JP2011140558A - 水性防汚塗料組成物及びその用途 - Google Patents

水性防汚塗料組成物及びその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】防汚性と塗膜性能とに優れ、環境負荷の小さい水性防汚塗料を提供する。
【解決手段】(I)(a)共役ジエン系単量体30質量%〜70質量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.1質量%〜15質量%、及び(c)1種または複数種の他の共重合可能な単量体15質量%〜69.9質量%、を含む単量体混合物を乳化重合して得られる特定の数平均粒子径を有する共重合体ラテックスであって、前記共重合体ラテックスを特定条件で乾燥した場合に得られる乾燥体が特定の範囲のトルエン不溶分量、トルエン膨潤度、ならびにガラス転移開始温度、および終了温度を有するものである共重合体ラテックス、および(II)防汚剤を含有する水性防汚塗料組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は、共役ジエン系共重合体ラテックスを含む水性防汚塗料組成物及びその用途に関する。
水中に浸っている船底表面にフジツボや藻類が付着すると、推進抵抗が増し、燃料消費量が増大する。もし防汚剤による対策が無い場合、海中では条件によって半年以内に1平方メートル当たり150kgの汚れが付着し、燃料消費量は5割増大する。この汚染を防ぐために、従来より様々な防汚剤が開発され使用されてきた。古くは水銀やヒ素の化合物などを含む塗料が使われ、1960年代には高い防汚効果を持つトリブチルスズを含む塗料が開発され主流となった。しかしトリブチルスズの貝類など海生生物の遺伝子への影響が明らかになると、1990年に国際海事機構海洋環境保護委員会(IMO−MEPC)による規制が始まり、2001年の外交会議で使用禁止条約が採択された。そのため、トリブチルスズに代わる新たな防汚剤が求められている。また別に環境汚染に係る有機溶剤の排出削減が求められ、塗料の水性化が検討されている。
水性防汚塗料としては例えば特定のガラス転移温度の疎水性アクリル系樹脂の水系エマルジョン、無機コロイドゾル及び疎水性アクリル系樹脂の架橋剤の三成分を有効成分として含有する船底塗料(特許文献1及び特許文献2)、シリコーンエマルション中でエチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られる複合樹脂エマルションと、ワックス又は油系撥水剤エマルションを含む水系防汚塗料組成物(特許文献3)、特定のN−アルキルポリアミン化合物の塩の存在下で(メタ)アクリル系単量体ほかを水性媒体中で乳化重合して得られる樹脂水性エマルション(特許文献4)、特定量のカルボキシル基を有する水性樹脂エマルションと2価以上の価数の金属とを特定の比率で含む水性防汚塗料(特許文献5)、2価の金属を含有する樹脂と塩基性化合物とを含有する水性防汚塗料組成物(特許文献6及び特許文献7)、有機ヒドラジン化合物とカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体単位を含む重合体とを含有する樹脂水性分散液からなる水性防汚塗料組成物(特許文献8)、2価金属をもつ単位および反応性乳化剤由来の単位を有する樹脂成分が分散されている樹脂水性分散液を含んでなる水性防汚塗料組成物(特許文献9)、硬化性を有する水性バインダー成分、有機高分子粒子及び防汚剤を配合した水性硬化型防汚塗料組成物(特許文献10)、並びにケイ素含有単量体を含有するビニル系共重合体の水性分散液を含む水性防汚塗料組成物(特許文献11)などが提案されている。
また別に用途は異なるが傷付き防止塗料の水性化も種々検討され、例えば、低温乾燥型の耐チッピング塗料組成物(特許文献12、特許文献13、特許文献14)、原料単量体の添加方法を工夫することによって各種性能を改良した共重合体ラテックス(特許文献15)などが提案されている。
特開平05−086309号公報 特開平05−112741号公報 特開平08−081524号公報 特開平09−052803号公報 特開2000−109729号公報 特開2002−371166号公報 特開2003−049123号公報 特開2006−335891号公報 特開2007−023243号公報 特開2007−169449号公報 特開2007−191531号公報 特開平07−216261号公報 特開平10−183017号公報 特開2000−178497号公報 特開2005−053950号公報
しかしながらこれらの組成物はいずれも、塗料の下地への密着性又は耐水性が低いために、長期間の防汚性能を発揮する点において満足できるものではなかった。また高価な原料を用いるなど工業的利用性の観点からも満足できるものではなかった。例えば特許文献1から特許文献5、特許文献8から11に示された組成物は樹脂水性エマルションを成分としているために、共役ジエン系単量体を原料成分としたゴムラテックスを含む組成物と異なり、十分な強度を持っていなかった。また、共役ジエン系単量体を原料成分としたゴムラテックスも本用途向けには十分な開発がされておらず、満足する物性を持つ組成物は得られていなかった。
そこで本発明は、防汚性と塗膜性能とに優れ、環境負荷の小さい水性防汚塗料を提供することを課題とする。
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、防汚剤および共重合体ラテックスを含む水性防汚塗料組成物に関し、特定のトルエン不溶分、特定のトルエン膨潤度、特定の粒子径、及び特定のガラス転移温度を有する特定の組成の共役ジエン系共重合体ラテックスを用いること等に着目し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、以下の水性防汚塗料組成物を提供する。
(1)
(I)(a)共役ジエン系単量体30質量%〜70質量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.1質量%〜15質量%、及び(c)1種又は複数種の他の共重合可能な単量体合計15質量%〜69.9質量%、を含む単量体混合物を乳化重合して得られる共重合体ラテックスであって、
(i)前記共重合体ラテックスを130℃で30分乾燥させた場合に得られる乾燥物のトルエン不溶分が95質量%〜100質量%であり、該トルエン不溶分の乾燥質量に対するトルエン不溶分のトルエン湿潤物の質量の比(トルエン膨潤度)が3.0〜10.0であり、
(ii)前記共重合体ラテックスの数平均粒子径が180nm〜500nmであり、かつ、
(iii)示差走査熱量測定において、上記共重合体ラテックスを乾燥させた乾燥物のガラス転移開始温度が−70℃〜−20℃の範囲、ガラス転移終了温度が10℃〜100℃の範囲にある前記共重合体ラテックス、及び
(II)防汚剤を含む水性防汚塗料組成物。
以下、(2)から(5)は、いずれも本発明の好ましい実施形態の1つである。
(2)前記(c)他の共重合可能な単量体の全部又は一部として、(c1)ヒドロキシアルキル基を有する単量体を、前記単量体混合物中に1質量%〜15質量%含む、前記(1)に記載の水性防汚塗料組成物。
(3)前記(c)他の共重合可能な単量体の全部又は一部として、(c2)シアン化ビニル系単量体を、前記単量体混合物中に1質量%〜30質量%含む、前記(1)又は(2)に記載の水性防汚塗料組成物。
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の水性防汚塗料組成物を用いる、防汚塗装方法。
(5)前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の水性防汚塗料組成物を用いて得られた塗膜を有する物品。
本発明の水性防汚塗料組成物を用いることにより、防汚性と塗膜性能とに優れた塗膜を得ることが可能であり、さらには、有機溶剤に起因して発生するVOC問題等や、乾燥時間の短縮による生産性の改善も期待される。
図1は本発明に用いる共重合体ラテックスの示差走査熱量曲線の一例である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
(I)共重合体ラテックス
本発明に用いる共重合体ラテックス(I)は、共役ジエン系単量体(a)、及び当該共役ジエン系単量体と共重合可能な各種単量体を乳化重合して形成することができる。
(a)共役ジエン単量体
共役ジエン系単量体(a)は、共重合体に柔軟性を与え、塗膜の密着性を付与するために重要な成分である。
共役ジエン系単量体(a)の好ましい例としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン等を挙げることができるが、これらには限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
共役ジエン系単量体(a)が、共重合体ラテックス(I)を得るための単量体混合物中に占める割合としては、30質量%〜70質量%が必須であり、更に好ましくは35質量%〜65質量%である。共役ジエン系単量体(a)の使用量を上記範囲に設定することにより、共重合体ラテックス(I)に適度の柔軟性と弾性を付与して塗膜の防汚性を向上させることができる。
(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体
本発明に用いるエチレン系不飽和カルボン酸単量体(b)は、共重合体ラテックス(I)に必要な分散安定性を与え、顔料との結合作用を高め、あるいはまた防汚剤として使用される多価金属との塩を作るために使用される成分である。
ここで、前記エチレン系不飽和カルボン酸単量体(b)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の一塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の二塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体等が挙げられるが、これらには限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、前記エチレン系不飽和カルボン酸単量体(b)が、前記単量体混合物中に占める割合としては、0.1質量%〜15質量%が必須であり、好ましくは0.2質量%〜10質量%、より好ましくは0.3質量%〜5質量%、さらに好ましくは0.4質量%〜3質量%である。エチレン系不飽和カルボン酸単量体(b)の使用量を上記範囲に設定することにより、得られる共重合体ラテックス(I)の分散安定性を良好に保つことができる。また、共重合体ラテックス(I)、又はこれを利用した水性防汚塗料の粘度を取り扱いに支障がない適度な範囲に調整することができる。
(c)他の共重合可能な単量体
本発明に用いる他の共重合可能な単量体(c)は、その種類を適宜選択することにより、共重合体ラテックス(I)にさまざまな特性を付与できる。他の共重合可能な単量体(c)の好ましい例としては、例えば、ヒドロキシアルキル基を有する単量体(c1)、シアン化ビニル系単量体(c2)、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体、等が挙げられるが、これらには限定されない。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。他の共重合可能な単量体(c)が前記単量体混合物中に占める割合は、(2種以上を組み合わせて用いる場合にはその合計で)15質量%〜69.9質量であり、好ましくは20質量%〜65質量%、より好ましくは25質量%〜60質量%である。(c)他の共重合可能な単量体の使用量を上記範囲に設定することにより、良好な接着性や安定性を得ることができる。
(c1)ヒドロキシアルキル基を有する単量体
前記ヒドロキシアルキル基を有する単量体(c1)としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体、アリルアルコール、及びN−メチロールアクリルアミド等が挙げられるが、これらには限定されない。エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体としてより具体的には、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、前記ヒドロキシアルキル基を有する単量体(c1)が、前記単量体混合物中に占める割合としては、通常1質量%〜15質量%、好ましくは1質量%〜10質量%、より好ましくは1質量%〜5質量%である。ヒドロキシアルキル基を有する単量体(c1)の使用量を当該範囲に設定することにより、良好な安定性を得ることができる。
前記ヒドロキシアルキル基を有する単量体(c1)の添加量が15質量%未満となるときは、それ以外の他の共重合可能な単量体(c)が適切な量で存在することにより、他の共重合可能な単量体(c)が合計で15質量%〜69.9質量%であるという、前記の条件が満たされる。
(c2)シアン化ビニル系単量体
前記シアン化ビニル系単量体(c2)は、共重合体の凝集力を高めると同時に、基材への優れた密着性を付与する目的で好ましく使用される成分である。
ここで、前記シアン化ビニル系単量体(c2)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等が挙げられるが、これらには限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、前記シアン化ビニル系単量体(c2)が、前記単量体混合物中に占める割合としては、好ましくは1質量%〜30質量%、より好ましくは2質量%〜27質量%である。シアン化ビニル系単量体(c2)の使用量を当該範囲に設定することにより、重合安定性を低下させることなく、塗膜の防汚性と基材との密着性を向上させることができる。
前記シアン化ビニル系単量体(c2)の添加量が15質量%未満となるときは、それ以外の他の共重合可能な単量体(c)が適切な量で存在することにより、他の共重合可能な単量体(c)が合計で15質量%〜69.9質量%であるという、前記の条件が満たされる。
前記芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等が挙げられるが、これらには限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられるが、これらには限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」及び「(メタ)アクリレート」とは、それぞれ「アクリル酸又はメタクリル酸」及び「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
前記単量体混合物には、上述した各種単量体以外にも、種々の他の共重合可能な単量体(c)を配合することができる。そのような単量体としては、例えば、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノアルキルエステル類;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどのピリジン類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのグリシジルエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、グリシジルメタクリルアミド、N,N−ブトキシメチルアクリルアミドなどのアミド類;酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;ジビニルベンゼン、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能ビニル系単量体;等が挙げられるが、これらには限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記重合には連鎖移動剤を用いることが好ましい。連鎖移動剤は特に限定されないが、好ましい例としては、例えば、核置換α−メチルスチレンの二量体のひとつであるα−メチルスチレンダイマー;n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタンなどのメルカプタン類;テトラメチルチウラジウムジスルフィド、テトラエチルチウラジウムジスルフィドなどのジスルフィド類;四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化誘導体、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
連鎖移動剤の使用量は、前記全単量体混合物100質量部に対し、割合としては好ましくは0.40質量部〜0.70質量部、さらに好ましくは0.40質量部を超えて0.65質量部までである。連鎖移動剤の使用量を上記範囲に設定することにより、本実施の形態の共重合体ラテックスを使用した塗料は優れた塗料の乾燥性と密着性を発現する。
連鎖移動剤の添加方法としては、例えば、一括添加、回分添加、連続添加、あるいはこれらの組み合わせなど公知の添加方法が用いられる。
(I)共重合体ラテックスの諸特性
(i)トルエン不溶分及びトルエン膨潤度
本実施の形態において、本発明に用いる共重合体ラテックス(I)を130℃で30分乾燥させた場合に得られる乾燥物中のトルエン不溶分(ゲル分率)としては、95質量%〜100質量%であり、好ましくは95質量%を超えて100質量%まで、より好ましくは96質量%〜99質量%である。この範囲にトルエン不溶分を調整することにより、本実施の形態の共重合体ラテックスを使用した塗料は、塗料の乾燥性と塗膜の耐水性を向上させることができる。トルエン不溶分は公知の方法で制御できるが、例えば、好ましくは、連鎖移動剤の量により調整することができる。
トルエン不溶分は、実施例に詳述した方法で測定することができる。
本実施の形態において、本発明に用いる共重合体ラテックス(I)のトルエン不溶分のトルエンに対する膨潤度(トルエン膨潤度)を特定の範囲に制御することは、優れた塗料の乾燥性や、基材への密着性を発現する上で重要である。トルエン膨潤度は、共重合体ラテックス(I)の架橋密度の尺度となるものであるが、トルエン膨潤度が低い、即ち架橋密度が高いと、塗料の乾燥性が向上する。また、トルエン膨潤度が高い、即ち架橋密度が低いと、基材への密着性が向上する。トルエン膨潤度の範囲は、3.0〜10.0であり、好ましくは3.5〜9.8、さらに好ましくは4.0〜9.5である。トルエン膨潤度がこの範囲にあると、塗料の乾燥性、基材への密着性に優れた共重合体ラテックスを得ることができる。ここで、トルエンに対する膨潤度(トルエン膨潤度)とは、測定対象物の乾燥物に対して飽和状態にまでトルエンで膨潤させた場合の質量と、乾燥物の質量との質量比を意味している。トルエンでの膨潤は、トルエン中で30分間振とうすることにより行うことができ、具体的には実施例に詳述した方法で測定することができる。
トルエン膨潤度は、共重合過程においてジエン系単量体の架橋反応を抑制する条件を選ぶことにより、大きくすることができる。架橋反応を抑制する条件としては、重合温度を低くする、重合系中の単量体濃度を高くする、等が挙げられるが、重合系中の単量体濃度の制御はトルエン膨潤度を制御する方法として有効である。重合系中の単量体濃度は、重合系中への単量体添加法により、変化する。従って、単量体添加法を適切に選択することで、単量体濃度を制御することができる。例えば、単量体添加時間を短くするほど重合系中の単量体濃度は高くなる。本実施の形態の共重合体ラテックスにおいては、多段重合法を用い、前記の連鎖移動剤を用いて、第一工程の単量体混合物の重合コンバージョン(第1工程重合率)が50質量%〜95質量%の範囲になった後に、第二工程以降の単量体混合物を添加することが好ましい。第一工程の単量体混合物の重合コンバージョンを低くすればトルエン膨潤度は増大する傾向にあり、第一工程の重合コンバージョンを高くすればトルエン膨潤度は減少する傾向にある。
(ii)平均粒子径
本実施の形態において、本発明に用いる共重合体ラテックス(I)の数平均粒子径としては、180nm〜500nmであり、好ましくは190nm〜470nm、より好ましくは200nm〜450nm、さらに好ましくは230nm〜430nm、最も好ましくは240nm〜400nmである。数平均粒子径がこの範囲にあることにより、本実施の形態の共重合体ラテックスを使用した塗料は優れた塗料の乾燥性と、塗膜の優れた密着性と防汚性を発現する。
数平均粒子径を適宜増減する方法については、重合方法についての説明において後述する。
(iii)ガラス転移温度
本実施の形態における、本発明に用いる共重合体ラテックス(I)は、示差走査熱量測定において、ガラス転移開始温度が−70℃〜−20℃の範囲にあり、ガラス転移終了温度が10℃〜100℃の範囲にある。
通常、示差走査熱量計を用いてサンプルから発生する熱量を測定し、測定温度を連続的に変化させた場合、示差走査熱量曲線においてガラス転移領域は階段状変化、すなわち曲線がそれまでのベースラインから離れ新しいベースラインに移行する、という変化として観察される。ガラス転移開始温度とは、低温側のベースラインに対し、ガラス転移の階段状変化が始まり、曲線がベースラインから外れ始める温度とする。また、ガラス転移終了温度とは、高温側のベースラインに対し、階段状変化が終わって曲線がベースラインに戻る時の温度とする(図1を参照)。
本発明に用いる(I)共重合体ラテックスのガラス転移開始温度の範囲は、−70℃〜−20℃、より好ましい範囲は−65℃〜−25℃である。また、ガラス転移終了温度は10℃〜100℃であり、より好ましくは15℃〜90℃である。
共重合体ラテックス(I)が、上記範囲のガラス転移開始温度、及びガラス転移終了温度を有することにより、本実施の形態の共役ジエン系共重合体ラテックスを使用した塗料は、密着性と、塗料の乾燥性、防汚性を向上させることができる。
本実施の形態における、本発明に用いる共重合体ラテックス(I)は、特定のガラス転移開始温度、及びガラス転移終了温度を有するが、いわゆるガラス転移温度(Tg)の数は限定されない。ガラス転移温度は、示差走査熱量曲線の微分曲線(温度−電力/時間曲線)におけるピークとして検出することができるが、ピークが1点のもの、2点以上あるもの、又は明確なピークを示さず台形状の曲線を示すもの、いずれでも構わない。
本実施の形態における特定のガラス転移開始温度、及びガラス転移終了温度を有する共重合体ラテックス(I)は、2段階以上の重合を行うことにより製造することができる。特に、各工程の単量体等混合物の組成を調整して製造することにより、所望のガラス転移開始温度、及びガラス転移終了温度に制御することができる。例えば、共役ジエン系単量体の含有率が40質量%以上の単量体混合物を重合する工程と、共役ジエン系単量体の含有量が40質量%以下の単量体混合物を重合する工程を有する2段重合法で製造することができる。この場合、第1段階での共役ジエン系単量体の含有率を多くすることでガラス転移開始温度を低くすることが可能であり、第1段階での共役ジエン系単量体の含有率を少なくすることでガラス転移開始温度を高くすることが可能である。また、第2段階での共役ジエン系単量体の含有率を多くすることでガラス転移終了温度を低くすることが可能であり、第2段階での共役ジエン系単量体の含有率を少なくすることでガラス転移終了温度を高くすることが可能である。また、2段階ではなく、3段階、又はそれ以上の重合工程を有する重合法で製造することもできる。
重合方法
本実施の形態において、本発明に用いる共重合体ラテックス(I)を製造するに際し、乳化重合の系内に単量体混合物を添加する方法についても種々の方法を採用し得る。例えば、単量体混合物の一部を一括して予め乳化重合系内に仕込み重合した後、残りの単量体混合物を連続的又は間欠的に仕込む方法が挙げられる。また、単量体混合物を各重合段の最初から連続的又は間欠的に仕込む方法が挙げられる。これらの重合方法は組み合わせることも可能である。
また単量体混合物を添加する工程において、単量体混合物の組成が連続的に変化するような、いわゆるパワーフィード法を用いることも可能である。
本実施の形態において、上述のとおり本発明に用いる共重合体ラテックス(I)の数平均粒子径としては、180nm〜500nmであり、好ましくは190nm〜470nm、より好ましくは200nm〜450nm、さらに好ましくは230nm〜430nm、最も好ましくは240nm〜400nmである。
共重合体ラテックス(I)の数平均粒子径は、乳化重合により製造する際の、乳化剤の使用量を調節する方法や公知のシード重合法を用いることで調整することが可能である。シード重合法としては、シードを作製後同一反応系内で共重合体ラテックスの重合を行うインターナルシード法、別途作製したシードを用いるエクスターナルシード法などの方法を、適宜選択して用いることができる。一般に、シードの添加量を多く設定することで、数平均粒子径を減少させることが可能であり、シードの添加量を少なく設定することで、数平均粒子径を増大させることが可能である。
本実施の形態において、共重合体ラテックス(I)の製造法については、例えば、水性媒体中で乳化剤の存在下、ラジカル開始剤により重合を行う等の方法を採用することができる。
ここで、使用する乳化剤としては、従来公知のアニオン、カチオン、両性及び非イオン性の乳化剤を用いることができる。好ましい乳化剤の例としては、例えば、脂肪族セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などのアニオン性乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性乳化剤;が挙げられるが、これらに限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。使用される乳化剤の量としては、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜2.0質量部、より好ましくは0.1質量部を超えて1.3質量部まで、さらに好ましくは0.2質量部〜0.8質量部である。
また、分子中にビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などのラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤を用いることも何ら差し支えない。
ラジカル開始剤としては、熱又は還元剤の存在下でラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤、有機系開始剤のいずれも使用することが可能である。好ましい開始剤の例としては、例えば、ペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などを挙げることができるが、これらに限定されない。
このような開始剤としてより具体的には、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスブチロニトリル、クメンヒドロペルオキシド等が挙げられるが、これらに限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、酸性亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸やその塩、エリソルビン酸やその塩、ロンガリットなどの還元剤を上述の重合開始剤と組み合わせて用いる、いわゆるレドックス重合法を用いることもできる。
共重合体ラテックス(I)を製造する場合の重合温度としては、例えば、40℃〜100℃である。ここで、生産効率と、得られる共重合体ラテックスの衝撃吸収性等の品質の観点から、重合開始時から単量体混合物の添加終了時までの期間における重合温度として、好ましくは45℃〜95℃、より好ましくは55℃〜90℃である。
また、全単量体を重合系内に添加終了後に、各単量体の重合転化率を引き上げるために重合温度を上げる方法(いわゆるクッキング工程)を採用することも可能である。このような工程における重合温度としては、好ましくは80℃〜100℃である。
共役ジエン系の共重合体ラテックス(I)を製造する場合の重合固形分濃度としては、生産効率と、乳化重合時の粒子径制御の観点から、好ましくは35質量%〜60質量%、より好ましくは40質量%〜57質量%である。ここで、「重合固形分濃度」とは、重合が完結した際の固形分濃度であり、これは乾燥により得られた固形分質量の、元の共役ジエン系共重合体ラテックス(水等を含む)質量に対する割合をいう。
前記共役ジエン系共重合体ラテックスの製造に際しては、必要に応じて公知の各種重合調整剤を乳化重合時又は乳化重合終了時に用いることができる。例えばpH調整剤、キレート化剤、などを使用することができる。
pH調整剤の好ましい例としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、モノエタノールアミンやトリエタノールアミンなどのアミン類等が挙げられるが、これらに限定されない。また、キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
(II)防汚剤
本発明の水性防汚塗料用組成物は防汚剤(II)を含む。防汚剤(II)としては、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、銀等の多価金属の亜酸化塩、チオシアン塩、エチレンビス(ジチオカルバミン酸)塩などの化合物や粉末、ジフェニルアミン等のアミン誘導体、テトラメチルチウラムジスルファイド等の含窒素硫黄系化合物、ニトリル化合物、ベンゾチアゾール系化合物、マレイミド系化合物、ピリジン系化合物などが挙げられるがこれらに限定されない。また銅、鉛、亜鉛、ニッケル、銀等の多価金属とカルボン酸基を含む有機高分子との塩も挙げられるが、これらにも限定されない。
水性防汚塗料組成物
本発明の水性防汚塗料組成物は、前記共重合体ラテックス(I)と、前記防汚剤(II)とを含んでなる。前記共重合体ラテックス(I)と、前記防汚剤(II)との添加量には特に制限はなく、使用目的、使用環境、共重合体ラテックス(I)の種類、防汚剤(II)の種類、それ以外の成分の有無および種類に応じて適宜設定することができるが、典型的には共重合体ラテックス(I)100重量部に対して防汚剤(II)5〜200重量部、好ましくは共重合体ラテックス(I)100重量部に対して防汚剤(II)10〜150重量部である。
本発明の水性防汚塗料用組成物には他に媒体としての水や少量の有機溶剤、顔料、分散剤、消泡剤、架橋剤、増粘剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、スリップ剤、殺菌剤・防腐剤、可塑剤、アクリル樹脂エマルションや水溶性樹脂等のバインダー成分を含むことができる。
有機溶剤としてはアルコールやエーテル、エステル、トルエン、キシレンなどが挙げられるが、組成物中の重量比としてVOC発生の点から、望ましくは20%以下であり、10%以下が好ましく、5%以下であることが更に好ましい。
顔料の例としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、珪藻土、シリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、セピオライト、アルミナ、酸化チタン、硫酸バリウム、ベンガラ等の無機顔料;ガラスビーズ、発泡ガラスビーズ、火山ガラス中空体、ガラス繊維等のガラス材料;カーボンブラック、セルロースパウダー、澱粉等各種有機顔料が挙げられるが、これらに限定されない。これらは1種を単独でも、又は2種以上を併用して使用することもできる。塗料中に用いられる充填剤の添加量としては、塗料組成物100乾質量部に対し、好ましくは50質量部以下である。このような範囲とすることで、得られた塗料は、優れた塗料の密着性が得られる。
塗料中に用いられる増粘剤としては、例えば、ポリカルボン酸塩類、ウレタン会合型、ポリエーテルタイプ、セルロースエーテル、ポリアクリル型、ポリアクリルアミド等を挙げることができるが、これらに限定されない。
塗料中に用いられる架橋剤・硬化剤としては、例えば、多官能エポキシ化合物、ブロックイソシアネート、メラミン樹脂、オキソザリン化合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
塗料中に用いられる発泡剤としては、例えば、重曹、炭酸アンモニウム、ニトロソ化合物、アゾ化合物、スルホニルヒドラジド等の化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
塗料中に用いられる他種エマルジョンとしては、例えば、アクリル樹脂系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン等が挙げられるが、これらに限定されない。
本実施の形態において、本発明の水性防汚塗料組成物を調製する場合、従来公知の各種分散装置を用いることができる。分散装置としては、例えばバタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ロータリーミキサー、ニーダー、ディゾルバー、ペイントコンディショナー等を使用することができる。
用途
また、本実施の形態において、本発明の水性防汚塗料組成物は、従来公知の方法、例えば、ヘラ、刷毛、エアスプレー、エアレススプレー、モルタルガン、リシンガン、ロール塗工機、ディップ法等を用いて基材に塗布することが可能である。これにより、本発明の水性防汚塗料組成物を用いる防汚塗装方法が提供される。
本実施の形態において、本発明の水性防汚塗料組成物は、各種物品に防汚塗装層を形成するために用いることができ、特に、船底、海中海上建築物、魚網などへの塗装に好適に用いることができる。
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本発明は、いかなる意味においても以下の実施例に限定されるものではない。なお、各物性の評価は、以下の通りの方法で行った。
(1)(i)共役ジエン系共重合体ラテックスのトルエン不溶分(ゲル分率)、およびトルエン膨潤度:
固形分濃度を50%、pH8に調製した共重合体ラテックスを130℃で30分間乾燥し、乾燥物(ラテックスフィルム)を得た。このラテックスフィルム0.5gをトルエン30mlと混合して27℃で3時間振とうした後、目開き32μmの金属網にてろ過し、残留物の湿潤質量と乾燥質量を秤量した。もとのラテックスフィルム質量に対する残留物の乾燥質量の割合をトルエン不溶分(質量%)とした。また、上記残留物の乾燥質量に対する上記湿潤質量の比をトルエン膨潤度とした。
(2)(iii)共役ジエン系共重合体ラテックスのガラス転移開始温度、及びガラス転移終了温度の測定:
固形分濃度を50%、pH8に調製した共重合体ラテックスを130℃で30分間乾燥し、乾燥物(ラテックスフィルム)を得た。示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製;DSC6220)を使用し、ASTM法に準じ、温度−120℃から+160℃まで、20℃/min.の速度で昇温し、本発明共重合体ラテックスの示差走査熱量曲線を得た。これにより、低温側のベースラインに対し、ガラス転移の階段状変化が始まり、曲線がベースラインから外れ始めた温度をガラス転移開始温度とした。また、高温側のベースラインに対し、階段状変化が終わって曲線がベースラインに戻る時の温度をガラス転移終了温度とした。なお、示差走査熱量曲線の例を図1に示す。
(3)(ii)共役ジエン系共重合体ラテックスの数平均粒子径:
共重合体ラテックスの数平均粒子径を動的光散乱法により、光散乱光度計(シーエヌウッド社製、モデル6000)を用いて、初期角度45度−測定角度135度で測定した。
(4)水性防汚塗料組成物の防汚性評価:
防錆塗装をあらかじめ施した鋼板に乾燥膜厚が100μmとなるよう各水性防汚塗料組成物を塗布し、常温で乾燥させ試験板を得た。これを神奈川県川崎市の海水中に浸漬し、6ヶ月、12ヶ月及び24ヶ月後の海生生物の付着面積比率(%)を測定した。
(5)水性防汚塗料組成物の密着性:
前記と同様に得た試験板の表面に、カッターナイフを用いて等間隔で格子状に傷を付けた。傷の深さは鋼板と乾燥塗膜との界面以上とした。傷付け部の中心に粘着テープを貼り付け、一定の力で引き剥がした。引き剥がした後の試験板の傷付け部分の状態を目視にて観察し、以下のような基準の5点法で採点した。試験板の傷付け部分上に残った乾燥塗膜部の多いものほど良好と判断し、高い点数を付けた。塗膜の密着性は3点以上であることが好ましい。
5:全ての塗膜が剥がれず、試験板上に残っていた。
4:全塗膜のうち、ごく一部のみが、試験板上から剥がれていた。
3:約半数の塗膜が、試験板上から剥がれていた。
2:大半の塗膜が、試験板状から剥がれていた。
1:全ての塗膜が、試験板上から剥がれていた。
(6)水性防汚塗料組成物の耐水性:
前記と同様に得た試験板を常時攪拌する23℃滅菌海水中に8ヶ月浸漬した後、23℃湿度50%雰囲気下で1週間乾燥させた。試験板表面を目視にて観察し、以下のような基準の5点法で採点した。耐水性は3点以上であることが好ましい。
5:全ての塗膜が剥がれず、クラックもなかった。
4:ごく一部にクラックが見られたが剥離はなかった。
3:ごく一部に剥離が見られた。
2:2割以上の面積に剥離が見られた。
1:大部分に剥離が見られた。
[製造例A1]
耐圧反応容器に重合初期の原料として水67質量部、乳化剤としてドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.1質量部、及び数平均粒子径40nmのポリスチレン製シードラテックス0.2質量部を含む重合初期原料を一括して仕込み、75℃にて十分に攪拌した。次いで、表1記載の第一重合工程単量体と連鎖移動剤との混合物(以下、「単量体等混合物」と略記する)を、6時間かけてこの耐圧容器内に連続的に添加した。一方、この第一重合工程の単量体混合物の添加開始から10分後より、水20質量部、水酸化ナトリウム0.1質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.1質量部、及びペルオキソ二硫酸ナトリウム1.0質量部からなる水系混合物の添加を開始し、重合反応を開始させた。この水系混合物については、9時間20分かけて連続的に添加した。
第一重合工程の単量体等混合物の添加が終了してから1時間後、重合温度を80℃に昇温し、第二重合工程の単量体等混合物を2時間で連続的にこの耐圧容器内に添加し、重合反応を継続させた。
水系混合物の添加終了後、耐圧容器内の温度を90℃に昇温させ、重合反応を継続させて重合転化率を高めた。重合反応を終了した時の重合転化率は95%以上であった。
この共重合体ラテックスに、水酸化カリウムを添加してpHを8.0に調整し、スチームストリッピング法で未反応の単量体を除去した後、最後に固形分濃度を50質量%に調整した。この共重合体ラテックスを325メッシュのフィルターを通過させて濾過し、共重合体ラテックスA1を得た。共重合体ラテックスA1の各物性の評価結果を表1に記載する。
[製造例A2−A5、B1−B9]
重合初期の原料、各重合段の単量体等混合物の組成を、表1に記載した通りに変更したこと以外は、全て製造例A1と同じ手順で共重合体ラテックスA2−A5、及びB1−B9を製造した。これらの各物性の評価結果を表1に記載する。
[実施例1]
共重合体ラテックスA1と以下の構成材料とを使用し、均一に混合した後に200メッシュふるいでろ過し水性防汚塗料組成物を得た。なお、以下の配合(質量部)は、水を除いて、全て固形分に換算した値である。
ラテックス 40
亜酸化銅 50
酸化鉄 1.5
ブチルセルソルブ 5
水 10
アデカコールW13 2
アデカネートB1015 0.1
実施例1で得られた水性防汚塗料組成物は、防汚性、密着性、及び耐水性に優れていた。
[実施例2〜5]
共重合体ラテックスA1に代えて、実施例2〜5においてそれぞれ共重合体ラテックスA2〜A5を使用したこと以外は、全て実施例1と同じ条件で塗料を調製した。結果を表2に記載する。実施例2〜5で得られた塗膜は、防汚性、密着性、耐水性に優れていた。
[比較例1]
共重合体ラテックスをA1に代えてB1に変更したこと以外は、全て実施例1と同じ条件で塗料を調製した。結果を表2に記載する。比較例1で得られた水性防汚塗料組成物は、実施例に比べ性能が劣っていた。
[比較例2〜9]
共重合体ラテックスA1に代えて、比較例2〜9においてそれぞれ共重合体ラテックスB2〜B9を使用したこと以外は、全て実施例1と同じ条件で塗料を調製した。結果を表2に記載する。得られた水性防汚塗料組成物は、実施例に比べ性能が劣っていた。
Figure 2011140558
Figure 2011140558
本発明の水性防汚塗料組成物を用いれば、防汚性と塗膜性能とに優れた塗膜を得ることが可能である。当該塗膜は、船底、海中海上建築物、魚網などの各種物品における防汚層として極めて有益であり、産業上高い利用可能性を有する。

Claims (5)

  1. (I)(a)共役ジエン系単量体30質量%〜70質量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.1質量%〜15質量%、及び(c)1種又は複数種の他の共重合可能な単量体15質量%〜69.9質量%、を含む単量体混合物を乳化重合して得られる共重合体ラテックスであって、
    (i)前記共重合体ラテックスを130℃で30分乾燥させた場合に得られる乾燥物のトルエン不溶分が95質量%〜100質量%であり、該トルエン不溶分の乾燥質量に対するトルエン不溶分のトルエン湿潤物の質量の比(トルエン膨潤度)が3.0〜10.0であり、
    (ii)前記共重合体ラテックスの数平均粒子径が180nm〜500nmであり、かつ
    (iii)示差走査熱量測定において、前記共重合体ラテックスを乾燥させた場合に得られる乾燥物のガラス転移開始温度が−70℃〜−20℃の範囲、ガラス転移終了温度が10℃〜100℃の範囲にある上記共重合体ラテックス、及び
    (II)防汚剤を含む水性防汚塗料組成物。
  2. 前記(c)他の共重合可能な単量体の全部又は一部として、(c1)ヒドロキシアルキル基を有する単量体を、前記単量体混合物中に1質量%〜15質量%含む、請求項1に記載の水性防汚塗料組成物。
  3. 前記(c)他の共重合可能な単量体の全部又は一部として、(c2)シアン化ビニル系単量体を、前記単量体混合物中に1質量%〜30質量%含む、請求項1又は2に記載の水性防汚塗料組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性防汚塗料組成物を用いる、防汚塗装方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性防汚塗料組成物を用いて得られた防汚塗装層を有する物品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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