JP2011137015A - 壊死性全腸炎の発生を減少させるための方法及び組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】実質的にコレステロールを含まない長鎖多不飽和脂肪酸(PUFA)、例えばアラキドン酸(AA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を含む経腸処方物、及びこのような経腸組成物は、n−6及びn−3長鎖PUFA、リン脂質及び/又はコリンを供給する組成物を投与することによって壊死性全腸炎の発生を減少させることができる。n−6及びn−3長鎖PUFAを含んでおり、かつこれらが優勢的にホスフチジルコリン形態にあるから、卵黄脂質から得られる組成物が好ましい。これは相乗作用を生じると考えられる。また、改良された感覚器官受容性及び安定性を与えるこのような組成物の製造方法も開示する。
【選択図】なし
Description
経腸処方物又は組成物における長鎖PUFAは、様々な文献の主題になっている。例えば米国特許第4,670,285号(Clandinin)は、乳児処方物への使用に適した特殊な脂肪ブレンドを開示している。より特定すれば、Clandinin脂肪ブレンドは、少なくとも1つのC20又はC22n−6脂肪酸とC20又はC22n−3脂肪酸とを含んでいる。これらの脂肪酸は、脂肪ブレンドが与えられる乳児に有害な作用を引起こすことを防ぐような、ある規定量のものとして開示されている。C20又はC22n−6脂肪酸は、この製品中のすべての脂肪酸の総量の約0.13〜5.6重量%で存在している。C20又はC22n−3脂肪酸は、存在している場合、製品中のすべての脂肪酸の総量の約0.01から3.33重量%で含まれている。Clandininは、n−6及びn−3脂肪酸を供給するために、卵脂質の使用を開示している。しかしながらClandininによって用いられている卵脂質はまた、高いレベルのコレステロールも含んでいる。さらにはこの文献は、卵黄脂質75〜95重量部の使用を教示しており、油の残りの部分はココヤシ油又は大豆油である。脂肪酸に関してClandininが用いている命名法をここでも使用する。
(a)実質的にコレステロールを含まない乾燥卵ホスファチド粉末を提供する工程;
(b)前記リン脂質フラクションを水相に分散させてリン脂質分散液を形成する工程;及び
(c)前記リン脂質分散液と、前記経腸処方物のその他の成分のスラリーとを組合わせる工程を含んでいる。
一般的な用語説明
脂肪酸は、様々な長さの炭化水素鎖であり、1つの端部にカルボン酸を有し、従ってこれらはこの位置において幾分極性かつ親水性にされるが、一方で、あるいは炭化水素鎖の長さに依っては様々な程度まで疎水性である。脂肪酸は炭化水素鎖の長さによってカテゴリーに分けられる。例えば約6個より少ない炭素鎖は、「短鎖」と考えられ、約6から18個の炭素鎖は「中鎖」であり、20個又はそれ以上の、炭素鎖は「長鎖」と考えられる。脂肪酸は、また1つ又はそれ以上の炭化水素鎖において「不飽和」の点である二重結合を有していてもよい。ここで用いられている「長鎖PUFA」という用語は、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合(多不飽和)を有する20個又はそれ以上の炭素原子の脂肪酸を意味する。脂肪酸における二重結合の数及び位置は、命名法の申し合わせによって示される。例えばアラキドン酸(「AA」又は「ARA」)は、20個の炭素鎖長と、メチル末端から6番目の炭素から始まる4つの二重結合とを有する。その結果、これは「C20:4n−6」と呼ばれる。同様にドコサヘキサエン酸(「DHA」)は、22個の炭素鎖長を有し、6つの二重結合がメチル末端から3番目の炭素から始まり、これは「C22:6n−3」と呼ばれる。あまり一般的ではない長鎖PUFAも知られており、いくつかが表I及びIVに挙げられている(実線の分割線の下)。
この発明に有用な組成物は、n−6及び/又はn−3長鎖PUFAを含んでいる。長鎖PUFA源は決定的なものではない。長鎖PUFAの既知源には、魚油又は海洋油、卵黄脂質及びリン脂質、単細胞油(例えば藻油及び真菌油)が含まれ、特定の長鎖PUFAをより多量に得るには、あるいくつかの源は他の源よりも良好であるということがこの分野では理解されている。その他の長鎖PUFAの食用の半精製又は精製源は、当業者には明らかであろう。新しい長鎖PUFA源は、野菜及び油を含む植物の遺伝子操作によって開発することができ、このような組換え物質の使用もまた、本発明において企図されている。
鶏の卵黄はトリグリセリドとホスファチドとの両方を含んでいるので、ホスファチドをトリグリセリド、ステロール(例えばコレステロール)及びその他の成分から分離するように、有機溶媒を用いて卵黄を加工処理することが好ましいであろう。少なくとも実験室規模では、様々な文献の方法がこの分離に適している。あるいはまた実質的にコレステロールを含まないこのような卵ホスファチドは、ファンスティール社(Pfanstiehl,Inc.)(イリノイ州ウオーケガン(Waukegan,IL))からカタログ番号P−123として乾燥粉末形態の商品として入手しうる。
本発明の組成物は、乳児及び/又は成人の栄養補助において有用である。長鎖PUFA、特にn−6及びn−3脂肪酸、最も特定すればAA及びDHAの追加は、乳児の神経の発達及び視力に有益であると一般に考えられてきた。但し相反する報告も文献には見られる。
(a)一般的にはリン脂質又はホスファチジルコリン形態にあるn−6及びn−3脂肪酸から選ばれる長鎖PUFA、
(b)結合している脂肪酸の種類又は長さとは無関係に、極性リン脂質、および
(c)コリン、好ましくはホスファチジルコリンのどれか又は全部を含んでいる。
卵黄ホスファチドをファンスティール社(Pfanstiehl,Inc.)(イリノイ州ウオーケガン(Waukegan,IL)−カタログ番号P−123)から入手し、次の実施例において使用した。この卵ホスファチドの脂肪酸及びコレステロールプロフィルを表1に示す。すべてのn−3及びすべてのn−6「長鎖」PUFAの合計も示す。
この実施例において、各々実施例Iの卵ホスファチドを用いて又は用いずに、「実験用」及び「対照用」乳児処方物を調製した。対照組成物は、修正シミラック・スペシャル・ケア(Similac Special Care(R))(オハイオ州コロンバス、ロス・プロダクツ・ディビジョン・オブ・アボット・ラボラトリーズ(Ross Products Division of Abbott Laboratories,Columbus,Ohio))であり、次の成分表を用いて調製した。その結果、下記表II〜IVに示されている組成を有する処方物が調製された。
この実験において、卵リン脂質の使用に伴う感覚器官受容性の欠点を減少させるために、プロセス変数を評価した。本発明に有用な卵リン脂質の単離により、多くの場合乳児処方における使用にとって幾分異論のある感覚器官受容性を有する卵ホスファチドをもたらす。乳児又は介護者のどちらにも異論のない産物を提供するために、これらはさらにまだ改良することができる。最終産物を改良するためのこの方法は次に記載される。
実施例II及びIIIに従って調製された処方物が、テネシー大学新生児センターの新生児室(Neonatal Nursery of the University of Tennessee Newborn Center)で実施された調査において乳児に与えられた。この調査は、Dr.Susan E.Carlsonの指揮のもとでロス・プロダクツ・ディビジョン・オブ・アボット・ラボラトリーズ(Ross Products Division of Abbott Laboratories)(調査AE78)、NICHD助成金RO1−HD31329、及びナショナル・アイ・インスティテュート(National Eye Institute)助成金RO1−EY08770からの財政援助を受けたものである。研究パラメーターは、成長、神経の発達、及び視力を含むものであった。長鎖PUFAは、大脳と目の発達に生理学的に重要であると考えられており、これらは妊娠の最後の3ヶ月間に胎児組織に急速に蓄積される。従って未熟児は成熟児に比べて長鎖PUFAの正常なレベルまで累積されていない。
この実験において、AA及びDHAを栄養の非経腸(静脈内供給)投与に含めたものを評価する。この非経腸溶液は、この分野で知られている様々な成分を含んでいてもよく、AA及びDHAは、リン脂質、トリグリセリド、又はメチルエステルの形態で供給される。AA及びDHAは、通常の非経腸組成物の担体及び賦形剤と混合された単一の活性成分であってもよい。あるいはより好ましくはAA及びDHAは、乳児の総栄養補給物を補うため又は供給するための非経腸処方物に含まれている。典型的な非経腸栄養溶液は、約2g/kg/日となる脂質レベルを含んでいる。脂質ブレンド中のAA及びDHAのレベルは、好ましくはAAについては10から30mg/kg/日、及びDHAについては3から15mg/kg/日の投与となるものであるべきである。
この実験において、実施例IIの実験用処方物の卵レシチンを、対照用処方物中のものよりほぼ10倍高いレベルで大豆レシチンに替える。大豆レシチンは、植物源に由来するその他のリン脂質のように、長鎖多不飽和酸を含まない。しかしながらリン脂質の極性及びこれらが胃腸粘膜中に容易に組込まれうる能力は、胃腸ライニングに保護作用を与えることができ、これによって、実施例IIの実験用処方物の結果に匹敵しうる結果を生じる。さらには、大豆レシチンは、リノール酸(18:2n−6−AAへの食餌必須脂肪酸先駆物質)とリノレン酸(18:3n−3−DHAへの食餌必須脂肪酸先駆物質)とを含んでいる。
この実験において、乳児用処方物におけるAA及びDHAを含むリン脂質の使用が、AA及びDHAを含むトリグリセリドの使用と比較される。実施例IIの処方物が、卵リン脂質が匹敵しうるレベルのAA及びDHAを含む単細胞微生物トリグリセリドの混合物と替えられている同様な乳児処方物と比較される。
Claims (39)
- 少なくとも1つのn−6多不飽和脂肪酸の有効量を壊死性全腸炎に罹りやすい乳児に投与することを含む乳児における壊死性全腸炎の発生を減少させる方法。
- 前記少なくとも1つのn−6多不飽和脂肪酸がアラキドン酸を含んでいる、請求項1に記載の方法。
- 前記投与が経腸で実施される、請求項2に記載の方法。
- 前記投与が非経腸で実施される、請求項2に記載の方法。
- 前記少なくとも1つのn−6多不飽和脂肪酸が、少なくとも1つのn−3多不飽和脂肪酸と組合わされて投与される、請求項1に記載の方法。
- 前記n−3多不飽和脂肪酸がドコサヘキサエン酸を含んでいる、請求項5に記載の方法。
- 前記n−6多不飽和脂肪酸がアラキドン酸を含んでおり、前記n−3多不飽和脂肪酸がドコサヘキサエン酸を含んでいる、請求項5に記載の方法。
- 前記投与が、1日につき1kgあたりアラキドン酸約1.0から約60mg、及び1日につき1kgあたりドコサヘキサエン酸約0.25から約35mgを前記乳児に供給するのに十分な量の、アラキドン酸とドコサヘキサエン酸とを含む経腸組成物を供給することにより実施される、請求項7に記載の方法。
- ドコサヘキサエン酸に対するアラキドン酸の重量比が、約2から約4の範囲である、請求項8に記載の方法。
- 前記n−6多不飽和脂肪酸及び前記n−3多不飽和脂肪酸が、卵レシチン、真菌油、藻油、及び海洋油から成る群から選ばれる1つ又はそれ以上の源から独立して選ばれる長鎖脂肪酸である、請求項5に記載の方法。
- 前記n−6多不飽和脂肪酸及び前記n−3多不飽和脂肪酸が、リン脂質形態である、請求項5に記載の方法。
- 前記非経腸溶液が、1リットルあたり少なくとも20mgのアラキドン酸と、1リットルあたり少なくとも10mgのドコサヘキサエン酸とを含む、請求項4に記載の方法。
- 前記非経腸溶液が、1リットルあたり約20から200mgのアラキドン酸と、約10から50mgのドコサヘキサエン酸とを含む、請求項12に記載の方法。
- 1日につき1kgあたり少なくとも2.0mgのn−6多不飽和脂肪酸を供給するように、十分な量の、タンパク質、炭水化物及びリン脂質を含む経腸栄養組成物を前記乳児に与えることを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記栄養供給がさらに、1日につき1kgあたり少なくとも0.5mgのn−3多不飽和脂肪酸をも供給する、請求項14に記載の方法。
- 前記栄養供給が、1日につき1kgあたり少なくとも2.0mgのアラキドン酸と少なくとも0.5mgのドコサヘキサエン酸とを供給する、請求項15に記載の方法。
- 前記経腸組成物が卵リン脂質を含んでいる、請求項16に記載の方法。
- 壊死性全腸炎に罹りやすい乳児に1日あたりの有効量のリン脂質を投与することを含む、乳児における壊死性全腸炎の発生を減少させる方法。
- 1日につき1kgあたり約60から約2400μモルのリン脂質を供給するのに十分な量の前記栄養組成物を投与することを含む、請求項18に記載の方法。
- 1日につき1kgあたり約200から約1500μモルのリン脂質を供給するのに十分な量の前記栄養組成物を投与することを含む、請求項19に記載の方法。
- 前記リン脂質が卵レシチンに由来するものである、請求項18に記載の方法。
- 前記リン脂質が、アラキドン酸とドコサヘキサエン酸とから成る群から選ばれる1つ又はそれ以上の多不飽和脂肪酸と組合わせて投与される、請求項19に記載の方法。
- 前記リン脂質が、1日につき1kgあたり約200から約1500μモルのリン脂質、約5.0mgから約40mgのアラキドン酸、及び約1.5mgから約20mgのドコサヘキサエン酸を与えるために、アラキドン酸及びドコサヘキサエン酸と組合わせて投与される、請求項22に記載の方法。
- 壊死性全腸炎に罹りやすい乳児に1日あたりの有効量のコリンを投与することを含む、乳児における壊死性全腸炎の発生を減少させる方法。
- 1日につき1kgあたり約60から約1800μモルのコリンを供給するのに十分な量の、前記コリンを含む栄養組成物を投与することを含む、請求項24に記載の方法。
- 1日につき1kgあたり約150から約1200μモルのコリンを供給するのに十分な量の前記栄養組成物を投与することを含む、請求項25に記載の方法。
- 前記コリンがホスファチジルコリンの形態である、請求項24に記載の方法。
- 前記ホスファチジルコリンが卵レシチンに由来するものである、請求項27に記載の方法。
- 前記コリンが、アラキドン酸とドコサヘキサエン酸とから成る群から選ばれる1つ又はそれ以上の多不飽和脂肪酸と組合わせて投与される、請求項25に記載の方法。
- 30.前記コリンが、1日につき1kgあたり約150から約1200μモルのコリン、約5.0mgから約40mgのアラキドン酸、及び約1.5mgから約20mgのドコサヘキサエン酸を供給するために、アラキドン酸及びドコサヘキサエン酸と組合わせて投与される、請求項29に記載の方法。
- (a)実質的にコレステロールを含まない乾燥卵ホスファチド粉末を提供する工程;
(b)前記リン脂質フラクションを水相中に分散させて、リン脂質分散液を形成する工程;及び
(c)前記リン脂質分散液と、前記経腸処方物の他の成分のスラリーとを組合わせる工程
を含む、卵黄リン脂質を含む経腸処方物の製造方法。 - 水相中への前記分散が、約2から約15重量%で卵ホスファチドを提供する、請求項31に記載の方法。
- 水相中への前記分散が、約20から50℃で卵ホスファチド粉末を水に添加することを含んでいる、請求項32に記載の方法。
- アラキドン酸とドコサヘキサエン酸とを含む改良経腸処方物であって、前記アラキドン酸及びドコサヘキサエン酸が、リン脂質の形態にあり、
(a)2から15重量%の前記リン脂質の水性分散液を形成する工程;
(b)前記分散液を脱気に付す工程;
(c)前記脱気分散液と、タンパク質、炭水化物、ビタミン、及びミネラルの群から選ばれる少なくとも1員とを組合わせて、前記経腸処方物を形成する工程;及び
(d)前記経腸処方物を均質化する工程
を含む方法によって製造されることを特徴とする処方物。 - タンパク質、炭水化物及び脂質を含む、乳児に栄養供給するのに適した処方物であって、改良が、中鎖トリグリセリドと卵リン脂質とを含む脂質ブレンドを特徴とし、前記卵リン脂質はこの脂質ブレンドの約1から約40重量%のレベルで存在し、前記卵リン脂質は実質的にコレステロールを含まない、前記処方物。
- 卵リン脂質が、脂質ブレンドの5から30重量%のレベルで存在している、請求項35に記載の処方物。
- さらに、100kcalあたり約10から約31mgの濃度でアラキドン酸を含んでいる、請求項35に記載の処方物。
- さらに、100kcalあたり約3から約16mgの濃度でドコサヘキサエン酸を含んでいる、請求項37に記載の処方物。
- 前記アラキドン酸及びドコサヘキサエン酸が、約4:1から約2:1の比で存在している、請求項38に記載の処方物。
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