JP2011148049A - 保持パッド - Google Patents

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Abstract

【課題】長期間安定した被研磨物保持性を発揮することができる保持パッドを提供する。
【解決手段】保持パッド10は、湿式成膜法によりウレタン樹脂で一体形成された発泡シート2を有している。発泡シート2は、発泡3が形成された発泡部2aと発泡3が無形成の無発泡部2bとを有している。発泡部2aは保持面P側に位置しており、無発泡部2bは保持面Pと反対の面側に位置している。発泡部2aは、発泡シート2の全体の厚さに対して少なくとも1/2の厚さを有している。無発泡部2bは、発泡シート2の全体の厚さに対して少なくとも1/6の厚さを有している。無発泡部2bが発泡部2aを支持する。
【選択図】図1

Description

本発明は、保持パッドに係り、特に、湿式成膜法により形成され被研磨物を保持するための保持面を有する樹脂製発泡シートを備えた保持パッドに関する。
従来、レンズ、平行平面板、反射ミラー等の光学材料、ハードディスク用基板、半導体、半導体デバイス用シリコンウエハ、液晶ディスプレイ用ガラス基板等、高精度に平坦性が要求される材料(被研磨物)では、研磨パッドを使用した研磨加工が行われている。通常、これらの被研磨物の研磨加工には、被研磨物を片面ずつ研磨加工する片面研磨機や被研磨物の両面を同時に研磨加工する両面研磨機等が使用されている。片面研磨機では、表面が平坦な保持定盤に被研磨物の一面側を保持させ、表面が平坦な研磨定盤に貼付した研磨パッドにより、研磨液(スラリ)を供給しながら被研磨物の他面側(加工表面)に研磨加工が行われている。
一般に、半導体デバイス用ウエハ等の研磨加工では、被研磨物が金属製の保持定盤と直接接触して生じる被研磨物表面のスクラッチ(キズ)等を回避するため、保持定盤に保持パッドが装着されている。通常、保持パッドには、湿式成膜法で形成されたウレタン樹脂製の発泡シートが使用されている。湿式成膜法では、ウレタン樹脂を水混和性の有機溶媒に溶解させた樹脂溶液をシート状の成膜基材に塗布後、水系凝固液中で樹脂がシート状に凝固再生される。得られた発泡シートでは、内部にウレタン樹脂の凝固再生に伴う多数の発泡が形成されている。すなわち、発泡シートの表面(保持面)側に微多孔が形成された表面層(スキン層)を有し、スキン層より内側に発泡が連続状に形成されている。微多孔が緻密に形成されたスキン層は、表面が平坦で被研磨物との接触性に優れ、水張り吸着により固定することで被研磨物の保持が可能となる。
ところが、湿式成膜法では、樹脂溶液が粘性を有するため、成膜基材への塗布時に厚みバラツキが生じると共に、凝固再生時の有機溶媒と水系凝固液との置換により厚みバラツキが生じやすい。このため、発泡シート自体の表面平坦性が損なわれ大きく波打った表面となることがある。厚みバラツキが生じた発泡シートを使用した保持パッドで被研磨物を保持すると、被研磨物を略平坦に保持することができず、被研磨物の平坦性を損なうこととなる。保持パッドでは、被研磨物との接触性に優れるスキン層を残したまま、発泡シート自体の厚みバラツキを減少させることが求められている。これを解決するために、発泡シートのスキン層と反対の面側に研削処理を施し、厚みの均一化を図る技術が開示されている(特許文献1参照)。また、発泡シートと基材とで構成し、基材の発泡シートを貼り合わせた面と反対側の面に研削処理を施す技術が開示されている(特許文献2参照)。
特開2008−023625号公報 特開2006−212751号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、発泡シートのスキン層を残したまま厚みの均一化を図ることができるものの、発泡シートが湿式成膜法で形成されているので、発泡が厚さ方向に縦長で、保持面と反対の面側に発泡径が拡大された構造であるため、保持面と反対の面側の発泡シートのかさ密度は低くなる。このため、研磨加工により繰り返し加圧すると部分的に沈み込みが発生し元に戻りにくくなり、いわゆる「へたり」(残留歪み)が生じクッション性にバラツキが発生するおそれがある。クッション性にバラツキが生じると被研磨物を略平坦に保持することができず、被研磨物の高度な平坦性を得ることが難しくなる。また、発泡シートのスキン層と反対の面側に研削処理が施されるため、発泡シートの研削された面で発泡が開孔する。これにより、発泡シートと両面テープとが接触する面積が減少するため、接着力が低下し、研磨加工中に発泡シートが両面テープから剥離するおそれがある。特許文献2の技術では、発泡シートより基材の剛性が高く、発泡シートの厚みバラツキが基材の発泡シートの反対側の面に転写されないため、基材の発泡シートと反対側の面に研削処理を施しても、厚みバラツキを低減することは難しい。
本発明は上記事案に鑑み、長期間安定した被研磨物保持性を発揮することができる保持パッドを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、湿式成膜法により形成され被研磨物を保持するための保持面を有する樹脂製発泡シートを備えた保持パッドにおいて、前記発泡シートは、前記保持面側に、複数の縦長発泡が形成された連続発泡部と、前記保持面と反対の面側に、前記縦長発泡が無形成で、全体の厚さに対して少なくとも1/6の厚さの発泡無形成部とを有することを特徴とする。
本発明では、縦長発泡が形成された連続発泡部を有するため、研磨加工時にクッション性が確保されると共に、縦長発泡が無形成で、全体の厚さに対して少なくとも1/6の厚さの発泡無形成部を有するため、発泡無形成部のかさ密度が高くなり連続発泡部を支持することから、連続発泡部の発泡無形成部側でへたりが生じにくくなるので、長期間安定した被研磨物保持性を発揮することができる。
この場合において、連続発泡部に形成された複数の縦長発泡間および発泡無形成部に、微多孔が形成されていてもよい。連続発泡部は、少なくとも1/2の厚さであることが好ましい。また、連続発泡部のかさ密度を0.15g/cm〜0.35g/cmの範囲、発泡無形成部のかさ密度を0.5g/cm〜0.9g/cmの範囲としてもよい。発泡シートは、湿式成膜法により一体成形されたものとすることができる。発泡シートは、ポリウレタン樹脂製とすることが好適である。ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、5,000〜100,000の範囲であることが好ましい。
本発明によれば、縦長発泡が形成された連続発泡部を有するため、研磨加工時にクッション性が確保されると共に、縦長発泡が無形成で、全体の厚さに対して少なくとも1/6の厚さの発泡無形成部を有するため、発泡無形成部のかさ密度が高くなり連続発泡部を支持することから、連続発泡部の発泡無形成部側でへたりが生じにくくなるので、長期間安定した被研磨物保持性を発揮することができる、という効果を得ることができる。
本発明を適用した実施形態の保持パッドを模式的に示す断面図である。 実施例の保持パッドの断面を示す電子顕微鏡写真である。 従来の保持パッドを模式的に示す断面図である。
以下、図面を参照して、本発明を適用した保持パッドの実施の形態について説明する。
(構成)
図1に示すように、本実施形態の保持パッド10は、湿式成膜法によりウレタン樹脂で形成された発泡シート2を備えている。発泡シート2は、略平坦な保持面Pを有している。
発泡シート2は、湿式成膜法によりウレタン樹脂でシート状に形成されている。発泡シート2には、保持面P側に、図示しない緻密な微多孔が形成されておりミクロな平坦性を有するスキン層4が形成されている。スキン層4より内側(ウレタン樹脂内)には、連続発泡部としての発泡部2a(保持面P側の部分)と、発泡無形成部としての無発泡部2b(保持面Pと反対の面側の部分)とを有している。発泡部2aでは、厚さ方向に沿って縦長の丸みを帯びた断面三角形状の発泡3(縦長発泡)が形成されている。発泡3は、保持面P側の孔径が保持面Pと反対の面側の孔径より小さく形成されている。すなわち、発泡3は保持面P側で縮径されている。発泡3の厚さ方向の長さにはバラツキがある。発泡3の間のウレタン樹脂中には、発泡3より小さくスキン層4の緻密な微多孔より大きい孔径の微多孔(マイクロポーラス)が形成されているが、図1ではそれらの微多孔を捨象して示している。発泡3および微多孔は、不図示の連通孔で網目状につながっている。無発泡部2bでは、発泡3は形成されておらず、発泡部2aに形成された微多孔と同様の微多孔が連通孔で網目状につながっている。発泡シート2は、湿式成膜法により形成された連続状の発泡構造を有している。本例では、保持面Pの反対面側に研削処理が施され厚みが均一化されている。
ここで、発泡シート2の発泡部2aおよび無発泡部2bについて説明する。発泡部2aでは、連続状に形成された発泡3により、研磨加工中にクッション性が発揮される。無発泡部2bでは、発泡3が形成されていない分かさ密度が発泡部2aより高いので、無発泡部2bは発泡部2aを支持する働きをする。このため、発泡部2aの強度が補われ、研磨加工で繰り返し加圧されてもクッション性が損なわれにくく、発泡部2aのクッション性を長期間に亘り安定して保持することができる。
発泡部2aの厚さは、発泡シート2の全体の厚さに対して少なくとも1/2に調整されている。このため、研磨加工中にクッション性は十分に発揮される。発泡部2aの厚さが全体の厚さに対して1/2に満たない場合、クッション性は不十分となる。無発泡部2bの厚さは、全体の厚さに対して少なくとも1/6、つまり1/6〜1/2の範囲に調整されている。このため、無発泡部2bは、発泡部2aを支持することができる。無発泡部2bの厚さが全体の厚さに対して1/6に満たない場合、無発泡部2bが発泡部2aを十分に支持することが難しく、研磨加工での繰り返しの加圧により、発泡部2aの保持面Pと反対側の部分でへたりが生じ、発泡部2aのクッション性が損なわれやすくなる。
発泡シート2は、発泡部2aのかさ密度が0.15〜0.35g/cm、無発泡部2bのかさ密度が0.5〜0.9g/cmの範囲に調整されている。このため、被研磨物の保持に必要なクッション性が発揮されると共に、繰り返しの加圧による強度の低下を抑制することができる。発泡部2aのかさ密度が0.15g/cmに満たない場合、発泡シート2の耐久性が不十分となる。反対に、発泡部2aのかさ密度が0.35g/cmを超える場合、被研磨物の保持に必要なクッション性が十分に発揮されにくくなる。また、無発泡部2bのかさ密度が0.5g/cmに満たない場合、研磨による圧力を受けた際の発泡シート2の圧縮変形量が大きくなり、繰り返しの加圧による残留歪み(へたり)が大きく発泡シート2の強度が低下するため耐久性が損なわれる。反対に、無発泡部2bのかさ密度が0.9g/cmを超える場合、発泡シート2の剛性が過度に高くなるため、発泡部2aのクッション性が発揮されたとしても、被研磨物を略平坦に保持しにくくなる。このため、研磨加工において、被研磨物の中央部や外周部等で過研磨等が発生し、研磨ムラが生じるおそれがある。
また、保持パッド10は、保持面Pと反対の面側に、研磨機に保持パッド10を装着するための両面テープ5の一面側が貼り合わされている。両面テープ5は、PET等の基材を有しており、その両表面に粘着剤が塗布されている。両面テープ5の他面側(最下面側)は剥離紙6で覆われている。
(製造)
保持パッド10は、ウレタン樹脂を溶解させた樹脂溶液を準備する準備工程、樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し水系凝固液中でウレタン樹脂をシート状に凝固再生させる凝固再生工程、凝固再生したウレタン樹脂を洗浄し乾燥させる洗浄・乾燥工程、乾燥後の発泡シート2の保持面Pの反対面側に厚みを均一化させるように研削処理を施す研削処理工程、発泡シート2に両面テープ5を貼付するラミネート加工工程を経て製造される。以下、工程順に説明する。
準備工程では、ウレタン樹脂、ウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒のN、N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)および添加剤を混合してウレタン樹脂を溶解させる。水混和性の有機溶媒としては、水と任意の割合で混ざり合う有機溶媒であれば良く、DMF以外に、例えばN,N−ジメチルアセトアミド等を用いてもよい。ウレタン樹脂には、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂から数平均分子量が5,000〜100,000の範囲のものを選択して用い、例えば、ウレタン樹脂が30重量%となるようにDMFに溶解させる。ウレタン樹脂の分子量を制限することにより、凝固再生工程において、ウレタン樹脂の分子移動を円滑にすることができる。添加剤としては、発泡3の平均厚さ方向の長さや単位体積あたりの個数を制御するため、カーボンブラック等の顔料、発泡の形成を促進させる親水性添加剤及びウレタン樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性添加剤等を用いることができる。得られた溶液を減圧下で脱泡してウレタン樹脂溶液を得る。
塗布工程では、準備工程で得られたウレタン樹脂溶液を常温下でナイフコータ等により帯状の成膜基材に略均一となるように、連続的に塗布する。このとき、ナイフコータ等と成膜基材との間隙(クリアランス)を調整することで、ウレタン樹脂溶液の塗布厚さ(塗布量)が調整される。成膜基材にはPET樹脂等の樹脂製の不織布やフィルムを用いることができるが、本例では、成膜基材としてPET製フィルムが用いられる。
凝固再生工程では、成膜基材に塗布されたウレタン樹脂溶液が、ウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分とする凝固液(水系凝固液)に案内される。本例では、凝固液として、水にDMFを10〜30%の割合で混合したDMF水溶液を用い、温度が45〜65℃の範囲に設定されている。凝固液中では、まず、ウレタン樹脂溶液の表面側に緻密な微多孔が形成されスキン層4が形成される。その後、ウレタン樹脂溶液中のDMFと凝固液との置換の進行によりウレタン樹脂が成膜基材上にシート状に凝固再生されて発泡3が形成された発泡部2aと発泡3が無形成の無発泡部2bとを有する発泡シート2が形成される。ウレタン樹脂溶液からDMFが脱溶媒し、DMFと水とが置換することで、スキン層4より内側の発泡部2aに発泡3および微多孔が形成されると共に、無発泡部2bに微多孔が形成され、発泡3および微多孔が網目状に連通する。
ここで、発泡部2aおよび無発泡部2bについて説明する。凝固再生工程では、凝固液の温度およびDMF濃度が従来より高く設定されている。このため、凝固液中でのウレタン樹脂溶液のスキン層4の形成速度は従来より速くなるものの、粗密のあるスキン層4が形成される。その後、スキン層4の浸入し易い部分からウレタン樹脂溶液中に凝固液が浸入する。このとき、ウレタン樹脂溶液内のDMFの溶出より凝固液が優先的にウレタン樹脂溶液中に浸入し、DMFと凝固液とが置換され、ウレタン樹脂の凝集が生じる。凝固液として水とDMFとを含み、従来より高い濃度のDMF水溶液が用いられるため、ウレタン樹脂の凝固再生は緩慢となり、DMFと水との置換速度が遅くなる。このため、発泡部2aでは、従来の発泡より孔径が小さく、細長い発泡3および微多孔が形成される。一方、無発泡部2bでは、凝固液とDMFとの相互拡散が均一化され、DMFがスキン層4側へ移動することで、ウレタン樹脂の樹脂濃度が高くなるため、発泡3が形成されず、微多孔のみが網目状に形成される。また、成膜基材のPET製フィルムが水を浸透させないため、スキン層4側で脱溶媒が生じることから、発泡部2aでは発泡3の無発泡部2b側の孔径が大きくなり、成膜基材側で脱溶媒が生じず無発泡部2bで発泡が形成されることはない。
洗浄・乾燥工程では、凝固再生工程で凝固再生したシート状のウレタン樹脂(以下、成膜樹脂という。)を成膜基材から剥離し、水等の洗浄液中で洗浄してウレタン樹脂中に残留するDMFを除去する。洗浄後、成膜樹脂をシリンダ乾燥機で乾燥させる。シリンダ乾燥機は内部に熱源を有するシリンダを備えている。成膜樹脂がシリンダの周面に沿って通過することで乾燥する。乾燥後の成膜樹脂は、ロール状に巻き取られる。
研削処理工程では、成膜樹脂の表面に形成されたスキン層4と反対の面側に研削処理を施す。すなわち、圧接治具の略平坦な表面を成膜樹脂のスキン層4の表面に圧接し、スキン層4と反対の面側に研削処理を施す。研削処理には、バフ機やスライス機等を用いることができる。これにより、成膜樹脂の厚みが均一化され、発泡シート2が得られる。
ラミネート加工工程では、得られた発泡シート2の保持面Pと反対側の面に両面テープ5を貼り合わせる。両面テープ5の他面側は剥離紙6で覆われている。汚れや異物等の付着がないことを確認する等の検査を行い、保持パッド10を完成させる。
(作用)
次に、本実施形態の保持パッド10の作用等について説明する。
従来湿式成膜法で製造される保持パッドについて説明する。DMFにウレタン樹脂を溶解させ添加剤を混合しウレタン樹脂溶液を基材に塗布し、水を主成分とする凝固液に案内する。凝固液としては、水にDMFを5%程度の割合で混合したDMF水溶液が使用され、凝固液の温度が18℃程度に設定される。DMFは、ウレタン樹脂の溶解に一般に用いられる溶媒であり、水に対して任意の割合で混合することができる。このため、図3に示すように、まず樹脂溶液の表面でDMFと水との置換(ウレタン樹脂の凝固再生)が起こり、スキン層14が形成される。その後、スキン層14の浸入しやすい部分から樹脂溶液内部に水が浸入し、DMFと水との置換が生じ、発泡13および微多孔が形成される。すなわち、従来の保持パッド20では、ウレタン樹脂で形成された発泡シート12に、厚さのほぼ全体に亘る縦長の発泡13が形成されている。成膜基材としてPET製フィルムなどの水を浸透させないものを使用すると、樹脂溶液の表面側からのみDMFは溶出するため、形成される発泡13は基材側が大きく丸みを帯びた発泡となる。厚みを均一化するために発泡シート12の保持面Pと反対の面側に研削処理が施されている。このため、発泡13および微多孔は発泡シート12の研削された面で開孔されている。
このような従来の発泡シート12を備えた保持パッド20では、発泡13が厚さ方向に縦長で、保持面Pと反対の面側に発泡径が拡大された構造であるため、保持面Pと反対の面側で発泡シート12のかさ密度が低くなる。このため、研磨加工により繰り返し加圧すると部分的に沈み込みが発生し元に戻りにくくなり、へたりが生じやすくなる。へたりが生じると、クッション性にバラツキが発生し研磨性能が不安定となり、被研磨物の高度な平坦性を得ることが難しくなる。また、発泡シート12の保持面Pと反対の面側に研削処理が施されているため、発泡13および微多孔が発泡シート12の研削された面で開孔されている。このため、発泡シート12と両面テープ15とが接触する面積が小さく、接着力が低下するため、研磨加工時に発泡シート12が剥離するおそれがある。発泡シート12が剥離した場合は、研磨加工を継続することができなくなる。本実施形態は、これらの問題を解決することができる保持パッドである。
本実施形態の保持パッド10では、発泡シート2の全体の厚さに対してすくなくとも1/2の厚さの発泡部2aが保持面P側に形成されている。発泡部2aには発泡3と微多孔とが形成され、連続状の発泡構造を有しているため、研磨加工時にクッション性が十分に発揮されることで、被研磨物を略平坦に保持することができ、被研磨物の平坦性向上を図ることができる。
また、本実施形態の保持パッド10では、発泡シート2の保持面Pと反対の面側に無発泡部2bが形成されている。無発泡部2bには、発泡3が形成されておらず、微多孔が形成された連続発泡構造を有している。このため、無発泡部2bのかさ密度は発泡部2aのかさ密度より高くなっている。すなわち、発泡部2aのかさ密度が0.15〜0.35g/cmの範囲であるのに対して、無発泡部2bのかさ密度は、0.5〜0.9g/cmの範囲に調整されている。このため、無発泡部2bが発泡部2aを支持することで、発泡部2aの強度を補うため、研磨加工時の繰り返しの圧力により生じるへたりを抑制し、長期間クッション性が保持されるので、保持パッド10の長寿命化を図ることができる。
更に、本実施形態の保持パッド10では、発泡シート2の無発泡部2bの厚さは、全体の厚さに対して少なくとも1/6の厚さに調整されている。無発泡部2bは、発泡3が無形成の分発泡部2aよりかさ密度が高いため、発泡部2bは発泡部2aを支持する働きをすることができる。このため、研磨加工で繰り返し加圧されても、へたりが抑制され長期間クッション性を保持することができる。無発泡部2bの厚さが全体の厚さに対して1/5に満たない場合、発泡部2aを十分に支持することができず、発泡部2aのクッション性は損なわれやすくなる。また、本実施形態の保持パッド10では、発泡シート2の保持面Pと反対の面側に研削処理を施されている。無発泡部2bが形成されているため、発泡3が開孔されることがない。このため、発泡シート2と両面テープ5とが接触する面積が従来の保持パッド20の場合と比べて大きくなり、接着力が増すため、研磨加工時に発泡シート2を両面テープ5から剥離しにくくすることができる。
また更に、本実施形態の保持パッド10では、発泡シート2は湿式成膜法により一体成形されている。発泡シートに他の材質が積層されたものでは、厚みが増すにつれて保持パッドの厚みムラが生じることがある。これに対して、保持パッド10は、発泡シート2が一体成形されているため厚みムラを防ぐことができ、被研磨物の平坦性を向上させることができる。
更にまた、本実施形態の保持パッド10では、発泡シート2がウレタン樹脂製であり、ウレタン樹脂の数平均分子量が5,000〜100,000の範囲に設定されている。このため、ウレタン樹脂の分子量が制限されることで、ウレタン樹脂の分子移動を円滑化することができる。すなわち、凝固再生工程において、ウレタン樹脂溶液中のDMFの脱溶媒に伴いスキン層4側へ移動し、ウレタン樹脂が成膜基材側に円滑に移動することができる。ウレタン樹脂を円滑に成膜基材側に移動させることで、成膜基材側で樹脂濃度が高くなり、無発泡部2bを形成させることができる。ポリウレタン樹脂の分子量に加えて、樹脂濃度や凝固液条件(DMF含有量、温度)をかえることで、発泡3の大きさ、発泡部2aや無発泡部2bの厚さを調整することができる。
なお、本実施形態では、発泡シートとしてウレタン樹脂製の発泡シート2を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の樹脂を使用してもよい。例えば、ポリエステル樹脂等を使用してもよい。ウレタン樹脂を用いるようにすれば、湿式成膜法により連続発泡構造を容易に形成することができる。
また、本実施形態では、発泡シート2の作製時に、ウレタン樹脂を凝固再生させ研削処理を施した後、両面テープ5を貼り合わせる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、成膜基材を剥離した後、両面テープ5と発泡シート2との間に支持体を貼り合わせてもよい。また、ウレタン樹脂を凝固再生させた後、成膜基材を剥離せず、両面テープ5を貼り合わせ、成膜基材を支持体としてもよい。発泡シート2と支持体とが剥離しないように、予め接着性のよい樹脂を塗布した成膜基材上にウレタン樹脂を凝固再生させてもよい。例えば、成膜基材に不織布を用いた場合は、発泡シートから剥離することが難しいため、成膜基材を剥離せずそのまま乾燥させてもよい。つまり、不織布の成膜基材が保持パッド10の支持体となる。更に、両面テープ5としては、基材の両面に粘着剤が塗布されていてもよく、基材を有することなく粘着剤のみで構成されてもよい。
更に、本実施形態では、発泡シート2の保持面Pと反対の面側に研削処理を施しスキン層4を残す例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、被研磨物に応じて、発泡シート2の保持面P側に研削処理を施しスキン層4を除去してもよい。
また更に、本実施形態では、凝固再生工程において、凝固液として水にDMFを10〜30%の割合で混合したDMF水溶液を用い、凝固液の温度を45〜65℃に設定したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、凝固液として、従来と同様に水にDMFを5%の割合で混合したDMF水溶液を用い、凝固液の温度を45〜65℃に設定して作製してもよい。また、凝固液として水にDMFを10〜30%の割合で混合したDMF水溶液を用い、凝固液の温度を従来と同様に18℃に調整して作製してもよい。このような従来の凝固液条件を採用した場合、無発泡部2bの厚さは、ウレタン樹脂溶液に配合する親水性添加剤や疎水性添加剤の量や割合を変えることで調整することができる。
更にまた、本実施形態では、発泡シート2に形成された発泡部2aのかさ密度が0.15〜0.35g/cmの範囲に調整されている例を示したが、発泡部2aのクッション性等を考慮すると、0.2〜0.3g/cmの範囲とすることが好ましい。また、無発泡部2bのかさ密度が0.5〜0.9g/cmの範囲に調整されている例を示したが、無発泡部2bが発泡部2aを支持することを考慮すると、0.65〜0.85g/cmの範囲とすることが好ましい。更に、本実施形態では、発泡シート2に形成された無発泡部2bの厚さは、全体の厚さに対して少なくとも1/6の厚さに設定されている例を示したが、無発泡部2bの強度や寿命を考慮すると、少なくとも1/5の厚さとすることが好ましい。
以下、本実施形態に従い製造した保持パッド10の実施例について説明する。なお、比較のために製造した比較例の保持パッドについても併記する。
(実施例1)
実施例1では、ウレタン樹脂として数平均分子量が15,000のポリエステルMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)ウレタン樹脂を用いた。このウレタン樹脂を30重量%でDMFに溶解させた溶液100部に対して、粘度調整用のDMFの45部、カーボンブラックを30%含むDMF分散液の40部、疎水性活性剤の2部を混合してウレタン樹脂溶液を調製した。得られたウレタン樹脂溶液の粘度は5.2Pa・sであった。粘度は、回転粘度計(東機産業株式会社製、TVB−10型)でNo.M3のロータを使用し、25℃の温度環境下で測定した。得られたウレタン樹脂溶液を成膜基材に塗布した後、凝固液中でシート状のウレタン樹脂を凝固再生させた。このとき、凝固液は20%のDMF水溶液を使用し、凝固液の温度は50℃とした。凝固再生後、成膜基材を剥離して、洗浄・乾燥させた成膜樹脂の厚みは295μmであった。成膜樹脂の保持面Pと反対の面側を、全体の厚みの10%が除去されるようにバフィングし、厚みを均一化させた後、バフ処理面に両面テープ5を貼り合わせ実施例1の保持パッド10を製造した。保持パッド10を構成する発泡シート2の断面を走査型電子顕微鏡にて観察した結果、図2に示すように、発泡3および微多孔が連続状に形成された発泡部2aと、発泡3が無形成で、微多孔のみが連続状に形成された無発泡部2bとを有していることがわかった。
(比較例1)
比較例1では、凝固再生工程において、凝固液に5%のDMF水溶液を使用し、凝固液の温度を18℃とし、厚み298μmの成膜樹脂を得たこと以外は実施例1と同様にして発泡シート12を製造した。すなわち、比較例1は無発泡部2bが形成されていない従来の発泡シート12を備えた保持パッド20である(図3参照)。
(評価1)
実施例1の保持パッド10において、発泡シート2の発泡部2aと無発泡部2bとの厚み、および、かさ密度をそれぞれ測定した。厚みの測定では、ダイヤルゲージ(最小目盛り0.01mm)を使用し、荷重100g/cmをかけて測定した。すなわち、発泡シート2の発泡部2aが消失するまでバフィングして、無発泡部2bのみを残し、無発泡部2bの厚みを測定した。また、発泡シート2の無発泡部2bが消失するまでバフィングして、発泡部2aのみを作製し、発泡部2aの厚みを測定した。かさ密度の測定では、厚みの測定時に得た発泡部2aと無発泡部2bとのそれぞれを、所定サイズの大きさに切り出して重量を測定し、厚みと切り出しサイズとから算出した。一方、比較例1の保持パッド20については、発泡シート12の全体を発泡部として、実施例1と同様にして測定した。厚み、および、かさ密度の測定結果を下表1に示す。
表1に示すように、比較例1では、発泡シート12の全体の厚みが305.0μm、かさ密度が0.19g/cmを示した。これに対して実施例1では、発泡部2aと無発泡部2bとの厚さがそれぞれ、232.5μm、62.5μmであった。また、発泡部2aと無発泡部2bとのかさ密度はそれぞれ、0.22g/cm、0.77g/cmであった。すなわち、実施例1では、無発泡部2bの厚さが発泡シート2の全体の厚さに対して少なくとも1/6の厚さであり、発泡部2aのかさ密度が0.15〜0.35g/cmの範囲、無発泡部2bのかさ密度が0.5〜0.9g/cmの範囲であった。
(評価2)
実施例1および比較例1の保持パッドについて、日本工業規格(JIS K6772)に準じた方法で剥離強度をそれぞれ測定した。剥離強度の測定では、テンシロン引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、テンシロン万能試験機、RTF−1210)を使用した。すなわち、20mm×150mmに切り出したサンプルの長手方向一端をトルエンに浸漬し剥ぎ口を作り、剥ぎ口における発泡シートと支持体とを、つかみ間隔が10mmとなるように引張試験機に取り付けた。温度20℃、湿度65%の条件下に2時間保持し、剥ぎ口のトルエンを十分に除去した後、毎分200mmの引張速度で短辺と平行に長さ50mm分の接着部分を剥離し、最大荷重を求めた。測定回数を3回とし、平均値を評価した。剥離強度の評価結果を表1に合わせて示す。
表1に示すように、従来の方法で製造した比較例1の保持パッド20では、剥離強度が0.31kg/cmであった。これに対して、実施例1の保持パッドでは、剥離強度が0.68kg/cmで、比較例1より高い値を示した。これは、比較例1ではバフ処理により発泡13の開孔が形成された部分があるのに対し、実施例1では無発泡部2bを有することでバフ処理をしても発泡部2aの発泡3の開孔が形成されないためと考えられる。すなわち、発泡13の開孔が形成されることで両面テープ15との接着面積が低減した比較例1と比べて、実施例1では、両面テープ5の全面と無発泡部2bのバフ処理面の全面とで接着されるため、接着面積が増大し、剥離強度が向上したものと考えられる。従って、実施例1の保持パッド10では、研磨加工中に発泡シート2が両面テープ5から剥離しにくく、安定した研磨加工を継続することができることが期待できる。
本発明は、長期間安定した被研磨物保持性を発揮することができる保持パッドを提供するものであるため、保持パッドの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
P 保持面
2 発泡シート
2a 発泡部(連続発泡部)
2b 無発泡部(発泡無形成部)
3 発泡(縦長発泡)
10 保持パッド

Claims (7)

  1. 湿式成膜法により形成され被研磨物を保持するための保持面を有する樹脂製発泡シートを備えた保持パッドにおいて、前記発泡シートは、前記保持面側に、複数の縦長発泡が形成された連続発泡部と、前記保持面と反対の面側に、前記縦長発泡が無形成で、全体の厚さに対して少なくとも1/6の厚さの発泡無形成部とを有することを特徴とする保持パッド。
  2. 前記連続発泡部に形成された前記複数の縦長発泡間および前記発泡無形成部に、微多孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の保持パッド。
  3. 前記連続発泡部は、少なくとも1/2の厚さであることを特徴とする請求項2に記載の保持パッド。
  4. 前記連続発泡部のかさ密度は0.15g/cm〜0.35g/cmの範囲、前記発泡無形成部のかさ密度は0.5g/cm〜0.9g/cmの範囲であることを特徴とする請求項3に記載の保持パッド。
  5. 前記発泡シートは、湿式成膜法により一体成形されたものであることを特徴とする請求項4に記載の保持パッド。
  6. 前記発泡シートは、ポリウレタン樹脂製であることを特徴とする請求項5に記載の保持パッド。
  7. 前記ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、5,000〜100,000の範囲であることを特徴とする請求項6に記載の保持パッド。
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