになった。なお、図1では、2つのWに対して再結晶溶媒のメタノール分子が1つずつ配位した結晶構造が得られている。また、錯体AのIR等による分析結果は以下のとおりである。
IR(KBr)ν(cm-1):3442、2964、1618、1413、977、906、758
1H-NMR(CDCl3):δ9.15(d, J = 6.1Hz, 4H)、8.05(d, J = 1.7Hz, 4H)、7.70(dd, J = 6.3, 1.7Hz, 4H)、3.18(s, 6H)、1.46(s, 36H)
(錯体Bの調製)
上記と同様の手法で得られた緑色粉末(71.1mg、0.10mmol)及び水(1mL)を二口フラスコに加え、更に1mLの水に溶解させたNa2MoO4 .2H2O(ナカライテスク社製 純度99%、60.0mg、0.25mmol)を加えた。その後、窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。反応終了後、水で吸引ろ過を行い、灰色粉末(55.1mg)を得た。次いで、この灰色粉末に対してメタノールを用いて再結晶を行い、下記に構造を示す錯体B(黄色結晶、収率30%)を得た。
Figure 2011156477
得られた錯体BについてX線結晶構造解析を行った結果、図2に示すバタフライ型の4核錯体であることが明らかになった。なお、図2では、2つのMoに対して再結晶溶媒のメタノール分子が1つずつ配位した結晶構造が得られている。また、錯体BのIR等による分析結果は以下のとおりである。
IR(KBr)ν(cm-1):3442、2962、1618、1411、968、904、742
1H-NMR(CDCl3):δ9.04(d, J = 5.9Hz, 4H)、8.05(d, J = 1.7Hz, 4H)、7.65(dd, J= 6.0, 1.8Hz, 4H)、3.10(s, 6H)、1.45(s, 36H)
(錯体Cの調製)
玉入り冷却管を取り付けた二口フラスコに4,4-ジ-メトキシ-2,2-ジピリジル(アルドリッチ社製 純度95%、131.7mg、0.61mmol)及びメタノール(6mL)を加え、更に3.3mLのメタノールに溶解させたVOSO4 .5H2O(ナカライテスク社製 純度98%、75.9mg、0.30mmol)を加えた。その後、窒素雰囲気下、40℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、生じた緑色粉末に対して、水(3mL)を加え、更に3mLの水に溶解させたNa2WO4 .2H2O(ナカライテスク社製 純度98%、148.6mg、0.45mmol)を加えた。その後、窒素雰囲気下、室温で終夜撹拌した。反応終了後、水で吸引ろ過を行い、緑色粉末(198.1mg)を得た。次いで、この緑色粉末をメタノールで洗浄し、下記に構造を示す錯体C(収率10%)を得た。
Figure 2011156477
得られた錯体CのIRによる分析結果は以下のとおりである。
IR(KBr)ν(cm-1):3392、1616、1560、1498、1257、1045、839、752
(錯体Dの調製)
玉入り冷却管を取り付けた二口フラスコに4,4-ジ-メチル-2,2-ジピリジル(和光純薬社製 純度95%、112.0mg、0.61mmol)及びメタノール(6mL)を加え、更に3.3mLのメタノールに溶解させたVOSO4 .5H2O(ナカライテスク社製 純度98%、75.3mg、0.30mmol)を加えた。その後、窒素雰囲気下、40℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、生じた緑色粉末に対して水(3mL)を加え、更に3mLの水に溶解させたNa2WO4 .2H2O(ナカライテスク社製 純度98%、149.2mg、0.45mmol)を加えた。その後、窒素雰囲気下、室温で終夜撹拌した。反応終了後、水で吸引ろ過を行い、緑色粉末(155.1mg)を得た。次いで、この緑色粉末をメタノールで洗浄し、下記に構造を示す錯体D(収率10%)を得た。
Figure 2011156477
得られた錯体DのIRによる分析結果は以下のとおりである。
IR(KBr)ν(cm-1):3448、1618、972、827、752
(錯体Eの調製)
玉入り冷却管を取り付けた二口フラスコに4,4-ジ-t-ブチル-2,2-ジピリジル(アルドリッチ社製 純度95%、269.0mg、1.00mmol)及びエタノール(10mL)を加え、更に5.5mLのエタノールに溶解させたVOSO4 .5H2O(ナカライテスク社製 純度98%、126.9mg、0.50mmol)を加えた。その後、窒素雰囲気下、40℃で2.5時間加熱撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、ジエチルエーテルで吸引ろ過を行い、緑色粉末(249.7mg)を得た。次いで、得られた緑色粉末(143.0mg、0.20mmol)及び水(2mL)を二口フラスコに加え、更に2mLの水に溶解させたNa2CrO4 .4H2O(和光純薬社製 純度99%、70.4mg、0.30mmol)を加えた。その後、窒素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。反応終了後、水で吸引ろ過を行い、褐色粉末(125.5mg)を得た。次いで、この褐色粉末をメタノールに溶解させ、このメタノール溶液にジエチルエーテルを加えて生じた褐色沈殿を吸引ろ過により回収して乾燥させ、下記に構造を示す錯体E(収率20%)を得た。
Figure 2011156477
得られた錯体EのIRによる分析結果は以下のとおりである。
IR(KBr)ν(cm-1):3400、2966、1618、1413、947、850、785
(錯体Fの調製)
玉入り冷却管を取り付けた二口フラスコに5,5-ジ-メチル-2,2-ジピリジル(和光純薬社製 純度95%、110.8mg、0.60mmol)及びメタノール(6mL)を加え、更に3.3mLのメタノールに溶解させたVOSO4 .5H2O(ナカライテスク社製 純度98%、75.4mg、0.30mmol)を加えた。その後、窒素雰囲気下、40℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、生じた緑色粉末に対して水(3mL)を加え、更に3mLの水に溶解させたNa2WO4 .2H2O(ナカライテスク社製 純度98%、150.1mg、0.46mmol)を加えた。その後、窒素雰囲気下、室温で終夜撹拌した。反応終了後、水で吸引ろ過を行い、緑色粉末(168.6mg)を得た。次いで、この緑色粉末に対してメタノールを用いて再結晶を行い、下記に構造を示す錯体F(黄緑色結晶、収率10%)を得た。
Figure 2011156477
得られた錯体FのIR等による分析結果は以下のとおりである。
IR(KBr)ν(cm-1):3442、2922、1604、1477、964、738
1H-NMR(CDCl3):δ9.07(s, 4H)、8.00〜7.90(m, 8H)、2.57(s, 12H)
(錯体Gの調製)
玉入り冷却管を取り付けた二口フラスコに1,10-フェナントロリン モノハイドレート(ナカライテスク社製 純度99%、120.9mg、0.61mmol)及びメタノール(6mL)を加え、更に3.3mLのメタノールに溶解させたVOSO4 .5H2O(ナカライテスク社製 純度98%、79.4 mg、0.31mmol)を加えた。その後、窒素雰囲気下、40℃で3時間加熱撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、生じた黄色粉末に対して水(3mL)を加え、更に3mLの水に溶解させたNa2WO4 .2H2O(ナカライテスク社製 純度98%、149.5mg、0.45mmol)を加えた。その後、窒素雰囲気下、室温で1時間撹拌した。反応終了後、水で吸引ろ過を行い、赤褐色粉末(131.9mg)を得た。次いで、この赤褐色粉末をメタノールに溶解させ、このメタノール溶液にジエチルエーテルを加えて生じた褐色沈殿を吸引ろ過により回収して乾燥させ、下記に構造を示す錯体G(褐色粉末、収率20%)を得た。
Figure 2011156477
得られた錯体GのIR等による分析結果は以下のとおりである。
IR(KBr)ν(cm-1):3369、3058、1625、1517、1427、1109、937、846、723、636
1H-NMR(CDCl3):δ9.69(d, J = 5.0 Hz, 4H)、8.72(d, J = 9.2 Hz, 4H)、8.16〜8.07(m, 8H)
(錯体Hの調製)
VOSO4 .5H2O(ナカライテスク社製 純度98%、250.0 mg、0.99 mmol)と、3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸(アルドリッチ社製 純度99%、330.0 mg、2.37 mmol)とを水に加えた水溶液(10mL)を調製し、これを攪拌しながら、10重量%炭酸水素ナトリウム水溶液(1.5mL)を加え、室温で3時間撹拌を継続した。反応終了後、析出物を吸引ろ過により回収して乾燥させ、下記に構造を示す錯体H(緑色粉末、収率80%)を得た。
Figure 2011156477
得られた錯体HのIRによる分析結果は以下のとおりである。
IR(KBr)ν(cm-1):3500〜2800、1640、1570、960
(実施例1)
錯体A(0.0015mmol)と、ベンズヒドロール(0.1mmol)と、水(0.5mL)とを反応容器に加えて混合した後、酸素雰囲気下(0.1MPa)、90℃で23時間攪拌した。反応式を下記式(2)に示す。反応終了後、反応液に対して、ジエチルエーテルと水を用いた分液操作を行い、エーテル層を減圧濃縮し、濃縮残渣を1H-NMRで分析した結果、実施例1では、ベンゾフェノンが80%の収率で得られることがわかった。なお、1H-NMR分析によるベンズヒドロールの回収率は4%であった。
Figure 2011156477
(実施例2及び比較例1〜3)
実施例1において、錯体Aの代わりに表1に示す触媒を用いたことと、反応時間を3時間に変えたこと以外は、実施例1と同様に反応を行い、1H-NMR分析により収率を算出した。結果を表1に示す。なお、表1の収率欄における「−」は、1H-NMR分析で検出されなかった場合を示す(後述する表2も同様)。
Figure 2011156477
表1に示すように、錯体Bを用いた実施例2によれば、ベンゾフェノンを得ることができたが、比較例1〜3では、ベンゾフェノンを得ることができなかった。
(実施例3〜6)
実施例1において、基質として下記式(3)に示すベンジルアルコール誘導体(0.5mmol)を用い、溶媒としてトルエン(0.5mL)を用いて、表2に示す条件で反応を行ったこと以外は実施例1と同様に反応を行い、1H-NMR分析により収率を算出した。反応式を下記式(3)に示し、収率を表2に示す。
Figure 2011156477
Figure 2011156477
(実施例7)
錯体A(0.00125mmol)と、1-フェニルエチルアルコール(0.5mmol)と、水(1mL)とを反応容器に加えて混合した後、この溶液を攪拌しながら、過酸化水素水(0.1mL、0.98mmolの過酸化水素を含有)を0.1mL/sの滴下速度で滴下して、90℃で17時間撹拌を継続した。反応式を下記式(4)に示す。そして、反応溶液に水及び酢酸エチルを加えて反応を停止させ、更に無水硫酸マグネシウムを加えて反応溶液中の水分を除去した後、ろ紙を用いてろ過した。その後、ろ液を減圧濃縮し、濃縮残渣を1H-NMRで分析した結果、実施例7では、アセトフェノンが73%の収率で得られることがわかった。なお、1H-NMR分析による1-フェニルエチルアルコールの回収率は11%であった。
Figure 2011156477
(実施例8)
実施例7において、基質をtrans-スチルベン(0.5mmol)に変更し、更に反応条件を下記に示す条件に変更したこと以外は実施例7と同様に反応を行い、1H-NMRで分析した。その結果、実施例8では、ベンズアルデヒドが27%の収率で得られ、安息香酸が11%の収率で得られることがわかった。なお、1H-NMR分析によるtrans-スチルベンの回収率は17%であった。
<実施例8の反応条件>
錯体Aの含有量:0.0025mmol
反応開始時の過酸化水素の含有量:1.96mmol
溶媒:アセトニトリル(1.0mL)
反応温度:85℃
反応時間:6.5時間
(実施例9)
実施例8において、基質をフェナントレン(0.5mmol)に変更し、反応開始時の過酸化水素の含有量を0.98mmolに変更し、更に反応時間を3時間に変更したこと以外は実施例8と同様に反応を行い、1H-NMRで分析した。その結果、実施例9では、2,6’-ジホルミルビフェニルが10%の収率で得られることがわかった。なお、1H-NMR分析によるフェナントレンの回収率は46%であった。
(実施例10)
実施例9において、基質をp-t-ブチルトルエン(0.5mmol)に変更し、更に反応開始時の過酸化水素の含有量を1.96mmolに変更したこと以外は実施例9と同様に反応を行い、1H-NMRで分析した。その結果、実施例10では、p-t-ブチルベンズアルデヒドが6%の収率で得られ、p-t-ブチル安息香酸が3%の収率で得られることがわかった。なお、1H-NMR分析によるp-t-ブチルトルエンの回収率は54%であった。
(実施例11)
実施例8において、反応条件を下記に示す条件に変更し、窒素雰囲気下で攪拌したこと以外は実施例8と同様に反応を行い、1H-NMRで分析した。その結果、実施例11では、trans-スチルベンオキシドが11%の収率で得られることがわかった。なお、1H-NMR分析によるtrans-スチルベンの回収率は69%であった。
<実施例11の反応条件>
錯体Aの含有量:0.005mmol
反応開始時のtrans-スチルベンの含有量:0.1mmol
反応開始時の過酸化水素の含有量:0.098mmol
溶媒:塩化メチレン(1.0mL)
反応温度:25℃
反応時間:62.5時間
本発明の異種金属4核錯体は、酸化触媒に使用できる他、ルイス酸触媒、重合触媒、金属センサー、磁性材料、導電性材料、発光材料、医薬品等に有用である。

Claims (12)

  1. 式(1):
    Figure 2011156477

    (但し、M及びMは、周期律表第6族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、同一であっても異なっていてもよく、R、R、R及びRは、炭素数1〜20の置換基であり、同一であっても異なっていてもよく、RとR及びRとRの少なくとも1組は縮合環を形成していてもよく、k、l、m及びnは各々独立に0〜3の整数である)で表される、異種金属4核錯体。
  2. 前記M及びMは、Cr、Mo及びWから選択される1種以上である請求項1に記載の異種金属4核錯体。
  3. 前記R、R、R及びRは、メチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、t−ブトキシ基、フェニル基及びピリジル基から選択される1種以上である請求項1又は2に記載の異種金属4核錯体。
  4. 酸化触媒に使用される請求項1〜3のいずれか1項に記載の異種金属4核錯体。
  5. 触媒を用いた酸化反応による酸化物の製造方法であって、
    前記触媒は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の異種金属4核錯体を含む酸化物の製造方法。
  6. 前記酸化物は、カルボニル化合物である請求項5に記載の酸化物の製造方法。
  7. 常圧下、溶媒中で基質を酸化して前記酸化物を製造する請求項5又は6に記載の酸化物の製造方法。
  8. 前記酸化反応は、酸素雰囲気下で行われる請求項5〜7のいずれか1項に記載の酸化物の製造方法。
  9. 前記酸化反応は、過酸化水素の存在下で行われる請求項5〜7のいずれか1項に記載の酸化物の製造方法。
  10. 前記溶媒は、水である請求項7〜9のいずれか1項に記載の酸化物の製造方法。
  11. 前記基質は、芳香環を有する請求項7〜10のいずれか1項に記載の酸化物の製造方法。
  12. 前記基質は、ベンジル骨格を有する請求項11に記載の酸化物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN115536677A (zh) * 2022-09-27 2022-12-30 福建师范大学 零维四核金属卤化物团簇材料、团簇发光材料及其制备方法与应用

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