JP2011143106A - 磁気ノイズ低減構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】被影響機器の配置計画の自由度を損ねることなく、被影響機器に対する磁気ノイズの影響を低減する提供すること。
【解決手段】磁場発生源にて発生される磁場を低減するための磁気ノイズ低減構造であって、磁場発生源であるエレベータ3の周囲に配置された複数の磁気遮蔽材10と、これら複数の磁気遮蔽材10の相互間に形成されることにより、磁場発生源であるエレベータ3にて発生される磁場のうち磁場低減対象方向に沿った磁場の方向を他の方向に向けさせる隙間20とを備える。
【選択図】図1

Description

この発明は、磁場発生源にて発生される磁場を低減するための磁気ノイズ低減構造に関する。
従来、医療施設で用いられるMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置や、半導体生産施設で用いられるEB(Electron Beam)露光装置等は、変動磁場発生源にて発生された磁場による磁気ノイズの影響を受け、検査精度や製造精度を低減させる可能性がある。このため、変動磁場による磁気ノイズを低減することのできる装置や方法が要望されている。
磁気ノイズを低減するためには、変動磁場発生源から、磁気ノイズの影響を受けるMRI装置やEB露光装置等の各種の機器(以下、被影響機器)を離れた位置に配置すればよいとも考えられる。例えば、一般的には、変動磁場発生源と被影響機器の相互間の離隔距離として、被影響機器がMRI装置である場合には7〜9m程度、被影響機器がEB露光装置である場合には10m程度を確保できるように、これら被影響機器の配置計画を立案することで、被影響機器の変動磁場に対する許容値を満足することができる。しかしながら、施設における各種機器の集約化の要請や動線の効率化の要請から、実際には、十分な離隔距離を確保することが困難な場合がある。特に、被影響機器が高精度化することに伴って、被影響機器の変動磁場に対する許容値が低下することが予想されており、この場合には離隔距離を一層長く取る必要が生じるため、離隔距離を確保することが一層困難になってきている。
このような点に鑑みて、従来、被影響機器に対する磁気ノイズの入射量を低減するためのシステムも提案されている。例えば、特許文献1や特許文献2には、いわゆるアクティブ式の磁気キャンセラーが開示されている。この磁気キャンセラーは、被影響機器の周囲に設置した磁気センサーと、被影響機器が設置された部屋の周囲に設置された補償コイルとを備えて構成されており、磁気センサーで検知した磁場と逆位相の磁場を補償コイルで発生させることで、磁気ノイズを低減するためのものである。
特開2005−3503号公報 特開2005−294537号公報
しかしながら、上記従来の磁気キャンセラーでは、磁場発生源と補償コイルが隣接している場合には磁気ノイズを適切に低減することが困難であるため、これら磁場発生源と補償コイルとを相互に一定距離以上離隔する必要があり、結局は、ある程度の離隔距離を確保する必要があるため、従来の課題を完全に解決することはできない。また、上述したように、施設における各種機器の集約化の要請や動線の効率化の要請があり、例えば、医療施設においては複数のMRI装置を隣接する部屋に配置したいとの要望があるが、磁気キャンセラーを隣接する位置に複数配置した場合には、これら複数の磁気キャンセラーが相互に干渉してしまうため、このような配置を取ることも実際には不可能であった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、被影響機器の配置計画の自由度を損ねることなく、被影響機器に対する磁気ノイズの影響を低減する提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1に係る磁気ノイズ低減構造は、磁場発生源にて発生される磁場を低減するための磁気ノイズ低減構造であって、前記磁場発生源の周囲に配置された複数の磁気遮蔽材と、前記複数の磁気遮蔽材の相互間に形成されることにより、前記磁場発生源にて発生される磁場のうち磁場低減対象方向に沿った磁場の方向を他の方向に向けさせる隙間とを備えるものである。
請求項2に係る磁気ノイズ低減構造は、請求項1に係る磁気ノイズ低減構造において、前記磁場発生源と、この磁場発生源にて発生された磁場による磁気ノイズの影響を受け得る被影響手段とを、略水平方向に沿って並設し、前記磁場低減対象方向を水平方向とし、前記複数の磁気遮蔽材の少なくとも複数の一部を略鉛直方向に沿って配置し、前記隙間を、略鉛直方向に沿って配置した前記磁気遮蔽材の相互間に形成したものである。
請求項3に係る磁気ノイズ低減構造は、請求項2に係る磁気ノイズ低減構造において、前記磁場発生源は、略鉛直方向に沿って移動するエレベータであり、前記複数の磁気遮蔽材の少なくとも複数の一部を、前記エレベータのエレベータシャフトにおける側壁に沿って配置し、前記隙間を、前記エレベータのエレベータシャフトにおける側壁に沿って配置した前記磁気遮蔽材の相互間であって、前記エレベータの出入口扉に対応した位置に形成したものである。
請求項4に係る磁気ノイズ低減構造は、請求項3に係る磁気ノイズ低減構造において、前記複数の磁気遮蔽材の少なくとも複数の一部を、前記エレベータのエレベータシャフトにおける側壁の外側に配置したものである。
請求項5に係る磁気ノイズ低減構造は、請求項1から4のいずれか一項に係る磁気ノイズ低減構造において、前記複数の磁気遮蔽材の少なくとも一部に対して略直交する方向に沿って第2の磁気遮蔽材を配置することで形成されるもので、前記磁場発生源にて発生される磁場のうち磁場低減対象方向に沿った磁場の方向を他の方向に向けさせる庇を備えるものである。
請求項6に係る磁気ノイズ低減構造は、請求項5に係る磁気ノイズ低減構造において、前記磁場発生源は、略鉛直方向に沿って移動するエレベータであり、前記複数の磁気遮蔽材の少なくとも複数の一部を、前記エレベータのエレベータシャフトにおける側壁に沿って配置し、前記庇を、前記エレベータのエレベータシャフトに隣接する床スラブ又は天井に沿って前記第2の磁気遮蔽材を配置することにより形成したものである。
請求項1に係る発明によれば、磁場発生源の周囲に磁気遮蔽材を配置したので、従来の磁気キャンセラーのように被影響機器を取り囲むことで磁気ノイズの提供を低減する構造に比べて、磁気のセンシングや補償を行う必要がないため、磁場発生源から被影響機器の離隔距離や、複数の被影響機器の相互間の離隔距離を低減することができ、被影響機器の配置計画の自由度を損ねることなく、被影響機器に対する磁気ノイズの影響を低減することが可能となる。特に、複数の磁気遮蔽材の相互間に形成されたもので、磁場低減対象方向に沿った磁場の方向を他の方向に向けさせるための隙間を備えるので、磁場発生源から隙間に至る方向へ引き寄せられる磁場成分が弱くなり、複数の磁気遮蔽材に至る方向への磁場成分が強くなるので、磁場発生源から隙間に至る方向への磁場を低減することが可能になり、磁場低減対象方向に関する磁気ノイズ低減効果を一層増大させることが可能となる。
請求項2に係る発明によれば、水平方向へ引き寄せられる磁場成分が弱くなり、鉛直方向への磁場成分が強くなるので、水平方向への磁場を低減することが可能になる。
請求項3に係る発明によれば、磁場発生源であるエレベータシャフトから被影響機器に至る水平方向の磁場成分が弱くなり、エレベータシャフトに沿った鉛直方向への磁場成分が強くなるので、エレベータシャフトから被影響機器に至る水平方向の磁場を低減することが可能になる。特に、隙間をエレベータの出入口扉に対応した位置に形成することで、エレベータの出入口扉を介して当該エレベータに人や物が出入りすることを妨げることがないため、エレベータの利用上の問題を生じさせることなく、磁気ノイズ低減構造を設置することが可能となる。
請求項4に係る発明によれば、複数の磁気遮蔽材をエレベータシャフトにおける側壁の外側に配置したので、エレベータ用のレール等の付属物が磁気遮蔽材を設置する上での障害になることもなく、工事上の安全確保の点からエレベータシャフトの内部に工事用足場を設置する必要もなくなるので、エレベータを長期間に渡って停止させる必要がなくなり、既存建屋のエレベータに対しても磁気ノイズ低減構造を容易かつ安価に設置することが可能となる。
請求項5に係る発明によれば、複数の磁気遮蔽材の少なくとも一部に対して略直交する方向に沿って第2の磁気遮蔽材を配置することで形成されるもので、磁場発生源にて発生される磁場のうち磁場低減対象方向に沿った磁場の方向を他の方向に向けさせる庇を備えるので、磁場発生源から庇に至る方向へ引き寄せられる磁場成分が強くなるので、磁場発生源から他の方向への磁場を低減することが可能になる。
請求項6に係る発明によれば、磁場発生源であるエレベータシャフトから被影響機器に至る水平方向の磁場成分が一層弱くなり、エレベータシャフトから床スラブ又は天井に至る鉛直方向への磁場成分が強くなるので、エレベータシャフトから被影響機器に至る水平方向の磁場を低減することが可能になる。
本発明の実施の形態1に係る磁気ノイズ低減構造が適用された建屋の縦断面図である。 図1のA−A矢視断面図である。 磁気遮蔽材の高さの最適寸法を検討するための磁界解析モデルを示す図であり、対象性を有するための1/2領域のみを示す図である。 図3の磁界解析モデルによる評価結果であり、磁場の水平方向の成分の評価結果を示す図である。 図3の磁界解析モデルによる評価結果であり、磁場の垂直方向の成分の評価結果を示す図である。 磁気遮蔽材の隙間の高さの最適寸法を検討するための磁界解析モデルを示す図であり、対象性を有するための1/2領域のみを示す図である。 図6の磁界解析モデルによる評価結果であり、磁場の水平方向の成分の評価結果を示す図である。 図6の磁界解析モデルによる評価結果であり、磁場の垂直方向の成分の評価結果を示す図である。 磁気遮蔽材の庇の幅の最適寸法を検討するための磁界解析モデルを示す図であり、対象性を有するための1/2領域のみを示す図である。 図9の磁界解析モデルによる評価結果であり、磁場の水平方向の成分の評価結果を示す図である。 図9の磁界解析モデルによる評価結果であり、磁場の垂直方向の成分の評価結果を示す図である。 磁気ノイズ低減構造による磁気ノイズ低減効果の検討結果を示す図であり、磁場の水平方向の成分の評価結果を示す図である。 磁気ノイズ低減構造による磁気ノイズ低減効果の検討結果を示す図であり、磁場の垂直方向の成分の評価結果を示す図である。 磁気遮蔽材を設けていない場合における磁場の方向の解析結果を示した図である。 磁気遮蔽材を設けていない場合における磁場の方向の解析結果を示した図であり、図14の位置よりもエレベータカゴを上昇させた条件での解析結果を示す図である。 磁気遮蔽材を設けた場合における磁場の方向の解析結果を示した図である。 図15の解析結果に示す評価点周辺(図15のA領域)の拡大図である。 図16の解析結果に示す評価点周辺(図16のA領域)の拡大図である。 磁気遮蔽材及び隙間を設けた場合における磁場の方向の解析結果を示した図である。 図19の解析結果に示す評価点周辺(図19のA領域)の拡大図である。 磁気遮蔽材、隙間、及び庇を設けた場合における磁場の方向の解析結果を示した図である。 図21の解析結果に示す評価点周辺(図21のA領域)の拡大図である。 変形例に係る磁気ノイズ低減構造が適用された建屋の縦断面図である。 変形例に係る磁気ノイズ低減構造が適用された建屋の図2に対応する断面における縦断面図である。 変形例に係る磁気ノイズ低減構造の磁界解析モデルを示す図であり、対象性を有するための1/2領域のみを示す図である。
以下に添付図面を参照して、本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕本実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕本実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、本実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
〔I〕本実施の形態の基本的概念
まず本実施の形態の基本的概念について説明する。本実施の形態に係る磁気ノイズ低減構造は、磁場発生源にて発生される磁場を低減するための構造である。
この磁場発生源としては、磁場発生源の時間的な位置変動を伴う変動磁場発生源と、磁場発生源の時間的な位置変動を伴わない静的な磁場発生源を挙げることができる。変動磁場発生源としては、エレベータや電車の如き移動金属体が該当する。静的な磁場発生源としては、電源室の如き電気設備やMRI装置のような磁場発生装置が該当する。以下では、磁場発生源が変動磁場発生源としてのエレベータである場合について説明する。
この磁場発生源にて発生された磁場による磁気ノイズの影響を受け得る被影響機器(特許請求の範囲における被影響手段)としては、上述のMRI装置やEB露光装置を含む任意の機器を挙げることができる。以下では、被影響機器がMRI装置である場合について説明する。
各実施の形態に共通の特徴の一部は、磁気ノイズ低減構造が、磁場発生源の周囲に配置された磁気遮蔽材を備える点にある。すなわち、従来の磁気キャンセラーのように、被影響機器を取り囲むことで磁気ノイズの提供を低減するのではなく、磁場発生源を取り囲む構造を採用することで磁気ノイズの提供を低減するという発想の転換を行ったものである。この場合には、磁気のセンシングや補償を行う必要がないため、磁場発生源から被影響機器の離隔距離や、複数の被影響機器の相互間の離隔距離を低減することができ、被影響機器の配置計画の自由度を損ねることなく、被影響機器に対する磁気ノイズの影響を低減することが可能となる。
しかしながら、単に磁場発生源を磁気遮蔽材で取り囲んだ場合には、新たな問題が生じ得る。特に、変動磁場発生源の代表例と言えるエレベータを磁気遮蔽材で取り囲む場合には、種々の問題が生じ得る。すなわち、エレベータシャフト全体を磁気遮蔽材で取り囲もうとしても、エレベータカゴの出入口扉の部分においてエレベータへの人や物の出入りを可能とするためには、磁気遮蔽材を配置できないスペースが必ず生じることになり、この場合には磁気遮蔽材により形成されるべき磁路が分断されてしまい、磁気遮蔽効果が低減するという懸念があった。また、既存建屋のエレベータを磁気遮蔽材で取り囲む場合において、エレベータシャフトの内部に磁気遮蔽材を配置しようとすると、エレベータ用のレール等の付属物が障害になることや、工事上の安全確保の点からエレベータシャフトの内部に工事用足場を設置する必要があるために大規模な工事となり、エレベータを長期間に渡って停止させる必要がある等の問題がある。一方、エレベータシャフトの外部に磁気遮蔽材を配置しようとすると、各階の床スラブが障害となり、この部分には磁気遮蔽材を配置できないため、やはり、磁気遮蔽材により形成されるべき磁路が分断されてしまい、磁気遮蔽効果が低減するという懸念があった。
このような課題を解決するため、本願発明者は、単に磁場発生源を磁気遮蔽材で取り囲むのではなく、さらに磁場方向変更部を設けることを見出した。磁場方向変更部とは、磁気遮蔽材に設けられるものであって、磁場発生源にて発生される磁場のうち、磁場低減対象方向に沿った磁場の方向を他の方向に向けさせるためのものである。ここで、磁場低減対象方向とは、磁場が取り得る3次元方向の中で、被影響機器への影響を低減するために特に低減対象とすべき磁場の方向を意味する。例えば、被影響機器がMRI装置である場合、磁場低減対象方向は、MRI装置の主軸方向(超電導電磁石コイル方式のMRI装置においては水平方向)である。すなわち、磁場発生源を磁気遮蔽材で取り囲む場合において、上述のように磁気遮蔽材を配置できないスペースを設けざる負えない場合には、当該スペースにおける磁場のうち、磁場低減対象方向に沿った磁場を他の方向に向けさせることで、磁場低減対象方向に沿った磁場を低減し、被影響機器への影響を低減する。
この磁場方向変更部としては、少なくとも、複数の磁気遮蔽材の相互間に形成された「隙間」を形成する。例えば、磁場方向変更部を「隙間」とした場合、この「隙間」をエレベータカゴの出入口扉の部分に配置することで、この出入口扉に磁気遮蔽材を配置できないことによる課題を解決することが可能となる。また、磁場方向変更部として、磁気遮蔽材に対して略直交するように設けられた第2の磁気遮蔽材により形成される「庇」を設けることもできる。例えば、「庇」を床スラブに沿って配置することで、床スラブに磁気遮蔽材を配置できないことによる課題を解決することが可能となる。このように、隙間を設け、あるいはさらに庇を設けることで、磁気ノイズ低減効果を増大させることが可能となる。
〔II〕本実施の形態の具体的内容
次に、本実施の形態の具体的内容について説明する。
(構成)
最初に、本実施の形態に係る磁気ノイズ低減構造の具体的内容について説明する。図1は本実施の形態に係る磁気ノイズ低減構造が適用された建屋の縦断面図、図2は図1のA−A矢視断面図である。以下、図1、2におけるZ方向を「高さ」、Y方向を「幅」、X方向を「奥行き」と称する。ただし、これら「高さ」、「幅」、「奥行き」との表現は便宜的なものであり、本構造が図示とは異なる方向で配置される可能性があり、また、異なる表現(「高さ」を「長さ」と表現すること等)を適用することもできる。
図1に示すように、建屋1は、病院等の医療施設であり、複数階の中層階に設けられたMRI室2に隣接して、これら複数階を移動するためのエレベータ3が設けられている。各階は、コンクリート製の床スラブ4によって区画されており、この床スラブ4の下方には各階の天井部5が設けられている(以下、MRI室2が設けられた階を対象階、この対象階の一つ上方の階を上階、この対象階の一つ下方の階を下階と称する)。
天井部5は、天井板5aを備えて構成されており、この天井板5aと床スラブ4との相互間に形成された天井スペース5bには図示しない空調ダクト等が収容されている。図2に示すように、MRI室2は、MRI装置2aを磁気シールド壁2bで取り囲むように構成されており、この磁気シールド壁2bの一画には出入口2cが設けられている。図1、2に示すように、エレベータ3は、鉛直方向に沿って形成された空間部であるエレベータシャフト3aと、このエレベータシャフト3aの内部において当該エレベータシャフト3aに沿って移動可能となるように配置されたエレベータカゴ3bを備えて構成されている。ここでは、対象階におけるエレベータ3の出入口扉3cを、エレベータシャフト3aを挟んでMRI室2と反対側の面に設けている。
このように構成された建屋1の主要部分の寸法としては、図1、2に示した寸法を想定しており、各階の高さ=約4、250mm、各階の天井部5の高さ=約1、750mm、各階における天井部5から床スラブ4までの高さ=約2、500mm、エレベータシャフト3aの奥行き及び幅=約2、000mm、床スラブ4からMRI装置2aの高さ方向の超電導電磁石コイルの中心までの距離=約1、000mm、MRI装置2aの奥行き方向の超電導電磁石コイルの中心からエレベータ3の奥行き方向の中心までの距離=約3、000mmである。
このように構成された建屋1に対して、図1に示すように、本実施の形態においては、エレベータシャフト3aの側壁の外側に磁気遮蔽材10を設けている。具体的には、対象階においては、エレベータシャフト3aの側壁の外側面のうち、MRI室2側の外側面に磁気遮蔽材10を設けると共に、MRI室2と反対側の外側面に磁気遮蔽材10を設けている。また、下階においては、エレベータシャフト3aの外側面のうち、MRI室2側の外側面に磁気遮蔽材10を設けると共に、MRI室2と反対側の外側面に磁気遮蔽材10を設けている。これら磁気遮蔽材10は、エレベータシャフト3aの外側面に沿って(略鉛直方向に沿って)、当該エレベータシャフト3aを構成するコンクリート側壁の表面に、直接的に、又は任意の中間層(例えば、電磁波を遮断するための電磁波遮断層)を介して間接的に、接着等の固定手段にて固定されている。これら磁気遮蔽材10は、図2に2点鎖線で示すように、エレベータシャフト3aの幅に略対応する幅で配置されている。
ここで、対象階においては、磁場方向変更部としての隙間20が設けられている。この隙間20は、対象階にエレベータカゴ3bが停止した状態において、当該エレベータカゴ3bの高さに対応する高さ部分に設けられており、具体的には、エレベータシャフト3aの全周に渡って、当該エレベータカゴ3bの高さに対応する高さ部分の磁気遮蔽材10を省略することによって形成されている。すなわち、図1の寸法においては、磁気遮蔽材10の高さは約1、750mmとなっており、この磁気遮蔽材10の下方における磁気遮蔽材10が省略されることによって、対象階の磁気遮蔽材10と、下階の磁気遮蔽材10との相互間に、高さ約2、500mmの隙間20が形成されている。このように隙間20を設けることの効果については後述する。この隙間20は、エレベータシャフト3aの幅方向及び奥行き方向の四周の全域に設けられている。なお、図1のA−A矢視断面位置においては、隙間20が設けられているために、磁気遮蔽材10は存在していないが、図2には、隙間20の上下に配置された磁気遮蔽材10の位置を便宜的に示すため、磁気遮蔽材10を2点鎖線にて示している。
さらに、対象階及び下階においては、磁場方向変更部としての庇30が設けられている。この庇30は、MRI室2側の外側面に設けた磁気遮蔽材10に対して略直交する方向に沿って、磁気遮蔽材(第2の磁気遮蔽材)40を配置することにより形成されている(ただし、磁気遮蔽材40としては、磁気遮蔽材10と同一のものを用いることができる)。具体的には、対象階の庇30は、対象階と上階とを区画する床スラブ4の下面に沿って配置されており、下階の庇30は、下階の天井板5aの上面に沿って配置されており、これら床スラブ4や天井板5aの表面に、直接的に、又は任意の中間層(例えば、電磁波を遮断するための電磁波遮断層)を介して間接的に、接着等の固定手段にて固定されている。これら庇30は、奥行き=約2、000mmで配置されている。また、これら庇30は、エレベータシャフト3aから、MRI装置2aの奥行き方向の超電導電磁石コイルの中心に至る奥行きで配置されている。これら庇30は、磁気遮蔽材10に接するように設けられることで、これら磁気遮蔽材10との間に連続的な磁路を形成する。また、これら庇30は、図2に2点鎖線で示すように、エレベータシャフト3aの幅に略対応する幅で配置されている。このように庇30を設けることの効果については後述する。
なお、各磁気遮蔽材10、40の具体的な製造方法は任意であるが、例えば珪素鋼板(方向性珪素鋼板、無方向性珪素鋼板)、パーマロイ、電磁鋼板、あるいは、アモルファス板の如き磁性板を、単体で、又は複数枚を重合あるいは並設させて、形成することができる。特に、磁気遮蔽材10、40を珪素鋼板から形成した場合には、パーマロイ等から形成する場合に比べて材料コストが安価である点で好ましい。また、磁気遮蔽材10、40は、これら相互間における磁路が遮断されることがないように形成されることが好ましく、例えば、1枚の珪素鋼板を曲げ加工したり、2枚の珪素鋼板を相互に溶接あるいは付き合わせにて接合することで、磁気遮蔽材10、40を同時に形成する。好ましくは、磁気遮蔽材10、40を、1枚の珪素鋼板を曲げ加工することにより形成し、この折り曲げ部分に焼き鈍し処理を施することで磁化特性を初期化する。なお、磁気遮蔽材10、40の各側面には、錆び止め等のための塗装を行なってもよい。
(最適寸法)
次に、本実施の形態に係る磁気ノイズ低減構造における各部の最適寸法の検討結果を説明する。
(最適寸法−磁気遮蔽材の高さ)
最初に、隙間20及び庇30を設けていない場合の磁気ノイズ低減構造の磁気ノイズ低減効果を解析し、磁気遮蔽材10の高さ方向の最適寸法を検討する。図3は、磁界解析モデルを示す図であり、対象性を有するための1/2領域のみを示す図である。この図3に示すZ方向、Y方向、X方向は、図1、2のZ方向、Y方向、X方向にそれぞれ対応させてある(後述する図6、9、14〜21も同様)。エレベータカゴ3bは、実機のX方向、Y方向、Z方向の変動磁場の強度及び方向と一致するように、最小二乗法を用いて、垂直方向下向き0.8mWb・mで、長さ2mの磁気双極子としてモデル化した。ここでは、このエレベータカゴ3bを4方から取り囲むように磁気遮蔽材10を設置した(ただし、上述のように、図3には対象性を有するための1/2領域のみを示す)。磁気遮蔽材10の奥行きは1m、幅は2mとし、エレベータカゴ3bの奥行き方向の中心から水平方向に沿って3m離れた位置(図1のMRI装置2aの奥行き方向の超電導電磁石コイルの中心位置を想定)を評価点Pとした。解析は、三次元有限要素法による線形磁界解析により行った。磁気遮蔽材10は、厚さ10mmの珪素鋼板とし、透磁率を3000とした。エレベータカゴ3bを高さ方向に1m間隔で移動させ、各高さにおける評価点Pにおける磁束密度を評価した。この評価を、磁気遮蔽材10の高さを、0m(磁気遮蔽材10がない場合)、2m、4m、6m、8m、10mの6つの高さに変えて、それぞれ行った。
図4は、磁場の水平方向(図3のX方向)の成分(以下、Bx成分)の評価結果を示す図であり、横軸は、エレベータカゴ3bの高さ方向の位置、縦軸は、磁束密度を示す。この図4に示すように、磁束密度の最大値を、異なる高さの磁気遮蔽材10の相互間で比べると、磁気遮蔽材10の高さが高くなる程、磁束密度の最大値が小さくなることが判る。従って、Bx成分については、磁気遮蔽材10を極力高くすることが好ましいことが判る。
図5は、磁場の垂直方向(鉛直方向であり、図3のZ方向。以下同じ)の成分(以下、Bz成分)の評価結果を示す図であり、横軸は、エレベータカゴ3bの高さ方向の位置、縦軸は、磁束密度を示す。この図5に示すように、磁束密度の最大値を、異なる高さの磁気遮蔽材10の相互間で比べると、磁気遮蔽材10の高さが6m、8m、10mの3つの場合では、磁気遮蔽材10の高さを8m以上にしても、エレベータカゴ3bの高さ方向の位置=0mの場合における磁束密度が高止まりしているため、磁気遮蔽材10の高さ=6mが最適値と言える。この評価結果と、建屋1の各階の高さ方向の間隔は通常は6m程度であることから、Bz成分については、磁気遮蔽材10の高さを約6mとすることが好ましいことが判る。
(最適寸法−隙間の高さ)
次に、隙間20の高さの最適寸法を検討する。図6は、磁界解析モデルを示す図であり、対象性を有するための1/2領域のみを示す図である。この図6に示す磁界解析モデルは、特に説明なき部分は図3の磁界解析モデルと同様に構成されているが、磁気遮蔽材10の高さを6mに固定した上で、高さ方向の中心に隙間20を設けている点で異なる。ここでは、隙間20の高さを、1m、2m、2.5m、3m、4mとした各場合について、エレベータカゴ3bを高さ方向に1m間隔で移動させ、各高さにおける評価点Pにおける磁束密度を評価した。
図7は、磁場の水平方向(図6のX方向)のBx成分の評価結果を示す図であり、横軸は、エレベータカゴ3bの高さ方向の位置、縦軸は、磁束密度を示す。この図7に示すように、磁束密度の最大値を、異なる高さの隙間20の相互間で比べると、磁束密度の最大値は、隙間20の高さ=2.5mの場合が一番小さくなることが判る。また、この隙間20の高さ=2.5mの場合における磁束密度の最大値は、エレベータカゴ3bの高さ方向の位置=4mにおいて約0.69μTであり、図4に示したグラフにおいて同じく磁気遮蔽材10の高さ=6mである場合における、エレベータカゴ3bの高さ方向の位置=4mでの磁束密度の最大値=約0.77μTに対して小さくなっていることから、Bx成分に関しては、磁気遮蔽材10の高さが同じである場合には、隙間20を設けることで遮断性能が向上することが判った。
図8は、磁場の垂直方向(図3のZ方向)のBz成分の評価結果を示す図であり、横軸は、エレベータカゴ3bの高さ方向の位置、縦軸は、磁束密度を示す。この図8に示すように、磁束密度の最大値を、異なる高さの隙間20の相互間で比べると、磁束密度の最大値は、各隙間20の高さの相互間で大きな違いはないことが判った。また、各隙間20の高さにおける磁束密度の最大値は、図4に示したグラフにおいて同じく磁気遮蔽材10の高さを6mである場合における磁束密度の最大値=約0.26μTに対していずれも大きくなっており、Bz成分に関しては、隙間20を設けた場合には遮断性能が低下することが判った。
(最適寸法−庇の奥行き)
次に、庇30の奥行きの最適寸法を検討する。図9は、磁界解析モデルを示す図であり、対象性を有するための1/2領域のみを示す図である。この図9に示す磁界解析モデルは、特に説明なき部分は図6の磁界解析モデルと同様に構成されているが、隙間20の高さ=2.5mに固定した上で、上方の磁気遮蔽材10の上端と下方の磁気遮蔽材10の下端に、エレベータシャフト3aの奥行き方向に沿って奥行き1mの庇30を設けている点で異なる。ここでは、庇30の幅を、1m、2m、3mとした各場合について、エレベータカゴ3bを高さ方向に1m間隔で移動させ、各高さにおける評価点Pにおける磁束密度を評価した。
図10は、磁場の水平方向(図9のX方向)のBx成分の評価結果を示す図であり、横軸は、エレベータカゴ3bの高さ方向の位置、縦軸は、磁束密度を示す。この図10に示すように、磁束密度の最大値を、異なる幅の庇30の相互間で比べると、磁束密度の最大値は、隙間20の幅=2mの場合が一番小さくなることが判る。また、この隙間20の幅=2mの場合における磁束密度の最大値は、エレベータカゴ3bの高さ方向の位置=4mにおいて約0.62μTであり、図4に示したグラフにおいて同じく磁気遮蔽材10の高さ=6mである場合における、エレベータカゴ3bの高さ方向の位置=4mでの磁束密度の最大値=約0.77μTに対して小さくなっており、Bx成分に関しては、磁気遮蔽材10の高さが同じである場合には、庇30を設けることで遮断性能が向上することが判った。
図11は、磁場の垂直方向(図3のZ方向)のBz成分の評価結果を示す図であり、横軸は、エレベータカゴ3bの高さ方向の位置、縦軸は、磁束密度を示す。この図11に示すように、磁束密度の最大値を、異なる幅の庇30の相互間で比べると、庇30の幅が大きくなる程、磁束密度の最大値が大きくなることが判った。
(磁気ノイズ低減構造による磁気ノイズ低減効果の検討)
次に、本実施の形態に係る磁気ノイズ低減構造による磁気ノイズ低減効果の検討結果をまとめる。図12は、磁場の水平方向のBx成分の評価結果を示す図であり、図4、7、10に示した評価結果の要部を一つにまとめた図である。具体的には、図4における磁気遮蔽材10の高さ=0mの評価結果(磁気遮蔽材10がない場合の評価結果)、同図における磁気遮蔽材10の高さ=6mで、隙間20及び庇30がない場合の評価結果、図7における磁気遮蔽材10の高さ=6mで、隙間20の高さ=2.5mの評価結果(隙間20のみがあり、庇30がない場合の評価結果)、及び図10における磁気遮蔽材10の高さ=6m、隙間20の高さ=2.5m、庇30の幅=2mの評価結果(隙間20及び庇30がある場合の評価結果)をまとめた。この図12から判るように、Bx成分に関して、磁束密度の最大値は、隙間20及び庇30がない場合の評価結果に比べて、隙間20を設けた場合が小さくなっており、庇30を設けた場合にはさらに小さくなっていることが判る。これらのことから、隙間20又は庇30のいずれか一方、あるいは隙間20及び庇30の両方を設けた場合には、Bx成分の磁気ノイズ低減効果が得られることが確認できた。
図13は、磁場の垂直方向のBz成分の評価結果を示す図であり、図5、8、11に示した評価結果の要部を一つにまとめた図である。ここでは、図12と同じ各場合の評価結果をまとめた。この図13から判るように、Bz成分に関しては、隙間20や庇30による磁束密度の最大値の低減は確認できなかった。
これらのことから、隙間20や庇30を設けることで、少なくとも、特定の方向(上記の場合にはBx成分に対応するX方向)の磁気ノイズ低減効果が得られることが確認できた。ここで、被影響機器の中には、特定の方向の磁場変動に対する許容値が厳しく求められるものが存在する。例えば、MRI装置2aは、現在は、水平方向に磁場を発生する超電導電磁石コイル方式が主流となっているが、この方式のMRI装置2aでは、水平方向の変動磁場に対しての許容値が厳しく設定されている。よって、このように許容値が厳しく設定されている方向を磁場低減対象方向とし、隙間20や庇30による磁気ノイズ低減効果が得られる方向が磁場低減対象方向に合致するように、磁気遮蔽材10、隙間20、及び庇30を設置することができれば、単に磁気遮蔽材10のみを設ける場合に比べて、好ましい磁気ノイズ低減効果を得ることが可能になる。
そこで、本実施の形態においては、磁場低減対象方向=水平方向とし、この水平方向における磁気ノイズ低減効果が得られる構造で、磁気遮蔽材10、隙間20、及び庇30を設置している。具体的には、図1に関して説明したように、磁気遮蔽材10をエレベータシャフト3aに沿って(鉛直方向に沿って)配置し、磁気遮蔽材10の全体の高さ(磁気遮蔽材10の上端から、磁気遮蔽材10高さの下端に至る高さ)=約6m、隙間20の高さ=約2.5m、庇30の奥行き=約2mとしている。また、隙間20を、対象階にエレベータカゴ3bが停止した状態において、当該エレベータカゴ3bの高さに対応する高さ部分に配置したので、エレベータカゴ3bの出入口扉3cの部分を磁気遮蔽材10で塞ぐこともないため、この出入口扉3cに磁気遮蔽材10を配置できないことによる課題を解決することができた。
(磁気ノイズ低減効果の説明)
最後に、隙間20や庇30を設けることで特定の方向の磁気ノイズ低減効果が得られる理由について説明する。図14は、磁気遮蔽材10を設けていない場合における磁束の方向の解析結果を示した図である。エレベータカゴ3bは、上述のように、垂直方向下向き0.8mWb・m、長さ2mの磁気双極子としてモデル化している。この図14においては、各点における磁束の向きを2等辺三角形の頂点方向により示している。なお、各点における磁束密度の大きさは正規化により表現していない。この図14から判るように、エレベータカゴ3bの下方からZ方向にでた磁束は、徐々にX方向に向きを変え、Z方向に向きを変えつつ上方に回り込み、エレベータシャフト3aおよびその周囲を通って、再びエレベータカゴ3bに戻るように分布している。
図15は、同様の条件で図14よりもエレベータカゴ3bを評価点Pの位置よりもZ方向に2m上昇させた点での解析結果を示す。この図15においても、エレベータカゴ3bを中心として、図14とほぼ同様の磁束分布が確認される。なお、エレベータカゴ3bを2m上昇させたのは、図4に示した、評価点における磁束密度が最も大きくなる位置であるためである。
次に、図16には、磁気遮蔽材10をエレベータシャフト3aに沿って高さ=6mで設置した場合において、エレベータカゴ3bを評価点Pの位置よりもZ方向に4m上昇させた地点での解析結果を示す。これも同じく図4に示した評価点における磁束密度が最も大きくなる位置である。ここで磁気遮蔽材10の外側において、磁束の方向が変わっていることがわかる。これは、磁束は磁気遮蔽材10に対し、直交する方向で吸い込まれる性質があるためである。
図17には、図15の解析結果に示す評価点周辺(図15のA領域)の拡大図を示す。ここでは、磁束量を表す磁束密度の大きさを2等辺三角形の大きさにより表現している(5μT、3μT、1μTの3種類。後述する図18、20、22において同じ)。同様に図18には、図16の解析結果に示す評価点周辺(図16のA領域)の拡大図を示す。これら図17、18を参照し、図15に示す磁気遮蔽材10なしの場合と図16に示す磁気遮蔽材10ありの場合を比較すると、磁束の方向はいずれも水平方向となっており、Bx成分(水平方向)の磁束が強くなっているが、磁気遮蔽材10を設置することにより、Bx成分が小さくなっていることがわかる。
次に、図19には、磁気遮蔽材10に隙間2.5mを設けた場合において、エレベータカゴ3bを評価点Pの位置よりもZ方向に4m上昇させた地点での解析結果を示す。これも同じく、図7に示した評価点における磁束密度が最も大きくなる地点である。図20には、図19の解析結果に示す評価点周辺(図19のA領域)の拡大図を示す。ここでは、磁束量を表す磁束密度の大きさを2等辺三角形の大きさにより表現している。ここで、図16の場合に比べて、評価点周辺における磁束の方向が、Z方向に変更されていることが判る。これは、隙間に磁気遮蔽材10が存在しないことから、隙間に至る方向(水平方向)への磁束成分が弱くなり、その上下の磁気遮蔽材10に引き寄せられることで、これら上下の磁気遮蔽材10に至る方向(鉛直方向)への磁束成分が強くなったためであると考えられる。このため、評価点周辺においては、Bx成分が弱くなったものと考えられる。
最後に、図21に磁気遮蔽材10に高さ=2.5mの隙間20を設け、更に磁気遮蔽材10の上下端部に庇30を設置した場合において、エレベータカゴ3bをZ方向に4m上昇させた地点での解析結果を示す。これも同じく図10に示した評価点における磁束密度が最も大きくなる地点である。図22には、図21の解析結果に示す評価点周辺(図21のA領域)の拡大図を示す。ここでは、磁束量を表す磁束密度の大きさを2等辺三角形の大きさにより表現している。ここで図22では、図20に比べて、評価点周辺における磁束密度が小さくなり、特に、評価点周辺における磁束の方向が、Z方向に一層変化していることが判る。これは、庇30が存在するために、磁束が庇30に引き寄せされることで、庇30に至る方向(鉛直方向)への磁束成分が強くなったためであると考えられる。このため、評価点周辺においては、Bx成分が一層弱くなったものと考えられる。
以上のように、磁束密度の低減対象方向(例えば、超電導電磁石コイル方式におけるBx成分すなわち水平方向)に沿った磁束の方向を他の方向に向けさせるための隙間20や庇30を備えることで、評価点周辺の変動磁場量を低減させることが可能になっていると考えられる。
(本実施の形態の効果)
このように本実施の形態によれば、磁場発生源の周囲に磁気遮蔽材10を配置したので、従来の磁気キャンセラーのように被影響機器を取り囲むことで磁気ノイズの提供を低減する構造に比べて、磁気のセンシングや補償を行う必要がないため、磁場発生源から被影響機器の離隔距離や、複数の被影響機器の相互間の離隔距離を低減することができ、被影響機器の配置計画の自由度を損ねることなく、被影響機器に対する磁気ノイズの影響を低減することが可能となる。特に、磁場低減対象方向に沿った磁場の方向を他の方向に向けさせるための磁場方向変更部とを備えるので、磁場低減対象方向に関する磁気ノイズ低減効果を一層増大させることが可能となる。
また、磁場方向変更部を、複数の磁気遮蔽材10の相互間の隙間20として形成したので、磁場発生源から隙間20に至る方向へ引き寄せられる磁場成分が弱くなり、複数の磁気遮蔽材10に至る方向への磁場成分が強くなるので、磁場発生源から隙間20に至る方向への磁場を低減することが可能になる。
また、水平方向へ引き寄せられる磁場成分が弱くなり、鉛直方向への磁場成分が強くなるので、水平方向への磁場を低減することが可能になる。
また、磁場発生源であるエレベータシャフト3aから被影響機器に至る水平方向の磁場成分が弱くなり、エレベータシャフト3aに沿った鉛直方向への磁場成分が強くなるので、エレベータシャフト3aから被影響機器に至る水平方向の磁場を低減することが可能になる。特に、隙間20をエレベータ3の出入口扉3cに対応した位置に形成することで、エレベータ3の出入口扉3cを介して当該エレベータ3に人や物が出入りすることを妨げることがないため、エレベータ3の利用上の問題を生じさせることなく、磁気ノイズ低減構造を設置することが可能となる。
また、複数の磁気遮蔽材10をエレベータシャフト3aにおける側壁の外側に配置したので、エレベータ3用のレール等の付属物が磁気遮蔽材10を設置する上での障害になることもなく、工事上の安全確保の点からエレベータシャフト3aの内部に工事用足場を設置する必要もなくなるので、エレベータ3を長期間に渡って停止させる必要がなくなり、既存の建屋1のエレベータ3に対しても磁気ノイズ低減構造を容易かつ安価に設置することが可能となる。
また、磁場方向変更部を庇30として形成したので、磁場発生源から庇30に至る方向へ引き寄せられる磁場成分が強くなるので、磁場発生源から他の方向への磁場を低減することが可能になる。
また、磁場発生源であるエレベータシャフト3aから被影響機器に至る水平方向の磁場成分が一層弱くなり、エレベータシャフト3aから床スラブ4又は天井に至る鉛直方向への磁場成分が強くなるので、エレベータシャフト3aから被影響機器に至る水平方向の磁場を低減することが可能になる。
〔III〕本実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
(解決しようとする課題や発明の効果について)
また、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
(形状や数値について)
上記実施の形態で示した形状や数値は例示であり、各寸法値は任意に変更することができる。特に、隙間20の位置や寸法、庇30の位置や寸法については、本発明の概念に合致する限りにおいて、任意に変更可能である。例えば、対象階の下階の庇30に関しては、天井面の上面に沿うように配置する以外にも、対象階と下階を相互に区画する床スラブ4の下面に沿うように配置してもよい。
(磁場低減対象方向について)
磁場低減対象方向は、上述のような水平方向に限られず、被影響機器の種類、仕様、設置環境(磁場発生源と被影響機器との相互の位置関係を含む)等を考慮して任意に定めることができる。また、磁場低減対象方向は、必ずしも一つの方向に限定されず、2以上の磁場低減対象方向に対して、磁場方向変更部を設けてもよい。
(磁場方向変更部について)
磁場方向変更部は、上述した隙間20や庇30以外にも、他の構造で構築することもできる。例えば、エレベータシャフト3aに沿って複数枚の磁気遮蔽材10を並設する場合において、一部の磁気遮蔽材10のみの厚みを、他の磁気遮蔽材10に比べて増すことで、当該厚みを増した磁気遮蔽材10に引き寄せられる磁場を増大させてもよい。
(庇30の配置位置について)
上記実施の形態1においては、図1に示すように、庇30を、対象階と上階の間の床スラブ4の下面に沿った位置や、下階の天井板5aに沿った位置に配置しているが、庇30を他の位置に配置してもよい。図23は、変形例に係る磁気ノイズ低減構造が適用された建屋の縦断面図である。この図23に示すように、庇30を、対象階の天井板5aに沿った位置や、対象階と下階の間の床スラブ4の下面に沿った位置に配置してもよい。あるいは、この他にも、床スラブ4や天井板5aから離れた位置に配置することも可能である。
また、上記実施の形態1においては、庇30を、図2に2点鎖線で示すように、エレベータシャフト3aの幅に対応する幅で設けているが、他の幅で設けてもよい。図24は、変形例に係る磁気ノイズ低減構造が適用された建屋の図2に対応する断面における縦断面図である。この図24に2点鎖線で示すように、庇30を、MRI室2の幅に対応する幅で設けてもよい。あるいは、この他にも、エレベータシャフト3aやMRI室2の幅とは異なる幅で設けることもできる。
あるいは、上記実施の形態1においては、庇30を、図9の解析モデルにて示すように、磁場低減対象方向(X方向)に沿った方向にのみ設けているが、庇30をさらに他の方向に設けてもよい。図25は、変形例に係る磁気ノイズ低減構造の磁界解析モデルを示す図であり、対象性を有するための1/2領域のみを示す図である。この図25に示すように、磁場低減対象方向に沿って第2の磁気遮蔽材40Aを設けることにより形成した庇30Aに加えて、磁場低減対象方向に直交する方向(ここではZ方向)に沿って第2の磁気遮蔽材40Bを設けることにより庇30Bを形成してもよい。この第2の磁気遮蔽材40Bは、磁気遮蔽材10及び第2の磁気遮蔽材40Aに接するように設けられることで、これらとの間に連続的な磁路を形成する。
1 建屋
2 MRI室
2a MRI装置
2b 磁気シールド壁
2c 出入口
3 エレベータ
3a エレベータシャフト
3b エレベータカゴ
3c 出入口扉
4 床スラブ
5 天井部
5a 天井板
5b 天井スペース
10、40、40A、40B 磁気遮蔽材(第2の磁気遮蔽材)
20 隙間
30、30A、30B 庇
P 評価点

Claims (6)

  1. 磁場発生源にて発生される磁場を低減するための磁気ノイズ低減構造であって、
    前記磁場発生源の周囲に配置された複数の磁気遮蔽材と、
    前記複数の磁気遮蔽材の相互間に形成されることにより、前記磁場発生源にて発生される磁場のうち磁場低減対象方向に沿った磁場の方向を他の方向に向けさせる隙間と、
    を備える磁気ノイズ低減構造。
  2. 前記磁場発生源と、この磁場発生源にて発生された磁場による磁気ノイズの影響を受け得る被影響手段とを、略水平方向に沿って並設し、
    前記磁場低減対象方向を水平方向とし、
    前記複数の磁気遮蔽材の少なくとも複数の一部を略鉛直方向に沿って配置し、
    前記隙間を、略鉛直方向に沿って配置した前記磁気遮蔽材の相互間に形成した、
    請求項1に記載の磁気ノイズ低減構造。
  3. 前記磁場発生源は、略鉛直方向に沿って移動するエレベータであり、
    前記複数の磁気遮蔽材の少なくとも複数の一部を、前記エレベータのエレベータシャフトにおける側壁に沿って配置し、
    前記隙間を、前記エレベータのエレベータシャフトにおける側壁に沿って配置した前記磁気遮蔽材の相互間であって、前記エレベータの出入口扉に対応した位置に形成した、
    請求項2に記載の磁気ノイズ低減構造。
  4. 前記複数の磁気遮蔽材の少なくとも複数の一部を、前記エレベータのエレベータシャフトにおける側壁の外側に配置した、
    請求項3に記載の磁気ノイズ低減構造。
  5. 前記複数の磁気遮蔽材の少なくとも一部に対して略直交する方向に沿って第2の磁気遮蔽材を配置することで形成されるもので、前記磁場発生源にて発生される磁場のうち磁場低減対象方向に沿った磁場の方向を他の方向に向けさせる庇を備える、
    請求項1から4のいずれか一項に記載の磁気ノイズ低減構造。
  6. 前記磁場発生源は、略鉛直方向に沿って移動するエレベータであり、
    前記複数の磁気遮蔽材の少なくとも複数の一部を、前記エレベータのエレベータシャフトにおける側壁に沿って配置し、
    前記庇を、前記エレベータのエレベータシャフトに隣接する床スラブ又は天井に沿って前記第2の磁気遮蔽材を配置することにより形成した、
    請求項5に記載の磁気ノイズ低減構造。
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