JP7232459B2 - 有機化合物のベンジル位の空気酸化方法及び空気酸化触媒 - Google Patents
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Description
ベンジル位に直接的に水酸基又はオキソ基を導入する方法として空気酸化が知られている。空気酸化により水酸基又はオキソ基を導入する反応は一般的に、触媒のみでは高温高圧を必要とすることから、各種の添加剤が併用される。
しかし、本方法は、光照射を効率的に行うためにごく低濃度で反応を行う必要があり、生産性に問題がある。また、ヒドロキシルラジカルを経由する方法であるので、目的化合物だけでなく二量化体、二酸化炭素等の多数の副生成物を発生させる。さらに、添加剤を併用することで生成物の純度が損なわれる。したがって、生成物の精製処理に多くのエネルギーが必要で、精製処理の副産物の廃棄処理の手間と費用もかかる。
しかし、本方法は、イミド化合物が犠牲剤として消費され再利用できないこと、反応後にイミド化合物の分解物を除去する煩雑さ、イミド化合物自体の価格が高価なこと等から、産業上有用な方法とは言えない。
さらに、触媒のみにて空気酸化反応をさせる例はなく、添加剤の存在が必要となるため、触媒及び添加剤を生成物から十分に除去しきれず後工程や製品純度に影響を与えるといった、省エネルギーと品質の両面から課題がある。
〔1〕ベンジル位を有する有機化合物の前記ベンジル位を空気酸化する方法であって、
前記有機化合物を、二種以上の金属を含む多核金属錯体である触媒の存在下で分子状酸素と接触させることを特徴とする、空気酸化方法。
〔2〕前記多核金属錯体が、マクロサイクル配位子を含む、請求項1に記載の空気酸化方法。
〔3〕前記二種以上の金属が、セリウムと周期表第四周期に属する遷移金属とを含む、請求項1又は2に記載の空気酸化方法。
〔4〕前記多核金属錯体が、下記式(i)で表される、請求項1~3のいずれか一項に記載の空気酸化方法。
X2は、連結基であり、
X3は、対アニオンであり、
R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、水酸基もしくはアミノ基であるか、又は互いに結合して環を形成している。
〔5〕前記周期表第四周期に属する遷移金属が、マンガン、銅及び亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項3又は4に記載の空気酸化方法。
〔6〕前記触媒の使用量が、前記有機化合物に対して1~20質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の空気酸化方法。
〔7〕ベンジル位を有する有機化合物の前記ベンジル位を空気酸化するための触媒であって、
二種以上の金属を含む多核金属錯体であることを特徴とする、空気酸化触媒。
〔8〕前記多核金属錯体が、マクロサイクル配位子を含む、請求項7に記載の空気酸化触媒。
〔9〕前記二種以上の金属が、セリウムと周期表第四周期に属する遷移金属とを含む、請求項7又は8に記載の空気酸化触媒。
〔10〕前記多核金属錯体が、下記式(i)で表される、請求項7~9のいずれか一項に記載の空気酸化触媒。
X2は、連結基であり、
X3は、対アニオンであり、
R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、水酸基もしくはアミノ基であるか、又は互いに結合して環を形成している。
〔11〕前記周期表第四周期に属する遷移金属が、マンガン、銅及び亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項9又は10に記載の空気酸化触媒。
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
「ベンジル位」は、6員芳香環を構成する炭素原子に直接結合している炭素原子の位置である。
「空気酸化」は、分子状酸素が酸化剤となる酸化反応である。
「遷移金属」は、周期表第3族~第12族の元素の総称である。
本発明の空気酸化方法では、基質を、二種以上の金属を含む多核金属錯体である触媒(以下、「空気酸化触媒」とも記す。)の存在下で分子状酸素と接触させる。これにより、基質のベンジル位が空気酸化され、基質のベンジル位に水酸基又はオキソ基が導入された構造の有機化合物が生成する。例えば、基質がベンジル位にC-H結合を有する場合、基質のベンジル位が空気酸化されると、ベンジル位にC-OH結合を有するアルコール化合物、又はベンジル位にC=O結合を有するカルボニル化合物が生成する。
本発明における空気酸化触媒は、二種以上の金属を含む多核金属錯体である。かかる空気酸化触媒によれば、添加剤を併存させなくても、比較的温和な反応条件で効率的に、基質のベンジル位を空気酸化して水酸基又はオキソ基を導入できる。また、金属錯体は、空気酸化の際に消費されない(分解しない)ので、反応後に回収して再利用できる。
セリウムは、100℃未満の温度で、三価と四価の酸化数を流動的かつ安定的に駆動する。この性質が上記効果に寄与すると考えられる。第四周期遷移金属は、セリウムの酸化数における三価と四価の駆動をより安定的なものとし、セリウムの酸化還元電位を変化させることで触媒活性の向上に寄与すると考えられる。
第四周期遷移金属としては、セリウムの酸化数における三価と四価の安定的駆動と形成する錯体の安定性の二つの点で、マンガン、銅及び亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましく、銅及び亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
かかる多核金属錯体の一例として、下記式(i)で表される多核金属錯体(以下、「錯体(i)」とも記す。)が挙げられる。
X2は、連結基であり、
X3は、対アニオンであり、
R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、水酸基もしくはアミノ基であるか、又は互いに結合して環を形成している。
X2としては、例えば、アルキレン基、脂環式基、芳香族基等が挙げられる。アルキレン基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、例えばエチレン基、ジメチルメチレン基、トリメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基等が挙げられる。アルキレン基としては、エチレン基、ジメチルメチレン基、トリメチレン基等の炭素数2~3のアルキレン基が好ましい。脂環式基としては、例えばシクロヘキシレン基等の炭素数3~10の脂環式基が挙げられる。芳香族基としては、例えばオルトフェニレン基等のフェニレン基、2,3-ナフタレン基等が挙げられる。
X2は、典型的には、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン等のジアミンから2つのアミノ基を除いた残基である。ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン等の脂環式ジアミン、1,2-フェニレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
アリール基としては、例えば炭素数6~20、好ましくは6~14の単環、多環又は縮合環式の芳香族炭化水素基が挙げられる。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、アニシル基、ニトロフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。アリール基は、アルキル基又はハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
まず、溶媒中で、X1の酢酸塩と、2,3-ジヒドロキシベンゼン-1,4-ジカルボアルデヒドと、セリウムアセテートとを混合する。混合条件は、例えば25~80℃で1~4時間である。次いで、得られた混合液にジアミン(H2N-X2-NH2)を加えて撹拌する。攪拌条件は、例えば25~80℃で6~18時間である。
その後、溶媒を除去することにより、形成された錯体を回収できる。必要に応じて、再結晶等の精製処理を行うことができる。得られた錯体の構造は、例えば、単結晶X線結晶構造解析により確認できる。
基質としては、ベンジル位を有する有機化合物であれば特に制限はない。
基質は、典型的には、ベンジル位にC-OH結合を有さない。すなわちベンジル位に置換基として水酸基を持たない。
基質としては、例えば、下記式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」とも記す。)、下記式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」とも記す。)等の、ベンジル位にC-H結合を有する化合物が挙げられる。
R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、及びR11から選ばれる二か所が結合して環を形成してもよい。
R4、R5、及びR6から選ばれる二か所が結合してオキソ基を形成してもよい。
R4、R5、及びR6が結合して芳香環を形成してもよく、さらにその芳香環がR7又はR11と結合して縮合環を形成してもよい。
基質を空気酸化触媒の存在下で分子状酸素と接触させることにより、基質のベンジル位の空気酸化反応が進行する。
基質を空気酸化触媒の存在下で分子状酸素と接触させる方法としては、例えば、基質と、空気酸化触媒と、必要に応じて液状媒体を容器に収容し、空気下で撹拌する方法が挙げられる。
空気は、容器形状に依存した拡散を利用して容器内に導入してもよく、エアポンプを用いて導入してもよく、上方を開放させたフラスコや試験管等のガラス器具で1気圧の大気下における拡散条件下で導入してもよい。
又は、空気酸化触媒の使用量は、例えば、基質1ミリモルに対して1~200mg、好ましくは1~100mg、より好ましくは1~10mgである。
空気酸化触媒の使用量が前記範囲の下限値以上であれば、基質のベンジル位の空気酸化反応がより進みやすい。空気酸化触媒の使用量が前記範囲の上限値を超えると、加えた触媒が完全に溶解せず見かけの触媒活性が低下するおそれがある。
液状媒体の使用量は、基質に対し、質量比で、0.1~1000倍が好ましく、1~100倍がより好ましい。
反応時間は、用いる触媒の量や反応温度等により左右され、一概に定めることはできないが、通常は1~20時間の範囲で、好ましくは2~6時間の範囲で行われる。
添加剤としては、例えば、特開平8-38909号公報の[0014]~[0029]や特開平9-327626号公報の[0030]~[0037]に開示されるイミド化合物(N-ヒドロキシフタルイミド等)、AgBF4、AgPF6、NaBF4、NaPF6等が挙げられる。
上記のように基質のベンジル位を空気酸化することで、基質のベンジル位に水酸基又はオキソ基が導入された構造の有機化合物が得られる。
例えば基質が前記化合物(1)である場合、下記式(3)で表されるアルコール化合物及び/又は下記式(4)で表されるカルボニル化合物が得られる。
例えば基質が前記化合物(2)である場合、下記式(5)で表されるアルコール化合物及び/又は下記式(6)で表されるカルボニル化合物が得られる。
また、前記した空気酸化触媒は、金属錯体であるので、ベンジル位を空気酸化する際に分解せず、再利用できる。
特に、前記した触媒(i)は、簡便かつ確実に製造でき、錯体形成後に安定に存在する。そのため、従来の金属錯体に用いられているような、製造法が煩雑で高コストであり、しかも製造中や製造後に分解するおそれのある配位子の利用を避けることができる。
空気酸化における転化率、収率は、ガスクロマトグラフィーにより分析した結果を元に、以下の計算式により計算した。
転化率(%)=(1-残存した原料のモル数/使用した原料のモル数)×100
収率(%)=(目的化合物のモル数/使用した原料のモル数)×100
酢酸亜鉛二水和物(和光純薬株式会社製)(274mg、1.25mmol)のメタノール溶液(50mL)と、2,3-ジヒドロキシベンゼン-1,4-ジカルボアルデヒド(208mg、1.25mmol)のクロロホルム溶液(75mL)とを、セリウムアセテート一水和物(キシダ化学株式会社製)(139.8mg、0.416mmol)のメタノール/水混合溶媒(メタノール:水=2:1(質量比))溶液(75mL)に加え、30分間室温で撹拌した。その後、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(東京化成工業株式会社製)(148mg、1.45mmol)のクロロホルム溶液(75mL)を加え、18時間室温で撹拌した。ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した後、0.05mmHg下で真空乾燥させ、メタノール/ジエチルエーテル/ヘキサンの3層系で再結晶を行い、前記式(i)で表され、式中のX1が亜鉛、X2がジメチルメチレン基、X3が酢酸アニオンである錯体(379mg、0.315mmol、収率76%)を得た。
得られた錯体について単結晶X線結晶構造解析を行い、その結果から、得られた錯体が図1に示す構造を有することを確認した。
酢酸銅(アルドリッチ社製)(55.3mg、0.304mmol)と硝酸セリウム六水和物(アルドリッチ社製)(43.7mg、0.101mmol)のメタノール溶液(25mL)に、2,3-ジヒドロキシベンゼン-1,4-ジカルボアルデヒド(50.7mg、0.305mmol)のメタノール溶液(5mL)を加え、4時間室温で撹拌した。その後、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(東京化成工業株式会社製)(35.6mg、0.350mmol)のメタノール溶液(5mL)を加えて、17時間室温で撹拌した。0.05mmHg下で、溶媒を留去し乾燥させ、ピリジン/トルエンの2層系で再結晶を行い、前記式(i)で表され、式中のX1が銅、X2がジメチルメチレン基、X3が酢酸アニオンである錯体(379mg、0.315mmol、収率76%)を得た。
得られた錯体について単結晶X線結晶構造解析を行い、その結果から、得られた錯体が図2に示す構造を有することを確認した。
酢酸亜鉛二水和物(和光純薬株式会社製)(109.8mg、0.500mmol)にメタノール(20mL)と水(10mL)を加え溶解させ、2,3-ジヒドロキシベンゼン-1,4-ジカルボアルデヒド(83.1mg、0.500mmol)のクロロホルム溶液(10mL)を加え、室温で17時間攪拌した。溶媒を留去し減圧乾燥後、メタノール(30mL)を加え、塩化セリウム(III)(無水)(東京化成工業株式会社製)(41.1mg、0.166mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。その後、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(東京化成工業株式会社製)(52.8mg、0.516mmol)のメタノール溶液(3mL)を加えて、17時間室温で撹拌した。0.05mmHg下で、溶媒を留去し乾燥させ、メタノール(6mL)に溶かし、その溶液をジエチルエーテル(200mL)に滴下し錯体を再沈殿させた。得られた粉末をろ過し、乾燥させることで、前記式(i)で表され、式中のX1が亜鉛、X2がジメチルメチレン基、X3が塩素イオンである錯体(132mg、0.117mmol、収率70%)を得た。得られた錯体の構造は、質量分析により確認した。
硝酸亜鉛六水和物(ナカライテスク製)(148.6mg、0.500mmol)と、セリウムアセテート一水和物(キシダ化学株式会社製)(55.9mg、0.166mmol)にメタノール(20mL)と水(10mL)を加え溶解させ、2,3-ジヒドロキシベンゼン-1,4-ジカルボアルデヒド(83.1mg、0.500mmol)のクロロホルム溶液(10mL)を加え、室温で17時間攪拌した。溶媒を留去し減圧乾燥後、メタノール(20mL)を加え、室温で1時間攪拌した。その後、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(東京化成工業株式会社製)(52.8mg、0.516mmol)のメタノール溶液(3mL)を加えて、17時間室温で撹拌した。0.05mmHg下で、溶媒を留去し乾燥させ、メタノール(6mL)に溶かし、その溶液をジエチルエーテル(200mL)に滴下し錯体を再沈殿させた。得られた粉末をろ過し、乾燥させることで、前記式(i)で表され、式中のX1が亜鉛、X2がジメチルメチレン基、X3が硝酸イオンである錯体(197mg、0.162mmol、収率98%)を得た。得られた錯体の構造は、質量分析により確認した。
硝酸亜鉛六水和物とセリウムアセテート一水和物の代わりにトリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(II)とトリフルオロメタンスルホン酸セリウム(III)を用いた以外は製造例4と同様にして、前記式(i)で表され、式中のX1が亜鉛、X2がジメチルメチレン基、X3がトリフルオロメタンスルホン酸アニオン(以下、「OTf」とも記す。)である錯体(221mg、0.15mmol、収率90%)を得た。得られた錯体の構造は、質量分析により確認した。
25mL丸底フラスコにスターラーチップを入れ、製造例1で得た錯体6.0mgを入れ、さらに基質としてベンジルフェニルケトン(東京化成工業株式会社製)を19.6mg入れ、液状媒体としてDMSO(ナカライテスク株式会社製)を2mL加え、還流管に接続し、1気圧の空気下90℃で18時間撹拌した。その後、内部標準としてトリフェニルメタン(ナカライテスク株式会社製)を22.5mg(0.0921mmol)を加え、ガスクロマトグラフィー測定を行った。その結果、転化率は97%、ジケトン(下記反応式中のA)の収率は59%であり、2-ヒドロキシ-1,2-ジフェニルエタノン(下記反応式中のB)は検出されなかった。
DMSOの代わりにジクロロエタンを用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は81%、ジケトンの収率は28%であり、2-ヒドロキシ-1,2-ジフェニルエタノンの収率は16%であった。
DMSOの代わりにジメチルホルムアミドを用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は94%、ジケトンの収率は40%であり、2-ヒドロキシ-1,2-ジフェニルエタノンの収率は8%であった。
DMSOの代わりにアセトニトリルを用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は89%、ジケトンの収率は48%であり、2-ヒドロキシ-1,2-ジフェニルエタノンの収率は16%であった。
製造例1で得た錯体の代わりに製造例3で得た錯体(X3が塩化物イオン)を触媒とし、DMSOの代わりにアセトニトリルを用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は64%、ジケトンの収率は19%であり、2-ヒドロキシ-1,2-ジフェニルエタノンの収率は30%であった。
製造例1で得た錯体の代わりに製造例4で得た錯体(X3がOTf)を触媒とし、DMSOの代わりにアセトニトリルを用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は59%、ジケトンの収率は20%であり、2-ヒドロキシ-1,2-ジフェニルエタノンの収率は22%であった。
触媒を用いず、DMSOの代わりにアセトニトリルを用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は0%、ジケトン及び2-ヒドロキシ-1,2-ジフェニルエタノンは未検出であった。
製造例1で得た錯体の代わりに酢酸セリウム一水和物を用い、DMSOの代わりにアセトニトリルを用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は0%、ジケトン及び2-ヒドロキシ-1,2-ジフェニルエタノンは未検出であった。
製造例1で得た錯体の代わりに酢酸亜鉛二水和物を用い、DMSOの代わりにアセトニトリルを用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は0%、ジケトン及び2-ヒドロキシ-1,2-ジフェニルエタノンは未検出であった。
製造例1で得た錯体の代わりに酢酸セリウム一水和物と酢酸亜鉛二水和物を用い、DMSOの代わりにアセトニトリルを用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。その結果、転化率は0%、ジケトン及び2-ヒドロキシ-1,2-ジフェニルエタノンは未検出であった。
25mL丸底フラスコにスターラーチップを入れ、製造例1で得た錯体1.29mgを入れ、さらにエチルベンゼン(Sigma-Aldrich製)を3mL入れ、還流管に接続し、1気圧の空気下140℃で18時間撹拌した。その後、内部標準としてトリフェニルメタン(ナカライテスク株式会社製)を22.3mg(0.0913mmol)を加え、ガスクロマトグラフィー測定を行った。その結果、1-フェニルエタノール(下記反応式中のB)の収率は3.4%、アセトフェノン(下記反応式中のA)の収率は0.8%であった。
25mL丸底フラスコにスターラーチップを入れ、製造例2で得た錯体1.2mgを入れ、さらにエチルベンゼン(Sigma-Aldrich製)を3mL入れ、還流管に接続し、1気圧の空気下140℃で18時間撹拌した。その後、内部標準としてトリフェニルメタン(ナカライテスク株式会社製)を22.9mg(0.0928mmol)を加え、ガスクロマトグラフィー測定を行った。その結果、1-フェニルエタノールの収率は1.5%、アセトフェノンの収率は0.8%であった。
触媒を用いなかった以外は実施例7と同様の条件で反応を行った。その結果、アセトフェノン及び1-フェニルエタノールは痕跡量観測されたのみであった。
製造例1で得た錯体の代わりに酢酸セリウム一水和物を用いた以外は実施例7と同様の条件で反応を行った。その結果、アセトフェノンの収率は0.3%、1-フェニルエタノールの収率は1.3%であった。
製造例1で得た錯体の代わりに酢酸亜鉛二水和物を用いた以外は実施例7と同様の条件で反応を行った。その結果、アセトフェノンの収率は0.5%、1-フェニルエタノールの収率は1.7%であった。
製造例1で得た錯体の代わりに酢酸セリウム一水和物と酢酸亜鉛二水和物を用いた以外は実施例7と同様の条件で反応を行った。その結果、アセトフェノンの収率は0.2%、1-フェニルエタノールの収率は0.9%であった。
製造例1で得た錯体の代わりにヘキサニトラトセリウム(IV)酸アンモニウム(CAN)を用いた以外は実施例7と同様の条件で反応を行った。その結果、アセトフェノンの収率は0.5%、1-フェニルエタノールの収率は2.2%であった。
製造例1で得た錯体の代わりに酢酸を30μmol用いた以外は実施例7と同様の条件で反応を行った。その結果、アセトフェノンの収率は0.1%、1-フェニルエタノールの収率は0.5%であった。
基質としてエチルベンゼンを用いた実施例7~8及び比較例5~10の結果を表2に示す。表2中、添加量は、エチルベンゼン3mL当たりの触媒の使用量を示す。
実施例7~8及び比較例5~10の対比においても同様の結果が確認できた。
Claims (9)
- 前記多核金属錯体が、マクロサイクル配位子を含む、請求項1に記載の空気酸化方法。
- 前記二種以上の金属が、セリウムと周期表第四周期に属する遷移金属とを含む、請求項1又は2に記載の空気酸化方法。
- 前記周期表第四周期に属する遷移金属が、マンガン、銅及び亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項3に記載の空気酸化方法。
- 前記触媒の使用量が、前記有機化合物に対して1~20質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の空気酸化方法。
- 前記多核金属錯体が、マクロサイクル配位子を含む、請求項6に記載の空気酸化触媒。
- 前記二種以上の金属が、セリウムと周期表第四周期に属する遷移金属とを含む、請求項6又は7に記載の空気酸化触媒。
- 前記周期表第四周期に属する遷移金属が、マンガン、銅及び亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項8に記載の空気酸化触媒。
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