JP2011136910A - アミド誘導体及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来材料以上に高い効率を発現する有機EL用材料、特に燐光材料を用いた有機EL素子において非常に有用である材料を提供する。
【解決手段】 一般式(1)で表されるアミド誘導体を用いる。
【化1】
Figure 2011136910

(式中、X及びXは各々独立して2価のアリーレン基を表す。また、Ar、Ar、Ar及びArは各々独立して炭素数6〜40の置換基を有していても良いアリール基、または炭素数5〜40の置換基を有していても良いヘテロアリール基を表す。Rは水素原子、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、又は炭素数6〜24のアリールオキシ基を表す。なお、任意のR同士がお互いに結合して架橋構造を形成しても良い。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、新規なアミド誘導体及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子に関するものである。本発明におけるアミド誘導体は、感光材料、有機光導電材料として使用でき、具体的には、平面光源や表示に使用される有機EL素子若しくは電子写真感光体等の正孔輸送材料、正孔注入材料及び発光材料として有用である。特に、本発明のアミド誘導体は、燐光材料を用いた有機EL素子において非常に有用である。
有機EL素子は、次世代の薄型平面ディスプレイとして現在盛んに研究されており、既に携帯電話のディスプレイやテレビ等への実用化も始まっている。しかし、有機EL素子をさらに広く普及させるために、素子の発光効率を一層向上させることが求められている。
有機EL素子の一般的な発光メカニズムは、両電極から電子及びホールが注入されると、それらが対電極に向かい、発光層で再結合して励起子を生成し、その励起子の励起状態が基底状態に戻るときに発光が生じるものである。この励起状態には、電子スピンの向きが反平行である一重項励起状態と、電子スピンの向きが平行となる三重項励起状態とがあるが、現在普及している有機EL素子は、一重項励起状態のみが関与する蛍光発光が主流となっている。しかし、単純な量子力学的推論から、電子と正孔の再結合により生成する一重項励起状態と三重項励起状態の比率は1:3であるので、蛍光を利用した有機EL素子の場合には内部量子効率の最大値は25%となる。つまり、励起状態の75%は発光に使用されないことになる。また、有機EL素子外部への光取り出し効率は、高々20%程度であるため、蛍光を利用した有機EL素子においては、その外部量子効率は25%×20%となり、最大5%程度と見積もられる。
このため、外部量子効率をさらに向上させるためには、励起状態のうちの75%を占める三重項励起状態からの発光、すなわち燐光も利用する必要がある。この利用が可能となれば、外部量子効率を最大20%まで向上させることができる。このような背景から、近年では燐光材料を用いた素子の開発が活発化している。
ところで、燐光材料を用いた有機EL素子では、発光層と隣接する層に用いる材料には、蛍光材料に比べて高い三重項準位(T1)を有することが求められる。一方、蛍光を利用した有機EL素子において従来使用されてきた周知の材料の三重項準位は十分とは言い難い。例えば、正孔輸送材料として良く知られている、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)の三重項準位は2.3eV程度と低いため、2.3eV以上の三重項準位を有する燐光材料と組み合わせた場合には、励起エネルギーが十分に閉じ込められず、効率の低下を招いてしまう。
さらに、三重項準位を向上させるために、材料中にカルバゾール基などの骨格を導入する方法も試みられている。例えば、カルバゾール骨格を有する化合物として、4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(CBP)が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)が、その三重項準位は2.6eV程度であり、十分なレベルとは言い難いものである。
R.Holms et.al.,Appl.Phys.Lett.,2003,82,2422
本発明の目的は、従来材料以上に高い効率を発現する有機EL用材料、特に燐光材料を用いた有機EL素子において非常に有用である材料を提供することにある。さらに詳しくは、有機EL素子等の正孔注入材料、正孔輸送材料及び発光材料に適した新規な材料を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、一般式(1)で表される特定のアミド誘導体が、従来周知の材料に比べて高い三重項準位を有することを見出した。即ち本発明は、一般式(1)で表されるアミド誘導体及びその用途に関するものである。
Figure 2011136910
(式中、X及びXは各々独立して2価のアリーレン基を表す。また、Ar、Ar、Ar及びArは各々独立して炭素数6〜40の置換基を有していても良いアリール基、または炭素数5〜40の置換基を有していても良いヘテロアリール基を表す。Rは水素原子、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、又は炭素数6〜24のアリールオキシ基を表す。なお、任意のR同士がお互いに結合して架橋構造を形成しても良い。)
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1)で表されるアミド誘導体において、Ar、Ar、Ar及びArは各々独立して炭素数6〜40の置換基を有していても良いアリール基、又は炭素数5〜40の置換基を有していても良いヘテロアリール基を表す。炭素数6〜40の置換基を有していても良いアリール基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−アントリル基、9−アントリル基、2−フルオレニル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ピセニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−sec−ブチルフェニル基、2−sec−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、3−tert−ブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、4−n−ペンチルフェニル基、4−イソペンチルフェニル基、2−ネオペンチルフェニル基、4−tert−ペンチルフェニル基、4−n−ヘキシルフェニル基、4−(2’−エチルブチル)フェニル基、4−n−ヘプチルフェニル基、4−n−オクチルフェニル基、4−(2’−エチルヘキシル)フェニル基、4−tert−オクチルフェニル基、4−n−デシルフェニル基、4−n−ドデシルフェニル基、4−n−テトラデシルフェニル基、4−シクロペンチルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−(4’−メチルシクロヘキシル)フェニル基、4−(4’−tert−ブチルシクロヘキシル)フェニル基、3−シクロヘキシルフェニル基、2−シクロヘキシルフェニル基、4−エチル−1−ナフチル基、6−n−ブチル−2−ナフチル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,5−ジイソプロピルフェニル基、2,6−ジイソブチルフェニル基、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基、2,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、4,6−ジ−tert−ブチル−2−メチルフェニル基、5−tert−ブチル−2−メチルフェニル基、4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル基、9−メチル−2−フルオレニル基、9−エチル−2−フルオレニル基、9−n−ヘキシル−2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、9,9−ジエチル−2−フルオレニル基、9,9−ジ−n−プロピル−2−フルオレニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、4−n−プロポキシフェニル基、3−n−プロポキシフェニル基、4−イソプロポキシフェニル基、2−イソプロポキシフェニル基、4−n−ブトキシフェニル基、4−イソブトキシフェニル基、2−sec−ブトキシフェニル基、4−n−ペンチルオキシフェニル基、4−イソペンチルオキシフェニル基、2−イソペンチルオキシフェニル基、4−ネオペンチルオキシフェニル基、2−ネオペンチルオキシフェニル基、4−n−ヘキシルオキシフェニル基、2−(2’−エチルブチル)オキシフェニル基、4−n−オクチルオキシフェニル基、4−n−デシルオキシフェニル基、4−n−ドデシルオキシフェニル基、4−n−テトラデシルオキシフェニル基、4−シクロヘキシルオキシフェニル基、2−シクロヘキシルオキシフェニル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基、4−n−ブトキシ−1−ナフチル基、5−エトキシ−1−ナフチル基、6−メトキシ−2−ナフチル基、6−エトキシ−2−ナフチル基、6−n−ブトキシ−2−ナフチル基、6−n−ヘキシルオキシ−2−ナフチル基、7−メトキシ−2−ナフチル基、7−n−ブトキシ−2−ナフチル基、2−メチル−4−メトキシフェニル基、2−メチル−5−メトキシフェニル基、3−メチル−4−メトキシフェニル基、3−メチル−5−メトキシフェニル基、3−エチル−5−メトキシフェニル基、2−メトキシ−4−メチルフェニル基、3−メトキシ−4−メチルフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2,5−ジメトキシフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、3,5−ジエトキシフェニル基、3,5−ジ−n−ブトキシフェニル基、2−メトキシ−4−エトキシフェニル基、2−メトキシ−6−エトキシフェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基、4−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、2−ビフェニリル基、4−(4’−メチルフェニル)フェニル基、4−(3’−メチルフェニル)フェニル基、4−(4’−メトキシフェニル)フェニル基、4−(4’−n−ブトキシフェニル)フェニル基、2−(2’−メトキシフェニル)フェニル基、4−(4’−クロロフェニル)フェニル基、3−メチル−4−フェニルフェニル基、3−メトキシ−4−フェニルフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、10−フェニルアントリル基、10−(3,5−ジフェニルフェニル)−9−アントリル基、9−フェニル−2−フルオレニル基、4−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、2−フルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−ブロモフェニル基、4−クロロ−1−ナフチル基、4−クロロ−2−ナフチル基、6−ブロモ−2−ナフチル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2,5−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2,4−ジクロロ−1−ナフチル基、1,6−ジクロロ−2−ナフチル基、2−フルオロ−4−メチルフェニル基、2−フルオロ−5−メチルフェニル基、3−フルオロ−2−メチルフェニル基、3−フルオロ−4−メチルフェニル基、2−メチル−4−フルオロフェニル基、2−メチル−5−フルオロフェニル基、3−メチル−4−フルオロフェニル基、2−クロロ−4−メチルフェニル基、2−クロロ−5−メチルフェニル基、2−クロロ−6−メチルフェニル基、2−メチル−3−クロロフェニル基、2−メチル−4−クロロフェニル基、3−クロロ−4−メチルフェニル基、3−メチル−4−クロロフェニル基、2−クロロ−4,6−ジメチルフェニル基、2−メトキシ−4−フルオロフェニル基、2−フルオロ−4−メトキシフェニル基、2−フルオロ−4−エトキシフェニル基、2−フルオロ−6−メトキシフェニル基、3−フルオロ−4−エトキシフェニル基、3−クロロ−4−メトキシフェニル基、2−メトキシ−5−クロロフェニル基、3−メトキシ−6−クロロフェニル基、5−クロロ−2,4−ジメトキシフェニル基などを挙げることができる。また、炭素数5〜40の置換基を有していても良いヘテロアリール基としては、以下に限定されるものではないが、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含有する芳香環基であり、例えば、4−キノリル基、4−ピリジル基、3−ピリジル基、2−ピリジル基、3−フリル基、2−フリル基、3−チエニル基、2−チエニル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾイミダゾリル基等の複素環基を挙げることができる。なお、ArとAr、及びArとArは互いに結合して環を形成しても良い。ArとAr、及びArとArが形成する環としては、例えば、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環等を挙げることができる。
式中、X及びXは各々独立して2価のアリーレン基を表す。以下に限定されるものではないが、例えば、置換基を有していても良いフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、アントラニル基、フルオレニル基等を挙げることができる。
式中、Rは水素原子、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜24の置換基を有していても良いアリール基、又は炭素数6〜24の置換基を有していても良いアリールオキシ基を表す。
炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1,3−シクロヘキサジエニル基、2−シクロペンテン−1−イル基等を挙げることができる。また、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等を挙げることができる。また、炭素数6〜24の置換基を有していても良いアリール基としては、具体的には、フェニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−シクロペンチルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、1−ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フェナントリル基、9,9−ジアルキル−フルオレン−2−イル基、9,9−ジ−トリフルオロメチル−フルオレン−2−イル基等を例示することができる。また、炭素数6〜24の置換基を有していても良いアリールオキシ基としては、具体的には、フェノキシ基、p−tert−ブチルフェノキシ基、3−フルオロフェノキシ基、4−フルオロフェノキシ基等を例示することができる。なお、任意のR同士がお互いに結合して架橋構造を形成しても良い。
さらに、上記一般式(1)の好ましい具体例として、下記一般式(2)を挙げることができる。
Figure 2011136910
(式中、X及びXは各々独立して2価のアリーレン基を表す。また、Ar、Ar、Ar及びArは各々独立して炭素数6〜40の置換基を有していても良いアリール基、または炭素数5〜40の置換基を有していても良いヘテロアリール基を表す。Rは水素原子、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、又は炭素数6〜24のアリールオキシ基を表す。また、nは1〜3の整数を表す。)
以下に、一般式(1)の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2011136910
Figure 2011136910
本発明の一般式(1)で表されるアミド誘導体は、公知の方法によって合成することができる(例えば、非特許文献2及び3参照)。
Tetrahedron Letters,1998年,第39巻,2367頁 Journal of Organic Chemistry,1971年,第36巻,501頁
本発明による一般式(1)で表されるアミド誘導体は、従来の材料以上に高い三重項準位を有するため、有機EL素子、特に燐光材料を用いたEL素子において高い効率を発現させることが可能となる。
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
[HPLC分析]
測定装置:東ソー製 マルチステーションLC−8020
測定方法:カラム Inertsil ODS−3V(4.6mmΦ×250mm)
検出器 UV検出(波長 254nm)
溶離液 メタノール/テトラヒドロフラン=9/1(v/v比)
[燐光スペクトル測定]
測定装置:日本分光株式会社製 分光蛍光光度計FP−6500
[NMR測定]
測定装置:バリアン社製 Gemini200
[有機EL素子の発光特性]
測定装置:TOPCON社製 輝度計LUMINANCE METER(BM−9)
合成例1 化合物(A−6)の前駆体(N,N’−ビス(4−ヨードフェニル)−2,5−ジアザ−3,6−ジオキソビシクロ[2.2.2]オクタン)の合成
α,α’−ジブロモアジポイルクロライドを下記に示すルートで、J.Org.Chem.,第36巻,No.4,501〜504(1971)に記載の方法に従って合成し、原料として用いた。
Figure 2011136910
窒素気流下、攪拌装置を備えた500mlの三つ口フラスコに、α,α’−ジブロモアジポイルクロライド 17.7g(51.9mmol)、脱水トルエン50mlを添加して、反応器を0℃まで冷却した。この反応器に、p−ヨードベンゼン 25.0g(114mmol)を脱水トルエン200mlに溶解させた溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、0℃を保ったままさらに30分間攪拌し、その後反応器を室温に戻してさらに5時間攪拌した。反応終了後、0℃に冷却した10%塩酸水溶液 50mlを30分かけて滴下した。反応液をろ過し、薄い紫色の沈殿物を得た。この沈殿物をトルエン50ml、水/メタノール=1:1溶液 200ml、メタノール100ml、ヘキサン150mlで順次洗浄した。室温、真空条件で5時間乾燥し、微紫色粉末22.3gを得た。次に、窒素気流下、攪拌装置を備えた200mlの三口フラスコに、先の反応で得た微紫色粉末22.1g、フッ化カリウム10.9g(188mmol)、ジエチレングリコール100mlを添加し、125℃で2.5時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷した。この反応液を0℃に冷却した水600mlに添加し、30分間攪拌した。この水溶液をろ過し、肌色の沈殿物を得た。この肌色沈殿物をジクロロメタン800mlへ添加し、室温で1時間攪拌した。ジクロロメタンに溶解しない灰色粉末をろ過して除去し、ろ液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮した。得られた濃縮残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー(溶離液=トルエンとアセトンの混合溶媒)で精製し、さらにトルエンで再結晶を行うことによって、目的のN,N’−ビス(4−ヨードフェニル)−2,5−ジアザ−3,6−ジオキソビシクロ[2.2.2]オクタンの白色粉末3.5gを得た(収率21%、HPLC純度99.7%)。
化合物の同定は、H−NMR及び13C−NMR測定により行った。
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=2.21〜2.41(m,4H)、 4.62(s,2H)、 7.10〜7.18(m,4H)、 7.69〜7.76(m,4H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=24.27、 62.91、 91.09、 125.27、 138.09、 138.28、 167.21
実施例1 化合物(A−6)の合成
Figure 2011136910
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた50mlの三つ口フラスコに、ジフェニルアミン[キシダ化学品] 1.00g(5.90mmol)、N,N’−ビス(4−ヨードフェニル)−2,5−ジアザ−3,6−ジオキソビシクロ[2.2.2]オクタン 1.53g(2.81mmol)、炭酸セシウム2.20g(6.75mmol)、酢酸パラジウム[キシダ化学品] 6.3mg(0.028mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン[アルドリッチ品] 22mg(0.11mmol)、o−キシレン[キシダ化学品] 15mlを加え、140℃で30時間攪拌した。反応終了後、室温まで放冷し、純水30ml、トルエン50mlを添加し、室温にて0.5時間攪拌して静置した後、水層を分離した。さらに、飽和食塩水で洗浄分液した後、有機層を減圧濃縮した。得られた濃縮残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー(溶離液=トルエンとアセトンの混合溶媒)で精製し、白色粉末0.97gを得た(収率55%、HPLC純度98.9%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた白色粉末は目的化合物(A−6)であることを確認した。
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=2.17〜2.40(m,4H)、 4.60(s,2H)、 6.99〜7.11(m,16H)、 7.18〜7.30(m,12H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=24.49、 63.51、 123.13、 123.96、 124.40、 124.67、 129.29、 132.78、 146.33、 147.36、 167.79
実施例2 三重項準位の測定(燐光スペクトルの測定)
NMRサンプルチューブ中で、化合物(A−6) 1mgと2−メチルテトラヒドロフラン 1mlをよく混合し、均一な溶液を調製した。この溶液をアルゴンガスで10分間バブリングすることによって脱気した後、このNMRサンプルチューブを密栓することにより燐光スペクトル用サンプルを作製した。温度77K(液体窒素冷却下)で燐光スペクトル測定を実施したところ、得られた燐光スペクトルから算出された化合物(A−6)の三重項準位は2.86eVであった。
実施例3 化合物(A−6)の素子評価
厚さ200nmのITO透明電極を積層したガラス基板を、アセトン及び純水による超音波洗浄、イソプロピルアルコールによる煮沸洗浄した後、乾燥した。さらに、UV/オゾン処理を行い、真空蒸着装置へ設置後、1×10−4Paになるまで真空ポンプにて排気した。まず、ITO透明電極上にα−NPDを蒸着速度0.3nm/秒で蒸着し、20nmの正孔注入層とした。引き続き、化合物(A−6)を蒸着速度0.3nm/秒で30nm蒸着した後、燐光ドーパント材料であるトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))とホスト材料である4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(CBP)を重量比が1:11.5になるように蒸着速度0.25nm/秒で共蒸着し、20nmの発光層とした。次に、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)を蒸着速度0.3nm/秒で蒸着し、10nmのエキシトシンブロック層とした後、さらにトリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体を0.3nm/秒で蒸着し、30nmの電子輸送層とした。引き続き、電子注入層としてフッ化リチウムを蒸着速度0.01nm/秒で0.5nm蒸着し、さらにアルミニウムを蒸着速度0.25nm/秒で100nm蒸着して陰極を形成した。窒素雰囲気下、封止用のガラス板をUV硬化樹脂で接着し、評価用の有機EL素子とした。このようにして得られた素子に、20mA/cmの電流を印加し、駆動電圧及び外部量子効率を測定した。結果を表1に示す。
比較例1 α―NPDの素子評価
化合物(A−6)をα−NPDに変更した以外は実施例3と同様に有機EL素子を作製した。20mA/cmの定電流密度条件下で駆動させた際の駆動電圧及び外部量子効率の結果を表1に示す。
Figure 2011136910
本発明のアミド誘導体は、有機EL素子の正孔注入材料、正孔輸送材料又は発光層のホスト材料として利用可能であり、特に燐光材料を用いたEL素子において極めて有用となることが期待できる。さらには、有機EL素子若しくは電子写真感光体等の正孔注入材料、正孔輸送材料又は発光材料としてのみならず、光電変換素子、太陽電池、イメージセンサー等の有機光導電材料への分野にも応用可能である。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)で表されるアミド誘導体。
    Figure 2011136910
    (式中、X及びXは各々独立して2価のアリーレン基を表す。また、Ar、Ar、Ar及びArは各々独立して炭素数6〜40の置換基を有していても良いアリール基、または炭素数5〜40の置換基を有していても良いヘテロアリール基を表す。Rは水素原子、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、又は炭素数6〜24のアリールオキシ基を表す。なお、任意のR同士がお互いに結合して架橋構造を形成しても良い。)
  2. 一対のR同士が結合して架橋構造を形成してなる下記一般式(2)で表されるアミド誘導体。
    Figure 2011136910
    (式中、X及びXは各々独立して2価のアリーレン基を表す。また、Ar、Ar、Ar及びArは各々独立して炭素数6〜40の置換基を有していても良いアリール基、または炭素数5〜40の置換基を有していても良いヘテロアリール基を表す。Rは水素原子、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、又は炭素数6〜24のアリールオキシ基を表す。また、nは1〜3の整数を表す。)
  3. 上記一般式(1)又は(2)で表されるアミド誘導体を、有機EL素子の正孔注入層、正孔輸送層、及び発光層から選ばれる少なくとも一層に使用することを特徴とする有機EL素子。
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