JP2011155024A - テラヘルツ波放射素子及びこれを用いたテラヘルツ波放射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、単純な構造で、超小型で、室温動作が可能であり、テラヘルツ波(THz波)のパルス波及び連続波の発生、更には、レーザ発振も可能なテラヘルツ波放射素子とこれを用いたテラヘルツ波放射装置を提供する。
【解決手段】光励起用光源を備えていること、この光源の光エネルギーは、テラヘルツ波を放射する半導体チップのバンドギャップエネルギー以上であること、半導体チップは活性化エネルギーEAの浅い不純物準位を有し、かつ室温状態でテラヘルツ波の放射ができるように、フェルミエネルギーEfを調整した材料であること、このテラヘルツ波は、半導体チップの伝導帯もしくは価電子帯に、これらのバンド間遷移に基づき光励起されたキャリアが励起準位を含む前記浅い不純物準位を通して再結合する時に放射されるフォトルミネセンス光がテラヘルツ波となるようにする。また、半導体チップに共振器を設けてテラヘルツ波のレーザ発振ができるようにする。
【選択図】図1

Description

本発明は、半導体のバンド間遷移の光励起によるフォトルミネセンス光が、半導体の浅い不純物準位を介しての放射であり、室温でも効率よく発光するような半導体を用い、小型で簡便なテラヘルツ波放射素子と、これを駆動するための駆動回路とを備えたテラヘルツ波放射装置に関するもので、生体や一般有機物などのテラヘルツ波の吸収などを利用した検査システム、情報通信分野、医療分野、創薬分野、バイオ分野、分析化学分野、センシング分野、非破壊検査分野、種々の加工分野など、種々の用途に利用できるものである。
従来、浅いドナ不純物密度を極めて小さくしたn型シリコン(Si)単結晶にCO2レーザを照射して、ドナ不純物準位からSiの伝導帯にキャリアを光励起させ、Siの伝導帯に励起されたキャリア(この場合、電子)がそのドナ不純物準位に戻り、再結合するときに、ドナ不純物準位の多くの励起準位を介して基底状態の戻るときに、最も寿命の長い準位から他の準位を介して電磁波の放射を行い、このときの電磁波がテラヘルツ波に対応しており、テラヘルツ波の放射が達成されていた(非特許文献1)。しかしながら、これらの過程は、10K程度の極低温でのみ見られる現象である。何故ならば、浅いドナ不純物のエネルギーは、Si結晶の場合、高々、45meV程度であり、室温Tr(300K程度)では、十分にイオン化されており、浅いドナ不純物準位には、電子がほとんど存在していないからである。したがって、極低温にしておき、浅いドナ不純物準位に電子が存在させておく必要があった。
また、従来、p型ゲルマニウム(Ge)結晶に強電界と直交強磁場を印加して、軽い正孔を加速して反転分布を形成させて、軽い正孔と重い正孔とのエネルギー準位間のエネルギー差の直接遷移に基づくテラヘルツ波放射を利用するもので、更に強磁場を変化させてテラヘルツ波の波長可変を実現するp−Geレーザがあった(非特許文献2)。また、半導体の量子井戸に強電界を印加して、トンネル電流とサブバンド間の遷移を利用したテラヘルツ放射装置があった。しかし、これらの装置は液体ヘリウム温度程度の極低温が必要であり、大型化せざるを得ないという問題があった。
また、従来、テラヘルツ波の発生には、レーザ光源からの強力なフェムト秒程度のパルス励起光を非線形光学結晶に入力して、光整流作用などによってテラヘルツ波を発生させる方式、非線形光学材料に異なる2波長のレーザ光を同時に照射して結合させて、その差周波数がテラヘルツ波帯になるようにする方式、1波長のレーザ光を照射し、誘導ラマン散乱やポラリトンとの結合を利用する方式などの光ビームを光学結晶などに入射する光励起を利用する方法、電子ビームが反射回折格子上を伝送されるときの電磁放射などの電子管を利用する方法などがあった。
しかし、従来の光励起を利用する方法は、テラヘルツ波の発生効率が低いので、大出力のレーザ光発生装置が必要で、更に非線形性固体中でのレーザ光の結合のための光学系が大型になり、パルスレーザ光照射では、高出力が得られやすいものの連続波が発生できない問題があり、また、電子管を利用する方法でも、やはり大型で、しかも高価であったので、小型、単純な構造で、しかも安価なテラヘルツ波発生装置が望まれていた。
本出願人は、先に、「テラヘルツ波発生ダイオードおよびこれを用いたテラヘルツ波放射素子」(特開2005−322733)を発明し、さらに、深い準位を形成する不純物を添加した「深い準位を持つテラヘルツ波発生ダイオードおよびこれを用いたテラヘルツ波放射素子」(特開2007−129043)を発明した。しかし、これらはダイオードであり、pn接合が形成できる半導体チップに限られていた。本願発明の「テラヘルツ波放射素子及びこれを用いたテラヘルツ波放射装置」は、pn接合が形成できない半導体チップを用いてもよく、しかも、室温動作が可能な小型で簡便なテラヘルツ波の発生とそのレーザ発振化、更に、波長選択もできる装置を提供することを目的としている。
S.G.Pavlov, et.al.,"Far-Infrared stimulated emission from optically excited bismuth donors insilicon", Applied Physics Letters, Vol.80, No.25, pp.4717-4719,2002. K.Unterrainer et. al., "TunableCyclotron- Resonance Laser in Germanium", Physical Review Letters, Vol.64,NO.19, pp.2277-2280, 1990. 特開2005−322733公報 特開2007−129043公報
本発明は、単純な構造で、しかも超小型で、室温動作が可能であり、テラヘルツ波(THz波)のパルス波及び連続波の発生、更には、レーザ発振と波長選択も可能なテラヘルツ波放射素子とこれを用いたテラヘルツ波放射装置を提供すること目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係わるテラヘルツ波放射素子は、半導体チップを光励起してテラヘルツ波を放射させるようにした光励起型のテラヘルツ波放射素子において、光励起用光源を備えていること、該光励起用光源の光エネルギーは、該半導体チップのバンドギャップエネルギー以上であること、該半導体チップは活性化エネルギーEAの浅い不純物準位を有し、かつ室温状態で該テラヘルツ波の放射ができるようにした材料であること、該テラヘルツ波は、該半導体チップの伝導帯もしくは価電子帯に、これらのバンド間遷移に基づく光励起されたキャリアが励起準位を含む該浅い不純物準位を通して再結合する時に放射されるテラヘルツ波であること、を特徴とするものである。
ゲルマニウム(Ge)やシリコン(Si)単結晶基板を用いた場合は、一般に、p型の導電型にするには、不純物として浅い不純物準位のアクセプタになるガリウム(Ga)やホウ素(B)を添加して用いる。また、一般に、n型の導電型の不純物としては、浅い不純物準位のドナとなるリン(P)、砒素(As)やアンチモン(Sb)を用いる。Ge単結晶では、p型の伝導形となるGaの浅い不純物準位は、アクセプタとして、その基底状態はGeの価電子帯からわずか約10meV離れたバンドギャップエネルギーEg内にあり、これが活性化エネルギーEAに対応している。また、n型の伝導形となる砒素(As)の基底状態の浅い不純物準位は、Geの伝導帯からやはり約10meV離れたバンドギャップエネルギーEg内にあり、これがその活性化エネルギーEAに対応している。ここで、浅い不純物準位とは、室温Trにおいて、不純物の活性化エネルギーEAが、kをボルツマン定数として、kTrの室温の熱エネルギーに対して、十分その不純物準位がイオン化することができる程度、すなわち、EAが4kTr以内である不純物準位を指す。例えば、Geでは、上述のGa、Bなどの浅いアクセプタ不純物やP,As,Sbのような浅いドナ不純物の他、銅(Cu)の場合は、多くの不純物準位を形成するが、深い準位の他に、価電子帯から40meV程度の浅い不純物準位も形成すると言われている。しかし、Siに対してCuの不純物は、やはり多くの準位を形成するが、最も浅い準位でもEAが価電子帯から測定して約240meV程度であるので、もはや、浅い不純物準位ではなく、すべて深い不純物準位として取り扱うことができる。
本発明のテラヘルツ波放射素子およびその装置は、半導体チップの価電子帯と伝導帯との間のバンド間エネルギーであるバンドギャップエネルギーEgよりもフォトンエネルギーが大きい光を照射する光源で半導体チップに照射することにより、価電子帯から価電子帯にキャリア(この場合、電子)を励起して、伝導帯に励起された電子が半導体チップに添加してある浅い不純物準位を経由して、価電子帯の正孔と再結合するときの伝導帯と伝導帯に近い浅い不純物準位、価電子帯と価電子帯に近い浅い不純物準位、または、浅い不純物準位の中の励起状態の準位から基底状態間のエネルギー差が丁度、当該放射テラヘルツ波となる場合である。このようにバンドと浅い準位間、又は励起準位も含む浅い準位内での準位間遷移に基づくテラヘルツ波帯のフォトルミネセンスを利用するものである。ここで重要なのは、室温Trでテラヘルツ波帯のフォトルミネセンスを観測するのに、テラヘルツ波放射に関与する半導体チップのバンドと浅い不純物準位が熱励起されるキャリアがなく空の状態になっているようにしておく必要があることである。
上述のような半導体チップである、例えば、Ge半導体チップに、高輝度LEDなどでGeのバンドギャップエネルギーEgよりも大きな光エネルギーの光を照射することにより、Geの価電子帯から伝導帯に電子を光励起して、伝導帯からドナ型の浅い不純物準位をつくる砒素(As)の空の不純物準位に遷移するとき、およびAsの浅い不純物準位の励起状態からその基底状態に遷移するときにそれらのエネルギー差ΔEに対応するテラヘルツ波を放射することになる。もちろん、Asの浅い不純物準位の基底状態に遷移した電子は、フォノン(格子振動粒子)を吸収または放出して、価電子帯にある正孔と再結合して元に戻る。半導体チップに深い準位を形成する不純物も添加してあると、この深い準位が再結合センターとなり、これを経由して価電子帯にキャリアが戻りやすくなるので、好都合である。また、光励起がバンド間で行うので、どちらも状態密度が大きいので大量のキャリアの励起ができるので、更に、好都合である。
本発明の請求項2に係わるテラヘルツ波放射素子は、温度Trなる室温状態で、テラヘルツ波の放射ができる材料としての半導体チップにおいて、その室温TrでのフェルミエネルギーEfとそのテラヘルツ波の放射に係わる浅い不純物準位の基底状態E0との差ΔEが、ボルツマン定数をkとして、室温のエネルギーkTrの4倍以上となる深い位置にあるように、他の不純物を添加するなどしてフェルミエネルギーEfの位置を調整した場合である。
テラヘルツ波帯の光エネルギーは、室温の熱エネルギーkTrと同程度であるので、一般的には極低温に冷却しなければフォトルミネセンスが得られない。そこで、本発明のテラヘルツ波放射素子では、室温において、テラヘルツ波帯のフォトルミネセンスを利用する当該浅い不純物準位がイオン化しているが、活性化エネルギーEAを計測する近くのバンド(伝導帯又は価電子帯)にキャリアがほとんど存在していないようにフェルミエネルギーEfの位置を調節して、これらのバンドに励起されたキャリアが当該浅い不純物準位を経由して、遷移して有効にテラヘルツ波帯のフォトルミネセンスが生じるようにした半導体チップを用いるようにしたことが特徴である。したがって、室温で当該浅い不純物準位がイオン化し、対応するバンドにはキャリアがほとんどない、すなわち空の状態にさせるために、その浅い不純物準位の基底状態よりも4kTr以上フェルミエネルギーEfの位置が離れるようにしている。
本発明の請求項3に係わるテラヘルツ波放射素子は、テラヘルツ波の放射に係わる浅い不純物準位の不純物の他に、該浅い不純物準位の不純物とは逆の伝導型の不純物の添加量を前記浅い不純物準位の不純物量よりも多く添加して、室温状態でのフェルミエネルギーEfの位置を調整してある半導体チップを用いた場合である。
例えば、半導体チップとしてGe結晶を選択した場合で、当該浅い不純物準位として、n型の不純物砒素(As)を選択した場合は、対応するバンドとして伝導帯であるので、逆の伝導型であるp型の浅いアクセプタ準位を価電子帯付近に形成するガリウム(Ga)を、n型の浅い不純物準位を形成する不純物砒素(As)の添加密度よりも多く添加することにより、室温でフェルミエネルギーEfの位置を価電子帯付近に設定することができる。したがって、GeのバンドギャップエネルギーEgは、0.68eVであり、室温Trが300Kでは、kTrが0.026eVであり、4kTrにしても約0.1eV程度であるから室温TrでのフェルミエネルギーEfの位置は、伝導帯下端近くに存在するAsの浅い不純物準位(EAが約0.01eV)からほとんどEg程度離れているので、対応するバンドである伝導帯とAsの浅い不純物準位には、室温でほとんどキャリアが存在していない空の状態になっている。
本発明の請求項4に係わるテラヘルツ波放射素子は、テラヘルツ波の放射に係わる浅い不純物準位の不純物の他に、深い準位を形成する不純物を添加するか、もしくは格子欠陥を導入して深い準位を形成するかして、室温状態でのフェルミエネルギーEfの位置を調整してある半導体チップを用いた場合である。
白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などは、Geに対して浅い準位も形成するが、価電子帯と伝導帯の両方の端から4kTr以上離れた深い位置に不純物準位を形成する。これらの不純物を当該テラヘルツ波の放射に係わる浅い不純物準位のAsなどの不純物の他に、これらの浅い不純物よりも多く添加しておくと、フェルミエネルギーEfは、これらの深い不純物準位付近にピン止めされるので、フェルミエネルギーEfをテラヘルツ波の放射に係わる浅い不純物準位から4kTr以上離れるように調整することができる。また、半導体の格子欠陥は、一般にバンドギャップの中央に近い深い位置に準位を形成するといわれており、イオン照射などでこれらの格子欠陥を導入することにより、フェルミエネルギーEfをこれらの準位付近にピン止めしてすることができる。このとき抵抗率が大きな半導体チップが得られる。
本発明の請求項5に係わるテラヘルツ波放射素子は、浅い不純物準位として、アクセプタ型の不純物、ドナ型の不純物、もしくは、これらの双方の不純物を添加するにあたり、それぞれの型で複数の異なる不純物を添加することにより複数の浅い不純物準位を有するようにした半導体チップを用いた場合である。
テラヘルツ波放射素子では、テラヘルツ波の波長可変が必要な場合が多い。1種類の浅い不純物では、基底状態と励起状態との準位を利用しても有効な準位は、せいぜい2つか3つ程度である。浅い不純物の種類を変えるとそれぞれの活性化エネルギーEAが異なるので、これらの励起準位をも含めるとその分、励起準位も含めて多くのテラヘルツ波放射準位数が増加するので、テラヘルツ波がそれらに応じて多くの異なる波長で放射されるようになる。テラヘルツ波のレーザ発振をさせると、波長選択用のフィルタと組み合わせると、波長可変の特定の波長のレーザ光を放射させることもできる。
本発明の請求項6に係わるテラヘルツ波放射素子は、半導体チップとしてゲルマニウム(Ge)結晶とした場合で、実験によるとシリコン(Si)結晶よりもテラヘルツ波放射の効率が良いことが分かった。もちろん、GeやSiは間接遷移型半導体であるので、直接遷移型半導体であるGaAsやGaNなどの方が良いと思われる。しかし、Ge結晶は、GaAsやGaN結晶よりも安価で良質の結晶が得られ、浅い不純物準位の活性化エネルギーEAは、10meV程度であるから、3THz程度の周波数のテラヘルツ波が得られるので、この周波数帯のテラヘルツ波光源としては好都合である。もちろん、浅い不純物準位の励起準位は、バンド(伝導帯または価電子帯)の端からのエネルギー差が小さくなるのでその分、これらが関与する放射テラヘルツ波は長波長側にシフトする。周波数にすると1THzから3THzの範囲での放射テラヘルツ波が得られることになる。
本発明の請求項7に係わるテラヘルツ波放射素子は、光励起用光源を、発光ダイオードもしくはレーザダイオードとした場合である。
本発明の請求項8に係わるテラヘルツ波放射素子は、更に、光励起用光源と半導体チップとを、一体化させた場合である。
光励起用光源として発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)とした場合、これらをテラヘルツ波をフォトルミネセンスとして放射する半導体チップと一体化させて、極めてコンパクトなテラヘルツ波光源とすることができる。LEDやLDとして市販の高輝度なものを使用しても良いし、専用のLEDやLDを製作しチップ間接合などで一体化させたり、半導体チップにエピタキシアル成長で必要なLEDやLD用半導体材料を形成してLEDやLDを作成して半導体チップとの一体化を図ることもできる。もちろん、半導体チップのバンドギャップエネルギーEgよりも光エネルギーの大きいLEDやLD用半導体材料を用いることが要求される。
本発明の請求項9に係わるテラヘルツ波放射素子は、半導体チップに共振器を設けてテラヘルツ波のレーザ発振させるようにした場合である。一般に、波長の3乗に比例して誘導放出確率の割合が自然放出確率に対して大きくなるから(実際には、誘導放出確率は周波数依存性を有しないが、自然放出確率が波長の3乗に逆比例する。すなわち、放射電磁波の自然放出確率は、波長が長くなると極端に小さくなるので、誘導放出での放射が極めて大きくなる。)、テラヘルツ波は、近赤外線や可視光に比べて極めて波長が長いので、自然放出割合よりも誘導放出割合が極めて大きくなり、誘導放出を利用するテラヘルツ波のレーザが達成しやすい。誘導放出確率はその放射する同一の波長の電磁波の量に比例するので、その所望の発振テラヘルツ波の波長の共振器を半導体チップに設けると良い。この場合、波長の選択はバンドパスフィルタや分布帰還型フィルタや分布帰還型ミラーなどを用いることができる。また、共振器は、半導体チップの対向する端面を反射面として利用したり、金属をこの端面に反射鏡として形成しても良いし、所望の波長の選択反射ミラーを形成しても良い。また、単結晶の結晶面を利用すると、極めて平坦で平行度の良い反射鏡が達成できる。共振器のミラーの向きを半導体チップの厚み方向にすれば、垂直共振器面発光レーザに相当するように構成することもできる。また、分光器などの可変波長の共振器にすれば、可変波長レーザ発振としてのテラヘルツ波放射素子が提供できる。
本発明の請求項10に係わるテラヘルツ波放射装置は、請求項1乃至9のいずれかに記載のテラヘルツ波放射素子を用い、少なくとも光励起用光源の駆動回路を備えたことを特徴とするものである。もちろん、その他の回路や制御系、例えば、半導体チップの温度制御回路、波長選択用の可変波長フィルタ等の駆動回路や電源としての電池、表示装置などを搭載することもできる。
半導体のフェルミエネルギーEf、禁止帯の幅(バンドギャップエネルギーEg)や不純物準位は、温度により異なり、したがって、発生するテラヘルツ波の周波数(もちろん、波長も)が温度により変化する。したがって、安定した周波数のテラヘルツ波の発生には、温度制御が大切で、特に、高出力のテラヘルツ波の発生では、半導体チップが極めて高温になってしまうという問題がる。
テラヘルツ波放射装置には、テラヘルツ波放射素子とその光励起用光源の駆動回路の他に、温度センサとペルチェ素子とを組み合わせた温度制御回路を備えることもできる。ペルチェ素子は極めて小型で、電流を流すことにより冷却も発熱も可能で、半導体チップの温度を一定温度に保持するなどの温度制御を行うことにより、テラヘルツ波の周波数安定化制御などが可能である。
テラヘルツ波放射装置には、光源としてのLEDやLDの駆動に係わる駆動回路を備え、パルス動作、連続波動作、温度制御、出力強度調整、波長制御系駆動などのフィードバック系の組み合わせによる制御系も含むことができる。
テラヘルツ波放射装置には、更に、分光器を備えることもできる。フォトルミネセンスで半導体チップから放射されるテラヘルツ波の波長を選択して、更にその選択された波長のテラヘルツ波を外部に放射させる場合と、再びテラヘルツ波発生ダイオードに戻して、極めてシャープなレーザ発振作用をさせる場合などがある。半導体チップ自体に波長選択機構を有していても、外部に分光器を備えることにより更にシャープな波長選択ができるようにすることもできる。
従来のレーザ光を照射して差周波数からテラヘルツ波を発生させたり、電子管を利用してテラヘルツ波を発生させたりする方法に比べ、本発明のテラヘルツ波放射素子によるテラヘルツ波の発生は、半導体チップの浅い準位のフォトルミネセンスに基づく放射再結合を利用するので、極めて小型で単純な構造のテラヘルツ波放射素子が提供できるという利点がある。
本発明のテラヘルツ波放射素子では、テラヘルツ波を放射させるための添加した浅い不純物の密度よりも、その導電型とは逆の導電型となる半導体チップの不純物密度を多少多く添加してさえおけば、この逆の伝導型を示す半導体チップとなるので、フェルミエネルギーEfの位置をその動作温度Trの熱エネルギーkTrの4倍以上にテラヘルツ波を放出させるための浅い不純物準位の基底状態のエネルギー位置から容易に離すように調整できる。このようにして逆の伝導型の不純物を多く添加することは、その分、テラヘルツ波を放出させるための浅い不純物密度を多くできるになり、輝度の高いフォトルミネセンス光であるテラヘルツ波の放射が可能になるという利点がある。更に、金(Au)などのエネンルギー的に深い準位の不純物もその分高濃度に添加できるので、これらの不純物準位を経由して多数キャリアと再結合することになり、高効率で高出力のテラヘルツ波放射素子が提供できるという利点がある。
本発明のテラヘルツ波放射素子では、ベースとなる半導体チップが、たとえ間接遷移型のシリコン、ゲルマニウムやガリウムリンなどであっても、テラヘルツ波を発生させるための浅い不純物準位は、これらのこの半導体チップの伝導帯または価電子帯に近接した所謂、浅いエネルギーの不純物準位となるので、伝導帯または価電子帯とこれらの浅い不純物準位とは、言わば、直接遷移型のように振舞うことができる。従って、フォノンなどの支援なしに注入キャリアが直接的に浅い準位に遷移できるし、更に、深い不純物準位の導入により、浅い不純物準位から深い不純物準位への遷移、その後、この深い不純物準位から伝導帯または価電子帯の多数キャリアとの再結合遷移が容易で、これに伴うテラヘルツ波が高効率で放射されるという利点がある。
本発明のテラヘルツ波放射素子では、可視光線に比べて極めて波長が長いテラヘルツ波を発生させるので、光励起された少数キャリアのテラヘルツ波放射遷移に際し、誘導放出割合に比べ自然放出割合が極めて小さくなるので、誘導放出を利用するテラヘルツ波のレーザが達成しやすいという利点がある。
本発明のテラヘルツ波放射素子では、半導体チップの許容帯である伝導帯または価電子帯(こららは、エネルギーバンドまたは単にバンドと呼ばれる)と、意図的に添加したテラヘルツ波放射に係わる浅い不純物の不純物準位との間、およびこれらの浅い不純物準位の励起準位と基底状態準位との間での注入少数キャリアの放射遷移に基づく、言わば、バンドと準位間遷移および準位間遷移に基づくので、波長選択機構の具備により特定波長もしくは可変波長のテラヘルツ波放射装置が提供できるという利点がある。
本発明のテラヘルツ波放射素子では、共振器を具備することにより、容易にテラヘルツ波のレーザ発振ができるという利点がある。もちろん、可変波長用の波長選択機構の具備により、超小型の可変波長レーザとしてのテラヘルツ波発生装置が提供できる。
本発明のテラヘルツ波放射素子では、反射膜との組み合わせにより、面発光としてのテラヘルツ波レーザが達成できるので、外部に光学系を設けて平行光線にする必要が無く、テラヘルツ波発生ダイオードからのテラヘルツ波放射光(放射電磁波)がそのまま平行光線になるので、単純な構造の装置となる利点がある。
本発明のテラヘルツ波放射素子では、LEDやLDを励起光源として用いることができ、更に一体化できるので、極めてコンパクトなテラヘルツ波放射素子が提供できる。
本発明のテラヘルツ波放射素子では、温度センサや制御系などを含む駆動回路も半導体チップに集積できるので、極めてコンパクトなテラヘルツ波放射素子が提供できる。
本発明のテラヘルツ波放射素子を用いた装置では、集積化した温度センサや温度制御回路などと半導体チップに熱的に接触したペルチェ素子との組み合わせで、容易に温度制御が可能であり、コンパクトで高度な周波数安定化システムや駆動システムなどを半導体チップに必要に応じて集積化でき、極めてコンパクトで、通信用やセンシング用、医療用など各種用途向けのテラヘルツ波放射装置が提供できるという利点がある。
高濃度(例えば、5x1017cm−3程度)にアクセプタとしてのガリウム(Ga)を添加したp型ゲルマニウム(Ge)単結晶基板に、さらにn型の浅い不純物準位を形成する砒素(As)をp型のガリウム(Ga)不純物よりも少し少ない不純物量(例えば、1x1017cm−3程度)添加してあり、更に、深い準位を形成する金(Au)もp型のガリウム(Ga)不純物よりも少し少ない不純物量(例えば、2x1016cm−3程度)添加してある半導体チップを用意する。この半導体チップに、この接触させて接合一体化した高輝度近赤外線LED(半導体チップであるGeのバンドギャップエネルギーより大きい光エネルギーを放出するLED(例えば、1μmの波長程度を放出するLEDでよい))で半導体チップを光励起する。このとき半導体チップの伝導帯からn型の浅い不純物準位への電子遷移、又は、n型の浅い不純物準位の励起準位と基底状態準位への電子遷移に基づくテラヘルツ波のフォトルミネセンスをテラヘルツ波放射光として利用する。なお、必要に応じて、半導体チップ端面を平行ミラー化して、共振器を形成することによりテラヘルツ波レーザとすることができる。
上述の場合、Geの半導体チップはp型となっているので、フェルミエネルギーEfは、価電子帯付近にあるからn型の浅い不純物準位は空の状態になっている。また、伝導帯も電子がほとんどない状態である。ここにGeのバンドギャップエネルギーEgよりも大きい光エネルギーのLED光照射により多量の電子が価電子帯から伝導帯に励起されて、n型の浅い不純物準位への電子遷移、又は、n型の浅い不純物準位である砒素(As)の励起準位と基底状態準位への電子遷移に基づくテラヘルツ波(1−3THz程度)のフォトルミネセンスをテラヘルツ波放射光が放出される。
半導体チップのテラヘルツ波放射に係わる浅い不純物の濃度を、同一半導体チップ内で空間的に分布させて、高不純物濃度から低い濃度まで添加する。高濃度では、不純物バンドが形成される程度にしておくと、伝導帯または価電子帯と不純物バンド間のエネルギー差が放射テラヘルツ波に対応するので、更に長波長のテラヘルツ波が放射される。また、それらの不純物バンドのエネルギー幅が、濃度が少なくなるにつれて小さくなるので、可変波長のテラヘルツ波放射には好都合となる。
図1は、本発明のテラヘルツ波放射素子におけるテラヘルツ波を放射する半導体チップ1のエネルギーバンド図を示したもので、ここでは半導体チップ1として、ゲルマニウムGeのような間接遷移型の半導体で、しかも浅いアクセプタ不純物によるp型半導体であり、この浅いアクセプタ不純物の濃度よりも少ない量のドナ濃度の浅い不純物を添加してあり、更に、深い準位EDCを形成する不純物の少量添加または欠陥を導入した場合を示している。エネルギーバンド図には、テラヘルツ波放射に係わるエネルギー準位と外部励起光によるバンド間(価電子帯と伝導帯間)の電子の遷移、各種バンドと準位間(THzc0、THzc1)及び準位間(THz10)の再結合に基づくルミネセンス光としてのテラヘルツ放射光を示している。
発光ダイオードLEDやレーザダイオードLDなどによる外部からの励起光照射によって、半導体チップ1の価電子帯から電子を伝導帯に光励起するが、このとき、例えば、半導体チップ1がゲルマニウムGeであった場合、間接遷移型半導体なので、価電子帯と伝導帯とは、エネルギーEと波数ベクトルKとの空間で、波数ベクトルKの方向でズレが存在し、価電子帯から伝導帯への光励起による電子遷移において、光吸収過程A1とA2は、波数ベクトルKのズレがほとんど無いが、格子振動であるフォノンの吸収過程Apaとフォノンの放出過程Apeとを介して、伝導帯への電子遷移が行われる。
伝導帯に遷移した電子は、伝導帯の下端に素早く移動し、そこからドナ型の浅い準位の基底状態Ed0(その活性化エネルギーEA)、その第1励起状態Ed1、第2励起状態Ed2などを介し、更には、深い準位EDCを介する再結合RdD、フォノンを介する再結合Rpeなどにより価電子帯の正孔と再結合して消滅する。このとき、伝導帯の下端から浅い準位の基底状態Ed0への遷移に伴う再結合Rc0、伝導帯の下端から浅い準位の第1励起準位Ec1への遷移に伴う再結合Rc1、浅い準位の第1励起準位Ed1から基底状態Ed0への遷移に伴う再結合R10などは、半導体チップ1がGeの場合、それらのエネルギー差が10meV程度(約3THz)またはそれ以下なので、放射電磁波はテラヘルツ波(THz)となり、半導体チップ1から放射される。
上述の室温Trにおいて、伝導帯の下端から浅い準位への遷移や励起準位を含む浅い準位間の遷移に基づくテラヘルツ波(THz)放射が有効に生じるには、励起準位を含む浅い準位間の熱励起による再分布や、浅い準位から伝導帯への熱励起が極めて小さいことが要求される。一般に、ボルツマン定数をkとしたとき、室温のエネルギーkTrの4倍以上のエネルギー差ΔEがあれば下の準位から上の準位への熱励起が無視できると言われている。従って、室温のエネルギーkTrの4倍である4kTr以上のエネルギー差ΔEが、浅い準位の最も低いエネルギー位置にある基底状態Ed0とフェルミエネルギーEfとの間にあれば、伝導帯および、その下端の浅い準位の基底状態Ed0、第1励起準位Ed1、第2励起準位Ed2などには、電子の存在確立はほとんどゼロで、これらのバンドや準位には熱的に空の状態になっていると考えてよい。室温Trが300Kのときは、kTrがほぼ26meVであるから、エネルギー差ΔEは、ほぼ0.1eV以上であれば良いことになる。
なお、室温Trでは、格子振動も大きく、半導体チップ1のバンドギャップエネルギーEgや浅い準位の基底状態Ed0、第1励起準位Ed1、第2励起準位Ed2なども熱的に揺らいでおり、これらの間のエネルギー差も揺らいでいる。したがって、フォトルミネセンスとしての再結合によるテラヘルツ放射光も鋭いスペクトルではなく、幅広の放射光スペクトルとなる。このことはまた、励起準位を含む浅い準位間の遷移に基づくテラヘルツ波(THz)放射も、エネルギー準位間が狭いので、互いに波長が重なり合い、ほぼ連続的な放射スペクトルとなるので、テラヘルツ放射光の波長選択の観点からも連続的な波長選択が可能となり好都合となる。
半導体チップ1をGeとした場合、p型の不純物として、ガリウムGaを高濃度(5x1017cm−3程度)に添加し、テラヘルツ波(THz)放射に係わる浅い準位を形成する不純物として、例えば、n型不純物(ドナ)としての砒素Asを、p型の不純物(アクセプタ)であるガリウムGaよりも低濃度の5x1016cm−3程度添加すればよい。このときフェルミエネルギーEfは、p型の不純物のGaの作る浅いアクセプタ準位Ea0付近に位置する。従って、砒素Asの浅い準位の基底状態Ed0とフェルミエネルギーEfとのエネルギー差ΔEは、ほぼ、Geの300KにおけるバンドギャップエネルギーEg=0.67eVに極めて近い値であり、もちろん、4kTr(約0.1eV)よりも充分大きな値となっている。
図2には、本発明のテラヘルツ波放射素子におけるテラヘルツ波を放射する半導体チップ1の伝導帯付近のエネルギーバンド図を示したもので、上述の実施例1の図1に示す場合は、テラヘルツ波放射に係わる浅いドナとして、単一の浅い不純物を添加した場合であったが、ここでは複数の浅いドナ不純物を添加した場合の伝導帯付近の不純物準位の基底状態Ed0a、Ed0b、それらの第1励起準位Ed1a、Ed1b、及び第2励起準位Ed2a、Ed2bを示すと共に、それらを経由して再結合する様子とこれらの再結合による遷移に基づくテラヘルツ波放射の様子を図示したものである。
上述では、テラヘルツ波放射に係わる浅いドナ不純物として、例えば、砒素AsとアンチモンSbのように、2種類の添加の場合を示しているが、更に、リンPを添加するなどさらに多くの不純物を添加することにより、室温Trにおけるテラヘルツ波放射の発光スペクトルのメインピークを多くして、ほぼ連続的に波長選択が可能になるようにしている。
図3には、本発明テラヘルツ波放射素子におけるテラヘルツ波を放射する半導体チップ1のエネルギーバンド図を示したもので、ここでは、Geなどの間接遷移型の半導体テラヘルツ波放射に係わるp型となるアクセプタ不純物(活性化エネルギーEA2)、例えば、ガリウムGaと、やはり、テラヘルツ波放射に係わるn型となるドナ不純物(活性化エネルギーEA1)、例えば、砒素Asとを添加してあり、これに更に深い準位を形成する不純物、例えば、金(Au)や銅(Cu)を浅い不純物よりも高濃度に添加して、フェルミエネルギーEfの位置を、これらの深い準位付近にピン止めした場合のエネルギーバンド図を示している。
価電子帯から外部の光源からの光照射により励起された過程A1とフォノン吸収によるApaで伝導帯に電子遷移をしている様子を示し、更に、伝導帯下端から浅いドナ不純物準位(基底状態Ed0)を介して再結合する過程でテラヘルツ波放射を行う様子、また、深い準位を介すか、もしくは、フォノンの吸収または放出を伴い、価電子帯の上端部付近の浅いアクセプタ準位(基底状態Ea0)を介することによりテラヘルツ波放射を行い、更に価電子帯の正孔と再結合する様子を示している。
このように、深い準位を導入してこの領域にフェルミエネルギーEfをピン止めすることにより、浅いドナ不純物準位と浅いアクセプタ不純物準位の両方の不純物準位とそれぞれ伝導帯または価電子帯との間、及び不純物準位の励起状態を含む準位間遷移に伴うテラヘルツ波放射が可能と成り、テラヘルツ波の放射スペクトルも連続的になりやすくなる。もちろん、浅い不純物準位であるドナやアクセプタも複数ずつ添加することにより、更に多くのテラヘルツ波の放射に係わるエネルギー準位数を多くさせることができる。
図4には、本発明のテラヘルツ波放射素子において、テラヘルツ波を放射する半導体チップ1と光励起用LEDの光源10とを一体化させた構造の断面概略図を示している。半導体チップ1として、ゲルマニウムGe、シリコンSi、ガリウムリンGaPやガリウム砒素GaAsなどを用いた場合は、それらのバンドギャップエネルギーEgは、赤外線領域なので、例えば、高輝度の赤色発光ダイオードを光励起用LEDの光源10として利用することができる。
同図4では、市販の透明プラスチック300のレンズをもつ赤色発光ダイオードを光励起用LEDの光源10として、その透明プラスチック300のレンズの先端部を削り、透明接着剤130を用いて、半導体チップ1と接合して、一体化させた場合を示している。LEDの光源10の端子101,102を介して電流を供給して、光源10を発光させ光励起して、半導体チップ1からテラヘルツ波を放射させる。もちろん、ここでは図示しないが、露出したLEDチップ5を直接半導体チップ1に透明接着剤130などで接合しても良い。
図5には、本発明のテラヘルツ波放射素子をテラヘルツ波のレーザとして利用する場合の一実施例を示すもので、高輝度の発光ダイオードLEDの光源10を光励起強度を増すために、例えば、実施例1から3に示したようなゲルマニウムGe、シリコンSi、ガリウムリンGaPやガリウム砒素GaAsなどの半導体チップ1の両側から光励起できるように挟みこむようにした場合の横断面図の概要を示している。励起光の半導体チップ1への結合効率を上げるためと一体化を促進するために、透明接着剤130で光源10と半導体チップ1とを接合している。また、レーザ作用の高効率化のために半導体チップ1の両端面を研磨して光共振器100を形成している。これらの両端面は、所望のテラヘルツ波の反射膜60,61が形成されてあり、一方の反射膜61の反射率を他方の反射膜60より小さくして、反射率の小さい反射膜61の方から有効にテラヘルツ波が放出されるようにしているが、ここでは更にレーザ発振してレーザ光放射されるようにしている。一般に、誘導放出確率自体は、電磁波の波長依存性を有しないが、自然放出確率が波長λの3乗に逆比例するがするので、波長の短い可視光線に比べて、テラヘルツ波のように波長が長い方が極端に誘導放出しやすい条件が整う。従って、テラヘルツ波のレーザは実現しやすい。
一方の反射膜60を、例えば、所望のテラヘルツ波用の分布帰還型反射膜をすれば、その所望の波長のテラヘルツ波だけが、選択的に反射されるので、その所望の波長のレーザ光の出射が可能となる。また、連続光にするか、パルス光にするかは、2個の高輝度の発光ダイオードLEDの光源10の端子101,102に電流を流す際に、直流電流を流せば連続波のレーザ光が、パルス電流を流せばパルス光レーザが得られることになる。この連続光とパルス光については、もちろん、レーザに限らずテラヘルツ波の自然放出による発光も電流の制御で行うことができる。
図6には、本発明のテラヘルツ波放射素子をテラヘルツ波のレーザとして利用する場合の他の一実施例を示すもので、高輝度の発光ダイオードLEDの光源10を用いて、半導体チップ1の一方の面から光励起をして、半導体チップ1の厚み方向の両方の面をミラーとして利用する共振器100とし、面発光レーザとして利用できるようにした場合である。なお、ここでは、半導体チップ1の一方の面には、発光ダイオードLEDの光源10からの励起光は透過するが、所望の波長のテラヘルツ波だけが、選択的に反射させるための分布帰還型の反射膜60が形成されてあり、レーザ発光するテラヘルツ波だけが選択反射されるようにしてあり、他方の面は、外部の空気との屈折率差を利用して反射させるようにした場合で、この面からテラヘルツ波のレーザ光が放射されることになる。もちろん、この空気との屈折率差を利用するばかりでなく、テラヘルツ波の反射膜として金(Au )薄膜を形成するなどして、反射率を高めたミラーを形成しても良い。また、ここでは、半導体チップ1と光源10の発光部との間に空気層となる空隙30を形成して、反射率を高めている。
図7には、本発明のテラヘルツ波放射装置の構成の概要を示すための一実施例のブロック図を示す。本発明のテラヘルツ波放射装置は、テラヘルツ波放射素子と光励起用光源の駆動回路を備えた本体と、その他の必要と認められた制御系や表示部などを備えた構造である。ここでは、その他の必要と認められた制御系や表示部として、温度制御機構、波長選択機構、演算回路と表示部を備えた場合を示している。温度制御機構は、LEDの光源10からの光励起が強く、小さな半導体チップ1が予想以上に温度上昇して、所定の室温Trからずれてしまう場合、波長の安定が得られがたい場合や、むしろ温度を少し上昇させたいなどの目的で、半導体チップ1の温度を検出すると共に冷却や昇温させるなど、所定の温度に保つことや所定のプログラムで温度変化させるなどができるようにするものである。連続波長のテラヘルツ放射にも温度上昇は有効である。また、波長選択機構は、テラヘルツ波の波長選択用のフィルタの装着とその切替用の機構、更に外部に分光器を備えて、これによる波長切替などを行う機構などを指す。演算回路は、光源の駆動に関しては、所定の電流パルスの大きさや時間設定などの制御や表示部の表示関連演算、更には、波長選択のためのプログラム、テラヘルツ発光のスペクトルや発光強度のフィードバック系の演算制御に係わるところである。これらのそれぞれの技術要素は公知のものが使用できるので、ここでは省略する。
本発明のテラヘルツ波放射素子及びこれを用いたテラヘルツ波放射装置は、本実施例に限定されることはなく、本発明の主旨、作用および効果が同一でありながら、種々の変形がありうる。
従来の大出力パルスレーザや2波長レーザ照射などにおいては、テラヘルツ波の発生効率が悪いので、出力が100mWクラスのテラヘルツ波の発生でも1メートル角程度の大型の装置を必要としていた。これに対して本発明のテラヘルツ波放射素子は、数ミリメートル程度の超小型になり、携帯可能であると共に、本テラヘルツ波放射素子を搭載して、放射テラヘルツ波の導波路との組み合わせなどによるテラヘルツ波放射装置は、医療分野、創薬分野、バイオ分野、分析化学分野、センシング分野、非破壊検査分野、通信分野、種々の加工分野など、種々の用途に適用できる。
本発明のテラヘルツ波放射素子におけるテラヘルツ波を放射する半導体チップ1の一実施例のエネルギーバンド図の概要を示したものである。(実施例1) 本発明のテラヘルツ波放射素子におけるテラヘルツ波を放射する半導体チップ1の一実施例の伝導帯付近のエネルギーバンド図を示したものである。(実施例2) 本発明のテラヘルツ波放射素子におけるテラヘルツ波を放射する半導体チップ1の他の実施例のエネルギーバンド図の概要を示したものである。(実施例3) 本発明のテラヘルツ波放射素子において、テラヘルツ波を放射する半導体チップ1と光励起用LEDの光源10とを一体化させた構造の一実施例の断面概略図を示している。(実施例4) 本発明のテラヘルツ波放射素子をテラヘルツ波のレーザとして利用する場合の一実施例を示すものである。(実施例5) 本発明のテラヘルツ波放射素子をテラヘルツ波のレーザとして利用する場合の他の一実施例を示すものである。(実施例6) 本発明のテラヘルツ波放射装置の構成の概要を示す一実施例のブロック図である。(実施例7)
符号の説明
1 半導体チップ
5 LEDチップ
10 光源
20 LEDステム
30 空隙
60、61 反射膜
100 共振器
101、102 端子
111、112 電極
120 LEDチップ支持体
130 透明接着剤
131 接着剤
210 リード線
300 透明プラスチック

Claims (10)

  1. 半導体チップを光励起してテラヘルツ波を放射させるようにした光励起型のテラヘルツ波放射素子において、光励起用光源を備えていること、該光励起用光源の光エネルギーは、該半導体チップのバンドギャップエネルギー以上であること、該半導体チップは活性化エネルギーEAの浅い不純物準位を有し、かつ室温状態で該テラヘルツ波の放射ができるようにした材料であること、該テラヘルツ波は、該半導体チップの伝導帯もしくは価電子帯に、これらのバンド間遷移に基づき光励起されたキャリアが励起準位を含む該浅い不純物準位を通して再結合する時に放射されるテラヘルツ波であること、を特徴とする室温動作のテラヘルツ波放射素子。
  2. 温度Trなる室温状態で、テラヘルツ波の放射ができる材料としての半導体チップにおいて、その室温TrでのフェルミエネルギーEfと該テラヘルツ波の放射に係わる浅い不純物準位の基底状態E0との差ΔEが、ボルツマン定数をkとして、室温のエネルギーkTrの4倍以上となる深い位置にあるように、他の不純物を添加するなどしてフェルミエネルギーEfの位置を調整してある請求項1記載のテラヘルツ波放射素子。
  3. テラヘルツ波の放射に係わる浅い不純物準位の不純物の他に、該浅い不純物準位の不純物とは逆の伝導型の不純物の添加量を前記浅い不純物準位の不純物量よりも多く添加して、室温状態でのフェルミエネルギーEfの位置を調整してある半導体チップを用いた請求項2記載のテラヘルツ波放射素子。
  4. テラヘルツ波の放射に係わる浅い不純物準位の不純物の他に、深い準位を形成する不純物を添加するか、もしくは格子欠陥を導入して深い準位を形成するかして、室温状態でのフェルミエネルギーEfの位置を調整してある半導体チップを用いた請求項2記載のテラヘルツ波放射素子。
  5. 浅い不純物準位として、アクセプタ型の不純物、ドナ型の不純物、もしくは、これらの双方の不純物を添加するにあたり、それぞれの型で複数の異なる不純物を添加することにより複数の浅い不純物準位を有するようにした半導体チップを用いた請求項1乃至4のいずれかに記載のテラヘルツ波放射素子。
  6. 半導体チップをゲルマニウム結晶とした請求項1乃至5のいずれかに記載のテラヘルツ波放射素子。
  7. 光励起用光源を、発光ダイオードもしくはレーザダイオードとした請求項1乃至6のいずれかに記載のテラヘルツ波放射素子。
  8. 光励起用光源と半導体チップとを、一体化させた請求項1乃至7のいずれかに記載のテラヘルツ波放射素子。
  9. 半導体チップに共振器を設けてテラヘルツ波のレーザ発振させるようにした請求項1乃至8のいずれかに記載のテラヘルツ波放射素子。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載のテラヘルツ波放射素子を用い、少なくとも光励起用光源の駆動回路を備えたことを特徴とするテラヘルツ波放射装置。
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