JP2011127693A - 車両用差動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】差動制限力を増大させることができる車両用差動装置を提供する。
【解決手段】車両用差動装置1は、ピニオンギヤ支持孔2d,2eを有するデフケース2と、デフケース2内に回転可能に収容され、車軸側端面と反対側の端面に開口する受孔3e,4eを有するサイドギヤ3,4と、サイドギヤ3,4にギヤ軸S,Sを直交させて噛合し、ピニオンギヤ支持孔2d,2eに摺動可能に支持されたギヤ摺動部5a,6aを有するピニオンギヤ5,6と、サイドギヤ3,4の受孔3e,4eに保持され、ピニオンギヤ5,6をそれぞれ回転自在に支持するとともに、車軸に直交する方向に相対移動可能なピニオンギヤ支持部材7,8とを備えた。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両用差動装置に関し、特にドライブ側から回転駆動力を受けるピニオンギヤ、及びこのピニオンギヤにギヤ軸が直交するように噛合するサイドギヤを備えた車両用差動装置に関する。
従来の車両用差動装置として、例えばピニオンギヤを回転可能に支持するピニオンギヤシャフトを有しないものがある(特許文献1)。
この車両用差動装置は、エンジントルクを受けて回転するデフケースと、このデフケース内に回転可能に収容された一対のピニオンギヤと、これら一対のピニオンギヤにギヤ軸を直交させて噛合する一対のサイドギヤとを備えて構成されている。
デフケースは、左右の車軸を挿通させる一対の車軸挿通孔を有している。デフケースには、一対のピニオンギヤのギヤ外周部を摺動可能かつ回転可能に支持する第1ピニオンギヤ支持面を有するピニオンギヤ挿入孔が設けられている。ピニオンギヤ挿入孔の内側開口周縁の2箇所には、ピニオンギヤのギヤ噛合部の一部を摺動かつ回転可能に支持する第2ピニオンギヤ支持面を有する延出部が設けられている。
一対のピニオンギヤは、ピニオンギヤ挿入孔に支持されるギヤ外周部、及び一対のサイドギヤに噛合するギヤ噛合部を有し、デフケースの回転軸線と直交する軸線上に配置されている。
一対のサイドギヤは、ピニオンギヤの外径より大きい外径を有する略環状の傘歯車からなり、互いに対向する位置でデフケースの回転軸線上に配置されている。一対のサイドギヤの内面には、左右の車軸がそれぞれスプライン嵌合によって連結されている。
以上の構成により、車両のエンジン側からのトルクがデフケースに入力されると、デフケースが回転軸線の回りに回転し、この回転力が一対のピニオンギヤに伝達され、さらに一対のピニオンギヤから一対のサイドギヤに伝達される。一対のサイドギヤにはそれぞれ左右の車輪に連結された車軸がスプライン嵌合によって連結されているため、エンジン側からのトルクが車両の走行状態に応じて左右の車輪に分配される。
デフケースにトルクが作用した状態において、ピニオンギヤの自転によってピニオンギヤの外周部が第1ピニオンギヤ支持面及び第2ピニオンギヤ支持面を摺動すると、この摺動によりピニオンギヤの自転に摩擦抵抗が発生し、この摩擦抵抗によってサイドギヤの差動回転が制限される。これにより、例えば左右の車輪の一方がスリップした際の空転が抑制される。
特開2006−46642号公報
しかしながら、特許文献1に示す車両用差動装置では、デフケースの回転時にギヤ同士(サイドギヤとピニオンギヤ)の噛み合いによってサイドギヤからピニオンギヤへの噛み合い反力がピニオンギヤを傾ける方向に作用し、車両の走行状態によっては差動制限力が不足する場合があるという問題があった。
従って、本発明の目的は、差動制限力を増大させることができる車両用差動装置を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために、一対のピニオンギヤ支持孔を有し、駆動源の駆動力によって回転軸線の回りに回転するデフケースと、前記デフケース内に回転可能に収容され、かつ車軸に相対回転不能に連結され、車軸側端面と反対側の端面に開口する受孔を有する一対のサイドギヤと、前記一対のサイドギヤにギヤ軸が直交するように噛合し、前記一対のピニオンギヤ支持孔に摺動可能に支持されたギヤ摺動部を有する一対のピニオンギヤと、前記一対のサイドギヤの前記受孔に保持され、前記一対のピニオンギヤをそれぞれ回転自在に支持するとともに、車軸に直交する方向に相対移動可能な一対の支持部材とを備えた車両用差動装置を提供する。
上記構成によれば、駆動力の伝達時に一対の支持部材が車軸に直交する方向に相対移動し、一対のサイドギヤの受孔と摩擦摺動する。
また、前記一対の支持部材は、それぞれが前記ピニオンギヤを回転可能に支持するピニオンギヤ支持部と、前記受孔内に嵌合される基部とを有し、前記駆動力の伝達による前記ピニオンギヤの前記ピニオンギヤ支持孔内での姿勢変化に応じて車軸に直交する方向に相対移動して、前記基部の外周面が前記受孔の内周面と摩擦摺動するように構成するとよい。
上記構成によれば、ピニオンギヤの姿勢変化による力をピニオンギヤ支持部が受け、その力によって基部の外周面が受孔の内周面に押し付けられる。
また、前記一対の支持部材は、前記車軸方向への相対移動によって互いに離間する方向のカム力を発生させるカム面をその対向部に有するとよい。
上記構成によれば、一対の支持部材の相対移動により発生するカム力により、一対の支持部材が押し付けられる。
本発明によると、車両用差動装置の差動制限力が増大する。
本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置の全体を説明するためにデフケースの回転軸線に平行な面に沿って破断した状態を示す断面図。 本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置の全体を説明するためにデフケースの回転軸線に直交する面に沿って破断した状態を示す断面図。 (a),(b)及び(c)は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置のピニオンギヤ支持部材を示す正面図,側面図及び斜視図。(a)は正面図を、(b)は側面図を、また(c)は斜視図をそれぞれ示す。 本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置の動作を説明するために示す断面図。 本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置の全体を説明するためにデフケースの回転軸線に平行な面に沿って破断した状態を示す断面図。 本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置の全体を説明するためにデフケースの回転軸線に直交する面に沿って破断した状態を示す断面図。 本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置の動作を説明するために示す断面図。 (a)及び(b)は、本発明の各実施の形態に係る車両用差動装置におけるピニオンギヤ支持部材の変形例を示す正面図と断面図。(a)は正面図を、また(b)は断面図をそれぞれ示す。
[第1の実施の形態]
(車両用差動装置の全体構成)
図1及び図2は車両用差動装置を示す。図3(a)〜(c)はピニオンギヤ支持部材を示す。この車両用差動装置1は、駆動源としてのエンジンのトルクによって回転するデフケース2と、このデフケース2の回転軸線Oに沿って互いに並列する一対のサイドギヤ3,4と、これら一対のサイドギヤ3,4に噛合する一対のピニオンギヤ5,6と、これら一対のピニオンギヤ5,6のギヤ軸S,S上に軸線をもつピニオンギヤ支持部材7,8とから大略構成されている。
(デフケース2の構成)
図1に示すように、デフケース2は、サイドギヤ3,4、ピニオンギヤ5,6、ピニオンギヤ支持部材7,8、及びスラストワッシャ9,10を内部空間2aに収容し、1ピースの部材によって形成されている。そして、デフケース2は、エンジントルクを受けて回転軸線Oの回りに回転するように構成されている。
デフケース2には、回転軸線Oに沿って開口する車軸挿通孔2b,2c、及びこれら車軸挿通孔2b,2cの各軸線と直交する方向に軸線をもつピニオンギヤ支持孔2d,2eが設けられている。
ピニオンギヤ支持孔2d,2eの周方向の内面には、ピニオンギヤ5,6の外周面と摺動してピニオンギヤ5,6を回転可能に支持するピニオンギヤ外周面支持部2f,2gが形成されている。
車軸挿通孔2b,2cは、収容空間2aに連通し、かつ左右の車軸(図示せず)をそれぞれ挿通させる丸孔によって形成されている。車軸挿通孔2b,2cの内側開口周縁には、球面からなるスラストワッシャ受部2k,2mが設けられている。スラストワッシャ受部2k,2mとサイドギヤ3,4との間には、サイドギヤ3,4とピニオンギヤ5,6との噛み合いを調整するためのスラストワッシャ9,10が介装されている。
また、デフケース2には、回転軸線Oに関して対称な領域であって、ピニオンギヤ支持孔2d,2eの回転軸線Oに対する周方向側に位置するサイドギヤ通過孔2h,2i(図2に示す)が設けられている。デフケース2の左方車軸側(図1に示す左側)には、エンジンのトルクが伝達されるリングギヤ(図示せず)を取り付けるための円環状のリングギヤ取付用フランジ2jが一体に設けられている。
(サイドギヤ3,4の構成)
サイドギヤ3,4は、略同一の構成であるため、サイドギヤ3のみについて説明する。なお、サイドギヤ4については、各部位の符号をサイドギヤ3の各部位の符号に対応して付し(例えば、サイドギヤ4のボス部にはサイドギヤ3のボス部3aに対応して4aを、またサイドギヤ4のギヤ噛合部にはサイドギヤ3のギヤ噛合部3bに対応して4bをそれぞれ付す。)、その説明は省略する。
サイドギヤ3は、図1に示すように、各外径が互いに異なるボス部3a及びギヤ噛合部3bを有する傘歯車からなり、デフケース2内に回転自在に収容されている。
サイドギヤ3には、左方(図1に示す左側)の車軸に沿って開口する貫通孔3cが設けられている。貫通孔3cは、左方車軸に相対回転不能にスプライン嵌合によって連結する連結孔3d、及びこの連結孔3dにサイドギヤ3のギヤ軸に沿って並列する、連結孔3dよりも大径の受孔3eによって形成されている。受孔3eは、連結孔3dよりもデフケース2の中心部側に形成され、デフケース2の中心部に向かって開口する丸孔からなり、その内面である開口内面30eが円周面で形成されている。連結孔3dは、左方車軸側端面に開口する段状の丸孔に形成されている。
サイドギヤ3の背面には、スラストワッシャ9と摺動する摺動部3fが設けられている。
(ピニオンギヤ5,6の構成)
ピニオンギヤ5,6は、略同一の構成であるため、ピニオンギヤ5のみについて説明する。なお、ピニオンギヤ6については、各部位の符号をピニオンギヤ5の各部位の符号に対応して付し(例えば、ピニオンギヤ6のギヤ摺動部にはピニオンギヤ5のギヤ摺動部5aに対応して6aを、またピニオンギヤ6のギヤ噛合部にはピニオンギヤ5のギヤ噛合部5bに対応して6bをそれぞれ付す。)、その説明は省略する。
ピニオンギヤ5は、図1に示すように、デフケース2のピニオンギヤ支持孔2dに回転可能に支持され、ピニオンギヤ外周面支持部2fと摺動するギヤ摺動部5aと、サイドギヤ3のギヤ噛合部3b及びサイドギヤ4のギヤ噛合部4bに共に噛合するギヤ噛合部5bとを有する傘歯車からなり、サイドギヤ3,4間に介在してデフケース2内に回転可能に収容されている。
そして、ピニオンギヤ5は、図2に示すように、デフケース2の回転時にサイドギヤ3,4から噛み合いによる荷重Pを受けてギヤ摺動部5aがピニオンギヤ外周面支持部2fに圧接した後、ギヤ摺動部5aとピニオンギヤ外周面支持部2fとの接触領域のうちのデフケース2の中心部側の端部である圧接点Oを中心として矢印R方向のモーメントを受けて傾動するように構成されている。
また、ピニオンギヤ5は、その中心軸に沿って、後述するピニオンギヤ支持部材7のピニオンギヤ内周面支持部7bが挿入される挿入孔5cが設けられている。挿入孔5cの内面は、ピニオンギヤ支持部材7のピニオンギヤ内周面支持部7bに摺動する摺動面5d、及び摺動面5dよりもデフケース2の外周側に配置され、ピニオンギヤ内周面支持部7bに摺動しない非摺動面5eで形成されている。
(ピニオンギヤ支持部材7,8の構成)
ピニオンギヤ支持部材7,8は、略同一の構成であるため、ピニオンギヤ支持部材7のみについて説明する。なお、ピニオンギヤ支持部材8については、各部位の符号をピニオンギヤ支持部材7の各部位の符号に対応して付し(例えば、ピニオンギヤ支持部材8の基部にはピニオンギヤ支持部材7の基部7aに対応して8aを、またピニオンギヤ支持部材8のピニオンギヤ内周面支持部にはピニオンギヤ支持部材7のピニオンギヤ内周面支持部7bに対応して8bをそれぞれ付す。)、その説明は省略する。
ピニオンギヤ支持部材7は、図2に示すように、サイドギヤ3の受孔3e内に車軸方向の一端が嵌合し、サイドギヤ4の受孔4e内に車軸方向の他端が嵌合する基部7aと、ピニオンギヤ5の摺動面5dと摺動し、ピニオンギヤ5を回転可能に支持するピニオンギヤ内周面支持部7bとを有している。
そして、ピニオンギヤ支持部材7は、ピニオンギヤ5の傾動に伴いピニオンギヤ5のギヤ軸Sと交差する仮想面F上でピニオンギヤ支持部材8に対してギヤ軸Sの放射方向(例えば図2に示す矢印a又はa方向)に移動し、基部7aの外周面7cをサイドギヤ3における受孔3eの開口内面30eに圧接されるように構成されている。
基部7aは、図3(a)〜(c)に示すように、外面一部にサイドギヤ3の受孔3eの開口内面30eに適合する円周面で形成された外周面7cを有し、全体が断面略半円形状の柱状部材によって形成されている。
基部7aの第1自由端面7d,7eは、左右車軸の連結側端面にそれぞれ対向する平面で形成されている。基部7aの第2自由端面7fは、ピニオンギヤ支持部材8の基部8aの第2自由端面8f(図1に示す)に対向する平面で形成されている。
ピニオンギヤ内周面支持部7bは、基部7aの軸線方向中央部における外周面7cの頂部に一体に設けられ、第2自由端面7fに直交する方向に延びる断面円形状の柱状部材によって形成されている。そして、ピニオンギヤ内周面支持部7bは、その先端側がピニオンギヤ5の挿入孔5cに挿入され、ピニオンギヤ内周面支持部7bの外周面が摺動面5dと摺動する。これにより、ピニオンギヤ支持部材7は、ピニオンギヤ5がピニオンギヤ内周面支持部7bの中心軸を回転軸として回転するように、ピニオンギヤ5をそのギヤ摺動部5aよりも回転軸線Oに近い位置で支持するように構成されている。
〔車両用差動装置1の動作〕
次に、本実施の形態に示す車両用差動装置1の動作につき、図1,図2及び図4を用いて説明する。図4はピニオンギヤ及びピニオンギヤ支持部材の動作状態を示す。なお、図4では説明のためにピニオンギヤ及びピニオンギヤ支持部材の傾きを誇張して表している。
図1において、車両のエンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤを介してデフケース2に入力されると、デフケース2が回転軸線Oの回りに回転する。デフケース2が回転すると、その回転力がピニオンギヤ5,6及びピニオンギヤ支持部材7,8に伝達され、さらにピニオンギヤ5,6からサイドギヤ3,4に伝達される。左右のサイドギヤ3,4にはそれぞれ車軸がスプライン嵌合されているため、エンジン側からのトルクがサイドギヤ3,4、及び左右の車軸を介して左右の車輪に伝達される。
ここで、車両が直進状態であり、左右各車輪と路面との間でスリップが発生しない場合には、ピニオンギヤ5,6が自転することなくサイドギヤ3,4の中心軸回りを公転し、エンジン側からのトルクが左右各車軸に等分に伝達され、左右各車輪が等しい回転数で回転する。
一方、例えば右側の車輪と路面との間にスリップが発生した場合には、ピニオンギヤ5,6がサイドギヤ3,4と噛合しながら自転し、エンジン側からのトルクが左右の車軸(車輪)間で差動分配される。すなわち、左側の車輪がデフケース2の回転速度より低い速度で回転し、右側の車輪がデフケース2の回転速度より高い速度で回転する。
本実施の形態に係る駆動力伝達装置1では、デフケース2にトルクが作用した状態でピニオンギヤ5,6が自転すると、ピニオンギヤ5,6のギヤ摺動部5a,6aがデフケース2のピニオンギヤ外周面支持部2f,2gで摺動し、ピニオンギヤ5,6の摺動面5d,6dがピニオンギヤ支持部材7,8のピニオンギヤ内周面支持部7b,8bで摺動するため、これらの摺動部分で摩擦抵抗が発生し、サイドギヤ3,4の差動回転が制限される。
この際、図2に示すように、ピニオンギヤ5,6がサイドギヤ3,4から噛み合いによる荷重P,Pを受け、ギヤ摺動部5a,6aがピニオンギヤ外周面支持部2f,2gに圧接する。その後、さらに荷重P,Pを受けると、ピニオンギヤ5,6は、ピニオンギヤ外周面支持部2f,2gに対するギヤ摺動部5a,6aの圧接点O,Oを中心として矢印R,R方向のモーメントを受けて傾動するように、ピニオンギヤ支持孔2d,2e内における姿勢が変化する。
これに伴い、ピニオンギヤ支持部材7,8が第2自由端面7f,8fを互いに当接させた状態にして仮想面F上で互いに反対の方向に相対移動する。すなわち、図4に示すように、ピニオンギヤ支持部材7が仮想面Fに沿って車軸挿通孔2b,2cに挿入される車軸の回転軸に直交する方向の一側(矢印a方向)に、またピニオンギヤ支持部材8が仮想面Fに沿って車軸挿通孔2b,2cに挿入される車軸の回転軸に直交する方向の他側(矢印a方向)にそれぞれ相対移動する。このため、ピニオンギヤ支持部材7の基部7aの外周面7cがサイドギヤ3の受孔3eの開口内面30eとサイドギヤ4の受孔4eの開口内面40eに矢印a方向に沿って圧接し、またピニオンギヤ支持部材8の基部8aの外周面8cがサイドギヤ3の受孔3eの開口内面30eとサイドギヤ4の受孔4eの開口内面40eに矢印a2方向に沿って圧接する。
これにより、ピニオンギヤ支持部材7,8における基部7a,8aの外周面7c,8cとサイドギヤ3,4における受孔3e,4eの開口内面30e,40eとの間に摩擦抵抗が発生し、これら摩擦抵抗によってサイドギヤ3,4の差動回転が制限される。
同時に、ピニオンギヤ5,6が、ピニオンギヤ支持部材7,8によりギヤ軸S,Sの傾きを抑制された状態で回転する。
また、ピニオンギヤ5,6の自転によってサイドギヤ3,4との噛み合い面で各ギヤ軸方向のスラスト力が発生する。このスラスト力によりサイドギヤ3,4が互いに離間する方向に移動してスラストワッシャ9,10をスラストワッシャ受部2k,2mに圧接するため、スラストワッシャ9,10とスラストワッシャ受部2k,2mとの間に摩擦抵抗を発生し、これら摩擦抵抗によってもサイドギヤ3,4の差動回転が制限される。
さらに、ピニオンギヤ5,6に発生するスラスト力によりピニオンギヤ5,6の背面部がピニオンギヤ支持孔2d,2eの底面に圧接するため、ピニオンギヤ5,6の自転に対する摩擦抵抗が発生し、これら摩擦抵抗によってもサイドギヤ3,4の差動回転が制限される。
[第1の実施の形態の効果]
以上説明した第1の実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
(1)ピニオンギヤ支持部材7,8の矢印a1,a2方向への移動によってピニオンギヤ5,6における基部7a,8aの外周面7c,8cとサイドギヤ3,4における受孔3e,4eの開口内面30e,40eとの間に摩擦抵抗が発生する。これにより、差動制限力が増大する。
(2)デフケース2の回転時にギヤ同士の噛み合いによるピニオンギヤ5,6のギヤ軸S,Sの傾きを抑制することができ、両ギヤの噛み合いが良好となる。
(3)ピニオンギヤ支持部材7,8が車軸に直交する方向に相対移動可能であるので、ピニオンギヤ5,6のピニオンギヤ支持孔2d,2e内におけるピニオンギヤ5,6の径方向(図2,図4の左右方向)への移動に応じてピニオンギヤ支持部材7,8も同方向に移動する。このため、ギヤ摺動部5a,6aとピニオンギヤ外周面支持部2f,2gとが互いに平行に近い状態で摺動するため、ピニオンギヤ5,6のデフケース2への当接による応力集中を緩和して焼き付き発生を抑制することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2実施の形態に係る車両差動装置につき、図5及び図6を用いて説明する。図5及び図6は車両用差動装置を示す。図5及び図6において、図1及び図2と同一又は同等の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図5及び図6に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置21は、一対のピニオンギヤ支持部材7,8をそれぞれが互いに離間する方向にピニオンギヤ5,6のギヤ軸S,Sに沿って移動させるためのカム機構22を備えた点に特徴がある。
このため、ピニオンギヤ支持部材7,8は、ピニオンギヤ5,6のギヤ軸S,Sと交差する第1仮想面F、及びこの第1仮想面Fと直交するように交差する第2仮想面F上で相対移動し得るように構成されている。
また、カム機構22は、カム孔23及びボール24からなり、ピニオンギヤ支持部材7,8間に介在して配置されている。
カム孔23は、第2自由端面7fと第2自由端面8fとを向かい合わせた状態においてピニオンギヤ支持部材7とピニオンギヤ支持部材8との間に配置されている。カム孔23は、ピニオンギヤ支持部材7の第2自由端面7fに開口する円錐状の空間及び円柱状の空間からなるカム面23aと、ピニオンギヤ支持部材8の第2自由端面8fに開口する円錐状の空間及び円柱状の空間からなるカム面23bとが組み合わされた断面六角形状の空間よって形成されている。
なお、カム孔としては、一方のピニオンギヤ支持部材の第2自由端面に開口する一対の半円錐状の空間からなるカム面と、他方のピニオンギヤ支持部材の第2自由端面に開口する一対の半円錐状の空間からなるカム面とが組み合わされた断面菱形状の空間によって形成してもよい。
ボール24は、両カム面23a,23bの溝底間に介在し、ピニオンギヤギヤ5,6のギヤ軸S,S上に転動可能に配置されている。
そして、カム機構22は、第1仮想面F上におけるピニオンギヤ支持部材7の矢印a方向への移動によって、かつピニオンギヤ支持部材8の矢印a方向への移動によってピニオンギヤ支持部材7,8をそれぞれが互いに離間する矢印a,a方向(ピニオンギヤ支持部材7を矢印a方向、ピニオンギヤ支持部材8を矢印a方向)に第2面F上で移動させるように構成されている。
また、カム機構22は、ピニオンギヤ支持部材7,8が逆方向に相対移動した場合にもピニオンギヤ支持部材7,8を互いに離間させるカム力を発生する。すなわち、第1仮想面F上におけるピニオンギヤ支持部材7の矢印a2方向への移動によって、かつピニオンギヤ支持部材8の矢印a1方向への移動によってピニオンギヤ支持部材7,8を互いに離間させる矢印a,a方向(ピニオンギヤ支持部材7を矢印a方向、ピニオンギヤ支持部材8を矢印a方向)に第2仮想面F上で移動させるように構成されている。
このように構成された車両用差動装置21においては、第1の実施の形態に示す車両用差動装置1の動作と同様の動作に加え、カム機構22による動作が行われる。図7はピニオンギヤ及びピニオンギヤ支持部材の動作状態を示す。
〔車両用差動装置21の動作〕
本実施の形態においては、ピニオンギヤ支持部材7,8が第2自由端面7f,8fを互いに当接させた状態にして仮想面F上で互いに反対の方向に相対移動する。すなわち、図7に示すように、ピニオンギヤ支持部材7が矢印a1方向に、またピニオンギヤ支持部材8が矢印a2方向にそれぞれ移動する。
このため、ピニオンギヤ支持部材7が基部7aの外周面7cをサイドギヤ3における受孔3eの開口内面30eとサイドギヤ4における受孔4eの開口内面40eに矢印a方向に沿って圧接される。また、ピニオンギヤ支持部材8が基部8aの外周面8cをサイドギヤ3における受孔3eの開口内面30eとサイドギヤ4における受孔4eの開口内面40eに矢印a2方向に沿ってそれぞれ圧接される。
これにより、ピニオンギヤ支持部材7,8における基部7a,8aの外周面7c,8cとサイドギヤ3,4における受孔3e,4eの開口内面30e,40eとの間に摩擦抵抗が発生し、これら摩擦抵抗によってサイドギヤ3,4の差動回転が制限される。
同時に、ピニオンギヤ5,6が、ピニオンギヤ支持部材7,8によりギヤ軸S,Sの傾きを抑制された状態で回転する。
また、ピニオンギヤ支持部材7,8が第2自由端面7f,8fを互いに当接させた状態にして第1仮想面F上で互いに反対の方向に相対移動すると、カム機構22のカム力を受けて第2自由端面7f,8fを互いに離間させる方向に第2仮想面F上で移動する。すなわち、ピニオンギヤ支持部材7が矢印a方向に、またピニオンギヤ支持部材8が矢印a方向にそれぞれ移動する。
このため、ピニオンギヤ支持部材7が基部7aの外周面7cをサイドギヤ3における受孔3eの開口内面30eとサイドギヤ4における受孔4eの開口内面40eに矢印a方向に沿って圧接される。また、ピニオンギヤ支持部材8が基部8aの外周面8cをサイドギヤ3における受孔3eの開口内面30eとサイドギヤ4における受孔4eの開口内面40eに矢印a方向に沿ってそれぞれ圧接される。
これにより、ピニオンギヤ支持部材7,8における基部7a,8aの外周面7c,8cとサイドギヤ3,4における受孔3e,4eの開口内面30e,40eとの間に摩擦抵抗が発生し、これら摩擦抵抗によってもサイドギヤ3,4の差動回転が制限される。
[第2の実施の形態の効果]
以上説明した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加え、次に示す効果が得られる。
ピニオンギヤ支持部材7,8の矢印a,a方向への移動によって基部7aの外周面7c,8cとサイドギヤ3,4における受孔3e,4eの開口内面30e,40eとの間に発生する摩擦抵抗でサイドギヤ3,4の差動回転が制限される。
以上、本発明の車両用差動装置を上記の各実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
(1)各実施の形態では、ピニオンギヤ支持部材7,8におけるピニオンギヤ内周面支持部7b,8bが基部7a,8aに一体に設けられている場合について説明したが、図8(a)及び(b)に示すようにピニオンギヤ支持部材7におけるピニオンギヤ内周面支持部7bが基部7aとは別の部材であってもよい。この場合、基部7aには、厚さ方向に開口する貫通孔7hが設けられている。そして、ピニオンギヤ内周面支持部7bがその一部を貫通孔7hに圧入して基部7aに固定されている。
(2)各実施の形態では、ピニオンギヤ支持部材7,8間に介在するカム機構22の構成要素としてボール24を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、ボール24の替わりに円筒状のローラからなるカムフォロアを用いてもよく、またピニオンギヤ支持部材7,8の相対移動方向に対して傾斜して形成されたカム面同士の摺動によってカム力を発生するものでもよい。
(3)各実施の形態では、ピニオンギヤ内周面支持部7b,8bの中心軸が第2自由端面7f,8fとそれぞれ直交するように形成したが、第2自由端面7f,8fをピニオンギヤ内周面支持部7b,8bの中心軸に対して傾斜するように形成してもよい。このようにピニオンギヤ支持部材7,8を構成すれば、ピニオンギヤ支持部材7,8の相対移動により両支持部材を互いに離間する方向に押し付けることができる。
(4)各実施の形態では、ピニオンギヤ5,6にピニオンギヤ支持部材用の挿入孔5c,6cを設け、これら挿入孔5c,6c内にピニオンギヤ支持部材7,8におけるピニオンギヤ内周面支持部7b,8bを挿入してピニオンギヤ5,6を支持する場合、すなわちピニオンギヤに凹部を設け、ピニオンギヤ支持部材に凸部を設け、この凸部をピニオンギヤの凹部に挿入してピニオンギヤを支持する場について説明したが、本発明はこれに限定されず、ピニオンギヤ支持部材に凹部を設け、ピニオンギヤに凸部を設け、この凸部をピニオンギヤ支持部材の凹部に挿入してピニオンギヤを支持しても各実施の形態と同様の効果を奏する。
1…車両用差動装置、2…デフケース、2a…収容空間、2b,2c…車軸挿通孔、2d,2e…ピニオンギヤ支持孔、2f,2g…ピニオンギヤ外周面支持部、2h,2i…サイドギヤ通過孔、2j…リングギヤ取付用フランジ、2k,2m…スラストワッシャ受部、3,4…サイドギヤ、3a,4a…ボス部、3b,4b…ギヤ噛合部、3c,4c…貫通孔、3d,4d…連結孔、3e,4e…受孔、30e,40e…開口内面、3f,4f…摺動部、5,6…ピニオンギヤ、5a,6a…ギヤ摺動部、5b,6b…ギヤ噛合部、5c,6c…ピニオンギヤ支持部材挿入孔、5d,6d…摺動面、5e,6e…非摺動面、7,8…ピニオンギヤ支持部材、7a,8a…基部、7b,8b…ピニオンギヤ内周面支持部、7c,8c…外周面、7d,8d,7e,8e…第1自由端面、7f,8f…第2自由端面、9,10…スラストワッシャ、21…車両用差動装置、22…カム機構、23…カム孔、23a,23b…カム面、24…ボール、F…仮想面、第1仮想面、F…第2仮想面、O…回転軸線、O,O…圧接点、S,S…ギヤ軸

Claims (3)

  1. 一対のピニオンギヤ支持孔を有し、駆動源の駆動力によって回転軸線の回りに回転するデフケースと、
    前記デフケース内に回転可能に収容され、かつ車軸に相対回転不能に連結され、車軸側端面と反対側の端面に開口する受孔を有する一対のサイドギヤと、
    前記一対のサイドギヤにギヤ軸が直交するように噛合し、前記一対のピニオンギヤ支持孔に摺動可能に支持されたギヤ摺動部を有する一対のピニオンギヤと、
    前記一対のサイドギヤの前記受孔に保持され、前記一対のピニオンギヤをそれぞれ回転自在に支持するとともに、車軸に直交する方向に相対移動可能な一対の支持部材と
    を備えた車両用差動装置。
  2. 前記一対の支持部材は、それぞれが前記ピニオンギヤを回転可能に支持するピニオンギヤ支持部と、前記受孔内に嵌合される基部とを有し、前記駆動力の伝達による前記ピニオンギヤの前記ピニオンギヤ支持孔内での姿勢変化に応じて車軸に直交する方向に相対移動して、前記基部の外周面が前記受孔の内周面と摩擦摺動する請求項1に記載の車両用差動装置。
  3. 前記一対の支持部材は、前記車軸方向への相対移動によって互いに離間する方向のカム力を発生させるカム面をその対向部に有する請求項1又は2に記載の車両用差動装置。
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