JP2010118365A - 傾斜バンドギャップを用いた電磁波放射素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、単純な構造で、超小型で、室温動作が可能であり、テラヘルツ波を含む電磁波のパルス波及び連続波の放射を高効率で発生させると共に、レーザ発振も可能な電磁波放射素子を提供する。
【解決手段】半導体の不純物のエネルギー準位を介して電子・正孔対が再結合するときに電磁波を放射する電磁波放射素子であり、半導体に傾斜バンドギャップ領域を設ける。傾斜バンドギャップ領域に光励起などで生成された電子と正孔は、そこに形成される電界により最狭バンドギャップ領域に向かって移動するように構成し、少なくともこの傾斜バンドギャップ領域のうちの最狭バンドギャップ領域に電磁波を放射に係わる不純物を添加する。効率よく電子・正孔対を最狭バンドギャップ領域に集め、この領域でのみ不純物準位を介した電磁波放射を行わせ、他の領域は高抵抗にして、放射電磁波の吸収を抑えるようにする。
【選択図】図1

Description

本発明は、半導体のバンド間遷移の光励起により発生した電子・正孔対が半導体に設けた傾斜バンドギャップ領域でドリフト電界によりバンドギャップの小さい方に移動し、そこで不純物準位を介して再結合するときに電磁波を放射させる電磁波放射素子に関するもので、半導体の浅い不純物準位を介しての放射する時には、室温でもテラヘルツ波が効率よく発生できるようにしたものである。
小型で簡便なテラヘルツ波を含む電磁波放射素子となりえるので、生体や一般有機物などのテラヘルツ波の吸収などを利用した検査システム、情報通信分野、医療分野、創薬分野、バイオ分野、分析化学分野、センシング分野、非破壊検査分野、種々の加工分野など、種々の用途に利用できるものである。
従来、浅いドナ不純物密度を極めて小さくしたn型シリコン(Si)単結晶にCO2レーザを照射して、ドナ不純物準位からSiの伝導帯にキャリアを光励起させ、Siの伝導帯に励起されたキャリア(この場合、電子)がそのドナ不純物準位に戻るという再結合するときで、ドナ不純物準位の多くの励起準位を介して基底状態の戻るときに、最も寿命の長い準位から他の準位を介して電磁波の放射を行う。このときの放射電磁波はテラヘルツ波に対応しており、テラヘルツ波のレーザ放射が達成されていた(非特許文献1)。しかしながら、これらの過程は、10K程度の極低温でのみ見られる現象である。何故ならば、浅いドナ不純物のエネルギーは、Si結晶の場合、高々、45meV程度であり、室温Tr(300K程度)では、浅いドナ不純物準位は、十分にイオン化されて電子が空の状態であり、多くの電子が熱平衡状態で、伝導帯に熱励起されており、光励起の効果が見えなくなるからである。したがって、極低温にしておき、浅いドナ不純物準位に電子が存在させて、この電子を伝導帯に光励起しておく必要があった。
また、従来、p型ゲルマニウム(Ge)結晶に強電界と直交強磁場を印加して、軽い正孔を加速して反転分布を形成させて、軽い正孔と重い正孔とのエネルギー準位間のエネルギー差の直接遷移に基づくテラヘルツ波放射を利用するもので、更に強磁場を変化させてテラヘルツ波の波長可変を実現するp−Geレーザがあった(非特許文献2)。また、半導体の量子井戸に強電界を印加して、トンネル電流とサブバンド間の遷移を利用したテラヘルツ放射装置があった。しかし、これらの装置は液体ヘリウム温度程度の極低温が必要であり、大型化せざるを得ないという問題があった。
従来の光励起を利用する方法は、テラヘルツ波の発生効率が低いので、大出力のレーザ光発生装置が必要で、更に非線形性固体中でのレーザ光の結合のための光学系が大型になり、パルスレーザ光照射では、高出力が得られやすいものの連続波が発生できない問題があり、また、電子管を利用する方法でも、やはり大型で、しかも高価であったので、小型、単純な構造で、しかも安価なテラヘルツ波発生装置が望まれていた。
本出願人は、先に、「テラヘルツ波発生ダイオードおよびこれを用いたテラヘルツ波放射素子」(特開2005−322733)を発明し、さらに、深い準位を形成する不純物を添加した「深い準位を持つテラヘルツ波発生ダイオードおよびこれを用いたテラヘルツ波放射素子」(特開2007−129043)を発明した。しかし、これらはダイオードであり、pn接合が形成できる半導体チップに限られていた。
本出願人は、先に、「テラヘルツ波放射素子及びこれを用いたテラヘルツ波放射装置」(特願2008-102962)を発明した。その発明は、半導体のバンドギャップEg以上のエネルギーの光を照射してキャリアである電子・正孔対を形成して、浅い不純物準位を介して電子、正孔が再結合するときに発光するテラヘルツ光を利用するもので、所謂、フォトルミネセンス光であるからpn接合が形成できない半導体チップを用いてもよく、しかも、室温動作が可能な小型で簡便なテラヘルツ波の発生とそのレーザ発振化、更に、波長選択もできる装置である。しかしながら、室温での発光効率は悪く、十分大きい発光効率が得られるテラヘルツ波放射素子が望まれている。
S.G.Pavlov, et.al.,"Far-Infrared stimulated emission from optically excited bismuth donors insilicon", Applied Physics Letters, Vol.80, No.25, pp.4717-4719,2002. K.Unterrainer et. al., "TunableCyclotron- Resonance Laser in Germanium", Physical Review Letters, Vol.64,NO.19, pp.2277-2280, 1990. 特開2005−322733公報 特開2007−129043公報
本発明は、単純な構造で、しかも超小型で、室温動作が可能であり、テラヘルツ波(THz波)ばかりでなく、赤外線、可視光線などの波長の短い電磁波にも適用できる高効率電磁波放射のパルス波及び連続波の発生、更には、レーザ発振と波長選択も可能な電磁波放射素子を提供すること目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係わる本願発明の電磁波放射素子は、半導体の不純物のエネルギー準位を介して伝導帯の電子と価電子帯の正孔とが不純物準位を介して再結合するときに電磁波を放射する電磁波放射素子において、伝導帯または価電子帯と励起準位を含む不純物準位との間、不純物の励起準位間もしくは不純物の励起準位と基底状態との間のいずれかのエネルギー間隔に相当する電磁波放射であること、半導体に傾斜バンドギャップ領域を設けてあること、該傾斜バンドギャップ領域に最狭バンドギャップ領域を設けてあること、前記傾斜バンドギャップ領域に生成された電子と正孔は、該傾斜バンドギャップに基づく電界により前記最狭バンドギャップ領域に向かって移動するように構成してあること、少なくとも前記最狭バンドギャップ領域に前記不純物を添加してあること、を特徴とするものである。
例えば、ゲルマニウム(Ge)とシリコン(Si)とは、混晶半導体として、任意にその組成が異なる単結晶を形成することができる。一般に、これらの混晶半導体の組成はSi1−xGeとして記述され、x=0ならば,純粋のSi単結晶となり、xが大きくなり1に近づくに従い、Geの比率が大きくなることを意味する。SiのバンドギャップEgは、室温で1.1eVあるのに対して、Geは、0.68eVであり、組成の変化(xの変化)により、そのバンドギャップEgの値を連続的に変化させることができる。しかし、空間的に急激に組成を変化させると格子定数が急変するので、単結晶は得難い。本願発明では、徐々にxの値を変化させて、バンドギャップEgの大きさを連続的に変化させるようにして、傾斜バンドギャップ領域を形成している。そして、傾斜バンドギャップ領域で最も小さいバンドギャップ(最狭バンドギャップ領域と呼ぶことにする)のところに、電磁波放射に係わる不純物を少なくとも添加しておくと、傾斜バンドギャップ領域で光励起されたキャリアである電子と正孔とが、傾斜バンドギャップEg内に発生している電界(ドリフト電界)により加速されて、この最狭バンドギャップ領域に集まるようにしている。更にこの不純物準位を介して再結合するようにしておくので、この再結合の遷移過程で不純物準位のエネルギー差に相当する電磁波を放射させるようにするものである。そして、電磁波放射に係わる不純物が浅いドナの場合、最狭バンドギャップ領域には、電磁波放射に係わる浅いドナ不純物の添加量よりも多く、浅いアクセプタ不純物の添加しておく。また、この最狭バンドギャップ領域の以外の半導体領域は、自由キャリア吸収が極めて少なくなるように、浅いアクセプタ不純物の添加量を少なくして高抵抗にしておくと、外部に放射されるテラヘルツ波などの電磁波も高効率で放射されることになる。
また、上述の場合、最狭バンドギャップ領域では、傾斜バンドギャップ領域で発生した電子・正孔対は、最狭バンドギャップ領域に集まり再結合するので、この領域でのフォトルミネセンス光が高効率で発生する。一般にレーザ作用は、レーザ光波長の入射電磁波強度(光密度)が大きいほど大きく、レーザ発振がしやすい。本発明の傾斜バンドギャップを用いた電磁波放射素子では、電磁放射に寄与する電子・正孔対が最狭バンドギャップ領域に閉じ込められる構造になっていると共に、最狭バンドギャップ領域は、屈折率も大きくなり、放射電磁波光も閉じ込められる。従って、レーザ発振が極めて起こしやすい構造であり、さらに、放射電磁波の波長が長いとその分、レーザ発振がしやすいので、テラヘルツ光であれば、赤外線や可視光線に比べて、一層レーザ発振しやすいという特長がある。
ゲルマニウム(Ge)やシリコン(Si)単結晶の基板を用いた場合、一般に、p型の導電型にするには、不純物として浅い不純物準位のアクセプタになるガリウム(Ga)やホウ素(B)を添加する。また、一般に、n型の導電型の不純物としては、浅い不純物準位のドナとなるリン(P)、砒素(As)やアンチモン(Sb)を用いる。Ge単結晶では、p型の伝導型となるGaの浅い不純物準位は、アクセプタとして、その基底状態はGeの価電子帯からわずか約10meV離れたバンドギャップエネルギーEg内にあり、これが活性化エネルギーEAに対応している。また、n型の伝導型となる砒素(As)の基底状態の浅い不純物準位は、Geの伝導帯からやはり約10meV離れたバンドギャップエネルギーEg内にあり、これがその活性化エネルギーEAに対応する。ここで、浅い不純物準位とは、室温Trにおいて、不純物の活性化エネルギーEAが、kをボルツマン定数として、kTrの室温の熱エネルギーに対して、十分その不純物準位がイオン化することができる程度、すなわち、EAが4kTr以内である不純物準位を指す。例えば、Geでは、上述のGa、Bなどの浅いアクセプタ不純物やP,As,Sbのような浅いドナ不純物の他、不純物として銅(Cu)の場合は、多くのCuの不純物準位を形成するが、深い準位の他に、価電子帯から40meV程度の浅い不純物準位も形成すると言われている。しかし、Siに対してCuの不純物は、やはり多くの準位を形成するが、最も浅い準位でもEAが価電子帯から測定して約240meV程度であるので、もはや、浅い不純物準位ではなく、すべて深い不純物準位として取り扱うことができる。
なお、半導体チップの傾斜バンドギャップに、例えば、混晶半導体のSi1−xGeを用いた場合には、xの値をゼロから1に近づけるに従い、純粋のSi単結晶から純粋のGe単結晶に近づくが、SiとGeとは間接遷移型半導体であり、しかもこれらの伝導帯下端が、Siでは(100)方向にあるのに対して、Geでは、(111)方向にある。したがって、浅いドナ不純物準位となるリン(P)の準位は、Siでは(100)方向に伝導帯下端から約45meV程度下に形成するのに対し、Geでは、(111)方向の伝導帯下端から約10meV程度下に形成する。傾斜バンドギャップ領域で、xの値をゼロから1に徐々に変化させるときには、この浅いドナ不純物準位となるリン(P)の準位も(100)方向の約45meV程度から小さくなり、(100)方向から途中で交差して、(111)方向にバトンタッチして、遂には(111)方向のGeの伝導帯下端から約10meV程度下に形成するようになる。このようにxの値の変化に対してバンドギャップの変化と不純物準位の深さは複雑な動きをするが、xの値の変化に対して、バンドギャップの変化と不純物準位の深さは、連続的で単調的な変化をするだけである。
本発明の電磁波放射素子は、半導体チップの傾斜バンドギャップのうち、最大のバンドギャップ領域における価電子帯と伝導帯との間のバンド間エネルギーであるバンドギャップエネルギーEgよりもフォトンエネルギーが大きい光を照射する光源で半導体チップに照射することにより、価電子帯から伝導帯にキャリア(この場合、電子)を励起して、伝導帯に励起された電子が半導体チップの少なくとも最狭バンドギャップ領域に添加してある浅い不純物準位を経由して、価電子帯の正孔と再結合するときの伝導帯と伝導帯に近い浅い不純物準位、価電子帯と価電子帯に近い浅い不純物準位、または、浅い不純物準位の中の励起状態の準位から基底状態間のエネルギー差が丁度、当該放射電磁波(この場合、テラヘルツ波)となる場合、更に、近い浅い不純物準位の代わりに深い準位を用いた場合、また、浅い準位や深い準位を経由して伝導帯又は価電子帯との間のエネルギー準位間のエネルギーに対応する電磁波を放射するようにした場合である。このようにバンド(伝導帯又は価電子帯)と浅い準位間、又は励起準位も含む浅い準位内での準位間遷移に基づくテラヘルツ波帯や赤外線などの電磁波のフォトルミネセンスなどを利用するものである。ここで重要なのは、室温Trでテラヘルツ波帯のフォトルミネセンスを効率よく観測するためには、電磁波放射に関与する半導体チップのバンド(伝導帯又は価電子帯)と浅い不純物準位の双方に熱励起されるキャリアがなく空の状態になっているように、フェルミエネルギーの位置調整が必要である。
上述のような半導体チップである、例えば、Si半導体チップに、高輝度LEDなどでSiのバンドギャップエネルギーEgよりも大きな光エネルギーの光を照射することにより、Siの価電子帯から伝導帯に電子を光励起して、伝導帯からドナ型の浅い不純物準位をつくるリン(P)の空の不純物準位に遷移するとき、およびPの浅い不純物準位の励起状態からその基底状態に遷移するときにそれらのエネルギー差ΔEに対応する電磁波はテラヘルツ波帯の放射となる。もちろん、Pの浅い不純物準位の基底状態に遷移した電子は、フォノン(格子振動粒子)を吸収または放出して、価電子帯にある正孔と再結合して元に戻る。半導体チップに深い準位を形成する不純物も添加してあると、この深い準位が再結合センターとなり、これを経由して価電子帯にキャリアが戻りやすくなるので、好都合である。また、深い準位を介して再結合するときには赤外光などの電磁波を放射することになる。また、光励起がバンド(伝導帯と価電子帯)間で行うので、どちらも状態密度が大きいので大量のキャリア(電子・正孔対)の励起ができるので、更に、好都合である。
本発明の請求項2に係わる電磁波放射素子は、傾斜バンドギャップ領域は、混晶半導体の組成を変化させて形成してある場合である。
これらの混晶半導体の組成は、例えば、上述のようにSi1−xGeを用いても良い。この他にも、例えば、周期律表のIII族とV族との混晶、GaAl1−xAs1−yのx、yを0から1の間を変化させた結晶を用いることもできる。
本発明の請求項3に係わる電磁波放射素子は、最狭バンドギャップ領域のフェルミエネルギーEfが、ボルツマン定数をkとして、放射電磁波に対応する不純物の準位から動作温度TのエネルギーkTの4倍以上離れた深い位置にあるように、その位置を調整してある場合である。
例えば、半導体チップの最狭バンドギャップ領域としてSi1−xGeのx=1とした場合は、Ge結晶となるので、電磁波放射に係わる不純物が浅いドナの場合には、p型となる浅いアクセプタ不純物を、浅いドナの密度よりも多く添加して、この最狭バンドギャップ領域をp型にして、この領域のフェルミエネルギーEが、ドナ不純物準位から4kTrよりも離れるようにする。すなわち、この浅いドナ不純物として砒素(As)を選択した場合は、対応するバンドとして伝導帯であるから、逆の伝導型であるp型の浅いアクセプタ準位を価電子帯付近に形成するガリウム(Ga)を、n型の浅い不純物準位を形成する不純物砒素(As)の添加密度よりも多く添加することにより、室温でフェルミエネルギーEの位置を価電子帯付近に設定することができる。したがって、GeのバンドギャップエネルギーEgは、0.68eVであり、室温Trが300Kでは、kTrが0.026eVであり、4kTrにしても約0.1eV程度であるから室温TrでのフェルミエネルギーEfの位置は、伝導帯下端近くに存在するAsの浅い不純物準位(伝導帯下端から約0.01eV下に位置する)からほとんどEg程度離れているので、対応するバンドである伝導帯とAsの浅い不純物準位には、室温でほとんどキャリアが存在していない空の状態になっている。
上述では、最狭バンドギャップ領域のフェルミエネルギーEfが放射電磁波に対応する不純物の準位から動作温度TのエネルギーkTの4倍以上離れた深い位置にあるようにするのに、アクセプタ不純物を添加した場合であったが、深い準位を形成する不純物や格子欠陥などを導入して、フェルミエネルギーEfをこれらの深い準位の位置付近に調整することもできる。
本発明の請求項4に係わる電磁波放射素子は、不純物の準位が浅い準位であり、該準位を介して発光する電磁波放射はテラヘルツ領域である場合である。
上述のように、電磁波放射に係わる不純物が浅い不純物準位であり、アクセプタ型の不純物、ドナ型の不純物、もしくは、これらの双方の不純物を添加しても良い。それぞれの導電型で複数の異なる不純物を添加することにより複数の浅い不純物準位を有するようにすることができる。この場合、種々の波長のテラヘルツ波長の電磁波を放射することができる。
電磁波放射素子では、テラヘルツ波などの電磁波の波長可変が必要な場合が多い。1種類の浅い準位の不純物では、基底状態と励起状態との準位を利用しても有効な準位は、せいぜい2つか3つ程度である。浅い準位の不純物の種類を変えるとそれぞれの活性化エネルギーEAが異なるので、これらの励起準位をも含めるとその分、励起準位も含めて多くのテラヘルツ波などの電磁波放射準位数が増加するので、電磁波がそれらに応じて多くの異なる波長で放射されるようになる。レーザ発振をさせるときに、波長選択用のフィルタと組み合わせると、波長可変の特定の波長のレーザ光を放射させることもできる。
本発明の請求項5に係わる電磁波放射素子は、電子と正孔の生成を励起光源による光励起により発生させた場合である。
電子と正孔の生成は、電子照射や放射線照射により行わせることもできるが、ここでは、効率の良く、簡便な光励起を用いた場合である。このとき、傾斜バンドギャップ領域の最大バンドギャップよりも僅かに大きい光エネルギーの波長の光源を用いると、傾斜バンドギャップ領域の内部深くまで励起光が侵入し、効率よく電子・正孔対を発生させて、これらの発生電子・正孔対のキャリアを傾斜バンドギャップ領域で最狭バンドギャップ領域に集めて、再結合させるようにしている。
上述では、外部の光源などによる光励起による傾斜バンドギャップ領域での電子と正孔の生成の例であったが、例えば、ダブルへテロレーザダイオードのようなヘテロ接合を形成し、その中の発光再結合をさせるバンドギャップを狭くした領域を傾斜バンドギャップ領域とし、更にその中に最狭バンドギャップ領域を形成してある構造として、この傾斜バンドギャップ領域を有するpn接合に順方向電流を流し、これにより傾斜バンドギャップ領域に電子と正孔を生成するようにしても良い。
本発明の請求項6に係わる電磁波放射素子は、励起光源を発光ダイオード(LED)もしくは半導体レーザ(LD)とした場合である。
本発明の請求項7に係わる電磁波放射素子は、励起光源と電磁波放射用の半導体チップとを一体化した構造の場合である。
励起光源として発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)とした場合、電磁波をフォトルミネセンスとして放射する半導体チップと一体化させて、極めてコンパクトなテラヘルツ波を含む電磁波の光源とすることができる。LEDやLDとして市販の高輝度なものを使用しても良いし、専用のLEDやLDを製作して、チップ間接合などで一体化させたり、半導体チップにエピタキシアル成長で必要なLEDやLD用半導体材料を形成してLEDやLDを作成して半導体チップとの一体化を図ることもできる。もちろん、半導体チップの、傾斜バンドギャップ領域の最大バンドギャップよりも光エネルギーの大きいLEDやLD用半導体材料を用いる方が良い。
本発明の請求項8に係わる電磁波放射素子は、電磁波放射用の半導体チップに共振器を設けて半導体レーザとした場合である。
一般に、波長の3乗に比例して誘導放出確率の割合が自然放出確率に対して大きくなるから(実際には、誘導放出確率は周波数依存性を有しないが、自然放出確率が波長の3乗に逆比例する。すなわち、放射電磁波の自然放出確率は、波長が長くなると極端に小さくなるので、誘導放出での放射が極めて大きくなる。)、放射電磁波としてのテラヘルツ波は、近赤外線や可視光に比べて極めて波長が長いので、自然放出割合よりも誘導放出割合が極めて大きくなり、誘導放出を利用するテラヘルツ波のレーザが達成しやすい。誘導放出確率はその放射する同一の波長の電磁波の量に比例するので、その所望の発振テラヘルツ波の波長の共振器を半導体チップに設けると良い。この場合、波長の選択はバンドパスフィルタや分布帰還型フィルタや分布帰還型ミラーなどを用いることができる。また、共振器は、半導体チップの対向する端面を反射面として利用したり、金属をこの端面に反射鏡として形成しても良いし、所望の波長の選択反射ミラーを形成しても良い。また、単結晶の結晶面を利用すると、極めて平坦で平行度の良い反射鏡が達成できる。共振器のミラーの向きを半導体チップの厚み方向にすれば、垂直共振器面発光レーザに相当するように構成することもできる。また、分光器などを利用した可変波長の共振器を用いれば、可変波長レーザ発振器としての電磁波放射素子が提供できる。
本発明の請求項9に係わる電磁波放射素子は、冷却用素子を一体化した場合である。
電磁波放射素子は、温度に対して敏感であり、可能な限り低温動作が望ましいし、温度変動により放射電磁波の波長が変動するので、温度制御が望ましい。このために、ペルチェ素子などの冷却用素子を一体化すると良い。更に、温度センサと冷却用素子としてのペルチェ素子とを組み合わせた温度制御回路を備えることもできる。
ペルチェ素子は極めて小型で、電流を流すことにより冷却も発熱も可能で、半導体チップの温度を一定温度に保持するなどの温度制御を行うことにより、放射電磁波の周波数安定化制御などが可能である。
この電磁波放射素子には、更に、光源としてのLEDやLDの駆動に係わる駆動回路を備え、パルス動作、連続波動作、温度制御、出力強度調整、波長制御系駆動などのフィードバック系の組み合わせによる制御系も含んだモジュールにすることもできる。
本発明の傾斜バンドギャップを用いた電磁波放射素子では、半導体チップの浅い準位のフォトルミネセンスに基づく放射再結合を利用し、励起光に基づく発生した電子・正孔対を有効に最もバンドギャップの狭い領域(最狭バンドギャップ領域)にドリフト電界により集めることができるので、極めて小型で単純な構造で、しかも極めて効率の良いフォトルミネセンス光を放射させることでできるという利点がある。
本発明の電磁波放射素子では、最狭バンドギャップ領域は、電磁波放射に係わる浅い準位の不純物と、この不純物とは反対の導電型を形成する浅い準位の不純物の添加量を多くするか、深い準位を形成する格子欠陥や不純物を電磁波放射に係わる浅い準位の不純物の添加量よりも多く添加するなどして、不純物や自由キャリアによる吸収が多いが、この最狭バンドギャップ領域の幅を狭めることにより、その影響を小さくすることができる。また、この最狭バンドギャップ領域以外の半導体領域は、傾斜バンドギャップ領域を含めて不純物を少なくすることで高抵抗化してあるので、発生した放射電磁波はこの半導体領域での吸収が少なくなり、その分、外部に放射電磁波を多く出射することができると言う利点がある。
本発明の電磁波放射素子では、光励起などで発生した電子・正孔対が不純物準位を介して再結合するときに最狭バンドギャップ領域に集まり、この領域で電磁波放射するようにしているので、この領域にミラーや回折格子などを含む共振器を備えておくことにより、同一波長で、同一位相の電磁波の光強度が大きくなり、誘導放出が起こしやすい環境になる。一般に、バンドギャップが小さい領域が屈折率も大きくなり、電磁波の閉じ込め効果が大きくなるので、一層の誘導放出確率が大きく、レーザ作用が起こりやすいという利点がある。
本発明の電磁波放射素子では、従来は困難であった室温でのテラヘルツ放射も電磁波放射に係わる浅い準位の不純物を、傾斜バンドギャップの構造の中に設けてある最狭バンドギャップ領域に添加しておき、更にフェルミエネルギーを調整することにより高効率発光となるという利点がある。
本発明の電磁波放射素子は、極めて小さな半導体チップ(例えば、1mm角程度)を用いて作成できるので、冷却用素子であるペルチェ素子などで冷却も可能で、超小型の安定な電磁波放射素子として提供できるという利点がある。
本発明の電磁波放射素子では、半導体チップの許容帯である伝導帯または価電子帯(これらは、エネルギーバンドまたは単にバンドと呼ばれる)と、意図的に添加したテラヘルツ波も含む電磁波放射に係わる浅い不純物準位との間、およびこれらの浅い不純物準位の励起準位と基底状態準位との間での注入少数キャリアの放射遷移に基づく、言わば、バンドと準位間遷移および準位間遷移に基づく電磁波放射なので、波長選択機構の具備により特定波長もしくは可変波長の電磁波放射素子が提供できるという利点がある。
本発明の電磁波放射素子では、反射膜との組み合わせにより、面発光としてのテラヘルツ波を含むレーザが達成できるので、外部に光学系を設けて平行光線にする必要が無く、電磁波放射素子からの放射電磁波がそのまま平行光線になるので、単純な構造の装置となる利点がある。
本発明の電磁波放射素子では、LEDやLDを励起光源として用いることができ、更に一体化できるので、極めてコンパクトな電磁波放射素子が提供できる。
本発明の電磁波放射素子では、温度センサや制御系などを含む駆動回路も半導体チップに集積できるので、極めてコンパクトな電磁波放射素子が提供できる。
半導体として高抵抗Si基板を用意し、その上にエピタキシアル成長により混晶半導体層を30マイクロメートル(μm)程度成長させる。この混晶半導体層として、Si1−xGeを用い、例えば、p型の不純物であるホウ素(B)を1014cm−3程度の添加量で比較的高抵抗の混晶半導体層の傾斜バンドギャップ領域を形成する。この傾斜バンドギャップ領域は、混晶半導体層のSi1−xGeにおけるxの値をSi基板から表面側に成長するに従い徐々に大きくなるようにする(最大値が1)。そして、最狭バンドギャップ領域では、一般の傾斜バンドギャップ領域よりも急にSi1−xGeのxの値を大きくしておき、この領域には、高濃度(例えば、5x1017cm−3程度)にアクセプタとしてのホウ素(B)を添加し、さらにn型の浅い不純物準位を形成するリン(P)をp型のホウ素(B)不純物よりも少し少ない不純物量(例えば、1x1017cm−3程度)添加する。更に、その表面にエピタキシアル成長により混晶半導体層Si1−xGeを薄く(数μm程度)成長させるが、ここではxの値を逆に急に小さくして、表面付近のバンドギャップEgが大きくなるようにしておく。これは次の効果を期待するためである。成長させた混晶半導体層表面を最狭バンドギャップ領域としても良いが、表面付近では表面再結合が激しいので、非発光再結合が主体になることを避けるために、最狭バンドギャップ領域は、表面から少し内部にあった方が良いためである。
この半導体チップ表面(エピタキシアル成長の混晶半導体層Si1−xGe層側)に接触させて接合一体化した高輝度近赤外線LED(半導体チップの基板であるSiのバンドギャップエネルギーより大きい光エネルギーを放出するLED(例えば、1.1μm以下の波長を放出するLED))で半導体チップを光励起する。このとき半導体チップの傾斜バンドギャップ領域で生成した電子・正孔対が最狭バンドギャップ領域にドリフト電界により集まり(実際には、電子・正孔対が基板のSiでも生成されて、傾斜バンドギャップ領域にまで拡散により到達した電子や正孔は、最狭バンドギャップ領域に集まる)、この領域に集まった電子は伝導帯からn型の浅い不純物準位への電子遷移、又は、n型の浅い不純物準位(この場合はリン不純物)の励起準位と基底状態準位への電子遷移に基づく放射電磁波としてのテラヘルツ波のフォトルミネセンスをテラヘルツ波放射光として利用する。なお、必要に応じて、半導体チップ端面を平行ミラー化して、共振器を形成することによりテラヘルツ波などの電磁波のレーザとすることができる。
上述の場合、Si1−xGe層の半導体チップはp型となっているので、フェルミエネルギーEは、価電子帯付近にあるからn型の浅い不純物準位は空の状態になっている。また、伝導帯も電子がほとんどない状態である。ここにSiのバンドギャップエネルギーEgよりも大きい光エネルギーのLED光照射により多量の電子が傾斜バンドギャップ領域の価電子帯から伝導帯に励起されて、同時に生成された正孔と共に最狭バンドギャップ領域に集まり、電子・正孔の再結合過程でn型の浅い不純物準位への電子遷移、又は、n型の浅い不純物準位であるリン(P)の励起準位と基底状態準位への電子遷移に基づいて、テラヘルツ波となる電磁波のフォトルミネセンス光が電磁波放射光として放出される。
図1は、本発明の電磁波放射素子におけるテラヘルツ波を含む電磁波を放射する半導体チップ1の一実施例のエネルギーバンド図を示したもので、ここでは半導体チップ1として、間接遷移型半導体であるSi基板に混晶半導体層Si1−xGe層を成長させて、Si1−xGe層のxの値を連続的に変化させて傾斜バンドギャップ領域を形成する場合である。また、傾斜バンドギャップ領域にxがもっとも大きい最狭バンドギャップ領域を形成してある。本実施例は、最狭バンドギャップ領域を、成長過程の格子定数の歪が小さくなるように半導体チップ1の混晶半導体層Si1−xGe層の表面側に形成した例であるが、Si基板側に形成しておいても良い。
本実施例では、混晶半導体層Si1−xGe層の傾斜バンドギャップ領域を比較的高抵抗のp型になるように浅いアクセプタ不純物(例えば、ホウ素やガリウム)を添加した場合であり、最狭バンドギャップ領域には、浅いアクセプタ不純物を周囲よりは多く添加し、さらに浅いドナ不純物(例えば、砒素やリン)を浅いアクセプタ不純物より少しだけ少なく添加してある場合である。
この図1に示すエネルギーバンド図には、外部励起光によるバンド間(価電子帯と伝導帯間)の電子の遷移、電子・正孔対の発生とこれらが傾斜バンドギャップ領域でドリフト電界により移動し最狭バンドギャップ領域に集まる様子をも示してある。更に、テラヘルツ波放射を含む放射電磁波に係わる不純物準位、各種バンドと準位間及び励起準位を含む準位間の再結合に基づくルミネセンス光としてのテラヘルツ放射光を含む放射電磁波の様子も示している。図2は、図1における最狭バンドギャップ領域を含む傾斜バンドギャップ領域の伝導帯付近を拡大して、分かりやすくしたエネルギーバンド図である。
発光ダイオードLEDやレーザダイオードLDなどによる外部からの励起光照射によって、半導体チップ1の価電子帯から電子を伝導帯に光励起するが、このとき、例えば、半導体チップ1が混晶半導体層Si1−xGe層であった場合、間接遷移型半導体なので、価電子帯と伝導帯とは、エネルギーEと波数ベクトルKとの空間で、波数ベクトルKの方向でズレが存在している。そのために、価電子帯から伝導帯への光励起による電子遷移において、光吸収過程は、波数ベクトルKのズレがほとんど無いが、価電子帯の電子は格子振動であるフォノンの吸収過程やフォノンの放出過程を介して、伝導帯への電子遷移が行われる。
最狭バンドギャップ領域の伝導帯に集まった電子は、伝導帯の下端に素早く移動し、そこからドナ型の浅い準位の基底状態Ed0(その活性化エネルギーEA)、その第1励起状態、第2励起状態などを介し、更には、深い準位EDCを介する再結合、フォノンを介する再結合などにより価電子帯の正孔と再結合して消滅する。このとき、伝導帯の下端から浅い準位の基底状態Ed0への遷移に伴う再結合、伝導帯の下端から浅い準位の第1励起準位への遷移に伴う再結合、浅いドナ準位の第1励起準位から基底状態Ed0への遷移に伴う再結合などは、最狭バンドギャップ領域のxで定まるSi1−xGe層の伝導帯下端と浅いドナ準位の基底状態Ed0のエネルギー差が、x=1(純粋なGe)で10meV程度(約3THz)またはx=0(純粋なSi)で45meV程度(約13THz)であり、励起準位間はそれらの以下なので、放射電磁波はテラヘルツ波(THz)となり、半導体チップ1から放射されることになる。もちろん、深い準位を経由する再結合に基づく放射電磁波は、例えば、赤外線光となる。
なお、室温Trでは、格子振動も大きく、最狭バンドギャップ領域のバンドギャップエネルギーEgや浅い準位の基底状態Ed0、第1励起準位、第2励起準位なども熱的に揺らいでおり、これらの間のエネルギー差も揺らいでいる。したがって、フォトルミネセンスとしての再結合による放射電磁波(テラヘルツ放射光)も鋭いスペクトルではなく、幅広の放射光スペクトルとなる。このことはまた、励起準位を含む浅い準位間の遷移に基づく放射電磁波も、エネルギー準位間が狭いので、互いに波長が重なり合い、ほぼ連続的な放射スペクトルとなるので、テラヘルツ放射光の波長選択の観点からも連続的な波長選択が可能となり好都合となる。
図3には、本発明の電磁波放射素子において、例えば、フォトルミネセンス光を放射する上述のSi基板に混晶半導体層Si1−xGe層を成長させた半導体チップ1と、光励起用LEDの励起光源10とを一体化させた構造の一実施例の断面概略図を示している。半導体チップ1の基板として、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、ガリウムリン(GaP)やガリウム砒素(GaAs)などを用いた場合は、それらのバンドギャップエネルギーEgは、赤外線領域なので、例えば、高輝度の赤色発光ダイオードを光励起用LEDの励起光源10として利用することができる。もちろん、このような場合、それぞれの半導体基板に成長する混晶半導体層は、格子定数が滑らかに推移し歪を少なくした状態の結晶とすることが望ましい。
同図3では、市販の透明プラスチック300のレンズをもつ赤色発光ダイオードを光励起用LEDの励起光源10として、その透明プラスチック300のレンズの先端部を削り、透明接着剤130を用いて、半導体チップ1と接合して、一体化させた場合を示している。LEDの励起光源10の端子101,102を介して電流を供給して、励起光源10を発光させ光励起して、半導体チップ1から電磁波を放射させる。もちろん、ここでは図示しないが、露出したLEDチップ5を直接半導体チップ1に透明接着剤130などで接合しても良い。
図4は、本発明の電磁波放射素子を、テラヘルツ波を含む電磁波のレーザとして利用する場合の一実施例を示すもので、高輝度の発光ダイオードLEDの励起光源10を、光励起強度を増すために、例えば、実施例1から3に示したようなゲルマニウムGe、シリコンSi、ガリウムリンGaPやガリウム砒素GaAsなどの半導体チップ1の両側から光励起できるように挟みこむようにした場合の横断面図の概要を示している。励起光の半導体チップ1への結合効率を上げるためと一体化を促進するために、透明接着剤130で励起光源10と半導体チップ1とを接合している。また、レーザ作用の高効率化のために半導体チップ1の両端面を研磨して共振器100を形成している。これらの両端面は、所望のテラヘルツ波の反射膜60,61が形成されてあり、一方の反射膜61の反射率を他方の反射膜60より小さくして、反射率の小さい反射膜61の方から有効にテラヘルツ波が放出されるようにしているが、ここでは更にレーザ発振してレーザ光放射されるようにしている。一般に、誘導放出確率自体は、電磁波の波長依存性を有しないが、自然放出確率が波長λの3乗に逆比例するがするので、波長の短い可視光線に比べて、テラヘルツ波のように波長が長い方が極端に誘導放出しやすい条件が整う。従って、テラヘルツ波のレーザは実現しやすい。
一方の反射膜60を、例えば、所望のテラヘルツ波などの電磁波用の分布帰還型反射膜をすれば、その所望の波長の電磁波だけが、選択的に反射されるので、その所望の波長のレーザ光の出射が可能となる。また、連続光にするか、パルス光にするかは、2個の高輝度の発光ダイオードLEDの励起光源10の端子101,102に電流を流す際に、直流電流を流せば連続波のレーザ光が、パルス電流を流せばパルス光レーザが得られることになる。この連続光とパルス光については、もちろん、レーザに限らずテラヘルツ波などの電磁波の自然放出による発光も電流の制御で行うことができる。
本発明の電磁波放射素子は、本実施例に限定されることはなく、本発明の主旨、作用および効果が同一でありながら、種々の変形がありうる。
従来の大出力パルスレーザや2波長レーザ照射などにおいては、テラヘルツ波の発生効率が悪いので、出力が100mWクラスのテラヘルツ波の発生でも1メートル角程度の大型の装置を必要としていた。これに対して本発明の電磁波放射素子は、数ミリメートル程度の超小型になり、傾斜バンドギャップを有するので高効率電磁波放射が可能になり、しかも、レーザ発振もしやすい構造であるので、携帯可能な超小型電磁波光源となりえる。また、本電磁波放射素子は、放射電磁波の導波路との組み合わせなどにより、医療分野、創薬分野、バイオ分野、分析化学分野、センシング分野、非破壊検査分野、通信分野、種々の加工分野など、種々の用途に適用できる。
本発明の電磁波放射素子おけるテラヘルツ波を含む電磁波を放射する半導体チップ1の一実施例のエネルギーバンド図の概要を示したものである。(実施例1) 本発明の電磁波放射素子における図1の最狭バンドギャップ領域を含む傾斜バンドギャップ領域の伝導帯付近を拡大したエネルギーバンド図を示したものである。(実施例1) 本発明の電磁波放射素子における半導体チップ1と光励起用LEDの励起光源10とを一体化させた構造の一実施例の断面概略図の様子を示したものである。(実施例2) 本発明の電磁波放射素子を、テラヘルツ波を含む電磁波のレーザとして利用する場合の一実施例を示している。(実施例3)
符号の説明
1 半導体チップ
5 LEDチップ
10 励起光源
20 LEDステム
30 空隙
60、61 反射膜
100 共振器
101、102 端子
111、112 電極
120 LEDチップ支持体
130 透明接着剤
210 リード線
300 透明プラスチック

Claims (9)

  1. 半導体の不純物のエネルギー準位を介して伝導帯の電子と価電子帯の正孔とが不純物準位を介して再結合するときに電磁波を放射する電磁波放射素子において、伝導帯または価電子帯と励起準位を含む不純物準位との間、不純物の励起準位間もしくは不純物の励起準位と基底状態との間のいずれかのエネルギー間隔に相当する電磁波放射であること、半導体に傾斜バンドギャップ領域を設けてあること、該傾斜バンドギャップ領域に最狭バンドギャップ領域を設けてあること、前記傾斜バンドギャップ領域に生成された電子と正孔は、該傾斜バンドギャップに基づく電界により前記最狭バンドギャップ領域に向かって移動するように構成してあること、少なくとも前記最狭バンドギャップ領域に前記不純物を添加してあること、を特徴とする電磁波放射素子。
  2. 傾斜バンドギャップ領域は、混晶半導体の組成を変化させて形成してある請求項1記載の電磁波放射素子。
  3. 最狭バンドギャップ領域のフェルミエネルギーEfが、ボルツマン定数をkとして、放射電磁波に対応する不純物の準位から動作温度TのエネルギーkTの4倍以上離れた深い位置にあるように、その位置を調整してある請求項1もしくは2のいずれかに記載の電磁波放射素子。
  4. 不純物の準位が浅い準位であり、該準位を介して発光する電磁波放射はテラヘルツ領域である請求項1から3のいずれかに記載の電磁波放射素子。
  5. 電子と正孔の生成は、励起光源による光励起により発生させた請求項1から4のいずれかに記載の電磁波放射素子。
  6. 励起光源を発光ダイオード(LED)もしくは半導体レーザ(LD)とした請求項5記載の電磁波放射素子。
  7. 励起光源と電磁波放射用の半導体チップとを一体化した構造の請求項6記載の電磁波放射素子。
  8. 電磁波放射用の半導体チップに共振器を設けて半導体レーザとした請求項1から7のいずれかに記載の電磁波放射素子。
  9. 冷却用素子を一体化した請求項1から8のいずれかに記載の電磁波放射素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN102496835A (zh) * 2011-12-20 2012-06-13 上海理工大学 超纯本征砷化镓材料的m-i-n二极管太赫兹辐射源及制作方法
US9451184B2 (en) 2013-02-27 2016-09-20 Seiko Epson Corporation Photo conductive antenna, camera, imaging apparatus, and measurement apparatus
CN108711678A (zh) * 2018-05-21 2018-10-26 中国科学技术大学 一种电磁波辐射系统及电磁波辐射方法

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