JP2011148754A - 抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムおよびその製造方法 - Google Patents

抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性および耐候性を有し、細菌、黴、藻類、原生動物といった数多くの微生物に対し殺滅的効果を示し、しかも持続的に抗菌力を発揮することができるようにした徐放性をも併せ持つ、その用途の拡大に資する極めて有用な無機−有機抗菌性複合体とその製造方法の提供。
【解決手段】ケイ酸アルミニウム中に、下記一般式(1)で表される化合物が含有されている抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムおよびその製造方法。
Figure 2011148754

【選択図】なし

Description

本発明は工業用抗菌剤およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、非晶質ケイ酸アルミニウムに有機系抗菌剤を含有させることで抗菌性および抗黴性を付与したことを特徴とし、徐放的に、抗菌性および抗黴性を有する有機化合物を溶出し、しかも、耐熱性および耐紫外線などの耐候性に優れた、広範な各種用途への適用が可能な抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムおよびその製造方法に関する。
従来、有機系抗菌性化合物としては、塩化ベンザルコニウムや塩化セチルピリジニウムなどの第四級アンモニウム塩系、エタノールやイソプロパノールなどのアルコール系、ホルマリンやグリオキザールなどのアルデヒド系、石炭酸、クレゾール或いはキシレノールなどのフェノール系、ソルビン酸や安息香酸などのカルボン酸系、クロルヘキシジンやn−ドデシルグアニジンアセテートなどのグアニジン系、その他、多くのものが知られている。
しかしながら、上述した有機系抗菌性化合物は、細菌や黴に対して有効な抗菌剤ではあるが、耐熱性に乏しく、蒸気圧も比較的高く、また、水やその他の溶媒への溶解度が高いという特性をもつため、使用態様によっては利用できない場合があった。例えば、繊維、紙、フィルム、プラスチック、ゴムなどへの練り込みのような加熱を必要とする場合や、塗料やシーリング材などへの配合のような抗菌剤の有機溶媒中における高い分散性を必要とする場合や、開放空間や流水中において長期間にわたって抗菌効果を持続させようとする場合においては、十分な効果が得られにくく、不適当であった。
一方、有機系のものに比べて耐熱性などに優れる無機系抗菌性化合物としては、アルミノケイ酸塩、フィロケイ酸塩に属する粘土鉱物やテクトケイ酸塩に属するゼオライトに、抗菌作用を有する銀、銅、亜鉛などの金属イオンをイオン交換により担持させた抗菌剤が提案されている(特許文献1等参照)。また、特許文献2では、ABS系樹脂組成物の抗菌組成物として銀を担持させたリン酸塩系抗菌剤についての提案がある。
しかしながら、金属イオンを担持した抗菌剤は耐変色性に問題があり、また、きれいな水環境下での金属イオンの抗菌性は高いものの、有機物など夾雑物量の多い系において、その抗菌性は著しく低下するという問題がある。さらには、細菌に対する抗菌力は期待できるものの、黴、藻類に対する抑制力は期待できない。
このような従来の有機系抗菌性化合物と無機系抗菌性化合物との問題点を解決するために、結晶性層状無機塩などの層間に抗菌性化合物を導入した無機−有機抗菌性複合体とする技術が開発されている。この手法によって、有機系抗菌性化合物の欠点を克服し、耐熱性を高め、蒸気圧ならびに溶解度を低くすることに成功し、その結果、下記に挙げるように、繊維、紙、フィルム、プラスチック、ゴムなどへの練り込みができ、有機溶媒中での分散性を向上させた、抗菌効果の持続性の高い抗菌剤が多く提案されている。
例えば、特許文献3では、結晶性層状リン酸塩の層間に脂肪族第一アミンを挿入し、脂肪族第一アミンの熱安定性を向上させ、疎水性を付与させた無機−有機複合体を提案しており、その中で、脂肪族第一アミンの高温下での使用、また、その疎水性に基づき、樹脂などでの高い分散性が実現されることについて言及している。また、特許文献4〜6では、抗菌作用を有する第四級アンモニウム塩若しくはチアゾール系化合物を、トリポリリン酸アルミニウムなどの層状リン酸塩の層間に担持させることにより、層間化合物が、抗菌効果を有すること以外にも熱安定性や溶媒に対する安定性などの利点があることを記載している。例えば、特許文献5では、トリポリリン酸アルミニウムに塩化ベンザルコニウムを挿入した化合物の熱安定性は、示差/熱重量変化の結果、塩化ベンザルコニウムの燃焼による重量減少開始温度は140℃から200℃へと上昇したことを記載している。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、前記した従来技術のいずれにおいても、徐放性抗菌剤に応用される有機系抗菌剤に問題がある。つまり、塩化ベンザルコニウムに代表される第四級アンモニウム塩は、細菌に対する抗菌性に優れているが、黴に対して抗菌性は劣る。一方、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾールなどのイミダゾール系化合物は抗黴性に優れているが、細菌に対する抗菌性は劣っている。従って、上述したような徐放性抗菌剤の適用は、その抗菌剤を使用する環境の微生物相によって制限されるという問題があり、数多くの微生物に対し有効な抗菌性を発揮させるためには、上述した化合物を大量に使用するか、若しくは化合物を併用する必要があるといった使用状態への規制を伴う。
さらに、本発明者らの検討によれば、無機担体として層状リン酸塩を用いている点についても問題がある。すなわち、このような構成のリン酸塩系抗菌剤を燃焼した場合、刺激性ガス、有毒なリン酸化物や有機リン系化合物の生成が危惧される。このため、人体や環境に対する毒性の面から、天然にも存在する無機塩を担体として利用することが望まれる。
これに対し、無機担体をリン酸塩から層状ケイ酸塩に変え、抗菌性有機化合物を担持させることにより層状ケイ酸塩化合物の分散性を高め、かつ、抗菌性有機化合物の徐放的溶出能を付与した化合物についての提案もある。例えば、特許文献7では、層状ケイ酸塩の層間にトリアゾール系防黴性有機化合物を担持させた防黴剤が提案されており、特許文献8では、アルキルアンモニウムイオンで処理した、防藻、防黴性層状ケイ酸塩が開示されている。また、特許文献9では、抗菌性および防黴性に優れ、かつ、耐熱性、耐紫外線性などの耐侯性にも優れた、イソチアゾール系化合物および/またはイミダゾール系化合物を層状ケイ酸塩の層間に担持させた化合物を提案している。
このように、抗菌性有機化合物を層状ケイ酸塩に挿入させてなる徐放性抗菌剤が種々開発されてきたが、本発明者らの検討によれば、前述したと同様に、これらの特許文献において、徐放性抗菌剤に応用されている有機系抗菌剤に問題がある。つまり、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル−エタノールなどのトリアゾール系化合物、そして2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾールなどのイミダゾール系化合物は、抗黴性に優れているものの、細菌に対する抗菌性は劣っている。一方、アルキルアンモニウムイオンなどの第四級アンモニウム塩や4−メチル−5−クロロイソチアゾリン−3−オンなどのイソチアゾロン系化合物は、細菌に対する抗菌性に優れているものの、黴に対しては劣る。従って、上述したような徐放性抗菌剤の適用は、その抗菌剤を使用する環境の微生物相によって制限されるという問題があり、数多くの微生物に対し有効な抗菌性を発揮させるためには、上述した化合物を大量に使用するか、若しくは化合物を併用する必要があるといった使用状態への規制を伴う。
このような問題点を解決するため、特許文献9では、細菌に対して効果の高いイソチアゾール系化合物と、黴に対して効果の高いイミダゾール系化合物を併用した層状ケイ酸塩を抗菌組成物として用いている。しかしながら、本発明者らは、未だ不十分であり、その抗菌スペクトルおよびその抗菌力に十分改良の余地があると考えている。
この点を改善した無機−有機抗菌性複合体として、下記一般式の化合物を層状ケイ酸塩であるモンモリロナイトの層間に担持させたものが提案されている(特許文献10参照)。
Figure 2011148754
(ただし、上記一般式において、R1およびR4は、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐の同一または異なるアルキレン基であり、R2およびR5は、水素原子、同一または異なるハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R3は、炭素数2〜12の直鎖若しくは分岐のアルキレン基であり、R6は、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である。)
前記一般式の化合物は、特許文献11〜14で言及されているように、抗菌性、抗黴性、防藻性に優れ、さらに、原生動物や原虫に対しても優れた活性を有している。従って、特許文献10の抗菌剤は、生物相に影響されることなく、有効な抗菌剤であると考えられる。
しかし、前記一般式の化合物は、抗菌剤の徐放性に着目すると、その機能は高いとは言い難く、上記化合物のみで継続的かつ有効な抗菌力を発揮させるという点では課題がある。かかる課題を解決することを目的として、従来技術と同様に、上記化合物を担持させた抗菌性層状ケイ酸塩を抗菌組成物とした場合には、製剤中における上記化合物の混合比率を高めなければならないという問題がある。この場合には、従来技術と同様に、製品の性能、品質に影響を及ぼす可能性がある。
上記した問題に鑑み、徐放性を高めるということに着目すると、前記した特許文献1または2に記載されている無定型および定型状アルミノケイ酸塩のように、細孔径が大きく、広く分布している無機物を担体として使用すればよいと考えられる。例えば、前記特許文献1では、定型状非晶質テクトケイ酸塩に、ヒノキチオールを収着・吸着させたアルミノケイ酸塩−有機系抗菌性化合物の組み合わせの抗菌剤の製造およびその抗菌性評価を実施している。しかし、本発明者らは、この無機−有機抗菌性複合体においても、収着・吸着させる抗菌剤の抗菌力と抗菌スペクトルに問題があり、その有用性は低く、改善の余地があると考えている。
以上のように、抗菌性、防黴性、防藻性のいずれかを有する有機系抗菌剤を無機塩に担持した無機−有機抗菌性複合体は、これまでに、層状リン酸塩−有機系抗菌剤、層状ケイ酸塩−有機系抗菌剤、アルミノケイ酸塩−有機系抗菌剤の組み合わせで開発がなされており、それらは、耐熱、耐紫外線性などの耐候性および耐変色性、そして有機系抗菌成分の徐放性に関して改善されたものとなっている。しかしながら、従来のものは、その抗菌性、防黴性並びに防藻性のすべてを十分に満足し、耐熱性および耐候性を有し、しかも徐放性をも併せ持った複合体の開発までには至っておらず、本発明者らは、担体となる無機塩と、抗菌成分となる有機系抗菌剤との組み合わせについての再検討が必要である、との認識を持つに至った。
特開平3−120204号公報 特開平9−12836号公報 特開平5−32406号公報 特開平5−124806号公報 特開平5−186208号公報 特開平5−213609号公報 特開平10−176124号公報 特開2003−342527号公報 特開2004−155967号公報 特開2006−45074号公報 特開2006−1889号公報 特開2006−22031号公報 特開2006−21105号公報 特開2006−22069号公報
本発明は、上記した従来技術における課題に着目してなされたものであり、耐熱性および耐候性を有し、細菌、黴、藻類、原生動物といった数多くの微生物に対し殺滅的効果を示し、しかも持続的に抗菌力を発揮することができるようにした徐放性をも併せ持つ、その用途の拡大に資する極めて有用な無機−有機抗菌性複合体とその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、ケイ酸アルミニウム中に、下記一般式(1)で表される化合物が含有されていることを特徴とする抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムを提供する。
Figure 2011148754
(ただし、上記一般式(1)において、R1およびR4は、何もないかまたは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐の同一または異なるアルキレン基であり、R2およびR5は、水素原子、同一または異なるハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R3は、炭素数2〜12の直鎖若しくは分岐のアルキレン基であり、R6は、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である。)
上記の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの好ましい形態としては、前記ケイ酸アルミニウムが、化学式Al23・9SiO2・xH2O(式中のxは1以上の整数を示す)で表される化合物であることが挙げられる。
また、上記の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの好ましい形態としては、前記一般式(1)において、R1およびR4は、ピリジン環の3または4位置に結合しているメチレン基であり、R2およびR5は、水素原子であり、R3は、テトラメチレン基であり、R6は、オクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれる基であり、Zは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)であること;前記一般式(1)で表される化合物が、下記化合物(1)〜(5)で表される少なくとも1種の化合物であること;前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、ケイ酸アルミニウム100質量部あたり5〜45質量部であることが挙げられる。
Figure 2011148754
Figure 2011148754
Figure 2011148754
Figure 2011148754
Figure 2011148754
さらに、本発明の別の実施形態は、化学式Al23・9SiO2・xH2O(式中のxは1以上の整数を示す)で表されるケイ酸アルミニウムと、第四級アンモニウム塩とした前記一般式(1)で表される化合物とを含水溶媒中で接触させた後、固液分離し、乾燥させることを特徴とする抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの製造方法を提供する。特に好ましい形態としては、第四級アンモニウム塩とした前記一般式(1)で表される化合物が、前記化合物(1)〜(5)のいずれかであり、含水溶媒が水である抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの製造方法が挙げられる。
本発明によれば、ケイ酸アルミニウムに収着・吸着させた状態でありながら、上記一般式(1)の化合物が本来有している、抗菌性、抗黴性、防藻性のいずれにも優れ、さらに原生動物、原虫に対しても優れた活性を有するという有用な性能が損なわれることがないため、数多くの微生物に対し有効な抗菌性・抗黴性を示し、しかも、徐放的に該化合物が溶出する特性のものとできることから、長期間にわたって、上記の優れた性能を発揮することのできる抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムが提供される。また、本発明によれば、上記一般式(1)の化合物をケイ酸アルミニウムに収着・吸着させたことによって、該化合物の熱安定性は著しく向上するため、耐紫外線などを含む耐候性および耐変色性に優れた抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムが提供される。このため、従来、困難であった、繊維、紙、フィルム、プラスチック、ゴムなどに配合することが可能になり、その用途の拡大が期待できる。また、本発明の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムは、塗料やシーリング材の抗菌組成物としての応用も期待でき、その利用価値は多大である。さらに、本発明の製造方法によれば、上記した優れた性能を有する抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムを簡易な方法で大量に製造することができるため、その工業的価値をより高めることができる。
抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムについての熱分析結果(実線:TG、波線:DTA)。 化合物(3)についての熱分析結果(実線:TG、波線:DTA)。 未処理ケイ酸アルミニウムについての熱分析結果(実線:TG、波線:DTA)。 抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムについての熱分析結果。 化合物(3)についての熱分析結果。 未処理ケイ酸アルミニウムについての熱分析結果。
本発明の好ましい形態を挙げて本発明を詳細に説明する。先に述べた本発明の目的を達成のため、本発明者らは、まず、基本的には、有機系抗菌剤の中でも、特許文献11〜14で言及しているように、抗菌性、抗黴性、防藻性のいずれにも優れ、さらに、細菌のみならず、原生動物や原虫に対しても優れた活性を有している前記の一般式で表されるような抗菌性・抗黴性化合物を、無機塩に収着・吸着させる有機系抗菌剤として適用することが有用であると考えて、この抗菌性・抗黴性化合物と、これらを収着・吸着させる無機塩の組み合わせについて鋭意検討を行った。
その結果、抗菌性・抗黴性化合物としては、下記の一般式(1)で表わされる化合物、特には、下記に示す化合物(1)〜(5)を用いることが有用であることを見出した。さらに、これらの化合物を収着・吸着させるための無機塩としては、アルミノケイ酸塩が優れており、より好ましくは、化学式Al23・9SiO2・xH2O(式中のxは1以上の整数を示す)で表されるケイ酸アルミニウムが、抗菌性・抗黴性化合物である一般式(1)の化合物の支持担体として最も優れており、かかる構成の複合体とした場合に、抗菌性・抗黴性化合物の徐放性に優れることは勿論、耐熱性、耐候性、耐変色性の点でも優れたものとなることを見出した。また、ケイ酸アルミニウムは、天然に存在する無機化合物であるため、その製品の製造時における取り扱いや、使用後の焼却などによる廃棄において安全性の高い化合物と考えられ、この点からも本発明の構成は非常に有用である。
Figure 2011148754
(ただし、上記一般式(1)において、R1およびR4は、何もないかまたは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐の同一または異なるアルキレン基であり、R2およびR5は、水素原子、同一または異なるハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R3は、炭素数2〜12の直鎖若しくは分岐のアルキレン基であり、R6は、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である。)
Figure 2011148754
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Figure 2011148754
Figure 2011148754
以上のように、本発明の技術的特徴は、ケイ酸アルミニウム、より好ましくは、化学式Al23・9SiO2・xH2O(式中のxは1以上の整数を示す)(以下、単にAl23・9SiO2・xH2Oと記載する)で表されるケイ酸アルミニウムに、前記一般式(1)の化合物を収着・吸着させることによって、従来の技術では達成することができなかった本発明が目的とする効果を発揮し得る抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムを見出した点にある。前述した通り、従来の技術では、本発明の構成からなる無機−有機抗菌性複合体についての開示はされていない。また、前記したように、かかる構成の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムは、高い熱安定性、耐候性、耐変色性を備え、細菌、黴、藻類、原生動物といった数多くの微生物に対し殺滅的効果を示し、しかも、持続的に抗菌力を発揮する徐放的抗菌力を併せ持つ、従来の技術では達成し得なかった極めて有用なものとなる。
本発明の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムを構成する成分について、さらに詳細に説明する。本発明の組成物は、無機物であるケイ酸アルミニウムの構造中に、前記一般式(1)の化合物を収着・吸着させたものであるが、担体として用いるケイ酸アルミニウムは、化学式Al23・9SiO2・xH2Oで表される固体酸を有した非晶質ケイ酸アルミニウムであることが特に好ましい。また、ケイ酸アルミニウムの平均粒径は、350μm以下の粉末が好ましく、より好ましくは、平均粒径0.02〜200μmの粉末であり、さらに粒度分布が狭く、均一な粒径であることがよい。このようなサイズの粉体を用いることで、前記一般式(1)の化合物を効率よく収着・吸着させることができ、また徐放的抗菌効果が得られる。さらに、繊維、紙、フィルム、プラスチック、ゴム、塗料、シーリング材などの抗菌性組成物としての応用を視野に入れると、製品の外観および性質に影響しないものと考えられ、このようなサイズが好ましい。また、抗菌性・抗黴性化合物である一般式(1)の化合物は、前記した特開2006−45074号公報等に記載された方法によって得ることができる。
本発明の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの製造方法について説明する。本発明の製造方法は、化学式Al23・9SiO2・xH2Oで表されるケイ酸アルミニウムと、第四級アンモニウム塩とした前記一般式(1)で表される化合物とを含水溶媒中で接触させた後、固液分離し、乾燥させることを特徴とする。本発明の製造方法によれば、目的とする抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムを簡易な方法でありながら、大量に製造することができる。
本発明の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの製造に当たっては、第四級アンモニウム塩とした上記一般式(1)の化合物を含む水性溶液に、化学式Al23・9SiO2・xH2Oで表されるケイ酸アルミニウムを接触させることが好ましい。上記ケイ酸アルミニウムは、その構造中に強い固体酸を有しているため、イオン交換により、第四級アンモニウム塩とした上記一般式(1)の化合物がケイ酸アルミニウムに容易に収着されると考えられる。ただし、収着は、イオン交換による収着のみに限ったものではない。
このように本発明の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムは、上記したような製造方法によって得ることができるが、ケイ酸アルミニウム構造中の固体酸とのイオン交換を利用することで、優れた抗菌性化合物である一般式(1)の化合物は、ケイ酸アルミニウム構造中に収着され、この結果、ケイ酸アルミニウムに、良好な状態で抗菌性・抗黴性が付与されたものとなる。
上記したような方法で容易に得ることのできる本発明の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムは、前記したようなケイ酸アルミニウム100質量部に対して、前記一般式(1)の化合物が5〜45質量部程度、収着されて含有された構成であることが好ましい。含有量が、5質量部未満であると、抗菌性・抗黴性が十分でなかったり、長期間に渡って効果が維持できない場合があり好ましくなく、一方、45質量部程度、収着されていれば、長期間に渡って安定した効果が維持できるので製品としては十分である。
ケイ酸アルミニウムと、前記化合物(1)〜(5)に代表されるような上記一般式(1)の化合物との接触は、含水溶媒中で、ケイ酸アルミニウムと上記一般式(1)の化合物を混合撹拌させればよい。含水溶媒に用いる有機溶媒は、水と任意混合可能であればよい。本発明で使用し得る含水溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノールなどの低級アルコール類と水の混合溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶媒と水の混合溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒と水の混合溶媒、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの極性溶媒と水の混合溶媒などが挙げられる。しかし、ケイ酸アルミニウムに最も効率よく、例えば、前記した化合物(1)〜(5)を収着・吸着させるためには、水が最適である。
ケイ酸アルミニウムと上記一般式(1)の化合物の接触方法としては、特に限定されず、上述したような含水溶媒中で、ケイ酸アルミニウムと、第四級アンモニウム塩とした上記一般式(1)の化合物を、撹拌子または電動式撹拌棒を用いて混合すればよい。上記一般式(1)の化合物を含む含水溶媒中に、撹拌条件の下、ケイ酸アルミニウムをゆっくりと継続して少量ずつ加えるのが好適である。例えば、後述した実施例1に記載のように、ケイ酸アルミニウム5gを加える場合、10分以上かけて添加するのが好ましい。
この際の撹拌温度は、含水溶媒の沸点以下であれば特に制限はないが、室温から80℃であることが好ましい。
以上のようにして、第四級アンモニウム塩とした上記一般式(1)の化合物を、ケイ酸アルミニウムに収着・吸着させた後、固相を分離し、洗浄し、余剰の上記一般式(1)の化合物を除去した後、乾燥することによって、ケイ酸アルミニウムの構造中に、上記一般式(1)の化合物を収着・吸着させてなるケイ酸アルミニウムが得られる。上記の方法は極めて簡易であり、かかる方法によって、本発明の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムを、効率よく、簡易かつ大量に製造することができる。
上記のようにして得られる本発明の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムは、その構造中に、上記一般式(1)の化合物が収着・吸着されたものとなるが、このことは、本発明を特徴づける重要な要素であると言え、かかる構成によって、本発明の効果を十分に発揮し得るものになる。すなわち、このような構成のものは、抗菌性、防黴性、防藻性を示し、しかも、徐放的に上記一般式(1)の化合物を安定して溶出することで、抗菌、防黴、防腐、防藻効果の持続性を有するものとなる。また、上記一般式(1)の化合物をケイ酸アルミニウムに収着・吸着させたことによって、上記一般式(1)の化合物の、耐熱性、耐紫外線性および耐変色性は明らかに向上する。
以下に実施例および試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
<実施例1>
[上記化合物(3)を収着・吸着させた抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの製造(複合体1)]
2gの化合物(3)(商品名:ハイジェニア タマ化学工業株式会社製)を蒸留水20mlに溶解し、60℃に加温し撹拌した。この溶液に、十分に真空乾燥したケイ酸アルミニウム[キョーワード700SEN、粒度分布150〜350μm(80.0%)、協和化学工業株式会社製]5gを少量ずつ、10分間を要して加えた。添加後、さらに60℃加温下で30分撹拌した。次に、室温まで冷却後、撹拌した溶液を濾過し、蒸留水10mlで洗浄して合成物を得た。これを40℃にて真空下で十分乾燥させた。乾燥後、乳鉢で粉砕を行って、抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムである複合体1を6.16g得た。
<実施例2>
[上記化合物(3)を収着・吸着させた抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの製造(複合体2)]
2gの化合物(3)(商品名:ハイジェニア タマ化学工業株式会社製)を蒸留水20mlに溶解し、60℃に加温し撹拌した。この溶液に十分に真空乾燥したケイ酸アルミニウム(キョーワード700PEL、粒度分布45μm以下(95.9%)、協和化学工業株式会社製)5gを少量ずつ、10分要して加えた。添加後、さらに60℃加温下で30分撹拌した。次に、室温まで冷却後、撹拌した溶液を濾過し、蒸留水10mlで洗浄して合成物を得た。これを40℃にて真空下で十分乾燥させた。乾燥後、乳鉢で粉砕を行って、抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムである複合体2を6.15g得た。
<実施例3>
[上記化合物(1)を収着・吸着させた抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの製造(複合体3)]
2gの化合物(1)を蒸留水20mlに溶解し、60℃に加温し撹拌した。この溶液に十分に真空乾燥したケイ酸アルミニウム(キョーワード700SEN)5gを少量ずつ、10分要して加えた。添加後、さらに60℃加温下で30分撹拌した。次に、室温まで冷却後、撹拌した溶液を濾過し、蒸留水10mlで洗浄して合成物を得た。これを40℃にて真空下で十分乾燥させた。乾燥後、乳鉢で粉砕を行って、抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムである複合体3を6.03g得た。
<実施例4>
[上記化合物(2)を収着・吸着させた抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの製造(複合体4)]
2gの上記化合物(2)を蒸留水20mlに溶解し、60℃に加温し撹拌した。この溶液に十分に真空乾燥したケイ酸アルミニウム(キョーワード700SEN)5gを少量ずつ、10分要して加えた。添加後、さらに60℃加温下で30分撹拌した。次に、室温まで冷却後、撹拌した溶液を濾過し、蒸留水10mlで洗浄して合成物を得た。これを40℃にて真空下で十分乾燥させた。乾燥後、乳鉢で粉砕を行って、抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムである複合体4を6.15g得た。
<実施例5>
[上記化合物(4)を収着・吸着させた抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの製造(複合体5)]
2gの上記化合物(4)を蒸留水20mlに溶解し、60℃に加温し撹拌した。この溶液に十分に真空乾燥したケイ酸アルミニウム(キョーワード700SEN)5gを少量ずつ、10分要して加えた。添加後、さらに60℃加温下で30分撹拌した。次に、室温まで冷却後、撹拌した溶液を濾過し、蒸留水10mlで洗浄して合成物を得た。これを40℃にて真空下で十分乾燥させた。乾燥後、乳鉢で粉砕を行って、抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムである複合体5を6.33g得た。
<実施例6>
[上記化合物(5)を収着・吸着させた抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの製造(複合体6)]
2gの化合物(5)を蒸留水20mlに溶解し、60℃に加温し撹拌した。この溶液に十分に真空乾燥したケイ酸アルミニウム(キョーワード700SEN)5gを少量ずつ、10分要して加えた。添加後、さらに60℃加温下で30分撹拌した。次に、室温まで冷却後、撹拌した溶液を濾過し、蒸留水10mlで洗浄して合成物を得た。これを40℃にて真空下で十分乾燥させた。乾燥後、乳鉢で粉砕を行って、抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムである複合体6を6.33g得た。
上記のようにして得られた複合体1〜6について、各種試験を行った。以下、代表して、複合体1および2について記載するが、他の複合体についても同様の結果が得られた。
<試験例1>元素分析
実施例1〜6で得た抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムに収着・吸着している化合物(1)〜(5)を定量するため、複合体1〜6と、乾燥させた未処理のケイ酸アルミニウムとを、それぞれ10mgずつ測定用サンプルとして、元素分析(MT−5、柳本製)を行い、炭素、水素、および窒素量の定量を行った。結果を表1に示した。複合体1とは用いたケイ酸アルミニウムの粒度分布が異なる複合体2については、その元素分析結果を表2に示した。
Figure 2011148754
Figure 2011148754
表1に示した元素分析結果の炭素量より、複合体1では、その5g当たりに上記化合物(3)として1.25gが収着・吸着されていることが分かった。また、複合体3では、その5g当たりに上記化合物(1)として1.28gが収着・吸着されていることが分かった。また、複合体4では、その5g当たりに上記化合物(2)として1.49gが収着・吸着されていることが分かった。また、複合体5では、その5g当たりに上記化合物(4)として1.21gが収着・吸着されていることが分かった。さらに、複合体6では、その5g当たりに上記化合物(5)として1.37gが収着・吸着されていることが分かった。
表2に示した元素分析結果の炭素量より、複合体2では、その5g当たりに、上記化合物(3)として1.45gが収着・吸着されていることが分かった。
<試験例2>抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの微分熱重量分析と示差熱分析
実施例1の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウム(複合体1)の熱安定性を確認するために、微分熱重量分析と示差熱分析(DTA−TG)を行った。具体的には、測定試料である複合体1を約10mg、白金パンに秤取り、対照はα−アルミナ(酸化アルミニウム)約10mgとし、DTG−60(島津製作所)を使用し、昇温速度5℃/min、40℃〜500℃間で測定を行った。
図1(a)に、実施例1の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムである複合体1の熱分析の結果を示し、図1(b)に、複合体1の製造に用いた前記化合物(3)の熱分析の結果を示し、図1(c)に、未処理のケイ酸アルミニウムの熱分析の結果を示した。結果は、それぞれ、DTA−TG曲線(実線:TG、波線:DTA)で示した。図1(a)に示した複合体1のDTA−TG曲線より、重量減少を伴う331℃および380℃における発熱ピークが観察され、約50℃から約170℃にかけての結晶水の離脱に起因した約10%の重量減少、約200℃から約400℃にかけて化合物(3)の燃焼に伴う約15%の重量減少、がそれぞれ確認された。一方、図1(b)に示した複合体1の製造に用いた化合物(3)のDTA−TG曲線より、重量減少を伴う231℃および281℃における吸熱ピークが観察され、約180℃から約320℃にかけて75%の重量減少が確認された。図1(c)の未処理のケイ酸アルミニウムのDTA−TG曲線より、約400℃に至るまでに結晶水が離脱し、そして分子内脱水による重量減少が観察された。
以上の結果より、実施例1の複合体1の重量減少に伴う吸熱・発熱ピークは、231℃から331℃に上昇した。そして、その際に使用した化合物(3)の熱分解による重量減少開始温度に着目すると、化合物(3)(図1(b))のその温度より約20℃上昇(180℃から200℃へと上昇)していることが分かり、その燃焼による重量減少の終点は、約80℃上昇(320℃から400℃へと上昇)した。従って、実施例1の複合体1に収着・吸着させた化合物(3)の熱安定性は向上し、すなわち、実施例1の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウム(複合体1)は、耐熱性に優れていることが証明された。また、図1(a)に示した複合体1の200℃から400℃間の緩やかな重量減少は、化合物(3)の、ケイ酸アルミニウムへの収着・吸着力はそれほど強固ではないことを示唆していると言える。このことは、本発明の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムにおける特徴である徐放的に有効な抗菌性を発揮する、という望ましい抗菌特性を期待させる結果であった。
<試験例3>抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの示差走査熱量分析
実施例1の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムである複合体1の熱分析を、示差走査熱量計(DSC)を使用し、下記のようにして測定した。具体的には、測定試料である実施例1の複合体1を15.9mg、酸化アルミニウム皿に秤取り、対照はα−アルミナ(酸化アルミニウム)とした。測定にはDSC6200(セイコー電子工業株式会社製)を使用し、昇温速度10℃/minで、30℃〜510℃間、大気条件下で測定を行った。
図2(a)に実施例1の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムである複合体1のDSC曲線を示し、図2(b)に、この場合に使用した化合物(3)のDSC曲線を示し、図2(c)に、未処理のケイ酸アルミニウムのDSC曲線を示した。図2(a)の複合体1のDSC曲線より、40℃から300℃まで目立った熱量変化はなく、350℃に大きな熱量変化が確認された。このピークは、図1(a)の重量減少を伴う発熱ピークと一致していることから、複合体1に収着および吸着している化合物(3)の酸化的熱分解を表していると考えられた。
一方、図2(b)に示した化合物(3)のDSC曲線より、43℃での化合物の融解、240℃から280℃間で熱分解による熱量変化を確認した。また、図2(c)の未処理のケイ酸アルミニウムのDSC曲線より、92℃での結晶水の脱水による熱量変化が観察された。以上の結果より、実施例1の複合体1は、化合物(3)が本来有している融解温度、熱分解温度での熱量変化を示さず、高い熱安定性を有していることが分かった。このことは、本発明の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムである複合体1を、繊維、紙、フィルム、プラスチック、ゴムなどへの練り込みが可能であることを示唆しており、これら高分子製品の抗菌組成物としての応用を期待させる結果であった。
<試験例4>抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの徐放性試験と抗菌性試験
実施例1および2の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムである、複合体1および複合体2の徐放性とその抗菌性能を、溶出溶媒としてイオン交換水を用いて評価した。具体的には、複合体1および複合体2の各50mgに対して、それぞれ5mlのイオン交換水を加え、25℃で1時間撹拌した。なお、この場合、溶出速度を高めるため撹拌接触とした。1時間後、懸濁液を遠心(8900G×2min)し、上清(上澄み)と、イオン交換水処理済みの各複合体の沈殿をそれぞれ得た。上清を測定用試料として、上記化合物(3)の最大吸収波長(265nm)で吸光度測定を行うことにより、各複合体からの化合物(3)の溶出量を決定した。さらに、この操作を5回繰り返し、徐放性を検討した。結果を表3および4にそれぞれ示した。
表3および4より、実施例1および2の複合体1および複合体2を、それぞれイオン交換水で洗浄することによって、その上清に化合物(3)が溶出することが分かった。また、その溶出は徐放的に起こっており、実施例1および2の複合体1および複合体2は、徐放性機能を有していることが証明された。
Figure 2011148754
Figure 2011148754
<試験例5>抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの抗菌性試験
試験例4で、各操作毎に得られた1回から5回分の上清を無菌水で2倍段階希釈した希釈溶液と、無菌水で1×106cells/mlに調製した菌液を等量混合し、30℃、30分振盪接触させた。30分後、その混合液0.1mlを、試験管3本に分注した2mlのニュートリエント培地(Difco)に接種した。37℃で24時間培養後、増殖の有無を目視で判定し、殺菌力を示す希釈倍率(最大希釈倍率256倍)を決定した。供試菌は、Staphylococcus aureus NBRC 12732(S. aureus)およびEscherichia coli NBRC 12713(E. coli)を用いた。結果を表5および表6に示した。
表5および6より、試験例4で得た溶出回数1回から5回分の上清は、2倍から256倍の希釈倍率において殺菌性を有することが分かった。従って、実施例1および2の複合体1および複合体2は、イオン交換水中で徐放的に殺菌成分である化合物(3)を溶出し、その殺菌成分は微生物に対し殺菌的に働くことが証明された。
Figure 2011148754
Figure 2011148754
本発明の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムは、従来の一過性の有機系抗菌剤と比較して、徐放的に殺菌成分を遊離し、長期間にわたり抗菌性を発揮する特徴を有する。さらに、抗菌性化合物をケイ酸アルミニウムに収着・吸着したことによって、耐熱性が向上したことも特徴である。これら特性によって、本発明の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムは、繊維、紙、フィルム、プラスチック、ゴム、塗料、シーリング材などに配合することで、これら加工品、製剤に抗菌性能を付与することが可能になる。このため、本発明の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムは、抗菌、防黴、防腐、防藻効果を目的とした抗菌製品の材料として、非常に広い応用範囲が期待できる。また、その製造方法は、簡易でしかも大量生産が可能なものであるので、本発明の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの工業的価値は、さらに高いものとなり、その応用範囲の拡張がさらに期待できる。

Claims (7)

  1. ケイ酸アルミニウム中に、下記一般式(1)で表される化合物が含有されていることを特徴とする抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウム。
    Figure 2011148754
    (ただし、上記一般式(1)において、R1およびR4は、何もないかまたは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐の同一または異なるアルキレン基であり、R2およびR5は、水素原子、同一または異なるハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R3は、炭素数2〜12の直鎖若しくは分岐のアルキレン基であり、R6は、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である。)
  2. 前記ケイ酸アルミニウムが、化学式Al23・9SiO2・xH2O(式中のxは1以上の整数を示す)で表される化合物である請求項1に記載の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウム。
  3. 前記一般式(1)において、R1およびR4は、ピリジン環の3または4位置に結合しているメチレン基であり、R2およびR5は、水素原子であり、R3は、テトラメチレン基であり、R6は、オクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれる基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である請求項1または2に記載の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウム。
  4. 前記一般式(1)で表される化合物が、下記化合物(1)〜(5)で表される少なくとも1種の化合物である請求項1〜3の何れか1項に記載の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウム。
    Figure 2011148754
    Figure 2011148754
    Figure 2011148754
    Figure 2011148754
    Figure 2011148754
  5. 前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、ケイ酸アルミニウム100質量部あたり5〜45質量部である請求項1〜4の何れか1項に記載の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウム。
  6. 化学式Al23・9SiO2・xH2O(式中のxは1以上の整数を示す)で表されるケイ酸アルミニウムと、第四級アンモニウム塩とした下記一般式(1)で表される化合物とを含水溶媒中で接触させた後、固液分離し、乾燥させることを特徴とする抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの製造方法。
    Figure 2011148754
    (ただし、上記一般式(1)において、R1およびR4は、何もないかまたは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐の同一または異なるアルキレン基であり、R2およびR5は、水素原子、同一または異なるハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R3は、炭素数2〜12の直鎖若しくは分岐のアルキレン基であり、R6は、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である。)
  7. 前記第四級アンモニウム塩とした一般式(1)で表される化合物が、請求項4に記載の化合物(1)〜(5)のいずれかであり、含水溶媒が水である請求項6に記載の抗菌性・抗黴性ケイ酸アルミニウムの製造方法。
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