JP2011115734A - 腐植様着色物質を含有する排水の処理方法および処理システム - Google Patents

腐植様着色物質を含有する排水の処理方法および処理システム Download PDF

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Takuya Shibata
卓弥 柴田
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昭治 瀧上
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尚胤 長澤
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昇 笠井
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文男 吉井
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Abstract

【課題】 従来技術と比べ、簡便かつ経済的に排水中から腐植様着色物質を除去すると共に、その再利用を図ることのできる技術を提供すること。
【解決手段】 腐植様物質を含有する排水中に、カチオン性モノマーを幹繊維にグラフト重合させた繊維状物を投入、設置し、当該繊維状物に腐植様着色物質を吸着、除去する腐植様着色物質を含有する排水の処理方法および当該方法を含む腐植様着色物質を含有する排水の処理システム。
【選択図】 図1

Description

本発明は、尿汚水の二次処理水など、腐植様着色物質を含有する排水からこの腐植様着色物質を吸着除去する方法に関し、更に詳細には、排水中から腐植様着色物質を除去するとともに、これを有効利用する資源循環型の腐植様着色物質を含有する排水処理システムに関するものである。
尿汚水を生物処理した二次処理水のCODは原水に比較して低下するが、微生物の代謝産物である腐植様着色物質、主にフミン酸様物質に起因する茶褐色の色度は増加する。現在、排水のCODについての規制はあるが、色度についての規制はない。しかしながら、排水する畜産農家にとって色度の低減は、臭いの低減に次いでの関心事である。このような二次処理水中の色度の原因物質である腐植様着色物質は、一般的に難分解性であるために通常の微生物による処理では脱色は困難であった。
従来、二次処理水の色度低減のために硫酸アルミニウムや塩化第二鉄、有機系凝集剤などを用いた凝集沈殿(特許文献1および2)、活性炭や黒ぼく土を用いた吸着(特許文献3)、塩素、過酸化水素、オゾン等による酸化分解(特許文献4)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)を用いた微生物による脱色(特許文献5)等が提案されている。
例えば特許文献1には、多価アニオン性の汚染物質を吸着除去するためにカチオン性の高吸水性樹脂微細粒子を汚染物含有排水に添加し、凝集沈殿させることが記載されている。また、特許文献2には有機系凝集剤2種類を含む除濁性に優れた廃水凝集処理技術が、特許文献3には黒ぼく土に有色廃水を浸透させて着色成分を吸着除去する方法がそれぞれ記載されている。更に、特許文献4ではオゾンを用いて効率的に有機性汚濁物質を分解除去する方法が提案され、特許文献5には難分解性着色物質を含有する廃水にアスペルギルス・フミガタスを植種して廃水の着色原因物質を分解除去する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献1や2に記載の技術では、着色物質およびCOD原因物質は凝集剤とともに凝集沈殿するため、この沈殿物の処理が必要となる問題がある。また、特許文献3に記載の技術は、着色物質およびCOD原因物質を黒ぼく土に浸透させ、黒ぼく土に着色成分を吸着除去するものであるが、長期間に亘って使用するためにはこれを交換する必要がある。更に、特許文献4、5に記載の技術はそれぞれオゾン、微生物による分解・脱色であり、着色原因物質を吸着・回収して有用資源として用いようとするものではない。
以上のように、各種着色廃液から着色物質を吸着除去、あるいは着色物質を分解除去する方法は知られているが、経済性高く尿汚水二次処理水中の着色物質を有効に減少させ、更にこれを回収、利用するシステムは、今まで知られていないのが現状である。
特開平8−309339号公報 特開2009−56397号公報 特開平10−156347号公報 特開2005−254079号公報 特開平6−39392号公報
本発明は、従来技術と比べ、簡便かつ経済的に尿汚水二次処理水などの腐植様着色物質を含む排水中から、この物質を除去し、更に、その再利用を図ることのできる技術の提供をその課題とするものである。
本発明は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果であり、その検討において発明者らは幹繊維にカチオン性モノマーをグラフト重合させて得た繊維状物は、フミン類等の腐植様着色物質を有効に吸着、除去しうること、この腐植様着色物質は簡便な方法でこの繊維状物から脱離可能であることおよびこの腐植様着色物質を脱離された繊維状物は繰り返し腐植様着色物質の除去に使用しうることを見出した。また、この方法により、腐植様着色物質の除去、低減と共にCODを低下させることもできることを見出した。
本発明は、上記知見に基づくもので、腐植様物質を含有する排水中に、カチオン性モノマーを幹繊維にグラフト重合させた繊維状物を投入、設置し、当該繊維状物に腐植様着色物質を吸着、除去させることを特徴とする腐植様着色物質を含有する排水の処理方法である。
また本発明は、腐植様着色物質を含有する排水中に、吸着材としてカチオン性モノマーをグラフト重合させた繊維状物を投入、設置して排水中の腐植様着色物質を吸着させ、次いでこの腐植様着色物質を吸着した繊維状物を、アルカリ金属イオンを含有する脱離液に浸漬して腐植様着色物質を回収すると共に、前記繊維状物を繰り返し使用することを特徴とする腐植様着色物質を含有する排水の処理システムである。
本発明によれば、カチオン性モノマーをグラフト重合させた繊維状物を用いて二次処理水等の腐植様着色物質を含有する排水から、当該物質を吸着、除去することにより、この排水の着色度を低減させることができ、また、合わせてCODも低減せしめることができる。そして、吸着処理後の処理水は、そのまま、あるいは必要に応じて更に高度処理を行うことにより、環境中へ排水することが可能となる。
また、本発明方法では、吸着した腐植様着色物質を、吸着材である前記繊維状物から脱離液を用いて容易に脱離させることができるので、この繊維状物を吸着材として繰り返し使用することができるため、後処理が容易であると共に経済的である。
更に、脱離後の腐植様着色物質は、脱離液のpH調整により、沈殿させることができ、この沈殿した腐植様着色物質は、廃棄することなく肥料、植物生育促進剤、土壌改良剤、排水中の重金属除去剤等として有効利用ができるものである。したがって、本発明は、捨てるもののない資源循環・回収型の、尿汚水二次処理水等腐植様着色物質を含む排水の処理システムとして利用可能なものである。
本発明システムの概念を示す図である。 各吸着材の浸漬時間と色度の関係を示す図面である。図中、○はN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドグラフトビニロン(グラフト率 16.2%)、△はジエチルアミノエチルメタクリレートグラフトビニロン(グラフト率 46.5%)、□はビニロン繊維、◇はコントロールである。 実施例3の試験での、第1吸着槽および第2吸着槽での色度の変化を示す図面である。図中、●は第1吸着槽での結果を、○は第2吸着槽での結果を示す。 実施例4の試験での、第1吸着槽および第2吸着槽での色度の変化を示す図面である。図中、●は第1吸着槽での結果を、○は第2吸着槽での結果を示す。 吸着材からの、塩化ナトリウム水溶液を脱離液として用いた場合の腐植様着色物質の脱離状況を示す図面である。図中、●は第1吸着槽で用いた吸着材の結果を、○は第2吸着槽で用いた吸着材の結果を示す。 吸着材からの、水酸化ナトリウム水溶液を脱離液として用いた場合の腐植様着色物質の脱離状況を示す図面である。図中、●は第1吸着槽で用いた吸着材の結果を、○は第2吸着槽で用いた吸着材の結果を示す。 2M塩化ナトリウムを脱離液として用いた場合の、脱離時間と色度の関係を示す図面である。図中、●は第1吸着槽で用いた吸着材の結果を、○は第2吸着槽で用いた吸着材の結果を示す。
本発明は、腐植様着色物質を含有する排水を処理対象とし、この排水から吸着材としてカチオン性モノマーをグラフト重合させた繊維状物を用い、腐植様着色物質を吸着除去して着色を低減させ、併せて当該排水のCODを低下させるものである。
この腐植様着色物質を含有する排水としては、下水処理二次処理水、畜産排水等が含まれる。
また、本発明方法において用いられる、カチオン性モノマーをグラフトさせた繊維状物としては、幹繊維にカチオン性モノマーがグラフト重合した重合物が挙げられる。このような重合物は、適切な幹繊維に、カチオン性モノマーを放射線グラフト重合させることにより得ることができる。
この放射線グラフト重合で使用される幹繊維としては、放射線グラフト重合に適合するポリマーであれば特に制約はないが、強度、耐水性、反応性等の点から、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびこれらの繊維の混合物等が望ましい。
また、カチオン性モノマーとしては、重合性基と第三級アミノ基または第四級アンモニウム基とを有する化合物を挙げることができ、その例としては、2−ジエチルアミノエチルメタクリレート(DEAEMA)、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩(DMAEA−Q)、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド(DMAPAA)、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド塩化メチル4級塩(DMAPAA−Q)等を挙げることができる。
これらのカチオン性モノマーのうち、吸着効果が高いものとしては、DEAEMA、DMAPAA、およびDMAPAA−Qが挙げられる。また、各カチオン性モノマーによってその性質が若干異なり、例えば、DEAEMAグラフト物では脱色後また着色する傾向が認められ、DMAPAAグラフトはグラフト率の高いものが容易に得られるが、吸着速度はDMAPAA−Qグラフト物より若干遅い。また、DMAPAA−Qグラフトは単独では高いグラフト率のものが得にくいが、これとDMAPAAとの混合系グラフト反応では、グラフト率が高く、吸着速度が高いグラフト物が得られた。更に、DMAPAA−Q/DMAPAA混合グラフト系では、それらのモル比が、1/9〜3/7位の間で特に良好な脱色効果を有するものが得られる。
また、グラフト重合に当たっては、上記カチオン性モノマーの他、非イオン性モノマー、例えばアクリルアミド、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等を併用し、これらと共重合させることもできる。非イオン性モノマーの混合比は適宜変更することができ、特に限定されないが、5〜30%が望ましい。
前記放射線グラフト重合は、「グラフト反応のおいしいレシピ」(斉藤恭一・須郷高信著、丸善株式会社、2008)等に記載された方法に準じて、容器中に幹繊維を入れ、減圧した後、これに放射線照射し、ここに不活性気体(例えば窒素)で置換したカチオン性モノマー(および必要な場合他の非イオン性モノマー)溶液を注入し、グラフト重合させる方法(前照射法)および容器中に、幹繊維を入れた後10−1Pa程度の減圧とし、これに不活性気体で置換したカチオン性モノマー溶液等を導入してから放射線を照射する方法(同時照射法)により行うことができる。同時照射法であっても前照射法であっても良いが、同時照射法では大量のホモポリマーが生成し、この除去が困難であるとともに、グラフト率は低い傾向があるため、ホモポリマーの生成が少なく、グラフト率も高い前照射法が望ましい。なお、モノマーの溶媒は特に限定されないが、低級アルコール類、水およびそれらの混合溶媒が望ましい。
放射線グラフト重合に使用しうる放射線としては、電子線、γ線いずれでも良く、その吸収線量は、グラフト物の強度を保ったまま、反応が行える範囲である、具体的には、10kGy〜200kGy程度であり、好ましくは、40〜100kGyである。
また、上記グラフト重合反応の反応時間は、照射する放射線の強度や使用するカチオン性モノマーによっても相違するが、1時間から24時間程度が望ましい。
更に、放射線照射時の温度は、ドライアイス温度から室温程度であり、経済的には室温(20〜30℃)が好ましい。また、前照射法の場合の反応温度は、室温から50℃くらいまでが望ましいが、反応温度が高いとホモポリマーの生成量が多くなるので、やはり室温付近(20〜30℃)が望ましい。
以上のようにして得られる、カチオン性モノマーを幹線維にグラフトさせた繊維状物(以下、「吸着材」ということがある)は、フィラメントの集合体としての繊維であり、束状、モール状、織物状、不織布状、メッシュ状、ニット状いずれであっても良い。また、当該繊維状物のグラフト率も特に限定されるものではないが、2%から150%程度までが望ましい。
次に、上記吸着材を用いる、腐植様着色物質を含有する排水の処理システムについて、その概念を示す図1を元に説明する。
まず、腐植様着色物質を含む排水(被処理水)中に吸着材を投入、設置する。本発明の処理システムにおいては、単に被処理水中に吸着材を投入するバッチ式処理方法であっても、また、被処理水の流路に吸着材を設置し、連続的に処理する連続処理方法であっても良い。
必要とする吸着材の量は、被処理水の着色度、温度、吸着材の種類によって大きく相違するので実験的に定めることが好ましいが、例えば、バッチ式で腐植様着色物質としてフミン酸類を0.7〜2g/L程度含有する被処理水1Lに対しては、イオン交換容量が10〜30meq程度となる量の吸着材を用いればよい。また、連続処理の場合は、処理後の被処理液の着色を比色計等で調べ、一定以上の着色となった場合に吸着材を交換する等すればよい。
なお、本発明方法では、必要に応じて被処理水を撹拌したりして、吸着材への吸着性を上げても良い。
以上のように腐植様着色物質が吸着した吸着材は、脱離液を用いることにより、簡単に吸着物である腐植様着色物質を脱離させ、繰り返し使用することができる。この脱離液としては、アルカリ金属イオンを含有する溶液が使用され、入手のしやすさや価格から、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液、塩化ナトリウム水溶液等の塩水溶液を用いることが好ましい。
この吸着材から脱離された腐植様着色物質は、脱離液に塩酸等の鉱酸を加え、pHを2以下にすることで回収が行われる。すなわち、このように脱離液のpHを調整すると腐植様着色物質の主要成分であるフミン酸様物質が脱離液中で沈殿してくる。この沈殿物を、ろ過、遠心分離等の公知の固液分離手段で回収し、水洗することにより、主にフミン酸様物質である腐植様着色物質が固体物質として得られる。
得られるこの物質はアルカリ溶液に溶け、酸で沈殿するので日本腐植物質学会の定義によれば腐植酸(フミン酸)ということができる。なお、このものは、市販のフミン酸(和光純薬工業製)に比較すると芳香族環が少ないことが本発明者らにより確認されている。
このフミン酸を回収した後の、脱離液は着色しているが、これは腐植様着色物質中に若干含まれているフルボ酸様物質であると考えられる。そして、フミン酸様物質を回収した後の脱離液に、水酸化ナトリウム等のアルカリ物質を加え、pHをほぼ中性にすれば、これを再び吸着材から腐植様着色物質の脱離のために用いることができる。
なお、脱離液中での、例えば塩化ナトリウムの濃度を下げないために、腐植様着色物質の沈殿に用いる塩酸等の鉱酸の濃度を4M程度とし、中和に用いる水酸化ナトリウム等のアルカリ物質の濃度も4M程度とすると良い。また、脱離液を繰り返し用いることにより、フルボ酸様物質が脱離液中で濃縮されて行くが、この濃縮されたフルボ酸様物質は、電気透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法等公知の脱塩手段で脱塩することで重金属吸着剤、植物生育促進剤等として利用することができる。
一方、脱離液のpHを2以下とすることにより沈殿するフミン酸様物質を中心とする腐植様着色物質は、有効利用することができる。例えば、水洗等した後、植物生育促進剤、肥料、土壌改良剤や、排水中の重金属除去剤等として用いることができる。特に、植物生育促進剤として利用した場合、植物の生育が対照に比べ顕著であった。また、重金属除去剤として利用した場合、その重金属吸着効果は市販のフミン酸とほぼ同等であったが鉄とマンガンの吸着に関しては特異性が認められた。
以上説明したように、本発明によれば資源循環・回収型の排水処理システムを提供することができる。すなわち、腐植様着色物質を含む排水に、吸着材を投入、設置することにより、腐植様着色物質の大部分が吸着材に吸着され、処理水の着色は大幅に低減する。そして、吸着材に吸着された腐植様着色物質は、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンを含む脱離液中で脱離するので、一旦使用された吸着材は、水洗後再度使用可能となる。一方、脱離液中のフミン酸様着色物質は、pHを2以下にすることにより沈殿するので、固液分離することで、フミン酸様着色物質として回収、利用が可能となる。他方、脱離液中には、pHを2以下にしても沈殿しないフルボ酸様物質が蓄積されるが、このものは脱塩することにより利用可能となるのである。
以上のように、本発明方法では、簡単な手段で腐植様着色物質を含む排水の着色低減ができるとともに、吸着材の循環使用が可能であり経済性が高い。
そして更に、吸着材から脱離されたフミン酸様着色物質やフルボ酸様物質は、簡単に回収することができ、肥料、土壌改良材、重金属吸着剤等、多くの分野で利用可能であり、この面からも経済性の高いものである。
以下に実施例を示し、さらに本発明を詳しく説明する。もちろん、以下の例示によって発明が限定されることはない。
参 考 例 1
吸着材の調製(1)
ビニロン繊維(ポリビニルアルコール繊維、(株)クラレ製;クレモナ寒冷紗#300、目合い1.04m/m)に、ジエチルアミノエチルメタクリレートまたはN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドを、下記条件で放射線グラフト重合させることにより、グラフト率が46.5%のジエチルアミノエチルメタクリレートグラフトビニロン(吸着材a)およびグラフト率が16.2%のN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドグラフトビニロン(吸着材b)を調製した。グラフト率は反応前のビニロン繊維重量に対する反応後グラフト繊維の重量増加率として算出した。
グラフト重合条件:同時照射法
ビニロン繊維:10g
モノマー溶液:モノマー50%+メタノール50% 100g
線量率:0.5kGy/時間
照射時間;16時間
照射終了後反応容器から取り出し、水およびメタノールでソックスレー抽出
実 施 例 1
吸着性試験(1):
バッチ試験により、参考例1で得た吸着材についてその吸着性を試験した。すなわち、吸着材aおよび吸着材b並びに幹繊維であるビニロン繊維の各サンプル0.1gを二次処理水(初期色度:1386)10mLに入れ、100rpmで振盪させ、所定時間毎に処理水をサンプリングし、色度をデジタル濁色度計(オプテックス株式会社製、WA−PT−4DG)で測定した。この結果を図2に示す。
この結果、グラフト重合していないビニロンには着色物質は吸着しないが、グラフト物には吸着した。そして、吸着材としてジエチルアミノエチルメタクリレートをグラフト重合したビニロン繊維(吸着材a)を用いた場合には、色度は低下するが、長時間振盪させると、色度は上がるのに対し、吸着材としてN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドをグラフト重合したビニロン繊維(吸着材b)ではグラフト率が低いにもかかわらず、色度は振盪時間の増加と共に低下し、上昇することはなかった。
参 考 例 2
吸着材の調製(2):
ビニロン繊維(ポリビニルアルコール繊維、(株)クラレ製;クレモナ寒冷紗#300、目合い1.04m/m)をポリ袋に入れ、窒素雰囲気下、室温でγ線を10kGy/hで6時間照射した。照射後ビニロン繊維をポリ袋から取り出し、反応容器に入れ、容器内部を10−1Paに減圧し、窒素置換したモノマー溶液(ビニロン繊維の重量の12倍重量)を反応容器に入れ、30℃で16時間反応させた。モノマー溶液の組成を表1に示す。照射終了後反応容器からグラフトビニロン繊維を取り出し、水およびメタノールでソックスレー抽出し、反応前のビニロン繊維重量に対する反応後グラフト繊維の重量増加率をグラフト率として算出した。これを表1に示す。
Figure 2011115734
実 施 例 2
吸着性試験(2):
参考例2で作製した、各種吸着材0.1gに、豚尿汚水二次処理水10mL(色度2143,CODCr1204)を加え、室温で24時間攪拌し、その色度をデジタル濁色度計(オプテックス株式会社製、WA−PT−4DG)で、また、CODをCOD試薬(HACH社製、HACH0649、CODCrで20−1500mg/L)を用い、DRB200型リアクタ(HACH社製)で加熱処理した後、ポータブル吸光光度計(HACH社製、DR2800)で測定した。
また、比較として市販のジエチルアミノエチルセルロース(和光純薬工業製、カラムクロマトグラフ用 イオン効果容量:約1meq/gdry)、市販の合成吸着材アンバーライトXAD(オルガノ株式会社製)および原料のビニロン繊維についても、上記と同様試験した。これらの結果を表2に示す。
Figure 2011115734
吸着剤1ないし5並びに比較吸着剤1および2は、何れも豚尿汚水二次処理水の色度およびCODCrを低減させることができた。しかし、吸着剤1ないし5は繊維状(メッシュ状)でそのまま吸着材として二次処理水中に投入でき、また、尿汚水二次処理水からの回収が容易であるのに対し、比較吸着剤1および2は、何れも粉末状であり、二次処理水中に直接投入すると、固液分離が非常に困難である。
また、本発明吸着剤の原料であるビニロン繊維(未グラフト試料)には、豚尿汚水二次処理水の色度およびCODCrの低減に効果は認められなかった。
参 考 例 3
吸着材の調製(3)
ビニロン繊維(ポリビニルアルコール繊維、(株)クラレ製;クレモナ寒冷紗#300、目合い1.04m/m)に、下記条件でN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド塩化メチル四級塩を、放射線グラフト重合させ、グラフト率が12%のN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド塩化メチル四級塩グラフトビニロン(吸着材c)を調製した。
重合条件:前照射法
照射放射線; γ線
線量率; 10kGy/時間
照射時間; 6時間
照射時温度; 25℃
モノマー溶液; モノマー/水 = 10/90
浴比; 12
実 施 例 3
通液試験(1):
参考例3で作製した吸着材c 5gを二次処理水(色度:1743)1Lで満たされた第1吸着槽に入れ、そのまま24時間放置した。二次処理水を41.7mL/時の速度でポンプを用いて連続的に第1吸着槽に流し入れ、流入量の半量(20.85mL/時)をフラクションコレクターで1時間毎にサンプリングし、残りの半量を、吸着材5gを入れた第2吸着槽(0.5L)に導いた。第2吸着槽の処理水も、20.85mL/時でフラクションコレクターを用いて1時間毎にサンプリングして色度を測定した。この結果を図3および表3に示す。
Figure 2011115734
この結果から、吸着材cは、グラフト率が12%と低いにも拘わらず、吸着は迅速に進行することが示された。また、66時間吸着後の吸着材cの重量増加率は第1吸着槽で14.8%、第2吸着槽で9.5%であり、腐植様着色物質を吸着していることが示された。
参 考 例 4
吸着材の調製(4)
ビニロン繊維(ポリビニルアルコール繊維、(株)クラレ製;クレモナ寒冷紗#300、目合い1.04m/m)に、下記条件でN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド塩化メチル四級塩(モノマーA)とN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド(モノマーB)とを放射線グラフト重合させ、グラフト率が45%のN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド塩化メチル四級塩とN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドの共重合グラフトビニロン(吸着材d)を調製した。
重合条件:前照射法
照射放射線; γ線
線量率; 10kGy/時間
照射時間; 6時間
照射時温度; 25℃
モノマーA/モノマーB/水比; 4.5/10.5/85
浴比; 12
実 施 例 4
通液試験(2):
参考例4で作製した吸着材d 5gを二次処理水(色度:1743)1Lで満たされた第1吸着槽に入れ、そのまま24時間放置した。二次処理水を41.7mL/時の速度でポンプを用いて連続的に第1吸着槽に流し入れ、流入量の半量(20.85mL/時)をフラクションコレクターで1時間毎にサンプリングし、残りの半量を、吸着材5gを入れた第2吸着槽(0.5L)に導いた。第2吸着槽の処理水も、20.85mL/時でフラクションコレクターを用いて1時間毎にサンプリングして色度ならびにCODCrを測定した。この結果を図4に示す。
この結果から、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド塩化メチル四級塩とN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドの共重合グラフトビニロンである吸着材dは、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド塩化メチル四級塩の単独重合グラフトビニロンである吸着材cに比べ、吸着が迅速かつ効率的に進むことが明らかになった。
実 施 例 5
脱離試験(1):
実施例3の第1吸着槽および第2吸着槽で腐植様着色物質を7日間吸着させた吸着材cを使用して脱離性を試験した。脱離試験には、0.5〜3Mの塩化ナトリウム水溶液および0.5〜2Mの水酸化ナトリウムを脱離液として利用した。
試験は、25℃の上記脱離液5mlに、吸着材c 0.1gを量り取り、100rpmで24時間振盪し、振盪後の色度を測定することにより行った。塩化ナトリウムを用いる脱離液の結果を図5に、水酸化ナトリウムを用いる脱離液での結果を図6に示す。
この結果から明らかなように、第1吸着槽で用いた吸着材でも第2吸着槽で用いた吸着材でも、水酸化ナトリウムを用いる脱離液よりも塩化ナトリウムを用いる脱離液の方が良い結果が得られ、特に脱離液として2Mの塩化ナトリウム水溶液を用いた場合の結果が良かった。
実 施 例 5
脱離試験(2):
実施例3の第1吸着槽および第2吸着槽で腐植様着色物質を7日間吸着させた吸着材cを使用し、脱離までに要する時間を調べた。
脱離試験は、25℃の2Mの塩化ナトリウム水溶液20mlに、吸着材c 0.1gを量り取り、100rpmで10000分まで振盪し、経時的にその色度を測定することにより行った。この結果を図7に示す。
この結果から明らかなように、脱離は迅速に進行し、30分後には最大脱離量の92%以上が脱離され、脱離3時間後には最大脱離量に達した。
実 施 例 6
重金属吸着性試験:
実施例5で回収した腐植様着色物質(フミン酸様物質)を、重金属を含む水溶液に加え、フミン酸様物質を加える前と後の溶液中の重金属濃度を測定した。同様に市販のフミン酸についても試験した。試験は、フミン酸様物質および市販フミン酸濃度は、1%となるようpH4の重金属を含む溶液に懸濁し、室温で6日間攪拌した。この結果を表4に示す。
Figure 2011115734
実 施 例 7
植物の成育性試験:
20gの吸着材cを二次処理水に2Lに入れ、腐植様着色物質を吸着させた。次いで腐植様着色物質を吸着した吸着材c水洗後乾燥し、2M塩化ナトリウムの脱離液に浸漬し、そのまま3時間撹拌した。次いで、4M塩酸を加え、pHを2にした。沈殿してきた固形物を遠心分離により回収した。
市販の園芸専用肥料(ハイポネックス、ハイポネックスジャパン製)0.1%を含む水性肥料溶液に、回収した腐植様着色物質(フミン酸様物質)をその濃度が2ppmとなるように加え、試料液(本発明品)を調製した。
この試料液を入れたビーカーに、発芽したイネ(コシヒカリ)の種子をフロートに載せて浮かし、植物の成育状況を観察した。また、対照品としては、フミン酸様物質を入れないものを用いた。発芽・発根種子を被験液に入れてから9日後の結果を表5にまとめて示す。
Figure 2011115734
上記結果に示すとおり、フミン酸様物質を加えたものでは、含まないものより根・葉共に生育が顕著であり、腐植酸様物質の植物生育促進効果が認められた。
本発明によれば、カチオン性モノマーをグラフト重合させた繊維状物を用いて二次処理水等の腐植様着色物質を含有する排水から、これを吸着、除去することにより、これら排水の着色度を低減させることができ、また合わせてCODも低減せしめることができる。そして、吸着処理後の処理水は、そのまま、あるいは必要に応じて更に高度処理を行うことにより、環境中へ排水することが可能となる。
また、本発明方法では、吸着した腐植様着色物質を、吸着材である前記繊維状物から脱離液を用いて容易に脱離させることができるので、この繊維状物を吸着材として繰り返し使用することができるため、後処理が容易であると共に経済的である。
更に、脱離後の腐植様着色物質は、脱離液のpH調整により、沈殿させることができ、この沈殿した腐植様着色物質は、廃棄することなく植物生育促進剤、肥料、土壌改良剤、排水中の重金属除去剤等として有効利用ができるものである。
したがって、本発明は、捨てるもののない資源循環・回収型の、尿汚水二次処理水等腐植様着色物質を含む排水の処理システムとして利用可能なものである。

以 上

Claims (16)

  1. 腐植様物質を含有する排水中に、カチオン性モノマーを幹繊維にグラフト重合させた繊維状物を投入、設置し、当該繊維状物に腐植様着色物質を吸着、除去させることを特徴とする腐植様着色物質を含有する排水の処理方法。
  2. 更に、CODも低減せしめる請求項1記載の腐植様着色物質を含有する排水の処理方法。
  3. 幹繊維にグラフト重合させるカチオン性モノマーが、重合性基と第三級アミノ基または第四級アンモニウム基とを有する化合物である請求項1または2記載の腐植様着色物質を含有する排水の処理方法。
  4. 重合性基と第三級アミノ基または第四級アンモニウム基とを有する化合物が、2−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドまたはN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド塩化メチル4級塩である請求項3記載の腐植様着色物質を含有する排水の処理方法。
  5. 幹繊維が、ビニロンである請求項1ないし4のいずれかの項記載の腐植様着色物質を含有する排水の処理方法。
  6. グラフト重合が、放射線グラフト重合である請求項1ないし5のいずれかの項記載の腐植様着色物質を含有する排水の処理方法。
  7. 繊維状物のグラフト率が、2%から150%である請求項1ないし6のいずれかの項記載の腐植様着色物質を含有する排水の処理方法。
  8. 腐植様着色物質を含有する排水中に、カチオン性モノマーをグラフト重合させた繊維状物を投入、設置して排水中の腐植様着色物質を吸着し、次いでこの腐植様着色物質を吸着した繊維状物を、アルカリ金属イオンを含有する脱離液に浸漬して腐植様着色物質を回収すると共に、前記繊維状物を繰り返し使用することを特徴とする腐植様着色物質を含有する排水の処理システム。
  9. 更に、CODも低減せしめる請求項8記載の腐植様着色物質を含有する排水の処理システム。
  10. 幹繊維にグラフト重合させるカチオン性モノマーが、重合性基と第三級アミノ基または第四級アンモニウム基とを有する化合物である請求項8または9記載の腐植様着色物質を含有する排水の処理システム。
  11. 重合性基と第三級アミノ基または第四級アンモニウム基とを有する化合物が、2−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドまたはN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド塩化メチル4級塩である請求項10記載の腐植様着色物質を含有する排水の処理システム。
  12. 幹繊維が、ビニロンである請求項8ないし11のいずれかの項記載の腐植様着色物質を含有する排水の処理システム。
  13. グラフト重合が、放射線グラフト重合である請求項8ないし12のいずれかの項記載の腐植様着色物質を含有する排水の処理システム。
  14. 繊維状物のグラフト率が、2%から150%である請求項8ないし13のいずれかの項記載の腐植様着色物質を含有する排水の処理システム。
  15. アルカリ金属イオンを含有する脱離液が、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液または塩化ナトリウム水溶液である請求項8ないし14のいずれかの項記載の腐植様着色物質を含有する排水の処理システム。
  16. 腐植様着色物質の回収を、脱離液のpHを2以下とすることにより行う請求項8ないし15のいずれかの項記載の腐植様着色物質を含有する排水の処理システム。

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