(発明の詳細な説明)
上記した通り、免疫反応性におけるCD69の抑制的役割はネズミコラーゲン誘導関節炎(CIA)の実験モデルを用いて明らかにされている。CD69欠損マウスはより高度のCIAの発生率および重症度を示し、II型コラーゲン(CII)に対するBおよびT免疫応答も悪化している。CIAにおいて保護的役割を果たしている
は、CD69
−/−マウスの炎症病巣において低減しており、
およびRANTESにおける増大に相関している。CIIで攻撃した野生型マウスにおけるブロッキング抗TGFβ抗体の局所注射はまたCD69
+/+マウスにおいてもCIAの重症度および炎症促進性サイトカインmRNA濃度を上昇させたが、CD69
−/−マウスではさせなかった。更にまた、CD69の結合は活性化マウスTリンパ球、マウス滑膜細胞、慢性関節症より得たヒト滑膜単核細胞およびヒトCD69のJurkat安定形質転換体において全体の、および活性なTGF−β1の産生を直接誘導したが、親CD69陰性細胞系統ではしなかった。即ち、CD69は異なる炎症促進性メディエーターの産生を同様にダウンレギュレートするサイトカインである
の合成を介した自己免疫反応および炎症の負のモジュレーターである。
更にまた、CD69の抑制性の役割は腫瘍に対するCD69−/−マウスの感受性を分析することによりインビボで明らかにされている。腫瘍により攻撃されたCD69−/−マウスは野生型マウスと比較して強力に低減された腫瘍生育および延長された生存を示している。この強力な抗腫瘍応答はTGF−βの減衰した産生、炎症性サイトカインおよびケモカインMCP−1の増大と相関しており、そしてリンパ様エフェクターの増大した動員および低減したアポトーシスと関連していた。腫瘍生育に対するCD69−/−マウスの抵抗性はNKおよびTリンパ球媒介性であり、そして免疫弱化CD69−/−RAG陰性マウスにおいて持続していた。更にまた、野生型マウスにおけるTGF−βブロックは抗腫瘍応答を増大させ、その増強された抗腫瘍免疫性の根拠としてのCD69−/−マウス中で観察されたTGF−βの低減した産生と直接関連していた。更にまた、CD69の結合により細胞外のシグナル調節キナーゼ(ERK)の活性化およびT細胞によるTGF−βの産生が誘導された。特異的薬理学的インヒビターであるPD98059によるERKのブロッキングはTGF−βの産生を抑制し、TGF−βの調節とCD69シグナル伝達を直接関連付けていた。
更にまた、アンタゴニスト2.2抗CD69mAbのインビボ投与は野生型マウスおよび免疫弱化SCIDおよびRAG欠損マウスにおいて抗腫瘍応答を増強することが明らかにされている。従って、抗CD69モノクローナル抗体のインビボ投与は免疫応答を回復するために感染性疾患および免疫不全症候群にまで延長され得る腫瘍免疫性の操作において免疫応答を増強する新しい試みとして明らかにされている。
抗CD69抗体によるインビボ処置は使用する抗CD69に応じて種々の作用をもたらし;アンタゴニスト2.2.抗CD69抗体は免疫応答を増強し、増大したCIAの重症度および腫瘍の拒絶をもたらす。枯渇性2.3抗CD69はCD69+活性化エフェクター白血球を欠失させ、減衰したCIAをもたらす。更に、この枯渇性2.3抗CD69抗体はCD69+腫瘍を直接拒絶する場合がある。
重要な点は、hAIM−29と命名されたヒトモノクローナル抗体(mAb)が作成されており、そして活性化ヒト白血球の表面上のヒトCD69を特異的に認識する(Molinaら、2003)。実験によればhAIM−29はIg架橋を伴うことなく細胞内カルシウム流入を活性化し、そして、他のマウス抗CD69抗体と同様の態様でホルボールミリステートアセテート(PMA)誘導細胞増殖を増強する。
CD69と同様、AICLおよびLLT1は白血球中低濃度で発現され、そして強力に一過性にアップレギュレートされる(Hamannら、1997;Eichlerら、2001)。従ってAICLおよびLLT1はCD69と同様に
免疫反応性の負のモジュレーターとしての早期活性化ポリペプチドの役割はこれらのポリペプチドのターゲティングにより慢性炎症および他の免疫媒介疾患を治療することである。更に、CD69、AICLおよびLLT1は活性化白血球浸潤炎症組織において選択的に発現されるため、CD69、AICLおよび/またはLLT1を介したTGF−β1合成の薬理学的刺激は局在化された作用を有し、即ち、全身性のTGF−β1のアップレギュレーションまたは送達の有害な結果を回避することができる。
本発明は種々の操作法を介してCD69、AICLおよび/またはLLT1をターゲティングすることにより免疫応答を調節する操作法を提供する。
本発明の1つの特定の目的/目標は早期活性化分子シグナル伝達または早期活性化分子アゴニストとして同定される推定上のリガンドまたはレセプターとの相互作用を促進する物質を用いた早期活性化分子のターゲティングに基づいた免疫応答の調節である。第2の目的は、早期活性化分子が発現することを抑制し、早期活性化分子のそのレセプターまたはリガンドとの結合をブロッキングし、または、早期活性化分子アンタゴニストとして同定される細胞表面からの早期活性化ポリペプチドダウン調節を誘導するものを含む、早期活性化分子シグナル伝達を抑制またはブロックする物質を用いた早期活性化分子を介した免疫応答の調節である。第3の目的は早期活性化分子枯渇剤として同定されるCD69+、AICL+および/またはLLT1+細胞を枯渇させる物質を用いた早期活性化分子を発現する細胞の枯渇を介した免疫調節である。
本発明の他の特定の目的はCD69+、AICL+および/またはLLT1+細胞のアゴニスト、アンタゴニストまたは枯渇剤として使用するための薬剤を発見、同定またはその他評価するための方法を包含する。これらの方法はCa2+シグナル伝達、MAPKの活性化、TGF−βの産生、アポトーシスメディエーターの誘導および細胞溶解を、評価の方法の全てまたは部分として使用できる。更に、これらの物質の一部の例は抗体である抗早期活性化ポリペプチド抗体分子またはこれらの抗体から直接または間接的に誘導された物質の使用のように本明細書において特に同定される。更にまた、早期活性化分子関連コンストラクトまたは生成物を用いたアフィニティークロマトグラフィーの使用により同定される早期活性化ポリペプチドの推定リガンドまたはレセプター、または、早期活性化分子に対するそのアゴニスト、アンタゴニストまたは枯渇剤としての活性が記載した方法のいずれかにより同定されることが本発明の目的である。
本発明の別の特定の目的は免疫媒介疾患の治療における早期活性化分子を直接または間接的に介した免疫応答を調節できる物質の使用である。自己免疫または腫瘍の過程は早期活性化分子の有無および早期活性化分子を介して作用する物質の投与により影響される。即ち、本発明の方法は下記の多くの他の免疫媒介疾患を治療するために使用できる:
− 自己免疫疾患、例えば関節リウマチおよび免疫要素のある他の型の慢性または急性の関節炎または関節症、全身性エリテマトーデス、強皮症、シェーグレン症候群、自己免疫性糖尿病、甲状腺炎、および、他の臓器特異的免疫疾患、例えば乾癬。更に包含されるものとしては、神経学的疾患、例えば多発性硬化症、重症筋無力症、および他の神経免疫媒介性疾患である。更に包含されるものとしては、胃腸疾患、例えばクローン病、大腸炎、セリアック病、肝炎および他の免疫媒介障害である;
− 心臓血管疾患、例えばアテローム性動脈硬化症、心筋症、リウマチ熱、心内膜炎、血管炎および他の免疫媒介心臓血管疾患;
− 呼吸器疾患、例えば気腫、呼吸気道感染症および他の免疫媒介呼吸器障害。
− アレルギー過程および過敏性反応(I、II、IIIおよびIV型)、例えば喘息、鼻炎、および他の免疫媒介過敏性反応;
− 移植臓器および移植片の拒絶、例えば臓器移植、組織移植片または輸血。更に包含されるものとしては、移植片 対 宿主疾患、例えば骨髄移植中に起こるもの;
− 癌性疾患、例えば白血病、リンパ増殖性疾患、固形癌および全ての他の型の望ましくない細胞増殖、例えば非悪性および悪性の障害、例えば全ての他の型の癌;
− 感染性疾患、例えば細菌、ウィルス、カビまたは寄生虫の感染症、敗血症性ショック症候群および他の感染物質に対する免疫病理学的な応答;
− 先天性の免疫不全疾患および後天性の免疫不全症候群および放射線療法および化学療法による免疫抑制症候群;
− 変性過程、例えばミクログリアのような免疫コンピテント細胞の関与する神経変性;
− 抗原特異的応答の性質を調整するために使用される抗原のコントロール投与;
− 遺伝子療法。
更にまた、一部の免疫媒介過程は早期活性化分子を介した介入により有利となる場合があり、例えば種々の免疫媒介過程、例えば前述したものに適用できる免疫抑制、または、ワクチン接種並びに微生物抗原または腫瘍抗原をコードするDNAを注射する保護免疫、または前述したものを包含する免疫媒介疾患の治療のための他の過程が挙げられる。
TGF−βサイトカインおよびCD69、AICLおよびLLT1シグナル伝達の他のメディエーターは多面的な作用を有するため、上記で示唆した疾患の全ては免疫調節におけるこれらの早期活性化分子の記載した作用を含み得、そして、特定の目的は後に記載する実施例に基づいたもののような、後述する予測に限定されない。早期活性化分子を介したアゴニスト手法は多岐にわたって報告されている免疫調節に対する結果的作用を有するTGF−βの高度な生成を予測する(Letterio and Roberts,1997;Pud’homme and Piccirillo,2000)。TGF−βの免疫抑制因子作用は自己免疫疾患、移植組織拒絶および上記で列挙したものとは別の型のもののような免疫系の活性化が悪化している免疫疾患の治療のために有用である。アンタゴニストによる方法は腫瘍拒絶、感染治療またはワクチン接種としてのその防止のような免疫系を増強する必要がある疾患または過程の治療のために使用される逆経路を介して作用する。枯渇による方法は抗原刺激に応答して局所的に活性化される細胞であり、免疫応答を媒介するCD69+、AICL+および/またはLLT1+細胞を排除する。従って予測される結果は自己免疫疾患、移植組織拒絶および上記で列挙したものとは別の形態のような免疫応答の悪化に関連する疾患の軽減である。
(早期活性化ポリペプチド)
「早期活性化タンパク質」および「早期活性化ポリペプチド」という用語はCD69、AICL、LLT1およびそのフラグメントを指す。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は本明細書においては、互換に使用する。
(CD69)
本明細書においては、「極めて早期活性化される」タンパク質、「活性化誘導分子」および「gp34/28」としても知られる「CD69」は哺乳類CD69、好ましくはヒトCD69タンパク質を指す。従って、「ヒトCD69」という用語はLopez−Cabrera(1993)J.Exp.Med.178(2)537−547に記載のアミノ酸配列(配列番号2)を有するかこれと相同(例えば少なくとも約85%、90%、95%同一)であるか;または、(a)ヒトCD69をコードする核酸配列(例えばLopez−Cabrera(1993)J.Exp.Med.178(2)537−547に記載のヒトCD69をコードする核酸配列(配列番号1))(図23参照);(b)天然に存在するCD69配列に縮重した核酸配列;(c)天然に存在するヒトCD69核酸配列に相同(例えば少なくとも約85%、90%、95%同一)である核酸配列;または(d)ストリンジェントな条件下、例えば高度にストリンジェントな条件下で上記した核酸配列の1つにハイブリダイズする核酸配列によりコードされるポリペプチドを指す。好ましいCD69はCD69の天然に存在する変異体または対立遺伝子である。
(AICL)
本明細書においては、「活性化誘導C型レクチン」としても知られる「AICL」は哺乳類AICL、好ましくはヒトAICLタンパク質である。従って、「ヒトAICL」という用語はHamannら、(1997) Immunogenetics 45:295−300に記載のアミノ酸配列(配列番号4)を有するかこれと相同(例えば少なくとも約85%、90%、95%同一)であるか;または、(a)ヒトAICLをコードする核酸配列(例えばHamannら、(1997) Immunogenetics 45:295−300に記載のヒトAICLをコードする核酸配列(配列番号3))(図24参照);(b)天然に存在するヒトAICL配列に縮重した核酸配列;(c)天然に存在するヒトAICL核酸配列に相同(例えば少なくとも約85%、90%、95%同一)である核酸配列;または(d)ストリンジェントな条件下、例えば高度にストリンジェントな条件下で上記した核酸配列の1つにハイブリダイズする核酸配列によりコードされるポリペプチドを指す。好ましいAICLはAICLの天然に存在する変異体または対立遺伝子である。
(LLT1)
本明細書においては、「レクチン様転写物」としても知られる「LLT1」は哺乳類LLT1、好ましくはヒトLLT1タンパク質である。従って、「ヒトLLT1」という用語はBolesら、(1999)Immunogenetics 50:1−7に記載のアミノ酸配列(配列番号6)を有するかこれと相同(例えば少なくとも約85%、90%、95%同一)であるか;または、(a)ヒトLLT1をコードする核酸配列(例えばBolesら、(1999)Immunogenetics 50:1−7に記載のヒトLLT1をコードする核酸配列(配列番号5))(図25参照);(b)天然に存在するヒトLLT1配列に縮重した核酸配列;(c)天然に存在するヒトLLT1核酸配列に相同(例えば少なくとも約85%、90%、95%同一)である核酸配列;または(d)ストリンジェントな条件下、例えば高度にストリンジェントな条件下で上記した核酸配列の1つにハイブリダイズする核酸配列によりコードされるポリペプチドを指す。好ましいLLT1はLLT1の天然に存在する変異体または対立遺伝子である。
(抗早期活性化ポリペプチド抗体分子)
「抗早期活性化ポリペプチド抗体分子」は早期活性化ポリペプチド、好ましくはヒト早期活性化タンパク質と相互作用(例えば結合)する抗体分子である。好ましくは、抗早期活性化ポリペプチド抗体分子は早期活性化ポリペプチドの細胞外ドメイン(すなわち細胞の外部に位置する早期活性化ポリペプチドのエピトープ)に結合する。
一部の局面において、抗早期活性化ポリペプチド抗体分子は抗CD69抗体分子、例えば抗ヒトCD69抗体分子であることができる。ヒトCD69に対するモノクローナル抗体の例は、抗マウス抗体2.2に類似の抗ヒトCD69抗体分子、抗マウスCD69抗体2.3に類似の抗ヒトCD69抗体分子、または抗ヒトCD69抗体、例えば当該分野で知られた抗体であってCD69のアゴニスト、アンタゴニストまたは枯渇剤として作用することができるもの、または、このような抗体のエピトープに重複するか結合に関してそのような抗体と競合するエピトープを有する抗体分子を包含するが、これらに限定されない。当該分野で知られている抗ヒトCD69抗体の例は、TP1/8、TP1/22、TP1/28、TP1/33、TP1/55(例えばCebrian et al.(1988)J,Exp.Med.168:1621−37に記載のもの);CH/4、CH/1、CH/2、FAB/1(例えばSanchez−Mateos et al.(1991)Eur.J.Immunol.21:2317−25に記載のもの);L78、MLR3、FN61、FN50(例えばSchwarting, R.et al.(Eds)Leukocyte Typing IV,Springer−Verlag,New York,1989,p.428に記載のもの);MLR3(例えばCorte,Gら、(1981)Eur.J.Immunol.11:162−164に記載のもの);EA1(例えばHara,T(1986) J.Exp.Med.164:1988−2005に記載のもの);Leu23(例えばLanier,L.L.et al.,(1988)J.Exp.Med.167:1572−1585に記載のもの);およびC1.18、E16.5(例えばGerosa,F(1991)Mol.Immunol.28:159−168に記載のものが含まれる。本発明において使用できる抗体分子の非限定的な例は、hAIM−29;CD69ポリペプチドのネック部の残基1つ以上(例えばヒトCD69の残基62〜84の残基1つ以上)を含むエピトープと相互作用、例えば結合する抗体分子;CD69ポリペプチドのNKドメイン(または炭水化物認識ドメイン(CRD))の残基1つ以上(例えばヒトCD69の残基82〜199の残基1つ以上)を含むエピトープと相互作用、例えば結合する抗体分子;CD69ポリペプチドの細胞内ドメインの残基1つ以上(例えばヒトCD69の1〜40の残基1つ以上)を含むエピトープと相互作用、例えば結合する抗体分子;本明細書に記載の方法で活性が測定できる(例えば、
の産生、MAPK活性化またはCa
2+シグナル伝達)下流エフェクターとのCD69原形質および/または膜貫通領域の相互作用を結合時に調節、例えば増強または低減するエピトープと相互作用、例えば結合する抗体分子;結合するとCD69二量体形成を調節、例えば増強または低減するエピトープ(例えばヒトCD69の残基Cys68またはCys68近傍に位置する残基を含むエピトープ)であるエピトープ(例えばコンホーメーションまたは線状のエピトープ)と相互作用、例えば結合する抗体分子;CD69の細胞表面発現を調節できる抗体分子、例えば細胞表面からのCD69をダウン調節できる抗体分子;CD69リガンドまたはレセプターの結合を調節できる抗体分子、例えばCD69へのリガンドまたはレセプターの結合を抑制、例えば競合的に抑制、または増強することができる抗体;ヒトCD69のアミノ酸残基Glu140、Asp171、Glu180、Glu185、Glu187、Phe175、Met184、Leu190、Glu185およびLys188の1つ以上と相互作用、例えば結合するか、これらへのリガンドまたはレセプターの結合を抑制または増強できる抗体分子)を包含する。
他の実施形態においては、抗早期活性化ポリペプチド抗体分子は抗AICL抗体分子、例えば抗ヒトAICL抗体分子であることができる。ヒトAICLに対するモノクローナル抗体の例は、当該分野で知られた抗ヒトAICL抗体であってAICLのアゴニスト、アンタゴニストまたは枯渇剤として作用するもの、または、このような抗体のエピトープに重複するか結合に関してそのような抗体と競合するエピトープを有する抗体分子を包含するが、これらに限定されない。本発明において使用できる抗体分子の例は、AICLポリペプチドのネック部の残基1つ以上(例えばヒトAICLの残基26〜36の残基1つ以上)を含むエピトープと相互作用、例えば結合する抗体分子;AICLポリペプチドのNKドメイン(または炭水化物認識ドメイン(CRD))の残基1つ以上(例えばヒトAICLの残基37〜149の残基1つ以上)を含むエピトープと相互作用、例えば結合する抗体分子;AICLポリペプチドの細胞内ドメインの残基1つ以上(例えばヒトAICLの1〜7の残基1つ以上)を含むエピトープと相互作用、例えば結合する抗体分子;本明細書に記載の方法で活性が測定できる(例えば、
の産生、MAPK活性化またはCa
2+シグナル伝達)下流エフェクターとのAICL原形質および/または膜貫通領域の相互作用を結合時に調節、例えば増強または低減するエピトープと相互作用、例えば結合する抗体分子;エピトープ(例えばコンホーメーションまたは線状のエピトープ)と相互作用、例えば結合する抗体分子;AICLの細胞表面発現を調節できる抗体分子、例えば細胞表面からのAICLをダウン調節できる抗体分子;AICLリガンドまたはレセプターの結合を調節できる抗体分子、例えばAICLへのリガンドまたはレセプターの結合を抑制、例えば競合的に抑制、または増強することができる抗体を包含する。
更に他の実施形態においては、抗早期活性化ポリペプチド抗体分子は抗LLT1抗体分子、例えば抗ヒトLLT1抗体分子であることができる。ヒトLLT1に対するモノクローナル抗体の例は、当該分野で知られた抗ヒトLLT1抗体であってLLT1のアゴニスト、アンタゴニストまたは枯渇剤として作用するもの、または、このような抗体のエピトープに重複するか結合に関してそのような抗体と競合するエピトープを有する抗体分子を包含するが、これらに限定されない。本発明において使用できる抗体分子の例は、LLT1ポリペプチドのネック部の残基1つ以上(例えばヒトLLT1の残基60〜75の残基1つ以上)を含むエピトープと相互作用、例えば結合する抗体分子;LLT1ポリペプチドのNKドメイン(または炭水化物認識ドメイン(CRD))の残基1つ以上(例えばヒトLLT1の残基76〜132の残基1つ以上)を含むエピトープと相互作用、例えば結合する抗体分子;LLT1ポリペプチドの細胞内ドメインの残基1つ以上(例えばヒトLLT1の1〜30の残基1つ以上)を含むエピトープと相互作用、例えば結合する抗体分子;本明細書に記載の方法で活性が測定できる(例えば、
の産生、MAPK活性化またはCa
2+シグナル伝達)下流エフェクターとのLLT1原形質および/または膜貫通領域の相互作用を結合時に調節、例えば増強または低減するエピトープと相互作用、例えば結合する抗体分子;結合するとLLT1二量体形成を調節、例えば増強または低減するエピトープ(例えばヒトLLT1の残基Cys63またはCys63近傍に位置する残基を含むエピトープ)であるエピトープ(例えばコンホーメーションまたは線状のエピトープ)と相互作用、例えば結合する抗体分子;エピトープ(例えばコンホーメーションまたは線状のエピトープ)と相互作用、例えば結合する抗体分子;LLT1の細胞表面発現を調節できる抗体分子、例えば細胞表面からのLLT1をダウン調節できる抗体分子;LLT1リガンドまたはLLT1レセプターの結合を調節できる抗体分子、例えばLLT1へのリガンドまたはレセプターの結合を抑制、例えば競合的に抑制、または増強することができる抗体を包含する。
1つの実施形態において、抗早期活性化ポリペプチド抗体分子は本明細書に記載した抗体、例えば、アゴニスト、アンタゴニストまたは枯渇剤として作用できる当該分野で知られた抗ヒトCD69抗体、当該分野で知られた抗ヒトAICL抗体、または当該分野で知られた抗LLT1抗体、または、抗マウス早期活性化ポリペプチド抗体、例えば抗マウスCD69抗体(例えば抗体2.2、2.3またはH1.2F3(例えばYokoyamaら、(1988)J.Immunol.141:369−376に記載のもの))に類似の抗ヒト早期活性化ポリペプチド抗体のエピトープの全てまたは部分に結合する。抗CD69抗体はSanchez−Mateos(1991)に記載のエピトープの残基1つ以上と結合できるか、または、記載したエピトープの1つに結合する抗体と結合に関して競合することができる。抗早期活性化ポリペプチド抗体分子は、本明細書に記載した抗体、例えば本明細書に記載した当該分野で知られている抗ヒト早期活性化ポリペプチド抗体のヒト早期活性化ポリペプチドへの結合を抑制、例えば競合的に抑制することができる。抗早期活性化ポリペプチド抗体分子はエピトープ、例えばコンホーメーションまたは線状エピトープに結合してよく、そのエピトープは結合時には、本明細書に記載した抗体、例えば本明細書に記載した当該分野で知られた抗ヒト早期活性化ポリペプチド抗体の結合を防止する。エピトープは、空間的または機能的に関連してごく近傍に存在することができ、例えば本明細書に記載した抗体、例えば本明細書に記載した当該分野で知られた抗ヒト早期活性化ポリペプチド抗体により認識されるものに対して線状配列において、またはコンホーメーション上、重複するか隣接するエピトープであることができる。
好ましい実施形態においては、抗早期活性化ポリペプチド抗体分子と早期活性化ポリペプチドとの間の相互作用、例えば結合は高い親和性(例えば親和性定数が少なくとも約109M−1以上)および特異性で起こる。好ましくは、抗早期活性化ポリペプチド抗体分子は免疫応答を調節し、例えば早期活性化分子アゴニスト、早期活性化分子アンタゴニストまたは早期活性化分子枯渇性抗体である。
本明細書においては、「特異的に結合する」とは、結合剤、好ましくは抗体が(1)少なくとも1x107M−1の親和性で早期活性化ポリペプチド、例えばヒト早期活性化ポリペプチドに結合し、そして(2)早期活性化ポリペプチド以外の非特異的抗原(例えばBSA、カゼイン)への結合に関するその親和性よりも少なくとも2倍、50倍、100倍、1000倍以上である親和性で早期活性化ポリペプチド、例えばヒト早期活性化ポリペプチドに優先的に結合するという特性を指す。
本明細書に記載した説明からわかるとおり、多くの型の抗早期活性化ポリペプチド抗体分子、例えば抗体またはその抗原結合フラグメントが本発明の方法において有用である。抗体分子は種々のアイソタイプ、例えばIgG(例えばIgG1、IgG2(例えばIgG2a、IgG2b)、IgG3、IgG4)、IgM、即ちIgM/λ、IgA1、IgA2、IgDまたはIgEのものであることができる。好ましい抗体分子はIgGアイソタイプである。抗体分子は完全長(例えばIgG1またはIgG4抗体)であることができ、または、抗原結合フラグメント(例えばFab、F(ab’)2、Fvまたは単一鎖Fvフラグメント)のみを含むことができる。抗体は好ましくは操作された抗体分子、例えば完全なヒトまたはヒト化抗体である。
抗体または本明細書に記載した他の薬剤はCD69、AICLまたはLLT1をアゴナイズ、拮抗または枯渇させる能力について評価することができる。
枯渇剤の抗早期活性化ポリペプチド抗体は動物に対し、単独または毒素とコンジュゲートして投与された場合に、早期活性化ポリペプチド+細胞、例えばCD69+、AICL+および/またはLLT1+腫瘍細胞;例えば慢性炎症浸潤部におけるCD69+、AICL+および/またはLLT1+白血球の絶対数を低減するものである。これは通常はこれらの細胞の直接の細胞溶解を介して作用する(例えば骨髄または肝臓のような臓器コンパートメント内の細胞の一過性の隔離とは異なる)。
拮抗性抗早期活性化ポリペプチド抗体は動物に投与された場合に、本明細書においては「ブロッキングアンタゴニスト」と称される例えばその天然のリガンドまたはレセプターの1つ以上によるCD69、AICLおよび/またはLLT1の結合により誘導される内因性シグナル伝達をブロックすることにより(例えばその天然のリガンドまたはレセプターとのCD69、AICLまたはLLT1の相互作用をブロックすることにより)、CD69+、AICL+および/またはLLT1+細胞がそのTGF−ベータサイトカインの産生を低減するように誘導する抗体である。他の早期活性化ポリペプチドアンタゴニストは、例えば早期活性化ポリペプチドに結合してポリペプチドを内在化させることにより細胞表面上の早期活性化ポリペプチドの濃度を低減する「ダウン調節アンタゴニスト」を包含する。
作動性抗早期活性化ポリペプチド抗体は動物に投与された場合に、例えば天然のリガンドまたはレセプターへの結合の非存在下において、または、その天然のリガンドまたはレセプター1つ以上によるCD69、AICLまたはLLT1の結合により誘導される内因性シグナル伝達に加えて、シグナル伝達を増大させることにより、TGF−ベータサイトカインの産生を増大するようにCD69+、AICL+および/またはLLT1+細胞を誘導するものである。
種々のインビトロの方法を、例えば全動物試験と組み合わせて使用することにより枯渇剤、アンタゴニストまたはアゴニストとしての活性について候補を評価することができる。インビトロ試験は全ての場合においてインビボ活性を示すものではないが、しかしなお、スクリーニング手法においては有用である。
(早期活性化分子枯渇剤)
インビトロ早期活性化ポリペプチド枯渇剤抗体は、早期活性化ポリペプチドを発現している細胞と共にインキュベートした場合に、これらの細胞の絶対数を低減するものである、これは例えば補体依存性、Fc−レセプター依存性、または毒素依存性の機序を介して、その直接の細胞溶解により行われる。即ち、早期活性化ポリペプチド枯渇剤はインビトロ殺傷試験において早期活性化ポリペプチドを発現している細胞を殺傷できる。アイソタイプは、抗早期活性化ポリペプチドが補体系機序により枯渇剤として機能するかどうかにおいて、重要な役割を果たす。抗体が補体に結合できれば、それは恐らくは枯渇剤として挙動する。ほとんどの天然に存在する抗体は補体に対して比較的高い親和性を有し、従って、枯渇剤となる。このことは補体に対して低い親和性を有するネズミIgG1およびヒトIgG4の場合には起こりにくい。更に、抗体は補体に対して低減された、または増大した親和性を有するように操作することができる。マウスまたは他の抗マウスの早期活性化ポリペプチド枯渇剤抗体は補体の存在下インビトロで早期活性化ポリペプチドを発現するマウス細胞を殺傷できる。このような抗体を試験するために有用な標的の早期活性化ポリペプチド発現細胞は例えばネズミ白血病、例えばCD69に対するEL4胸腺腫の細胞系統を包含する。例えばマウスまたは他の抗ヒトのCD69枯渇剤抗体(例えばhAIM−29mAb)はヒトCD69発現細胞、例えば関節リウマチの滑膜液由来のCD69発現ヒトTリンパ球、CD69発現ヒト白血病または安定なCD69の形質転換体、例えばCD69を安定に発現するJurkat白血病細胞を殺傷できる。この抗体はCD69を発現しないコントロール細胞、例えばCD69を発現しない親Jurkat白血病細胞は殺傷しない(あるいははるかに低い水準で殺傷する)。即ち、抗体が枯渇剤として機能する能力は、早期活性化ポリペプチドを発現する標的細胞および早期活性化ポリペプチドを発現しないコントロール細胞を溶解する能力について、インビトロで試験できる。候補枯渇剤は早期活性化ポリペプチドを発現する細胞を溶解するが、早期活性化ポリペプチドを発現しないコントロール細胞は溶解しない(あるいははるかに低い程度に溶解する)。1つの例においては、細胞の溶解は、標的(およびコントロール)細胞をCR51にロードし、そして典型的には37℃で2時間、新鮮ウサギ仔補体の存在下に抗体をインキュベートする試験においてモニタリングできる。その後、上澄みを回収し、上澄み中に放出されたCR51の量により細胞溶解の水準を評価する。細胞溶解は溶解した細胞によるCR51の放出により示される。
(早期活性化分子アゴニスト)
インビトロ作動性抗早期活性化ポリペプチド抗体はCD69+、AICL+および/またはLLT1+細胞と共にインキュベートした場合に、例えば天然のリガンドまたはレセプターへの結合の非存在下においてシグナル伝達を増大させることにより、または、インビトロの培養系中に存在するその天然のリガンドまたはレセプター1つ以上によるCD69、AICLまたはLLT1の結合により誘導される内因性シグナル伝達に加えてシグナル伝達を増大させることにより、TGF−βサイトカインの産生を増大させるものである。即ち、早期活性化ポリペプチドを発現する細胞と共に候補アゴニストをインキュベートし、そして例えばコントロール細胞、例えば早期活性化ポリペプチドを発現しない細胞と比較した場合の
の産生に対するその作用を評価することにより、アゴニストのインビトロスクリーニングを行うことができる。例えば、抗マウスCD69抗体は、ConA活性化CD69発現脾細胞による
の産生を促進するその能力を評価することにより、インビトロでアゴニストとして挙動する能力について評価することができる。hAIM−29mAbのような抗ヒトCD69抗体はCD69で安定にトランスフェクトされたJurkat細胞による
の合成を媒介する能力について評価できる。アゴニストは早期活性化ポリペプチドを発現する細胞における
の産生を促進するが、コントロール系統、好ましくは早期活性化ポリペプチドを発現しない親系統では促進しない。アゴニズムは候補アゴニストと架橋する二次架橋抗体を添加する必要があり得る。アゴニストは枯渇剤として作用すべきではない。
(早期活性化分子アンタゴニスト)
インビトロ拮抗性抗早期活性化ポリペプチド抗体はCD69+、AICL+および/またはLLT1+細胞と共にインキュベートした場合に、例えばインビトロの培養系中に存在するその天然のリガンドまたはレセプター1つ以上によるCD69、AICLまたはLLT1の結合により誘導される内因性シグナル伝達をブロックすることにより、
サイトカインの産生を低減するものである。即ち、早期活性化ポリペプチドを発現する細胞と共に候補アンタゴニストをインキュベートし、そして例えばコントロール細胞、例えば早期活性化ポリペプチドを発現しない細胞と比較した場合の
産生に対するその作用を評価することにより、アンタゴニストのインビトロスクリーニングを行うことができる。例えば、抗マウスCD69抗体は、ConA活性化CD69発現脾細胞による
の産生を抑制するかまたは低減するその能力を評価することにより、インビトロでアンタゴニストとして挙動する能力について評価することができる。hAIM−29mAbのような抗ヒトCD69抗体はCD69で安定にトランスフェクトされたJurkat細胞による
の合成を媒介する能力について評価できる。アンタゴニストは早期活性化ポリペプチドを発現する細胞における
の産生を抑制するが、コントロール系統、好ましくは早期活性化ポリペプチドを発現しない親系統では抑制しない。インビトロでのアンタゴニストはまたダウン調節するアンタゴニスト、例えばインビトロダウン調節拮抗性抗早期活性化ポリペプチド抗体であることができる。インビトロアンタゴニストは、候補アンタゴニストを、早期活性化ポリペプチドを発現する細胞と共にインキュベートし、早期活性化ポリペプチドが細胞表面から消失するかどうかを評価することによりスクリーニングすることができる。例えばネズミ抗早期活性化ポリペプチド抗体は、ネズミ抗早期活性化ポリペプチド抗体の存在を検出することができる試薬、例えば抗マウスポリクローナル試薬を用いながら、早期活性化ポリペプチドをダウン調節するその能力について評価することができる。試薬が候補を検出しなかった場合は、アンタゴニストはダウン調節アンタゴニストとして同定できる。アンタゴニストは枯渇剤として作用するべきではない。
更にまた、アンタゴニストは以下の特性の1つ以上を有することができる:
1)純粋な早期活性化ポリペプチドの、その精製されたレセプターまたはリガンドへの、部分精製された製剤、例えば細胞由来の膜画分であって通常は早期活性化ポリペプチドに応答するもの、例えば早期活性化ポリペプチドレセプターを発現するものへの、または、早期活性化ポリペプチドに通常は応答する、例えば早期活性化ポリペプチドレセプターを発現する全細胞への結合をブロックする;
2)早期活性化ポリペプチドを発現する細胞の精製された早期活性化ポリペプチドレセプターへの結合をブロックする;
3)早期活性化ポリペプチドを発現する細胞の、早期活性化ポリペプチドレセプターを発現する細胞(例えば通常は早期活性化ポリペプチドに応答する細胞)への、または、部分精製された製剤、例えば細胞由来の膜画分であって通常は早期活性化ポリペプチドに応答するもの、例えば早期活性化ポリペプチドレセプターを発現するものへの結合をブロックする。例えば候補アンタゴニストはJurkat細胞のヒトCD69安定トランスフェクト体への推定CD69Rを含有する製剤の結合をブロックする(親CD69−細胞系統では異なる);
4)早期活性化ポリペプチドを発現する細胞へのアゴニストモノクローナル抗体の結合をブロックすることにより、アゴニスト抗体による
の産生を防止する;
5)例えば早期活性化ポリペプチドに結合してポリペプチドを内在化させることにより細胞表面上の早期活性化ポリペプチドの濃度を低減する。
(抗体分子)
本明細書においては、抗体分子という用語は、相補性決定領域(CDR)の十分な数、好ましくは6つを、CDRの同種抗原への結合を可能にするフレームワーク内に存在させて含んでいる分子を指す。即ち、用語には完全長の抗体(例えば天然に存在する抗体および操作された抗体)、および、天然に存在または操作された抗体の抗原結合フラグメントが包含される。用語は種々の型の抗体または抗体分子、例えば単一特異的、モノクローナル抗体、組み換え、ヒト、非ヒト、例えばネズミのものを包含する。更に包含されるものは、単一鎖の抗体、細胞内発現抗体および2価の抗体である。更に包含されるものは、キメラ、CDRグラフト、ヒト化、脱免疫化、並びに免疫原性を低減するように操作されているその他の抗体分子、例えば非ヒト起源から誘導した、例えば非ヒト動物、例えばマウスから誘導したCDRを有するもの、および/または、例えばファージディスプレイ法を用いた配列のランダムまたは部分ランダム作成に由来するものである。このような非ヒトはヒト、ヒト化、またはヒトに投与した場合に抗原性の低い他のフレームワークに挿入できる。
即ち、抗体分子は非ヒト起源の、例えば非ヒト抗体由来、例えばマウス免疫グロブリンまたは別の非ヒト免疫グロブリン由来、コンセンサス配列由来、または、ファージディスプレイまたは多様性を発生させるための何らか別の方法により作成された配列由来のCDRを有し;そして非ヒトフレームワークよりもヒトにおいて抗原性が低い、例えば非ヒト免疫グロブリン由来のCDRの場合は、非ヒトCDRが選択される非ヒトフレームワークよりも抗原性の低いフレームワークを有する。免疫グロブリンのフレームワークは例えばヒト、ヒト化非ヒト、例えばマウス、ヒトにおいて抗原性が低減するように修飾されたフレームワーク、または、合成フレームワーク、例えばコンセンサス配列、または多様性を発生させるためのインビトロの方法で得られたものであることができる。
好ましい抗体分子は、少なくとも1つ、好ましくは2つの重(H)鎖可変領域(本明細書においてはVHと略記する)またはその抗原結合フラグメント、および、少なくとも1つ、好ましくは2つの軽(L)鎖可変領域(本明細書においてはVLと略記する)またはその抗原結合フラグメントを含むことができる。VHおよびVL領域は「フレームワーク領域(FR)」と称されるより保存された領域で散在する「相補性決定領域(CDR)」と称される超可変の領域に細分される。フレームワーク領域およびCDRの範囲は詳細に定義されている(例えばKabat,E.A.,et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U,S,Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242およびChothia,C.et al.,(1987) J.Mol.Biol.196:901−917を参照でき、参照により本明細書に組み込まれる)。好ましくは抗体分子の各VHおよびVLは以下の順序、即ちFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて配置した3つのCDRおよび4つのFRよりなる。CDRおよびFRは異なる入手元に由来するものであって良い。
抗体分子のVHおよびVL鎖は重鎖または軽鎖の定常領域の全てまたは部分を含むことができる。1つの実施形態において、抗体分子は2つの重鎖免疫グロブリン鎖および2つの軽鎖免疫グロブリン鎖の4量体であり、ここで免疫グロブリンの重鎖と軽鎖は例えばジスルフィド結合により相互に連結されている。完全長の重鎖定常領域は3つのドメイン、即ちCH1、CH2およびCH3よりなる。軽鎖定常領域は1つのドメインCLよりなる。重鎖および軽鎖の可変領域は抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は典型的には、免疫系の種々の細胞(例えばエフェクター細胞)および伝統的な補体系の第1の成分(Clq)を含む宿主の組織または因子への抗体分子の結合を媒介する。抗体分子はIgA、IgG、IgE、IgD、IgM(並びにそのサブタイプ)を包含することができ、ここで軽鎖はカッパまたはラムダ型のものであり得る。
上記したとおり、抗体分子の「抗原結合フラグメント」は抗体分子の用語の範囲内である。抗原結合フラグメントは本明細書においては、早期活性化ポリペプチド(例えばヒト早期活性化ポリペプチド)に特異的に結合する抗体の部分を指す。結合フラグメントの例は(i)Fabフラグメント、即ちVL、VH、CLおよびCH1ドメインよりなる1価のフラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント、即ち、ヒンジ領域においてジスルフィド結合により連結された2つのFabフラグメントを含む2価のフラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインよりなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインよりなるFvフラグメント、(v)VHドメインよりなるdAbフラグメント(Wardら、(1989)Nature 341:544−546);および(vi)例えば可変領域の抗原結合う分に特異的に結合するために十分なフレームワークを有する単離された相補性決定領域(CDR)1つ以上、を包含する。
抗体フラグメントはまたペプシンまたはパパインのようなプロテアーゼで未損傷の抗体を切断することにより、そして場合により切断された産物を還元剤で処理することにより、化学的な方法で製造してよい。あるいは、有用なフラグメントはトランケーションされた重鎖および/または軽鎖の遺伝子で形質転換された宿主細胞を用いて生成してよい。
軽鎖可変領域の抗原結合部分および重鎖可変領域の抗原結合部分、例えばFvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHを、組み換え法を用いながら、1価の分子を形成できるようにVLおよびVH領域が対になった単一のタンパク質鎖としてそれらが形成されることを可能にする合成リンカーにより、連結することができる(単一鎖Fv(scFv)として知られている;例えばBirdら、(1988)Science 242:423−426;およびHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883参照)。このような単一鎖の抗体もまた抗体の「抗原結合フラグメント」の用語に包含されるものとする。これらの抗体フラグメントは当業者の知る従来の方法を用いて得られ、そして、フラグメントは未損傷の抗体と同様の態様で用途に関してスクリーニングする。
「単一特異性抗体または抗体分子」という用語は特定の標的、例えばエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す抗体または抗体分子を指す。この用語には「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」が包含される。
「組み換え」抗体または抗体分子という用語は、本明細書においては、組み換え手段により製造、発現、作成または単離される抗体または抗体分子、例えば宿主細胞へトランスフェクトされた組み換え発現ベクターを用いて発現された抗体分子、組み換えコンビナトリアル抗体ライブラリから単離された抗体分子、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対するトランスジェニックな動物(例えばマウス)から単離された抗体分子、または、他のDNA配列にヒト免疫グロブリン遺伝子配列をスプライシングすることを含む何れかの他の手段により製造、発現、作成または単離される抗体分子を指す。このような組み換え抗体分子はヒト化、CDRグラフト、キメラ、脱免疫化、インビトロ作成(例えばファージディスプレイによる)された抗体を包含し、そして、場合によりヒト生殖細胞系統免疫グロブリン配列から誘導された定常領域を包含してよい。
例えば抗体の他の部分、例えば定常領域を欠失、付加または置換することにより修飾されたモノクローナル、キメラおよびヒト化抗体もまた本発明の範囲に包含される。例えば抗体は以下の通り、即ち(i)定常領域を欠失させること;(ii)定常領域を別の定常領域、例えば抗体の半減期、安定性または親和性を増大させる意味を有する定常領域、または、別の種または抗体クラスに由来する定常領域で置き換えること;または(iii)定常領域のアミノ酸1つ以上を修飾することにより、例えばグリコシル化部位数、エフェクター細胞機能、Fcレセプター(FcR)結合、補体固定、胎盤輸送性等に関して改変すること、により修飾できる。
好ましいモノクローナル抗体には、例えばその生殖細胞系統にヒトIg転位遺伝子座を有するfive−featureのBABκ,λマウス系統の使用が関わっており(Magadanら、2002;Nicholsonら、1999)、それにおいては、即ち早期ヒト活性化マーカーCD69に対して指向されたヒトmAbであるhAIM−29が形成される。
1つの実施形態において抗体の定常領域は例えば異なる種に由来する別の定常領域により置き換えられることができる。この置き換えは分子生物学の手法を用いて実施できる。例えば、抗体のVLまたはVH領域をコードする核酸は、VHまたはVLコード核酸を軽鎖または重鎖の定常領域をコードする別の核酸に作動可能に連結することによりそれぞれ完全長の軽鎖または重鎖の遺伝子に変換することができる。ヒト軽鎖および重鎖の定常領域の遺伝子の配列は当該分野で知られている。好ましくは、定常領域はヒト由来であるが、他の種、例えばげっ歯類(例えばマウスまたはラット)、霊長類、ラクダ、ウサギに由来する定常領域も使用できる。これらの種に由来する定常領域は当該分野で知られている(例えばKabat,E.A.,et al.,(1991)Sequences of
Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U,S,Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242参照)。
抗体の定常領域を改変するための方法は当該分野で公知である。改変された機能、例えば細胞上のFcRまたは補体のClq成分のようなエフェクターリガンドに対する改変された親和性を有する抗体は、抗体の定常部分のアミノ酸残基少なくとも1つを異なる残基で置き換えることにより製造できる(例えば参照によりその全体が本明細書に組み込まれるEP388,151A1、US5,624,821およびUS5,648,260を参照)。ネズミまたは他の種の免疫グロブリンに適用した場合にこれらの機能を低減または消失させる同様の型の改変も報告されている。
(抗早期活性化ポリペプチド抗体の生成)
抗早期活性化ポリペプチド抗体分子の生成に有用な免疫原は、早期活性化ポリペプチドを発現する細胞、早期活性化ポリペプチドを発現する細胞由来の膜調製物、早期活性化ポリペプチド含有の小胞またはミセル、早期活性化ポリペプチドまたは早期活性化ポリペプチドのフラグメント、例えば単離または精製された早期活性化ポリペプチド、例えばヒト早期活性化ポリペプチド、例えば生化学的に単離された早期活性化ポリペプチドまたはその部分、または、組み換えにより製造された早期活性化ポリペプチドまたはそのフラグメント、例えば早期活性化ポリペプチドの細胞外または細胞内ドメイン、または早期活性化ポリペプチドを含有する融合タンパク質または本明細書に記載したそのフラグメントまたはコンストラクトの何れかを包含する。抗原は好ましくはヒト抗原である。可溶性早期活性化ポリペプチドは例えば可溶性ポリペプチド(例えば早期活性化ポリペプチドの膜貫通および/または細胞内ドメインの全てまたは部分を欠失した早期活性化ポリペプチド)の組み換え製造によるか、または、早期活性化ポリペプチドを発現する細胞の溶解により得ることができる。CD69への抗体を作成するための手法はSanchez−Mateos et al.(1991)Eur.J.Immunol.21:2317−2325に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。これらの手法並びに当該分野で知られた他の手法を用いてCD69、AICLおよびLLT1のいずれかに対する抗体を作成することができる。
配列番号2の残基約62〜84またはその部分を含んでいるCD69のフラグメント、配列番号4の残基約26〜36またはその部分を含んでいるAICLのフラグメント、または、配列番号6の残基約60〜75またはその部分を含んでいるLLT1のフラグメントを用いて各々のネック領域に対する抗体または早期活性化ポリペプチドをそれぞれ作成することができ、例えばフラグメントは免疫原として使用するか、または、抗体の特異性を特性化するために使用することができる。同様に、配列番号2の残基82〜199またはその部分を含んでいるCD69のフラグメント、配列番号4の残基37〜149またはその部分を含んでいるAICLのフラグメント、または、配列番号6の残基76〜132またはその部分を含んでいるLLT1のフラグメントを用いて早期活性化タンパク質のNKドメインに対する抗体を作成することができ;配列番号2の残基62〜199またはその部分を含んでいるCD69のフラグメント、配列番号4の残基26〜149またはその部分を含んでいるAICLのフラグメント、または、配列番号6の残基60〜132またはその部分を含んでいるLLT1のフラグメントを用いて早期活性化ポリペプチドタンパク質の細胞外領域に対する抗体を作成することができ;配列番号2の残基約1〜40またはその部分を含んでいるCD69のフラグメント、配列番号4の残基約1〜7を含んでいるAICLのフラグメント、または、配列番号6の残基約1〜30またはその部分を含んでいるLLT1のフラグメントを用いて早期活性化タンパク質の細胞内領域に対する抗体を作成することができる。
CD69、AICLまたはLLT1の何れかの領域またはドメイン、特にCD69、AICLまたはLLT1の細胞外領域またはドメインと反応するかそれに特異的である抗体分子を作成し、本発明における使用に対する適正に関して試験できる。
ネイティブな早期活性化タンパク質のみ、変性またはその他の態様で非ネイティブである早期活性化タンパク質のみに結合するか、または、両方に結合する抗体が本発明の範囲に包含される。線状またはコンホーメーションエピトープの抗体が本発明の範囲に包含される。コンホーメーションエピトープは場合により、ネイティブには結合するが変性早期活性化タンパク質には結合しない抗体を発見することにより発見できる。
以下により詳細に説明するとおり、早期活性化ポリペプチドに対する抗体分子(好ましくは異なる生物、例えばげっ歯類、ヒツジ、ヒトに由来するモノクローナル抗体)は当該分野で知られた方法を用いて製造できる。抗体分子が得られた後、例えば抗体分子がアゴニスト、アンタゴニストまたは枯渇剤抗体であるかどうかを調べるために、本発明における使用における適正について抗体を試験することができる。
モノクローナル抗体は種々の方法、例えばKohlerおよびMilstein,Nature256:495(1975)の従来のモノクローナル抗体方法、例えば標準的な体細胞ハイブリダイゼーション方法により製造できる。一般的にはHallow, E.
and Lane,D.(1988)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照できる。体細胞ハイブリダイゼーション法が好ましいが、原則として、モノクローナル抗体を製造する他の手法、例えばBリンパ球のウィルスまたは癌原性の形質転換も使用できる。ハイブリドーマを製造するための好ましい動物系はネズミ系である。マウスにおけるハイブリドーマ製造は十分確立された操作法である。免疫化のプロトコルおよび融合のための免疫化脾細胞の単離のための手法は当該分野で公知である。融合相手(例えばネズミミエローマ細胞)および融合の操作法も知られている。
抗体は非ヒトの供給源から得ることができ、そして、可変領域、および、とりわけCDRを配列決定し、そして本発明において有用な抗体分子、例えばヒト化抗体分子を製造するために使用できる。CDRの位置およびフレームワーク残基を決定できる(例えば、Kabat,E.A.,et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U,S,Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242およびChothia,C.et al.,(1987) J.Mol.Biol.196:901−917を参照でき、参照により本明細書に組み込まれる)。
抗体または免疫グロブリンの鎖は当該分野で知られた方法によりヒト化することができる。ネズミ抗体が得られた後、可変領域を配列決定し得る。CDRの位置およびフレームワーク残基を決定できる(例えば、Kabat,E.A.,et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U,S,Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242およびChothia,C.et al.,(1987)J.Mol.Biol.196:901−917を参照でき、参照により本明細書に組み込まれる)。軽鎖および重鎖の可変領域は場合により相当する定常領域にライゲーションできる。ネズミ抗早期活性化ポリペプチド抗体は当該分野で知られた方法を用いて配列決定できる。
ヒト化またはCDRグラフト抗体分子または免疫グロブリンは免疫グロブリン鎖のCDRの1、2または全てを置き換えることができるCDRグラフティングまたはCDR置換により製造できる。例えば米国特許5,225,539;Jones et al.1986 Nature 321:552−525;Verhoeyanら、1988 Science 239:1534;Beidler et al.1988 J.Immunol.141:4053−4060;Winter US5,225,539を参照でき、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
Winterは本発明のヒト化抗体を製造するために使用してよいCDRグラフティング法を記載しており(英国特許出願GB2188638A、1987年3月26日出願;Winter US5,225,539)、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特定のヒト抗体のCDRの全てを非ヒトCDRの少なくとも部分と置き換えるか、または、CDRの一部のみを非ヒトCDRと置き換えて良い。所定の抗原へのヒト化抗体の結合に必要な数のCDRのみを置き換える必要がある。
ヒト化抗体は抗原結合に直接関与しないFv可変領域の配列をヒトFv可変領域の等価な配列と置き換えることにより作成できる。ヒト化抗体を作成するための一般的方法はMorrison,S.L.,1985,Science 229:1202−1207,Oiら、1986,BioTechniques 4:214,およびQueenら、US5,585,089,US5,693,761およびUS5,693,762に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。これらの方法は重鎖または軽鎖の少なくとも一方に由来する免疫グロブリンFv可変領域の全てまたは部分をコードする核酸配列を単離し、操作し、そして、発現することを包含する。このような核酸の供給源は当業者のよく知るものであり、そして、例えば前述の通り所定の標的に対する抗体を産生するハイブリドーマから得てよい。次にヒト化抗体またはそのフラグメントをコードする組み換えDNAを適切な発現ベクターにクローニングすることができる。
特定のアミノ酸が置換、欠失または付加されているヒト化抗体も即ち本発明の範囲内である。特に好ましいヒト化抗体は例えば抗原への結合を向上させるためにフレームワーク領域内にアミノ酸置換を有する。例えばヒト化免疫グロブリン鎖の選択された少ない数のアクセプターフレームワーク残基を相当するドナーアミノ酸と置き換えることができる。置換の好ましい位置はCDRに隣接するアミノ酸残基、または、CDRと相互作用可能なものである(例えばUS5,585,089参照)。ドナーからのアミノ酸の選択の基準はUS5,585,089、例えばUS5,585,089のコラム12〜16に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。アクセプターフレームワークは成熟ヒト抗体フレームワーク配列またはコンセンサス配列であることができる。本明細書においては、「コンセンサス配列」という用語は関連する配列のファミリーでもっとも頻繁に存在するアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成された配列を指す(例えばWinnaker, From Genes to Clones (Verlagsgesellshaft,Weinheim, Germany 1987)参照)。タンパク質のファミリーにおいて、コンセンサス配列の各位置はファミリーにおけるその位置で最も頻繁に存在するアミノ酸により占有される。2つのアミノ酸が等しく頻繁に存在する場合は、いずれかがコンセンサス配列に含まれることができる。「コンセンサスフレームワーク」とはコンセンサス免疫グロブリン配列のフレームワーク領域を指す。
抗体を含む免疫グロブリン鎖をヒト化するための他の技術は1992年12月23日に公開されたPadlan等のEP519596A1に記載されている。
抗早期活性化ポリペプチド抗体分子はまた免疫原性を低減させる別の方法、例えばヒトT細胞エピトープの特異的欠失、または、WO98/52976およびWO00/34317に開示されている方法による「脱免疫化」により修飾してもよく、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
一部の実施形態においては、抗早期活性化ポリペプチド抗体分子は非ヒト抗早期活性化ポリペプチド軽鎖または重鎖可変領域由来のCDRにそれぞれ同一であるCDR少なくとも1、2そして好ましくは3つを有する軽鎖または重鎖可変領域を含む。1つの好ましい実施形態においては、修飾された抗体またはその抗原結合フラグメントは、同じ非ヒト抗早期活性化ポリペプチド抗体、例えば当該分野で知られた抗ヒトCD69、AICLまたはLLT1抗体分子、例えばSanchez−Mateos(1991)Eur.J.Immunol.21:2317−2325に記載の抗CD69抗体分子のパネルに由来するCDRの6つ全てを含む。
修飾された抗早期活性化ポリペプチド抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖および重鎖の免疫グロブリンは更に、ヒトまたは非ヒト、例えばげっ歯類の抗体中に存在する軽鎖または重鎖の可変フレームワーク由来の軽鎖または重鎖の可変フレームワーク配列を含むことができる。
ヒトタンパク質に対して指向されたヒトモノクローナル抗体(mAb)はマウス系以外のヒト免疫グロブリン遺伝子を担持するトランスジェニックマウスを用いて作成できる。このようなトランスジェニックマウスはヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子の部分を担持するマウスを包含する。例えばfive−featureのBABκ,λトランスジェニックマウス系統は不活性化内因性IgHおよびIgκバックグラウンド内のヒトμ重鎖およびκおよびλ軽鎖のトランスジーンを担持している(Magadanら、2002;Nicholsonら、1999)。これらの遺伝子座転位マウスの免疫化によりヒトおよび非ヒトの抗原(Ag)の広範な種類のものに対するヒトIgM(HuIgM)Abの生成および分泌を誘導する免疫応答の発生が可能となる(Magadanら、2002)。Molina et al.(2003)はこれらのマウスを用いてトCD69抗原に特異的に結合するHuIgM mAb、hAIM−29を発生させている。
同様に、MedarexおよびGenMabより入手可能なHuMAbマウス(登録商標)において、抗体を作成するためのマウス遺伝子を不活性化し、そして、重鎖および軽鎖をコードする未配列のヒト抗体遺伝子由来のキー遺伝子配列の多くと置き換える。入手可能な別のマウスはAbgenixのXenoMouse(登録商標)であり、これはヒト重鎖抗体遺伝子の約80%およびヒト軽鎖遺伝子のかなりの量を有する。他のトランスジェニックマウスは相当する天然のヒト免疫グロブリン遺伝子座中に存在する可変および定常遺伝子の完全なセットを含むヒト抗体を作成するために使用可能である。これらのマウスはKirinTCマウスTMとも称され、Medarexから入手可能である。KirinTCマウスTMは「トランスクロモソミック」であり、これは、抗体を作成するためのマウス遺伝子が不活性化されており、そして、全てのアイソタイプ(IgG1−4、IgA1−2、IgD、IgMおよびIgE)をコードする全ての重鎖クラスを含むヒト抗体遺伝子の全てを含有するヒト染色体により置き換えられていることを意味する。MedarexからはKM−マウス(登録商標)、即ちKirinのTCMouseにHuMAb−Mouseの特性を組み合わせた交配マウスも入手可能である。KM−マウスは、KirinTCマウスと同様、全てのヒトの抗体アイソタイプを産生する能力を温存している。目的の抗原で免疫化したこれらのトランスジェニックマウスの脾細胞を用いてヒトタンパク質由来のエピトープに対する特異的な親和性を有するヒトmAbを分泌するハイブリドーマを作成する(例えばWood等の国際特許出願WO91/00906、Kucherlapati等のPCT出願WO91/10741;Lonberg等の国際特許出願WO92/03918;Kay等の国際特許出願92/03917;Lonberg,N.et al.,1994 Nature 368:856−859;Green,L.L.et al.,1994 Nature Genet.7:13−21;Morrison,S.L.et al.1994 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855;Bruggeman et al.1993 Year Immunol 7:33−40;Tuaillon et al.1993 PNAS 90:3720−3724; Bruggeman et al.1991 Eur J Immunol 21:1323−1326を参照できる)。ヒトmAbの単離のための操作法は従来のマウス免疫化およびハイブリドーマ作成のために使用されているものと同様である(Bruggemann and Taussig,1997;Bruggemann and Neuberger,1996;Jakobovits,1995参照)。
キメラ抗体、例えばキメラ免疫グロブリン鎖は当該分野で知られている組み換えDNA手法により作成できる。例えば、ネズミ(または他の種)モノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードする遺伝子を制限酵素で消化してネズミFcをコードする領域を除去し、そしてヒトFc定常領域をコードする遺伝子の等価な部分を置換する(Robinson等の国際特許出願PCT/US86/02269;Akira等の欧州特許出願184,187;Taniguchi,Mの欧州特許出願171.496;Morrison等の欧州特許出願173,494;Neuberger等の国際特許出願WO86/01533;Cabilly等の米国特許4,816,567;Cabilly等の欧州特許出願125,023;Betterら、(1998 Science 240:1041−1043);Liu et al.(1987) PNAS84:3439−3443;Liuら、1987,J.Immunol.139:3521−3526;Sun et
al.(1987)PNAS 84:214−218;Nishimuraら、1987,Canc.Res.47:999−1005;Woodら、(1985)Nature 314:446−449;およびShawら、1988,J.Natl Cancer Inst.80:1553−1559参照)。
同様に用語に包含されるものは可変領域の全てまたは部分、例えばCDRの1つ以上または全てが非免疫細胞の選択肢、例えばインビトロファージディスプレイ、タンパク質チップまたは候補配列が抗原に結合する能力を有するかどうかを試験できる何れかの他の方法において作成されるインビトロ作成された種である。例えばコンビナトリアル抗体ディスプレイ方法が特定の抗原特異性を有する抗体フラグメントを同定して単離するために開発されており、そして抗体分子の製造のために利用することができる。
ディスプレイパッケージ(例えばフィラメントファージ)の表面上にディスプレイされると、抗体ライブラリは抗原またはそのペプチドフラグメントを用いてスクリーニングされ、抗原に対する特異性を有する抗体を発現するパッケージが同定および単離される。選択された抗体をコードする核酸をディスプレイパッケージから(例えばファージゲノムから)回収し、そして標準的な組み換えDNA手法により他の発現ベクターにサブクローニングすることができる。
表面タンパク質に対する高い親和性を有する特定の抗体は当業者の知る方法、例えばライブラリのスクリーニングを含む方法により作成できる(Ladner,R.C.等の米国特許5,233,409;Ladner,R.C.等の米国特許5,403,484参照)。更にまた、これらのライブラリの方法は抗体の構造決定基を模倣した結合決定基を得るためのスクリーニングにおいて使用できる。
抗原結合部位はまた、所望の結合活性を有するコンビナトリアルライブラリの種々の型をスクリーニングすることにより、そして、活性物質種を同定するためには、記載した方法により、得ることもできる。
1つの実施形態においては、多様化させたペプチドのライブラリをディスプレイパッケージの集団により発現させ、ペプチドディスプレイライブラリを作成する。理想的にはディスプレイパッケージは極めて広範な多様性のペプチドディスプレイライブラリのサンプリング、親和性分離の各回の後の迅速な分類、および精製されたディスプレイパッケージからのペプチドコード遺伝子の容易な単離を可能にする系を含む。ペプチドディスプレイライブラリは、例えば迅速に増幅でき、操作が容易であり、そして多数のクローンを作成できるような、原核生物およびウィルスにおけるものである。好ましいディスプレイパッケージは例えば増殖中の細菌細胞、細菌胞子、および、最も好ましくは細菌ウィルス(特に、DNAウィルス)を包含する。しかしながら、本発明は潜在的なディスプレイパッケージとしての酵母およびその胞子を含む真核細胞の使用も意図している。
本発明において有用である抗早期活性化ポリペプチド抗体分子は例えば所望の抗体の免疫グロブリン軽鎖および重鎖をコードするDNAで形質転換された宿主細胞により産生される組み換え抗体であることができる。組み換え抗体分子は知られた遺伝子操作法により製造してよい。例えば、組み換え抗体は、本発明において有用な抗体を産生するハイブリドーマ細胞に由来する所望の抗体の免疫グロブリン軽鎖および重鎖をコードするヌクレオチド配列、例えばcDNAまたはゲノムDNA配列をクローニングすることにより作成してよい。次にこれらのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、両方の遺伝子がそれ自体の転写および翻訳の発現の制御配列に作動可能に連結されるように、発現ベクター内に挿入する。発現ベクターおよび発現制御配列は使用する発現宿主細胞と適合するように選択する。典型的には、両方の遺伝子を同じ発現ベクターに挿入する。原核細胞または真核細胞の宿主細胞を使用してよい。
真核細胞の宿主細胞における発現は、このような細胞が原核細胞と比較してより正確に折りたたまれ免疫学的に活性な抗体を組み立てて分泌することから、好ましいものである。しかしながら、不適切な折込のために不活性となっている何れかの生成した抗体を知られた方法に従って復元してよい(Kim and Baldwin,”Specific
Intermediates in the Folding Reactions of Small Proteins and the Mechanism of Protein Folding”,Ann.Rev.Biochem.51,pp.459−89(1982))。宿主細胞は未損傷の抗体の部分、例えば本発明によればやはり抗体の相同体である軽鎖二量体または重鎖二量体を産生することも可能である。
上記した操作法のバリエーションも本発明において有用である。例えば抗体の軽鎖または重鎖の何れか(両方ではない)をコードするDNAを用いて宿主細胞を形質転換することが望ましい場合がある。組み換えDNA手法もまた、早期活性化ポリペプチドの結合に必要でない軽鎖および重鎖の何れかまたは両方をコードするDNAの一部または全てを除去するために使用してよく、例えば、定常領域は例えば特定のアミノ酸を欠失させることにより修飾してよい。このようなトランケーションされたDNA分子から発現された分子は本発明の方法において有用である。更にまた、1つの重鎖および1つの軽鎖が抗早期活性化ポリペプチド抗体であり、そして別の重鎖および軽鎖がその早期活性化ポリペプチド以外の抗原またはその早期活性化ポリペプチドの別のエピトープに対して特異的である2機能性の抗体を作成してもよい。
(抗体分子結合体)
本発明の抗体分子は他の部分、例えば標識または治療剤、例えば毒素(例えばタンパク質(例えばジフテリアまたはリシン)または化学毒素)、治療用アイソトープ、または他の治療部分に結合、共有結合または非共有結合することができる。
従って、抗早期活性化ポリペプチド抗体分子は別の機能性分子(例えば別のペプチドまたはタンパク質)に誘導体化または連結することができる。本発明の抗体および抗体部分は免疫付着分子を含む本明細書に記載した抗体の誘導体化またはその他修飾された形態を含むものとする。例えば、本発明の抗体または抗体部分を、1つ以上の他の分子の実体、例えば他の抗体(例えば二重特異性の抗体またはダイアボディー(diabody))、検出可能な薬剤、細胞毒性薬剤、医薬品および/または他の分子との抗体または抗体部分の会合を媒介できるタンパク質またはペプチド(例えばストレプトアビジンコア領域またはポリヒスチジンタグ)に機能性に連結(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的会合またはその他による)することができる。
誘導体化された抗体の1つの型は2つ以上の抗体(同じかまたは異なる型、例えば2重特異性の抗体の作成のため)を架橋することにより作成する。適当な架橋剤は、適切なスペーサー(例えばm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)により隔てられた2つの異なった反応性を有する基を有するヘテロ2官能性のもの、または、ホモ2官能性のもの(例えばスベリン酸ジスクシンイミジル)である。このようなリンカーはPierce Chemical Company,Rockford,ILより入手できる。
本発明の抗体または抗体部分を誘導体化(または標識)する際に使用する有用な検出可能な薬剤は、蛍光化合物、種々の酵素、補欠分子族、ルミネセント物質、バイオルミネセント物質、蛍光発生金属原子、例えばユーロピウム(Eu)、および他のランタニド類、および放射性物質(後述)を包含する。例示される蛍光性の検出可能な薬剤は、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリスリン等を包含する。抗体はまた検出可能な酵素、例えばアルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼ等で誘導体化してもよい。抗体を検出可能な酵素で誘導体化する場合は、検出可能な反応性生物を生成するために酵素が使用する別の試薬を添加することにより検出される。例えば、検出可能な薬剤であるセイヨウワサビペルオキシダーゼが存在する場合は、過酸化水素およびジアミノベンジジンの添加により検出可能な着色された反応生成物がもたらされる。抗体はまた補欠分子族(例えば、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチン)を用いて誘導体化してもよい。例えば抗体はビオチンで誘導体化し、そしてアビジンまたはストレプトアビジンの結合の間接的測定により検出してよい。適当な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、または、フィコエリスリンを包含し;ルミネセント物質の例はルミノールを包含し;そして、バイオルミネセント物質の例はルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンを包含する。
抗早期活性化ポリペプチド抗体またはその抗原結合フラグメントは別の分子の実体、典型的には標識または治療(例えば細胞毒性または細胞殺傷性)薬剤または部分にコンジュゲートしてよい。
細胞毒または細胞毒性の薬剤は細胞にとって有害である何れかの薬剤を包含する。例えばタキソール、シトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサトロン、ミスラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、マイタンシノイド、例えばマイタンシノール(米国特許5,208,020参照)、CC−1065(米国特許5,475,092、5,585,499、5,846,545参照)およびこれらの類縁体または相同体を包含する。治療剤は、例えば抗代謝剤(例えばメトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シトラビン、5−フルオロウラシル、デカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオエパクロラムブシル、CC−1065、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミスラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))および抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、タキソールおよびマイタンシノイド)を包含する。
抗早期活性化ポリペプチド抗体またはその抗原結合フラグメントは別の分子実体、例えば免疫原性および/または半減期を調節する部分にコンジュゲートして良い。1つの実施形態においては、分子の実体はポリエチレングリコール(PEG)またはその誘導体である。ペグ化は潜在的な免疫原性を低減および/または半減期を延長することのできる化学的コンジュゲート形成法である。抗体をペグ化するための種々の方法が知られている。例えばBhandraら、(2002)Pharmazie57(1):5−29が参照できる。
(他の早期活性化ポリペプチド結合剤)
「早期活性化ポリペプチド結合剤」とは早期活性化ポリペプチド、好ましくはヒト早期活性化ポリペプチドと相互作用(例えば結合)する薬剤である。好ましくは、相互作用、例えば結合は高い親和性、例えば親和性定数少なくとも107M−1、好ましくは108M−1〜1010M−1、または約109M−1と特異性で起こる。早期活性化ポリペプチド結合剤はCD69、AICLまたはLLT1アゴニスト、アンタゴニストまたは枯渇剤であることができる。早期活性化ポリペプチド結合剤の例は抗早期活性化ポリペプチド抗体(例えば上記した抗体)並びに小分子またはペプチドミメティックを包含する。
本発明の方法において有用であるものは、早期活性化ポリペプチドミメティック剤である。ペプチド、セミペプチド化合物または非ペプチド化合物(例えば小型有機分子)を包含するこれらの薬剤は、早期活性化分子活性のインヒビターである。
好ましい実施形態においては、薬剤はコンビナトリアルライブラリ、例えばペプチドまたは有機物のコンビナトリアルライブラリ、または天然産物のライブラリのメンバーである。好ましい実施形態においては、複数の被験化合物、例えばライブラリメンバーは少なくとも10、102、103、104、105、106、107または108化合物を包含する。好ましい実施形態においては、複数の被験化合物、例えばライブラリメンバーは構造的または機能的な特性を共有する。
1つの実施形態において、本発明は早期活性化ポリペプチド結合剤のライブラリを提供する。コンビナトリアルライブラリの合成は当該分野でよく知られており、検討されている(例えばE.M.Gordonら、J.Med.Chem.(1994)37:1385−1401;DeWitt,S.H.;Czarnik,A.W.Acc.Chem.Res.(1996)29:114;Armstrong,R.W.;Combs,A.P.;Tempest,P.A.;Brown,S.D.;Keating,T,A,Acc.Chem.Res.(1996)29:123;Ellman,J.A.Acc.Chem.Res.(1996)29:132;Gordon.E.M.;Gallop,M.A.;Patel,D.V.Acc.Chem.Res.(1996)29:144;Lowe,G.Chem.Soc.Rev.(1995)309,Blondelleら、Trends Anal.Chem.(1995)14:83;Chen et al.J.Am.Chem.Soc.(1994)116:2661;米国特許5,359,115、5,362,899および5,288,514;PCT公開番号WO92/10092、WO93/09668、WO91/07087、WO93/20242、WO94/08051参照)。
本発明の化合物のライブラリは、一部は当該分野で公知である種々の方法に従って製造できる。例えば「スプリットプール」法を以下の通り実施でき、即ち、官能性付与された重合体支持体のビーズを複数の反応容器内に入れられ;固相ペプチド合成のための種々の重合体支持体が知られており、その一部は市販されている(例えばM.Bodansky”Principles of Peptide Synthesis”,2nd edition,Springer−Verlag,Berlin(1993)参照)。ビーズ各分に対し、種々の活性化アミノ酸の溶液を添加し、反応を進行させ、複数の固定化アミノ酸を、各反応容器に1つずつ生成する。次に誘導体化されたビーズの各分を洗浄し、「プールし」(即ち、再度合わせ)、そしてビーズのプールを再度分割し、各分が別の反応容器に入るようにする。次に別の活性化アミノ酸をビーズの各分に添加する。合成のサイクルは所望のペプチド長が得られるまで反復する。各合成サイクルにおいて添加したアミノ酸残基は無作為に選択でき;あるいは、アミノ酸は「偏った(biased)」ライブラリ、例えばインヒビターの特定の部分が非無作為に選択されており、これにより、例えば抗イディオタイプの抗体抗原結合部位のような、抗体と相互作用することができる既知ペプチドに対する既知の構造の類似性または相同性を有するインヒビターを与えるようなライブラリを提供するように選択することができる。広範な種類のペプチド、ペプチドミメティックまたは非ペプチドの化合物がこの方法で容易に作成できる。
「スプリットプール」法は本発明の被験化合物のライブラリを作成するために使用できるペプチド、例えばインヒビターのライブラリを与える。別の代表的な合成においては、「diversomerライブラリ」をHobbs DeWitt et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6969(1993))の方法により作成する。他の合成方法、例えばHoughtenの「ティーバッグ」法(例えばHoughtenら、Nature 354:84−86(1991))を用いて本発明の化合物のライブラリを合成することもできる。
化合物のライブラリはライブラリの何れかのメンバーが所望の活性を有するかどうかを調べるため、そして有している場合には活性物質種を発見するためにスクリーニングできる。コンビナトリアルライブラリをスクリーニングする方法は報告されている(例えばGordonら、J Med Chem.,前出を参照)。可溶性化合物のライブラリはレセプターに対するリガンドを単離するための適切なレセプターを用いたアフィニティークロマトグラフィーとその後の従来の方法(例えば質量スペクトル、NMR等)により単離されたリガンドの同定によりスクリーニングすることができる。固定化された化合物は可溶性レセプターに化合物を接触させることによりスクリーニングすることができ;好ましくは可溶性レセプターを、リガンドの結合を示すために検出されることが可能な標識(例えば蛍光団、比色酵素、放射性同位体、ルミネセント化合物等)にコンジュゲートする。あるいは、固定化された化合物を選択的に放出させ、そして膜を通して拡散させ、レセプターと相互作用させる。本発明のライブラリをスクリーニングするために有用な試験の例は、後述するとおりである。
1つの実施形態においては、本発明の化合物は、早期活性化ポリペプチドとの相互作用の能力について、ポリペプチドに直接結合する各化合物の活性を試験することにより、例えば被験化合物を早期活性化ポリペプチドおよび細胞溶解物と共にマルチウェルプレート、例えば標準的な96穴のマイクロタイタープレートの1つのウェル中においてインキュベートすることにより、スクリーニングすることができる。この実施形態においては、各個々の化合物の活性を測定できる。被験化合物を添加しないウェルをコントロールとして使用できる。インキュベートの後、各被験化合物の活性を、各ウェルを試験することにより測定できる。即ち、複数の被験化合物の活性を平行して測定できる。
更に別の実施形態において、多数の被験化合物を同時に結合活性について試験できる。例えば、被験化合物を固体樹脂ビーズ上で「1ビーズ−1化合物」合成において合成することができ;化合物は感光性のリンカーを介して樹脂の支持体に固定化できる。次に、複数のビーズ(例えば100,000ビーズ以上もの多数)をコウボ細胞と組み合わせて、各液滴が単一のビーズ(従って単一の被験化合物)を含んでいる複数の「ナノ液滴」に噴霧する。次にナノ液滴をUV光に曝露することにより、ビーズから化合物を切断させる。この試験フォーマットは迅速フォーマットにおいて被験化合物の大型ライブラリをスクリーニングすることを可能にする。
化合物のコンビナトリアルライブラリはライブラリの各メンバーの正体(identity)をコードするための「タグ」を用いて合成できる(例えばW.C.Still等の米国特許5,565,324およびPCT出願WO94/08051およびWO95/28640参照)。一般的に、本方法は固体支持体または化合物に結合した不活性であるが容易に検出できるタグの使用によって特徴付けられる。活性化合物が検出される(例えば上記した方法の1つによる)と、化合物の正体が独特の付属タグの同定により決定される。このタグ付け方法は極めて低い濃度で同定できる化合物の大型のライブラリの合成を可能にする。このようなタグ付けスキームは例えば上記した「ナノ液滴」スクリーニング試験において、ビーズから放出される化合物を同定するために有用である。
好ましい実施形態においては、本発明の化合物のライブラリは少なくとも30化合物、より好ましくは少なくとも100化合物、そして更に好ましくは少なくとも500化合物を含有する。より好ましい実施形態においては、本発明の化合物のライブラリは109化合物未満、より好ましくは108化合物未満、そして更に好ましくは107化合物未満を含有する。
(スクリーニング試験)
本発明はモジュレーター、即ち早期活性化タンパク質または早期活性化核酸と結合し、例えば早期活性化分子の発現または早期活性化分子の活性に対して刺激または抑制の作用を有する候補または被験化合物または薬剤(例えばタンパク質、ペプチド、ペプチドミメティック、ペプトイド、小分子またはその他の薬剤)を発見するための試験(本発明においては「スクリーニング試験」とも称する)を提供する。このようにして同定された化合物を用いて治療プロトコルにおける標的遺伝子産物(例えば早期活性化分子遺伝子)の活性を調節し、標的遺伝子産物の生物学的機能を精密化し、または、正常な標的遺伝子の相互作用を崩壊させる化合物を同定することができる。
1つの実施形態においては、本発明は早期活性化タンパク質またはポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分の基質である候補または被験化合物をスクリーニングするための試験法を提供する。別の実施形態においては、本発明は早期活性化タンパク質またはポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分に結合するか、またはその活性を調節する候補または被験化合物、例えば早期活性化タンパク質またはポリペプチドのシグナル伝達を調節する化合物をスクリーニングするための試験法を提供する。
インヒビターの存在下における早期活性化タンパク質活性の試験法はシグナル伝達活性の性質を決定するために使用できる。試験法は観察された活性が早期活性化ポリペプチドに起因するものであることを確認するための別のコントロール物および工程を包含できる。例えば、コントロール試料、例えば早期活性化核酸を過剰発現するベクターの代わりにコントロールベクターで形質転換された細胞から得られた試料を平行して試験できる。活性はまた、クロマトグラフィー分画において活性および早期活性化ポリペプチドが同時精製されるかどうかを調べることで、トラックすることができる。別の試験法および条件は、例えばYamaoka et al.(1998)J Biol Chem 273:11895−11901およびThien−Khai et al.(1997) J Biol Chem 272:31315−31320に記載されている。
本発明の被験化合物は当該分野で知られたコンビナトリアルライブラリ法における多くの方法の何れか、例えば、生物学的ライブラリ;ペプトイドライブラリ(酵素による分解に対して耐性があるがなお生物活性を保持しているペプチドの機能性を有するが新しい非ペプチド骨格を有する分子のライブラリ;例えばZuckermann,R.N.et al.(1994)J.Med.Chem.37:2678−85参照);空間的に指定できるパラレル固相または溶液相のライブラリ;脱回旋(deconvolution)を必要とする合成ライブラリ法;「1ビーズ−1化合物ライブラリ法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリ法を用いて得ることができる。生物学的ライブラリおよびペプトイドライブラリの方法は、ペプチドライブラリに限定されるが、他の4つの方法はペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは化合物の小分子ライブラリに適用できる(Lam(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。
分子ライブラリの合成のための方法の例は例えばDeWitt et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6909;Erb et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:11422; Zuckermann et al.(1994)J.Med.Chem.37:2678;Cho et al.(1993)Science261:1303;Carrell et al.(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carell et al.(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;およびGallop et al.(1994)J.Med.Chem.37:1233に記載されている。
化合物のライブラリは溶液(例えばHoughten(1992)Biotechniques13:412−421)またはビーズ(Lam(1991)Nature354:82−84)、チップ(Fodor(1993)Nature364:555−556)、細菌(Ladner,米国特許5,223,409)、胞子(Ladner,米国特許5,223,409)、プラスミド(Cull et al.(1992)Proc Natl Acad Sci USA89:1865−1869)中、またはファージ上(Scott and Smith(1990)Science249:386−390;Devlin(1990)Science249:404−406;Cwirla et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.87:6378−6382;Felici(1991)J.Mol.Biol.222:301−310;Ladner前出)に存在してよい。
1つの実施形態において、試験は細胞系試験であり、その場合、早期活性化タンパク質またはその生物学的に活性な部分を発現する細胞を被験化合物と接触させ、被験化合物が早期活性化分子活性を調節する能力を測定する。早期活性化分子活性を調節する被験化合物の能力の測定は、環境の刺激物、例えば早期活性化ポリペプチドリガンド、小分子をモニタリング、例えば感知すること;生物学的メッセンジャー、例えば、
を感知することにより達成することができる。細胞は例えば哺乳類、例えばヒト起源であることができる。
ある化合物、例えば早期活性化分子基質への早期活性化ポリペプチドの結合を調節する、または、早期活性化ポリペプチドに結合する被験化合物の能力も評価することができる。これは例えば化合物、例えば基質を放射性同位体または酵素標識にカップリングさせ、複合体中の標識された化合物、例えば基質を検出することにより化合物、例えば基質の早期活性化ポリペプチドへの結合を測定するようにすれば達成できる。あるいは、早期活性化ポリペプチドを放射性同位体または酵素標識とカップリングさせ、複合体中の早期活性化ポリペプチドの基質への早期活性化ポリペプチドの結合を調節する被験化合物の能力をモニタリングする。例えば、化合物(例えば早期活性化ポリペプチドの基質)を125I、35S、14Cまたは3Hにより、直接または間接的に標識し、そして、放射線放出を直接計数するか、シンチレーション計数により放射性同位体を検出することができる。あるいは、化合物を例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはルシフェラーゼで酵素標識し、そして適切な基質から生成物への変換を測定することにより酵素標識を検出することができる。
相互作用物質のいずれかの標識を伴うか伴わない場合の化合物(例えば早期活性化ポリペプチドの基質)が早期活性化ポリペプチドと相互作用する能力を評価することができる。例えば、マイクロフィジオメーターを用いて化合物または早期活性化ポリペプチドの何れをも標識することなく早期活性化ポリペプチドとの化合物の相互作用を検出することができる。McConnell,H.M.et al.(1992)Science257:1906−1912。本明細書においては、「マイクロフィジオメーター」(例えばサイトセンサー)とは、光位置指定電圧測定センサー(LAPS)を用いて細胞が環境を酸性化する速度を測定する分析機器である。この酸性化速度の変化は化合物と早期活性化ポリペプチドとの間の相互作用の指標として使用できる。
更に別の実施形態において、早期活性化タンパク質またはその生物学的に活性な部分を被験化合物と接触させ、化合物が早期活性化タンパク質またはその生物学的に活性な部分に結合する能力を評価する無細胞試験が提供される。本発明の試験において使用される好ましい早期活性化タンパク質の生物学的に活性な部分は非早期活性化分子との相互作用に関係するフラグメント、例えば高い表面確率点を有するフラグメントを包含する。
単離されたタンパク質(例えばCD69、AICLまたはLLT1タンパク質または生物学的に活性なその部分)の可溶性および/または膜結合性の形態を本発明の無細胞試験に使用できる。タンパク質の膜結合形態を使用する場合は、可溶化剤を使用することが望ましい。このような可溶化剤の例は非イオン系洗剤、例えばn−オクチルグルコシド、n−ドデシルグルコシド、n−ドデシルマルトシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド、デカノイル−N−メチルグルカミド、Triton(登録商標)X−100、Triton(登録商標)X−114、Thesit(登録商標)、イソトリデシポリ(エチレングリコールエーテル)n、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート(CHAPSO)またはN−ドデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネートを包含する。
無細胞試験では、標的遺伝子タンパク質と被験化合物の反応混合物を、2成分が相互作用して結合することにより採取および/または検出可能な複合体を形成するのに十分な条件下および時間に渡り調製する。
2分子間の相互作用は例えば蛍光エネルギー転移(FET)(例えばLakowicz
等の米国特許5,631,169;Stavrianopoulos等の米国特許4,868,103参照)を用いても検出できる。第1の「ドナー」分子上の蛍光団標識は、その放射蛍光エネルギーが第2の「アクセプター」分子上の蛍光標識により吸収され、後者分子が次にこの吸収エネルギーにより蛍光を発することができるように選択する。あるいは、「ドナー」タンパク質分子は単にトリプトファン残基の天然の蛍光エネルギーを利用しても良い。標識は「アクセプター」分子標識が「ドナー」のものとは異なるように、異なる波長の光を放射するように選択する。標識間のエネルギーの転移の効率は分子を隔てている距離に関係するため、分子間の空間的関係を評価することができる。分子間に結合が起こるような状況下では、試験における「アクセプター」分子標識の蛍光放射は最大となる。FET結合事象は当該分野でよく知られた(例えば蛍光計を用いた)標準的な蛍光測定検出手段により好都合に測定することができる。
別の実施形態においては、標的分子に結合するCD69タンパク質の能力の測定は、リアルタイムの生体分子相互作用分析(BIA)(例えばSjolander,S.and
Urbaniczky,C.(1991)Anal.Chem.63:2338−2345およびSzabo et al.(1995)Curr.Opin.Struct.Biol.5:699−705参照)を用いて達成できる。「表面プラズモン共鳴」または「BIA」は何れの相互作用体(例えばBIAコア)も標識することなく、生体特異的な相互作用をリアルタイムで検出する。結合表面における質量の変化(結合事象を示す)が表面付近の光の屈折率の変化(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学的減少)をもたらし、その結果、生体分子間のリアルタイム反応の指標として使用できる検出可能なシグナルが生じる。
1つの実施形態において、標的遺伝子産物または被験物質を固相にアンカリングする。固相にアンカリングされた標的遺伝子産物/被験化合物複合体は反応終了時に検出できる。好ましくは、標的遺伝子産物は固相表面にアンカリングし、そして被験化合物(アンカリングしない)を直接または間接的に前述した検出可能な標識で標識することができる。
早期活性化ポリペプチド、抗早期活性化ポリペプチド抗体またはその標的分子の何れかを固定化することによりタンパク質の一方または両方の非複合体化形態からの複合体の分離を容易にし、そして、試験の自動化に適合するようにすることが望ましい。被験化合物の早期活性化タンパク質への結合、または、早期活性化タンパク質と標的分子の候補化合物の存在下または非存在下の相互作用は、反応体を含有するために適する何れかの容器中で行うことができる。このような容器の例はマイクロタイタープレート、試験管およびミクロ遠沈管を包含する。1つの実施形態においては、タンパク質の一方または両方をマトリックスに結合可能とするドメインを付加する融合タンパク質を準備できる。例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/早期活性化ポリペプチド融合タンパク質またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質をグルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical,St.Louis,MO)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸着させ、次にこれを被験化合物または早期活性化タンパク質および非吸着標的タンパク質または早期活性化タンパク質と組み合わせ、そして混合物を複合体形成誘導条件下(例えば塩およびpHに関する生理学的条件)でインキュベートする。インキュベーションの後、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルを洗浄して未結合の成分があればそれを除去し、ビーズの場合は固定化されたマトリックス、複合体を例えば上記したように直接または間接的に測定する。あるいは、複合体をマトリックスから解離させ、そして早期活性化ポリペプチドの結合または活性の水準を標準的な手法を用いて測定することができる。
早期活性化タンパク質または標的分子をマトリックスに固定化する別の手法は、ビオチンおよびストレプトアビジンのコンジュゲートの使用を包含する。ビオチニル化早期活性化タンパク質または標的分子はビオチン−NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)から、当該分野で知られた方法(例えばビオチニル化キット、Pierce Chemicals,Rockford,IL)を用いて製造でき、そしてストレプトアビジンコーティング96穴プレート(Pierce Chemical)中に固定化する。
試験を実施する際には、アンカリングされた成分を含有するコーティングされた表面に非固定化成分を添加する。反応が終了した後、形成された何れの複合体も固体表面上に固定化されたまま残存するような条件下で未反応の成分を除去(例えば洗浄による)する。固体表面上にアンカリングされた複合体の検出は多くの方法で達成できる。以前非固定化の成分を予備標識する場合は、表面上に固定化された標識は複合体が形成されたことを示している。以前非固定化の成分を予備標識しない場合は、間接的な標識を用いて表面上にアンカリングされた複合体を検出し;例えば固定化された成分に特異的な標識された抗体を使用する(抗体はその後例えば標識された抗Ig抗体で直接または間接的に標識できる)。
1つの実施形態においては、この試験は早期活性化タンパク質または標的分子に対しては反応性であるが早期活性化タンパク質のその標的分子への結合を妨害しない抗体を利用して行う。このような抗体はプレートのウェルに誘導することができ、未結合の標的または早期活性化タンパク質を抗体コンジュゲート形成によりウェル中で捕獲する。GST固定化複合体に関して上記したものの他にこのような複合体を検出するための方法は、早期活性化タンパク質または標的分子に対して反応性である抗体を使用した免疫検出、並びに、早期活性化タンパク質または標的分子に備わった酵素活性の検出に依存した酵素結合試験を包含する。
あるいは、無細胞試験は液相で行う。このような試験においては、反応生成物は、示差的遠心分離(例えばRivas,G.,and Minton,A.P.,(1993)Trends Biochem Sci 18:284−7);クロマトグラフィー(ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー);電気泳動(例えばAusubel,F.et al.,eds.Current Protocols in Molecular Biology 1999,J.Wiley:New York参照);および免疫沈降(例えばAusubel,F.et al.,eds.(1999)Current Protocols in Molecular Biology,J.Wiley:New York参照)を含む多くの標準的な方法のいずれかにより未反応の成分から分離する。このような樹脂およびクロマトグラフィー法は当該分野で公知である(例えばHeegaard,N.H.,(1998)J Mol Recognit
11:141−8;Hage,D.S.,and Tweed,S.A.(1997)J Chromatogr B Biomed Sci Appl.699:499−525参照)。更にまた、蛍光エネルギー転移はまた溶液から複合体を更に精製することなく結合を検出するために本明細書に記載したとおり好都合に利用してよい。
好ましい実施形態においては、試験は早期活性化タンパク質またはその生物学的に活性な部分を早期活性化タンパク質に結合する既知化合物と接触させて試験混合物を形成すること、試験混合物を被験化合物と接触させること、および、被験化合物が早期活性化タンパク質と相互作用する能力を測定することを含み、ここで、被験化合物が早期活性化タンパク質と相互作用する能力を測定することは、既知化合物と比較して、早期活性化タンパク質またはその生物学的に活性な部分に優先的に被験化合物が結合するか、または、標的分子の活性を調節する能力を測定することを包含する。
本発明の標的遺伝子産物は、細胞、または細胞外のマクロ分子、例えばタンパク質の1つ以上とインビボで相互作用することができる。この説明の目的のためには、このような細胞および細胞外のマクロ分子とは本明細書においては「結合相手」と称する。このような相互作用を崩壊させる化合物は標的遺伝子産物の活性を調節する際に有用である。このような化合物の例は抗体、ペプチドおよび小分子のような分子である。本実施形態における使用のために好ましい標的遺伝子/産物は本明細書において発見される早期活性化遺伝子である。別の実施形態においては、本発明は早期活性化標的分子の下流のエフェクターの活性の調節を介して早期活性化タンパク質の活性を調節する被験化合物の能力を測定するための方法を提供する。例えば、適切な標的上のエフェクター分子の活性を測定でき、または、適切な標的に対するエフェクターの結合を測定できる。好ましい実施形態においては、
標的遺伝子産物およびその細胞または細胞外の結合相手との間の相互作用を妨害する化合物を発見するためには、標的遺伝子産物およびその結合相手を含有する反応混合物を、2物質が複合体を形成するのに十分な条件下および時間に渡り調製する。インヒビターを試験するためには、反応混合物を被験化合物の存在下または非存在下に準備する。被験化合物はまず反応混合物に含有させるか、または、標的遺伝子およびその細胞または細胞外の結合相手の添加の後の時点で添加することができる。コントロール反応混合物を被験化合物の非存在下、または、プラセボ存在下でインキュベートする。次に、標的遺伝子産物および細胞または細胞外の結合相手との間に複合体形成があったかどうかを検出する。コントロール反応において複合体の形成があったが、被験化合物を含有する反応混合物においては無かったことは、化合物が標的遺伝子産物と相互作用結合相手の相互作用を妨害することを示している。更に、被験化合物と正常な標的遺伝子産物を含有する反応混合物内の複合体形成を被験化合物と突然変異体標的遺伝子産物を含有する反応混合物内の複合体形成と比較することができる。この比較は突然変異体の相互作用を崩壊させるが正常な標的遺伝子産物は崩壊させない化合物を発見することが望ましい場合に重要となる。
これらの試験は非相同または相同のフォーマットで実施できる。非相同の試験では標的遺伝子産物または結合相手のいずれかを固相にアンカリングし、そして反応終了時に固相上にアンカリングされている複合体を検出する。相同の試験では全反応を液相で行う。何れの方法においても、反応体の添加の順序を変えることにより試験する化合物に関する異なる情報を得ることができる。例えば標的遺伝子産物と結合相手との間の相互作用を例えば競合により妨害する被験化合物は被験物質の存在下に反応を実施することにより発見することができる。あるいは、予め形成された複合体を崩壊させる被験化合物、例えば複合体から成分の1つを排除するようなより高い結合定数を有する化合物は、複合体が形成された後に反応混合物に被験化合物を添加することにより試験できる。種々のフォーマットを以下に概説する。
異種の試験系においては、標的遺伝子産物または相互作用性の細胞または細胞外の結合相手を個体表面(例えばマイクロタイタープレート)上にアンカリングし、非アンカリング物質種を直接または間接的に標識する。アンカリング物質種は非共有結合または共有結合により固定化できる。あるいは、アンカリングすべき物質種に特異的な固定化された抗体を用いて固体表面に物質種をアンカリングすることができる。
試験を実施するためには、固定化された物質種の相手を被験化合物の存在下または非存在下にコーティングされた表面に曝露する。反応が終了した後に、未反応の成分を除去(例えば洗浄による)し、そして形成された複合体は固体表面上に固定化されたまま存在する。非固定化物質種を予備標識する場合は、表面上に固定化された標識の検出は複合体が形成されたことを示す。非固定化物質種を予備標識しない場合は、間接的な標識を用いて表面上にアンカリングされた複合体を検出し;例えば当初は非固定であった物質種に特異的な標識された抗体を使用する(抗体はその後例えば標識された抗Ig抗体で直接標識するかまたは間接的に標識できる)。反応成分の添加の順序に応じて、複合体形成を抑制する、または、形成された複合体を崩壊させる被験化合物を検出できる。
あるいは、反応は液相で、被験化合物の存在下または非存在下に行うことができ、反応生成物を未反応の成分から分離し、複合体を検出し;例えば溶液中に形成された何れかの複合体をアンカリングするために結合成分の1つに特異的な固定化抗体、および、アンカリングされた複合体を検出するために他の結合相手に特異的な標識された抗体を用いる。ここでもまた、液相への反応体の添加の順序に応じて、複合体を抑制する、または形成された複合体を崩壊させる被験化合物を発見できる。
本発明の代替の実施形態においては、相同の試験を使用する。例えば、標的遺伝子産物および相互作用性の細胞または細胞外の結合相手の産物の予め形成された複合体を調製し、その際、標的遺伝子産物またはその結合相手のいずれかを標識するが、標識から発せられるシグナルは複合体形成によりクエンチングされるようにする(例えば免疫試験のためにこの方法を利用している米国特許4,109,496参照)。予め形成された複合体化の物質種の1つと競合してこれを置き換える被験化合物を添加することにより、バックグラウンドを超えるシグナルが発生する。このようにして、標的遺伝子産物−結合相手相互作用を崩壊させる被験物質を発見することができる。
更に別の局面において、早期活性化タンパク質はツーハイブリッド試験またはスリーハイブリッド試験において「バイトタンパク質」として使用(例えば米国特許5,283,317;Zervosら、(1993)Cell 72:223−232;Madura
et al.(1993)J.Biol.Chem.268:12046−12054;Bartel et al.(1993)Biotechniques 14:920−924;Iwabuchi et al.(1993)Oncogene 8:1693−1696;およびBrentのWO94/10300を参照できる)することにより早期活性化タンパク質と結合または相互作用(「早期活性化タンパク質結合タンパク質」または「早期活性化タンパク質−bp」)し、そして、早期活性化分子の活性、例えば、
の発現に関与する他のタンパク質を発見することができる。このような早期活性化タンパク質−bpは早期活性化ポリペプチド媒介シグナル伝達経路の下流のエレメントとしての早期活性化タンパク質または早期活性化ポリペプチド標的によるシグナルの活性化剤またはインヒビターとなりえる。
ツーハイブリッド系は大部分の転写因子のモジュール性に基づいており、分離可能なDNA結合および活性化ドメインよりなる。慨すれば、試験は2つの異なるDNAコンストラクトを利用する。1つのコンストラクトにおいては、早期活性化タンパク質をコードする遺伝子を既知転写因子のDNA結合ドメインをコードする遺伝子(例えばGAL−4)に融合させる。もう一方のコンストラクトにおいては、未同定のタンパク質(「プレイ」または「サンプル」)をコードするDNA配列のライブラリに由来するDNA配列を既知転写因子の活性化ドメインをコードする遺伝子に融合させる。(あるいは、早期活性化タンパク質は活性化剤ドメインに融合できる。)「バイト」および「プレイ」タンパク質がインビボで相互作用して早期活性化ポリペプチド依存性複合体を形成できれば、転写因子のDNA結合および活性化ドメインが近接する。この近接により転写因子に応答して転写可能な調節部位に作動可能に連結されたレポーター遺伝子(例えばlacZ)の転写が可能となる。レポーター遺伝子の発現を検出でき、そして、機能的転写因子を含有する細胞コロニーを単離し、早期活性化タンパク質と相互作用するタンパク質をコードするクローニングされた遺伝子を得るために使用できる。
別の実施形態においては、早期活性化分子が発現するモジュレーターを同定する。例えば細胞または無細胞の混合物を候補化合物と接触させ、早期活性化mRNAまたはタンパク質の発現を候補化合物非存在下の早期活性化mRNAまたはタンパク質の発現レベルと比較して評価する。早期活性化mRNAまたはタンパク質の発現が候補化合物存在下において非存在下の場合より高値であれば、候補化合物は早期活性化mRNAまたはタンパク質発現の刺激物質(即ち早期活性化分子アゴニスト)として同定される。あるいは、早期活性化mRNAまたはタンパク質が候補化合物の存在下において非存在下の場合より低値(統計学的に有意に低値)であれば、候補化合物は早期活性化mRNAまたはタンパク質発現の抑制物質(即ち早期活性化分子アンタゴニスト)として同定される。早期活性化mRNAまたはタンパク質の発現レベルはmRNAまたはタンパク質の発現を検出するための知られた方法により測定することができる。
別の局面において、本発明は本明細書に記載した試験法の2つ以上の組み合わせに関する。例えば調節剤は細胞系または無細胞の試験を用いて発見することができ、そして、早期活性化タンパク質の活性を調節する薬剤の能力は、例えば癌の動物モデルのような動物において、インビボで確認することができる。
本発明は、先に記載したスクリーニング試験により同定された新しい薬剤に関する。従って、適切なモデルにおいて本明細書に記載したとおり同定された薬剤(例えば早期活性化分子調節剤、アンチセンス核酸分子、早期活性化タンパク質特異的抗体または他の早期活性化分子結合相手)を使用することによりそのような薬剤による治療の薬効、毒性、副作用または作用機序を調べることも、本発明の範囲に包含される。更にまた、上記したスクリーニング試験により同定された新しい薬剤を本明細書に記載した治療のために使用することができる。
(実質的に同一または相同)
本明細書においては、「実質的に同一」(または「実質的に相同」)という用語は、第1および第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列が同様の活性を有するように第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列に対し十分な数量の同一または等価(例えば側鎖が同じ、例えば保存されたアミノ酸置換である)なアミノ酸残基またはヌクレオチドを含有する第1のアミノ酸またはヌクレオチド配列を指す。抗体の場合は、第2の抗体が同じ特異性を有し、少なくとも50%の親和性を有する。
2配列間の「相同性」の計算は以下の通り行う。配列を至適比較目的のために整列させる(例えば至適アライメントとなるように第1および第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列の一方または両方にギャップを導入し、非騒動配列は比較目的のためには無視することができる)。好ましい実施形態においては、比較のために配置した参照配列の長さは参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、更に好ましくは少なくとも60%、更により好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次に相当するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列が第2の配列の相当する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドにより占有されていれば、分子はその位置において同一である(本明細書においてはアミノ酸または核酸の「同一性」はアミノ酸または核酸の「相同性」と等しい)。2配列間のパーセント同一性は、2配列の至適アライメントのために導入することが必要な、ギャップの数、各ギャップの長さを考慮した配列により共有される同一の位置の数の関数である。
2配列の比較および2配列の間のパーセントホモロジーの測定は数学的アルゴリズムを用いて実施できる。好ましい実施形態においては、2アミノ酸配列の間のパーセント相同性は、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、および、ギャップウエイト16、14、12、10、8、6または4および長ウエイト1、2、3、4、5または6を用いながら、GCGソフトウエアパッケージにGAPプログラムを組み込んだアルゴリズムであるNeedleman and Wunsch(1970),J,Mol.Biol.48:444−453を用いて測定する。更に別の好ましい実施形態においては、2ヌクレオチド配列の間のパーセント相同性はNWSgapdna.CMPマトリックスおよびギャップウエイト40、50、60、70または80および長ウエイト1、2、3、4、5または6を用いながら、GCGソフトウエアパッケージ中でGAPプログラムを使用しながら求める。特に好ましいパラメーターのセット(および分子が本発明の相同性範囲内にあるかどうかを調べるためにどのパラメーターを適用すべきか、担当者がわからない場合に使用しなければならないもの)は、ギャップペナルティー12、ギャップ伸長ペナルティー4およびフレームシフトギャップペナルティー5のBlossum62スコアリングマトリックスである。
本明細書においては、「低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、高ストリンジェンシーまたは超高ストリンジェンシー条件下にハイブリダイズする」という表現はハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を説明するものである。ハイブリダイゼーション反応を実施するためのガイダンスは参照により本明細書に組み込まれるCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley
& Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6に記載されている。水性または非水性の条件がその参考文献には記載されており、何れを使用することもできる。本明細書においては特定のハイブリダイゼーション条件とは、以下の通り、即ち1)低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は約45℃の6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、次いで0.2XSSCで2回洗浄、少なくとも50℃の0.1%SDS(洗浄温度は低ストリンジェンシー条件では55℃まで上昇させることができる);2)中ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は約45℃の6XSSC、次いで0.2XSSCで1回以上洗浄、60℃の0.1%SDS;3)高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は約45℃の6XSSC、次いで0.2XSSCで1回以上洗浄、65℃の0.1%SDS;そして好ましくは、4)超高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は65℃で0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS、次に0.2XSSCで1回以上洗浄、65℃の1%SDSとする。超高ストリンジェンシー条件(4)が好ましい条件であり特段の記載が無い限り使用すべきものである。
本発明の結合剤ポリペプチドはポリペプチドの機能に実質的に影響しない別の保存的または非必須のアミノ酸の置換を有してよい。特定の置換が耐容性を示すかどうか、即ち所望の生物学的活性、例えば結合活性に悪影響を及ぼさないかどうかは、Bowie,JU
et al.(1990)Science 247:1306−1310に記載の通り調べることができる。「保存的アミノ酸置換」とは、同様の側鎖を有するアミノ酸残基によりアミノ酸残基が置き換えられているものである。同様の側鎖を有するアミノ酸のファミリーは当該分野で定義されている。これらのファミリーには塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が包含される。
「非必須」アミノ酸残基とは生物学的活性を低下させることなく、または、より好ましくは実質的に改変することなく例えば抗体のような結合剤の野生型の配列から改変することができる残基であり、「必須な」アミノ酸残基はこのような変化をもたらす。
(薬学的組成物)
別の局面において、本発明は組成物、例えば薬学的に受容可能な組成物を提供し、これには製薬上許容しうる担体と共に製剤された本明細書に記載した早期活性化分子結合剤、抗早期活性化ポリペプチド抗体が含まれる。
本明細書においては、「薬学的に受容可能な担体」とは、生理学的に適合性のある全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗カビ剤、等張性付与および吸収遅延剤等を包含する。担体は静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮への投与に(例えば注射または注入による)に適するものである。投与経路に応じて、活性化合物、即ち早期活性化分子結合剤は酸の作用および化合物を不活性化する可能性のあるその他の天然の条件から化合物を保護する物質でコーティングしてよい。
「薬学的に受容可能な塩」とは、親化合物の所望の生物学的活性を有し、そして望ましくない毒性学的作用を付与しない塩を指す(例えばBerge,S.M.(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19参照)。このような塩の例は酸付加塩および塩基付加塩を包含する。酸付加塩は非毒性の無機酸、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、臭化ヨウ素酸、リン酸などから誘導されたもの、並びに、非毒性の有機酸、例えば脂肪族モノカルボン酸およびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族のスルホン酸等から誘導されたものを包含する。塩基付加塩は、アルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等から誘導されたもの、並びに、非毒性の有機アミン、例えばN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等から誘導されたものを包含する。
組成物は種々の形態であってよい。これらには例えば液体、半固体および固体の剤型、例えば液体の溶液(例えば注射および注入用の溶液)、分散液または懸濁液、錠剤、丸薬、粉末、リポソームおよび坐剤が包含される。好ましい形態は投与の意図する様式および治療用途により異なる。典型的な好ましい組成物は注射用または注入用の溶液の形態、例えば他の抗体を用いたヒトの受動免疫化に用いられるものと同様の組成物である。好ましい投与様式は非経口(例えば静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。好ましい実施形態においては、抗体は静脈内の注入または注射により(例えばニードルレス注射により)投与する。別の好ましい実施形態においては、抗体は筋肉内または皮下注射により投与する。
「非経口投与」および「非経口で投与される」という用語は、本明細書においては、通常は注射による、経腸および局所投与とは異なる投与の様式を意味し、例えば静脈内、筋肉内、動脈内、包膜内、嚢胞内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、内包下、くも膜下、脊髄内、硬膜内および胸骨内の注射および注入を包含する。
治療用組成物は典型的には滅菌され製造および保存の条件下で安定でなければならない。組成物は溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソームまたは他の高濃度薬剤に適する秩序のある構造として製剤できる。滅菌注射用溶液は、必要に応じて上記した成分の1つまたは組み合わせと共に所望の量の活性化合物(即ち抗体または抗体部分)を適切な溶媒に配合し、次に濾過滅菌することにより調製できる。一般的に、分散液は基材となる分散媒体および上記したもののような所望の他の成分を含有する滅菌されたベヒクル中に活性化合物を配合することにより調製する。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合は、好ましい調製方法は活性成分の粉末および予め自身の濾過滅菌された溶液から得られた所望の別の成分を与える真空乾燥または凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は例えばレシチンのようなコーティングの使用により、分散剤の場合は必要な粒径を維持することにより、そして、界面活性剤の使用により維持することができる。注射用組成物の延長された吸収は、例えばモノステアレート塩およびゼラチンのような吸収を遅延させる薬剤を組成物中に含有させることにより達成できる。
早期活性化分子結合剤は当該分野で知られた種々の方法により投与できるが、多くの治療用途において好ましい投与の経路/様式は静脈内の注射または注入である。当業者の知るとおり、投与の経路および/または様式は所望の結果により異なる。特定の実施形態においては、活性化合物は制御放出製剤、例えばインプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル送達システムのように、急速な放出から化合物を保護する担体と共に調製してよい。生体分解性、生体適合性の重合体、例えばエチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を使用してよい。このような製剤の調製のための多くの方法は特許付与されているか、当業者の一般的に知るものである。例えばSustained and Controlled Release Drug Delivery System,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照できる。
一部の実施形態においては、早期活性化分子結合剤の薬学的組成物は、単独または他の薬剤と組み合わせて、局所的または経皮パッチにより送達または投与することができる。結合剤が小分子であるような実施形態においては、経口投与を使用できる。更に、組成物は、特に関節炎、例えば乾癬性関節炎の治療のため、および、皮膚患部への直接注射のためには、非経口で送達できる。非経口療法は典型的には皮内、関節内、筋肉内または静脈内で行う。早期活性化分子結合剤はクリームまたはオイルベースの担体中で直接適用できる。あるいは、エアロゾルを局所使用できる。これらの化合物はまた経口投与できる。
治療用組成物は当該分野で知られた医療用装置と共に投与できる。例えば好ましい実施形態においては、本発明の治療用組成物はニードルレスの皮下注射装置、例えば米国特許5,399,163、5,383,851、5,312,335、5,064,413、4,941,880、4,790,824または4,596,556に開示されている装置を用いて投与できる。本発明において有用なよく知られたインプラントおよびモジュールの例は制御された速度で医薬品を分注するためのインプラント可能なマイクロ注入ポンプを開示している米国特許4,487,603;皮膚を経由する医薬品の投与のための治療用装置を開示している米国特許4,486,194;厳密な注入速度で医薬品を送達するための医療用注入ポンプを開示している米国特許4,447,233;連続薬剤送達のための可変流動のインプラント可能な注入装置を開示している米国特許4,447,224;マルチチャンバーコンパートメントを有する浸透圧薬剤送達システムを開示している米国特許4,439,196;および浸透圧薬剤送達システムを開示している米国特許4,475,196を包含する。これらの特許は参照により本明細書に組み込まれる。多くの他のインプラント、送達システムおよびモジュールが当該分野で知られている。
投与計画は至適な所望の応答(例えば治療応答)が得られるように調節する。例えば単回ボーラス投与で行ってよく、数回の分割投与を経時的に行ってもよく、あるいは、投与は治療状況の緊急事態により示されるとおり比例的に増減させてよい。投与が容易であり薬剤が均質であるような単位剤型に非経口組成物を製剤することが特に好都合である。本明細書において使用する単位剤型とは治療すべき被験体への単位としての投薬に適する物理的な個々の単位を指し;各単位は必要な薬品担体と組み合わせて所望の治療効果をもたらすために計算された活性化合物の諸定量を含有する。本発明の単位剤型に関する詳細は、(a)活性化合物の独特の性質および達成すべき特定の治療効果、および(b)個体における感受性に対して治療用のこれら活性化合物を折り合わせるという技術に固有の制約事項により推定されるか、これに直接依存している。
本発明の抗体または抗体部分の治療または予防上有効な量の非限定的な例は0.1〜20mg/kg、より好ましくは1〜10mg/kgである。1つの実施形態において、抗早期活性化ポリペプチド抗体は静脈内注入により、10mg/分未満、好ましくは5mg/分以下の速度で、約1〜100mg/m2、好ましくは約5〜50mg/m2、約7〜25mg/m2、そしてより好ましくは約10mg/m2の用量に達するまで投与する。用量の値は軽減すべき状態の型および重症度により変動する。更にまた、何れの患者被験体に対しても、特定の投薬計画は、個体の必要性および組成物の投与を行うか投与を監督する担当者の専門的判断に従って経時的に調節しなければならず、そして、本明細書に記載した用量範囲は単なる例示に過ぎず、そして請求項に記載した組成物の範囲または実施を限定する意図はない。
本発明の薬学的組成物は結合剤の「治療有効量」または「予防有効量」を含有してよい。「治療有効量」とは、必要な用量および期間において、所望の治療結果を達成するために有効な量を指す。早期活性化分子結合剤の治療有効量は個体の疾患状態、年齢、性別および体重、および、個体において所望の応答を誘起する抗体または抗体部分の能力のような要因に応じて変動してよい。治療有効量はまた、早期活性化分子結合剤の毒性または有害な作用よりも治療上有益な作用のほうが勝っているようなものである。「治療上有効な用量」は好ましくは未投与の被験体と比較して測定可能なパラメーターを抑制する。化合物が測定可能なパラメーターを抑制する能力は、ヒトにおける薬効を予測できる動物モデル系において評価することができる。あるいは、組成物のこの性質は当業者の知る試験法によりインビトロでのこのような抑制を化合物が抑制する能力を調べることにより評価できる。
「予防有効量」とは、必要な用量および期間において、所望の予防結果を達成するために有効な量を指す。典型的には、予防用量は疾患よりも前、またはその早期の段階において被験体において使用するため、予防有効量は治療有効量よりも低値である。
(使用)
本明細書に記載した、または本発明に記載した方法により同定された早期活性化分子のアゴニスト、アンタゴニストおよび枯渇剤は、増強された、または低減された免疫応答によって特徴付けられる障害を有する被験体を治療するために使用できる。例えば早期活性化分子アゴニストは低減した免疫応答によって特徴付けられる障害を有する患者、または、低減または相殺された免疫応答を有さないがなお増大または増強された免疫応答による利益を被る被験体を治療するために使用できる。このような障害は望ましくない細胞増殖によって特徴付けられる障害、例えば癌または免疫不全を包含する。方法は被験体、例えば低減した免疫応答によって特徴付けられる障害を有する被験体に、早期活性化分子アンタゴニストの治療有効量を投与することを包含する。別の実施形態においては、方法は早期活性化分子アンタゴニストの予防有効量を投与することによりこのような障害を予防するために使用できる。
即ち、一部の特徴において、早期活性化分子アンタゴニストを用いて、過剰増殖細胞の成長または増殖を抑制することにより、および/または、過剰増殖細胞の殺傷を誘発することにより、被験体における望ましくない細胞増殖、例えば癌を治療または予防することができる。早期活性化分子アンタゴニストは早期活性化分子の発現および/または活性を低減することにより被験体における腫瘍免疫を増強することができる。例えば癌、例えばリンパ性白血病、例えば免疫グロブリン変異を欠いたB細胞慢性白血病を有する被験体においてはAICLがアップレギュレートされる(Klein et al.(2001)J.Exp.Med.11:1625;Rosenwald et al.(2001)J.Exp.Med.11..1639)。AICLアンタゴニスト、例えばブロッキングまたはダウンレギュレーティングAICLアンタゴニストを用いてAICLの発現または活性化を低減することにより、そのような被験体における腫瘍免疫を増強することができる。特別の理論に制約されないが、早期活性化ポリペプチドを拮抗することにより
を抑制することにより、免疫細胞は過剰増殖細胞の成長または増殖の抑制を継続できる。更に、早期活性化分子枯渇剤は早期活性化分子が発現する癌を治療または防止するために使用できる。例えば、AICL枯渇剤は白血球性白血病、例えば免疫グロブリン変異を欠いたB細胞慢性白血病を有する被験体における過剰増殖性のAICL発現細胞の成長または増殖を抑制するために使用できる。本明細書においては、過剰増殖性の細胞、例えば新生物細胞の「成長または増殖を抑制する」とは、その成長または転移を遅延、妨害、停止または終止させることを指し、必ずしも新生物の成長の全体的消失を意味しない。本明細書においては、過剰増殖性の細胞、例えば新生物細胞の「殺傷を誘導する」とは、その細胞の部分的または完全な消失を意味し、必ずしも新生物の成長の全体的消失を意味しない。
2つの状況の間の定量的な相違を意味する「誘導」、「抑制」、「強化」、「上昇」、「増大」、「低減」等の用語は、2つの状況の間の少なくとも統計学的に有意な相違を指す。例えば、「過剰増殖細胞の成長を抑制するために有効な量」とは、細胞の成長速度が未投与の細胞と少なくとも統計学的に有意差があることを意味する。このような用語は本明細書においては例えば細胞の増殖の速度に適用する。
本明細書においては、「癌」、「過剰増殖性」および「新生物」という用語は自立的に成長する能力を有する細胞を指す。このような細胞の例は、急速に増殖する細胞の成長によって特徴付けられる異常な状況または状態を有する細胞を包含する。過剰増殖および新生物の疾患状況は、病的、即ち疾患状況を特性化または構成するものとして分類してよく、または、非病的、即ち、正常からは逸脱しているが、疾患状況を伴っていないものとして分類してよい。用語は、組織病理学的な型または侵襲性の段階とは無関係に、全ての型の癌性の成長または癌遺伝子の過程、転移組織または悪性に形質転換された細胞、組織または臓器を包含するものとする。「病的な過剰増殖」細胞は悪性腫瘍の成長によって特徴付けられる疾患状況において起こる。非病的過剰増殖細胞の例は、創傷の修復に伴う細胞の増殖を包含する。
即ち、1つの特徴において、早期活性化分子に対するアンタゴニストは非病的過剰増殖によって特徴付けられる障害、例えば線維性障害を治療または防止するために使用できる。線維性障害は外傷、手術、感染、環境汚染物、タバコ、アルコールまたは他の毒素1つ以上と関連する場合がある。障害は例えば過剰創傷治癒(例えば過形成瘢痕またはケロイド)、腎線維症(メサンギウム細胞増殖)、肝線維症(肝星細胞の増殖)と関連する。線維性障害の例は、ケロイド、熱傷、過形成瘢痕または他の皮膚障害(例えば局所または全身の強皮症、例えば全身強皮症)、肝硬変、腎線維症(例えば糖尿病および/または高血圧に関連)、外科的癒着(例えば胃腸手術または神経手術の癒着)、血管移植片、特発性肺線維症、放射線誘導線維症、アスベスト誘導線維症(例えば灰色または茶色肺)、ウィルス性肝炎に関連する線維症、黄斑変性、網膜およびガラス体の網膜症、および急性呼吸器症候群に関連する線維症を包含する。線維症は急性または慢性の線維症であることができる。急性線維症の例は、事故による傷害、感染症、手術、熱傷、放射線誘導線維症および化学療法誘導線維症を包含する。慢性線維症は例えばウィルス感染、糖尿病および高血圧に関連する。
「癌」または「新生物」という用語は種々の臓器系の悪性疾患、例えば肺、甲状腺、リンパ、胃腸および泌尿器が罹患したもの、並びに、腺癌、例えば大部分の結腸癌、腎細胞癌、前立腺癌、および/または、精巣腫瘍、非小細胞肺癌、小腸の癌および食道の癌の悪性疾患を包含する。
「癌腫」という用語は上皮または内分泌組織の悪性疾患を指すものと認識されており、例えば呼吸器系の癌腫、胃腸系の癌腫、泌尿器系の癌腫、精巣の癌腫、乳房の癌腫、前立腺の癌腫、内分泌系の癌腫および黒色腫を包含する。癌腫の例としては、頚部、肺、前立腺、乳房、頭部および頸部、結腸および卵巣から生じるものを包含する。用語には、癌腫性肉腫、例えば癌腫性および肉守勢の組織よりなる悪性腫瘍が包含される。「腺癌」とは下流組織から誘導された癌腫、または腫瘍細胞が認識されうる腺構造を形成するものを指す。「肉腫」という用語は間葉由来の悪性腫瘍を指すものと認識されている。
細胞増殖性および/または分化性の障害の例は、癌、例えば癌腫、肉腫、転移性障害または造血性の新生物障害、例えば白血病を包含する。転移性の腫瘍は複数の原発腫瘍の型から生じる場合があり、例えば前立腺、結腸、肺、乳房および肝臓起源のものが挙げられる。
癌または新生物性状態のその他の例は、上記したものの他に、例えば腺維肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、軟骨腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、骨膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌、食道癌、直腸癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮癌、頭部および頚部の癌、皮膚癌、脳の癌、扁平上皮細胞癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫、子宮頸癌、精巣癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞癌、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、白血病、リンパ腫またはカポジ肉腫を包含する。このような新生物性の状態の多くが進行して転移状態、例えば腫瘍細胞が新しい場所に移動し、転移腫瘍を形成する。
増殖性障害の他の例は、造血系の新生物性障害を包含する。本明細書においては、「造血系の新生物性障害」という用語は造血系起源の過形成性/新生物形成性の細胞が関与する疾患を包含する。造血系の新生物性障害は骨髄性、リンパ性または赤血球系の系統、またはその前駆細胞から生じる場合がある。好ましくは、疾患は低分化の急性の白血病、例えば正赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病から生じるものである。別の例示される骨髄性の障害は、例えば、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)(Vaickus,L.(1991)Crit Rev.in Oncol./Hemotol.11:267−97に解説)を包含し;リンパ性悪性疾患には例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、例えばB細胞系統ALLおよびT細胞系統ALL、慢性リンパ性白血病(CLL)(例えばTまたはB細胞慢性リンパ性白血病、例えば免疫グロブリン突然変異を伴うまたは伴わないB細胞慢性リンパ性白血病)、多形核球性白血病(PLL)、毛様細胞白血病(HLL)およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)が包含される。別の形態の悪性リンパ腫は、例えば、ホジキンリンパ腫およびその変異体、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ性白血病(LGF)、ホジキン病およびリードスターンバーグ病を包含する。
早期活性化分子アンタゴニストは治療剤、例えば望ましくない細胞の増殖を治療または防止するための治療剤または物質1つ以上と組み合わせて投与できる。治療剤は例えば化学療法剤、放射性同位体および細胞毒1つ以上を包含する。化学療法剤の例はタキソール、シトカラシンB、グラミシジンD、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ブスルファン、シスプラチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、マイトキサントロン、ミスラマイシン、クロラムブシル、ゲムシタビン、アクチノマイシン、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロパノロール、プロマイシン、マイタンシノイドおよびそれらの類縁体または相同体を包含する。別の治療剤は、例えば、抗代謝剤(例えばメトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シトラビン、5−フルオロウラシル、デカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオエパクロラムブシル、CC−1065、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミスラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))および抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、タキソールおよびマイタンシノイド)を包含する。放射性同位体はアルファ、ベータおよび/またはガンマエミッターを包含する。放射性同位体の例は212Bi、213Bi、131I、211At、186Re、90Yおよび117Luを包含する。早期活性化分子アンタゴニストおよび治療剤は同時または逐次的に投与できる。更にまた、早期活性化分子アンタゴニストは他の癌治療の選択肢、例えば癌性組織または癌性組織を含有する臓器の全てまたは部分を除去する手術と組み合わせて投与することもできる。
本明細書においては、「細胞毒性剤」、「抗癌剤」および「抗腫瘍剤」という用語は、互換的に使用するものとし、そして成長または増殖を抑制(例えば細胞増殖インヒビター)または過剰増殖細胞の殺傷を誘導する特性を有する薬剤を指す。好ましくは、細胞毒性剤は新生物、特に固形癌、軟組織腫瘍、転移疾患、リンパ腫または白血病の発症または進行を抑制する。
本明細書においては、ある薬剤の単独または細胞毒性剤と組み合わせた場合の「治療有効量」とは、過剰増殖細胞の成長または増殖の抑制または殺傷の誘導において被験体、例えば患者に単回または複数回投与した場合に組み合わせにおいて有効である組成物のような薬剤の量を指す。このような成長の抑制または殺傷はそのような治療の非存在下において期待されるよりも被験体、例えば患者の生存が延長されること、または、そのような治療の非存在下と比較して被験体の予後が改善されていることにより反映される。
本明細書においては、ある薬剤の単独または細胞毒性剤と組み合わせた場合の「予防有効量」とは、障害、例えば新生物性障害の発症または再発を防止または発生遅延させる場合に被験体、例えば患者に単回または複数回投与した場合に組み合わせにおいて有効である組成物のような薬剤の量を指す。
癌治療を受けている患者に投与する場合に、早期活性化分子アンタゴニストは他の抗癌剤を含有するカクテルとして投与してよい。それらはまた放射線療法の副作用を治療する薬剤、例えば抗嘔吐剤、放射線保護剤等を含有するカクテルとして投与してよい。
早期活性化分子アゴニストおよび早期活性化ポリペプチドを発現する細胞の枯渇剤は増大した、例えば悪化した免疫応答によって特徴付けられる障害を有する被験体の治療のために使用できる。このような障害は急性または慢性の炎症性障害および免疫障害、例えば自己免疫障害を包含する。方法は被験体、例えば増大した免疫応答によって特徴付けられる障害を有する被験体に対し、早期活性化分子アゴニストおよび/または早期活性化ポリペプチド発現細胞の枯渇剤の治療有効量を投与することを包含する。別の実施形態においては、方法は早期活性化分子アゴニストの予防有効量を投与することによりそのような障害を防止するために使用できる。
炎症性疾患、例えば急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、関節炎(例えばCIA)、喘息、気管支炎、嚢胞性線維症、肝炎、炎症性腸疾患、多発性硬化症、再灌流傷害(例えば心筋)、腎炎、膵臓炎、乾癬、動脈閉塞(例えば網膜)、脳卒中、全身性エリテマトーデス、移植、紫外線誘発傷害および/または血管炎が、本発明を用いて治療し得る。炎症性疾患は急性または慢性であってよく、そして好ましくは白血球により媒介される(Weissmannら、Ann.N.Y.Acad.Sci.389:11−24,1982;Janoff,A.,Annu.Rev.Med.36:207−216,1985;Hartら、J.Rheumatol.16:1184−1191,1989;Doring,Am.J.Respir.Crit.Care Med.150:S114−S117,1994;Demling,Annu.Rev.Med.46:193−202,1995において検討されている)。慢性炎症の特徴を有する疾患は、例えば炎症性腸疾患、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎、乾癬、サルコイドーシスおよび関節リウマチを包含する。
早期活性化分子アゴニストは単独または1つ以上の治療剤、例えば炎症を治療するための治療剤または薬剤と組み合わせて投与できる。
本明細書に記載するか本発明に記載した方法により同定される早期活性化分子アンタゴニストはまた、抗原、例えばワクチン、または、抗原をコードする核酸、例えばワクチンへの免疫応答を増強するために使用できる。方法は抗原、例えばワクチンおよび/または抗原をコードするDNAおよび早期活性化分子アンタゴニストを被験体に投与することにより、被験体による抗原への免疫応答を増強することを包含する。
ワクチンの例には、癌ワクチン、HIVワクチン、肝炎ワクチン、マラリアワクチン、ヘルペスワクチン、乳頭腫ワクチン、インフルエンザワクチン、および痘瘡ワクチンが包含される。本明細書に記載した早期活性化分子アンタゴニストと共に投与できる種々の癌ワクチンが開発されている。このようなワクチンの例は、自系腫瘍細胞ワクチン;同種異型腫瘍細胞ワクチン;ガングリオシド(例えば黒色腫または肉腫用のもの);CEA(例えば結腸直腸癌、他の胃腸悪性疾患、膵臓癌および乳癌用のもの);PSA(例えば前立腺癌用);MART−1 100、チロシナーゼ(例えば黒色腫用);p53(種々のp53発現癌用);アルファ−フェトプロテイン(AFP)(例えば肝細胞癌のような肝癌用)を包含する。
早期活性化分子アンタゴニストは抗原の投与の前、同時、または後に、被験体に投与できる。
用量水準は使用する抗原に基づいて決定する。更に、投与の時期、および使用するアジュバントがある場合は、それらは当該分野で知られた方法により決定できる。
自己免疫反応性および炎症におけるCD69の機能的なインビボの役割を確認するために、CD69欠損B6マウスにおけるCIAの挙動を分析した。CIAの悪化した形態はCD69−/−マウスにおいて観察され、これはII型コラーゲン(CII)特異的TおよびB細胞応答、一部の炎症メディエーターの増大、および、減衰した局所的な
の局所的ブロッキングにより重症度は野生型では増大したが、CD69欠損マウスでは増大しなかった。更にまた、CD69のインビトロ結合により
の合成を介した自己免疫反応性の負の調節物質であることを強力に示唆している。更にまた、CD69
−/−マウスにおける増強したNK依存性抗腫瘍応答が報告されている。CD69欠損の抗腫瘍応答に対する影響はwtマウスと比較した場合に高い保護性およびMHCクラスI腫瘍細胞の拒絶をもたらす。この強力な抗腫瘍応答は、減衰したTGF−βの産生、炎症性サイトカインおよびケモカインMCP−1の増大に相関しながら腫瘍−宿主のミクロ環境に依存しており、そしてリンパ様エフェクター細胞の増大した動員および減衰したアポトーシスを伴っていた。増強された抗腫瘍応答はNK細胞およびTリンパ球媒介性であり、そして、免疫弱化CD69
−/−RAG−陰性マウスにおいて持続していた。更にまた抗TGF−β mAbのインビボ投与により増強された腫瘍応答が誘導された。更に、CD69の結合は細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)活性化およびT細胞によるTGF−β産生を誘導した。PD98059によるERKのブロッキングはTGF−β産生を抑制し、TGF−β調節にCD69シグナル伝達を直接に関連付けている。更に、アンタゴニスト2.2抗CD69mAbのインビボ投与は野生型マウスおよびMHCクラスI陰性細胞で攻撃された免疫弱化SCIDおよびRAG欠損マウスにおいて増強された抗腫瘍応答を誘導したことがわかっている。
これらの結果はCD69がTGF−β1合成を介した免疫反応性の負の調節物質であることを示している。抗CD69抗体のインビボ投与は使用する抗CD69に応じて種々の作用をもたらす。アンタゴニスト2.2抗CD69mAbは免疫応答を増強し、上昇したCIAの重症度およびより効果的な腫瘍拒絶をもたらした。枯渇性2.3抗CD69抗体はCD69+活性化エフェクター白血球を欠失させ、減衰したCIAをもたらした。更に、この抗体は直接CD69+腫瘍を排除した。
ヒトCD69抗原に対して特異的なヒトモノクローナル抗体の産生のためのトランスジェニックマウスの使用に関しては、Molina et al.(2003)が詳細に報告しており、hAIM−29mAb(IgM/λ)の単離と特性化のための材料および方法を提供しており、これはヒトCD69抗原に対するその高い特異性に基づき、CD69抗原を発現する活性化細胞の存在に関わる疾患の治療または防止における治療上の用途を有している。
以下の実施例は本発明を説明するためにものであり、本発明の請求項を限定するものではない。
(実施例1:CD69欠損マウスは悪化したCIAを発症する)
慢性自己免疫性関節炎のモデルにおいてCD69の役割を調べるために、相互交配したB6 WTおよびCD69−/−マウス(Lauzuricaら、2000)を、B6マウスにおいて中等度の関節炎をもたらすCFA中CIIで皮内免疫化することにより誘導したCIAの発生率および重症度に対して比較した(Campbellら、2000)。CD69欠損マウスはCIAの悪化した形態を発症し、後肢手掌、踵/手首の関節および指に重度の浮腫を有しており(図1a)、そしてWTマウスと比較して発生率および重症度は有意に高値であった(図1b)。更にまたCD69を中等度のレベルで発現するCD69+/−マウス(Lauzuricaら、2000)はWTマウスより高いCIA発生率および重症度を示したが、CD69−/−マウスよりは有意に低値であった(図1b)。
更に関節炎を調べるために、種々の等級のCIAを有するCD69−/−およびWTマウスの手掌のエオシン染色切片を組織学的分析において評価した。これらの結果は臨床評価において観察された結果と平行しており、WTマウスと比較してCD69−/−マウスにおいて重症の病態を有する関節の比率は有意に高値であった(図2A)。CD69欠損マウスの関節は炎症細胞の広範な浸潤を示している場合が多く、パンヌス組織が辺縁部から軟骨まで伸長し、肋軟骨下の骨の髄質を経由していた(図2AおよびB)。後期の段階の疾患においては、関節の軟骨および骨の破壊があり、正常な関節構造が消失していた。従って、これらの結果は、CIA重症度とCD69の発現との間の明確な反比例相関を示しており、CIA発症におけるCD69のインビボの抑制的役割を示唆している。
(実施例2:CD69−/−マウスにおける増強したII型コラーゲン特異的免疫応答)
これらの結果はCD69−/−マウスにおける悪化した免疫応答をCIIがトリガーすることを強力に示唆していた。従って、脾臓は13週齢の段階でWTマウスと比較してCD69−/−CII攻撃マウスにおいて有意に肥大しており(約1.4倍の重量、p<.001、t検定)、関節炎CD69−/−マウスにおいて免疫系がより高度に活性化されていることを示唆していた(図3A、B)。脾臓重量の増加は増加した細胞性と相関していた(図3B)。次に細胞性におけるこの増加が脾臓内に存在する免疫細胞の何れかのサブ集団における相違に起因するものであるかを確認した。T細胞、B細胞、マクロファージおよびNK細胞の比率並びにCD4/CD8比、ナイーブ/エフェクターメモリー細胞(CD62L/CD44)およびCD45低CD25+CD4+調節T細胞を分析した。これらのサブセットの比率は何れかの刺激剤の非存在下およびCII攻撃後のいずれにおいても、WTおよびCD69−/−マウスの間で保存されていた(図示せず)。
リンパ球の反応性を調べるために、脾臓およびリンパ節のリンパ球のCII特異的増殖応答を分析した。CD69−/−マウス由来のリンパ球は試験したCIIの種々の用量においてWTマウスよりも有意に高度な範囲まで増殖し(図3C)、CII攻撃マウス由来の免疫細胞のCII特異的増殖におけるCD69の抑制的影響を示している。
CIIの体液性応答も調べた。抗CIIアイソタイプの血清中濃度の分析によれば、Th1−依存性アイソタイプIgG2cの有意に増強された水準が観察され、これはB6マウスにおいてはIgG2aおよびIgG2bと等価であった(図3D)。IgG3の有意な増加も観察され、CD69−/−マウスにおけるB細胞の過剰応答性を示しており、一方、IgMの低下はIgGへの増強されたシフトを示唆していた。Th−2依存性IgG1は有意差を示さず、そしてCIIは有意なIgA応答を誘導しなかった。総括すれば、これらの結果はCD69欠損マウスにおけるより強力なTおよびB細胞免疫応答性を示唆している。
(実施例3:CD69欠損マウスは減衰した局所的TGF−β1産生を示す)
広範なアレイのサイトカインが関節炎の炎症および発症に関与している(O’Shea,J.J.,et al.,2002.Nat.Rev.Immunol.2:37−45;Feldmann,M.,et al.1996.Ann.Rev.Immunol.14:397−440.Campbell,I.K.,et al.2001.J.Clin.Invest.107:1519−27)。関節は関節炎におけるサイトカイン産生の最も関連性の高い部位であるため、どのようにしてCD69欠損がCIAマウスの関節におけるサイトカイン発現の特徴に影響するかを調べた。Rnase保護試験によれば、CD69欠損は一部の炎症メディエーター、例えばIL−1β、RANTES、MIP−1χおよびMIP−1βのmRNA発現を増強する(図4)。しかしながら、大部分の有意差はCD69−/−マウスにおける抗炎症性サイトカインTGF−βおよびβ2のmRNAレベルの低下であった(図4)。リアルタイム定量的RT−PCR分析によれば、TGF−β1およびβ2に対する関節mRNAの減少およびIL−1βおよびRANTESにおける増加が確認された(図5A)。
次に、活性化白血球により直接産生された活性および総量としてのTGF−β1タンパク質の濃度(Kehrl,J.H.,et al.1986.J.Exp.Med.163:1037−50)およびCIA攻撃マウス屠殺時に得た関節組織の洗浄液中の他のサイトカインを検出した。TGF−β1の未変化の全身濃度(図示せず)とは対照的に、滑膜洗浄液中の活性および総量のTGF−β1濃度はCD69欠損マウスにおいて有意に低下していた(図5B)。一方、炎症促進性サイトカイン、例えばIL−1βおよびRANTESはWTと比較してCD69−/−マウスの滑膜洗浄液中では増加しており、TNF−α濃度は局所的には未変化のままであった(図5B)。TGF−β1はCIAにおいて優勢な保護的役割を有する抗炎症サイトカインである(Kuruvilla, A.P.,et al.1991.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.88:2918−2921)ため、これらの結果は、このサイトカインの局所的産生の欠損はIL−1βおよび種々のケモカインの増強された産生を介してCD69−/−マウスにおいて観察された増強された炎症応答、即ち、滑膜における炎症促進性サイトカインと抗炎症サイトカインとの間のバランスを変化させること説明するものであることを示唆している(O’Shea,J.J.,et al.2002.Nat.Rev.Immunol.2:37−45)。
CD69−/−マウスにおいて観察されたサイトカイン発現のパターンの原因である細胞集団を確認するために、CIA攻撃マウス由来の精製滑膜細胞を分析した。滑膜細胞は主にCD11b+マクロファージ(66.3±29.4%)であり、一部がCD3+細胞(9.6±5.3%)および非白血球CD45−細胞(24.1+14.8%)であった。3種のサブセットを単離し、そして、定量的RT−PCRによれば、CD3+およびCD11b+白血球の両方がCD69欠損マウスにおけるTGF−βの減少に寄与していた。しかしなお、CD11b+サブセットはIL−1βにより媒介されるその後のより高値の炎症促進応答に関与しており(図5C)、滑膜の存続において重要な役割を果たしていると考えられた。
(実施例4:TGF−βのブロッキングによりWTマウスではCIA重症度が上昇するがCD69欠損マウスでは上昇しない)
CIAにおけるTGF−β1の保護的作用はそれ自体が一部の炎症促進性および走化性のサイトカインのバランスの脱調節を説明している(O’Shea,J.J.,et al.2002.Nat.Rev.Immunol.2:37−45;Kuruvilla, A.P.,et al.1991.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.88:2918−2921;Brandes,M.E.,et al.1991.J.Clin.Invest.87:1108−1113)。これらの結果はCD69欠損マウスの関節におけるより高度な白血球の浸潤および炎症応答を説明している。TGF−β活性とCIAの重症度との間の機能的関連性を明らかにするために、ブロッキング抗TGF−β(Dasch,J.R.,et al.1989,J.Immunol.142:1536−41)をCIA WTマウスの手掌に局所注射した。TGF−βブロッキングはコントロール抗体または担体と比較して手掌炎症の有意な増大を誘導した(図6A)。定量的RT−PCRによる関節mRNAの分析によれば、IL−1βおよびRANTESの有意な増大が観察されたが、TNF−αおよびIL−18では観察されなかった(図6A)。これらの結果は、CIA WTマウスにおけるTGF−βブロッキングはCD69欠損マウスで観察されたものと同様の表現型をもたらすことを示している。
一方、CIA CD69−/−マウスにおける抗TGF−βの局所注射は手掌炎症を更に増大させなかった(図6B)。従って、mRNA分析は炎症促進性サイトカインに関してはmRNAレベルの有意な調節を示さなかった。これらの所見はTGF−βブロッキングおよびCD69欠損が共同してCIAの重症度を上昇させているわけではないことを明らかにしており、それらの相互依存性を示唆している。
(実施例5:CD69結合によるTGF−β1産生の誘導
CD69がTGF−β合成を調節できるかどうかを分析するために、ConA活性化マウス脾細胞におけるCD69結合後のTGF−β1の産生を調べた(図7A)。CD69架橋により、種々の白血球サブセットにおいて総量および活性TGF−β1の産生が顕著に誘導され(図7A)、NK細胞および抗CD3活性化脾細胞のデータと一致していた(Esplugues,E.et al.2003.J.Exp.Med.197:1093−1106)。更にまた、CD69架橋はCIAを有するWTマウスの浸潤滑膜細胞におけるTGF−β1産生をトリガーしており、その大部分ではCD11b+細胞がCD69を担持していた(図7B)。一方、CD69架橋後のTNF−α、RANTESまたはIL−1βの合成には差は観察されなかった(図示せず)。
これらの結果がヒトに拡長できるかどうかを確認するために、炎症性関節病を有する患者から得たCD69+滑膜単核細胞におけるTGF−β1の産生を分析した(図8A)。架橋しているが可溶性ではない抗CD69は別の共同刺激物とは独立してTGF−β1の合成を誘導したが(図8A)、他のサイトカイン、例えばTNF−αまたはIL−6については、差は認められなかった(図示せず)。CD69媒介TGFβ1産生試験においては、増大した活性TGF−β1は総TGF−β1合成と相関していた(図7および8)。これらの結果はマウス(図7)およびヒト(図8)の両方において、CD69結合とTGF−β1合成の間には直接の関連があり、そしてCD69−/−マウスと比較した場合のCD69+/+マウスにおいて観察されたより高値のTGF−β1濃度を説明していると考えられる。
CD69架橋とTGF−β1産生の直接の関係を明らかにするために、ヒトCD69を安定にトランスフェクトしたJurkatT細胞(JK−CD69)を利用した。CD69発現JK−CD69は、親のCD69陰性JurkatT細胞系統においてTGF−β合成が無かったこととは対照的に、抗CD69抗体と架橋した後に有意に活性のTGF−βを産生した(図8B)。更に、本発明者等のデータによれば、CD69の架橋はTNF−α産生を誘導しなかった(図8B)。総括すれば、これらの結果はCD69、即ち活性化後に発現されるレセプターは、炎症病巣における活性TGF−βの直接の分泌を介して自己免疫応答および炎症反応をダウンレギュレートすることを明らかにしている。
(実施例6:抗CD69抗体によるCIAのインビボ処置)
抗CD69抗体のインビボ処置の作用を2つの異なる抗CD69抗体、即ちmAb2.2およびmAb2.3を用いてDBA1野生型マウスにおけるCIAモデルで分析した。
mAb2.2はインビトロでは非枯渇剤抗体として挙動する。IgG1としてそれは補体に結合できず、インビトロクロム試験においてCD69発現細胞を溶解しない(図示せず)。更にmAb2.2は架橋の非存在下においてはインビトロ TGF−b合成を誘導しない(Espluguesら、2003.J.Exp.Med.197:1093;Sancho et al.2003.J.Clin.Invest.112:872)。
2.2抗マウスCD69抗体の作用をDBA/1マウスのCIAモデルにおいてインビボで分析した。この抗体のインビボ投与によりCD3hi胸腺細胞のような分子を発現する集団におけるCD69の発現の完全な消失がもたらされる(図22)。左パネルの上部右四分図に示すとおり、胸腺細胞の14.2%がCD69を発現する。mAb2.2処置の後は、僅か0.9%がCD69を発現する(上部右四分図、右パネル)。しかしながら、総量の胸腺細胞プールは、各パネルの上部四分図の合計が同様、即ち20.7%(コントロールは6.5+14.2、処置群は19.8+0.9)であることから、一定のままである。このことは、mAb2.2がインビボのCD69+細胞の枯渇を媒介しないことを示している。別の試験によれば、mAb2.2は細胞表面からCD69を除去し、即ちCD69のダウンレギュレーションにより拮抗作用を示している。
mAb2.2でのCIA誘導DBA/1マウスの処置は、二次応答の開始の間の20〜28日に投与した場合には有意にCIAを悪化させ(図23)、CD69欠損マウスにおける本発明者等の結果と合致している(図1)。
アイソタイプコントロール処置および抗CD69 mAb2.2処置の野生型マウスの後肢手掌のmRNAの定量的RT−PCR分析によれば、
のレベルは増大[25.0+/−9〜58.4+/−8単位、p<0.01(Mann−WhitneyのU検定)]し、そして
は減少した[56.5+/−13〜18.2+/−8単位、p<0.01(Mann−WhitneyのU検定)]。IL−4、TNF、MCP−1およびINF−ガンマmRNAのレベルは不変であった(独立した2実験において群当りN=12匹。各サイトカインに関する結果を各試料に平行して測定したGAPDH発現に対して正規化している)。結果はmAb2.2によるCD69のダウンレギュレーションにより低減した
mRNAおよび増大した
mRNAレベルがもたらされ、観察された炎症の悪化と合致していた。
mAb2.3はインビトロでは枯渇剤抗体として挙動する。IgG2aとしてそれは補体に結合し、インビトロクロム試験においてCD69発現細胞を溶解する(図示せず)。
mAb2.3の作用もまたDBA/1マウスのCIAモデルにおいてインビボで分析した。この抗体のインビボ投与によりCD69発現CD3hi胸腺細胞の枯渇がもたらされる(図24)。左パネルの上部右四分図に示すとおり、この実験においては、胸腺細胞の16.7%がCD69を発現する。mAb2.3投与の後は、僅か0.1%がCD69を発現する(上部右四分図、右パネル)。しかしながら、総量の胸腺細胞プールは、各パネルの上部四分図の合計が今回は異なっており、即ちコントロールで24.8%であったのに対し投与群で僅か8.3%であったことから、強力に減少している。このことはmAb2.3がCD69を機能的に「ブロッキング」したというよりはむしろ、全てのCD69発現細胞を枯渇させたことを示す。
mAb2.3のCIA誘導DBA/1マウスへの投与は、二次応答の開始の間の20〜28日に投与した場合には有意にCIAを低減している(図25)。
これらの結果はダウン調節抗CD69での処置が特定の免疫応答を増強するために有用であることを示している。一方、CD69発現細胞の枯渇は免疫系の活性化により媒介される疾患を軽減し得る。
(実施例7:CD69欠損マウスは増強した抗腫瘍応答を起こす)
インビボの抗腫瘍機能におけるCD69の考えられる役割を評価するために、野生型(wt)およびCD69−/−マウスにRMA−S細胞を腹腔内注射し、腫瘍の進行を分析した(図9A)。104RAM−S細胞に応答して、全てのwtマウスは5週間までに腫瘍を形成し、第15日には検出可能な重量増加が観察されたのに対し、7週間の遅延時においてもCD69−/−マウスでは僅か20%のみ検出可能な腫瘍を形成した(図9A)。同様の結果が105RAM−Sをマウスに皮下注射した場合にも観察され(図9B)、腫瘍攻撃の部位による目立った相違は無かった。一方、wtとCD69−/−マウスとの間にはH−2+RMA細胞腫瘍の進行において僅かな相違が観察され(図9C、データ示さず)、即ち、CD8+CTLがCD69−/−マウスにおいて観察された増強された抗腫瘍応答においてあまり役割を果たしていないことを示唆していた。
以前の研究によればNK細胞はwtマウスにおいてRMA−Sの成長をインビボで制御している(Smythら、1998)。CD69−/−マウスにおけるRMA−S腫瘍の成長の制御におけるNK細胞の関与を更に調べるために、動物をNK細胞枯渇させた後に抗Asialo−GM1血清を投与して腫瘍誘導を行った。コントロール担体または抗Asialo−GM1の何れかの注射は腫瘍攻撃の第−1日に開始し、腫瘍接種後第+2日および+4日に継続した。予測されたとおり、腫瘍の成長は全てのNK細胞枯渇マウスにおいて観察されたが、コントロールマウスでは観察されなかった(図9D)。抗asialoGM1投与CD69−/−マウスは腫瘍接種後最初の10日間以内に腫瘍を形成し、これはパーフォリン欠損C57BL/6マウスにおいて観察された最も早期のRMA−S腫瘍の形成に匹敵するものであった(Smyth and Johnstone,2000;Smythら、1998)。CD69−/−マウスにおけるCD4+リンパ球の枯渇は腫瘍の形成を増大させたが、NK細胞枯渇よりも低水準であった(図9D)。これらの結果は、NK細胞はCD69−/−マウスにおけるRMA−S腫瘍の拒絶において重要な関与を有するが、T細胞もまたこの過程において役割を果たしていることを示している。CD69−/−マウスにおける腫瘍の抑制へのT細胞の関連性と合致して、RMAの過剰成長の増強された制御は腫瘍接種の3日後にCD69−/−マウスにおいて観察された(データ示さず)。
CD69−/−マウスの増大した抗腫瘍活性は、C57BL/6層状的RM−1クラスI−CD69−前立腺癌細胞による攻撃の後にも観察されたことから、RMA−S細胞に限定されたものではなかった。RM−1(104)細胞で静脈内攻撃した場合には、wtマウスと比較してCD69−/−マウスにおいて肺転移の数は有意に減少していた。wtマウスには多数の肺転移があったのに対し、CD69−/−マウスでは転移はほぼ皆無であった(図9E)。
(実施例8:CD69−/−RAG欠損マウスにおける増大した抗腫瘍応答)
CD69−/−マウスで観察された増強された抗腫瘍応答に対する生来の免疫の寄与を分析するために、CD69−/−RAG欠損マウスおよびCD69+/+RAG欠損マウスにRMA−S細胞を腹腔内注射し、腫瘍の進行を分析した(図10)。腫瘍細胞は106RMA−S細胞に応答して全ての野生型RAG欠損マウスにおいて過剰増殖したのに対し、CD69−/−RAG欠損マウスはほぼ完全に腫瘍細胞増殖を制御した(図10A、B)。
(実施例9:CD69−/−マウスにおける増強された免疫応答)
腫瘍の拒絶に増大したNK細胞機能が関連しているかどうかを調べるために、RMA−SプライミングCD69−/−マウスおよびwtマウスの腹腔細胞の細胞溶解活性をインビトロでNK感受性YAC−1腫瘍細胞を溶解するその能力に基づいて測定した。RMA−S接種(第3日)CD69−/−マウス由来の新しく単離した未分画の腹腔細胞はwtマウスから誘導したものよりもYAC−1の殺傷においてより効率的であり(図11A)、CD69−/−マウスにおけるインビボのNK免疫応答とインビトロ NK細胞毒性との間の相関を示していた。CD69−/−マウスの増大した腫瘍誘導NK細胞溶解活性はまたRM−1前立腺癌細胞の攻撃後にも観察された(図11B)。Tリンパ球および総腹腔細胞をRM−1またはRMA−S細胞で攻撃または未攻撃のマウスにおいて定量した。腹腔NK細胞は2色フローサイトメトリーにより抗体DX5および2B4で陽性染色されるものとして定義した。図11Cおよび表Iに示すとおり、未攻撃の腹腔洗浄液中の総細胞性はwtマウスと比較してCD69−/−マウスにおいて中等度の増大が観察された。このことはリンパ球、特にNK細胞およびCD3+Tリンパ球の数および比率における増大(2倍)によるものと考えられた(表IA)。RM−1腫瘍攻撃により、CD69−/−マウスの腹腔に動員された細胞の総数はwtマウスと比較して有意に増大していた(図11D、表IA)。このことはリンパ球の動員の増大を反映しており;NK細胞とCD3+ Tリンパ球の数はwtマウスと比較してCD69欠損マウスにおいてほぼ3倍の高値となった(図11、表I)。一方、腹腔CD5+B220+B−1およびCD5+B220+B−2リンパ球の数は、基本状態およびRM−1によるフォローアップ腫瘍攻撃の両方において、CD69−/−およびwtマウスで同様であった(データ示さず)。wtマウスと比較してCD69−/−の腹腔中の単球および顆粒球に僅かな増大が検出されたのみであった(図11A)。更にまたwtマウスにおいて腫瘍攻撃後第6日に観察された細胞動員の低下はCD69−/−マウスでは観察されなかった(図10C)。これらのデータはCD69−/−マウスにおける腹腔中のNK細胞およびCD3+Tリンパ球の数と抗腫瘍応答との間の相関を明らかにしている。即ち、CD69は腫瘍攻撃の部位に動員されたNK細胞およびCD3+Tリンパ球の数を調節すると考えられる。
脾臓は腹腔の炎症により強力な影響を受けるリンパ性臓器である。従って、腫瘍攻撃第6日において、CD69−/−マウスの脾臓はwtマウスと比較してはるかに肥大していた(図11D)。脾臓細胞数は同様の傾向を示していたが、フローサイトメトリーによる分析では、CD69−/−およびwtマウスではB220+、CD3+およびDX5+脾臓リンパ球の比率は同様であった。これらのデータをあわせると、炎症の部位におけるリンパ球蓄積の調節物質としてのCD69の役割が示唆される。
(実施例10:CD69−/−マウスにおける増強されたリンパ球生存)
末梢においては、ホメオスタシス機序が活性化細胞の増殖と消失を調節する(Krammer,2000)。CD69−/−マウスの脾臓および腹腔におけるリンパ球の蓄積の機序を調べるために、免疫細胞の生存をこれらのマウスにおいて分析した。腹腔細胞の生存性をインビトロで調べたところ、細胞の生存性の増大がwtマウスと比較してCD69−/−マウスにおいて検出された(図12A)。wtマウス(28.89±1.18%、n=9)と比較してRM−1攻撃CD69−/−(23.36±1.73%、n=9)では脾臓リンパ球の自発的アポトーシス(24時間)の19%低下が細胞周期の分析による低下したDNA含量として検出された(p<0.02)。更にwtマウス(44.56±1.3、n=6)と比較してRM−1攻撃CD69−/−(25.46±0.5%、n=6)では脾臓リンパ球の自発的アポトーシス(48時間)の有意な低下がカスパーゼ−3活性化分析で測定され(図12B)、この差は有意であった(p<0.0001)。同様に、wtマウス(45±1.8%、n=4)と比較してRM−1攻撃CD69−/−(35.26±1.6%、n=4)のソーティングされたDX5+CD3−NK脾細胞を用いてカスパーゼ−3活性化分析を実施した場合に自発的アポトーシス(48時間)の有意な低下がカスパーゼ−3により測定され、この差は有意であった(p<0.0001)。従って、リンパ球の生存の相違はCD69−/−マウスの腹腔内に観察される上昇した脾臓の大きさおよび細胞性に寄与していると考えられる。
(実施例11:CD69−/−マウスにおける低減したTGF−βおよび増大した炎症促進性因子)
広範なアレイの成長因子およびサイトカインにより抗腫瘍応答が操作され、これらの因子の改変された発現は免疫応答に大きな影響を有する。従って、wtマウスと比較した場合のCD69−/−の増強された抗腫瘍応答がサイトカインおよびケモカインの特性の相違により影響されるかどうかを調べた。サイトカインmRNAの相対レベルの評価はRNase保護試験により実施した。wtマウスと比較した場合のRM−1攻撃CD69−/−の腹腔細胞RNAの分析によれば、TGF−βの産生の変化が示された。CD69−/−腹腔細胞はwt腹腔細胞よりも少ないTGF−β1、−β2および−β3転写物を産生した(図13)。mRNA個別の4実験で観察されたmRNA濃度の低下はTGF−β1濃度の33±5%〜TGF−3β濃度の74±19%の範囲であった。TGF−β2RNAの低下は性別に依存しており、雄の20%〜雌の110%に変動した。RM−1プライミングCD69−/−マウスの腹腔細胞の分析によれば、wtマウスと比較してサイトカインIL−12p35(32−68%)、IL−1α(27−64%)、IL−1β(雄32%〜雌294%)およびケモカインMCP−1α(133%)の増大が明らかになった(図13)。しかしながら、LT−β、IFNγ、MIF、IL−1−Rα、IL−18、エオタキシン、MIP−1α、MIP−1β、IP−10、MIP−1α、MIP−1βおよびエオタキシンの優位な変化は観察されなかった(図13、データ示さず)。即ち、これらの結果はCD69−/−マウスの免疫細胞がサイトカイン発現の異常なパターンを有し、免疫抑制因子の欠損した合成および炎症促進性サイトカインおよびケモカインMCP−1αの増大した製造を伴うことを示唆している。MCP−1産生を更に検討するために、チオグリコレート投与マウスのLPS活性化腹腔細胞がMCP−1を産生する能力を試験した。図13Bに示すとおり、CD69−/−マウスの腹腔細胞により産生されたMCP−1の濃度はwtマウスにより生成された濃度のほぼ3倍高値であった。CD69−/−マウスにおいて観察されたこのようなサイトカインおよびケモカインの変化はwtマウスと比較してCD69−/−で観察されたより強力な免疫応答およびTおよびNKリンパ球の富化を説明していると考えられる。
(実施例12:wtマウスの抗腫瘍応答におけるブロッキングTGF−βの作用)
TGF−βの低下がCD69−/−マウスで観察された増大した抗腫瘍応答を説明しているかどうかを調べるために、wtマウスにブロッキング抗TGF−β mAbを投与した。TGF−βのブロッキングは、コントロール抗体または担体と比較した場合、腫瘍の形成を防止した(図14)。これらの結果は腫瘍攻撃マウスにおけるTGF−βブロッキングはCD69欠損マウスで観察されたものと同様の表現型をもたらすことを示している。
(実施例13:CD69はTGF−β分泌をアップレギュレートする)
TGF−βがT細胞においてCD69を介したシグナル伝達によりアップレギュレートされるかどうか調べた。抗CD3による刺激はB6マウスの精製された脾臓T細胞上のCD69の高度な発現を誘導した(図15A)。CD3活性化T細胞上のCD69の結合はTGF−β産生を顕著に誘導した(図15B)。この作用はコントロールアイソタイプマッチ抗体を用いた場合には観察されず(図15B)、CD3の抗体架橋のみでは前に報告されている通り(Chenら、2001)TGF−βの分泌は誘導されないことを示している。細胞培養後48時間の生存および非生存の細胞の定量(図15C)は、リンパ球生存の低下を示しており、これは増大したTGF−β濃度と相関している。
トランスフェクトされた成熟細胞系統上のCD69の結合は活性化細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)酵素のホスホリル化を誘導する(Zingoniら、2000)。TGF−β産生のCD69誘導により活性化される誘導経路を調べるために、ERK活性化の分析を行った。CD69結合は抗CD3刺激Tリンパ球におけるERK−1およびERK−2の活性化を誘導する(図15D)。ERKの活性化は5〜10分で既に検出され、そして最高値は15分に観察された。更に、Tリンパ球のERK活性化をPD098059の予備投与により防止した場合にはCD69誘導TGF−β放出の有意な低下が観察されており(図15B)、ERK活性化経路がTGF−β産生のCD69誘導に関与していることを示している。これらの結果は、ERKシグナル伝達を介したCD69シグナル伝達とTGF−β産生の間の直接の関連を明らかにするものであり、そして、リンパ球のホメオスタシスに対するCD69の重要な役割を示唆している。
(実施例14:抗CD69Abはインビボの抗腫瘍応答を増大させる)
RMA−S腫瘍担持マウスの腫瘍治療におけるインビボ機能の媒介におけるCD69の役割を調べるためにマウスmAbを選択した。MHCクラスI−RMA−S同系腫瘍細胞(腹腔内105)を投与したC57B6マウスは致命的腫瘍を発症し、動物の100%が死亡した(図16A)。マウスに腫瘍細胞の注射の前後にmAb抗CD69 2.2を数回投与した場合、80%のマウスが腫瘍を伴うことなく生存し(図16A);そして同じ抑制的傾向が程度は低かったが抗体の単回投与の後にも観察された(図16、データ示さず)。更にまた、SCIDマウスに抗CD69 2.2を投与した場合、RMA−S誘導腫瘍の成長が抑制された。これらの結果はmAb抗腫瘍作用の一部はTまたはBリンパ球の非存在下に起こることを示している。
更にまた、抗CD69投与マウスはRM−1腫瘍細胞を殺傷することができ、そして抗CD69 2.2投与マウスの肺には検出可能なRM−1転移は僅かであった(1.25±0.9)のに対し、アイソタイプコントロールマウスはRM−1肺転移を制限することができずRM−1細胞の104の静脈内注射の14日後には平均で21.50±5.5の転移が検出された。
(実施例15:抗CD69mAbは腹腔腫瘍成長の早期の段階に影響する)
腫瘍成長に対する抗CD69mAb投与のインビボ作用を、2x106RMA−S腫瘍細胞の腹腔内接種の3日後に腹腔細胞をex vivo分析することにより調べた。RMA−S細胞は、サイズフォワードスキャッタードFACS分析により特性化した場合、抗CD69 2.2mAb投与マウスの腹腔細胞分析では検出されなかった(3x106回収腫瘍細胞)のに対し、コントロールアイソタイプmAbを投与したマウスの腹腔細胞分析ではRMA−S細胞の過剰増殖が観察された(20x106回収腫瘍細胞)。抗CD69mAb投与RAG1−/−マウスの腹腔細胞分析でも同様の結果が観察され;コントロールmAb投与マウスではRMA−S細胞のみが過剰成育していたが、抗CD69投与マウスの75%では検出可能なRMA−S細胞はなかった(図17)。即ち、抗CD69誘導腫瘍細胞の排除は早期の免疫応答の間に起こっており、そしてTおよびBリンパ球の非存在下でも有効である。
(実施例16:WTおよびCD69欠損マウスにおけるDNP−KLHへの抗体の応答
抗体応答に対するCD69の作用を調べるために、DNP−KLHを野生型およびCD69欠損マウスに注射した。種々のアジュバント(CFAまたはAlum)および種々の免疫化経路(腹腔内または尾基部皮下)で試験した。更にLauzuricaら、(2000)Blood 95:2312−2320に記載されているDNP−KLH投与のプロトコルを改定した。抗原用量を100μg/注射に増量し、そして2回目の注射は第21日に行うことにより胚中心反応の十分な発生を可能にした。これらの実験の結果を図19に示す。
DNP−KLHの一次免疫化においては、Agの腹腔内投与により高水準のIgM応答が得られたが、CFA−DNP−KLHの皮下投与ではより高度な差(p=0.019)が得られた(図19)。従って、野生型とCD69欠損マウスとの間にはIgMに関する有意差は無かった。IgGサブタイプのレベルは、それが一次応答に相当し、野生型とCD69欠損マウスとの間の有意差が明らかにならなかったため(図示せず)、低値(1:2000血清希釈で測定)であった。
DNP−KLHの二次免疫化においては、腹腔内投与がIgMの誘導において最も有効であり、有意差は示されなかった(図19b)。IgGアイソタイプレベルは高値であった(結果は1:10000−1:20000血清希釈で表示)。最も該当する相違は投与経路とは無関係にCFA−DNP−KLHへの応答においてIgG2cに関してみとめられたが、腹腔内投与がより有効であった(図19b)。更にまた、IgG2bおよびIgG3は腹腔内CFA−DNP−KLHに応答して増大した(図19b)。
アジュバントに関してはCFAを使用した場合にのみ有意差があった。これらの結果はTh1を促進するアジュバント、例えばCFAは、AlumのようなTh2応答を増強するために使用されるアジュバントよりも容易に、CD69欠損マウスにおける悪化したTh1応答を検出可能にすることを示唆している。
また、DNP−KLHのi.p.投与がs.c.免疫化よりもより有効に抗体応答を与えたので、投与経路は異なる結果を示す。
更にまた、DNP−KLHは外部の抗原であり、II型コラーゲンは自己抗原に対する反応を促進するため、抗原の性質は免疫応答において異なった役割を果たすことができる。結果として、この系およびII型コラーゲンによる二次免疫化を使用した場合には、顕著な類似性、即ち、CD69欠損マウスにおけるC−II特異的IgG2c、IgG2bおよびIgG3の顕著な増加の所見がある。
(材料および方法)
マウス。マウスはCentro Nacional de Biotecnologia (Madrid,Spain)においてSPF条件下、認可されたプロトコルに従って飼育された。全ての実験はBALB/c遺伝子バックグラウンドにおいて実施したRAG2−/−試験におけるインビボの腫瘍攻撃を除き、C57BL/6遺伝子バックグラウンドにおいてマウスを使用して実施した。C57BL/6およびBALB/c野生型および遺伝子ターゲティングCD69−/−マウスは実験時には6〜12週齢であり、同腹仔または親が同腹仔である同齢の仔をコントロールとして使用した。RAG1−/−およびRAG2−/−マウスはJackson Labs(Bar Harbor,Maine)より購入した。RAG2−/−xCD69−/−マウスの作成のために、FACSによりCD3+細胞に関する血統を調べることによりRAG2遺伝子座の状況を追跡した。CD69遺伝子座の遺伝子タイピングは前に報告されている通りポリメラーゼ連鎖反応により実施した(Lauzuricaら、2000)。
CIAの誘導および評価。CFAは加熱殺菌M.tuberculosis(H37Ra;Difco,Detroit,Michigan)100mgとIFA(Sigma,St.Louis,Missouri)20mlを混合することにより調製した。ChickCII(Sigma,2mg/ml)を10mM酢酸中に4℃で一晩溶解し、等量のCFAと合わせた。マウスの尾基部に皮内注射し、第21日に報告されている通りブーストした(Champbellら、2000;Champbellら、2001)。加熱殺菌M.tuberculosis 1mg/mlと共にCFAを用いてDBA1マウス(Harlan,Madison,Wisconsin)に対しても同じプロトコルに従った。コントロールマウスはCIIを用いることなくCFAを投与した。関節炎の重症度はデジタルカリパスを用いて以下のスケール、即ち:等級0、浮腫なし;1、軽度の浮腫および紅斑;2、顕著な炎症;3、関節の強直、に従って、直接の観察によりモニタリングした。各四肢を等級付けし、動物当り12の最高可能スコアとした。
屠殺後、手掌を無作為に収集し、固定し、脱石灰化し、パラフィン包埋した。切片(5μm)をヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、炎症なし(0)、滑膜細胞層の軽度な肥厚および/または内層に一部炎症細胞(1)、滑膜内層の肥厚、内層の浸潤および局在化した軟骨の糜爛(2)、および滑膜空間の浸潤、パンヌス形成、軟骨崩壊および骨の糜爛(3)としてスコアした。
TGF−βのブロッキング。25μlPBS中2mg/mlのブロッキング抗TGF−β 1D11.16.8(マウスIgG1ハイブリドーマ、ATCC、Manassas,Virginiaより購入)(Daschら、1989)、PBSのみ、または非該当のコントロールのアイソタイプマッチmAbをCIIの二回目の注射(21d)以降2日おきに手掌の1つに皮下注射し、手掌の炎症をモニタリングした。
腫瘍攻撃マウスにおける活性TGF−βのインビボブロッキングは腫瘍接種から−3、−1および1日に、そして腫瘍接種後は毎週、TGF−β(1D11.16.8)に対するmAb0.5mgの投与により行った。
細胞増殖試験。200μlのRPMI培地(50μM2−MEおよび10%FCS含有)中のドレーニングLNおよび脾臓細胞(2x105)を変性CII(10分間煮沸)0〜50μg/mlと共に72時間37℃(5%CO2)で、96穴プレート中3連で培養した。培養の最後12時間、細胞を1μCi/穴の3H−TdR(Amersham,Little Chanfont,England)でパルスし、その後ガラス繊維フィルターに回収し、3H−TdRの取り込みを測定した。
抗CII抗体の検出。CIIに対するAbのELISAは以前に報告されている通り実施した(Campbellら、1998)。IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3またはIgM(Southern Biotechnology,Birmingham,Alabama)およびIgA(Sigma)に特異的なHRPコンジュゲート二次Abを使用した。
細胞の単離。脾細胞サブセットの陽性選択は全て、BD−Pharmingenより入手したCD11b、CD3、CD4およびCD8に対する特異的ビオチンコンジュゲート抗体および約98%の細胞純度を与えるビオチンバインダーダイナビーズ(Dynal A.S.,Oslo,Norway)を用いて実施した。マウス滑膜細胞はヒト滑膜組織に関して記載されている通り(26)、CIA WTマウスから単離し、その後のサブセットの精製は上記したとおり実施した。CD11b+およびCD3+滑膜細胞の陽性選択の後、滑膜細胞をビオチンCD45と共にインキュベートし、過剰のアビジン−磁気ビーズを用いて陰性選択した。残存するCD45陰性細胞はRNA抽出に使用した。American College of Rheumatology 1987基準(27)を満たした反応性関節炎、強直性脊髄炎およびRAを有する患者の炎症膝部から採取した滑膜溶出物からSF白血球を採取し、Ficoll−Hypaque(Pharmacia,Uppsala,Sweden)密度勾配遠心分離機により精製した。
RNase保護試験および定量的リアルタイムRT−PCR分析。関節をPolytron(登録商標)(Kinematica,Littau,Switzerland)でホモゲナイズし、全RNAをUltraspecRNA試薬(Biotecx,Houston,Texas)を用いて単離した。腫瘍攻撃実験においては、全RNAを未分画の腹腔細胞から抽出した。RNase保護試験はRiboquant MultiProbe RNase Protection Assay System(PharMingen,San Diego,California)を用いて2.5〜5μgのRNAに対して実施した。RT−PCRではDNaseI処理RNA2μgをMuLV RT(Roche Diagnostics Ltd,Lewes,UK)を用いて逆転写した。リアルタイムPCRは約200bp長の産物を生成する種々のエクソンからのプライマーを用いてLightcycler急速サーマルサイクラーシステム(Roche)において実施した。
抗CD69mAb。マウスCD69に特異的なネズミmAbは、CD69を発現するマウスpre−B細胞で免疫化したCD69−/−マウス(Lauzuricaら、2000)から得た脾細胞とのNS−1ミエローマ細胞の融合により作成した。CD69に特異的な抗体を精製し、インビトロサイトカイン産生試験において使用した。
抗CD69でのインビボ処置。CIAにおける抗CD69でのインビボ処置のために、2.2(IgG1)および2.3(IgG2a)マウス抗マウスCD69、300μgを予防用(d20および28)または治療用(d32および40)として腹腔内注射した。アイソタイプコントロールとして2.8(IgG1)および2.22(IgG2a)を使用した。次に手掌の炎症をモニタリングした。腫瘍攻撃wtマウスにおける抗CD69でのインビボ処置のためには、2.2(IgG1)マウス抗マウスCD69を500μg腹腔内注射(d.+4、+8および+12)するか、または、2.3(IgG2a)マウス抗マウスCD69、100μgを腹腔内注射(d.−1、+2、+4、および+8)した。SCIDマウスには2.2(IgG1)マウス抗マウスCD69を500μg腹腔内注射(d.−1および+6)した。RAG1−/−マウスには腫瘍接種の日に2.2(IgG1)マウス抗マウスCD69を500μg腹腔内注射した。
CIAにおけるサイトカイン産生の測定。関節組織の洗浄液におけるサイトカインの濃度を測定するために、隣接する滑膜を伴った膝蓋骨を、以前に報告されている通り(Lubbertsら、2000)膝関節から標準的な方法においてマウス屠殺時(第50日)に採取し、室温で1時間0.1%BSAを含有するRPMI−1640培地(200μl/膝蓋骨)中でインキュベートした。次に、活性および総量のTGF−β1(Emax ImmunoAssay System;Promega Corp.,Madison,Wisconsin)およびIL−1β、TNF−αおよびRANTES(OptEIA ELISA Sets;BD−Pharmingen)を培養上澄み中で定量した。インビトロサイトカイン産生については、マウス脾細胞(16時間5μg/ml ConA;Sigmaで予備刺激;次に、上記したとおり精製)または滑膜細胞を抗マウスCD69、クローンCD69.2.2(マウスIgG1)またはコントロールマウスIgG1
mAb(共に10μg/ml)+20μg/mlのFcフラグメント特異的ヤギ抗マウスIgG(F(ab’)2,Jackson Immunoresearch,West
Grove,Pennsylvania)と共にインキュベートした。次に活性および総量のTGF−β1、IL−1β、TNF−αおよびRANTESを上記したとおり24時間後に培地上澄み中で試験した。更に、炎症性関節疾患(RA、反応性関節炎、強直性脊髄炎)を有する患者から得たヒト滑膜液白血球に、架橋の存在下または非存在下、抗ヒトCD69 TP1/8またはアイソタイプコントロールmAbを1x106細胞/mlで処置した。TGF−β1は上記したとおり24時間後に培養上澄みにおいて試験した。
抗腫瘍応答におけるTGF−βおよびMCP−1産生およびELISA。インビトロ TGF−β産生については、C57BL/6またはBALB/cマウスのリンパ節および脾臓の単一細胞懸濁液由来の精製CD3+T細胞を入手した。CD3+Tリンパ球の単離のためには、細胞を抗MAC−1 mAbと共にインキュベートし、その後4℃でウサギ抗マウス/ラットIgG(DAKO,Denmark)でコーティングしたペトリ皿上で2パニングの工程を行った。CD3+細胞の平均の純度はフローサイトメトリー分析によれば>95%であった。Tリンパ球をプレート結合抗CD3 mAb(1μg/ml)で刺激(2x106細胞/ml)した。細胞を平底96穴プレート中の血清非含有Stem−Span(Stem Cell Technologies Inc.,Vancouver,BC)培地200μl中に添加した。精製抗CD69、クローンCD69.2.2(IgG1−κ)またはコントロールマウスIgG1 mAbを20μg/mlで添加した。架橋のためには、Fc特異的ヤギ抗マウスIgG F(ab’)2(Jackson Immunoresearch Laboratories,Inc.,West Grove,PA)のF(ab’)2フラグメントを終濃度20μg/mlで添加した。PD98059(Calbiochem,San Diego,CA)はmAbの添加1時間前に添加し、そしてPD98059の終濃度は20μMとした。培養液をインキュベート(37℃、5% CO2)し、72時間後に上澄みを採取し、そして、分泌されたTGF−βを、TGF−β1Emax ImmunoAssay System(Promega Corp.,Madison,WI)ELISAキットを用いて、製造元のプロトコルに従って試験した。MCP−1産生を測定するために、チオグリコレート溶液(3% w/v;Sigma,St.Louis,MO)1mlをCD69−/−マウスおよびwtマウスに腹腔内注射した。3日後にマウスを安楽死させ、白血球浸潤物を5mlの2%FCS含有冷RPMI 1640を用いて腹腔洗浄により回収した。腹腔細胞を平底24穴プレート中の完全培地1mlに添加し、2x106細胞/mlで、LPS(1μg/ml)で一夜刺激した。培養上澄みを回収し、マウスMCP−1 OptEIA ELISA Set(BD PharMingen)を用いてMCP−1を試験した。
細胞培養。RM−1前立腺癌(H−2b)(DrT.Thompson,Baylor
College of Medicine,Houston,TXより寄贈)、YAC−1(H−2a)、RMA(H−2b)リンパ腫細胞系統およびRMA−S(H−2b)変異リンパ腫細胞(ローシャーウィルス誘導ネズミ細胞系統RBL−5由来であり、MHCクラスI分子のペプチドローディングに関して欠損)および300.19 pre−B細胞を、10%熱不活性化ウシ胎児血清(FCS)、2mmL−グルタミン、100U/mlペニシリンおよび100ug/mlストレプトマイシン(Gibco−Life Sciences,Gaithersburg,MD)を添加したRPMI1640培地中、37℃ 5% CO2下に培養した。
インビボの腫瘍制御。PBS 0.2ml中の腫瘍細胞(RMA、RMA−SまたはRM−1)を未処置のwtおよびCD69−/−マウス、および、抗体枯渇マウスに、前述の通り、腹腔内または皮下注射した。NK細胞枯渇マウスを用いて実施した実験においては、腫瘍接種1日前、および腫瘍攻撃後+2日および+4日に、100μlのウサギ抗Asialo−GM−1(Wako Chemicals,Richmond,VA)を動物に腹腔内注射した。リンパ球T CD4+枯渇に関しては、−1日(腫瘍攻撃前)および腫瘍攻撃後+2日および+4日に、GK1.5抗CD4またはアイソタイプコントロールmAb(100μl/注射)で、マウスを処置した。12週間腫瘍腹水症発症について毎日体重をモニタリングすることによりマウスを観察した。マウスは不可逆的な腫瘍成長の明らかな兆候に相当する体重25%増となり、動物が瀕死状態となった時点で倫理的理由から屠殺した。
RM−1肺コロニー形成。100μl PBSに懸濁したRM−1細胞(1x104)をCD69−/−およびwtマウスの尾部静脈に注射した。マウスを14日後に安楽死させ、肺を摘出し、4%パラホルムアルデヒド溶液に固定し、個々の表面の肺転移を解剖顕微鏡を使用して計数した。
フローサイトメトリー。脾臓および腹腔の滲出細胞(1x106)をまずブロッキング溶液(5%熱不活性化ウシ胎児血清、15%熱不活性化ウサギ血清、0.02%アジ化ナトリウムおよび2.4G2 mAbを添加したPBS)と共に予備インキュベートすることによりFcγレセプターへのAbの結合を回避した。次に細胞を30分間氷上でFITC−またはPE−コンジュゲート抗体またはビオチニル化抗体で、その後、ストレプトアビジン−FITCまたは−PE(Southern Biotech,Birmingham,Al.)で染色した。以下の抗体、すなわち抗DX5(DX5)、−2B4(2B4)、−CD3(145−2C11)、−B220/CD45(RA3−6B2)、−CD4(GK1.5)、−CD8(53.6.7)、−CD5(53−7.3)、−CD11b(M1/70)および−CD69(H1.2F3)(全てPharMingen,San Diego,CA)を使用した。最後に細胞を洗浄し、そして、104生存細胞を計数し、CellQuestソフトウエア(Becton Dickinson)を使用しながら、FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson,Mountain View,CA)上で分析した。腹腔に移行した細胞の数をCoulter Multisizer II(Beckton Coulter,Fullertone,Ca)を用いて測定した。
IL−2活性化NK細胞。精製した脾臓NK細胞はCELLection Biotin Binder Kit (Dynal,Oslo,Norway)およびビオチニル化抗DX5抗体を使用して製造元の指示書に従って取得した。慨すれば、生存単一細胞懸濁液をポリスチレン組織培養皿(Becton Dickinson,Mountain
View,CA)上でインキュベートした(37℃で1時間)。非付着脾細胞をビオチニル化抗DX5抗体と共にインキュベート(15分、4℃)し、2回洗浄し、CELLectionビオチン磁気Dynabeads(1x106細胞当り1x107磁気ビーズ)を添加して抗体コーティング細胞を捕獲した。細胞純度は常時>95% DX5+であった。NK細胞を20%不活性化FCSを含有する完全培地中、単独または1000UI/mlヒトrIL−2と共に培養した(72時間)。
51Cr放出試験。直接的NK細胞毒性活性は標準的な51Cr放出試験により評価した。全ての実験において、5x103Na2 51CrO4標識YAC−1標的細胞を記載した比率でエフェクター細胞と混合した(4時間、37℃)。自発的な51Cr放出は培地のみと共に標的細胞をインキュベートすることにより測定し;最大放出は終濃度2.5%でトリトンX100を添加することにより測定した。特異的細胞溶解は%特異的溶解=[(試料cpm−自発的cpm)/(最大cpm−自発的cpm)]x100として計算した。自発的51Cr放出は常時<10%であり、全実験は3連で実施した。
細胞死試験。攻撃マウス(105RM−1で3日)の脾細胞(4x106細胞/ml)を24穴プレート(Costar,Cambridge,MA)中で培養し培養開始24時間後に細胞死を試験した。細胞周期をモニタリングし、細胞をヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、そして、XLサイトメーター(Beckman Coulter,Fullertone,CA)上のフローサイトメトリー分析によりアポトーシスを測定した。データは平均±SE(n=9)で示す。カスパーゼ−3活性は製造元のプロトコルに従ってPhiPhiLux−G1D2基質溶液(OncoImmunin,College Park,MD)と共にインキュベートすることにより培養開始後48時間に試験した。フローサイトメトリー分析はXLサイトメーターを用いてインキュベーション時間の終り60分以内に実施した。未投与マウスの腹腔細胞(1x106)を24穴プレート中で培養し、所定時間においてPI染色により細胞死を調べた。PI+染色試料をアポトーシス細胞とみなした。
ウエスタンブロット分析。C57BL/6 T細胞を血清非含有培地中プレート結合抗CD3(5μg/ml)で予備活性化した(37℃、一夜)。細胞を回収し、2回洗浄し、次に血清非含有培地中で4時間休止させた。予備活性化T細胞を抗CD69(IgG1)またはコントロールマウスIgG1 mAb(各々10μg/ml)を添加した培地中、氷上で30分間インキュベートした。細胞を冷培地で2回洗浄し、Fc特異的ヤギ抗マウスIgGF(ab’)2(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.,West Grove,PA)を37℃の培地中20μg/mlで添加した。所定の時間において、氷冷PBSを添加することにより反応を停止し、その後、細胞を遠心分離した。ペレット化した細胞をプロテアーゼおよびホスファターゼインヒビターを含有する氷冷細胞溶解緩衝液(62.5mM Tris−HCl、pH6.8、25℃、2% w/v SDS、10%グリセロール、50mM DTT、0.01% w/vブロモフェノールブルー)中で細胞溶解した。不溶性細胞断片を除去するために遠心分離(13,000g、20分)の後、細胞溶解液上澄みを12%SDS−PAGEゲル上で分離し、Immun−BlotPVDF膜(BioRad,Hercules,CA)上に移し、そして所定の抗体でブロッティングした。ポリクローナル抗ホスホErk 1/2抗体はCalbiochem(San Diego,CA)から入手した。ブロットをはがし、Erkキナーゼ(Erk 1/2)モノクローナル抗体(Zymed Lab.Inc.San Francisco,CA)で再プローブし、等しいタンパク質のロード量を確認した。ウエスタンブロットは抗ウサギHRPまたは抗マウスHRPを使用して実施し、増強されたケミルミネセンスにより可視化した。
細胞の生存性の分析。T細胞はTGF−β産生試験と同様に培養し、24時間および48時間の培養の後、トリパンブルー添加により細胞の生存性を調べた。
(その他の実施形態)
本発明の特定の実施形態の上述した詳細な説明から早期活性化分子のターゲティングに基づいた免疫調節の独特の方法が説明されたことは明らかである。本明細書においては特定の実施形態を詳細に開示したが、これは説明を目的にした例示に過ぎず、添付する請求項の範囲を限定するものではない。特に、請求項により定義される本発明の精神および範囲から外れることなく本発明の置き換え、改変および修正を行うことができると考えられる。例えば特定の型の組織または転位すべき特定のエフェクターの選択は、本明細書に記載した実施形態の知識が在れば当業者には日常的な事項であると考えられる。
(参考文献)