本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。これらの実施例は、本発明を、先羽根が露光開口を開き始めることによって撮影露光を開始し、後羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光を終了する第1モードでの撮影と、露光開口を全開にしたままで、撮影露光の開始と終了のうち少なくとも開始の方を電子制御回路が撮像素子を制御することによって行う第2モードでの撮影とを、選択して行えるようにしたデジタルカメラ用のフォーカルプレンシャッタとして構成したものである。そして、このフォーカルプレンシャッタは、第2モードでの撮影を行う場合には、複数の制御方式を選択して撮影を行うようにすることも可能なものである。
また、本発明のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタは、ダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタとしても、係止タイプのフォーカルプレンシャッタとしても構成可能なものであるが、実施例は、いずれも、ダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタとして構成したものである。そして、図面は、図1〜図13が、実施例1を説明するためのものであり、図14及び図15が実施例2を説明するためのものである。尚、実施例1の説明においては、構成の説明と、第1モードでの作動説明と、第2モードでの複数の制御法式についての作動説明とを詳しく説明するが、実施例2の場合は、実施例1に対して本発明の抑止手段の構成が異なるだけであるから、その異なる構成についてだけ詳しく説明し、その他の構成や作動については、必要な範囲内で簡単に説明することにする。
先ず、主に、図1及び図2を用いて本実施例の構成を説明する。図1は、本実施例のセット状態を被写体側から見て示した平面図であり、図2は、図1から、シャッタ開閉機構の殆どを覆っている複数の部材を取り外し、左側の約半分だけを示した平面図である。尚、本実施例の説明においては、本実施例のフォーカルプレンシャッタをカメラに組み込んだとき、図1の手前側が被写体側(即ち、撮影レンズ側)になり、図1の背面側が撮像装置側になることを前提にして説明する。しかしながら、周知のように、デジタルカメラの場合には、図1の手前側が撮像装置側になり、図1の背面側が被写体側になることもある。
本実施例のシャッタ地板1は、合成樹脂製であって、その略中央部には、長方形を横長にした露光用の開口部1aが形成されているが、後述の中間板2と補助地板3の一部が見えるようにするために、図1においては、その開口部1aの右側の一部の領域を破断して示してある。そして、このシャッタ地板1は、左方と下方に二つの孔1b,1cを有していて、右方には突出部1dを有しているが、カメラ本体へは、その突出部1dをカメラ本体の受け部に嵌め込み、図示していない二つのねじを孔1b,1cに挿入して取り付けるようになっている。
また、周知のように、シャッタ地板1の撮像装置側には、所定の間隔を空けて、中間板2と補助地板3が順に取り付けられており、シャッタ地板1と中間板2との間に後述する後羽根の羽根室を構成し、中間板2と補助地板3との間に後述する先羽根の羽根室を構成している。それらのうち、中間板2は、図示していない複数の孔を、シャッタ地板1に立設された図示していない複数の軸に嵌合させているだけであるが、補助地板3は、合成樹脂製であって、図1に示されているように、二つのフック部3b、3cを、シャッタ地板1の被写体側の面に形成された二つの凹部1e,1fに掛け、開口部1aの左側の領域に立設された図示していない二つの軸に対し各々ねじによって螺着されている。
また、図2に示されているように、中間板2の外形は、シャッタ地板1の外形よりも一回り小さいが、補助地板3の外形は、シャッタ地板1の外形と略同じである。そして、中間板2と補助地板3にも、開口部1aと重なるところに開口部2a,3aが形成されている。それらのうち、開口部3aは、実際には、開口部1aよりも僅かに大きな長方形をしているだけであるが、開口部2aの方は、開口部1aよりも大きく且つ二つの長辺に対応する縁が山型(ヘ字状)に形成されている。そのため、本実施例においては、開口部1aの形状が、露光開口、即ちシャッタとしての画枠(シャッタ画枠)の形状を決めている。
図2に示されているように、シャッタ地板1の被写体側の面には、図2の上方領域と下方領域に二つの柱1g,1hが立設されているほか、それらの間の領域に四つの軸1i,1j,1k,1mが立設されている。そして、シャッタ地板1の撮像装置側の面には、四つの軸1n,1p,1q,1rが立設されており、それらのうち、軸1n,1pは、上記の軸1i,1jと同心的に立設されている。
また、シャッタ地板1には、上記の軸1i,1jを中心にした二つの円弧状の長孔1s,1tが形成されており、それらの下方端部には、平面形状が略C字状をした周知のゴム製の緩衝部材4,5が取り付けられている。更に、シャッタ地板1には、上記の軸1kを中心にした円弧状の長孔1uと、上記の軸1mを中心にした円弧状の長孔1vとが形成されているが、それらの長孔1u,1vは、一つにつながった長孔として形成されている。尚、図示していないが、補助地板3にも、長孔1s,1tと対向するところに、同じ形状の長孔が形成されている。また、長孔1u,1vが一連となるように形成されている形状は、図2においては、他の部材との重なり関係によって分かりにくいが、図4においては分かりやすく示されている。
図1において部分的に示されている支持板6と補助板7は、支持板6をシャッタ地板1側にして相互に重ねられており、二つのねじ8,9によって、上記の柱1g,1hの先端に螺着されている。そして、これらの支持板6と補助板7は、後述するフレキシブルプリント配線板15と共に、図1においてだけ示されている。また、上記の軸1i,1j,1kは、先端に小径部を形成しており、それらの小径部を、支持板6に形成された図示していない孔に挿入することによって、支持板6と補助板7が、柱1g,1hの間で撓むのを防止している。
支持板6のシャッタ地板1側の面には、図2において一点鎖線で示されている同じ構成をした周知の先羽根用電磁石10と後羽根用電磁石11とが取り付けられている。これらの電磁石10,11は、二つの脚部を有するU字形の鉄芯部材10a,11aと、中空部を有していてその外側にコイル10b,11bを巻回したボビン10c,11cとからなっている。そして、鉄芯部材10a,11aは、各々先端を磁極部とした二つの脚部が支持板6に対して垂直となるように配列して取り付けられており、各々一方の脚部に、ボビン10c,11cを嵌装している。また、ボビン10c,11cは、コイル10b,11bのための端子ピンを二つづつ立設しており、それらの先端を、支持板6と補助板7に設けた図示していない孔に挿入し、被写体側に突き出している。尚、コイル10b,11bを巻回したボビン10c,11cは、図2においてのみ示されており、他の図面には、鉄芯部材10a,11aだけを示してある。
シャッタ地板1の被写体側の面には、二つのねじ12,13によって、抑止手段14が取り付けられている。本実施例の抑止手段14は、特開2005−173132号公報などに記載されている周知の電流制御式アクチュエータの構成を変形させた電磁装置である。即ち、上記の公報に記載されている電磁アクチュエータでは、シャッタ羽根を往復回転させるための出力ピンが、永久磁石回転子の回転軸と平行になるようにして、永久磁石回転子と一体に形成されているのに対して、本実施例の抑止手段14は、後述の先羽根用第1駆動部材16が反時計方向へ回転するのを抑止することを可能にするために、合成樹脂製であって先端面が方形をしている棒状の抑止部材14bが、永久磁石回転子14aの回転軸に対して垂直になるようにして、即ちシャッタ地板1の面に対して平行になるようにして、永久磁石回転子14aと一体に形成されている。
従って、本実施例の抑止手段14は、永久磁石回転子14aに、そのような抑止部材14bを一体化している点だけが、上記のような周知の電流制御式アクチュエータの構成と異っている。また、上記の電流制御式アクチュエータは、出力ピンによってシャッタ羽根や絞り羽根などを駆動するものであるから、まさしくアクチュエータであるが、本実施例の抑止手段14は、アクチュエータではなく、抑止部材14bによって、後述する先羽根用第1駆動部材16の回転を抑止するだけのものである。そのため、抑止部材14b以外の構成は周知であるとはいえ、ここで、抑止手段14の全体構成を簡単に説明しておく。
先ず、第1固定子枠14cは、円筒形の一端を封鎖したコップ状をしていて、板状の第2固定子枠14dとの間に、永久磁石回転子14aの収容室を構成しており、それらの固定子枠14c,14dは、収容室内で永久磁石回転子14aを軸受け状態にしておき、収容室の外側に、両方の軸受け部を囲むようにしてコイル14eを巻回することによって一体化されている。そして、第1固定子枠14cの外側には、コイル14eも囲むようにして円筒状のヨーク14fが嵌装されている。また、第1固定子枠14cには、径方向に明示されていない窓が形成されており、上記の抑止部材14bは、その窓から外部へ突き出され、永久磁石回転子14aによって、所定の角度範囲内を往復回転し得るようになっている。
また、図2に示されているように、第1固定子枠14cには、永久磁石回転子14aの回転軸と平行になるようにして4本の周知の磁性体棒が被写体側から挿入されており、コイル14eの右上側の2本の磁性体棒の間には、コイル14e用の二つの端子ピンが被写体側に向けて立設されている。他方、第2固定子枠14dは、抑止部材14bの作動範囲を規制するための二つのストッパ部14d−1,14d−2を有していて、上記のように、二つのねじ12,13によって、シャッタ地板1に取り付けられている。
ここで、この抑止手段14の作動を簡単に説明しておく。本実施例の永久磁石回転子14aは、径方向に2極に着磁されており、コイル14eに対して順方向に通電すると時計方向へ回転し、抑止部材14bがストッパ部14d−1に当接して停止させられ、その後、コイル14eに対して逆方向に通電すると反時計方向へ回転し、抑止部材14bがストッパ部14d−2に当接して停止させられるようになっている。そして、抑止部材14bがストッパ部14d−1,14d−2に接触しているとき、コイル14eに対する通電を断つと、永久磁石回転子14aと4本の磁性体棒との間に作用する永久磁石回転子14aの磁力により、永久磁石回転子14aにはいずれかの方向へ回転する力が付与され、抑止部材14bとストッパ部14d−1,14d−2との接触状態が維持されるようになっている。
尚、図7のタイミングチャートに記載されている「抑止手段制御信号」における「ON−CW」は、上記のように、コイル14eに対し順方向に通電して、永久磁石回転子14aを時計方向へ回転させるための制御信号が発せられている状態を意味し、「ON−CCW」は、コイル14eに対し逆方向に通電して、永久磁石回転子14aを反時計方向へ回転させるための制御信号が発せられている状態を意味し、「OFF」は、コイル14eに対する通電制御信号が発せられていない状態を示すものである。そして、このことは、他のタイミングチャートにおいても同じである。
図1に示されているように、補助板7の被写体側の面には、フレキシブルプリント配線板15が重ねられており、上記した二つの電磁石10,11の合計四つの端子ピンを半田付けすることによって固定されている。また、このフレキシブルプリント配線板15は、右側の一部が2度折り曲げられ、抑止手段14の第1固定子枠14cに設けた上記の二つの端子ピンにも半田付けされている。更に、このフレキシブルプリント配線板15には、フラッシュ撮影に必要な周知のスイッチ機構などが取り付けられるが、それらの図示や、それらに必要な配線パターンの図示は省略されている。尚、本実施例では、フレキシブルプリント配線板15を用いているが、硬質のプリント配線板を用いてもよく、その場合には、周知のように、補助板7を設けなくてもよい場合が多い。
図2に示されているように、シャッタ地板1に立設されている上記の軸1iには、先羽根用第1駆動部材16と先羽根用第2駆動部材17とが、先羽根用第1駆動部材16をシャッタ地板1側にして、各々、回転可能に取り付けられている。尚、先羽根用第1駆動部材16と先羽根用第2駆動部材17とを、軸1iに対して好適に取り付けるため、実際には、例えば特許文献2に記載されているような構成を採用する必要があるが、そのような取付け構成には特に特徴があるわけではないので、詳細な構成の図示が省略されている。
先羽根用第1駆動部材16は、二つの被押動部16a,16bと、被抑止部16cと、駆動ピン16dとを有している。それらのうち、被押動部16aと被抑止部16cとは、両方とも、被写体側に厚く形成されている部位に、被抑止部16cよりも被押動部16aの位置を軸1iに近い位置にして、隣接して形成されている。そして、被押動部16aは、後述する先羽根用第2駆動部材17の押動部17dによって押される部位である。また、被抑止部16cは、先羽根用第1駆動部材16が反時計方向へ回転しようとするとき、抑止手段14の抑止部材14bの先端に当接して抑止される部位である。
また、駆動ピン16dは、シャッタ地板1側に立設されていて、シャッタ地板1の長孔1sに挿入され、先端部を補助地板3に形成されている図示していない上記の長孔に挿入している。また、この駆動ピン16dは、明示されていないが、その根元部の断面形状が円形であり、また、明示されているように、先端部の断面形状は小判型であって、図2においては、その根元部が上記の緩衝部材4に接触しており、先端部が後述の先羽根に連結されている。
他方、先羽根用第2駆動部材17は、筒部17aと、被押動部17bと、被写体側に厚く形成された取付部17cと、押動部17dとを有しており、その筒部17aを軸1iに回転可能に嵌合させている。また、図2においてはその一部を切断して示しているように、取付部17cの内部には、鉄片部材18と圧縮ばね19とが収容されている。そして、鉄片部材18は、軸部18aの一端に円盤状をした頭部18bを有していて、軸部18aの他端には鉄片部18cを取り付けており、軸部18aに嵌装した圧縮ばね19によって、鉄片部18cを取付部17cの中から外へ突き出す方向に付勢されている。
また、この先羽根用第2駆動部材17は、図示していない周知の先羽根用駆動ばねによって、時計方向へ回転するように付勢されている。その先羽根用駆動ばねは、特許文献2にも記載されているように、コイルばねであって、先羽根用第2駆動部材17の筒部17aに緩く嵌装されており、一端を先羽根用第2駆動部材17のばね掛け部に掛け、他端を図示していない周知のラチェット部材のばね掛け部に掛けている。そして、そのラチェット部材は、特許文献2にも記載されているように、先羽根用第2駆動部材17よりも先端側において、軸1iに対して回転可能に取り付けられており、その回転位置を、支持板6に設けられた図示していないラチェット爪によって規制されている。そのため、そのラチェット爪を一時的に外し、ラチェット部材の回転位置を変えると、先羽根用駆動ばねの付勢力が調整できるようになっている。
シャッタ地板1に立設されている上記の軸1jには、後羽根用駆動部材20が回転可能に取り付けられている。この後羽根用駆動部材20は、筒部20aと、取付部20bと、駆動ピン20cとを有しているほか、ローラー20dを回転可能に取り付けていて、筒部20aを軸1jに嵌合させている。また、図2において一部を切断して示しているように、取付部20bの内部には、鉄片部材21と圧縮ばね22が収容されている。
そして、鉄片部材21は、上記の鉄片部材18と同様に、軸部21aの一端に円盤状をした頭部21bを有し、軸部21aの他端には鉄片部21cを取り付けていて、軸部21aに嵌装した圧縮ばね22によって、鉄片部21cを取付部20bの内部から外へ突き出す方向に付勢されている。また、駆動ピン20cは、シャッタ地板1側に立設されていて、シャッタ地板1の長孔1tに挿入され、先端部を補助地板3の図示していない上記の長孔に挿入している。また、この駆動ピン20cも、上記の駆動ピン16dと同様に、根元部の断面形状が円形であり、先端部の断面形状は小判型であって、根元部は上記の緩衝部材5に当接するようになっており、先端部は後述の後羽根に連結されている。
また、この後羽根用駆動部材20は、図示していない周知の後羽根用駆動ばねによって、時計方向へ回転するように付勢されている。その後羽根用駆動ばねも、上記の先羽根用駆動ばねと同様のコイルばねであって、後羽根用駆動部材20の筒部20aに緩く嵌装されており、一端を後羽根用駆動部材20のばね掛け部に掛け、他端を図示していない周知のラチェット部材のばね掛け部に掛けている。そして、そのラチェット部材は、後羽根用駆動部材20よりも先端側において、軸1jに対して回転可能に取り付けられており、その回転位置を、支持板6に設けられた図示していないラチェット爪によって規制されるようになっている。そのため、そのラチェット爪を一時的に外し、ラチェット部材の回転位置を変えれば、後羽根用駆動ばねの付勢力が調整されるようになっている。
シャッタ地板1に立設されている上記の軸1hには、操作部材23が回転可能に取り付けられている。この操作部材23は、被押動ピン23aと軸部23bを有していて、図示していないばねによって反時計方向へ回転するように付勢されている。また、シャッタ地板1に立設されている上記の軸1kには、セット部材24が回転可能に取り付けられている。そして、このセット部材24は、軸部24aを有している。リンク部材25は、その一端に形成した孔を、操作部材23の軸部23bに対して回転可能に嵌合させ、他端に形成した孔を、セット部材24の軸部24aに対して回転可能に嵌合させている。そのため、図2において、操作部材23が反時計方向へ回転すると、セット部材24も反時計方向へ回転し、その後、操作部材23が時計方向へ回転すると、セット部材24も時計方向へ回転するようになっている。
セット部材24は、上記の軸部24aのほか、筒部24bと、二つの押動部24c,24dと、押動ピン24eと、当接ピン24fと、凹部24gとを有していて、筒部24bを軸1kに回転可能に嵌合させている。それらのうち、押動部24cは、先羽根用第2駆動部材17の被押動部17bを押す部位であり、押動部24dは、後羽根用駆動部材20のローラー20dを押す部位である。
また、押動ピン24eと当接ピン24fは、シャッタ地板1側に立設されており、押動ピン24eは、後述する戻し部材26を押す部位であり、当接ピン24fは、シャッタ地板1に形成されている上記の円弧状の長孔1uに挿入されていて、セット部材24が反時計方向へ回転したとき、長孔1uの下方端に当接する部位である。そして、そのようにして、当接ピン24fを長孔1uの下方端に接触させている位置が、セット部材24にとっての初期位置である。
更に、凹部24gは、図4から分かるように、セット部材24の肉厚部において、シャッタ地板1側の面に、押動部24c側(図4の下方側)を開いた湾状に形成されている。即ち、セット部材24は、湾状に形成された凹部24gから押動部24cまでの領域が、肉薄部となるように形成されている。そして、凹部24gの縁に、シャッタ地板1に対して垂直に形成されている壁面の一部を、後述する戻し部材26を押すための押動部24g−1としている。尚、図2においては、この符号24g−1の記載を省略している。
シャッタ地板1に立設されている上記の軸1mは、これまでの四つの軸1i,1j,1kよりも極端に短い軸である。そして、この軸1mには、戻し部材26が回転可能に取り付けられている。ところで、図2においては、この戻し部材26は、先羽根用第2駆動部材17の背面に殆ど隠れており、その形状を正しく理解することができない。そのため、この戻し部材26については、図4を用いて説明することにする。
戻し部材26は、長い突起部26aと、短い突起部26bと、押動ピン26cとを有していて、セット部材24に形成された上記の肉薄部と殆どの領域が重なるようにして配置されており、突起部26aが、セット部材24の上記の湾状の凹部24gに入り込めるようになっている。そして、この戻し部材26は、セット部材24が時計方向へ回転すると、突起部26aが押動ピン24eに押されて、反時計方向へ回転するようになっている。また、その後、セット部材24が反時計方向へ回転すると、最初は突起部26bが押動ピン24eに押され、続いて他方の突起部26aが押動部24g−1に押されて、時計方向へ回転するようになっている。
また、押動ピン26cは、戻し部材26のシャッタ地板1側に設けられていて、先端が、シャッタ地板1に形成された上記の円弧状の長孔1vに挿入されている。そして、この押動ピン26cは、戻し部材26がセット部材24によって反時計方向へ回転させられたとき、先羽根用第1駆動部材16の被押動部16bを押して、それまで反時計方向へ回転していた先羽根用第1駆動部材16を時計方向へ回転させ得るようになっている。
次に、シャッタ地板1の背面側に配置されている先羽根と後羽根の構成を説明する。先ず、先羽根は、シャッタ地板1の背面側において、上記の軸1nに対して回転可能に取り付けられたアーム27と、上記の軸1qに対して回転可能に取り付けられたアーム28と、それらの先端部に向けて順に枢支された3枚の羽根29,30,31とで構成されており、羽根31が先羽根のスリット形成羽根となっている。そして、上記の先羽根用第1駆動部材16の駆動ピン16dの先端部が、周知のようにして、アーム27に形成された図示していない長孔に嵌合している。
更に、シャッタ地板1の軸1qには、コイルばねであるセットばね32が嵌装されていて、その一端をシャッタ地板1に設けたばね掛け部1wに掛け、他端をアーム28の孔28aに掛け、アーム28を反時計方向へ回転させるように付勢している。従って、本実施例においては、このセットばね32は、後述する作動説明からも明らかになるように、先羽根を介して、先羽根用第1駆動部材16を反時計方向へ回転させる役目をしているが、それと同時に、周知のような、先羽根のガタ寄せばねの役目もしている。しかしながら、その付勢力は、上記の図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力よりも小さい。尚、このセットばね32は、アーム28を反時計方向へ回転させるように付勢しているが、軸1nに嵌装させ、アーム27を反時計方向へ回転させるように付勢した構成にしても差し支えない。
他方、後羽根は、シャッタ地板1の背面側において、上記の軸1pに対して回転可能に取り付けられたアーム33と、上記の軸1rに対して回転可能に取り付けられたアーム34と、それらの先端部に向けて順に枢支された3枚の羽根35,36,37とで構成されており、羽根37が後羽根のスリット形成羽根となっている。そして、後羽根用駆動部材20に設けられている駆動ピン20cの先端部が、周知のようにして、アーム33に形成された図示していない孔に嵌合している。
更に、シャッタ地板1の上記の軸1rには、上記のセットばね32と同じようにして、ばね38が嵌装されており、その一端をシャッタ地板1に設けられたばね掛け部1xに掛け、他端をアーム34の孔34aに掛けて、アーム34を反時計方向へ回転させるように付勢している。従って、このばね34aは、後羽根を介して、後羽根用駆動部材20を反時計方向へ回転させるように付勢していることになる。しかし、その付勢力は、上記した図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力よりも小さい。尚、このばね38は、上記のセットばね32とは異なり、周知のガタ寄せばねの役目をしているだけである。そのため、このばね38の場合には、アーム34に対して、時計方向への回転力を付与するようにしても差し支えない。
次に、本実施例の作動を説明する。既に説明したように、本実施例のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタは、撮影前に、カメラに備えられている選択手段を操作することによって、先羽根が露光開口を開き始めることによって撮影露光を開始し、後羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光を終了する第1モードでの撮影と、露光開口を全開にしたままで、撮影露光の開始と終了のうち少なくとも開始の方を電子制御回路が撮像素子を制御することによって行う第2モードでの撮影とを、選択して行えるようにしたものであり、しかも、第2モードで撮影をする場合には、複数の制御方式を採用し得るようになっている。従って、カメラの仕様決定段階では、第2モードでの撮影を行う場合には、それらの複数の制御方式のいずれか一つだけを採用することもできるし、複数の方式を採用して、撮影者が、撮影に先立って、所望の制御方式を選択できるようにすることも可能である。
そこで、本実施例の作動説明に際しては、最初に、第2モードを選択して、第1の制御方式を用いて撮影する場合を説明し、次に、第1モードを選択して撮影する場合を説明し、その後で、第2モードの撮影に採用することの可能な他の制御方式について説明することにする。そこで先ず、第2モードでの撮影を、第1の制御方式を採用して行う場合の作動を、図2〜図7を用いて説明する。尚、図2〜図6は、その場合における各作動段階を示した平面図であり、図7は、その場合における各構成手段の作動関係を示したタイミングチャートである。
図2は、セット状態を示したものである。このとき、二つの電磁石10,11のコイル10b,11bには通電されていない。しかし、先羽根用第2駆動部材17と後羽根用駆動部材20は、後述のようにしてこの状態を維持されている。また、このとき、抑止装置14のコイル14eにも通電されていない。しかし、回転子14aは、反時計方向へ回転させられた状態になっており、抑止部材14bの先端部は、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16cの作動軌跡外に退かされている。図7のタイミングチャートにおいては、抑止部材14bのこのような位置を「抑止不能位置」ということにし、作動軌跡内にある位置を「抑止可能位置」ということにして記載してある。そして、このことは、他のタイミングチャートにおいても同じである。
また、このとき、操作部材23は、図示していないカメラ本体側の部材が被押動ピン23aの右側に接触しているため、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転することができず、この状態を維持されており、それによって、セット部材24も、リンク部材25を介してこの状態を維持されている。また、この状態では、セット部材24の押動ピン24eは、戻し部材26の突起部26aを押し、戻し部材26の押動ピン26cを先羽根用第1駆動部材16の被押動部16bに押し付けている。そのため、先羽根用第1駆動部材16は、セットばね32の付勢力によって反時計方向へ回転することができず、先羽根の3枚の羽根29〜31は重畳状態になって、開口部1aの下方位置に格納されている。
また、この状態においては、セット部材24の押動部24cが、先羽根用第2駆動部材17の被押動部17bに接触している。そのため、先羽根用第2駆動部材17は、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ回転することができず、圧縮ばね19を圧縮させた状態で、鉄片部材18の鉄片部18cを先羽根用電磁石10の鉄芯部材10aの磁極部に接触させている。従って、この状態においては、鉄片部材18の頭部18bは、先羽根用第2駆動部材17の取付部17cから離れていて、鉄片部材18の軸部18aの一部が目視できるようになっている。
更に、この状態においては、セット部材24の押動部24dが、後羽根用駆動部材20のローラー20dに接触している。そのため、後羽根用駆動部材20は、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ回転することができず、圧縮ばね22を圧縮させた状態で、鉄片部材21の鉄片部21cを後羽根用電磁石11の鉄芯部材11aの磁極部に接触させている。従って、鉄片部材21の頭部21bは、後羽根用駆動部材20の取付部20bから離れていて、鉄片部材21の軸部21aの一部が目視できるようになっている。また、このとき、後羽根の3枚の羽根35〜37は重畳状態になって、開口部1aの上方位置に格納されている。
このように、図2の状態においては、露光開口、即ち開口部1aが全開状態になっていて、図示していない撮像装置には、被写体光が当たっているので、カメラの電源スイッチがオンになっていると、カメラの電子ファインダによって、撮影しようとする被写体の現在の状態を観察することが可能になる。図7のタイミングチャートにおいては、このような被写体像の観察可能な時間帯を「ライブビュー範囲」ということにし、観察不能な時間帯を「ライブビュー不能範囲」ということにして記載してある。また、図7のタイミングチャートにおいては、開口部1aの上辺と下辺との間隔を「シャッタ画枠」ということにして記載してある。そして、これらのことは、他のタイミングチャートにおいても同じである。
このようなセット状態において、撮影者は、カメラのモード選択手段により、第2モードを選択する。このとき、そのカメラが、第1の制御方式以外の制御方式も選択できるように構成されている場合は、同時に第1の制御方式も選択される。そして、電子ファインダによって被写体像を観察しながら、カメラのレリーズボタンを押すと、先羽根用電磁石10のコイル10bには通電されず、後羽根用電磁石11のコイル11bにだけ通電される。そのため、それまでは、後羽根用電磁石11の鉄芯部材11aに単に接触させられていただけの鉄片部材21が、電磁力によって吸着保持されることになる。
他方、それと殆ど同時かやや早く、抑止手段14のコイル14eに対しても順方向に通電されるので、抑止手段14の永久磁石回転子14aが時計方向へ回転させられる。上記したように、このとき、先羽根用第1駆動部材16は、セットばね32の付勢力による反時計方向の回転を、戻し部材26によって抑止されている。そのため、抑止部材14bは、永久磁石回転子14aの回転によって、その先端部を、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16cの作動軌跡内に臨ませ、ストッパ部14d−1に当接して停止させられる。つまり、抑止部材14bが、上記の「抑止可能位置」になったということである。そして、抑止部材14bがこのような状態になると、抑止手段14のコイル14eに対する通電が断たれる。そのときの状態が図3に示されている。
図3の状態になると、操作部材23の被押動ピン23aに接触している図示していないカメラ本体側の部材が、図3の右方向へ移動させられていく。そのため、操作部材23は、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ追従して回転させられ、リンク部材25を介して、セット部材24を反時計方向へ回転させていく。それにより、セット部材24の押動部24cが先羽根用第2駆動部材17の被押動部17bから離れ、押動部24dが後羽根用駆動部材20のローラー20dから離れることになる。
周知のように、このとき、後羽根用駆動部材20は、ばね38の付勢力に抗して図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力と圧縮されている圧縮ばね22の付勢力とによって若干時計方向へ回転させられるが、取付部20bが鉄片部材21の頭部21bに当接して停止する。そのため、このとき、後羽根の3枚の羽根35〜37は若干下方へ移動するが、開口部1aに進入するようなことはない。尚、このときの先羽根用第2駆動部材17の作動については後述する。
また、セット部材24は、この回転によって、最初に、押動ピン24eが、戻し部材26の短い方の突起部26bを押し、次には、押動部24g−1が、凹部24g内に入ってきた長い方の突起部26aを押して、戻し部材26を時計方向へ回転させていく。そして、このセット部材24は、最終的には、その当接ピン24fが、シャッタ地板1に形成された長孔1uの下端縁に当接することによって初期位置に復帰する。
上記のようにして、セット部材24が、図3の状態から反時計方向への回転を開始すると、それによって戻し部材26が時計方向へ回転させられるので、先羽根用第1駆動部材16は、先羽根を介して伝えられるセットばね32の付勢力によって、被押動部16bが戻し部材26の押動ピン26cに追従しながら、反時計方向へ回転させられる。しかし、この先羽根用第1駆動部材16の回転は僅かであって、先羽根の3枚の羽根29〜31が開口部1aを閉じ始める前には、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16cが、抑止手段14の抑止部材14bの先端部に当接して停止させられる。
ところで、本実施例の場合、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16cが、抑止手段14の抑止部材14bに当接するとき、先羽根用第1駆動部材16の回転モーメントの作用線は、抑止手段14の永久磁石回転子14aの回転軸の位置を通るように構成してある。そのため、抑止部材14bによって行う抑止が確実に行え、抑止が外れてしまうようなことがない。但し、本実施例の場合には、抑止手段14にストッパ部14d−1が設けられているので、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16cが、抑止手段14の抑止部材14bに当接したとき、永久磁石回転子14aを時計方向へ回転させる力が作用するように構成しても構わない。
尚、本発明の抑止手段は、本実施例のように、永久磁石回転子を備えた電磁装置であって、抑止部材がその回転子と一体になっている構成に限定されない。後述する実施例2における抑止手段41であっても構わない。また、本発明の抑止手段は、電磁装置として構成されておらず、上記した周知の電流制御式のモータや周知のステッピングモータなどの各種の電磁アクチュエータによって往復回転又は直線的な往復作動をさせられる構成をしていてもよい。また、本発明の抑止手段は、抑止部材が、周知のステッピングモータの回転子や出力軸に一体化された構成をしていてもよい。その場合には、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16cが抑止部材に当接したとき、上記したように、先羽根用第1駆動部材16の回転モーメントの作用線が、回転子の回転軸の位置を通るように構成するのが好ましい。そして、このことは、抑止部材が、シャッタ地板に対して垂直な軸を中心にして回転する部材であるように構成した場合には、どのような構成についても言えることである。
上記のようにして、セット部材24の押動部24cが先羽根用第2駆動部材17の被押動部17bから離れると、先羽根用電磁石10のコイル10bには通電されていないため、先羽根用第2駆動部材17は、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力によって急速に時計方向へ回転させられ、その最終段階で、押動部17dが、抑止部材14bによって抑止されている先羽根用第1駆動部材16の被押動部16aを押し、セットばね32の付勢力に抗して、先羽根用第1駆動部材16を先羽根と共に図3の状態に復帰させる。
尚、本実施例では、特に必要ではないため、このとき、先羽根用電磁石10のコイル10bには通電していないが、上記のような後羽根用電磁石11のコイル11bに対する通電と同時に通電をしておき、この段階になって通電を断つようにしても構わない。また、このときの先羽根用第2駆動部材17の回転は、撮影露光開始前に停止していることが好ましい。特に、先羽根用第2駆動部材17の押動部17dが先羽根用第2駆動部材16の被押動部16aに当接したときには大きな衝撃が発生するので、セット部材24が初期位置で停止する前に停止しているようにすると、撮影開始のタイミングを早くすることができ、撮影チャンスを逸するおそれが少なくなるし、連写をする場合にも有利になる。
他方、上記のようにして、セット部材24の押動部24dが後羽根用駆動部材20のローラー20dから離れると、後羽根用駆動部材20は、ばね38の付勢力に抗して図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力と圧縮ばね22の付勢力により、後羽根を作動させながら、時計方向へ回転し始める。しかし、後羽根用電磁石11のコイル11bには既に通電されていて、鉄片部材21が鉄芯部材11aに吸着されているため、後羽根用駆動部材20の取付部20bが鉄片部材21の頭部21bに当接したところで停止させられる。その状態が図4に示されている。
このようにして図4の状態になると、抑止手段14のコイル14eに対し、上記の場合とは逆方向に通電される。そのため、永久磁石回転子14aは、反時計方向に回転して、抑止部材14bの先端を先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16cの作動軌跡から退かせ、抑止部材14bをストッパ部14b−2に当接させて停止する。その状態が図5に示されている。そして、この状態になると、コイル14eに対する通電が断たれる。また、この状態になると、撮像装置は、電子制御回路(CPU)からの撮影露光開始信号によって、ライブビュー状態から撮影露光状態にさせられる。また、露光時間制御回路は、その撮影露光開始信号によって、被写体の明るさなどの撮影条件に対応した制御時間のカウントを開始する。
その後、露光時間制御回路による制御時間のカウントが終了すると、その終了信号によって、後羽根用電磁石11のコイル11bに対する通電が断たれる。そのため、鉄片部材21に対する鉄芯部材11aの吸引力が失われるので、後羽根用駆動部材20は、ばね38の付勢力に抗して後羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ急速に回転させられる。そして、それによって、後羽根の3枚の羽根35〜37は、隣接する羽根同士の重なりを小さくしながら下方へ走行してゆき、スリット形成羽根37を先頭にして露光開口即ち開口部1aを上方から閉じていく。
そして、3枚の羽根35〜37が展開状態になって開口部1aを完全に閉じると、その直後には、後羽根用駆動部材20の駆動ピン20cが緩衝部材5に当接することによって、後羽根用駆動部材20と後羽根の走行が停止させられる。その停止状態が、図6に示されている。そして、この状態になると、撮影された撮像情報は、撮像装置から情報処理回路を介して転送され、記憶装置に記憶される。
撮像情報が記憶装置に記憶されると、セット作動が直ちに開始される。図6の状態において、図示していないカメラ本体側の部材が、被押動ピン23aを押して、図示していないばねの付勢力に抗して操作部材23を時計方向へ回転させると、初期位置にあるセット部材24も、リンク部材25を介して時計方向へ回転していく。また、セット部材24が回転を開始すると、その押動ピン24eが、戻し部材26の突起部26aを押して、戻し部材26を反時計方向へ回転させていく。尚、本実施例の場合には、この戻し部材26は、ばねによって時計方向へ回転するように付勢されていないが、このような反時計方向への回転の初期段階においては、突起部26aが、押動ピン24eと押動部24g−1の間で挟持されているので、大きなガタツキもなく、反時計方向へ円滑に回転されていく。
このようにして、セット部材24と戻し部材26が回転を開始すると、先ず、セット部材24の押動部24cが先羽根用第2駆動部材17の被押動部17bを押し、先羽根用第2駆動部材17を、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させ始める。このとき、先羽根用第1駆動部材16には、セットばね32の付勢力により、先羽根を介して反時計方向へ回転する力が与えられているため、先羽根用第1駆動部材16も、その被押動部16aが先羽根用第2駆動部材17の押動部17dに追従して、反時計方向へ回転を開始する。また、それと同時に、先羽根の3枚の羽根29〜31は、上方へ移動していく。
その後、先羽根のスリット形成羽根31が、後羽根のスリット形成羽根37に所定量重なると、セット部材24の押動部24dが後羽根用駆動部材20のローラー20dを押し始めるので、後羽根用駆動部材20も、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して、反時計方向へ回転させられる。それにより、後羽根用駆動部材20の駆動ピン20cが、後羽根のアーム33を反時計方向へ回転させるので、後羽根の3枚の羽根35〜37は、上方への移動を開始させられる。そして、それ以後は、先羽根の3枚の羽根29〜31は隣接する羽根同士の重なりを小さくしながら、また、後羽根の3枚の羽根35〜37は隣接する羽根同士の重なりを大きくしながら、共に上方へ移動されていく。
このようにして、先羽根の3枚の羽根29〜31が、開口部1aの約半分を覆う位置に達すると、先羽根用第1駆動部材16の被押動部16bが、反時計方向へ回転してきた戻し部材26の押動ピン26cに当接する。そして、その当接段階においては、戻し部材26の突起部26aは、未だ、セット部材24の押動ピン24eと押動部24g−1とによって挟持された状態にある。
このような段階で、被押動部16bが戻し部材26の押動ピン26cに当接すると、それ以後は、被押動部16bが押動ピン24eによって押されるようになり、先羽根用第1駆動部材16は逆転され、セットばね32の付勢力に抗して時計方向へ回転させられていく。そして、その過程において、戻し部材26は、その突起部26aがセット部材24の凹部24gから脱出するようになり、最終的には、先羽根用第1駆動部材16を図6の状態へ復帰させ、先羽根の3枚の羽根29〜31を重畳状態にして、開口部1aの下方位置に格納させる。
他方、先羽根用第2駆動部材17と後羽根用駆動部材20は、先羽根用第1駆動部材16が時計方向へ逆転させられた後も、図示していない各々の駆動ばねの付勢力に抗して反時計方向への回転を続けており、後羽根の3枚の羽根35〜37が、重畳状態になって開口部1aから完全に退くと、その直後に、先羽根用第2駆動部材17と後羽根用駆動部材20に取り付けられている鉄片部材18,21の鉄片部18c,21cが、相前後して先羽根用電磁石10と後羽根用電磁石11の鉄芯部材10a,11aに当接する。
そして、それらの当接の僅か後に、操作部材23の被押動部23aを押していた図示していないカメラ本体側の部材の作動が停止する。それによって、セット部材24の回転も停止するが、その当接から停止するまでの過程において、鉄片部材18,21の鉄片部18c,21cは、圧縮ばね19,22を圧縮させながら取付部17c,20b内に押し込まれていく。そのため、セット部材24と各駆動部材17,20の回転が停止したときには、鉄片部材18,21の軸部18a,21aの一部が取付部17c,20b内から押し出され、頭部18b,21bが取付部17c,20bから離れた状態にさせられる。このようにして、各駆動部材16,17,20とセット部材24の停止した状態が、図2に示されたセット完了状態である。そして、この状態は、次の撮影に際し、カメラのレリーズボタンが押されるまで、上記の図示していないカメラ本体側の部材によって維持される。
次に、第1モードで撮影する場合の作動を、上記の説明で用いた図2及び図6と、新たに図8〜図10を用い説明をする。この場合には、図2のセット状態において、撮影者は、カメラのモード選択手段によって、第1モードを選択する。このとき、カメラの電源スイッチがオンになっていれば、電子表示装置によって、被写体像を観察すること(ライブビュー)が可能である。
そして、電子ファインダで被写体像を観察しながらカメラのレリーズボタンを押すと、先ず、先羽根用電磁石10のコイル10bと後羽根用電磁石11のコイル11bの両方に通電される。そのため、それまでは、各々の電磁石10,11の鉄芯部材10a,11aに対して単に接触させられていただけの鉄片部材18,21が、電磁力によって吸着保持される。他方、このモードが選択されているときには、抑止手段14のコイル14eには通電されることが全くない。そのため、抑止手段14の抑止部材14bは、常にストッパ部14d−2に接触した状態を維持している。
このように、鉄片部材18,21が二つの電磁石10,11の鉄芯部材10a,11aに吸着保持されると、図示していないカメラ本体側の部材が、操作部材23の被押動部23aから右方向へ移動していく。そのため、操作部材23は、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転され、リンク部材25を介して、セット部材24を反時計方向へ回転させていく。それによって、セット部材24の押動部24cが先羽根用第2駆動部材17の被押動部17bから離れ、押動部24dが後羽根用駆動部材20のローラー20dから離れる。
そうすると、先羽根用第2駆動部材17は、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力と圧縮ばね19の付勢力によって時計方向へ回転し始め、後羽根用駆動部材20は、ばね38の付勢力に抗して図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力と圧縮ばね22の付勢力によって、後羽根を作動させながら、時計方向へ回転し始める。しかしながら、鉄片部材18,21が既に鉄芯部材10a,11aに吸着されているため、各駆動部材17,20は、それらの取付部17c,20bが鉄片部材18,21の頭部18b,21bに当接して停止させられる。そのため、後羽根用駆動部材20が停止した段階では、後羽根は、開口部1a内に入っていない。
他方、セット部材24が、上記のように反時計方向へ回転していく過程で、戻し部材26が時計方向へ回転していくので、先羽根用第1駆動部材16は、先羽根を介して伝えられるセットばね32の付勢力によって、被押動部16bが戻し部材26の押動ピン26cに追従し、反時計方向へ回転していく。そのため、先羽根の3枚の羽根29〜31は、隣接する羽根同士の重なりを小さくしながら上方へ移動してゆき、開口部1aの下方から開口部1aを閉じていく。
そして、開口部1aを完全に閉じ終わる直前になると、先羽根用第1駆動部材16の被押動部16bと戻し部材26の押動ピン26cとの接触が外れる。そのため、先羽根用第1駆動部材16は、それ以後は、それまでよりも速く回転し、先羽根の3枚の羽根29〜31が開口部1aを完全に閉じた直後には、その被押動部16bが先羽根用第2駆動部材17の押動部17dに当接して停止させられる。
このとき、先羽根用第1駆動部材16は、その被押動部16bと戻し部材26の押動ピン26cとの接触が外れてから、被押動部16aが先羽根用第2駆動部材17の押動部17dに当接するまでの回転角度が小さかったため、押動部17dに当接しても殆どバウンドしないし、先羽根も当接したときの衝撃で大きく振動せず、速やかに静止する。他方、セット部材24の方も、それと並行して、当接ピン24fがシャッタ地板1の長孔1uの下端縁に当接し、初期位置で停止する。その状態が、図8に示されている。
図8の状態になると、被写体の明るさなどの撮影条件に対応し、露光時間制御回路によって決められた時間間隔で、先羽根用電磁石10のコイル10bに対する通電と、後羽根用電磁石11のコイル11bに対する通電とが順に断たれる。そこで先ず、先羽根用電磁石10のコイル10bに対する通電が断たれると、先羽根用第2駆動部材17が、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力によって急速に時計方向へ回転させられるが、このとき、先羽根用第2駆動部材17の押動部17dが先羽根用第1駆動部材16の被押動部16aを押すので、先羽根用第1駆動部材16も、セットばね32の付勢力に抗して時計方向へ急速に回転させられる。それによって、先羽根の3枚の羽根29〜31は、隣接する羽根同士の重なりを大きくしながら急速に下方へ走行させられ、開口部1aを上方から下方へ向けて開いていく。
続いて、後羽根用電磁石11のコイル11bに対する通電が断たれると、後羽根用駆動部材20が、ばね38の付勢力に抗して図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力によって急速に時計方向へ回転させられる。それによって、後羽根の3枚の羽根35〜37は、隣接する羽根同士の重なりを小さくしながら急速に下方へ走行させられ、開口部1aを上方から下方へ向けて閉じていく。そして、後羽根のスリット形成羽根37が、開口部1aを閉じ始めてからは、先羽根のスリット形成羽根31と後羽根のスリット形成羽根37との間に形成されるスリットにより、撮像素子の受像面を上方から下方へ向けて露光していく。その露光走行の途中の状態が図9に示されている。
その後、先羽根のスリット形成羽根31が開口部1aの下方へ退くと、その直後に、先羽根用第1駆動部材16の駆動ピン16dが緩衝部材4に当接することによって、先羽根用第1駆動部材16,先羽根用第2駆動部材17,先羽根の三者による露光走行が停止させられる。続いて、後羽根の3枚の羽根35〜37が展開状態になって開口部1aを完全に閉じると、その直後に、後羽根用駆動部材20の駆動ピン20cが緩衝部材5に当接することによって、後羽根用駆動部材20と後羽根との露光走行が停止させられる。その状態が、図6に示された状態である。
このようにして図6の状態になると、撮影された撮像情報が、撮像装置から情報処理回路を介して転送され、記憶装置に記憶される。そして、撮像情報が記憶装置に記憶されると、直ちにセット作動が行われるが、そのセット作動は、上記の第2モードでの撮影の場合のセット作動と全く同じである。そのため、重複を避けるために、その作動説明を省略する。
尚、本実施例における戻し部材26は、セット部材24との上記のような独特の連動構成によって往復回転させられるように構成されているが、本発明の連動構成は、そのような構成に限定されず、例えば、特許文献2に記載の二つの実施例における、「抑止部材28,41」と「セット部材27」との連結構成を採用するようにしても構わない。
また、本実施例のセットばね32は、シャッタ地板1の軸1qに嵌装されていて、その一端を、シャッタ地板1のばね掛け部1wに掛け、他端を、先羽根のアーム28に掛けているが、本発明は、このような構成に限定されず、セットばね32をシャッタ地板1の軸1iに嵌装させておき、一端を、先羽根用第1駆動部材16に掛け、他端を、先羽根用第2駆動部材17に掛けることによって、先羽根用第1駆動部材16が先羽根用第2駆動部材17に対して反時計方向へ回転し得るように、また、先羽根用第2駆動部材17が先羽根用第1駆動部材16に対して時計方向へ回転し得るようにしてもよい。
次に、第2モードでの撮影を、第2の制御方式を採用して行う場合の作動を、上記の説明で用いた図2〜図4及び図6を用いるほか、新たに図11を用いて説明する。そして、新たに用いる図11は、第2の制御方式で撮影する場合における各構成手段の作動関係を示すタイミングチャートである。尚、この第2の制御方式での作動には、上記の第1の制御方式での作動と共通するところが多い。そのため、それらの共通するところの作動については、省略するか簡単化して説明することにする。
上記の第1の制御方式の場合には、カメラに備えられているモード選択手段を操作し、第2モードでの撮影を第1の制御方式で行うように選択しても、セット状態においては、図2に示されているように、抑止手段14の抑止部材14bは、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16cの作動軌跡内には存在しておらず、撮影者が、電子ファインダによって被写体像を観察しながらカメラのレリーズボタンを押したときに、抑止手段14のコイル14eに対して順方向に通電され、抑止部材14bが被抑止部16cの作動軌跡内に入るようになっていた。
しかしながら、第2の制御方式の場合には、撮影する前に、カメラに備えられているモード選択手段を操作して、第2モードでの撮影を第2の制御方式で行うように選択した段階で、抑止手段14のコイル14eに対して順方向に電流が供給されるようになっている。そのため、カメラのレリーズボタンを押す前に、既に図3の状態が得られていて、コイル14eに対する通電も断たれている。また、図3の状態が得られているときに、カメラのモード選択手段を操作して、例えば、上記の第1モードでの撮影を選択した場合には、その操作段階で、抑止手段14のコイル14eに対して逆方向に電流が供給され、図2の状態が得られてからコイル14eに対する通電が断たれるようになる。
このようにして図3の状態が得られた後、電子ファインダによって被写体像を観察しながらカメラのレリーズボタンを押すと、先羽根用電磁石10のコイル10bには通電せず、後羽根用電磁石11のコイル11bにだけ通電される。そのため、それまで、後羽根用電磁石11の鉄芯部材11aに接触させられていた鉄片部材21が電磁力によって吸着保持される。その後、セット部材24は、操作部材23によって、反時計方向へ回転させられ、初期位置へ復帰させられるが、その過程で、戻し部材26を時計方向へ回転させていく。
そのようにして、戻し部材26が時計方向へ回転させられると、先羽根用第1駆動部材16は、セットばね32の付勢力により、被押動部16bが戻し部材26の押動ピン26cに追従して反時計方向へ回転させられるが、その回転は僅かであって、先羽根が開口部1aを閉じ始める前に、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16cが、抑止手段14の抑止部材14bの先端部に当接して停止させられる。
他方、上記のようにしてセット部材24が反時計方向へ回転を開始すると、セット部材24の押動部24dが後羽根用駆動部材20のローラー20dから離れ、セット部材24の押動部24cが先羽根用第2駆動部材17の被押動部17bから離れる。そのため、後羽根用駆動部材20は、ばね38の付勢力に抗して図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力と圧縮ばね22の付勢力によって僅かに時計方向へ回転し、後羽根が開口部1a内に入る前に、既に説明したようにして停止する。また、先羽根用第2駆動部材17の方は、先羽根用電磁石10のコイル10bに通電されていないので、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ回転させられる。それによって、先羽根用第2駆動部材17は、その回転の最終段階で、押動部17dが被押動部16aを押すことにより、セットばね32の付勢力に抗して、先羽根用第1駆動部材16を先羽根と共に図3の状態に復帰させる。そして、セット部材24も初期位置へ復帰した状態が、図4に示されている。
このようにして図4の状態になると、撮像装置は、電子制御回路(CPU)からの撮影露光開始信号によって、ライブビュー状態から撮影露光状態にさせられ、露光時間制御回路は、その撮影露光開始信号によって制御時間のカウントを開始する。その後、露光時間制御回路による制御時間のカウントが終了すると、その終了信号によって、後羽根用電磁石11のコイル11bに対する通電が断たれるので、後羽根用駆動部材20は、後羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ急速に回転させられ、後羽根の3枚の羽根35〜37を下方へ走行させる。そして、後羽根用駆動部材20は、それらの羽根35〜37が開口部1aを完全に覆った直後に、駆動ピン20cが緩衝部材5に当接することによって停止する。
ところで、上記の第1の制御方式の場合には、図4の状態が得られると、電子制御回路(CPU)からの信号によって撮影が開始する前に、抑止手段14のコイル14eに対して逆方向に電流を供給し、抑止部材14bを、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16cの作動軌跡外へ退避させていた。しかしながら、この第2の制御方式の場合には、図4の状態が得られたときは、抑止手段14のコイル14eに対して通電せず、上記のようにして後羽根が開口部1aを閉鎖した後に逆方向に通電するようにしている。
そのため、この作動方式の場合は、第1の制御方式の場合のように、抑止部材14bの退避作動によって発生する振動が少しでも撮影画像に悪影響を与えないようにするために、抑止部材14bの退避作動が終了してから、撮影露光を開始させる必要がないため、カメラのレリーズボタンが押されてから撮影露光が開始されるまでの時間を短くすることが可能になり、動いている被写体などに対してシャッタチャンスを逸することが少なくなるという利点がある。
このようにして、開口部1aが閉鎖された後、抑止手段14のコイル14eに逆方向の電流が供給されると、永久磁石回転子14aは、反時計方向へ回転し、抑止部材14bがストッパ部14d−2に当接することによって停止する。その後、通電を断った状態が図6に示されている。そして、この状態になると、撮影された撮像情報は、撮像装置から情報処理回路を介して転送され、記憶装置に記憶される。その後、直ちにセット作動が開始されるが、その作動は、第1の制御方式を選択した場合と全く同じであるため、説明を省略する。
セット作動が終了すると、上記のように図2に示された状態になるが、上記の第1の制御方式の場合には、そのような状態になっても、次の撮影に際して、撮影者がカメラのレリーズボタンを押さない限り、抑止手段14のコイル14eに対して通電されることはなかった。しかしながら、この第2の制御方式の場合には、図2のセット完了状態になると、コイル14eに対して直ちに順方向の電流が供給される。そのため、永久磁石回転子14aは時計方向へ回転させられ、抑止部材14bがストッパ部14d−1に当接することによって停止させられる。その後、コイル14eに対する通電が断たれた状態が、図3に示された状態であり、この状態で、次の撮影を待つことになる。
このように、第2の制御方式の場合には、撮影に際して、カメラのレリーズボタンが押される前に、既に抑止部材14bが先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16cの作動軌跡内に存在している。そのため、この点からも、カメラのレリーズボタンが押されてから撮影露光が開始されるまでの時間を、第1の制御方式の場合より短くすることが可能になり、動いている被写体などに対してシャッタチャンスを逸するおそれが少なくなる。従って、第2の制御方式の場合には、このことと、上記したように、撮影時の後羽根の走行終了後に抑止部材14bを図4の状態から図6の状態にすることとの両方によって、カメラのレリーズボタンが押されてから撮影露光が開始されるまでの時間を短縮することができるという特徴がある。
次に、第2モードでの撮影を、第3の制御方式を採用して行う場合の作動を、主に図12を用いて説明する。しかし、この第3の制御方式による作動は、上記の第2の制御方式での作動と殆ど同じである。そのため、両者の作動上での相違点だけを説明することにし、全体の説明は省略する。尚、図12は、第3の制御方式で撮影する場合における各構成手段の作動関係を示すタイミングチャートである。
図12と、上記の第2の制御方式での作動説明に用いた図11とを比較すれば分かるように、両者の差異は、セット作動が終了する前後の時間帯にある。その他の時間帯での作動関係は全く同じである。即ち、第2の制御方式の場合には、セット作動が終了し、後羽根用駆動部材20が停止した後で、言い換えれば、セット部材24の時計方向の回転が停止し、図2の状態が得られた後で、抑止手段14のコイル14eに対する順方向の電流の供給を行っている。それに対して、第3の制御方式の場合には、セット作動が終了する前、即ち、後羽根用駆動部材20と後羽根は未だセット作動中であって、後羽根が開口部1aから退いた直後に、コイル14eに対する順方向の電流の供給を開始している。
従って、この第3の制御方式は、第2の制御方式の場合よりも、図3の状態が早く得られることになる。つまり、最初にカメラのレリーズボタンを押してから、次の撮影の待機状態が得られるまでの時間が短くなるので、その分だけ早く、次の撮影を開始させることが可能になるという利点がある。
次に、第2モードでの撮影を、第4の制御方式を採用して行う場合の作動を説明する。この場合にも、これまでの制御方式と異なる点だけを説明すれば、詳細に説明するまでもなく、全体の作動を容易に理解することが可能である。そのため、この第4の制御方式での作動は、主に図13を用いて、上記の各制御方式の場合とは異なる点を中心にして説明することにする。尚、図13は、第4の制御方式で撮影する場合における各構成手段の作動関係を示したタイミングチャートである。
この第4の制御方式は、連写を行うための制御方式である。そして、この場合にも、カメラのモード選択手段によって第4の制御方式が選択されると、第2及び第3の制御方式の場合と同様に、抑止手段14のコイル14eに順方向の電流が供給され、抑止部材14bの先端が、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16cの作動軌跡内に入り込む。従って、図3に示されている状態が、カメラのレリーズボタンを押す直前の状態ということになる。
周知のように、連写は、複数回の撮影を連続的に行う撮影である。そして、この撮影は、主に、状態の変化している被写体を撮影するときに行うものであるから、1回の撮影サイクルに要する時間は短ければ短いほどよい。そこで、この第4の制御方式が選択された場合には、上記のようにして、抑止部材14bの先端が先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16cの作動軌跡内に入り込んだ後、コイル14eに対する通電が断たれる。そして、カメラのレリーズボタンが押されると、その後は、連写が終了する時点まで、コイル14eに対する通電は全く行われない。そのため、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16dは、セット部材24のセット作動時には、抑止手段14の抑止部材14bに当接して抑止され、セット部材24の初期位置への復帰作動時には、抑止手段14の抑止部材14bから離されることを繰り返すことになるが、先羽根の3枚の羽根29〜31は、開口部1a内に入ることがない。その他の構成部材は、既に説明した作動を繰り返すだけである。
そして、連写を終了するために、それまで押し続けていたレリーズボタンを復帰させると、最後の撮影サイクルの過程において、後羽根の3枚の羽根35〜37が開口部1aを閉鎖してから図2の状態になる前までの間に、図示していない制御回路をリセットするために、抑止手段14のコイル14eに逆方向の電流を供給して、抑止部材14bを一旦、図2に示された状態に作動させておく必要があるが、本実施例の場合には、そのタイミングは、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16cが、抑止手段14の抑止部材14bに接触していないときにするのが好ましいことから、これまでの説明からも分かるように、セット部材24が初期位置にあるときか、セット部材24がセット位置又はその近傍にあるときに作動させることになる。そのため、図13においては、それらの時点における「抑止手段(14)」の作動と、「抑止手段制御信号」の発生の状況を破線で示してある。
尚、これまでの作動説明からも分かるように、本実施例のフォーカルプレンシャッタを備えたデジタルカメラの場合には、撮影前に、カメラに備えられた選択手段を操作することにより、第1モードでの撮影と第2モードでの撮影を選択することが可能であるが、第2モードで撮影を行う場合は、設計仕様次第では、上記の四つの制御方式のいずれか一つを採用して、その制御方式でだけ撮影が行えるようにすることも可能であるし、上記の四つの制御方式のうちから複数の制御方式を採用して、採用した制御方式のうちから所望の制御方式を選択して撮影が行えるようにすることも可能である。
更に、本実施例のフォーカルプレンシャッタは、上記のように、撮影の待機状態においてはセット状態になっていて、露光開口(開口部1a)が全開になっているため、本実施例のフォーカルプレンシャッタを備えたデジタルカメラの場合には、レリーズボタンのほかに動画撮影用のボタンを備えておくことによって、その動画撮影用のボタンを押している間、動画撮影が行えるようにすることも可能になる。そして、これらのことは、下記の実施例2のフォーカルプレンシャッタを備えたデジタルカメラの場合にも言えることである。