JP2011149076A - 防食皮膜及びその形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】マグネシウム合金の耐食性を向上させることができる防食皮膜及びその形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の防食皮膜は、マグネシウム合金の表面に形成され、ストロンチウムを5at%以上含み、塩素量が0〜12at%であることを特徴とする。本発明の防食皮膜形成方法は、メッキ液を用いる電気メッキ法によりマグネシウム合金の表面に防食皮膜を形成する防食皮膜形成方法であって、メッキ液は、アルコール、ストロンチウムイオン、亜鉛イオン、及び、メッキ液をアルカリ性に保つpH調整剤を含み、メッキ液中のストロンチウムイオンの濃度が0.5mol/l以上であり、メッキ液が塩素イオンを含む場合、メッキ液中の塩素イオンの濃度が4.4mol/l以下であることを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
本発明は、マグネシウム合金の腐食等を防止する防食皮膜に関するものである。
マグネシウムやアルミニウムは、実用金属において比重が小さく、機械的強度も高いので、これらの特性を利用して種々の用途に用いられている。これらの金属は、例えば、軽量化と機械的強度が要求される車両や電子機器などで用いられている。特にマグネシウム合金については、軽量性、強度、熱伝導性など優れた特性を有しており、実用面での様々な研究がなされている。
ここで、マグネシウム合金は、イオン化傾向が高く、大気中で酸化しやすく、腐食しやすい。これに対し、例えば特開平5−202488号公報(特許文献1)には、鋼材の表面にマンガンメッキを施し、そのマンガンメッキの犠牲防食能により耐食性(防食性)を向上させたものが開示されている。このように、従来から、耐食性を向上させるために、メッキ処理により防食皮膜を形成することが行われている。
しかしながら、マグネシウムは、実用金属で最も卑な金属(イオン化傾向が高い)である。したがって、上記マンガンメッキを施したとしても、マンガンがマグネシウムよりも貴な金属であるため、マンガンメッキは犠牲防食能を発揮しない。このように、従来の電気メッキ法の処理条件では、マグネシウム合金に防食皮膜を形成するのが困難であった。マグネシウム合金が様々な分野で実用化されるにあたり、これに犠牲防食能をもつメッキ皮膜を形成して耐食性を向上させることが求められている。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、マグネシウム合金の耐食性を向上させることができる防食皮膜及びその形成方法を提供することを目的とする。
本発明の防食皮膜は、マグネシウム合金の表面に形成され、防食皮膜全体を100at%としたとき、ストロンチウムを5at%(原子数%)以上含み、塩素量(塩素の配合量)が0〜12at%であることを特徴とする。ストロンチウムは、マグネシウムより卑な金属であり、皮膜中に5at%以上含まれることで、防食皮膜に優れた犠牲防食能を付与することができる。また、防食皮膜の組成中、耐蝕性低下要因となり得る塩素の量が0〜12at%(0≦塩素量≦12at%)であることにより、耐蝕性の低下が防がれる。これにより、マグネシウム合金の耐食性は向上する。なお、塩素は必須成分ではなく、任意成分であるため、塩素量が0でも良い。また、塩素量は0〜6.5at%であることが好ましい。これにより、さらに耐蝕性の低下が防がれる。
ここで、本発明の防食皮膜が亜鉛を含む場合、亜鉛量は2at%以下であることが好ましい。なお、後述するが、防食皮膜形成時には、メッキ液中に亜鉛イオンが必要である。この場合、防食皮膜中に亜鉛が析出される可能性がある。防食皮膜中の亜鉛は、耐蝕性の向上を阻害する要因となり得るが、2at%以下であれば耐蝕性の向上を阻害する効果は小さい。
また、本発明の防食皮膜は、ストロンチウムを15at%以上含むことが好ましい。これにより、防食皮膜にさらに優れた犠牲防食能が付与され、耐蝕性は向上する。
ここで、本発明の防食皮膜形成方法は、メッキ液を用いる電気メッキ法によりマグネシウム合金の表面に防食皮膜を形成する防食皮膜形成方法であって、メッキ液は、アルコール、ストロンチウムイオン、亜鉛イオン、及び、メッキ液をアルカリ性に保つpH調整剤を含み、メッキ液中のストロンチウムイオンの濃度は、0.5mol/l以上であり、メッキ液が塩素イオンを含む場合、メッキ液中の塩素イオンの濃度は、4.4mol/l以下であることを特徴とする。この方法によれば、メッキ液中の亜鉛イオンがストロンチウムイオンを誘導析出する機能を発揮し、ストロンチウムをマグネシウム合金表面に析出させることができる。その結果、マグネシウム合金の表面に、ストロンチウムを5at%以上含む防食皮膜が形成され、マグネシウム合金の耐蝕性は向上する。
ここで、上記メッキ液が塩素イオンを含む場合、さらにメッキ液中の塩素イオンの濃度は、3mol/l以下であることが好ましい。メッキ液中の塩素イオンは、マグネシウム表面への析出により、塩素として防食皮膜に含まれる可能性がある。防食皮膜中の塩素は、耐蝕性低下要因となり得るが、メッキ液中の塩素イオンの濃度を3mol/l以下とすることで、耐蝕性がより向上する防食皮膜を形成することができる。
ここで、亜鉛イオンは、メッキ液に塩化亜鉛を溶解させることにより前記メッキ液に含まれ、メッキ液中の亜鉛イオンの濃度は、0.4mol/l以下であることが好ましい。塩化亜鉛は、メッキ溶媒(アルコール)に溶解しやすく、上記誘導析出機能をもつ亜鉛イオンをメッキ液に含有させるのに適している。また、これにより、耐蝕性低下要因となる亜鉛が防食皮膜中に含有されることがあるが、上記イオン濃度とすることで耐蝕性に優れた防食皮膜を形成することができる。
また、ストロンチウムイオンは、メッキ液に塩化ストロンチウムを溶解させることにより前記メッキ液に含まれ、メッキ液中のストロンチウムイオンの濃度は、1mol/l以下であることが好ましい。塩化ストロンチウムは、メッキ溶媒に溶解しやすく、ストロンチウムイオンをメッキ液に含有させるのに適している。また、塩化ストロンチウムを用いることで耐蝕性低下要因となり得る塩素が防食皮膜中に含有されることがあるが、上記イオン濃度とすることで耐蝕性に優れた防食皮膜を形成することができる。
本発明の防食皮膜によれば、マグネシウム合金の耐食性を向上させることができる。また、本発明の防食皮膜形成方法によれば、組成にストロンチウムを含ませ、マグネシウム合金の耐食性を向上させることができる防食皮膜を形成することができる。
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本発明の防食皮膜形成方法は、電気メッキ法を用いる。図1は、本実施形態の電気メッキ法を説明するための模式図である。図2は、実施例1〜8及び比較例1〜4の皮膜組成を示す図である。図3は、防食皮膜を示す模式図である。なお、図3については、マグネシウム合金(陰極5)の一部の表面付近を示している。
図1に示すように、電気メッキ法は、整流器1と、容器2と、メッキ液3と、陽極4と、陰極5と、を用いて行う。整流器1は、電極に直流電流(電圧)を印加するものである。電流値は計測器Aで計測できる。容器2は、メッキ液3を収容する水槽である。
メッキ液3は、溶媒がメタノールであり、ストロンチウムイオン、亜鉛イオン、塩素イオン、及び、水酸化ナトリウムを含んでいる。ストロンチウムイオンは、メタノールに塩化ストロンチウム(SrCl2)を溶解させてメッキ液3に含有させる。この際、塩素イオンもメッキ液3に含まれる。亜鉛イオンは、メタノールに塩化亜鉛(ZnCl2)を溶解させてメッキ液3に含有させる。この際にも、塩素イオンがメッキ液3に含まれる。メッキ液3に亜鉛イオンを含ませるのは、亜鉛イオンの作用により、メッキ液3中のストロンチウムイオンを陰極5表面(メッキ皮膜)に誘導析出させるためである。
水酸化ナトリウムは、メッキ液3をアルカリ性に保つpH調整剤としてメッキ液3に含有させる。陽極4には、白金蒸着チタンを用いる。陰極5には、被メッキ物であるマグネシウム合金(AZ31)を用いる。
以下の比較例及び実施例では、ストロンチウムイオン濃度及び亜鉛イオン濃度をそれぞれ変化させて、電流密度を2(A/dm2)とし、処理時間を10分として電気メッキ法を行った。メッキ液3の攪拌は、マグネチックスターラーを用いて行った。実施時の温度は室温(およそ25℃)とした。また、実施例及び比較例では、電気メッキ法の後、焼成などの熱処理は行わなかった。
また、予め、電気メッキ法を行っていないマグネシウム合金に、塩水噴霧試験を行い、皮膜がない場合の重量減少率を計測した。皮膜がないマグネシウム合金(裸材)の重量減少率は、18.2%であった。塩水噴霧試験では、マグネシウム合金に塩水を噴霧し、150時間放置した。重量減少率は、塩水噴霧前のマグネシウム合金の重量と塩水噴霧試験後のマグネシウム合金の重量とから減少率(%)を算出したものである。重量減少率が小さいほど耐蝕性に優れているといえる。同試験を以下の実施例及び比較例でも行った。
(比較例1)
比較例1では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を0.25mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.1mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、0.7mol/lとなる。この結果、マグネシウム合金(陰極5)の表面にストロンチウム等が析出され、皮膜が形成された。
比較例1では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を0.25mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.1mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、0.7mol/lとなる。この結果、マグネシウム合金(陰極5)の表面にストロンチウム等が析出され、皮膜が形成された。
形成された皮膜の組成は、表1及び図2(最上段・左側)に示すように、ストロンチウムが2.84at%、亜鉛が11.17at%、塩素が1.61at%、ナトリウムが12.4at%、及び、その他(酸素、マグネシウム)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。比較例1のマグネシウム合金の重量減少率は、27.7%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて悪化しており、耐蝕性は向上しなかった。なお、本実施形態において、皮膜の組成は、EDS(エネルギー分散型X線分光器)を用いて、マグネシウム合金表面における所定範囲で測定したもの(平均値)である。
(比較例2)
比較例2では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を0.25mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.2mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、0.9mol/lとなる。これにより形成された皮膜の組成は、表1及び図2(最上段・中央)に示すように、ストロンチウムが0.87at%、亜鉛が19.35at%、塩素が1.3at%、ナトリウムが5.64at%、及び、その他(酸素、マグネシウム)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。比較例2のマグネシウム合金の重量減少率は、10.7%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて改善されており、耐蝕性は向上した。
比較例2では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を0.25mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.2mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、0.9mol/lとなる。これにより形成された皮膜の組成は、表1及び図2(最上段・中央)に示すように、ストロンチウムが0.87at%、亜鉛が19.35at%、塩素が1.3at%、ナトリウムが5.64at%、及び、その他(酸素、マグネシウム)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。比較例2のマグネシウム合金の重量減少率は、10.7%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて改善されており、耐蝕性は向上した。
(比較例3)
比較例3では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を0.25mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.4mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、1.3mol/lとなる。これにより形成された皮膜の組成は、表1及び図2(最上段・右側)に示すように、ストロンチウムが2.48at%、亜鉛が33.34at%、ナトリウムが5.43at%、及び、その他(酸素、マグネシウム)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。比較例2のマグネシウム合金の重量減少率は、21.9%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて悪化しており、耐蝕性は向上しなかった。
比較例3では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を0.25mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.4mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、1.3mol/lとなる。これにより形成された皮膜の組成は、表1及び図2(最上段・右側)に示すように、ストロンチウムが2.48at%、亜鉛が33.34at%、ナトリウムが5.43at%、及び、その他(酸素、マグネシウム)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。比較例2のマグネシウム合金の重量減少率は、21.9%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて悪化しており、耐蝕性は向上しなかった。
(実施例1)
実施例1では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を0.5mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.1mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、1.2mol/lとなる。これにより、図3に示すように、マグネシウム合金(陰極5)の表面に防食皮膜6が形成される。
実施例1では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を0.5mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.1mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、1.2mol/lとなる。これにより、図3に示すように、マグネシウム合金(陰極5)の表面に防食皮膜6が形成される。
この防食皮膜6の組成は、表1及び図2(上から2段目・左側)に示すように、ストロンチウムが15.15at%、亜鉛が1.54at%、塩素が0.5at%、ナトリウムが1.42at%、及び、その他(酸素、炭素、マグネシウム)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。実施例1のマグネシウム合金の重量減少率は、6.6%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて大きく改善されており、耐蝕性は大きく向上した。
(実施例2)
実施例2では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を0.5mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.2mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、1.4mol/lとなる。これにより形成された皮膜(防食皮膜6)の組成は、表1及び図2(上から2段目・中央)に示すように、ストロンチウムが5.68at%、亜鉛が5.37at%、塩素が0.72at%、及び、その他(酸素、炭素、マグネシウム)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。実施例2のマグネシウム合金の重量減少率は、11.5%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて改善されており、耐蝕性は向上した。
実施例2では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を0.5mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.2mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、1.4mol/lとなる。これにより形成された皮膜(防食皮膜6)の組成は、表1及び図2(上から2段目・中央)に示すように、ストロンチウムが5.68at%、亜鉛が5.37at%、塩素が0.72at%、及び、その他(酸素、炭素、マグネシウム)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。実施例2のマグネシウム合金の重量減少率は、11.5%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて改善されており、耐蝕性は向上した。
(実施例3)
実施例3では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を0.5mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.4mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、1.8mol/lとなる。これにより形成された皮膜(防食皮膜6)の組成は、表1及び図2(上から2段目・右側)に示すように、ストロンチウムが7.18at%、亜鉛が17.33at%、塩素が3.16at%、ナトリウムが17.49at%、及び、その他(酸素、マグネシウム)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。実施例3のマグネシウム合金の重量減少率は、9.1%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて改善されており、耐蝕性は向上した。
実施例3では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を0.5mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.4mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、1.8mol/lとなる。これにより形成された皮膜(防食皮膜6)の組成は、表1及び図2(上から2段目・右側)に示すように、ストロンチウムが7.18at%、亜鉛が17.33at%、塩素が3.16at%、ナトリウムが17.49at%、及び、その他(酸素、マグネシウム)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。実施例3のマグネシウム合金の重量減少率は、9.1%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて改善されており、耐蝕性は向上した。
(実施例4)
実施例4では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を1mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.1mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、2.2mol/lとなる。これにより形成された皮膜(防食皮膜6)の組成は、表1及び図2(上から3段目・左側)に示すように、ストロンチウムが20.6at%、塩素が2.93at%、ナトリウムが1.82at%、及び、その他(酸素、炭素)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。実施例4のマグネシウム合金の重量減少率は、8.9%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて大きく改善されており、耐蝕性は大きく向上した。
実施例4では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を1mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.1mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、2.2mol/lとなる。これにより形成された皮膜(防食皮膜6)の組成は、表1及び図2(上から3段目・左側)に示すように、ストロンチウムが20.6at%、塩素が2.93at%、ナトリウムが1.82at%、及び、その他(酸素、炭素)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。実施例4のマグネシウム合金の重量減少率は、8.9%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて大きく改善されており、耐蝕性は大きく向上した。
(実施例5)
実施例5では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を1mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.2mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、2.4mol/lとなる。これにより形成された皮膜(防食皮膜6)の組成は、表1及び図2(上から3段目・中央)に示すように、ストロンチウムが18.1at%、塩素が1.36at%、ナトリウムが4.22at%、及び、その他(酸素、炭素)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。実施例5のマグネシウム合金の重量減少率は、5.3%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて大きく改善されており、耐蝕性は大きく向上した。
実施例5では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を1mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.2mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、2.4mol/lとなる。これにより形成された皮膜(防食皮膜6)の組成は、表1及び図2(上から3段目・中央)に示すように、ストロンチウムが18.1at%、塩素が1.36at%、ナトリウムが4.22at%、及び、その他(酸素、炭素)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。実施例5のマグネシウム合金の重量減少率は、5.3%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて大きく改善されており、耐蝕性は大きく向上した。
(実施例6)
実施例6では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を1mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.4mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、2.8mol/lとなる。これにより形成された皮膜(防食皮膜6)の組成は、表1及び図2(上から3段目・右側)に示すように、ストロンチウムが16.29at%、亜鉛が1.14at%、塩素が6.15at%、及び、その他(酸素、炭素、マグネシウム)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。実施例6のマグネシウム合金の重量減少率は、7.1%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて大きく改善されており、耐蝕性は大きく向上した。
実施例6では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を1mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.4mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、2.8mol/lとなる。これにより形成された皮膜(防食皮膜6)の組成は、表1及び図2(上から3段目・右側)に示すように、ストロンチウムが16.29at%、亜鉛が1.14at%、塩素が6.15at%、及び、その他(酸素、炭素、マグネシウム)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。実施例6のマグネシウム合金の重量減少率は、7.1%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて大きく改善されており、耐蝕性は大きく向上した。
(実施例7)
実施例7では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を2mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.1mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、4.2mol/lとなる。これにより形成された皮膜(防食皮膜6)の組成は、表1及び図2(最下段・左側)に示すように、ストロンチウムが18.16at%、亜鉛が2.12at%、塩素が6.95at%、ナトリウムが2.88at%、及び、その他(酸素、炭素、マグネシウム)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。実施例7のマグネシウム合金の重量減少率は、17.8%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて若干改善されており、耐蝕性は若干向上した。
実施例7では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を2mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.1mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、4.2mol/lとなる。これにより形成された皮膜(防食皮膜6)の組成は、表1及び図2(最下段・左側)に示すように、ストロンチウムが18.16at%、亜鉛が2.12at%、塩素が6.95at%、ナトリウムが2.88at%、及び、その他(酸素、炭素、マグネシウム)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。実施例7のマグネシウム合金の重量減少率は、17.8%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて若干改善されており、耐蝕性は若干向上した。
(実施例8)
実施例8では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を2mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.2mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、4.4mol/lとなる。これにより形成された皮膜(防食皮膜6)の組成は、表1及び図2(最下段・中央)に示すように、ストロンチウムが22.19at%、亜鉛が2.04at%、塩素が11.61at%、ナトリウムが5.27at%、及び、その他(酸素、マグネシウム)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。実施例8のマグネシウム合金の重量減少率は、14.2%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて改善されており、耐蝕性は向上した。
実施例8では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を2mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.2mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、4.4mol/lとなる。これにより形成された皮膜(防食皮膜6)の組成は、表1及び図2(最下段・中央)に示すように、ストロンチウムが22.19at%、亜鉛が2.04at%、塩素が11.61at%、ナトリウムが5.27at%、及び、その他(酸素、マグネシウム)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。実施例8のマグネシウム合金の重量減少率は、14.2%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて改善されており、耐蝕性は向上した。
(比較例4)
比較例4では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を2mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.4mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、4.8mol/lとなる。これにより形成された皮膜の組成は、表1及び図2(最下段・右側)に示すように、ストロンチウムが28.02at%、塩素が14.37at%、ナトリウムが4.45at%、及び、その他(酸素)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。比較例4のマグネシウム合金の重量減少率は、21.3%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて悪化しており、耐蝕性は向上しなかった。
比較例4では、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を2mol/lとし、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度を0.4mol/lとして電気メッキ法を行った。これに伴い、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、4.8mol/lとなる。これにより形成された皮膜の組成は、表1及び図2(最下段・右側)に示すように、ストロンチウムが28.02at%、塩素が14.37at%、ナトリウムが4.45at%、及び、その他(酸素)となった。この皮膜に上記同様の塩水噴霧試験を行い、重量減少率を求めた。比較例4のマグネシウム合金の重量減少率は、21.3%であった。重量減少率は、裸材(18.2%)に比べて悪化しており、耐蝕性は向上しなかった。
(防食皮膜について)
本実施形態の電気メッキ法において、実施例1〜8に示すように、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を0.5mol/l以上とし且つメッキ液3中の塩素イオン濃度を4.4mol/l以下とすることで、耐蝕性が向上する防食皮膜6を形成することができる。この形成された防食皮膜6の組成は、ストロンチウムを5at%以上含み且つ塩素量が0〜12at%である。これらの防食皮膜6(実施例1〜8)は、マグネシウム合金の耐蝕性を向上させることができる。つまり、組成中にストロンチウムを5at%以上含み、塩素量が0〜12at%である防食皮膜により、マグネシウム合金の耐蝕性は向上する。
本実施形態の電気メッキ法において、実施例1〜8に示すように、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度を0.5mol/l以上とし且つメッキ液3中の塩素イオン濃度を4.4mol/l以下とすることで、耐蝕性が向上する防食皮膜6を形成することができる。この形成された防食皮膜6の組成は、ストロンチウムを5at%以上含み且つ塩素量が0〜12at%である。これらの防食皮膜6(実施例1〜8)は、マグネシウム合金の耐蝕性を向上させることができる。つまり、組成中にストロンチウムを5at%以上含み、塩素量が0〜12at%である防食皮膜により、マグネシウム合金の耐蝕性は向上する。
比較例1〜3については、一部耐蝕性の向上が見られるが、メッキ液3中のストロンチウムイオン濃度が小さく、皮膜組成中のストロンチウムが微量であるため、確実に耐蝕性を向上させることができなかった。
ストロンチウムは、マグネシウムよりも卑な金属であるため、犠牲防食効果を発揮し、マグネシウム合金の耐蝕性を向上させる。上記のように、皮膜中にストロンチウムが5at%以上含まれることで、犠牲防食能が防食皮膜に確実に付与される。一方、塩素は、皮膜中に析出されると耐蝕性を低下させる要因となり得る。従って、比較例4に示すように、ストロンチウムが5at%以上含まれていても、塩素が大量に含まれている場合(12at%より大きい場合)、耐蝕性が向上しない結果となる。
(好ましい防食皮膜について)
実施例1〜6では、重量減少率が大きく改善されており、効果的な防食皮膜が形成されている。実施例1〜6に示すように、塩化ストロンチウムを用いた場合、メッキ液3中のストロンチウムイオンの濃度を1mol/l以下(実施例では、0.5〜1mol/l)とすることで、効果的な防食皮膜が形成される。なお、本実施形態において、ストロンチウムイオン濃度をおよそ1mol/l(1mol/l近傍を含む)とすることでより効果的な防食皮膜が形成される(実施例4〜6)。
実施例1〜6では、重量減少率が大きく改善されており、効果的な防食皮膜が形成されている。実施例1〜6に示すように、塩化ストロンチウムを用いた場合、メッキ液3中のストロンチウムイオンの濃度を1mol/l以下(実施例では、0.5〜1mol/l)とすることで、効果的な防食皮膜が形成される。なお、本実施形態において、ストロンチウムイオン濃度をおよそ1mol/l(1mol/l近傍を含む)とすることでより効果的な防食皮膜が形成される(実施例4〜6)。
ここで、亜鉛イオンは、メッキ液3中においてストロンチウムイオンを皮膜中に誘導析出させる機能を有しているため、亜鉛イオンをメッキ液3に少量でも含ませることが必要である。そして、亜鉛は、皮膜中に析出されると耐蝕性を低下させる要因となり得る。本実施形態の電気メッキ法では、塩化亜鉛を用いているため、亜鉛イオンの増加に伴い塩素イオンも増加する。塩素は、上記のとおり耐蝕性低下要因となり得る。つまり、亜鉛イオンを多く含ませすぎると耐蝕性に悪影響が出る虞がある。このような観点から、実施例1〜6に示すように、塩化亜鉛を用いた場合、メッキ液3中の亜鉛イオン濃度は0.4mol/l以下であることが好ましい。なお、亜鉛イオン濃度がおよそ0.2mol/lで耐蝕性がさらに良好となっている(実施例5)。
ところで、この効果的な防食皮膜(実施例1〜6)の形成にあたり、メッキ液3中の塩素イオン濃度によっても形成方法を規定することが可能である。塩素イオンが多いと皮膜中に塩素が析出されやすくなり、耐蝕性の観点から不適である。従って、実施例1〜6に示すように、メッキ液3中の塩素イオン濃度は、3mol/l以下であることが好ましい。これにより、メッキ液3に溶解しやすい塩化物を用いた場合でも、組成中の塩素増加が抑制され、効果的な防食皮膜が形成される。
(より好ましい防食皮膜について)
ここで、特に実施例1、4、5、及び、6については、重量減少率が裸材(18.2%)の半分以下となっており、耐蝕性をより大きく向上させる防食皮膜が形成されている。この実施例1、4、5、及び、6は、組成において、塩素量が0〜6.5at%で亜鉛量が0〜2at%となっている。そして、この場合の組成中のストロンチウム量は15at%以上である。つまり、組成中の塩素及び亜鉛が0≦塩素量≦6.5at%及び0≦亜鉛量≦2at%であり、且つストロンチウムを15%at%以上含む防食皮膜は、より耐蝕性を向上させることができる。
ここで、特に実施例1、4、5、及び、6については、重量減少率が裸材(18.2%)の半分以下となっており、耐蝕性をより大きく向上させる防食皮膜が形成されている。この実施例1、4、5、及び、6は、組成において、塩素量が0〜6.5at%で亜鉛量が0〜2at%となっている。そして、この場合の組成中のストロンチウム量は15at%以上である。つまり、組成中の塩素及び亜鉛が0≦塩素量≦6.5at%及び0≦亜鉛量≦2at%であり、且つストロンチウムを15%at%以上含む防食皮膜は、より耐蝕性を向上させることができる。
上記のとおり、亜鉛は、皮膜中に含有されると耐蝕性を低下させる要因となり得るが、メッキ液3中では、亜鉛イオンによる誘導析出機能が必要である。また、亜鉛イオンやストロンチウムイオンをメッキ液3に確実に含有させるためには、メタノール等に溶解しやすい塩化亜鉛や塩化ストロンチウムを用いるのが最適である。従って、5at%以上のストロンチウムを析出させる目的で、メッキ液3中にストロンチウムイオン及び亜鉛イオンを確実に含有させる場合、塩化物を用いるため皮膜組成中に塩素が含まれ得る。このように、本実施形態において、より効果的な防食皮膜には、組成中の塩素及び亜鉛が0≦塩素量≦6.5at%かつ0≦亜鉛量≦2at%となっている。
(比較例5)
本実施形態において、メッキ液3の溶媒を水にして電気メッキ法を実施した。水には、上記同様、塩化ストロンチウム、塩化亜鉛、及び、水酸化ナトリウムを入れて混合させた。これによれば、マグネシウム合金表面に生成物が部分的に形成されたのみであり、皮膜としての成膜は困難であった。また、生成物の組成は、C:O:Na:Zn=21:40:26:13であった。生成物にストロンチウムが含まれていないため、皮膜に犠牲防食能が付加されない。このように、メッキ液3の溶媒を水とした場合、防食皮膜は形成されなかった。
本実施形態において、メッキ液3の溶媒を水にして電気メッキ法を実施した。水には、上記同様、塩化ストロンチウム、塩化亜鉛、及び、水酸化ナトリウムを入れて混合させた。これによれば、マグネシウム合金表面に生成物が部分的に形成されたのみであり、皮膜としての成膜は困難であった。また、生成物の組成は、C:O:Na:Zn=21:40:26:13であった。生成物にストロンチウムが含まれていないため、皮膜に犠牲防食能が付加されない。このように、メッキ液3の溶媒を水とした場合、防食皮膜は形成されなかった。
(比較例6)
本実施形態において、塩化ストロンチウムを塩化カリウムにして電気メッキ法を実施した。カリウムは、マグネシウムよりも卑な金属である。カリウムイオン濃度は、0.001mol/lの場合と、その10倍、100倍、1000倍、10000倍とそれぞれの場合で実験した。このいずれにおいても皮膜は形成されたが、組成にはC、O、Na、Cl、Znなどが含まれ、カリウムは含まれていなかった。つまり、この方法では、マグネシウム合金に犠牲防食能を付加する防食皮膜を形成することはできない。亜鉛イオンによる誘導析出機能がカリウムに対して発揮されなかったものと考えられる。
本実施形態において、塩化ストロンチウムを塩化カリウムにして電気メッキ法を実施した。カリウムは、マグネシウムよりも卑な金属である。カリウムイオン濃度は、0.001mol/lの場合と、その10倍、100倍、1000倍、10000倍とそれぞれの場合で実験した。このいずれにおいても皮膜は形成されたが、組成にはC、O、Na、Cl、Znなどが含まれ、カリウムは含まれていなかった。つまり、この方法では、マグネシウム合金に犠牲防食能を付加する防食皮膜を形成することはできない。亜鉛イオンによる誘導析出機能がカリウムに対して発揮されなかったものと考えられる。
(比較例7)
本実施形態において、メッキ液3に塩化亜鉛を入れず、すなわち亜鉛イオンなしで電気メッキ法を実施した。ストロンチウムイオン濃度を0.1mol/lとした場合、皮膜の組成にストロンチウムは含まれなかった。ストロンチウムイオン濃度を1mol/lとした場合、ごく微量のストロンチウムが含まれていた。しかし、このマグネシウム合金の重量減少率は、47.9%と大きく悪化した。このように、メッキ液3中に亜鉛イオンがない場合、ストロンチウムが確実に析出されない。また、ストロンチウムが析出されたとしてもごく微量であり、皮膜に犠牲防食能を付加することはできない。この結果からも、亜鉛イオンがストロンチウムに対する誘導析出機能をもち、防食皮膜形成において、メッキ液3中に亜鉛イオンが含まれる必要があることが分かる。
本実施形態において、メッキ液3に塩化亜鉛を入れず、すなわち亜鉛イオンなしで電気メッキ法を実施した。ストロンチウムイオン濃度を0.1mol/lとした場合、皮膜の組成にストロンチウムは含まれなかった。ストロンチウムイオン濃度を1mol/lとした場合、ごく微量のストロンチウムが含まれていた。しかし、このマグネシウム合金の重量減少率は、47.9%と大きく悪化した。このように、メッキ液3中に亜鉛イオンがない場合、ストロンチウムが確実に析出されない。また、ストロンチウムが析出されたとしてもごく微量であり、皮膜に犠牲防食能を付加することはできない。この結果からも、亜鉛イオンがストロンチウムに対する誘導析出機能をもち、防食皮膜形成において、メッキ液3中に亜鉛イオンが含まれる必要があることが分かる。
(その他)
本実施形態の電気メッキ法では、塩化ストロンチウムに代えて、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、または、炭酸ストロンチウムを用いることができる。ただし、溶解のしやすさの観点から、確実にストロンチウムイオンをメッキ液3に含ませるには、塩化ストロンチウムが最も好適である。同様に、亜鉛イオンについても塩化亜鉛に限られない。塩化物以外の化合物を用いることで、メッキ液3中に塩素イオンがない状態での電気メッキ法も可能である。なお、pH調整剤も上記に限られない。
本実施形態の電気メッキ法では、塩化ストロンチウムに代えて、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、または、炭酸ストロンチウムを用いることができる。ただし、溶解のしやすさの観点から、確実にストロンチウムイオンをメッキ液3に含ませるには、塩化ストロンチウムが最も好適である。同様に、亜鉛イオンについても塩化亜鉛に限られない。塩化物以外の化合物を用いることで、メッキ液3中に塩素イオンがない状態での電気メッキ法も可能である。なお、pH調整剤も上記に限られない。
また、本実施形態の防食皮膜形成方法では、電気メッキ法の後に熱処理(焼成工程)を行っていない。しかし、上記実施例1〜8の塩水噴霧試験において、当該防食皮膜がマグネシウム合金表面から剥がれることはなく実用性に問題はない。つまり、本実施形態の防食皮膜形成方法によれば、電気メッキ後に熱処理を施すことなく、密着性及び耐蝕性に優れた防食皮膜を形成することができる。なお、防食皮膜の膜厚は、例えば実施例6、7においておよそ25〜35μmである。
(まとめ)
以上、本実施形態の防食皮膜は、ストロンチウムを5at%以上含み、塩素量が0〜12at%であることで、確実に耐蝕性を向上させる(実施例1〜8)。さらに、防食皮膜が組成中に、塩素及び亜鉛が0≦塩素量≦6.5at%及び0≦亜鉛量≦2at%で、且つストロンチウムを15at%以上含むことで、より耐蝕性を向上させることができる(実施例1、4、5、及び、6)。
以上、本実施形態の防食皮膜は、ストロンチウムを5at%以上含み、塩素量が0〜12at%であることで、確実に耐蝕性を向上させる(実施例1〜8)。さらに、防食皮膜が組成中に、塩素及び亜鉛が0≦塩素量≦6.5at%及び0≦亜鉛量≦2at%で、且つストロンチウムを15at%以上含むことで、より耐蝕性を向上させることができる(実施例1、4、5、及び、6)。
また、本実施形態の防食皮膜形成方法では、メッキ液3中のストロンチウムイオンの濃度を0.5mol/l以上とし、メッキ液3中に塩素イオンを含む場合の当該塩素イオン濃度を4.4mol/l以下とすることで、耐蝕性を向上させる防食皮膜を形成できる(実施例1〜8)。
さらに、本実施形態の防食皮膜形成方法では、メッキ液3中の塩素イオンの濃度を3mol/l以下とすることで、より耐蝕性を向上させる防食皮膜を形成できる(実施例1〜6)。
また、本実施形態の防食皮膜形成方法では、塩化亜鉛を用い、メッキ液3中の亜鉛イオンの濃度を0.4mol/l以下とすることで、より耐蝕性を向上させる防食皮膜を形成できる(実施例1〜6)。塩化亜鉛であれば、メタノール等に溶解しやすく、メッキ液3中に確実に亜鉛イオンを含有させることができる。
また、本実施形態の防食皮膜形成方法では、塩化ストロンチウムを用い、メッキ液3中のストロンチウムイオンの濃度を0.5〜1mol/lとすることで、より耐蝕性を向上させる防食皮膜を形成できる(実施例1〜6)。塩化亜鉛同様、塩化ストロンチウムであれば、メタノール等に溶解しやすく、メッキ液3中に確実にストロンチウムイオンを含有させることができる。
1:整流器、2:容器、3:メッキ液、4:陽極、5:陰極
Claims (8)
- マグネシウム合金の表面に形成され、防食皮膜全体を100at%としたとき、ストロンチウムを5at%以上含み、塩素量が0〜12at%であることを特徴とする防食皮膜。
- 塩素量が0〜6.5at%である請求項1に記載の防食皮膜
- 亜鉛量が0〜2at%である請求項2に記載の防食皮膜。
- ストロンチウムを15at%以上含む請求項2または3に記載の防食皮膜。
- メッキ液を用いる電気メッキ法によりマグネシウム合金の表面に防食皮膜を形成する防食皮膜形成方法であって、
前記メッキ液は、アルコール、ストロンチウムイオン、亜鉛イオン、及び、前記メッキ液をアルカリ性に保つpH調整剤を含み、
前記メッキ液中の前記ストロンチウムイオンの濃度は、0.5mol/l以上であり、
前記メッキ液が塩素イオンを含む場合、前記メッキ液中の前記塩素イオンの濃度は、4.4mol/l以下であることを特徴とする防食皮膜形成方法。 - 前記メッキ液は、塩素イオンを含み、
前記メッキ液中の前記塩素イオンの濃度は、3mol/l以下である請求項5に記載の防食皮膜形成方法。 - 前記亜鉛イオンは、前記メッキ液に塩化亜鉛を溶解させることにより前記メッキ液に含まれ、
前記メッキ液中の前記亜鉛イオンの濃度は、0.4mol/l以下である請求項5または6に記載の防食皮膜形成方法。 - 前記ストロンチウムイオンは、前記メッキ液に塩化ストロンチウムを溶解させることにより前記メッキ液に含まれ、
前記メッキ液中の前記ストロンチウムイオンの濃度は、1mol/l以下である請求項5〜7の何れか一項に記載の防食皮膜形成方法。
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